第1の実施形態に係るロボットハンド10を、図1乃至図5を用いて説明する。図1は、ロボットハンド10を示す斜視図である。図2は、ロボットハンド10の構成を示す説明図である。図3乃至図5は、ロボットハンド10の動作を説明する説明図である。
ロボットハンド10は、複数自由度を有するロボットアームに連結可能に構成されている。また、ロボットハンド10は、物品を保持可能に構成されている。図1乃至図3に示すように、ロボットハンド10は、ロボットハンド本体20、及び把持装置70を有している。ロボットハンド本体20は、物品を吸着可能に構成されている。ロボットハンド本体20は、フレーム30、吸着部40、吸着部40を回動する回動装置50、及び吸着部40に連結された管部材60と、を有している。
フレーム30は、例えば、一方向に長い板状に形成されている。フレーム30の一端部には、その幅方向内側に、収容部31が形成されている。収容部31は、フレーム30の長手方向に一端に開口している。
吸着部40は、フレーム30に回動可能に連結された支持部41、及び支持部41に固定された吸着部材42を有している。支持部41は、例えば筒状に形成されている。支持部41は、フレーム30の収容部31内に配置されている。支持部41は、フレーム30の幅方向に平行な軸部材49により回動可能にフレーム30に連結されている。
吸着部材42は、蛇腹の筒状に形成されている。吸着部材42は、樹脂等の可撓性を有する材料から形成されており、軸方向に伸縮可能である。吸着部材42は、支持部41内に配置されている。吸着部材42は、例えば締まりばねや接着等の固定手段により、支持部41内に固定されている。
吸着部材42は、支持部41が回動することにより、吸着部材42の軸方向がフレーム30の長手方向に沿う位置P1、及び吸着部材42の軸方向がフレーム30の長手方向に直交する位置P2の間で回動可能となる。
回動装置50は、フレーム30に固定されており、吸着部40を、軸部材49回りに回動可能に構成されている。図2に示すように、回動装置50は、電動モータ51、及び電動モータ51の出力軸の回動を吸着部40に伝達する伝達部52を有している。電動モータ51は、出力軸の軸線がフレーム30の長手方向に沿う姿勢で、フレーム30に固定されている。
伝達部52は、例えば、電動モータ51の出力軸に固定された第1の傘歯車53、第1の傘歯車53と噛み合う第2の傘歯車54、第2の傘歯車54と同軸に配置され、傘歯車に固定された第1のプーリ55、吸着部40の支持部41に固定され第2のプーリ56、並びに、第1のプーリ55及び第2のプーリ56に回し掛けられた伝達ベルト57を有している。
管部材60は、吸着部材42の一端開口に接続されている。管部材60は、例えば、ホース等の可撓性を有する管部材である。管部材60は、ポンプ等の負圧を発生する負圧発生装置に接続されており、負圧発生装置が発生した負圧を、吸着部材42内に作用させる。
把持装置70は、第1の板部材71、第1の板部材71をフレームに連結する一対の平行リンク72、及び一対の平行リンク72を駆動する駆動装置73を有している。第1の板部材71は、平板状に形成されている。一対の平行リンク72は、第1の板部材71を吸着部40側の位置及びフレーム30側の位置の間で移動可能にフレーム30に連結するリンク機構の一例である。一対の平行リンク72の一端部は、吸着部40の軸部材49に平行な軸部材74が固定されている。軸部材74は、フレーム30の幅方向両端に回動可能に連結されている。一対の平行リンク72の他端部には、軸部材74と平行な軸部材75が回転可能に設けられている。軸部材75は、第1の板部材71の幅方向両端部に回動可能に連結されている。一対の平行リンク72は、第1の板部材71を、少なくとも、位置P2にある吸着部材42と、この吸着部材42の軸方向に対向する位置まで移動可能に形成されている。
駆動装置73は、フレーム30に固定された電動モータ76、及び電動モータ76の出力軸の回転を平行リンク72に伝達し、平行リンク72を駆動する伝達部77を有している。
電動モータ76は、その出力軸の軸方向がフレーム30の長手方向に平行となる姿勢で、フレーム30の電動モータ51が固定される面の反対側の面に固定されている。伝達部77は、電動モータ76の出力軸に固定された傘歯車78、軸部材74と同軸に配置され、軸部材74に固定された傘歯車79を有している。傘歯車78及び傘歯車79は、互いに噛み合っている。これにより、第1の板部材71は、本実施形態では、第1の板部材71のフレーム30側の面がフレーム30の第1の板部材71側の面と平行な姿勢を保ったまま、移動される。
次に、ロボットハンド10の動作の一例を説明する。まず、吸着部材42により物品を吸着して保持する動作を説明する。まず、ロボットハンド10の動作を制御する制御装置、またはロボットハンドを有するロボットを制御する制御装置等により、吸着部材42の姿勢が、物品の吸着に適した姿勢に調整される。
具体的には、電動モータ51が駆動される。電動モータ51が駆動されることによる電動モータ51の出力軸の回動は、伝達部52を介して吸着部40の支持部41に伝達される。電動モータ51は、吸着部材42の姿勢が、吸着に適した姿勢となるように、その駆動が制御される。
吸着部材42の姿勢の調整が完了すると、ロボットアームが駆動されて吸着部材42の先端が物品に当接される。吸着部材42が物品に当接されると、負圧発生装置が駆動される。負圧発生装置により発生した負圧は、管部材60を通して吸着部材42内に作用する。吸着部材42は、この負圧により物品Oを吸着し、保持する。なお、吸着部材42が物品Oに当接する前に負圧装置が起動されてもよい。
次に、吸着部材42により吸着した物品を第1の板部材71により保持する動作を説明する。上述のしたように吸着部材42により物品を吸着した後、吸着部40を回動し、吸着部材42を位置P2に移動する。吸着部材42が位置P2に移動されると、制御装置により、把持装置70の電動モータ76が駆動され、第1の板部材71が吸着部材42との間に物品Oを挟持する位置まで移動される。このように、物品Oは、吸着部材42による吸着により、保持される。
次に、吸着部材42により物品Oを吸着することなく、吸着部40及び第1の板部材71の間に物品Oを挟持する動作を説明する。図5に示すように、制御装置により回動装置50が駆動されて、吸着部材42が位置P1に移動される。この状態で、駆動装置73が、第1の板部材71を、吸着部40との間に物品Oを挟持する位置まで移動する。この動作により、ロボットハンド10は、吸着部材42により物品Oを吸着することなく、吸着部40及び第1の板部材71の間に物品Oを挟持することにより保持する。
次に、吸着部材42により物品を吸着することなく、吸着部40及び第1の板部材71の間に物品を挟持する動作の別の一例を説明する。図6に示すように、物品Oが有底筒状の形状を有している場合では、まず、回動装置50の電動モータ51が駆動されて、吸着部材42の一部が物品O内に配置されて物品Oの開口縁部に当接する位置まで支持部41が回動される。支持部41または吸着部材42が物品O開口縁部に当接すると、次に、把持装置70の電動モータ76が駆動されて、第1の板部材71が、その先端が物品に当接する位置まで移動される。第1の板部材71の先端が物品Oに当接することにより、吸着部40及び第1の板部材71間に物品Oが挟持される。
このように構成されたロボットハンド10では、吸着により物品Oを保持する吸着部40、及び吸着部40との間に物品Oを挟持する第1の板部材71を有することにより、吸着部40のみによる保持、及び、吸着部40と第1の板部材71とによる保持を、物品Oの形状により使い分けることができる。
例えば、物品Oが比較的軽い場合は、吸着部40のみによる吸着を選択し、物品Oが比較的重い場合には、吸着部40及び第1の板部材71による保持を選択することができる。吸着部40による吸着のみによる保持であっても、物品の下方に第1の板部材71を配置することにより、万が一、吸着部材42から物品Oが外れても、外れた物品が第1の板部材71により支持されるので、落下することを防止できる。
さらに、吸着部40及び第1の板部材71による挟持であっても、物品Oの形状により、適切な保持を選択することができる。具体的には、物品Oが比較的大きい場合には、吸着部材42による吸着はせずに、位置P1に配置された吸着部40、及び第1の板部材71間に物品Oを挟持する保持が選択される。物品Oが筒形状である場合には、吸着部40を物品Oの開口縁に当接させ、第1の板部材71の先端を物品Oに当接させることで物品を挟持する保持が選択される。
このように、物品に応じて適切な保持方法を選択することができるので、物品が落下することを防止できる。
さらに、把持装置70は、平行リンク72により第1の板部材71を移動する構造であるので、第1の板部材71が使用されない状態では第1の板部材71をフレーム30側に移動することにより把持装置70をコンパクトにすることができる。
これらのことより、本実施形態のロボットハンド10は、大型化を防止しつつ、物品Oの落下を防止することが可能となる。
次に、第2の実施形態に係るロボットハンド10Aを、図7乃至図10を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
ロボットハンド10Aは、ロボットハンド本体20A及び把持装置70を有している(図9に示す)。ロボットハンド本体20Aは、物品Oを吸着可能に構成されている。ロボットハンド本体20Aは、具体的には、フレーム30、吸着部40A、回動装置50、及び管部材60を有している。
図7は、吸着部40Aの構成を示す説明図である。図7に示すように、吸着部40Aは、支持部41、吸着部材42、一対の収容部材43、及びそれぞれ1つずつ収容部材43内に配置された一対の吸着部用板部材44を有している。
収容部材43は、支持部41の吸着部材42を挟んだ両側の位置に1つずつ固定されている。収容部材43は、例えば外観が直方体状に形成されている。収容部材43は、内部に吸着部用板部材44を吸着部材42の軸方向に移動可能に収容する収容部が形成されている。この収容部は、吸着部材42の軸方向の一端に、開口している。収容部材43は、本実施形態では、支持部41において第1の板部材71側、及びこれと反対側に1つずつ配置されている。
吸着部用板部材44は、例えば平面矩形の平板状に形成されている。吸着部用板部材44は、その一部が吸着部材42の側方に配置される位置P3、及び位置P3から収容部材43内に移動した位置P4の間で移動可能に形成されている。具体的には、吸着部用板部材44は、収容部材43内に入り込む方向、及び収容部材43から出る方向に移動可能に、収容部材43内収容されている。
吸着部用板部材44及び収容部材43の少なくとも一方には、吸着部用板部材44が位置P3を越えて収容部材43から出る方向に移動することを防止する規制構造を有している。この規制構造は、吸着部用板部材44が収容部材43から抜け出ることを防止する機能も有する。この規制構造は、例えば、吸着部用板部材44及び収容部材43のそれぞれに形成され、吸着部用板部材44が収容部材43から出る方向に互いに係合する係合部である。
また、吸着部用板部材44及び収容部材43の少なくとも一方には、吸着部用板部材44を位置P4から位置P3に向かって付勢し、吸着部用板部材44を位置P3に位置決めする付勢構造が設けられている。付勢構造は、例えば、吸着部用板部材44と収容部材の内面の間に配置されたコイルばねである。
図8は、吸着部40Aの動作を示す説明図である。吸着部40Aは、図8に示すように、吸着部材42により物品を吸着する場合では、吸着部材42内に作用する負圧により吸着部材42が軸方向に圧縮されると、吸着部用板部材44は吸着部材42の軸方向の圧縮に合わせて移動する。すなわち、吸着部用板部材44は、収容部材43内に退避される。この為、吸着部用板部材44は、吸着部材42による物品Oの吸着を阻害しない。
このように構成されたロボットハンド10Aでは、第1の実施形態と同様の効果が得られる。図9は、ロボットハンド10Aの動作を示す説明図である。さらに、図9に示ように、吸着部材42により物品Oを吸着しないで吸着部40及び第1の板部材71間に物品Oを挟持する場合では、物品Oは、吸着部用板部材44及び第1の板部材71の間に挟持できる。このように、吸着部材42よりも硬い部材である吸着部用板部材44、及び第1の板部材71間に物品Oを挟持できることにより、物品Oを保持した状態を安定して保つことができる。
図10は、ロボットハンド10Aの動作を示す説明図である。さらに、図10に示すように、筒状の物品Oを保持する場合では、物品Oの開口縁部を吸着部材42及び吸着部用板部材44の間に配置し、第1の板部材71の先端を物品Oに当接することにより、吸着部40及び第1の板部材71間に物品Oを挟持することができるので、物品Oを保持した状態が安定して保つことができる。
次に、第3の実施形態に係るロボットハンド10Bを、図11乃至図13を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、ロボットハンド10Bの構成を示す説明図である。図11に示すように、ロボットハンド10Bは、ロボットハンド本体20及び把持装置70Aを有している。把持装置70Aは、第1の板部材71、平行リンク72、第1の板部材71に対してスライド可能に設けられた第2の板部材80、及び第2の板部材80を駆動する駆動装置81を有している。
第2の板部材80は、第1の板部材71に、第1の板部材71に対して移動可能に支持されている。具体的には、第2の板部材80は、第1の板部材71に平行となる姿勢で、第1の板部材71に対して突出する位置P5、及び位置P5から第1の板部材71側に移動した位置P6の間で移動可能に支持されている。図11は、第2の板部材80が位置P5にある状態を示している。図12は、ロボットハンド10Bの動作を示す説明図である。図12は、第2の板部材80が位置P6にある状態を示している。なお、第2の板部材80は、第1の板部材71に設けられた溝内に移動可能に配置されてもよい。
駆動装置81は、第2の板部材80を、第1の板部材71に対して位置P5及びP6の間で移動可能に構成されている。駆動装置81は、例えば、電動モータ、及び電動モータの出力軸の回転を第2の板部材80の移動に変換する伝達装置を有している。または、駆動装置81は、ソレノイドであってもよい。
次に、ロボットハンド10Bの動作を説明する。図11に示すように、吸着部材42により吸着された物品Oを、吸着部材42及び把持装置70により挟持する場合では、第2の板部材80を位置P5に移動することにより、物品Oを吸着部材42及び第2の板部材80の間で挟持する。
図12に示すように、吸着部材42による吸着のみにより物品Oを保持可能な場合では、第2の板部材80は、位置P6に移動される。また、吸着部材42の吸着のみにより物品Oを保持する場合では、図13に示すように第2の板部材80を位置P5に移動することにより、第2の板部材80を物品Oの下方に配置してもよい。図13は、ロボットハンド10Bの動作を示す説明図である。
このように、本実施形態のロボットハンド10Bは、第1の実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。すなわち、物品Oが比較的大きい場合でも、吸着部材42及び第2の板部材80の間で物品Oを挟持できるので、物品Oの落下を防止できる。
さらに、比較的大きい物品Oを吸着部材42の吸着のみにより保持する場合であっても、第2の板部材80を物品Oの下方に配置することができる。この為、物品Oが万が一吸着部材42から外れた場合であっても、第2の板部材80により物品Oを受けることができるので、物品の落下を防止できる。
次に、第4の実施形態に係るロボットハンド10Cを、図14及び図15を用いて説明する。なお、第3の実施形態と同様の機能を有する構成は、第3の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図14は、ロボットハンド10Cの構成を示す説明図である。図14に示すように、ロボットハンド10Cは、ロボットハンド本体20、把持装置70A、管部材60内の圧力を検出する圧力センサ90、及び圧力センサ90の検出結果に基づいてロボットハンド10Cの動作を制御する制御装置100を有している。
圧力センサ90は、管部材60内の圧力を検出可能に構成されている。圧力センサ90は、検出結果を制御装置100に送信する。制御装置100は、圧力センサ90の検出結果に基づいて、把持装置70Aを用いるか否かを判断可能に構成されている。制御装置100は、具体的には、把持装置70Aを用いるか否かの判断に用いられる閾値を有している。
圧力センサ90の検出結果がこの閾値以下であると、負圧発生装置による負圧が、物品Oに正常に作用していると判断される。すなわち、管部材60内の圧力が閾値より大きい場合は、物品Oが吸着部材42から外れる可能性がある。
例えば、物品Oの表面がでこぼこしており、それゆえ、吸着部材42の開口と物品Oの表面との間に隙間があると、この隙間により吸着部材42の外部より周囲の空気が入り込む為、吸着部材42内の圧力すなわち管部材60内の圧力は、低下しにくくなる。この状態では、管部材60内の圧力が閾値より大きくなる可能性がある。また、劣化などにより吸着部材42の周壁部に内外を連通するひびが形成されている場合や、吸着部材42及び管部材60の接続部に隙間がある場合等では、同様に、管部材60内の圧力が閾値よりも高くなる可能性がある。
図15は、制御装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図15に示すように、制御装置100は、まず、第1の実施形態でも説明したように、物品Oに吸着部材42の先端を当接させた後に、負圧発生装置を起動し、吸着部材42により物品Oを吸着する(ステップST1)。なお、負圧発生装置が駆動された状態で、吸着部材42の先端が物品Oに当接されてもよい。吸着部材42が物品Oに吸着されたか否かの判断には、例えばセンサが用いられてもよい。制御装置100は、このセンサの検出結果により吸着されたか否かを判断可能である。
吸着部材42により物品Oが吸着されると、次に、制御装置100は、圧力センサ90の検出結果と閾値とを比較する(ステップST2)。制御装置100は、比較の結果、圧力センサ90の検出結果が閾値以下であると判断すると(ステップST2のYes)、吸着部40による吸着のみで物品Oを保持可能であると判断し、把持装置70Aを駆動しない(ステップST5)。
または、制御装置100は、圧力センサ90の検出結果が閾値より大きいと判断すると(ステップST2のNo)、把持装置70Aを駆動し、図14に示すように、第1の板部材71を位置P3に移動する。さらに、制御装置100は、駆動装置81を駆動して、第2の板部材80を位置P5に移動する(ステップST3)。
制御装置100は、把持装置70Aの駆動が不要と判断すると(ステップST5)、または、把持装置70Aを駆動し、第1の板部材71を位置P3に移動し、第2の板部材80を位置P5に移動すると(ステップST3)、ロボットハンド10Cが連結されたロボットアームを駆動し、物品Oを移動する(ステップST4)。
本実施形態では、第3の実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。すなわち、把持装置70Aの駆動の有無を判断することにより、物品に適した保持手段を選択することができる。
なお、本実施形態では、圧力センサ90の検出結果に基づいて把持装置70Aの駆動の有無を判断する制御部として、ロボットハンド10Cの駆動を制御する制御装置100が用いられた。そして、制御装置100は、ロボットアームの動作も制御するものである。このように、圧力センサ90の検出結果に基づいて把持装置70Aの駆動の有無を判断する制御部は、ロボットハンド10C、及びロボットアームを有するロボットの制御装置100であってもよいし、または、ロボットハンド10Cの駆動のみを制御する制御装置を備える場合には、この制御装置であってもよい。
次に、第5の実施形態に係るロボットハンド10Dを、図16及び図17を用いて説明する。なお、第3の実施形態と同様の機能を有する構成は、第3の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図16は、ロボットハンド10Dを示す側面図である。図16に示すように、ロボットハンド10Dは、ロボットハンド本体20、把持装置70A、及び移動装置110を有している。
移動装置110は、フレーム30及びロボットアーム120(図16及び図17に一部示す)に連結されており、伸縮することにより、フレーム30をロボットアーム120に対して直線方向に移動可能に構成されている。移動装置110は、本実施形態では、フレーム30を、フレーム30の長手方向に平行な方向に移動可能に構成されている。図16は、移動装置110が収縮した状態を示している。図17は、移動装置110が伸長した状態を示すロボットハンド10Dの側面図である。
移動装置110は、例えば、ボールねじ装置である。移動装置110は、具体的には、ロボットアーム120に固定されたケース111、ケース111内に配置されたねじ部材112、ケース111内に配置され、ねじ部材112を回転する電動モータ114、ねじ部材112の回転よりケース111に対して進退可能に形成され、その端部がフレーム30に固定された移動装置ロッド115を有している。
本実施形態では、第3の実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。すなわち、移動装置110によりフレーム30を移動できることにより、ロボットアーム120が侵入できない狭い空間内にも、ロボットハンド10Dを進入させることが可能となる。
なお、移動装置110は、ボールねじを用いた移動装置に限定されない。他の例として、図18乃至図22に示す他段階伸縮装置を有する移動装置110Aが用いられてもよい。図18は、移動装置110Aを示す平面図である。図19は、移動装置110Aが伸張した状態のロボットハンド10Dを示す平面図である。図20は、移動装置110Aの構成を示す説明図である。図21及び図22は、移動装置110Aの動作を示す説明図である。
移動装置110Aは、図20に示すように、ロボットアームに固定され、かつ、フレーム30が移動可能に連結されたベース121、及びフレーム30を移動する駆動装置122を有している。ベース121は、複数であってもよい。ベース121が複数の場合、これらベース121どうしが、互いに移動可能に連結され、1つのベース121がフレーム30に、フレーム30の長手方向に移動可能に連結される。
本実施形態では、ベース121が2つ用いられる例を説明する。ベース121として、第1のベース121a、及び第2のベース121bが用いられる。ベース121a、121bは、例えば一方向に長い板状に形成されている。ベース121a,121b、及びフレーム30は、長手方向を平行とする姿勢で、離間して配置されている。
第1のベース121aは、ロボットアームに固定される。第2のベース121bは、フレーム30に移動可能に連結されている。
駆動装置122は、電動モータ等の駆動部126、第1のベース121aに固定され、駆動部126により回転される駆動プーリ123a、第1のベース121aに回転自由に支持された第1のフリープーリ123b、及び、プーリ123a,123bに回し掛けられ、駆動プーリ123aの回転を第1のフリープーリ123bに伝達する第1のベルト124aを有している。第1のベルト124aは、第2のベース121bに固定されている。
また、駆動装置122は、第2のベース121bに回転自由に支持された第2のフリープーリ123c及び第3のフリープーリ123d、並びに、プーリ123c,123dに回し掛けられる第2のベルト124bを有している。
第2のベルト124bは、フレーム30に固定されている。なお、第2のベルト124bは、直接、フレーム30に固定されてもよいし、または、別の連結部材127を介して、間接的にフレーム30に固定されてもよい。図19では、第2のベルト124bは、連結部材127を介してフレーム30に固定されている状態を示している。第2のベルト124bは、固定部材125により、第1のベース121aに固定されている。固定部材125は、第1のベース121aに対する第2のベース121bの移動を規制しない。
このように構成された移動装置110Aでは、駆動プーリ123aが回転されると、第1のベルト124が移動することにより、第2のベース121bが、第1のベース121aに対して移動する。第2のベース121bが第1のベース121aに対して移動すると、固定部材125の固定により、第2のベルト124bが移動する。第2のベルト124bが移動することにより、フレーム30が移動される。
図20は、移動装置110Aが最小に縮小した状態を示している。図22は、移動装置110Aが最大に伸長した状態を示している。図21は、縮小状態から最大伸長状態への伸長している途中の状態を示している。
次に、第6の実施形態に係るロボットハンド10Eを、図23乃至図28を用いて説明する。なお、第5の実施形態と同様の機能を有する構成は、第5の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図23は、ロボットハンド10Eの構成を示す説明図である。図23に示すよう、ロボットハンド10Eは、ロボットハンド本体20、把持装置70A、移動装置110、ロボットハンド本体20のいずれかの部分に設けられたターゲット130、ターゲット130及び吸着部材42の近傍を撮影可能なカメラ140、吸着部40に設けられた手先センサ150、及び誤差吸収変位装置160を有している。
ターゲット130は、例えば把持装置70Aの第1の板部材71に設けられている。ターゲット130は、目印となるものである。カメラ140は、移動装置110に固定されており、ターゲット130を撮影可能な位置に配置されている。カメラ140は、撮影した画像を制御装置100に送信する。
図24は、ロボットハンド本体20及び把持装置70Aの構成を示す説明図である。図27に示すように、手先センサ150は、吸着部材42の近傍に固定されている。本実施形態では、手先センサ150は、支持部41に固定されている。手先センサ150は、この手先センサ150から物品Oまでの距離、及び物品Oの位置を検出可能に構成されている。手先センサ150は、検出結果を制御装置100に送信する。
図25及び図26は、誤差吸収変位装置160の動作を示す説明図である。図25及び図26では、制御装置100、ターゲット130、カメラ140、及び手先センサ150は省略している。
図25及び図26に示すように、誤差吸収変位装置160は、フレーム30及び移動装置110に設けられており、吸着部材42が物品Oに当接するなどして移動装置110に収縮方向に荷重が入力されることにより移動装置110が収縮する際に移動装置110と一体に収縮可能に形成されている。図26は、誤差吸収変位装置160が、移動装置110の収縮に伴って収縮した状態を示している。
また、誤差吸収変位装置160は、移動装置110が伸長した状態では、ばね等で伸長状態となる。また、誤差吸収変位装置160は、収縮したことを検出可能に形成されており、検出結果を制御装置100送信する。
制御装置100は、カメラ140の撮影画像から、移動装置110の伸長時のたわみ量を検出可能に構成されている。制御装置100は、具体的には、カメラ140の撮影画像内のターゲット130の位置により、たわみ量を検出する。図27は、移動装置110が伸長した状態のロボットハンド10Dを示す説明図である。図27に示すように、移動装置110は、伸長することにより、たわむ。
また、制御装置100は、手先センサ150の検出結果に基づいて、吸着部材42から物品Oまでの距離、及び物品Oの位置を検出可能に構成されている。また、制御装置100は、誤差吸収変位装置160の検出結果に基づいて、吸着部材42が物品Oに接触した否かを判断可能に構成されている。
また、制御装置100は、上述のように検出または判断した、移動装置110のたわみ量、吸着部材42から物品Oまでの距離、物品Oの位置、及び吸着部材42が物品Oに当接したとの判断により、吸着部材42の位置を補正可能に構成されている。
図28は、制御装置100の、吸着部材42の位置を補正する動作の一例を示すフローチャートである。図28に示すように、制御装置100は、まず、カメラ140の撮影画像に基づいて、物品Oの位置を検出し、この位置を吸着部材42の目標位置とする(ステップST11)。
目標位置が設定されると、次に、制御装置100は、ロボットアーム120及び移動装置110を駆動して、吸着部材42を目標位置に近づける(ステップST12)。次に制御装置100は、カメラ140の撮影画像に基づいて、ターゲットの位置から移動装置110のたわみの有無を検出する(ステップST13、及びステップST14)。
制御装置100は、移動装置110にたわみがあると判断(ステップST14のYes)すると、このたわみ量を検出して目標位置をたわみの分補正する(ステップST15)。
制御装置100は、目標位置の補正が完了すると、またはたわみがないと判断すると(ステップST14のNO)、手先センサ150の検出結果に基づいて、物品Oの位置を検出する(ステップST16)。
制御装置100は、手先センサ150の検出結果に基づいて物品Oの位置を検出すると、次に、目標位置が、手先センサ150の検出結果に基づいて検出した物品Oの位置からずれているか否かを判断する(ステップST17)。
目標位置が、手先センサ150の検出結果に基づいて検出した物品Oの位置からずれていると判断すると(ステップST17のYes)、目標位置を補正する(ステップST18)。具体的には、制御装置100は、手先センサ150の検出結果により検出された物品Oの位置を目標位置に置き換える(ステップST18)。
制御装置100は、目標位置の補正が完了すると、または、目標位置が手先センサ150の検出結果より検出された物品Oの位置からずれていないと判断すると(ステップST17のNo)、誤差吸収変位装置160の検出結果に基づいて、吸着部材42が物品Oに接触したか否かを判断する(ステップST19及びステップST20)。
制御装置100は、誤差吸収変位装置160が収縮していると、吸着部材42が物品に当接したと判断する(ステップST20のYes)。そして、制御装置100は、吸着部材42が目標位置に到達したと判断し、ロボットアーム120の駆動を停止する。(ステップST21)。この状態では、吸着部材42が物品Oに当接する、すなわち、吸着部材42が目標位置に到達している(ステップST22)。なお、制御装置100が、誤差吸収変位装置160の収縮を検出していない場合(ステップST20のNo)では、ロボットアーム120の駆動が停止されることなく、吸着部材42が物品Oに到達することとなる(ステップST22)。
本実施形態のロボットハンド10Dは、第6の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、以下の効果が得られる。すなわち、ロボットハンド10Dがターゲット130、カメラ140、手先センサ150、及び誤差吸収変位装置160を有することにより、これらの検出結果に基づいて、吸着部材42を、より正確に物品Oまで移動することができる。
さらに、誤差吸収変位装置160が縮小することにより、吸着部材42及び物品Oの当接の際の衝撃が吸収される。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、吸着により物品Oを保持する吸着部40、及び吸着部40との間に物品Oを挟持する第1の板部材71を有することにより、ロボットハンド10,10A,10B,10C,10D,10Eは、大型化を防止しつつ、物品Oの落下を防止することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
フレームと、
前記フレームに設けられた吸着部と、
第1の板部材、並びに、前記第1の板部材を前記吸着部側の位置及び前記フレーム側の位置の間で移動可能に前記フレームに連結するリンク機構を具備する把持装置と、
を具備するロボットハンド。
[2]
前記吸着部は、
前記フレームに支持された支持部と、
前記支持部に支持されて縮小可能な筒状に形成された吸着部材と、
前記支持部の前記吸着部材を挟んだ両側に配置された収容部材と、
前記収容部材内に前記吸着部材の軸方向に移動可能に配置された吸着部用板部材と、
を具備する[1]に記載のロボットハンド。
[3]
前記把持装置は、前記第1の板部材に移動可能に支持された第2の板部材を具備する[1]に記載のロボットハンド。
[4]
前記吸着部に連結された管部材と、
前記管部材内の圧力を検出する圧力センサと、
を具備する[1]に記載のロボットハンド。
[5]
前記フレームに連結され、前記フレームを移動する移動装置を具備する[1]に記載のロボットハンド。
[6]
前記移動装置に設けられ、前記フレームまたは前記把持装置に設けられたターゲットを撮影するカメラ
を具備する[5]に記載のロボットハンド。
[7]
前記フレーム及び前記移動装置に設けられ、前記移動装置の縮小に合わせて縮小する誤差吸収変位装置を具備する[6]に記載のロボットハンド。
[8]
前記吸着部に設けられ、物品までの距離及び物品の位置を検出する手先センサを具備する[1]に記載のロボットハンド。