JP6790795B2 - シート状物 - Google Patents

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Description

本発明は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れたシート状物に関するものである。
極細繊維と高分子弾性体からなるスエード調の人工皮革は、耐久性や均一性などの点において、天然皮革にはない優れた性質を有している。このような特徴を活かし、スエード調の人工皮革は、衣料、家具および自動車用内装材など、幅広い用途に使用されてきた。また近年では、さらなる多様化のニーズが生まれており、スエード調以外の品位を有する人工皮革の開発が望まれている。
それらの例としては、銀付調やヌバック調などの人工皮革が挙げられる。天然のヌバック皮革はスエード皮革とは異なり、皮革の銀面に起毛処理を施して得られるものである。このため、銀付革のような表面の緻密さとフラットさを有しながら、ウェットな触感を有するという特徴がある。しかしながら、既存の天然のヌバック皮革を模した人工皮革や合成皮革の中には、天然のヌバック皮革に比して、十分な品位や風合いを達成しているものは存在しなかった。
ヌバック調の人工皮革については、例えば、極細繊維からなる繊維シートに対して、立毛面に樹脂液を塗布した後に、さらに化学的および/または機械的に分割し、立毛上繊維を露出せしめる方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案の方法では、表面の樹脂層が紫外線等により劣化するなど耐光性が課題であった。
また、表面の樹脂層における耐光性に優れた合成皮革として、樹脂層に耐光剤を含浸させる方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では表層全体が樹脂層である合成皮革であり、天然のヌバック皮革のようなウェットな触感ではないことや、耐光剤が熱により昇華することによる耐フォギング性が課題であった。
また、樹脂層からのフォギング抑制に優れるものとして、樹脂層に多孔質のフォギング抑制剤を添加させる方法が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案では、表面は樹脂のみで構成されており、さらには耐光性を向上させるための耐光剤が添加されていないことにより、表面の樹脂層が紫外線等により劣化してしまい、耐光性が不十分であった。
特許第3409554号公報 特開2014−65983公報 特開2008−156620公報
そこで本発明の目的は、極細繊維からなる繊維構造物であって、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、耐光性と耐フォギング性に優れたシート状物を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維からなる繊維構造物であって、前記の繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、かつ下記の(1)〜(3)を全て満足することを特徴とするシート状物である。
(1)立毛面に非連続な樹脂層が形成されており、前記非連続な樹脂層のシート状物表面に占める割合(面積)が10〜90%であること、
(2)前記の非連続な樹脂層が2層以上で構成されていること、
(3)前記の非連続な樹脂層に分子量が300以上100,000以下である耐光剤が固形分として0.5〜10質量%含まれており、かつ、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトおよびフッ素化マイカからなる群から選ばれた少なくとも一種類である多孔質無機フィラーが固形分として0.1〜10質量%含まれていること。
ここで言う、非連続な樹脂層とは、本発明のシート状物表面に形成されている樹脂層がシート状物表面上に不規則かつ非連続に配置されていることを示し、すなわち、本発明のシート状物表面上に、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、島状で点在している樹脂部分の間に立毛部分が存在する表面層の状態を言う。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の非連続な樹脂層は3層構造である。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の非連続な樹脂層の総厚みは、0.001〜0.4mmである。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の繊維構造物は、内部に高分子弾性体を含んでなることである。
本発明のシート状物の好ましい態様によれば、前記の繊維構造物は、内部に織編物からなる補強布を含んでなることである。
本発明によれば、天然のヌバック皮革に近い触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れたシート状物を得ることができる。また、表面樹脂層に耐光剤と多孔質無機フィラーを併用し含有しているため、フォギングの原因となる耐光剤の熱による昇華を抑えることにより、シート状物の耐光性を長期持続可能することができる。
図1は、本発明により製造されたシート状物の表面の概略平面図である。
本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維からなる繊維構造物であり、前記の繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、かつ下記の(1)〜(3)を全て満足することを特徴とするシート状物である。
(1)立毛面に非連続な樹脂層が形成されており、前記非連続な樹脂層のシート状物表面に占める割合(面積)が10〜90%であること、
(2)前記の非連続な樹脂層が2層以上で構成されていること、
(3)前記の非連続な樹脂層に分子量が300以上100,000以下である耐光剤が固形分として0.5〜10質量%含まれており、かつ、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトおよびフッ素化マイカからなる群から選ばれた少なくとも一種類である多孔質無機フィラーが固形分として0.1〜10質量%含まれていること。
すなわち、本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.1〜8μmの極細繊維を主体とする繊維構造物からなり、前記の繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、その立毛面に非連続な樹脂層が形成されてなり、かつ前記の樹脂層が2層以上であり、そして前記の樹脂層に耐光剤および多孔質無機フィラーが含まれているシート状物である。
本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.1〜8μmの極細繊維からなる繊維構造物で構成されている。極細繊維の平均単繊維直径は、好ましくは0.3μm以上7μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上6μm以下である。
極細繊維の平均単繊維直径が0.1μm未満では、シート状物の強度が不十分なものとなる。また、平均単繊維直径が8μmを超えると、シート状物の風合いが硬くなり、繊細な立毛が形成しにくくなるためシート状物の表面品位が低下し、また、繊維構造物が不織布の場合は、繊維の絡合が不十分となりシート状物の耐摩耗性が低下する原因となる。
本発明のシート状物を構成する極細繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリルポリエチレンおよびポリプロピレンなどの重合体等からなる各種合成繊維を用いることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレート等の重合体等からなるポリエステル繊維は、強度、寸法安定性、耐光性および染色性に優れている点から好ましく用いられる。また、繊維構造物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、異なる素材の極細繊維を混合させることもできる。
繊維構造物を構成する極細繊維には、種々の目的に応じて、酸化チタン粒子等の無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を添加することができる。
繊維構造物を構成する極細繊維の断面形状としては、丸断面の他、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形および十字型などの異形断面の断面形状を採用することができる。
本発明で用いられる繊維構造物としては、織物、編物、不織布、さらにはこれらの繊維構造の中に高分子弾性体が充填された繊維構造物等が挙げられ、用途や目的毎に要求されるコストおよび特性に応じて適宜使い分けることができる。コストの点では織物と編物が好ましく用いられ、充実感のある風合いや微細な立毛による品位の点では不織布や高分子弾性体が充填された繊維構造物等が好ましく用いられる。
繊維構造物として織編物を用いた場合には、織物としては、平織、綾織、朱子織およびそれらの織組織を基本とした各種織物などが挙げられる。また編物としては、経編、トリコット編みで代表される緯編、レース編みおよびそれらの編組織を基本とした各種編物のいずれも採用することができる。
繊維構造物として不織布を用いた場合には、一般的な短繊維不織布、長繊維不織布、ニードルパンチ不織布、抄造不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、およびエレクトロスピニング不織布等、種々のカテゴリーで表現される全ての不織布を適用することができる。ここで、充実感のある風合いや微細な立毛による品位の点では不織布が好ましい。
これらの繊維構造物の中に高分子弾性体が充填された繊維構造物は、シート状物の耐久性やシート状物表面の耐摩耗性に優れる点で、より好ましく用いられる。
さらに本発明のシート状物においては、機械的強度に優れるとの観点から、その構造内部に織編物を含んでいることが好ましい態様である。
シート状物が織編物を含む場合には、織編物を構成する糸条は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、またはポリプロピレン、またはそれらの共重合体類などからなる合成繊維が好適に用いられる。中でも、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの共重合体類からなる合成繊維を単独でまたは複合もしくは混合して用いることができる。また、織編物を構成する糸条としては、フィラメントヤーン、紡績糸、およびフィラメントと短繊維の混紡糸などを用いることができる。
シート状物に含まれる織編物には、2種類以上のポリマーがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合された複合繊維(以下、サイドバイサイド型等複合繊維と記載することがある。)を含んでなる織編物を用いることもできる。例えば、固有粘度(IV)差のある2種類以上のポリマーからなるサイドバイサイド型等複合繊維においては、延伸時の高粘度側への応力集中により、2成分間で異なった内部歪みが生じる。この内部歪みのため、延伸後の弾性回復率差および熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル型の捲縮を発現する。この3次元コイル型の捲縮により、人工皮革としてのストレッチ性が発現する。
シート状物に含まれる織物としては、前述のように平織、綾織、朱子織およびそれらの織組織を基本とした各種織物などが挙げられる。また編物としては、経編、トリコット編みで代表される緯編、レース編みおよびそれらの編組織を基本とした各種編物のいずれも採用することができる。それらの中でも、加工性の観点から織物が好ましく、特にコストの面で平織織物が好ましく用いられる。また、織物の織密度は、糸条の総繊度や後述する不織布と織編物を絡合させる設備や条件により、適宜設定することができる。
本発明のシート状物を構成する繊維構造物は、内部に高分子弾性体を含むことが好ましい態様である。内部に高分子弾性体を含むことにより、シート状物の形態安定性や表面の耐摩耗性が向上する。
繊維構造物の内部に高分子弾性体を含む場合には、高分子弾性体としては、ポリウレタン、SBR、NBR、およびアクリル樹脂等を用いることができ、中でも、ポリウレタンを主成分として用いることが好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えた複合シート状物を得ることができる。
繊維構造物の内部に含まれる高分子弾性体としてポリウレタンを用いる場合には、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンと、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンのどちらも採用することができる。また、ポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンが好ましく用いられる。
繊維構造物の内部の高分子弾性体として水分散型ポリウレタンを使用する場合には、ポリウレタンを水に分散させるため、内部乳化剤を使用することが好ましい態様である。内部乳化剤としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系の内部乳化剤、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系の内部乳化剤およびポリエチレングリコール等のノニオン系の内部乳化剤が挙げられ、さらにカチオン系とノニオン系の内部乳化剤の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の内部乳化剤の組み合わせのいずれも採用することができる。
繊維構造物の内部の高分子弾性体には、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤および染料などを含有させることができる。
繊維構造物の内部の高分子弾性体の含有量は、使用する高分子弾性体の種類、高分子弾性体の製造方法および風合や物性を考慮し、適宜調整することができる。高分子弾性体の含有量は、シート状物の質量に対して好ましくは5質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上45質量%以下である。高分子弾性体の含有比率を5質量%以上とすることにより、シート強度を得て、かつ繊維をバインドすることで絡合状態を維持することができ、一方、含有比率を80質量%以下とすることにより、風合いが硬くなるのを防ぐことができる。
本発明において繊維構造物は、その少なくとも一面に立毛を有することが重要である。立毛面を有することにより、その後の樹脂層との接着性に優れ、さらにはシート状物表面に露出した立毛繊維により、より本革に近い表面触感を得ることができる。
また、その立毛面には、非連続な樹脂層が形成されており、かつその樹脂層は2層以上で構成されていることが重要であり、この樹脂層は、3層構造であることが好ましい態様である。ここで言う、非連続な樹脂層とは、前述のように、シート状物の表面に、樹脂部分が島状で点在しており、その樹脂部分の間に立毛部分が存在する表面層の状態を言う。
また、非連続な樹脂部分のシート状物表面に占める割合は、10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%である。上記の割合が10%未満の場合は、耐摩耗性に劣るだけでなく、ヌバック調の表面感、触感を得ることができず、また、上記の割合が90%を超える場合は、スエード調の通気性がなくなり、また立毛感を得ることができない。
図1は、本発明で得られたシート状物の表面形態を例示説明するための概略平面図である。図1のシート状物の表面形態において、立毛部1が連続し分岐しており、樹脂部2が立毛部1に囲まれ、独立した形状となっている。
樹脂層が非連続に形成されることにより、非樹脂部である立毛部において、シート状物の持つ十分な通気性が確保されると共に、シート状物が屈曲した際には、樹脂層の割れも発現せず良好な品位と風合いを維持することができる。
また、樹脂層が2層以上であることにより、自動車シートやソファーなど、より耐久性が要求される耐摩耗性に優れたシート状物を得ることができる。樹脂層が1層の場合は、耐摩耗性に劣る。
本発明における樹脂層で用いられる樹脂とは、好適には伸び縮みするゴム弾性を有している高分子化合物であり、例えば、ポリウレタン、SBR、NBRおよびアクリル樹脂等を挙げることができる。中でも、風合いと物性のバランスが取れる点で、ポリウレタンを主成分としてなる高分子弾性体、具体的には50質量%以上がポリウレタンからなる高分子弾性体が好ましく用いられる。
ポリウレタンには、有機溶剤に溶解した状態で使用する有機溶剤系ポリウレタンや、水に分散した状態で使用する水分散型ポリウレタンなどがあるが、本発明においてはどちらも採用することができる。
本発明で用いられるポリウレタンとしては、ポリオール、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤を適宜反応させた構造を有するポリウレタンを用いることができる。
ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いることができる。中でも、耐光性の観点から、ポリカーボネート系ジオールおよびポリエステル系ジオールが好ましく用いられる。さらに、耐加水分解性と耐熱性の観点から、ポリカーボネート系ジオールが好ましく用いられるが、本発明における接着層においては、繊維構造物表面との接着性から、ポリエーテル系ジオール、またはポリエステル系ジオールが好ましく用いられる。
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、または、ホスゲンもしくはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、などの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
本発明では、それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネートジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールのいずれも用いることができる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いることができる。中でも、耐久性や耐熱性を重視する場合には、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、耐光性を重視する場合には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートが好ましく用いられる。
鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミンやメチレンビスアニリン等のアミン系鎖伸長剤、エチレングリコール等のジオール系鎖伸長剤、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることができる。
本発明における樹脂層で用いられる樹脂は、耐摩耗性や風合いを損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などを含有させることができる。また、これらの樹脂には、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤、および染料などを含有させることができる。
また、本発明では、この樹脂層には耐光剤が含まれており、かつ多孔質無機フィラーも含まれていることが重要である。
耐光剤と多孔質無機フィラーは樹脂層の表面層に含まれることが好ましく、表面層を含む2層以上に含まれることがより好ましく、表面層を含む3層以上に含まれることがさらに好ましい態様である。
樹脂層に含まれる耐光剤の含有量(固形分)は、0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜9質量%以下であり、さらに詳しくは2〜8質量%以下である。耐光剤の含有量が0.5質量%未満では、樹脂層の特に光による経時劣化を抑制することができず、黄変や樹脂層の耐久性が悪化することがある。また、耐光剤の含有量が10質量%を超えると、樹脂の皮膜強度が損なわれシート状物の耐磨耗性が低下することがある。
また、本発明で用いられる耐光剤としては、具体的には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、オキザニリド系、サリシレート系、ホルムアミジン系、カルバジド系、ベンゾエート系、ニッケル錯塩系、ヒンダードアミン系、および桂皮酸エステル系などの耐光剤が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。中でも耐熱性が良好で、紫外線の波長に対する吸収性能が高いという観点から、ベンゾトリアゾール系の耐光剤が好ましく用いられる。
また、耐光剤の数平均分子量は、300〜100,000であることが好ましく、より好ましくは350〜50000であり、さらに好ましくは400〜10,000である。耐光剤の数平均分子量が300未満では、熱により揮発しやすくフォギングの原因となることがある。
樹脂層に含まれる多孔質無機フィラーの含有量(固形分)は、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。
多孔質フィラーの含有量が0.1質量%未満になると、揮発成分を孔内に保持しきれずに耐フォギング性が低下することがある。また、多孔質フィラーの含有量が10質量%を超えると、布帛様皮革の表面触感がざらつき、さらには樹脂の皮膜強度が損なわれシート状物の耐磨耗性が低下することがある。
本発明で用いられる多孔質無機フィラーとしては、主に層状粘土鉱物であり、例えば、層状構造をもつケイ酸塩鉱物等で、ケイ酸で構成される四面体、AlやMg等を含む八面体等が積層された層状構造を有する物質である。このようなものとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト、パイロフィロライト等が挙げられ、これらは天然品であってもよく、合成品も用いられる。また、リン酸ジルコニウムや、フッ素処理した膨潤性マイカ等も用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの層状無機化合物のうち、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトおよびフッ素化マイカ等が好ましく用いられる。
また、本発明の樹脂層は、その総厚みが0.001〜0.4mmであることが好ましい。総厚みが0.001未満の場合、耐摩耗性に劣る傾向があり、また総厚みが0.4mmを超える場合は、風合いが硬いものとなる。総厚みは、より好ましくは0.01〜0.3mmであり、さらに好ましくは0.05〜0.25mmの範囲である。
また、樹脂層の各層の厚みは、1層目と2層目はそれぞれ好ましくは0.001〜0.02mmであり、3層目は好ましくは0.008〜0.06mmである。また、1層目と2層目はそれぞれ最大0.065mm程度で、3層目は最大0.25mm程度である。
次に、本発明のシート状物を製造する方法について説明する。
本発明のシート状物を構成する極細繊維は、溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子物質からなる極細繊維発現型繊維を用いて得ることができる。
極細繊維発現型繊維としては、溶剤に対する溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分および島成分とし、海成分を、溶剤を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を、繊維表面を放射状または多層状に交互に配置し、溶剤処理により剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、基材の柔軟性や風合いの観点からも好ましく用いられる。
海島型複合繊維の製造には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維の製造方法がより好ましく用いられる。
極細繊維は、繊維構造物において不織布(極細繊維ウエブ)の形態をなしていることが好ましい態様である。不織布とすることにより、均一で優美な外観や風合いを得ることができる。不織布(極細繊維ウェブ)の形態としては、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には短繊維不織布が好ましく用いられる。
短繊維不織布とする場合の極細繊維の繊維長は、25mm以上90mm以下であることが好ましい。極細繊維の繊維長を90mm以下とすることにより、良好な品位および風合いとなり、繊維長を25mm以上とすることにより、耐摩耗性が良好なシート状物とすることができる。
本発明では、得られた極細繊維発生型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカット加工して不織布の原綿を得ることができる。極細繊維発生型繊維を所定長にカット加工せず長繊維不織布として用いることもできるが、風合いや品位を重視する場合には、所定長にカット加工し短繊維不織布とすることが好ましい態様である。同様に、風合いや品位を重視する場合は、短繊維の繊維長は、絡合による耐摩耗性を考慮して25mm以上90mm以下であることが好ましい。捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
次に、得られた原綿を、クロスラッパー等により繊維ウェブとし、絡合させることにより不織布を得る。繊維ウェブを絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチ、やウォータージェットパンチ等を用いることができる。また、繊維ウェブの目付は、最終製品の設計、後工程での寸法変化および加工マシンの特性等を考慮して、適宜設定することができる。
また、織編物と極細繊維発生型繊維からなる繊維構造物を絡合一体化させ、極細繊維発生型繊維からなる不織布と織編物との積層シートを得ることも好ましい態様である。両者を絡合一体化させる方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等の方法を用いることができる。中でも、ニードルパンチによる交絡処理が貼り合せ性と製品の品位の観点から好ましい態様である。このようにして得られた極細繊維発生型繊維からなる繊維構造物と織編物の積層シートは、緻密化の観点から、高分子弾性体を付与する前の段階において、乾熱もしくは湿熱またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化させることが好ましい態様である。この収縮処理は、極細繊維を発現させる前に行うこともでき、発現させた後に行うこともできるが、収縮に極細繊維発生型繊維の海成分ポリマーの特性を利用できる点において、極細繊維発生前に収縮処理を行うことが好ましい態様である。
また、この収縮工程における積層シートの面積収縮率の範囲は、15%以上35%未満であることが好ましい。面積収縮率を15%以上とすることにより、収縮による品位の向上効果を好ましく得ることができる。また、面積収縮率を35%未満とすることにより、不織布と一体化した織編物に収縮の余地を残すことができるため、後に高分子弾性体を付与した後に効率的に収縮させることが可能となる。より好ましい面積収縮率の範囲は13%以上30%未満であり、さらに好ましくは15%以上25%未満である。
本発明のシート状物の製造方法は、前記の極細繊維発生型繊維からなる繊維構造物と織編物との積層シートを処理して平均単繊維直径が0.1μm以上8μm以下の極細繊維を発現させる工程を含む。極細繊維の発生処理方法としては、極細繊維発生型繊維を構成する樹脂の一方を、溶剤によって溶解させる方法が挙げられる。特に、海成分が易溶解性ポリマーからなり、島成分が難溶解性ポリマーからなる極細繊維発生型海島複合繊維について、海成分を溶解させる方法が好ましい。
海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンの場合は、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒が用いられる。また、海成分がポリ乳酸や共重合ポリエステルの場合は、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いることができる。また、この極細繊維発生加工(脱海処理)は、溶剤中に極細化可能繊維からなる繊維絡合体を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
次いで、得られた極細繊維を含む繊維構造物に、高分子弾性体を付与する処理を行う。前記の極細繊維発現型繊維から極細繊維を発現させる処理と、高分子弾性体を付与する処理とは、いずれを先に行う方法も採用することができる。極細繊維の発現処理を先に行う場合には、高分子弾性体が極細繊維を把持するため、極細繊維の脱落等が無くより長期の使用に耐え得るものとなる。また、高分子弾性体の付与を先に行う場合には、高分子弾性体が極細繊維を把持していない構造となるため、良好な風合いの人工皮革が得られる。いずれを先に行うかは、使用するポリウレタンの種類等により適宜選択することができる。
また、極細繊維の発現処理の後に高分子弾性体の付与を行う場合は、両工程の間に水溶性樹脂を付与する工程を設けることが好ましい。この水溶性樹脂を付与する工程を設けることにより、極細繊維の繊維束や織編物を構成する繊維の表面が水溶性樹脂により保護され、極細繊維の繊維束や織編物を構成する繊維の表面において、高分子弾性体と直接接合している箇所が連続的ではなく断続的に存在することとなり、接着面積を適度に抑えることができる。その結果、高分子弾性体による良好な手持ち感を有しつつも、ソフトな風合いや、サイドバイサイド型等複合繊維からなる織編物を用いた場合は、高いストレッチ性を有する人工皮革を得ることができる。
このような水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、糖類および澱粉などを用いることができる。その中でも、鹸化度が80%以上のポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
水溶性樹脂を繊維絡合体に付与する方法としては、繊維構造物に水溶性樹脂の水溶液を含浸し乾燥する方法などが挙げられる。乾燥温度や乾燥時間等の乾燥条件は、織編物の収縮を抑えるという観点からは、水溶性樹脂を付与した繊維絡合体自体の温度を110℃以下に抑えるようにすることが好ましい態様である。
水溶性樹脂の付与量は、付与直前の繊維絡合体の質量に対し、1〜30質量%であることが好ましい。付与量を1質量%以上とすることにより、良好な風合いやサイドバイサイド型等複合繊維からなる織編物を用いたシート状物の場合は、良好なストレッチ性が得られる。また、付与量を30質量%以下とすることにより、加工性が良く耐摩耗性等の物性が良好なシート状が得られる。また、後の工程において繊維絡合体への高分子弾性体付与可能量が増加するため、シート状物の高密度化および触感の緻密化が可能である。
本発明のシート状物の製法において、高分子弾性体の付与前に前駆体である不織布に必要に応じて織編物を積層したシートを、高分子弾性体の付与前に収縮させる手法は、品位を向上させる方法として知られている。一般に、不織布を収縮させる工程を経た立毛調人工皮革は、立毛密度が増加するため品位が向上する。
本発明のシート状物の製造方法においては、高分子弾性体を付与した繊維構造体(人工皮革の前駆体シート)を平面方向に半裁する工程を経ることができる。半裁工程を含むことによって、人工皮革の生産性を向上させることができる。例えば、織編物の積層方法として、極細繊維発生型繊維からなる不織布層を織編物層で挟む方法を採用している場合には、前駆体シートを半裁し、内側の面を立毛面とすることが、緻密な品位を達成する方法として好ましい態様である。
本発明シート状物は、少なくとも片面に立毛を有することが重要である。立毛処理は、繊維構造物の表面をサンドペーパーやロールサンダーなどを用いてバフすることによって行うことができる。特に、サンドペーパーを用いることにより、均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、繊維構造物の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。
本発明のシート状物は、好適に染色される。染色は、分散染料、カチオン染料やその他反応性染料を用い、染色されるシート状物の風合いを柔軟にするためにも高温高圧染色機により行うことが好ましい。
さらに、必要に応じて、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤および耐光剤等の仕上げ処理を施すことができ、仕上げ処理は染色後でも染色と同浴でも行うことができる。難燃処理は、公知の臭素や塩素などのハロゲン系の難燃剤やリンなどの非ハロゲン系の難燃剤を用いることができ、染色後に浸積による付与でも、ナイフコーティングやロータリースクリーン法などのバックコーティングによる付与でも行うことができる。
本発明のシート状物は、その立毛面に非連続な樹脂層が形成されており、かつその樹脂層が2層以上の層構造である。さらには、前記の樹脂層が、接着層、中間層および表面層からなる3層構造からなることがより好ましい態様である。ここで、接着層は、シート状物と中間層および表面層の樹脂層の接着機能を有する。
本発明における樹脂層の形成方法としては、シート状物となる繊維構造物の表面に非連続状に塗布できる方法であれば特に限定はされないが、フラットスクリーンやロータリースクリーン等のスクリーン法やグラビアコーティング法等での塗布後に乾燥して樹脂層を形成する方法や、離型紙等の支持基材繊維上に非連続状の樹脂膜を形成した後、その樹脂膜の表面に接着剤を塗布し、繊維構造物となる表面に貼り合わせて接着し、離型紙を剥離することによって樹脂層を形成する方法等が挙げられる。
さらに、樹脂層を2層や3層にするためには、上記の方法を2度または3度と繰り返すことにより形成することができる。また、上記の方法については、同じ方法を繰り返しても良く、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
以上から得られる本発明のシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感と通気性を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、従来スエード調人工皮革が用いられた用途である家具、椅子および車両内装材から衣料用途まで幅広く好適に用いることができる。
次に、実施例を挙げて、本発明のシート状物についてさらに詳しく説明する。
[測定方法および評価用加工方法]
(1)極細繊維の平均単繊維直径:
シート状物の表皮シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、単繊維直径を測定して100本の平均値を計算することにより算出した。異型断面の極細繊維を採用した場合には、極細繊維の外接円の直径を単繊維直径とし、同様に算出した。
(2)シート状物表面の樹脂層の総厚み:
シート状物の平面方向および機械方向に垂直な断面を切り出し、断面が歪まないように試料台に設置した。続いて、走査型電子顕微鏡(SEM、キーエンス社製VE−7800)を用いて、シート状物の試料片の断面を200倍の倍率で異なる箇所について10枚撮影した。これらの各撮影像から、断面に並行な方向を水平とし、断面の立毛層側を上とし、他方の面を下としたときの、樹脂層の最高位置z1と、樹脂層の最低位置z2の2点間距離を取得し、樹脂層の総厚みを算出した。さらに、算出して得られた10個の値の平均値を樹脂層の総厚みとした。
(3)シート状物表面の耐光性:
シート状物に対し、スガ試験機器社製のキセノンウェザーメーターを用いて、波長が300〜400nmの光を放射照度150W/m、ブラックパネル温度73±3℃、槽内温度38℃、相対湿度50±5%で、144時間光照射する強制劣化処理を施した後、照射後のシート状物の変退色度合いをJIS L0804(2004)の変退色用グレースケールを用いて級判定する。判定は、0.5刻みの1〜5級までの9段階の級判定で行い、n数を3とし、最も良い等級と最も悪い等級を除いた残りの等級を評価結果とした。例えば、n=3の級判定が、3級、3級および4級であれば評価結果は3級であり、3級、4級および4級であれば評価結果は4級となる。本発明では、3級以上を合格とした。
(4)シート状物の耐フォギング性:
シート状物の直径80cmのサンプルを、3枚採取する。ガラス霞み促進試験装置(ウインドウスクリーンフォギングテスター WF−2、スガ社製)で、80℃×3時間加熱してフォギングテストを行う。次に、フォギングテスト後のガラスプレート(110mm×110mmの正方形状、厚さ3mm)の反射率を、ハロゲンランプを光源とする変角光沢計(スガ社製;UGV−5)で測定する。測定角(入射角及び受光角)は60度で、サンプルを90度ずつ回転させて、1つのサンプルにつき4回(90度の4回で360度分)測定し、得られた各データをR1、R2、R3およびR4として、次式によりフォギングテスト後の反射率Rを算出する。
・R=(R1 +R2 +R3 +R4 )/4。
本発明でいう耐フォギング性は、このR値と下記のR0の値から、下記式により求めるものである。
・耐フォギング性(%)=R/R0×100
すなわち、ここで、R0、R2、R3およびR4は、フォギングテスト後のガラスプレートの反射率(%)であり、RはR1、R2、R3およびR4の平均値であり、R0はフォギングテスト前のガラスプレートの反射率(%)である。本発明では、n数を3(サンプル3枚)として平均値を算出し、小数点以下は四捨五入した。評価判定は、耐フォギング性が90%以上を合格とした。
(5)シート状物の表面触感評価:
シート状物の表面触感を、対象者10名の官能検査により評価した。天然ヌバックの緻密でウェットな触感と比較し、8名以上が、緻密でウェットな触感を有すると判定したものを(二重丸:◎)、5〜7名が判断したものを(一重丸:〇)、3〜4名が判定したものを(三角:△)、2名以下が判断したものを(×)と各々区分した。二重丸と一重丸を合格とした。この判定では、天然ヌバック調の触感を有するものが高い判定となる。
(6)シート状物の表面立毛感評価:
シート状物の表面立毛感を、対象者10名の官能検査により評価した。天然スエードの立毛感と比較し、8名以上が、スエード調の立毛感を有すると判定したものを(二重丸:◎)、5〜7名が判断したものを(一重丸:〇)、3〜4名が判定したものを(三角:△)、2名以下が判断したものを(×)と各々区分した。二重丸と一重丸を合格とした。この判定では、天然スエード調の触感を有するものが高い判定となる。
(7)シート状物表面の耐摩耗性評価:
評価するシート状物について、任意の1か所から直径120mmの大きさで円形状の試験片を1枚採取し、ASTM D3884の6.1項のテーバ摩耗試験法によって試験を行った。試験は、CS#10摩耗輪により、4.9Nで1000回転摩耗を行った後、シート状物表面の摩耗状態を観察し、試験前の表面状態と比較して、異常の程度を、次の評価に従い等級を判定した。本発明の評価においては、3級〜5級を合格とした。
・5級…試験前の状態と差が認められない。
・4級…わずかに表面樹脂層部の割れ、剥がれが認められるが、殆ど目立たない。
・3級…明らかに表面樹脂層部の割れ、剥がれが認められるが、目立たない。
・2級…やや著しい表面樹脂層部の割れ、剥がれがある。
・1級…著しく表面樹脂層部の割れ、剥がれがある。
[実施例1]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブ(不織布)を形成し、織物貼り合わせ後の急激な幅変化による織物しわを抑えるために100本/cmのパンチ本数でニードルパンチした。別に、固有粘度(IV)が0.65の単成分からなる単糸で、撚数が2500T/mからなるマルチフィラメント(84dtex、72フィラメント)を緯糸に用い、固有粘度(IV)が0.65の単成分からなる単糸で、撚数が2500T/mからなるマルチフィラメント(84dtex、72フィラメント)を経糸として用い、織密度が経97本/2.54cmで、緯76本/2.54cmである平織物を製織した。得られた平織物を、前記の積層ウェブ(不織布)の上下に積層した。
その後、2500本/cmのパンチ本数(密度)でニードルパンチを施し、目付が740g/mで、厚みが3.4mmの極細繊維発生型繊維からなる不織布と熱収縮性の織物からなる積層シートを得た。
<繊維構造物>
前記の工程で得られた積層シートを、96℃の温度の熱水で処理して収縮させた後、PVA(ポリビニルアルコール)水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することにより、積層シートの質量に対するPVA質量が7.6質量%のシート基体を得た。このようにして得られたシート基体を、トリクロロエチレン中に浸漬して海成分のポリスチレンを溶解除去し、平均単繊維繊度が4.4μmからなる極細繊維と平織物が絡合してなる脱海シートを得た。このようにして得られた極細繊維からなる不織布と平織物とからなる脱海シートを、固形分濃度を12%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いで、DMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、島成分からなる極細繊維と前記の平織物の合計質量に対するポリウレタン質量が27質量%の繊維構造物の前駆体シートを得た。
このようにして得られた繊維構造物の前駆体シートを厚さ方向に、その前駆体シート内部の不織布層を垂直に半裁し、半裁したシート面をサンドペーパー番手320番のエンドレスサンドペーパーで研削して、表層部に立毛面を形成させ、厚み0.81mmの繊維構造物を得た。このようにして得られた繊維構造物を、液流染色機を用いて、120℃の温度の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行い、繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、次いでポリウレタン固形分質量比、ベンゾトリアゾール系の分子量448の耐光剤(BASF製 TINUVINN 234)を4質量%含有し、さらにポリウレタン固形分質量比、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを2質量%含有するように溶液を調整し、前記の工程で得られた繊維構造の立毛面にロータリーコーティング手法を3度繰り返し、非連続に表面が被覆された3層構造で厚み0.2mmのポリウレタン樹脂層を形成せしめた。また、表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は60%であった。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が100島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート〜樹脂層形成>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が0.3μmで、表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の布帛表面に占める割合は、70%のシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が8島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート〜繊維構造物>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が7.0μmの繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、次いでポリウレタン固形分質量比、ベンゾトリアゾール系の分子量316の耐光剤(BASF製 TINUVINN 326)を6質量%含有し、さらにポリウレタン固形分質量比、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを3質量%含有するように溶液を調整し、前記の工程で得られた繊維構造物の立毛面にロータリーコーティング手法を3度繰り返し、非連続に表面が被覆された3層構造で厚み0.2mmのポリウレタン樹脂層を形成せしめた。また、表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は、60%であった。このようにして得られたシート状物は、実施例1に比べて極細繊維の平均単繊維直径が大きいため、若干表面触感と立毛感は若干劣るが、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ち、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率55/45で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
<積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、織物貼り合わせ後の急激な幅変化による織物しわを抑えるために100本/cmのパンチ本数でニードルパンチした。別に、固有粘度(IV)が0.78のPETと固有粘度(IV)が0.51のPETからなる複合比(質量%)50:50からなるサイドバイサイド型複合糸で、撚数1500T/mからなるマルチフィラメント(56dtex、12フィラメント)を緯糸に用い、固有粘度(IV)が0.65の単成分からなる単糸で撚数2500T/mからなるマルチフィラメント(84dtex、72フィラメント)を経糸として用い、織密度が経69本/2.54cm、緯83本/2.54cmである平織物を製織した。得られた平織物を、前記の積層ウェブの上下に積層した。
その後、2500本/cmのパンチ本数(密度)でニードルパンチを施し、目付が560g/mで、厚みが2.3mmの極細繊維発生型繊維からなる不織布と、熱収縮性の織物からなる積層シートを得た。
<繊維構造物>
前記の工程で得られた積層シートを、96℃の温度の熱水で処理して収縮させた後、PVA(ポリビニルアルコール)水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することにより、積層シート質量に対するPVA質量が4.0質量%のシート基体を得た。このようにして得られたシート基体を、トリクロロエチレン中に浸漬して海成分のポリスチレンを溶解除去し、平均単繊維繊度が2.1μmからなる極細繊維と平織物が絡合してなる脱海シートを得た。このようにして得られた極細繊維からなる不織布と平織物とからなる脱海シートを、固形分濃度12%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に浸漬し、次いで、DMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥することにより、島成分からなる極細繊維と前記の平織物の合計質量に対するポリウレタン質量が20質量%の繊維構造物の前駆体シートを得た。
このようにして得られた繊維構造物の前駆体シートを厚さ方向に、その繊維構造物の前駆体シート内部の不織布層を垂直に半裁し、半裁したシート面をサンドペーパー番手320番のエンドレスサンドペーパーで研削して、表層部に立毛面を形成させ、厚み0.46mmの人工皮革生機を得た。このようにして得られた繊維構造物生機を、液流染色機を用いて、120℃の温度の条件下で、収縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行い繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、次いでポリウレタン固形分質量比、ベンゾトリアゾール系の分子量448の耐光剤(BASF製 TINUVINN 234)を4質量%含有し、さらにポリウレタン固形分質量比、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを2質量%含有するように溶液を調整し、前記の工程で得られた繊維構造物の立毛面にグラビアコーティング手法を2度繰り返し、非連続に表面が被覆された2層構造で厚み0.2mmのポリウレタン樹脂層を形成せしめた。また、表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の布帛表面に占める割合は、30%であった。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例5]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、平均単繊維直径が4.3μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、次いでポリウレタン固形分質量比、ベンゾフェノン系の分子量326の耐光剤(BASF製 CHIMASSORB 81)を6質量%含有し、さらにポリウレタン固形分質量比、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを3質量%含有するように溶液を調整し、前記の工程で得られた繊維構造物の立毛面にロータリーコーティング手法を3度繰り返し、非連続に表面が被覆された3層のポリウレタン樹脂層を形成せしめた。また、表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は、60%であった。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例6]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.2μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
固形分濃度25%に調整したポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、次いでポリウレタン固形分質量比、ベンゾトリアゾール系の分子量225の耐光剤(ADEKA製 LA−32)を8質量%含有し、さらにポリウレタン固形分質量比、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを4質量%含有するように溶液を調整し、前記の工程で得られた繊維構造物の立毛面にロータリーコーティング手法を3度繰り返し、非連続に表面が被覆された3層構造で厚み0.2mmのポリウレタン樹脂層を形成せしめた。また、表面は樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の繊維構造物表面に占める割合は、60%であった。このようにして得られたシート状物は、実施例1に比べて耐光剤の分子量が小さいため、耐フォギング性は若干劣るが、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例7]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.3μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン固形分質量比と、多孔質無機フィラーをサポナイトにしたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と、天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性、と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例8]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.3μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン固形分重量比、ベンゾトリアゾール系の分子量448の耐光剤(BASF製 TINUVIN 234)を1質量%含有にしたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、実施例1に比べて耐光剤の添加量が少ないため、耐光性は若干劣るが、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例9]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン固形分質量比、ベンゾトリアゾール系の分子量448の耐光剤(BASF製 TINUVIN 234)を10質量%含有し、さらにポリウレタン固形分質量比と、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを5質量%含有にしたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、実施例1に比べて耐光剤の添加量が多いため、耐摩耗性は若干劣るが、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例10]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン固形分質量比、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを0.1重量%含有にしたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、実施例1に比べて多孔質無機フィラーの添加量が少ないため、耐フォギング性は若干劣るが、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[実施例11]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.3μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン固形分質量比と、多孔質無機フィラーのモンモリナイトを10質量%含有にしたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、実施例1に比べて多孔質無機フィラーの添加量が多いため、表面触感は若干劣るが、天然のヌバック皮革の触感と天然のスエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性と耐フォギング性に優れており、良好であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
<原綿>
島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が8島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率80/20で溶融紡糸した後、延伸し捲縮加工し、その後、51mmの長さにカットして海島型複合繊維の原綿を得た。
<不織布および織編物の絡合体(積層シート)〜繊維構造物>
上記の海島型複合繊維の原綿を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が8.5μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
実施例1と同様にして、シート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、耐光性と耐フォギング性に優れているものの、極細繊維の平均単繊維直径が大きすぎたため、天然のヌバック皮革の触感は有しておらず、天然のスエード皮革の立毛感にも劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
<原綿〜積層ウェブ(不織布)および織編物との積層シート>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.2μmの極細繊維発生型繊維からなる不織布と熱収縮性の織物からなる積層シートを得た。
<繊維構造物>
エンドレスサンドペーパーで研削せず、表層部に立毛面を形成させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感を有し、耐光性と耐フォギング性に優れているものの、表層部に立毛面を形成させなたったため、天然のスエード皮革の立毛感は全くなく、従来の合成皮革に近い、触感に劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例3]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.1μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ロータリーコーティング手法で均一な3層構造で、厚みが0.2mmのポリウレタン樹脂層を形成せしめ、表面を樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが規則かつ連続に配置させたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、スエード皮革の立毛感を有し、耐光性と耐フォギング性に優れているものの、樹脂部分と立毛部分とが規則かつ連続に配置させたため、樹脂層の割れが発現し、天然のヌバック皮革の触感が劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例4]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.0μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
非連続に表面が被覆された1層のポリウレタン樹脂層を形成せしめたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。また、表面は、樹脂層部分が島状に点在しており、樹脂部分と立毛部分とが不規則かつ非連続に配置されており、樹脂部分の布帛表面に占める割合は、8%であった。このようにして得られたシート状物は、耐光性と耐フォギング性に優れているものの、樹脂部分の布帛表面に占める割合が低すぎたため、天然のヌバック調の表面感、触感を得ることができず、むしろスエード皮革の立毛感が強く、さらには耐摩耗性にも劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例5]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が3.9μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン樹脂に多孔質無機フィラーを含有しないこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感と、スエード皮革の立毛感を持ちながら、さらには耐光性を有しているが、ポリウレタン樹脂に多孔質無機フィラーを含有しなかったため、耐フォギング性に劣るものであった。結果を表1に示す。
[比較例6]
<原綿〜繊維構造物>
実施例1と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.1μmの繊維を用いてなる繊維構造物を得た。
<樹脂層形成>
ポリウレタン樹脂に耐光剤と多孔質無機フィラーを含有しないこと以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。このようにして得られたシート状物は、天然のヌバック皮革の触感とスエード皮革の立毛感を有しているものの、ポリウレタン樹脂に耐光剤および、多孔質無機フィラーを含有しなかったため、耐光性と耐フォギング性に劣るものであった。結果を表1に示す。
1:立毛部
2:樹脂部

Claims (5)

  1. 平均単繊維直径が0.1〜8μmの極細繊維からなる繊維構造物であって、前記繊維構造物の少なくとも一面が立毛を有しており、下記の(1)〜(3)を全て満足することを特徴とするシート状物。
    (1)立毛面に非連続な樹脂層が形成されており、前記非連続な樹脂層のシート状物表面に占める割合(面積)が10〜90%であること、
    (2)前記非連続な樹脂層が2層以上で構成されていること、
    (3)前記非連続な樹脂層に、分子量が300以上100,000以下である耐光剤が固形分として0.5〜10質量%含まれており、かつ、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトおよびフッ素化マイカからなる群から選ばれた少なくとも一種類である多孔質無機フィラーが固形分として0.1〜10質量%含まれていること。
  2. 前記非連続な樹脂層が3層構造であることを特徴とする請求項1に記載のシート状物。
  3. 前記非連続な樹脂層の総厚みが、0.001〜0.4mmであることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
  4. 繊維構造物が、内部に高分子弾性体を含んでなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のシート状物。
  5. 繊維構造物が、内部に織編物からなる補強布を含んでなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のシート状物。
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