JP6221538B2 - シート状物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、皮革様シート状物等において、柔軟性と反発感を両立させ両特性を同時に有するシート状物およびその製造方法に関するものである。
主として極細繊維とポリウレタンからなるシート状物は、天然皮革にない優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。
このようなシート状物を製造するにあたっては、極細繊維発現型繊維から構成される不織布シート等の繊維質基材に、極細繊維化処理(脱海処理)を施し、ポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめた後、得られた繊維質基材を、ポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤と水の混合溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる工程からなる製造方法が、一般的に採用されている。しかしながら、このような製造方法において得られるシート状物では、シート自体の柔軟性が劣るという課題があった。
その課題を解決する手段として、例えば、脱海処理前にポリビニルアルコール(以下、PVAと表すことがある。)を繊維質基材に付与した後、脱海処理を施し、その後熱水中に浸漬してPVAを除去する工程からなる製造方法が提案されている(特許文献1参照。)。この提案の場合は、PVAが存在していた箇所に空隙を付与することにより、シートに十分な柔軟性を付与することができるが、シートの柔軟性が得られると同時にシートの反発感が劣るという課題がある。シート状物の反発感は、ポリウレタンの付与量を多くすることにより得られる反面、ポリウレタン量が多くなることにより、シート状物が重くなり、柔軟性が劣ってくる。
このため、高い柔軟性と反発感を同時に有するシート状物は得られておらず、柔軟性と反発感を両立させたシート状物が求められている。
特開2002−249988号公報
すなわち、従来技術において、柔軟性と反発感を両立させてなるシート状物とその製造方法はこれまで得られていない。
そこで本発明の目的は、シート状物、特に皮革様シート状物において、柔軟性と反発感を両立させ両特性を同時に有するシート状物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のシート状物を製造する方法において、製造工程に有機溶剤を使用しない、環境に配慮したシート状物の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記の課題を達成せんとするものであって、本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.3〜7.0μmの極細繊維が絡合されてなる不織布シートと、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂から構成されるシート状物あって、前記アクリル樹脂の圧縮弾性率が80%以上であり、前記アクリル樹脂および前記ポリウレタン樹脂が前記不織布シート内部の厚み方向に層状に配置されてなるシート状物である。
本発明の好ましい様態によれば、前記のアクリル樹脂とポリウレタン樹脂の比率は、10:90〜90:10である。
本発明の好ましい様態によれば、前記のアクリル樹脂のガラス転移温度は100℃未満である。
また、本発明のシート状物の製造方法は、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質不織シート基材に、圧縮弾性率が80%以上であるアクリル樹脂を付与する工程、前記圧縮弾性率が80%以上であるアクリル樹脂が付与された繊維質不織シート基材から平均単繊維直径が0.3〜7.0μmの極細繊維を発現させる工程、および、前記極細繊維を発現させた繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与する工程、からなるシート状物の製造方法である。
本発明によれば、従来技術では達成できなかった、柔軟性と反発感を両立させ両特性を同時に有するシート状物を得ることができる。
また、本発明によれば、上記のシート状物を製造する方法において、繊維質不織シート基材から極細繊維を発現させる工程において、アクリル樹脂が付与されていることで、製造工程中の形態保持性が高められることにより、優美な立毛と緻密感を有するシート状物が得られる。
図1は、繊維質不織シート基材の両表面から厚み方向0〜30%の範囲を例示説明するための概略断面図である。
本発明のシート状物は、平均単繊維直径が0.3〜7.0μmの極細繊維が絡合されてなる不織布シートと、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂から構成されるシート状物あって、前記アクリル樹脂の圧縮弾性率が80%以上であり、前記アクリル樹脂および前記ポリウレタン樹脂が前記不織布シート内部の厚み方向に層状に配置されてなるシート状物である。
本発明で用いられる不織布シートを構成する極細繊維としては、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート或いはポリ乳酸などのポリエステル、6−ナイロンや66−ナイロンなどのポリアミド、ポリアクリル、ポリエチレンやポリプロピレン、および熱可塑性セルロースなどを挙げることができる。中でも、強度、寸法安定性および耐光性の観点から、ポリエステル繊維を用いることが好ましい。また、不織布シートは、互いに異なる素材の繊維が混合して構成されていてもよい。
上記の不織布シートを構成する極細繊維の横断面形状は、丸断面でよいが、楕円、扁平および三角などの多角形や、扇形および十字型などの異形断面のものも採用することができる。この極細繊維は、その平均単繊維直径が0.3〜7μmであることが重要である。この極細繊維の平均単繊維直径を7μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは5μm以下とすることにより、優れた柔軟性や表面品位のあるシート状物を得ることができる。一方、この極細繊維の平均単繊維直径を0.3μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上とすることにより、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など立毛処理時の束状繊維の分散性とさばけ易さに優れる。
上記の極細繊維からなる不織布シートは、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位の点では短繊維不織布が好ましく用いられる。
上記の短繊維不織布に用いられる短繊維の繊維長は、25〜90mmであることが好ましく、より好ましくは30〜80mmである。この短繊維の繊維長を25mm以上とすることにより、絡合により耐摩耗性に優れたシート状物を得ることができる。また、この短繊維の繊維長を90mm以下とすることにより、より風合いや品位に優れたシート状物を得ることができる。
上記の不織布シートは、極細繊維からなる束(極細繊維束)が絡合してなる構造を有するものである。極細繊維が束の状態で絡合していることによって、シート状物の強度が向上する。このような態様の不織布シートは、後述するように、極細繊維発現型繊維同士をあらかじめ絡合した後に極細繊維を発現させることによって得ることができる。
上記の極細繊維あるいはその極細繊維束が不織布シートを構成する場合、強度を向上させるなどの目的で、その不織布シートの内部に織物や編物を挿入することができる。このような織物や編物を構成する繊維の平均単繊維直径は、0.3〜10μm程度であることが好ましい。
上記の不織布シートの目付は、低すぎるとシート状物の引張強力や引裂強力等の物理特性が弱くなり、高すぎるとシート状物の風合いは硬くなることから、50〜2000g/mであることが好ましい。
また、この不織布シートの厚みは、薄すぎるとシート状物の引張強力や引裂強力等の物理特性が弱くなり、厚すぎるとシート状物の風合いは硬くなることから、0.1〜5mmであることが好ましい。
本発明では、高分子弾性体として、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂が用いられる。
本発明で用いられるアクリル樹脂としては、樹脂膜の反発感に優れたものであることが重要であり、後加工での工程通過性や耐薬品性の観点から、アクリル樹脂が用いられる。ここで、反発感に優れるとは、高分子弾性体溶液を脱溶媒して作成した樹脂膜の圧縮回復率が高いものを言い、圧縮弾性率は80%以上のものである。圧縮弾性率を80%以上とすることにより、シートに十分な反発感を付与することができる。
本発明で用いられるアクリル樹脂は、ガラス転移温度が100℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度が100℃より低くすることにより、第1の高分子弾性体自体が硬くなりすぎず、よりシートが硬くなりすぎることを防ぐことができ、シート状物の柔軟性を保つことができる。
本発明で用いられるアクリル樹脂には、各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系、シリコーン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、柔軟剤、撥水剤、凝固調整剤、染料、防腐剤、抗菌剤、消臭剤およびセルロース粒子等の充填剤、或いはシリカや酸化チタン等の無機粒子などを、単独で或いは任意の組み合わせで含有させることができる。
また、本発明で用いられるアクリル樹脂は、温度90℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に10分間浸漬したあとの質量減少率が、10%以下であることが好ましい。
それは、後述する本発明における極細繊維発現型繊維の極細化処理において、熱水や水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いる場合に、繊維質不織シート基材の反発感の保持の観点やシート状物の形態保持の観点から、前記の質量減少率は低い方が好ましく、質量減少率はより好ましくは5質量%以下である。
本発明においては、後述のように極細繊維を発現させた繊維質不織シート基材に、ポリウレタン樹脂が付与される。ポリウレタン樹脂としては、柔軟性に優れたものであることが重要である。
上記のポリウレタン樹脂の主成分として用いられるポリウレタンは、有機溶剤タイプのポリウレタンおよび水分散タイプのポリウレタンのいずれでもよいが、環境配慮の観点から水分散タイプのポリウレタンが好ましく用いられる。
本発明で用いられるポリウレタンとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるものが好ましい。
本発明で用いられる前記のポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系、シリコーン系およびフッ素系のジオールを採用することができ、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。ポリマージオールは、耐加水分解性の観点からは、ポリカーボネート系のジオールおよびポリエーテル系のジオールが好ましく用いられる。また、耐光性と耐熱性の観点からは、ポリカーボネート系のジオールおよびポリエステル系のジオールが好ましく用いられる。さらに、耐加水分解性と耐熱性と耐光性のバランスの観点からは、ポリカーボネート系のジオールとポリエステル系のジオールがより好ましく、特に好ましくはポリカーボネート系のジオールが好ましく用いられる。
前記のポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
前記のアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネート系ジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネート系ジオールのいずれでも良い。
前記のポリエステル系ジオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
前記の低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノールから選ばれる1種または2種以上を使用することができる。また、ビスフェノールAに、各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
また、前記の多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
前記のポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
本発明で用いられるポリマージオールの数平均分子量は、500〜4000であることが好ましい。数平均分子量を500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、風合いが硬くなることを防ぐことができる。また、数平均分子量を4000以下、より好ましくは3000以下とすることにより、ポリウレタンとしての強度を維持することができる。
前記の有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートが好ましく用いられる。
前記の鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミンおよびメチレンビスアニリン等のアミン系の鎖伸長剤、およびエチレングリコール等のジオール系の鎖伸長剤を用いることができる。また、ポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを、鎖伸長剤として用いることもできる。
ポリウレタン樹脂には、所望により、耐水性、耐摩耗性および耐加水分解性等を向上させる目的で、架橋剤を併用することができる。架橋剤は、ポリウレタン樹脂に対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、またポリウレタン樹脂分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤でもよい。本発明においては、ポリウレタン樹脂構造内により均一に架橋点を形成することができ、柔軟性の減少を軽減できる点から、内部架橋剤を用いることが好ましい。
前記の架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基などを有する化合物を用いることができる。ただし、架橋が過剰に進むとポリウレタンが硬化してシート状物の風合いも硬くなる傾向にあるため、反応性と柔軟性とのバランスの点ではシラノール基を有する化合物が好ましく用いられる。
また、本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、分子構造内に親水性基を有していることが好ましい。分子構造内に親水性基を有することにより、水分散型ポリウレタン樹脂としての分散性と安定性を向上させることができる。
前記の水性基としては、例えば、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩やカルボン酸塩等のアニオン系、ポリエチレングリコール等のノニオン系、およびカチオン系とノニオン系の組み合わせ、およびアニオン系とノニオン系の組み合わせのいずれの親水性基も採用することができる。中でも、光による黄変や中和剤による弊害の懸念のないノニオン系の親水性基が、特に好ましく用いられる。
アニオン系の親水性基の場合は、中和剤が必要となり、例えば、前記の中和剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミンおよびジメチルエタノールアミン等の第3級アミンである場合は、製膜や乾燥時の熱によってアミンが発生して揮発し、系外に放出される。そのため、大気放出や作業環境の悪化を抑制するために、揮発するアミンを回収する装置の導入が必須となる。また、アミンは加熱によって揮発せずに最終製品であるシート状物中に残留した場合、製品の焼却時等に環境へ排出されることも考えられる。これに対し、ノニオン系の親水性基の場合は、中和剤を使用しないためアミン回収装置を導入する必要はなく、アミンのシート状物中への残留の心配もないため、好ましく用いることができる。
また、前記のアニオン系親水基の中和剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等である場合、ポリウレタン部分が水に濡れるとアルカリ性を示すこととなるが、ノニオン系の親水性基の場合は中和剤を使用しないため、ポリウレタンの加水分解による劣化を心配する必要もない。
本発明で用いられるポリウレタン樹脂には、所望により各種の添加剤、例えば、カーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系、シリコーン系および無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系およびリン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系およびオキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系やベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、柔軟剤、撥水剤、凝固調整剤、染料、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、セルロース粒子およびマイクロバルーン等の充填剤、およびシリカや酸化チタン等の無機粒子などを含有させることができる。
また、極細繊維とポリウレタン樹脂の間の空隙をさらに大きくするために、ポリウレタン樹脂に、炭酸水素ナトリウムなどの無機系の有機系発泡剤や、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の有機系発泡剤を含有させることができる。
一般に高分子弾性体は粘性特性と弾性特性を有し、本発明で用いられるアクリル樹脂は、樹脂膜の反発感が優れることが重要であることから弾性特性に優れている。一方、本発明で用いられるポリウレタン樹脂は、樹脂膜の柔軟性が優れていることが重要であることから、粘性特性に優れていることが好ましい。
ここで、上記の弾性特性に優れているポリマーの代表として、アクリル樹脂が挙げられ、粘性特性に優れたポリマーの代表として、ポリウレタン樹脂が挙げられる。アクリル樹脂とポリウレタン樹脂は、弾性特性または粘性特性に優れるとともに、耐久性にも優れることから、シート状物で使用した際の耐久性に優れており、本発明で特に好ましく用いられる。
本発明で用いられるアクリル樹脂ポリウレタン樹脂の質量比率は、10:90〜90:10の範囲であることが好ましく、より好ましくは、20:80〜80:20である。アクリル樹脂ポリウレタン樹脂の質量比率を10:90以上、より好ましくは20:80以上とすることにより、シート状物に十分な反発感を与えることができ、90:10以下、より好ましくは80:20以下とすることにより、シート状物に十分な柔軟性を与えることができる。
シート状物におけるアクリル樹脂ポリウレタン樹脂の付与量の合計は、不織布シートの極細繊維質量に対し、好ましくは0.5〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜40質量%である。付与量を0.5質量%以上とすることにより、十分な力学物性が得られ、付与量を50質量%以下とすることにより、柔軟性低下の影響が少なくなる。
本発明のシート状物は、アクリル樹脂ポリウレタン樹脂が不織布シート内部の厚み方向に層状に配置されていることが肝要である。不織布シート内部の厚みの方向にアクリル樹脂ポリウレタン樹脂が層状に配置され、高分子弾性体による2層構造を形成することにより、アクリル樹脂による反発感とポリウレタン樹脂による柔軟性の両方を発現させることができる。さらに、シート状物の柔軟性と反発感は、付与するアクリル樹脂ポリウレタン樹脂の質量比により、制御することができる。ここで言う不織布シート内部における厚み方向の2層構造とは、シート状物の表面に高分子弾性体が塗布されて形成される2層構造のことではなく、極細繊維からなる不織布シート内にアクリル樹脂が付与されている層と、極細繊維からなる不織布シート内にポリウレタン樹脂が付与されている層とで構成される構造のことを示す。
また、本発明のシート状物は、機能性を付与する等の目的で、第3の高分子弾性体や第4の高分子弾性体を付与することもできる。
本発明のシート状物の厚みは、0.1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmである。シート状物の厚みを0.1mm以上とすることにより、引張強力や引き裂き強力等の力学物性が得られ、また厚みを5mm以下とすることにより、シートの風合いが硬くなることを防ぐことができる。
本発明のアクリル樹脂の層の厚みは、好ましくは0.05〜4.5mmであり、より好ましくは0.1〜1.5mmである。アクリル樹脂の層の厚みを0.05mm以上とすることにより、十分な力学物性が得られ、また厚みを4.5mm以下とすることにより、柔軟性低下の影響が少なくなる。
本発明のポリウレタン樹脂の層の厚みは、好ましくは0.05〜4.5mmであり、より好ましくは0.1〜1.5mmである。ポリウレタン樹脂の層の厚みを0.05mm以上とすることにより、十分な力学物性が得られ、また厚みを4.5mm以下とすることにより、シートが重くなることによる風合い低下の影響が少なくなる。
次に、本発明のシート状物の製造方法について述べる。本発明のシート状物の製造方法では、繊維質不織シート基材にアクリル樹脂を付与し、次いでその繊維質不織シート基材から極細繊維を発現させた後に、さらにポリウレタン樹脂を付与する。
具体的に、本発明のシート状物の製造方法は、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質不織シート基材に、アクリル樹脂を付与する工程、前記アクリル樹脂が付与された繊維質不織シート基材から平均単繊維直径が0.3〜7.0μmの極細繊維を発現させる工程、および、前記極細繊維を発現させた繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与する工程を、これらの工程順に行う方法である。
繊維質不織シート基材から極細繊維を形成させる手段としては、極細繊維発現型繊維を用いることが好ましい。極細繊維発現型繊維を用いることにより、極細繊維束が絡合した形態を安定して得ることができる。
極細繊維発現型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、海成分を溶剤などを用いて溶解除去することによって、残存した島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置させ、各成分を剥離分割することによって、極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、シート状物の柔軟性や風合いの観点からも好ましく用いられる。
海島型繊維には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがある。均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物の強度にも資する点からは、海島型複合繊維が好ましく用いられる。
海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、ポリ乳酸、およびポリビニルアルコールなどを用いることができる。中でも、有機溶剤を使用せずに分解可能なアルカリ分解性の、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステルやポリ乳酸や、熱水で海成分除去が可能なポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
上記の極細繊維からなる繊維質基材の形態としては、織物、編物および不織布等が挙げられるが、中でも、表面起毛処理した際のシート状物の表面品位、特に表面繊維の緻密感が良好であることから、不織布シートが用いられる。不織布シートは、短繊維不織布および長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位の点では短繊維不織布が好ましく用いられる。
繊維質基材として用いられる繊維質不織シート基材において、繊維あるいは繊維束を絡合させる方法としては、例えば、ニードルパンチやウォータージェットパンチを採用することができる。
本発明において、繊維質不織シート基材にアクリル樹脂を付与する方法としては、当該分野で通常用いられる各種方法を採用することができるが、アクリル樹脂を均一に付与できるという観点から、アクリル樹脂を水に溶解または分散させ、繊維質不織シート基材に含浸し加熱乾燥する方法が好ましく用いられる。
アクリル樹脂を繊維質不織シート基材に付与する際の水溶液または水分散液の固形分質量濃度は、0.1〜40質量%であることが好ましい。固形分質量濃度は低すぎると、アクリル樹脂の付与量が必要量に達しにくく、固形分質量濃度は高すぎると、後述する繊維質不織シート基材の両表面へのアクリル樹脂の偏在がしにくくなる。固形分質量濃度は、より好ましくは0.5〜30質量%である。
繊維質不織シート基材に対するアクリル樹脂の乾燥後の付与量は、0.05〜45質量%であることが好ましい。アクリル樹脂の付与量を0.05%質量以上とすることにより、十分な反発感が得られ、付与量を45質量%以下とすることにより、柔軟性低下の影響が少なくなる。
不織布シートに含浸したアクリル樹脂液は、繊維質不織シート基材の両表面からそれぞれ厚み方向0〜30%の範囲に移行させた後に凝固させ、偏在させることが好ましく、後述する乾燥温度と乾燥時間で熱処理を行うことにより、繊維質基不織シート材の両表面から厚み方向内側に0〜30%の範囲に、より好ましくは0〜20%の範囲に移行させた後に凝固させることができる。
図1は、上記の繊維質不織シート基材の両表面から厚み方向0〜30%の範囲を例示説明するための概略断面図である。
図1において、繊維質不織シート基材の厚み方向の全範囲Aのうち、繊維質不織シート基材の両表面からそれぞれ厚み方向0〜30%の範囲B、Cが表わされている。ここにおいて、前記のA、B、Cの関係式は、B=C=A×0.3である。
それにより、第1の高分子弾性体をシート両表面側に多く内部に少なく配置させることができ、製品での第1の高分子弾性体の層を形成することができる。
また、乾燥温度は、温度が低すぎると乾燥時間が長くなり、温度が高すぎると第1の高分子弾性体が劣化する懸念があるため、80〜160℃の温度で乾燥することが好ましく、乾燥温度は、さらに好ましくは110〜150℃である。また、乾燥時間は、通常1〜20分程度であり、加工性の観点から、好ましくは1〜10分であり、より好ましくは1〜5分である。
海島型繊維を用いた場合の脱海処理は、繊維質不織シート基材へのアクリル樹脂の付与後に行う。アクリル樹脂の付与後に脱海処理を行うと、アクリル樹脂が補強材の役割を果たし、脱海処理時の形態保持性が得られる。
海島型繊維等の極細繊維発現型繊維から極細繊維を発現させる方法は、溶剤中に海島型繊維を浸漬し、搾液することによって行うことができる。また、搾液後に湿熱等の熱処理を行うことでも実施することができる。
海島型繊維から海成分を溶出し除去する脱海処理は、溶剤中に海島型繊維を浸漬し、窄液することによって行うことができる。海成分を溶解する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンの場合には、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることができる。また、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸の場合には、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができ、海成分がポリビニルアルコールの場合は熱水を用いることができる。
海成分を溶解する溶剤としては、工程の環境配慮の観点からは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液や熱水での脱海処理が好ましく用いられる。
本発明においては、アクリル樹脂を付与して極細繊維を発現させた繊維質不織シート基材に、ポリウレタン樹脂が付与される。付与されるポリウレタン樹脂は、有機溶剤タイプおよび水分散タイプのいずれでもよいが、環境配慮の観点から水分散タイプの高分子弾性体が好ましく用いられる。
繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与する方法としては、ポリウレタン樹脂を繊維質不織シート基材に含浸し、塗布し、凝固後、加熱乾燥する方法が、ポリウレタン樹脂を繊維質不織シート基材に均一に付与することができるため、好ましく用いられる。
ポリウレタン樹脂液の濃度(ポリウレタン樹脂液に対するポリウレタン樹脂の含有量)は、ポリウレタン樹脂の貯蔵安定性の観点から、10〜50質量%が好ましく、より好ましくは15〜40質量%である。
また、本発明で用いられポリウレタン樹脂液は、貯蔵安定性や製膜性向上のために、水溶性有機溶剤をポリウレタン樹脂液に対して40質量%以下含有していてもよいが、製膜環境の保全等の点から、有機溶剤の含有量は1質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明で用いられるポリウレタン樹脂液としては、感熱凝固性を有するものが好ましい。感熱凝固性を有するポリウレタン樹脂液を用いることにより、繊維質基材の両表面への偏在がしにくくなり、アクリル樹脂の層とポリウレタン樹脂の層を形成することができる。
本発明において、感熱凝固性とは、ポリウレタン樹脂液を加熱した際に、ある温度(感熱凝固温度)に達するとポリウレタン樹脂液の流動性が減少し、凝固する性質のことを言う。第2の高分子弾性体付きシート状物の製造においては、ポリウレタン樹脂液を繊維質不織シート基材に付与後、それを乾熱凝固、湿熱凝固、湿式凝固、あるいはこれらの組み合わせにより凝固させ、乾燥することにより繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与する。感熱凝固性を示さないポリウレタン樹脂液を凝固させる方法としては、乾式凝固が工業的な生産において現実的であるが、その場合、繊維質不織シート基材の表層にポリウレタン樹脂が集中するマイグレーション現象が発生し、本発明の2層構造が形成しにくくなる。
本発明で用いられるポリウレタン樹脂液の感熱凝固温度は、40〜90℃であることが好ましい。感熱凝固温度を40℃以上とすることにより、ポリウレタン樹脂液の貯蔵時の安定性が良好となり、操業時のマシンへの第2の高分子弾性体の付着等を抑制することができる。また、感熱凝固温度を90℃以下とすることにより、繊維質不織シート基材中でのポリウレタン樹脂のマイグレーション現象を抑制することができる。
本発明のひとつの態様において、感熱凝固温度を前記のとおりとするために、適宜感熱凝固剤を添加することができる。感熱凝固剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムおよび塩化カルシウム等の無機塩;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、および過酸化ベンゾイル等のラジカル反応開始剤などが挙げられる。
前記の湿熱凝固の温度は、ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度以上とすることが好ましく、より好ましくは40〜200℃である。湿熱凝固の温度を好ましくは40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタン樹脂の凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができ、ポリウレタン樹脂をシート内部で凝固させることができ、本発明で意図する2層構造を得ることができる。一方、湿熱凝固の温度を好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、アクリル樹脂ポリウレタン樹脂の熱劣化を防ぐことができる。
前記の湿式凝固の温度は、ポリウレタン樹脂の感熱凝固温度以上とし、40〜100℃とすることが好ましい。熱水中での湿式凝固の温度を好ましくは40℃以上、より好ましくは80℃以上とすることにより、ポリウレタン樹脂の凝固までの時間を短くしてマイグレーション現象をより抑制することができ、ポリウレタン樹脂をシート内部で凝固させることができ、本発明で意図する2層構造を得ることができる。
前記の乾式凝固の温度および乾燥温度は、80〜200℃であることが好ましい。乾式凝固温度および乾燥温度を好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上とすることにより、生産性に優れる。一方、乾式凝固温度および乾燥温度を好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下とすることにより、アクリル樹脂ポリウレタン樹脂の熱劣化を防ぐことができる。
繊維質不織シート基材に対するポリウレタン樹脂の乾燥後の付与量は、0.05〜45質量%であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の付与量を0.05%質量以上とすることにより、十分な力学物性が得られ、付与量を45質量%以下とすることにより、シートが重くなることによる風合い低下の影響が少なくなる。
本発明では、極細処理化した繊維質不織シート基材に、PVAを付与してからポリウレタン樹脂を付与し、その後PVAを除去することができる。ポリウレタン樹脂の付与前にPVAを付与することにより、極細繊維の周囲にPVAが付着され、さらにその周囲にポリウレタン樹脂が付着されて、その後PVAが除去されることにより、極細繊維とポリウレタン樹脂の間に空間ができ、シート状物に柔軟性を発現させることができる。ここでいうPVAは、高分子弾性体ではなく、ポリウレタン樹脂と繊維の間に空間を発現するためのスペーサーとして用いられる樹脂のことである。
上記のようにして、本発明の不織布シートと、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂から構成されるシート状物が得られる。
本発明のシート状物の起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて行うことができる。特に、サンドペーパーを用いることにより、均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、シート状物の表面に前記のような均一な極細繊維の立毛を形成させるためには、極細繊維の直径と用いられるサンドペーパーの砥粒径との比率、サンドペーパーと皮革様シート状物との速度の比率、研削量および研削負荷等を適切な範囲に制御することが好ましい。また、研削負荷を低減するために、バフ段数が3段以上の多段バッフィングとし、前半の1〜2段以上でトータル研削量の70〜90%、最終の1段で30〜10%の研削を行い、表面を整えることが好ましい。
上記条件でシート状物をバッフィング研削することにより、高分子弾性体と結合した極細繊維が効率的に掘り起こされ、表面繊維の分散性が確保される。バッフィング研削により、前述した極細繊維束からなる立毛が表面に緻密に配列した表面状態を形成することが可能となる。
本発明のシート状物の製造方法においては、少なくともアクリル樹脂を付与した繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与した後において、シートの厚み方向に半裁する工程を含んでもよい。このようにシート厚み方向に半裁する工程を含むことにより、生産効率を向上させることができる。
本発明のシート状物においては、少なくともアクリル樹脂を付与した繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与した不織シートに、第3や第4の高分子弾性体を付与してもよい。第3や第4の高分子弾性体を付与することにより、毛羽落ち防止等の種々用途向けの機能性を付与することもできる。
上記のシート状物は、染色することができる。染色方法としては、シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えてシート状物を柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。
上記の染色の際の温度は、繊維の種類にもよるが、80〜150℃であることが好ましい。染色温度を好ましくは80℃以上、より好ましくは110℃以上とすることにより、繊維への染着を効率良く行わせることができる。一方、染色温度を好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下とすることにより、第1の高分子弾性体や第2の高分子弾性体の劣化を防ぐことができる。
上記の染色に用いる染料は、繊維質基材を構成する繊維の種類にあわせて選択することができ、例えば、ポリエステル系繊維であれば分散染料を用い、ポリアミド系繊維であれば酸性染料や含金染料を用い、更にそれらの組み合わせを用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行うことができる。
また、染色時に染色助剤を使用することも好ましい態様である。染色助剤を用いることにより、染色の均一性や再現性を向上させることができる。また、染色と同浴または染色後に、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤および抗菌剤等を用いた仕上げ剤処理を施すことができる。
本発明により得られるシート状物は、家具、椅子および壁材や、自動車、電車および航空機などの車輛室内における座席、天井および内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴および婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、およびそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布およびCDカーテン等の工業用資材として好適に用いることができる。
次に、本発明のシート状物とその製造方法を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[評価方法]
(1)平均単繊維直径測定:
平均単繊維直径は、繊維質不織シート基材またはシート状物断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、繊維をランダムに100本選び、単繊維直径を測定して平均値を計算することにより算出した。
繊維質不織シート基材またはシート状物を構成する繊維が異形断面の場合は、異形断面の外周円直径を単繊維直径として算出する。また、円形断面と異形断面が混合している場合、単繊維直径が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれの存在本数比率に応じたサンプリング数を計100本となるように選び算出する。ただし、繊維質不織シート基材に補強用の織物や編物が挿入されているような場合には、当該補強用の織物や編物の繊維は、平均単繊維直径の測定においてサンプリング対象からは除外する。
(2)シート状物の層状構造観察:
シート状物の断面構造は、シート状物断面のマイクロスコープを用い、カラー写真で倍率100倍で撮影し観察した。第2の高分子弾性体に含有した顔料により第1の高分子弾性体と第2の高分子弾性体の色相差により、層状構造を確認し、第1の高分子弾性体の層と第2の高分子弾性体の層みをそれぞれ10箇所ずつ測定し、その平均値を算出した。
(3)第1の高分子弾性体のガラス転移温度(Tg)測定:
示差走査熱量測定装置(RDC220(セイコー・インスツルメンツ))を用い、窒素雰囲気下、窒素流量20mL/分とし、第1の高分子弾性体乾式フィルム(熱風乾燥機を用いて、100℃の温度で5分間乾燥の条件で作製した)5mgを秤量して測定したDSCカーブから、算出した。
(4)アクリル樹脂膜の圧縮弾性率:
アクリル樹脂膜の圧縮弾性率は、JIS L1913(2005)6.12 圧縮弾性率測定に準じて測定した。まず、5cm×5cmの樹脂膜を5枚重ね、0.5kPaの初期荷重をかけ、初期厚みT0を測定する。次に、30kPaの荷重を1分間かけ、30kPaかけたときの厚みT1を測定する。その後、荷重を除き、1分間放置した後の再び0.5kPaの荷重をかけたときの厚みをT´0とし、次式より算出した。
・圧縮弾性率=(T´0−T1)/(T0−T1)×100(%)。
(5)アクリル樹脂の質量減少率:
ポリプロピレンの不織布2gに対して、乾燥後の合計質量が5gとなるようにアクリル樹脂を付与した不織布の質量をW0gとし、恒温槽で液温90℃とした10質量%水酸化ナトリウム水溶液300mL中に、前記第1の高分子弾性体を付与した不織布を10分間浸漬した後、120℃の温度の熱風乾燥機で20分間乾燥した後の不織布質量をW1gとして、次式により求めた。
・質量減少率=(W0−W1)/(W0−2)×100(%)。
(6)シート状物の柔軟性:
シート状物の柔軟性は、剛軟度により評価した。剛軟度は、JIS L1096(1999)8.19.4 D法(ハートループ法)に準じ、2cm×25cmの試験片を水平棒のつかみにハートループ状に取り付け(有効長:20cm)、1分経過後の水平棒の頂点部とループの最下点との距離L(mm)を剛軟度として測定した。剛軟度で6cm以上を柔軟性良好とした。
(7)シート状物の反発感:
シート状物の反発感は、健康状態の良好な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、官能評価によって、下記のように5段階評価し、最も多かった評価を反発感とした。反発感は、3級〜5級を良好とした。
5級:シート状物を把持した時の反発感が非常にあり、良好である。
4級:5級と3級の間の評価である。
3級:シート状物を把持した時の反発感がややあり、まずまず良好である。
2級:3級と1級の間の評価である。
1級:シート状物を把持した時の反発感がなく、不良である。
[実施例1]
(繊維質不織シート基材)
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分20質量%、島成分80質量%の複合比率で、島数16島/1フィラメント、平均単繊維直径21μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質不織シート基材とした。得られた繊維質不織シート基材は、目付が750g/m、厚みが2.20mmであった。
アクリル樹脂液の調整)
Tgが−31℃のアクリル樹脂(日本ゼオン株式会社製“ボンコート”(登録商標)LX874)を固形分8質量%の水溶液に調整し、第1の高分子弾性体液を得た。第1の高分子弾性体の質量減少率は6%であった。
アクリル樹脂の付与)
上記の繊維質不織シート基材に上記のアクリル樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質不織シート基材の島成分質量に対する第1の高分子弾性体の付着量が15質量%となるように、アクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートを95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して5分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去した高分子弾性体と極細繊維からなる脱海シートを得た。脱海シートの平均単繊維直径は、4.4μmであった。
(PVA液の調製)
ケン化度が99%、重合度1400のPVA(日本合成化学株式会社製NM−14)を固形分10質量%の水溶液に調製し、PVA液を得た。
(PVA液の付与)
上記の脱海シートに上記のPVA液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVA付与シートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
ポリオールにポリヘキサメチレンカーボネートを適用し、イソシアネートにジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを適用したポリカーボネート系自己乳化型ポリウレタン液の固形分100質量部に対して、感熱凝固剤として過硫酸アンモニウム(APS)2質量部を加え、顔料としてカーボンブラック1質量部を加え、水によって全体を固形分濃度10質量%に調製し、ポリウレタン樹脂液を得た。感熱凝固温度は72℃であった。
ポリウレタン樹脂液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記のポリウレタン樹脂液を含浸させ、100℃の温度の湿熱雰囲気下で5分間処理後、乾燥温度120℃の温度で5分間熱風乾燥させ、さらに150℃の温度で2分間乾熱処理を行うことにより、極細繊維質量に対する第2の高分子弾性体の付着量が15質量%となるように、ポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去)
上記のポリウレタン樹脂付与シートを、95℃の温度に加熱した水中に浸漬して10分処理を行い、付与したPVAを除去したシートを得た。
(半裁)
上記のPVAを除去したシートを、厚さ方向に半裁した。半裁性は、良好であった。
(起毛)
上記の半裁シートの半裁面の表面を、240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いて、3段研削によって起毛処理を行った。
(染色・還元洗浄)
上記の起毛シートを、サーキュラー染色機を用いて分散染料により染色し還元洗浄を行い、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表1に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂の層の厚みが300μmで、ポリウレタン樹脂の厚みが500μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物の柔軟性と反発感は、共に良好であった。
[実施例2]
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材を得た。
アクリル樹脂液の調整)
固形分濃度が5質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂液を得た。
アクリル樹脂の付与)
上記の繊維質不織シート基材に上記のアクリル樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質不織シート基材の島成分質量に対する第1の高分子弾性体の付着量が10質量%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(PVA液の調製・付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVA付与シートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
固形分濃度が13質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記のポリウレタン樹脂液を含浸させ、極細繊維質量に対する第2の高分子弾性体の付着量が20質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表1に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが150μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが650μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物は、実施例1より反発感は若干劣るものの、柔軟性は良好であった。
[実施例3]
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材を得た。
アクリル樹脂液の調整)
固形分濃度が10質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂液を得た。
アクリル樹脂の付与)
上記の繊維質不織シート基材に上記のアクリル樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質不織シート基材の島成分質量に対するアクリル樹脂の付着量が20質量%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂を付与したシートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(PVA液の調製・付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVAを付与したシートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
固形分濃度が7質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記の第2の高分子弾性体液を含浸させ、極細繊維質量に対するポリウレタン樹脂の付着量が10質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表1に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが500μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが300μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物は、実施例1より柔軟性は若干劣るものの、反発感は良好であった。
[実施例4]
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材を得た。
アクリル樹脂液の調整)
固形分濃度が1質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂液を得た。
アクリル樹脂の付与)
上記の繊維質不織シート基材に上記のアクリル樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質不織シート基材の島成分質量に対するアクリル樹脂の付着量が2質量%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(PVA液の調製・付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVAを付与したシートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
固形分濃度が20質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記のポリウレタン樹脂液を含浸させ、極細繊維質量に対するポリウレタン樹脂の付着量が28質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表1に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが50μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが750μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物は、実施例1より反発感は劣るものの、柔軟性は非常に良好であった。
[実施例5]
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材を得た。
アクリル樹脂液の調整)
固形分濃度が15質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂液を得た。
アクリル樹脂の付与)
上記の繊維質不織シート基材に上記のアクリル樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質不織シート基材の島成分質量に対するアクリル樹脂の付着量が28質量%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(PVA液の調製・付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVA付与シートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
固形分濃度が2質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記の第1の高分子弾性体液を含浸させ、極細繊維質量に対するポリウレタン樹脂の付着量が2質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表1に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが700μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが100μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物は、実施例1より柔軟性は劣るものの、反発感は非常に良好であった。
参考例1
アクリル樹脂の代わりに、Tgが58℃のSBR樹脂(JSR株式会社製SBR樹脂2507H、質量減少率8%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、次の表1に示す。得られたシート状物の断面観察では、SBR樹脂層の厚みが300μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが500μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物は、実施例1〜5より柔軟性と反発感が若干劣るものの、満足のいくレベルであった。
参考例2
アクリル樹脂の代わりに、Tgが48℃のナイロン共重合体樹脂(住友精化株式会社製ナイロン共重合体樹脂“セポルジョン”(登録商標)PA200、質量減少率7%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表2に示す。得られたシート状物の断面観察では、ナイロン共重合体樹脂層の厚みが300μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが500μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物は、実施例1〜5より柔軟性と反発感が若干劣るものの、満足のいくレベルであった。
[実施例
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材を得た。
アクリル樹脂液の調整・付与)
上記の繊維質不織シート基材に実施例1で得たアクリル樹脂液を含浸させ、実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材の島成分質量に対するアクリル樹脂の付着量が15質量%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(PVA液の調製)
ケン化度が87%、重合度500のPVA(日本合成化学株式会社製GL−05)を固形分5質量%の水溶液に調製し、PVA液を得た。
(PVA液の付与)
上記の繊維質不織シート基材と上記のPVA水溶液を用いて、実施例1と同様にして繊維質不織シート基材の繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVA付与シートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
ポリマージオールがポリエーテル系75質量%とポリエステル系25質量%とからなるポリウレタン(ゲル化点4.2ml)を固形分濃度12質量%に調整した30%DMF水溶液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与・PVA除去)
上記脱海シートに上記のポリウレタン樹脂液を含浸させ、極細繊維に対するポリウレタン樹脂の付着量が15質量%となるように調整し、35℃の温度の水でポリウレタンを凝固させてDMFとPVAを同時に除去し、ポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表2に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが300μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが500μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物の柔軟性と反発感は、良好であった。
[実施例
(繊維質不織シート基材)
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分50質量%、島成分50質量%の複合比率で、島数36島/1フィラメント、平均単繊維直径18μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布とした。得られた繊維質不織シート基材は、目付が600g/m、厚みが1.80mmであった。
アクリル樹脂液の調整・付与)
実施例1と同様にして、アクリル樹脂の付着量が15質量部%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートを95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して5分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去した高分子弾性体と極細繊維からなる脱海シートを得た。脱海シートの平均単繊維直径は、2.1μmであった。
(PVA液の調製・付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVAを付与したシートを得た。
(第2の高分子弾性体液の調製・付与)
実施例1と同様にして、極細繊維質量に対するポリウレタン樹脂の付着量が15質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、次の表2に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが300μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが500μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物の柔軟性と反発感は、良好であった。
[実施例
(繊維質不織シート基材)
海成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分60質量%、島成分40質量%の複合比率で、島数450島/1フィラメント、平均単繊維直径18μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布とした。得られた繊維質不織シート基材は、目付が700g/mで、厚みが2.20mmであった。
アクリル樹脂液の調整・付与)
実施例1と同様にして、アクリル樹脂の付着量が15質量部%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のアクリル樹脂付与シートを95℃の温度に加熱した濃度10g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して10分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去した高分子弾性体と極細繊維からなる脱海シートを得た。脱海シートの平均単繊維直径は、0.5μmであった。
(PVA液の調製・付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVAを付与したシートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製・付与)
実施例1と同様にして、極細繊維質量に対するポリウレタン樹脂の付着量が15質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、次の表2に示す。得られたシート状物の断面観察では、アクリル樹脂層の厚みが200μmで、ポリウレタン樹脂層の厚みが500μmの2層状構造が確認できた。得られたシート状物の柔軟性と反発感は、良好であった。
[比較例1]
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして、繊維質不織シート基材を得た。
(繊維極細化(脱海))
上記の繊維質不織シート基材に、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(PVA液の調製、付与)
実施例1と同様にして、脱海シートの繊維質量に対するPVAの付着量が10質量%のPVAを付与したシートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
固形分濃度が20質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与)
上記のPVA付与シートに、上記のポリウレタン樹脂液を含浸させ、極細繊維質量に対するポリウレタン樹脂の付着量が30質量%となるようにポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(PVAの除去・半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表3に示す。得られたシート状物の断面観察では、厚み800μmのポリウレタン樹脂層のみが確認できた。得られたシート状物の柔軟性は良好であったが、反発感はなく、実施例1〜8に対して、反発感に劣っており、満足のいくレベルではなかった。
[比較例2]
(繊維質不織シート基材)
海成分として、ポリスチレンを用い、島成分として、ポリエチレンテレフタレートを用い、海成分20質量%、島成分80質量%の複合比率で、島数16島/1フィラメント、平均単繊維直径21μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質不織シート基材とした。
(PVA液の調製)
ケン化度が87%、重合度500のPVA(日本合成化学株式会社製GL−05)を固形分10質量%の水溶液に調製し、PVA液を得た。
(PVA液の付与)
上記の繊維質不織シート基材と上記のPVA水溶液を用いて、実施例1と同様にして繊維質不織シート基材の繊維質量に対するPVAの付着量が30質量%のPVAを付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記のPVA付与シートをトリクロロエチレンに浸漬して、海島型複合繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。
ポリウレタン樹脂液の調製)
ポリマージオールがポリエーテル系75質量%とポリエステル系25質量%とからなるポリウレタン(ゲル化点4.2ml)を固形分濃度12質量%に調整した30%DMF水溶液を得た。
ポリウレタン樹脂液の付与・PVA除去)
上記脱海シートに上記のポリウレタン樹脂液を含浸させ、極細繊維に対するポリウレタン樹脂の付着量が30質量%となるように調整し、35℃の温度の水でポリウレタン樹脂液を凝固させてDMFとPVAを同時に除去し、ポリウレタン樹脂を付与したシートを得た。
(半裁・起毛・染色・還元洗浄)
実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、表3に示す。得られたシート状物の断面観察では、厚み800μmのポリウレタン樹脂層のみが確認できた。得られたシート状物の柔軟性は良好であったが、反発感はなく、実施例1〜8に対して、反発感に劣っており、満足のいくレベルではなかった。
[比較例3]
(繊維質不織シート基材)
実施例1と同様にして繊維質不織シート基材を得た。
アクリル樹脂液の調整)
実施例4と同様にして、アクリル樹脂液を得た。
アクリル樹脂の付与)
上記の繊維質不織シート基材に上記のアクリル樹脂液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質不織シート基材の島成分質量に対するアクリル樹脂の付着量が30質量%となるようにアクリル樹脂を付与したシートを得た。
(繊維極細化(脱海))
上記の第1の高分子弾性体を付与したシートに、実施例1と同様にして脱海シートを得た。
(半裁・起毛・染色・還元洗浄)
上記の脱海シートに、実施例1と同様にして、シート状物を得た。得られたシート状物の評価結果を、次の表3に示す。得られたシート状物の断面観察では、厚み600μmのアクリル樹脂層のみが確認できた。得られたシート状物の反発感性は良好であったが、柔軟性はなく、実施例1〜9に比して、柔軟性に劣っており、満足のいくレベルではなかった。
上記の各実施例、比較例で得られたシート状物の評価結果を、次の表3に示す。
実施例1〜9で得られたシート状物は、いずれも柔軟性と反発感が良好で、柔軟性と反発感を両立するものであった。一方、比較例1〜3で得られたシート状物は、柔軟性と反発感の両立ができておらず、満足できるものではなかった。
A:繊維質不織シート基材の厚み方向の全範囲
B:繊維質不織シート基材の厚み方向の0〜30%の範囲
C:繊維質不織シート基材の厚み方向の0〜30%の範囲

Claims (4)

  1. 平均単繊維直径が0.3〜7.0μmの極細繊維が絡合されてなる不織布シートと、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂から構成されるシート状物あって、前記アクリル樹脂の圧縮弾性率が80%以上であり、前記アクリル樹脂および前記ポリウレタン樹脂が前記不織布シート内部の厚み方向に層状に配置されてなることを特徴とするシート状物。
  2. アクリル樹脂とポリウレタン樹脂の質量比率が、10:90〜90:10であることを特徴とする請求項記載のシート状物。
  3. アクリル樹脂のガラス転移温度が100℃未満であることを特徴とする請求項2または記載のシート状物。
  4. 極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質不織シート基材に、圧縮弾性率が80%以上であるアクリル樹脂を繊維質不織シートの両表面から厚み方向0〜30%の範囲に付与する工程、前記圧縮弾性率が80%以上であるアクリル樹脂が付与された繊維質不織シート基材から平均単繊維直径が0.3〜7.0μmの極細繊維を発現させる工程、および、前記極細繊維を発現させた繊維質不織シート基材にポリウレタン樹脂を付与する工程、からなることを特徴とするシート状物の製造方法。
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