以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
<発明者らによる事前検討>
実施の形態1にかかるRDコンバータ及びそれを備えた電子制御システムの詳細について説明する前に、本発明者らが事前検討したRDコンバータ50及びそれを備えた電子制御システム5について説明する。
図10は、実施の形態に至る前の構想に係る電子制御システム5の構成例を示す図である。電子制御システム5は、例えば自動車等の車両に搭載され、ロータ等の回転体(検知対象物)の回転角度を検知してその検知結果を基に所定の処理を行うとともに、回転体の回転角度を検知するレゾルバにおける短絡故障の有無を検知する機能を有する。
具体的には、電子制御システム5は、ロータ(不図示)の回転角度を検知するレゾルバ(検知装置)11と、レゾルバ11の検知結果をデジタル信号に変換するRDコンバータ50と、RDコンバータ50から出力されたデジタル信号に基づいて所定の処理を行うマイクロコンピュータ(以下、単にマイコンと称す)13と、を備える。
レゾルバ11は、例えば、励磁信号源12と、コイルL10〜L12と、を備える。コイルL10〜L12は、磁性体で構成されたロータの周囲を囲むように配置されている。励磁信号源12は、搬送波として用いられる正弦波の励磁信号(本例では10kHzの励磁信号)をコイルL10に流す。この励磁信号は、電磁誘導によってコイルL11,L12に伝達され、それぞれ90度位相の異なる搬送波となって表れる。ここで、コイルL11,L12の搬送波の振幅は、ロータの回転角度に応じて変化する。つまり、コイルL11,L12には、搬送波に乗ったロータの回転角度の情報を含む信号が、それぞれ90度位相の異なる受信信号となって表れる。
具体的には、コイルL11の一方の端部S1Rには、cos波形の受信信号が生成され、コイルL11の他方の端部S3Rには、その逆相の受信信号が生成される。それに対し、コイルL12の一方の端部S2Rには、sin波形の受信信号が生成され、コイルL12の他方の端部S4Rには、その逆相の受信信号が生成される。
RDコンバータ50は、チップCHP5上に設けられた、外部端子S51〜S54,T51,T53と、オペアンプAP51,AP52と、帰還抵抗R53,R54と、抵抗素子R51,R52と、角度演算回路501と、短絡故障検知回路502と、チップCHP5外に設けられた入力抵抗R1〜R4と、を備える。なお、オペアンプAP51、入力抵抗R1,R3、抵抗素子R51、及び、帰還抵抗R53により、増幅回路55が構成される。オペアンプAP52、入力抵抗R2,R4、抵抗素子R52、及び、帰還抵抗R54により、増幅回路56が構成される。
増幅回路55は、回転角度情報が含まれるコイルL11の受信信号を増幅する。増幅回路56は、回転角度情報が含まれるコイルL12の受信信号を増幅する。換言すると、増幅回路55は、コイルL11の両端S1R,S3Rから出力された一対の電圧信号の電位差を増幅する。増幅回路56は、コイルL12の両端S2R,S4Rから出力された一対の電圧信号の電位差を増幅する。
具体的には、チップCHP5外において、入力抵抗R1は、コイルL11の端部S1Rと外部端子S51との間に設けられている。入力抵抗R2は、コイルL12の端部S2Rと外部端子S52との間に設けられている。入力抵抗R3は、コイルL11の端部S3Rと外部端子S53との間に設けられている。入力抵抗R4は、コイルL12の端部S4Rと外部端子S54との間に設けられている。
また、チップCHP5上において、オペアンプAP51の非反転入力端子が外部端子S51に接続され、オペアンプAP51の反転入力端子が外部端子S53に接続され、オペアンプAP51の出力端子及び反転入力端子が帰還抵抗R53を介して接続されている。また、オペアンプAP51の非反転入力端子には、抵抗素子R51を介して、コモン電圧COMが供給されている。オペアンプAP52の非反転入力端子が外部端子S52に接続され、オペアンプAP52の反転入力端子が外部端子S54に接続され、オペアンプAP52の出力端子及び反転入力端子が帰還抵抗R54を介して接続されている。また、オペアンプAP52の非反転入力端子には、抵抗素子R52を介して、コモン電圧COMが供給されている。
コモン電圧COMは、基準電圧より大きく電源電圧よりも小さな電圧レベルを示す。本例では、コモン電圧COMは、0Vの基準電圧及び5Vの電源電圧の中間電圧である2.5Vを示している。したがって、増幅回路55,56に入力される電圧信号の振幅中心電圧は、コモン電圧COMである2.5Vとなる。
ここで、本例では、増幅回路55のゲインを決定する入力抵抗R1,R3及び帰還抵抗R53のうち入力抵抗R1,R3が、チップCHP5外部の基盤上に、取り換え可能な状態で設けられている。それにより、レゾルバの種類や設計仕様等に応じて増幅回路55のゲインを自由に調整することが可能になる。同様に、増幅回路56のゲインを決定する入力抵抗R2,R4及び帰還抵抗R54のうち入力抵抗R2,R4が、チップCHP5外部の基盤上に、取り換え可能な状態で設けられている。それにより、レゾルバの種類や設計仕様等に応じて増幅回路56のゲインを自由に調整することが可能になる。
また、図10の例では、コイルL11,L12の断線検知用に抵抗素子RH1,RH2,RL1,RL2が設けられている。
具体的には、コイルL11の一方の端部S1Rと外部端子S51との間の信号線上のノードと、電源電圧(本例では5V)が供給される電源電圧端子と、の間に抵抗素子RH1が設けられている。コイルL11の他方の端部S3Rと外部端子S53との間の信号線上のノードと、基準電圧(本例では0V)が供給される基準電圧端子と、の間に抵抗素子RL1が設けられている。コイルL12の一方の端部S2Rと外部端子S52との間の信号線上のノードと、電源電圧(本例では5V)が供給される電源電圧端子と、の間に抵抗素子RH2が設けられている。コイルL12の他方の端部S4Rと外部端子S54との間の信号線上のノードと、基準電圧(本例では0V)が供給される基準電圧端子と、の間に抵抗素子RL2が設けられている。
ここで、抵抗素子RH1,RH2,RL1,RL2は、正常状態においてコイルL11,L12の振幅中心電圧がコモン電圧COMを示すような抵抗比率、かつ、抵抗素子R1〜R4,R51〜R54よりも十分に高い抵抗値に調整されている。
角度演算回路501は、回転角度情報が含まれる増幅回路55,56の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号I51に変換して出力する。マイコン13は、デジタル信号I51に基づいて所定の処理を行う。なお、マイコン13は、チップCHP5上に設けられてもよい。
短絡故障検知回路502は、レゾルバ11と電源電圧側とが短絡する天絡故障が発生しているか否か、及び、レゾルバ11と基準電圧側とが短絡する地絡故障が発生しているか否か、を検知して検知結果D51を出力する。マイコン13は、検知結果D51により短絡故障が発生している判断した場合、レゾルバ11の動作を停止させる等の処理を行う。ここで、本例では、チップCHP5の外部端子の数の増加を防ぐために、レゾルバ11の電位が直接供給される専用の外部端子を設けないで、RDコンバータを形成するチップCHP5上に設けられた既存の外部端子S51〜S54の電位を用いて、レゾルバ11の短絡故障の有無を検知している。
しかしながら、図10の構成では、チップ外部に設けられた入力抵抗の影響により、レゾルバ11の電位を正確に検知することができず、その結果、レゾルバ11の短絡故障の有無を正確に検知することができない、という問題があった。
図11は、電子制御システム5の地絡状態での動作を示すタイミングチャートである。図11の例では、上側のタイミングチャートにコイルL11の端部S1R,S3Rの電位が示され、下側のタイミングチャートに外部端子S51,S53の電位が示されている。なお、端部S2R,S4R及び外部端子S52,S54の電位の関係については、逆相であることを除いて基本的には端部S1R,S3R及び外部端子S51,S53の電位の関係と同様であるため、その説明を省略する。
図11に示すように、正常状態(時刻t50〜t51)では、コイルL11の端部S1R,S3Rの電位は、振幅中心電位を約2.5Vとする正弦波の形状を示している。このとき、外部端子S51,S53の電位も、振幅中心電位を約2.5Vとする正弦波の形状を示している。
その後、端部S1Rが地絡すると(時刻t51)、コイルL11の端部S1Rの電位は0Vに固定される(時刻t51〜t52)。それに対し、端部S1Rに対応する外部端子S51の電位は、0Vではなく、抵抗素子R51,R1の抵抗値に応じた中間電位を示す(時刻t51〜t52)。図11の例では、地絡状態での外部端子S51の電位は、約1.6Vを示しているが、抵抗素子R51,R1の抵抗比率や抵抗素子R51のばらつき等の影響により変動する可能性がある。そのため、端部S1Rが地絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S51において適切に設定することは困難である。同様にして、端部S3Rが地絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S53において適切に設定することは困難である。つまり、電子制御システム5は、レゾルバ11の地絡故障を、RDコンバータ50を形成するチップCHP5の既存の外部端子の電位を用いて正確に検知することができないという問題があった。
図12は、電子制御システム5の天絡状態での動作を示すタイミングチャートである。図12の例では、上側のタイミングチャートにコイルL11の端部S1R,S3Rの電位が示され、下側のタイミングチャートに外部端子S51,S53の電位が示されている。なお、端部S2R,S4R及び外部端子S52,S54の電位の関係については、逆相であることを除いて基本的には端部S1R,S3R及び外部端子S51,S53の電位の関係と同様であるため、その説明を省略する。
図12に示すように、正常状態(時刻t60〜t61)では、コイルL11の端部S1R,S3Rの電位は、振幅中心電位を約2.5Vとする正弦波の形状を示している。このとき、外部端子S51,S53の電位も、振幅中心電位を約2.5Vとする正弦波の形状を示している。
その後、端部S1Rが天絡すると(時刻t61)、コイルL11の端部S1Rの電位は5Vに固定される(時刻t61〜t62)。それに対し、端部S1Rに対応する外部端子S51の電位は、5Vではなく、抵抗素子R51,R1の抵抗値に応じた中間電位を示す(時刻t61〜t62)。図12の例では、天絡状態での外部端子S51の電位は、約3.3Vを示しているが、抵抗素子R51,R1の抵抗比率や抵抗素子R51のばらつき等の影響により変動する可能性がある。そのため、端部S1Rが天絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S51において適切に設定することは困難である。同様にして、端部S3Rが天絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S53において適切に設定することは困難である。つまり、電子制御システム5は、レゾルバ11の天絡故障を、RDコンバータ50を形成するチップCHP5の既存の外部端子の電位を用いて正確に検知することができないという問題があった。
なお、仮に、端部S1R,S3Rの電位が直接供給される専用の外部端子をチップCHP5に設けた場合には、端部S1R,S3Rの短絡故障時における当該専用の外部端子の電位は0V又は5Vに固定される。そのため、端部S1R,S3Rが短絡状態であると判定するための閾値電圧を当該専用の外部端子において適切に設定することが可能である。しかしながら、この場合、チップCHP5の外部端子の数が増加してしまい回路規模が増大してしまう。
そこで、RDコンバータを形成するチップ上に設けられた既存の外部端子の電位を用いて、レゾルバ11の短絡故障の有無を正確に検知することができるように、実施の形態1にかかるRDコンバータ10及びそれを備えた電子制御システム1が見出された。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電子制御システム1の構成例を示す図である。電子制御システム1は、例えば自動車等の車両に搭載され、ロータ等の回転体(検知対象物)の回転角度を検知してその検知結果を基に所定の処理を行うとともに、RDコンバータを形成するチップ上に設けられた既存の外部端子の電位を用いて、レゾルバの短絡故障の有無を正確に検知する機能を有する。以下、具体的に説明する。
具体的には、電子制御システム1は、ロータ(不図示)の回転角度を検知するレゾルバ(検知装置)11と、レゾルバ11の検知結果をデジタル信号に変換するRDコンバータ10と、RDコンバータ10から出力されたデジタル信号に基づいて所定の処理を行うマイコン13と、を備える。電子制御システム1の構成要素のうち、RDコンバータ10以外の構成要素については、既に説明したため、以下では、主にRDコンバータ10について説明する。
RDコンバータ10は、チップCHP1上に設けられた、外部端子S1〜S4,T1〜T3と、オペアンプAP11,AP12と、帰還抵抗R13,R14と、抵抗素子R11,R12と、スイッチSW1〜SW4と、角度演算回路101と、短絡故障検知回路(異常検知回路)102と、タイミング制御回路103と、チップCHP1外に設けられた入力抵抗R1〜R4と、を備える。なお、オペアンプAP11及び抵抗素子R1,R3,R11,R13により、増幅回路15が構成される。オペアンプAP12及び抵抗素子R2,R4,R12,R14により、増幅回路16が構成される。
増幅回路15は、回転角度情報が含まれるコイルL11の受信信号を増幅する。増幅回路16は、回転角度情報が含まれるコイルL12の受信信号を増幅する。換言すると、増幅回路15は、コイルL11の両端S1R,S3Rから出力された一対の電圧信号の電位差を増幅する。増幅回路16は、コイルL12の両端S2R,S4Rから出力された一対の電圧信号の電位差を増幅する。
具体的には、チップCHP1外において、入力抵抗R1は、コイルL11の端部S1Rと外部端子S1との間に設けられている。入力抵抗R2は、コイルL12の端部S2Rと外部端子S2との間に設けられている。入力抵抗R3は、コイルL11の端部S3Rと外部端子S3との間に設けられている。入力抵抗R4は、コイルL12の端部S4Rと外部端子S4との間に設けられている。
また、チップCHP1上において、オペアンプAP11の非反転入力端子と外部端子S1との間にスイッチSW1が設けられている。オペアンプAP11の反転入力端子と外部端子S3との間にスイッチSW3が設けられている。オペアンプAP11の出力端子及び反転入力端子の間に帰還抵抗R13が設けられている。また、オペアンプAP11の非反転入力端子には、抵抗素子R11を介して、コモン電圧COMが供給されている。オペアンプAP12の非反転入力端子と外部端子S2との間にスイッチSW2が設けられている。オペアンプAP12の反転入力端子と外部端子S4との間にスイッチSW4が設けられている。オペアンプAP12の出力端子及び反転入力端子の間には、帰還抵抗R14が設けられている。また、オペアンプAP12の非反転入力端子には、抵抗素子R12を介して、コモン電圧COMが供給されている。
コモン電圧COMは、基準電圧より大きく電源電圧よりも小さな電圧レベルを示す。本例では、コモン電圧COMは、0Vの基準電圧及び5Vの電源電圧の中間電圧である2.5Vを示している。したがって、増幅回路15,16に入力される電圧信号の振幅中心電圧は、コモン電圧COMである2.5Vとなる。なお、コモン電圧COMは設計仕様等に応じて適宜変更可能である。
スイッチSW1〜SW4のオンオフは、タイミング制御回路103からの切替信号によって制御される。例えば、短絡故障の検知が行われる期間では、スイッチSW1〜SW4は何れもオフに制御され、通常動作が行われる期間では、スイッチSW1〜SW4は何れもオンに制御される。なお、図3を参照すると、短絡故障の検知は、マイコン13からの指示C1によって行われたり、周期的に行われたりする。
ここで、本実施の形態では、増幅回路15のゲインを決定する入力抵抗R1,R3及び帰還抵抗R13のうち入力抵抗R1,R3が、チップCHP1外部の基盤上に、取り換え可能な状態で設けられている。それにより、レゾルバの種類や設計仕様等に応じて増幅回路15のゲインを自由に調整することが可能になる。同様に、増幅回路16のゲインを決定する入力抵抗R2,R4及び帰還抵抗R14のうち入力抵抗R2,R4が、チップCHP1外部の基盤上に、取り換え可能な状態で設けられている。それにより、レゾルバの種類や設計仕様等に応じて増幅回路16のゲインを自由に調整することが可能になる。
また、本実施の形態では、コイルL11,L12の断線検知用に抵抗素子RH1,RH2,RL1,RL2が設けられている。
具体的には、コイルL11の一方の端部S1Rと外部端子S1との間の信号線上のノードと、電源電圧(本例では5V)が供給される電源電圧端子と、の間に抵抗素子RH1が設けられている。コイルL11の他方の端部S3Rと外部端子S3との間の信号線上のノードと、基準電圧(本例では0V)が供給される基準電圧端子と、の間に抵抗素子RL1が設けられている。コイルL12の一方の端部S2Rと外部端子S2との間の信号線上のノードと、電源電圧(本例では5V)が供給される電源電圧端子と、の間に抵抗素子RH2が設けられている。コイルL12の他方の端部S4Rと外部端子S4との間の信号線上のノードと、基準電圧(本例では0V)が供給される基準電圧端子と、の間に抵抗素子RL2が設けられている。
ここで、抵抗素子RH1,RH2,RL1,RL2は、正常状態においてコイルL11,L12の振幅中心電圧がコモン電圧COMを示すような抵抗比率、かつ、抵抗素子R1〜R4,R11〜R14よりも十分に高い抵抗値に調整されている。
角度演算回路101は、回転角度情報が含まれる増幅回路15,16の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号I1に変換して出力する。マイコン13は、デジタル信号I1に基づいて所定の処理を行う。なお、マイコン13は、チップCHP1上に設けられてもよい。
(角度演算回路101の具体的構成例)
図2は、RDコンバータ10の具体的な構成例を示す図である。
図2には、角度演算回路101の具体的な構成例が示されている。
図2に示すように、角度演算回路101は、角度偏差演算回路1011と、PI(Propotion−Integral)制御回路1012と、アキュムレートカウンタ1013と、ROM1014と、ROM1015と、を備える。
角度偏差演算回路1011は、角度演算回路101から出力されるデジタル信号I1によって表される角度φと、レゾルバ11によって検知された角度θと、の差に応じたデューティ比の制御信号を出力する。例えば、角度偏差演算回路1011は、角度φが角度θより大きい場合にはLレベルの制御信号を出力し、角度φが角度θより小さい場合にはHレベルの制御信号を出力する。したがって、角度φと角度θが一致する場合には、角度偏差演算回路1011はデューティ比が50%の制御信号を出力する。
より具体的には、角度偏差演算回路1011では、以下の式(1)が実行される。ただし、f(t)は励磁成分を示す。f(t)・cosθはコイルL11の受信信号成分を示す。f(t)・sinθはコイルL12の受信信号成分を示す。cosφは、デジタル信号I1により表される角度φに基づきROM1014から読み出された値である。sinφは、デジタル信号I1により表される角度φに基づきROM1015から読み出された値である。
f(t)・sinθ・cosφ−f(t)・cosθ・sinφ ・・・(1)
=f(t)・sin(θ−φ)
=f(t)・(θ−φ)
=f(t)・ε
その後、同期検波によって励磁成分f(t)が取り除かれ、角度偏差演算回路1011の制御信号の値はε(=θ−φ)となる。
PI制御回路1012は、所謂ローパスフィルタの役割を果たし、角度偏差演算回路1011からの制御信号の高周波成分を除去して出力する。アキュムレートカウンタ1013は、PI制御回路1012の出力信号を積分してデジタル信号I1として出力する。このデジタル信号I1によって表される角度φは、上記したように角度偏差演算回路1011にフィードバックされ、sin(θ−φ)=0となる閉ループを構成する。そのため、角度演算回路101は、θ=φとなるようなφを算出してデジタル信号I1として出力している。
図1に戻り、短絡故障検知回路102は、レゾルバ11と電源電圧側とが短絡する天絡故障が発生しているか否か、及び、レゾルバ11と基準電圧側とが短絡する地絡故障が発生しているか否か、を検知して検知結果D1を出力する。マイコン13は、検知結果D1により短絡故障が発生している判断した場合、レゾルバ11の動作を停止させる等の処理を行う。
ここで、短絡故障検知回路102は、チップCHP1の外部端子の数の増加を防ぐために、専用の外部端子の電位を用いずに、RDコンバータ10を形成するチップCHP1上に設けられた既存の外部端子S1〜S4の電位を用いて、レゾルバ11の短絡故障の有無を検知している。
さらに、短絡故障の検知が行われるモード(短絡故障検知モード)では、スイッチSW1〜SW4が何れもオフに制御される。なお、スイッチSW1〜SW4をオフにする期間は、例えば1回当たり100us程度である。それにより、短絡故障検知モードでは、コモン電圧COMが外部端子S1〜S4側に印加されなくなるため、地絡状態のコイル端部に接続される外部端子は約0Vに固定され、天絡状態のコイル端部に接続される外部端子は約5Vに固定される。そのため、コイル端部が短絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S1〜S4において適切に設定することが可能である。その結果、短絡故障検知回路102は、レゾルバ11における短絡故障を、RDコンバータ10を形成するチップCHP1の既存の外部端子S1〜S4の電位を用いて正確に検知することができる。
(タイミングチャート)
図4は、電子制御システム1の正常状態での動作を示すタイミングチャートである。図5は、電子制御システム1の地絡状態での動作を示すタイミングチャートである。図6は、電子制御システム1の天絡状態での動作を示すタイミングチャートである。図4〜図6の例では、上側のタイミングチャートにコイルL11の端部S1R,S3Rの電位が示され、下側のタイミングチャートに外部端子S1,S3の電位が示されている。なお、端部S2R,S4R及び外部端子S2,S4の電位の関係については、逆相であることを除いて基本的には端部S1R,S3R及び外部端子S1,S3の電位の関係と同様であるため、その説明を省略する。
まず、図4を参照すると、レゾルバ11に短絡故障が生じていない正常状態では、スイッチSW1〜SW4がオンする通常動作モード(時刻t10〜t11、t12〜t13)、及び、スイッチSW1〜SW4がオフする短絡故障検知モード(時刻t11〜t12)の何れの場合でも、コイルL11の端部S1R,S3Rの電位は、振幅中心電位を約2.5とする正弦波の形状を示している。このとき、外部端子S1,S3の電位も、振幅中心電位を約2.5Vとする正弦波の形状を示している。
次に、図5を参照すると、コイルL11の端部S1Rが地絡した状態では、通常動作モード(時刻t20〜t21、t22〜t23)、及び、短絡故障検知モード(時刻t21〜t22)の何れの場合でも、コイルL11の端部S1Rの電位は0Vに固定される。それに対し、端部S1Rに対応する外部端子S1の電位は、通常動作モード(時刻t20〜t21、t22〜t23)では、抵抗素子R11、R1の抵抗値に応じた中間電位を示すが、短絡故障検知モード(時刻t21〜t22)では、0Vに固定される。そのため、短絡故障検知モードでは、端部S1Rが地絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S1において適切に設定することが可能である。同様にして、短絡故障検知モードでは、端部S3Rが地絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S3において適切に設定することが可能である。そのため、電子制御システム1は、レゾルバ11の地絡故障を、RDコンバータ10を形成するチップCHP1の既存の外部端子S1,S3を用いて正確に検知することができる。
次に、図6を参照すると、コイルL11の端部S1Rが天絡した状態では、通常動作モード(時刻t30〜t31、t32〜t33)、及び、短絡故障検知モード(時刻t31〜t32)の何れの場合でも、コイルL11の端部S1Rの電位は5Vに固定される。それに対し、端部S1Rに対応する外部端子S1の電位は、通常動作モード(時刻t30〜t31、t32〜t33)では、抵抗素子R11,R1の抵抗値に応じた中間電位を示すが、短絡故障検知モード(時刻t31〜t32)では、5Vに固定される。そのため、短絡故障検知モードでは、端部S1Rが天絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S1において適切に設定することが可能である。同様にして、短絡故障検知モードでは、端部S3Rが天絡状態であると判定するための閾値電圧を外部端子S3において適切に設定することが可能である。そのため、電子制御システム1は、レゾルバ11の天絡故障を、RDコンバータ10を形成するチップCHP1の既存の外部端子S1,S3を用いて正確に検知することができる。
このように、本実施の形態にかかるRDコンバータ10及びそれを備えた電子制御システム1は、短絡故障検知モードにおいて、外部端子S1〜S4とオペアンプAP11,AP12とを切り離したうえで、外部端子S1〜S4の電位を用いてレゾルバ11の短絡故障の有無を検知している。それにより、本実施の形態にかかるRDコンバータ10及びそれを備えた電子制御システム1は、専用の外部端子の電位を用いずにレゾルバ11の短絡故障の有無を正確に検知することができるため、回路規模の増大を抑制することができる。
本実施の形態では、電源電圧が5V、基準電圧が0V、コモン電圧が2.5Vである場合を例に説明したが、これに限られず、コモン電圧が電源電圧より小さく基準電圧より大きく設定されていれば、電源電圧、基準電圧、コモン電圧は任意の値に変更可能である。これは、他の実施の形態においても同様のことが言える。
また、本実施の形態では、抵抗素子RH1,RH2,RL1,RL2がチップCHP1外部に設けられた場合を例に説明した。具体的には、抵抗素子RH1,RH2が、レゾルバ11と外部端子S1,S2との間の信号線上のノードと、電源電圧端子と、の間に設けられ、抵抗素子RL1,RL2が、レゾルバ11と外部端子S3,S4との間の信号線上のノードと、基準電圧端子と、の間に設けられる場合について説明したが、これに限られない。抵抗素子RH1,RH2,RL1,RL2は、チップCHP1内部に設けられてもよい。具体的には、抵抗素子RH1,RH2は、外部端子S1,S2とスイッチSW1,SW2との間の信号線上のノードと、電源電圧端子と、の間に設けられ、抵抗素子RL1,RL2は、外部端子S3,S4とスイッチSW3,SW4との間の信号線上のノードと、基準電圧端子と、の間に設けられてもよい。これは、他の実施の形態においても同様のことが言える。
さらに、本実施の形態では、RDコンバータに設けられた増幅回路が、検知装置の検知結果として供給された差動の電圧信号の電位差を増幅する場合を例に説明したが、これに限られない。RDコンバータに設けられた増幅回路は、検知装置の検知結果として供給されたシングルエンドの電圧信号を増幅する構成に適宜変更可能である。これは、他の実施の形態においても同様のことが言える。
(RDコンバータ10の変形例)
続いて、RDコンバータ10の変形例について、図7を用いて説明する。
図7は、RDコンバータ10の変形例をRDコンバータ10aとして示す図である。
図7に示すように、RDコンバータ10aは、RDコンバータ10と比較して、角度演算回路101に代えて角度演算回路101aを備える。角度演算回路101aは、角度演算回路101と比較して、クロック生成回路1016及び選択回路1017をさらに備える。RDコンバータ10aのその他の構成については、RDコンバータ10の場合と同様であるため、その説明を省略する。
クロック生成回路1016は、デューティ比が50%のクロック信号を制御信号として出力する。
選択回路1017は、タイミング制御回路103からの切替信号に基づいて、角度偏差演算回路1011の出力信号、及び、クロック生成回路1016の出力信号の何れかを選択して出力する。例えば、選択回路1017は、通常動作モードの場合、角度偏差演算回路1011の出力信号を選択して出力し、短絡故障検知モードの場合、クロック生成回路1016の出力信号を選択して出力する。
ここで、短絡故障検知モードの場合において、デューティ比が50%のクロック信号が制御信号として用いられることにより、角度演算回路101aは、角度φと角度θが一致しているときの状態と同様の状態と判断するため、デジタル信号I1の値を短絡故障検知モードに移行する直前の値に維持する。それにより、短絡故障検知モードにおいて、角度演算回路101aから出力されるデジタル信号I1の値が意図せず大きく変動したり、角度演算回路101aによる角度の追従ができなくなったりすることを防止することができる。
なお、クロック生成回路1016のクロック信号の周期は、デジタル信号I1が安定した状態を維持することができる程度に十分に短いものである必要がある。具体的には、クロック信号の周期は例えば2us程度である。
<実施の形態2>
図8は、実施の形態2にかかる電子制御システム2の構成例を示す図である。
電子制御システム2は、ホールセンサを用いた角度センスシステムである。
図8に示すように、電子制御システム2は、ホールセンサ(検知装置)21と、ADコンバータ20と、マイコン13と、を備える。ホールセンサ21は、回転体の回転角度に応じた振幅の電圧信号を端部S1R,S3Rから出力する。ADコンバータ20は、ホールセンサ21の検知結果(アナログ信号)をデジタル信号I1に変換して出力するとともに、ホールセンサ21の短絡故障の有無を検知して検知結果D1を出力する。マイコン13は、ADコンバータ20から出力された角度情報を含むデジタル信号I1に基づいて所定の処理を行う。また、マイコン13は、ADコンバータ20によりホールセンサ21の短絡故障が検知された場合には、ホールセンサ21の動作を停止させるなどの処理を行う。
ADコンバータ20は、RDコンバータ10の構成要素のうち、増幅回路15、角度演算回路101、短絡故障検知回路102、タイミング制御回路103、及び、スイッチSW1,SW3を備える。なお、チップCHP2は、チップCHP1に対応する。ADコンバータ20の動作については、RDコンバータ10における増幅回路15、角度演算回路101、短絡故障検知回路102、タイミング制御回路103、及び、スイッチSW1,SW3の動作と基本的には同じであるため、その説明を省略する。
本実施の形態にかかるADコンバータ20及びそれを備えた電子制御システム2は、短絡故障検知モードにおいて、外部端子S1,S3とオペアンプAP11とを切り離したうえで、外部端子S1,S3の電位を用いてホールセンサ21の短絡故障の有無を検知している。それにより、本実施の形態にかかるADコンバータ20及びそれを備えた電子制御システム2は、専用の外部端子の電位を用いずにホールセンサ21の短絡故障の有無を正確に検知することができるため、回路規模の増大を抑制することができる。
<実施の形態3>
図9は、実施の形態3にかかる電子制御システム3の構成例を示す図である。
電子制御システム3は、半導体圧力センサを用いた圧力検知システムである。
図9に示すように、電子制御システム3は、感圧抵抗素子を含む複数の抵抗素子からなるブリッジ回路32と、ブリッジ回路32に定電流を流す定電流源31と、ADコンバータ30と、マイコン13と、を備える。定電流源31及びブリッジ回路32により半導体圧力センサ(検知装置)が構成される。
半導体圧力センサに圧力が加えられると、その圧力に応じてブリッジ回路32内の感圧抵抗素子の抵抗値が変化する。それにより、ブリッジ回路32は、圧力に応じたレベルの電圧信号を端部S1R,S3Rから出力する。ADコンバータ30は、半導体圧力センサの検知結果(アナログ信号)をデジタル信号I1に変換して出力するとともに、半導体圧力センサの短絡故障の有無を検知して検知結果D1を出力する。マイコン13は、ADコンバータ30から出力された圧力情報を含むデジタル信号I1に基づいて所定の処理を行う。また、マイコン13は、ADコンバータ30により半導体圧力センサの短絡故障が検知された場合には、半導体圧力センサの動作を停止させるなどの処理を行う。
ADコンバータ30は、RDコンバータ10の構成要素のうち、増幅回路15、短絡故障検知回路102、タイミング制御回路103、及び、スイッチSW1,SW3を備え、角度演算回路101に代えてADコンバータ301を備える。ADコンバータ301は、増幅回路15の出力信号(半導体圧力センサからの電圧信号を増幅した信号)をデジタル信号I1に変換して出力する。なお、チップCHP3は、チップCHP1に対応する。ADコンバータ30のその他の動作については、RDコンバータ10における増幅回路15、短絡故障検知回路102、タイミング制御回路103、及び、スイッチSW1,SW3の動作と基本的には同じであるため、その説明を省略する。
本実施の形態にかかるADコンバータ30及びそれを備えた電子制御システム3は、短絡故障検知モードにおいて、外部端子S1,S3とオペアンプAP11とを切り離したうえで、外部端子S1,S3の電位を用いて半導体圧力センサの短絡故障の有無を検知している。それにより、本実施の形態にかかるADコンバータ30及びそれを備えた電子制御システム3は、専用の外部端子の電位を用いずに半導体圧力センサの短絡故障の有無を正確に検知することができるため、回路規模の増大を抑制することができる。
以上のように、上記実施の形態1〜3にかかるコンバータ及びそれを備えた電子制御システムは、短絡故障検知モードにおいて、コンバータを形成するチップ上に設けられた既存の外部端子とオペアンプとを切り離したうえで、当該既存の外部端子を用いて検知装置の短絡故障の有無を検知している。それにより、上記実施の形態1〜3にかかるコンバータ及びそれを備えた電子制御システムは、専用の外部端子の電位を用いずに検知装置の短絡故障の有無を正確に検知することができるため、回路規模の増大を抑制することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。