実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置を示す外観図である。図1(a)は、半導体装置100の平面図であり、図1(b)は半導体装置100の側面図、図1(c)は、半導体装置100の正面図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における半導体装置のリード端子の構成を示す外観図である。図2は、図1に示す半導体装置100のリード端子11を拡大して示したものである。図2(a)〜(c)は、それぞれ図1(a)〜(c)に対応しており、図2(a)は、リード端子11の平面図、図2(b)はリード端子11の側面図、図2(c)はリード端子11の正面図である。また、図1および図2では、半導体装置100およびリード端子11の向きを説明するためのXYZ直交座標軸も示した。本発明の他の図においても同様にXYZ直交座標軸を示した。
図1において、半導体装置100は、エポキシ樹脂などの樹脂で構成された筐体10と、半導体装置100を外部のプリント基板などに接続するためのリード端子11とを備えている。図1に示すように、半導体装置100の筐体10は、直方体状の形状を呈しており、Y−Z平面に平行な第1の主面である上面10aおよび第2の主面である下面10bと、上面10aと下面10bとを接続する4つの側面とを有している。
なお、筐体10の形状は直方体状に限るものではなく、第1の主面と、第1の主面の裏側に設けられた第2の主面とを有し、第1の主面が少なくとも1つの直線状の第1の辺を有しており、第1の主面と第2の主面とを接続する側面が第1の辺に平行な部位を備えていればよい。
本発明では便宜上、図1に示すように、筐体10の上面および下面は、リード端子11が屈曲した方向を上面10aとし、上面10aの裏側を下面10bとして呼ぶが、上面および下面の呼称を入れ替えて、リード端子11が屈曲した側を下面、その裏側を上面と呼称してもよい。第1の主面および第2の主面の呼称も同様に入れ替えて呼称してもよい。上面10aおよび下面10bは、好ましくは矩形状の平面であって、リード端子11が設けられた側の辺は直線状になっている。
4つの側面のうち、上面10aおよび下面10bの長辺に接続された側面は、長辺側側面10c、10dであり、上面10aおよび下面10bの短辺に接続された側面は、短辺側側面10e、10fである。図1では、長辺側側面10c、10dは屈曲面状に示しており、短辺側側面10e、10fは平面状に示しているが、長辺側側面10c、10dおよび短辺側側面10e、10fは、平面状、曲面状、屈曲面状などいずれの形状の面であってよい。但し、リード端子11が突出している長辺側側面10c、10dのうち少なくとも一方は、上面10aまたは下面10bが有する直線状の辺と平行な部位を有している。図1では、上面10aの長辺が直線状の辺であるので、長辺側側面10cおよび長辺側側面10dは、それぞれ上面10aとの接続部において長辺と平行な部位を有している。
図1に示すように、筐体10の長辺側側面10c、10dからは、複数のリード端子11が突出しており、複数のリード端子11は、筐体10の上面10aまたは下面10bの長辺に沿った方向に複数配列されている。複数のリード端子11は、筐体10の長辺側側面10cおよび長辺側側面10cの反対側に位置する長辺側側面10dの両方の側面からそれぞれ複数突出しており、それぞれ筐体10の上面10aまたは下面10bの長辺に沿った方向に複数配列されている。なお、本発明では、複数のリード端子11が配列された方向を配列方向と呼ぶ。配列方向は、筐体10の上面10aまたは下面10bの長辺に沿った方向であり、筐体10の上面10aまたは下面10bの長辺と平行な方向である。
図1(b)、(c)に示すように、筐体10の長辺側側面10c、10dから突出した複数のリード端子11は、筐体10から所定距離遠ざかる方向に延伸した後、筐体10の上面10a側に屈曲している。リード端子11は、筐体10の内部で半導体素子が接合されたリードフレームと一体的に形成されたものであって、リード端子11の厚さは、筐体10内部のリードフレームの厚さと同じになっている。
リード端子11の断面は、長辺と短辺とを有する矩形状となっており、長辺をリード端子11の幅、短辺をリード端子11の厚さと呼ぶ。リード端子11とリード端子11が突出している長辺側側面10c、10dとの接触部では、リード端子11の幅が上面10aと平行になっている。なお、図1では、リード端子11は、長辺側側面10c、10dから上面10aの長辺に垂直な方向に突出しているが、上面10aの長辺に垂直な方向から所定角度傾斜した方向に突出していてもよい。この場合には、リード端子11の幅方向は上面10aの長辺と平行ではなくなるが、リード端子11と長辺側側面10cあるいは長辺側側面10dとの接触点を含み、上面10aに平行であり、且つリード端子11の延伸方向に垂直な方向の距離をリード端子11の幅と定める。リード端子11の厚さは、リード端子11の幅に垂直な方向の距離である。なお、リード端子11は、断面形状が矩形状に限らず幅の距離が厚さより長い楕円状など他の形状の断面であってもよい。
また、図1では、リード端子11が、長辺側側面10c、10dから上面10aに平行な方向に突出しているが、リード端子11が、長辺側側面10c、10dから突出する方向は、上面10aに平行な方向から所定角度傾斜した方向であってもよい。但し、リード端子11は、筐体10内で半導体素子等が接合されるリードフレームと一体の金属板で形成されるので、リード端子11が長辺側側面10c、10dから突出する方向を上面10aに平行な方向とする方が製造工程を少なくできるので好ましい。
次に、リード端子11の構成について、図2を用いて詳しく説明する。図2は、図1に示した筐体10の長辺側側面10dから突出している複数のリード端子11のうちの1本を拡大して示したものであるが、長辺側側面10cから突出しているリード端子11も同様の構成となっている。図2に示したXYZ直交座標軸は、図1に示したXYZ直交座標軸と同一の方向を示している。
図2に示すように、リード端子11は、突出部11a、傾斜部11b、屈曲部11c、捩じれ部11d、先端部11eを有している。突出部11aは、リード端子11が筐体10の長辺側側面10c、10dから上面10aの長辺に垂直な方向に突出した部位である。傾斜部11bは、突出部11aに接続され、突出部11aの延伸方向である上面10aの長辺に垂直な方向から所定角度傾斜した方向に延伸した部位である。屈曲部は、傾斜部11bに接続され、リード端子11を上面10aに垂直な方向に屈曲させて上面10aに垂直な方向に延伸させた部位である。なお、屈曲部11cの上面10aに垂直な方向に延伸させた部位は1mm以上ある方が好ましいが、1mm以下の極めて短い距離であってもよい。捩じれ部11dは、屈曲部11cに接続され、上面10aの長辺に垂直な方向から傾斜部11bが傾斜した方向に捩じった部位である。そして、先端部11eは、捩じれ部11dに接続され、捩じれ部11dの延伸方向に延伸した部位である。先端部11eは、リード端子11の先端に設けられ半導体装置100の外部のプリント基板等のスルーホールに挿入されてはんだ接合される。
なお、ここで言う上面10aに垂直な方向の垂直は厳格に90°に限るものではなく、実質的に垂直であれば良い。半導体装置100のリード端子11の先端部11eは、プリント基板12のスルーホールに挿入されてはんだ接合されるため、リード端子11の先端部11eが上面10aに垂直な方向に延伸していれば、プリント基板12のスルーホールに容易に挿入することができる。すなわち、リード端子11の先端部11eをプリント基板12のスルーホールに容易に挿入することができる角度であれば垂直とみなしてよく、90°±5°であれば実質的に垂直とみなしてよく、90°±2°であればより好ましい。
図2(a)において、一点鎖線A−AはZ方向から見た突出部11aの中心線であり突出部の延伸方向である。一点鎖線B−BはZ方向から見た傾斜部11bの中心線であり傾斜部11bの延伸方向である。一点鎖線C−Cは捩じれ部11dと屈曲部11cとの接続部の断面の長軸側の中心線である。一点鎖線D−Dは捩じれ部11dと先端部11eとの接続部の断面の長軸側の中心線であり、先端部11eの断面の長軸側の中心線でもある。なお、リード端子11の傾斜部11bの断面は、先端部11eの断面と同じ形状になっており、突出部11aの断面も先端部11eの断面と同じ形状になっていてもよい。
図2(a)において、角度θaは、一点鎖線A−Aと一点鎖線B−Bとの間の角度であり、突出部11aが上面10aの長辺に垂直な方向に延伸しているので、上面10aの長辺に垂直な方向と傾斜部11bの延伸方向との間の角度である。角度θbは、一点鎖線C−Cと一点鎖線D−Dとの間の角度であり、捩じれ部11dが捩じられる角度である。以下では、角度θaおよび角度θbは、筐体10の上面10a側から見て、時計回り方向を正の角度として説明する。
図2(a)の平面視で示すように、リード端子11の傾斜部11bの傾斜方向は、上面10aの長辺に垂直な方向から、時計周りの方向に角度θa傾斜しており、リード端子11の捩じれ部11dの捩じれ方向は、角度θaと同じ方向である時計回りの方向に角度θb捩じられている。つまり、傾斜部11bの傾斜方向と捩じれ部の捩じれ方向は、いずれも平面視で時計回りの方向であり同じ方向である。
また、図2(b)において、一点鎖線E−EはX方向から見た突出部11aの中心線、一点鎖線F−FはX方向から見た先端部11eの中心線である。一点鎖線F−Fは、捩じれ部11d、先端部11eの延伸方向であり、上面10aに垂直な方向である。リード端子11が、長辺側側面10c、10dから上面10aと平行に突出している場合には、一点鎖線E−Eと一点鎖線F−Fとは直交するが、リード端子11は、上面10aと平行な方向から傾斜して突出してもよく、その場合には一点鎖線F−Fとの間の角度が80°〜100°となるようにする方がリード端子11の機械的強度の低下を抑制できるので好ましい。
図1および図2(a)、(b)に示すように、突出部11aは、筐体10の長辺側側面10dから、上面10aの長辺に垂直な方向に突出している。突出部11aの一端は、筐体10の長辺側側面10dに接している。突出部11aの長辺側側面10dから遠い側の他端は、傾斜部11bに接続されている。図2(a)に示すように、傾斜部11bは、X−Y平面に平行な方向、すなわち筐体10の上面10aあるいは下面10bに平行な方向に、突出部11aから角度θa傾斜して設けられている。つまり、突出部11aの中心線である一点鎖線A−Aに対し、傾斜部11bの中心線である一点鎖線B−Bは、角度θa傾斜している。換言すれば、傾斜部11bの中心線である一点鎖線B−Bは、長辺側側面10dが接続された筐体10の上面10aあるいは下面10bの長辺に垂直な方向から、角度θa傾斜している。角度θaは、+30°以上+60°以下、あるいは、−60°以上−30°以下であってよく、+45°、あるいは、−45°が好ましい。
図2(a)、(b)、(c)に示すように、リード端子11の傾斜部11bは、屈曲部11cで、筐体10の上面10a側に屈曲されている。屈曲部11cでの屈曲は、一点鎖線B−Bで示した傾斜部11bの中心線に垂直な直線、すなわち傾斜部11bの幅方向の直線を折り曲げ線として屈曲される。従って、図2(a)で示した一点鎖線B−Bと一点鎖線C−Cとは直交している。一点鎖線C−Cは、筐体10の上面10aの長辺に対して時計回り方向に角度θa傾いた直線となる。図2(a)に示すように、角度θaおよび角度θbの回転方向は同じであり、捩じれ部11dは、傾斜部11bが上面10aの長辺に垂直な方向から傾斜した方向に捩じられている。
捩じれ部11dは、屈曲部11cにより上面10aに垂直な方向に屈曲されたリード端子11を、上面10aに平行に時計回り方向に角度θb回転させることで形成された屈曲部11cと先端部11eとの間の部位である。捩じれ部11dでは、リード端子11の表面の幅方向および厚さ方向の面は曲面となっている。捩じれ部11dのうち屈曲部11cに最も近い位置では、リード端子11の断面の長軸側の中心線は図2(a)の一点鎖線C−Cであり、先端部11eに最も近い位置では、リード端子11の断面の長軸側の中心線は図2(a)の一点鎖線D−Dとなっている。角度θbは、角度θaと符号が同じであって絶対値が90°未満であり、+30°以上+60°以下、あるいは、−60°以上−30°以下であってよく、+45°、あるいは、−45°が好ましい。また、角度θaと角度θbとの和、すなわちθa+θbは、+90°±30°、あるいは、−90°±30°が好ましく、θa+θbは、+90°あるいは−90°であるのが最も好ましい。
先端部11eは、プリント基板に形成されたスルーホールに挿入されてはんだ付けされる部位であり、捩じれ部11dよりもリード端子11の先端側に位置する。先端部11eでは、リード端子11の表面の幅方向および厚さ方向の面は平面となっている。
以上のように本発明の半導体装置100のリード端子11は、傾斜部11bが角度θa傾斜し、捩じれ部11dが角度θb捩じられるため、図2(b)に示すように、先端部11eの回転角度はθa+θbとなり、θa+θb=90°とすることで、先端部11eの断面形状は、厚さ方向である短辺がX方向である筐体10の上面10aの長辺に平行になり、幅方向である長辺がY方向である筐体10の上面10aの長辺に垂直になる。つまり、リード端子11の先端である先端部11eの断面は、複数のリード端子11の配列方向の方が、配列方向に垂直な方向よりも短くなる。この結果、複数のリード端子11における先端部11eの間隔が、リード端子11が傾斜部11bと捩じれ部11dとを共に有さない場合よりも広くなるので、リード端子11をプリント基板にはんだ付けした場合に、リード端子間にはんだブリッジが形成されるのを抑制することができる。
そして、傾斜部11bを設け、傾斜部11bの延伸方向を上面10aの長辺に垂直な方向、換言すれば、リード端子11の配列方向に垂直な方向から角度θa傾斜させたので、捩じれ部11dを捩じる角度を90°よりも小さくしても、先端部11eを90°回転させることができるので、捩じれ部11dによりリード端子11に加わる応力を低減でき、リード端子11の機械的強度の低下を抑制することができる。
本発明の半導体装置100の構成についてさらに詳しく説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す断面図である。
半導体装置100は、IGBT(Insulated Gate Insulated Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal―Oxide―Semiconductor Field―Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)、FwD(Free Wheeling Diode:還流ダイオード)などの電力用の半導体素子やICチップやダイオードなどの電力用の半導体素子を駆動制御する制御用の半導体素子を内部に備えている。
図3に示すように、電力用の半導体素子であるIGBT2およびFwD3が、接合材4aおよび接合材4bによってリードフレーム1aに接合され、制御用の半導体素子である制御用素子8が、接合材4cによってリードフレーム1bに接合されている。また、IGBT2とFwD3との間や、各半導体素子とリードフレーム1a、1bとの間には、アルミニウム線や金線からなるワイヤ5が超音波接合されており、ワイヤ5を介して、IGBT2、FwD3、制御用素子8、およびリードフレーム1a、1bがそれぞれ電気的に接続されている。なお、半導体装置100は、IGBT2に代えてMOSFETが設けられていてもよい。
リードフレーム1aおよびリードフレーム1bは、リード端子11と一体に形成されており、銅板あるいはアルミニウム板などの導電率が大きい金属板で形成されている。リードフレーム1aおよびリードフレーム1bの厚さは、例えば、0.7mmであってよい。リードフレーム1aにIGBT2およびFwD3を接合する接合材4aおよび接合材4bは、はんだであってよく、リードフレーム1aのIGBT2およびFwD3が接合される領域に、はんだの濡れ性を良くするためにAg(銀)などの難酸化性材料からなる金属膜を形成しておくのが好ましい。また、接合材4a、4bは、はんだに限らず、粒径がナノメートルからサブミクロン程度のAg粒子が混合されてAg粒子間での焼結反応による金属結合を形成させた導電性接着剤であってもよい。リードフレーム1bに制御用素子8を接合する接合材4cは、はんだであってもよいが、Ag粒子などの導電性の金属粒子がエポキシ樹脂に混合された導電性接着剤であってもよい。
IGBT2およびFwD3が接合されたリードフレーム1aは、絶縁層6を介してヒートシンク7に接合されている。絶縁層6は、熱伝導性と絶縁性とを両立する層であって、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウムなどの熱伝導率が大きい絶縁物粒子をエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂に混合して形成される。ヒートシンク7は、IGBT2やFwD3で発熱した熱を拡散させて半導体装置100の外部に放熱するために設けられ、銅やアルミニウムなどの熱伝導率が大きい金属で形成される。IGBT2およびFwD3とヒートシンク7とは絶縁層6により電気的に絶縁されているが、IGBT2およびFwD3での発熱は、絶縁層6を介してヒートシンク7に熱伝導し、ヒートシンク7に接合される外部の放熱器を通じて放熱される。
図3に示すように、IGBT2およびFwD3が接合されたリードフレーム1aは、制御用素子8が接合されたリードフレーム1bよりも底面の位置が低くなるように折り曲げられており、絶縁層6およびヒートシンク7がリードフレーム1aのみに接合されている。そして、リードフレーム1a、1b、IGBT2、FwD3、絶縁層6、ヒートシンク7、制御用素子8、およびワイヤ5が、筐体10により封止されている。筐体10は、絶縁性のシリカ粒子が混合されたエポキシ樹脂により直方体状に形成される。ヒートシンク7の絶縁層6に接合された側とは反対側の面は、筐体10の外側に露出しており、筐体10の下面10bを構成している。下面10bには、半導体装置100の外部の放熱器などが接合される。下面10bの反対側には上面10aが設けられる。
筐体10の上面10aと下面10bとの間には長辺側側面10c、10dが設けられており、リードフレーム1a、1bのうち、それぞれの一部が長辺側側面10c、10dから突出するように、筐体10の外部に設けられ、リードフレーム1aおよびリードフレーム1bのうち、筐体10の外側に露出した部位がリード端子11となっている。従って、リード端子11とリードフレーム1a、1bとは一体に形成されたものであり、リード端子11の厚さとリードフレーム1a、1bの厚さは同じになっている。リード端子11は、筐体10の上面10a側に屈曲され、リード端子11の先端をプリント基板に接続し易くしている。リード端子11は、プリント基板を通じて外部の電気回路に電気的に接続され、リード端子11を介して、IGBT2、FwD3、および制御用素子8に外部の電気回路から通電される。なお、リード端子11は、前述のように突出部11a、傾斜部11b、屈曲部11c、捩じれ部11d、および先端部11eを有している。
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造時のリードフレームの構成を示す図である。図4(a)は、半導体装置100の製造時のリードフレーム20を示す平面図である。図4(b)、(c)は、図4(a)の破線G−Gにおけるリード端子形成部21の断面図であり、図4(b)は、リード端子形成部21を捩じり加工する前、図4(c)は、リード端子形成部21の捩じり加工した後の断面図である。リード端子形成部21は、リードフレーム20において、完成した半導体装置100のリード端子11となる部位である。なお、ここではリードフレーム20が銅で形成される場合について説明するが、アルミニウムで形成される場合も同様の製造方法により製造することができる。
まず、図4に示す形状のリードフレーム20を形成する。リードフレーム20は、例えば、幅広の銅条部品から金型を用いて所望の形状を打ち抜くパンチング加工により形成することができる。図4(a)に示すように、パンチング加工により銅条部品を打ち抜くことで、IGBT2およびFwD3が接合されるリードフレーム1a、制御用素子8が接合されるリードフレーム1b、および加工後にリード端子11となるリード端子形成部21が、タイバ22と枠体部23で繋がったリードフレーム20が形成される。
枠体部23は、外周が矩形状を呈しており環状の平板からなり、枠体部23の内周にリード端子形成部21が接続されている。完成した半導体装置100のリード端子11の傾斜部11bの傾斜角度θaは、このパンチング加工の工程で形成され、図4に示すように、枠体部23の外周の辺に垂直な方向から傾斜した傾斜領域を有するリード端子形成部21が形成される。なお、パンチング加工直後では、リード端子形成部21の断面形状は、図4(b)に示すようにリード端子形成部21の厚さ方向がZ方向になっている。
その後、金型を用いたプレス加工により、IGBT2とFwD3が接合されるリードフレーム1aが、図3に示したようにZ方向に折り曲げられるとともに、リード端子形成部21に捩じれ領域24が形成される。捩じれ領域24は、図4(a)の破線G−Gの場所において、図4(c)に示すように、リード端子形成部21の中心線を回転軸として角度θb回転させた形状に形成される。より詳しく説明すると、枠体部23が水平になるようにリードフレーム20を配置してリード端子形成部21が枠体部23の内周に接続された側から見て、リード端子形成部21と枠体部23の外周の辺との間の角度が小さい側が左側に位置する場合には、捩じれ領域24は時計回りに角度θb捩じられ、リード端子形成部21と枠体部23の外周の辺との間の角度が小さい側が右側に位置する場合には、捩じれ領域24は反時計周りに角度θb捩じられる。
前述のように、角度θbは、+30°以上+60°以下、あるいは、−60°以上−30°以下となるようにプレス加工用の金型が形成されている。このように、本発明の半導体装置100のリードフレーム20では、リード端子形成部21に設けられた捩じれ領域24の捩じり角が、リードフレーム20の枠体部23やリードフレーム1a、1bに対して垂直ではなく、傾斜した角度θbで捩じられているため、プレス加工により捩じれ領域24を形成することができる。つまり、リードフレーム20のリードフレーム1aを所望の形状に加工する工程と、リード端子形成部21に捩じれ領域24を形成する工程とを同時に行うプレス加工により形成することができるので、製造工数を増加させずに本発明の半導体装置100を製造することができる。
次に、リードフレーム1aのIGBT2とFwD3が接合される領域にはんだの濡れ性を良くするために銀めっきを施す。なお、銀めっきは、リードフレーム1aの折り曲げと捩じれ領域24とを形成するプレス加工の前に行ってもよく、はんだの濡れ性を良くする難酸化性の金属膜は、銀めっきに限らず、スパッタや蒸着などの方法により形成してもよい。
次に、リードフレーム20に半導体素子を接合し、筐体10で封止し、ワイヤ5で半導体素子とリードフレーム20とを電気的に接続し、タイバ22と枠体部23とをタイバーカットして除去する。図5は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法を示す図である。図5(a)は、リードフレーム20に半導体素子を接合する工程を示す図であり、図5(b)は、ワイヤ5を超音波接合する工程を示す図である。また、図5(c)は、筐体10で封止する工程を示す図であり、図5(d)は、タイバ22と枠体部23とをタイバーカットする工程を示す図である。
まず、図5(a)に示すように、図4で示したパンチング加工とプレス加工とにより形成したリードフレーム20のリードフレーム1aにIGBT2およびFwD3を接合する。IGBT2およびFwD3は、例えば、はんだ接合によりリードフレーム1aに接合される。また、リードフレーム20のリードフレーム1bに制御用素子8を接合する、制御用素子8は、例えば、導電性接着剤により接合される。
次に、図5(b)に示すように、IGBT2、FwD3、および制御用素子8と、リードフレーム1a、1bとをアルミニウム線や金(Au)線からなるワイヤ5を用いて超音波接合する。次に、リードフレーム1aの裏面を熱硬化性のエポキシ樹脂からなる絶縁層6を介してヒートシンク7の上に配置した後、加熱により絶縁層6を硬化させて、リードフレーム1aとヒートシンク7とを絶縁層6を介して一体化する。
次に、図5(c)に示すように、トランスファーモールドにより筐体10を形成する。図5(b)に示す封止前の状態を金型で覆い、金型の内部に熱硬化性のエポキシ樹脂を注入した後、加熱処理によりエポキシ樹脂を硬化させて筐体10を形成する。その後、図5(d)に示すように、リードフレーム20のタイバ22と枠体部23とをタイバーカット工程で切断する。この際、リード端子形成部21は、切断面の形状が図4(c)に示したように角度θb捩じられた形状となる位置で切断される。その後、ディッピングやめっきによりリード端子形成部21にはんだをコーティングする。
次に、リード端子形成部21を屈曲させるリードフォーミング工程を行い、図2に示した形状のリード端子11を形成する。
図6は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法のうちリードフォーミング工程を示す斜視図である。また、図7は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法のうちリードフォーミング工程を示す平面図である。
リードフォーミングでは、トランスファーモールドにより形成された筐体10の、矩形状の上面10aおよび下面10bに接続されて上面10aの長辺に平行な部位を有する側面10cあるいは側面10dから突出し、上面10aの長辺に垂直な方向から傾斜した方向に延伸した傾斜領域を有し、傾斜領域に捩じれ領域24を有するリード端子形成部21を、側面10cあるいは側面10dとの接触部と、捩じれ領域24との間で、上面10aに垂直な方向に屈曲させてリード端子11を形成する。
図2に示したようにリード端子11の傾斜部11bの延伸方向に対して垂直な幅方向に平行にリード端子11を屈曲させる。すなわち、図2で示したように、屈曲部11cのリード端子11先端側の断面の長軸が、傾斜部11bの延伸方向に垂直になるように形成される。このため、リードフォーミングには、傾斜部11bの延伸方向に垂直な幅方向に平行な端面25bと、リード端子11が接続された筐体10の上面10aに平行な当接面25cとを有する突起部25aを備えた上側治具25と、傾斜部11bの延伸方向に垂直な幅方向に平行であって上側治具25の端面25bに平行な端面26bと、リード端子11が接続された筐体10の上面10aに平行な当接面26cとを有する突起部26aを備えた下側治具26とを用いる。
まず、図6に示すように、リード端子11の傾斜部11bに上側治具25の突起部25aに設けられた当接面25cを当接させ、リード端子11の傾斜部11bの当接面25cが当接された側の裏側に下側治具26の突起部26aに設けられた当接面26cを当接させて、リード端子11の傾斜部11bを上側治具25と下側治具26とで挟む。この際、図7に示すように、上側治具25の端面25bと下側治具26の端面26bとは、平面視で所定の間隔を空けて配置される。この間隔は、リード端子11の厚さより大きい距離であって、リード端子11を屈曲させた後に、屈曲部11cの曲率が小さくなり過ぎて破損し易くならないように調整される。上側治具25の端面25bおよび下側治具26の端面26bは、傾斜部11bの延伸方向に垂直になるように配置される。
次に、図6に示すように、リード端子11を屈曲させる方向に下側治具26を移動させる。すなわち、下側治具26を上方に移動させる。これにより、リード端子11の傾斜部11bが、上方に屈曲され屈曲部11cが形成されて、リード端子11は、傾斜部11bとほぼ直角に屈曲される。リード端子11の屈曲部11cよりも先端側には、すでに角度θb捩じれた捩じれ部11dが形成されており、リード端子11が屈曲部11cで傾斜部11bに対して90°屈曲することにより、捩じれ部11dの捩じれ角度θbの向きが筐体10の上面10aに平行になる。傾斜部11bの傾斜角度θaの向きも、筐体10の上面10aに平行であるため、リード端子11の先端部11eは、θa+θbの角度で回転されることになる。従って、θa+θbが90°となるように、角度θaおよび角度θbを設定することで、リード端子11の先端部11eを90°回転させて、先端部11eの幅方向をリード端子11の配列方向と垂直にし、先端部11eの厚さ方向をリード端子11の配列方向と平行にして、複数配列されたリード端子11の先端部11eの間隔を広げた半導体装置100が製造される。
次に、本発明の半導体装置100の作用効果について説明する。
図8は、本発明の実施の形態1における半導体装置をプリント基板に実装した様子を示す図である。図8(a)は、半導体装置100をプリント基板12に実装した状態を示す正面図であり、図8(b)は、半導体装置100が実装されたプリント基板12の一部を裏面側から見た部分下面図である。また、図8(c)は、リード端子11の先端部11eの断面図である。図8において、プリント基板12は、例えば、半導体装置100が用いられる電力変換装置の主変換回路のプリント基板である
図8(a)に示すように、半導体装置100のリード端子11は、先端部11eがプリント基板12に形成されたスルーホールに挿入され、スルーホール内に形成された金属膜と一体にプリント基板12の表面および裏面にも形成された金属膜からなるランド13に、はんだ14によってはんだ付けされる。この結果、半導体装置100は、プリント基板12に固定され、リード端子11を通じてプリント基板12に設けられた電気回路に電気的に接続される。
図8(b)に示すように、リード端子11の先端部11eは、傾斜部11bの傾斜角度θaおよび捩じれ部11dの捩じれ角度θbとが合わさって、ほぼ90°回転した状態となるので、先端部11eの矩形状の断面のリード端子11の配列方向の長さを、配列方向に垂直な長さよりも短くすることができる。この結果、隣接するリード端子11の先端部11eの間隔を増大することができる。
定格電流が、例えば、75Aを超えるような半導体装置では、通電時のリード端子におけるジュール発熱を低減し、良好なはんだ付け性を確保するためにもリード端子の断面積を大きくする必要がある。しかし、リード端子が含まれるリードフレームを前述のようにパンチング加工で行う場合には、適切な寸法精度を得るために、リード端子の打ち抜き幅は、打ち抜かれる金属板の板厚以上とすることが望ましく、リード端子の幅を板厚未満としたリードフレームを量産することは困難である。従って、パンチング加工により製造した半導体装置では、リード端子の先端部の幅方向の長さは、板厚方向の長さよりも長くなる。
一方、パンチング加工以外にも、エッチング加工によりリードフレームを製造することも可能であるが、エッチング加工は化学反応に基づく加工法であり、パンチング加工に比べて生産性が劣るため、少数試作向けであればよいが、数量の多い量産製品への適用には不向きである。
このため、定格電流が大きい半導体装置では、パンチング加工により幅方向の長さをより長くしたリード端子が用いられている。リード端子の断面積と定格電流との関係は、リード端子のジュール損失を小さくして過度の温度上昇を防ぐため、50A/mm2以上であることが望ましいが、リード端子の断面積を大きくすると、リード端子の配列方向に平行な幅が広くなる。半導体装置の外観サイズを変更しない場合、リード端子の幅が広くなるとリード端子のピッチが狭くなり、リード端子の先端部の間隔が狭くなるため、リード端子の先端部とプリント基板とのはんだ付け部にはんだブリッジが発生し易く、十分な信頼性を得るのが困難になってくる。
例えば、リード端子の断面が一辺0.7mmの正方形の場合、はんだブリッジの発生を抑制するには、隣接する2つのリード端子のそれぞれの中心線の間隔、すなわちリード端子のピッチは2.5mm以上であることが望ましく、互いに隣接するリード端子の間隔は、1.8mm以上必要である。従って、リード端子の配列方向の幅が0.7mmを超えるような場合には、リード端子のピッチは2.5mmより大きくする必要があり、半導体装置の外観サイズを大きくしなければならなかった。しかし、本発明の半導体装置100では、リード端子11の先端部11eが90°回転しているので、リードフレームの板厚を、配列方向の先端部11eの幅とすることができ、リード端子のピッチを大きくせずに板厚と直交する先端部11eの幅を大きくすることができ、半導体装置100の外観サイズを大きくしなくても、十分に大きな断面積のリード端子11を得ることができる。
図9は、本発明の実施の形態1における半導体装置のリード端子の先端部の回転角と増加する隣接リード端子の先端部の間隔との関係を示す図である。図9において、回転角90degは、図8(c)の実線で示すように、リード端子11の先端部11eが、傾斜部11bの傾斜角度θaと捩じれ部11dの捩じれ角度θbとの合計により、筐体10の上面10aに平行な方向に90°回転した状態を示す。また、例えば、傾斜部11bの傾斜角度θaが0°であって、捩じれ部11dの捩じり角度θbも0°である場合には、図9の横軸の値は0degとなる。図9は、図4(c)において、リード端子11の先端部11eの幅方向の長さWaを2.0mm、先端部11eの厚さ方向の長さTaを0.7mm、隣接するリード端子11のピッチDbを2.5mmとし、角度θcを−60°から+60°まで変化させた場合の、リード端子11間の最短距離が、角度θcが−90°の場合、すなわち、傾斜角度θaも捩じれ角度θbも0°であって先端部11eの回転角が0°の場合と比べてどれだけ増加するか示したものである。角度θcが0°、すなわち、リード端子11の先端部11eが傾斜角度θaと捩じれ角度θbとにより90°回転している場合のリード端子11間の最短距離は、図4(c)の距離Daであるが、角度θcが0°でない場合は、リード端子11間の最短距離は、図4(c)の距離Dcである。
図9に示すように、リード端子11の先端部11eの回転角が90°(θc=0°)の場合には、隣接するリード端子11の先端部11eの間隔を1.3mm増加することができ、隣接する先端部11eの間隔を最も大きくすることができる。この回転角90°は、リード端子11の傾斜部11bの傾斜角度θaと、捩じれ部11dの捩じれ角度θbとの合計θa+θbを90°とすることで実現できる。傾斜角度θaと捩じれ角度θbとは、ともに45°であるのが好ましいが、傾斜角度θaが30°〜60°、捩じれ角度θbが30°〜60°であって、θa+θbが90°であればよい。なお、ここで言う角度は、絶対値であって正の角度であっても負の角度であってもよいが、角度θaと角度θbとの符号は同じである。
また、図9に示すように、リード端子11の先端部11eの回転角が60°〜120°(θc=−30°〜+30°)の場合には、隣接するリード端子11の先端部11eの間隔を0.96mm以上増加することができる。これは、リード端子11の先端部11eの回転角が90°の場合の1.3mmの74%以上に相当する。さらに、リード端子11の先端部11eの回転角が75°〜105°(θc=−15°〜+15°)の場合には、隣接するリード端子11の先端部11eの間隔を1.2mm以上増加することができる。これは、リード端子11の先端部11eの回転角が90°の場合の1.3mmの93%以上に相当する。つまり、傾斜部11bの傾斜角度θaと捩じれ部11dの捩じれ角度θbとの合計であるθa+θbの絶対値は60°以上120°以下であれば、隣接するリード端子の先端部の間隔を増大させる効果を十分に得ることができるので好ましく、θa+θbの絶対値が75°以上105°以下であれば、実質的にθa+θbの絶対値が90°である場合と同等の効果を得ることができるのでさらに好ましい。
前述のように、リード端子11の先端部11eの回転角は90°が最も好ましいが、屈曲部11cの屈曲角度の誤差や、捩じれ部11dの捩じれ角度θbの誤差は、傾斜部11bの傾斜角度θaの誤差よりも製造時や取扱時に生じやすく、先端部11eの回転角が90°からずれる場合がある。しかし、図9に示すように、先端部11eの回転角が90°の場合を基準とした回転角のずれθcは、−15°以上+15°以下であれば、実質的に先端部11eの回転角が90°の場合と同等の効果を得ることができるので、屈曲部11cの屈曲角度や捩じれ部11dの捩じれ角度θbに多少の誤差を生じる製造方法や取り扱い方法であっても、隣接するリード端子11の先端部11eの間隔を十分に増加できる半導体装置を製造できるので製造コストを低減することができる。
図10は、本発明の実施の形態1における半導体装置のリード端子をプリント基板にはんだ付けする方法を示す図である。図10は、リード端子11の先端部11eをプリント基板12のスルーホールに挿入して、スルーホールに設けられたランド13と先端部11eとをフローはんだ付けによりはんだ付けされる様子を示したものである。
図10に示すように、半導体装置のリード端子11の先端部11eがスルーホールに挿入されたプリント基板12が、噴流はんだ装置17の上部まで搬送されると、噴流はんだ装置17は、プリント基板12側、すなわち上方に移動する。噴流はんだ装置17からは、高温に熱せられた溶融はんだ16が噴出しており、溶融はんだ16が、リード端子11の先端部11eおよびプリント基板12のランド13に接触する。これにより、先端部11eおよびランド13が加熱され、溶融はんだ16が先端部11eおよびランド13に濡れることで、リード端子11の先端部11eとプリント基板12のランド13とがはんだ付けされる。
図10に示すように、噴流はんだ装置17を用いてはんだ付けを行う場合、隣接するリード端子11の先端部11e間に、溶融はんだ16によるはんだブリッジ15が形成されることがある。隣接するリード端子の間隔daが狭い場合には、その後の冷却で、はんだブリッジ15がそのまま凝固してリード端子11間を短絡する欠陥として残る場合がある。
本発明の半導体装置100では、リード端子11の先端部11eを回転させて、先端部11eの厚さ方向が、リード端子11の配列方向になるようにしたので、隣接する隣接するリード端子11の先端部11eの間隔daを十分に広くすることができる。先端部11eの間隔daが十分に広い場合には、はんだブリッジ15にかかる重力やリード端子11の先端部11eへの濡れ力によって、はんだブリッジ15を分離する方向に力が働き、はんだブリッジ15を形成していた溶融はんだが分離されて、はんだブリッジ15が無くなる。この結果、プリント基板12の裏面のはんだ接合部では、スルーホールに設けられたランド13とリード端子11の先端部11eとが、はんだ14によってはんだ接合される。
つまり、リード端子11の先端部11eを回転させなければ、はんだブリッジが発生し得るようなピッチでリード端子11が設けられた半導体装置であっても、本実施の形態で説明したようにリード端子11の先端部11eを90°回転させることで、はんだブリッジの発生を防止することができる。また、リード端子11の先端部11eの回転角は、90°でなくても、回転角を90°±15°とすることで、回転角が90°の場合と同等にはんだブリッジの発生を防止することができる。さらに、回転角を90°±30°としても、はんだブリッジの発生を防止する効果を得ることができる。
そして、本発明の半導体装置100では、リード端子11の先端部11eを筐体10の上面10aに平行に90°回転させているが、これは傾斜部11bの傾斜角度θaと、捩じれ部11dの捩じれ角度θbとの合計により実現している。従って、傾斜角度θaの絶対値を30°以上60°以下とすることで、捩じれ角度θbの絶対値を30°以上60°以下としても、先端部11eを90°回転させることができる。この結果、特許文献1に記載された半導体装置よりもリード端子の捩じれ角度を小さくすることができるので、リード端子の機械的強度の低下を抑制することができる。
さらに、本発明の半導体装置100は、特許文献1に記載された半導体装置に比べてリード端子11の捩じれ部11dの捩じれ角度θbが小さいので、捩じれ部11dの長さを短くすることができる。リード端子11の先端部11eは、プリント基板のスルーホールに挿入されてはんだ付けされるため所定の長さを要する。従って、リード端子11の屈曲部11cよりも先端側の捩じれ部11dの長さが長いと、リード端子11全体の長さが長くなり、リードフレームを形成するために必要な金属板の面積が大きくなり、材料コストが増大する。しかし、本発明の半導体装置100は、リード端子11の捩じれ部11dの捩じれ角度θbの絶対値が30°以上60°以下であって小さいので、捩じれ部11dの長さを短くすることができ、材料コストの増大を抑制することができ省資源化が図れる。
リード端子11の捩じれ部11dの捩じれ角度θbは小さい方が、機械的強度の低下を抑制し、捩じれ部11dの長さを短くすることができるが、捩じれ角度θbを小さくすると、傾斜部11bの傾斜角度θaを大きくする必要がある。リード端子11の突出部11aの間隔が同じ場合、傾斜部11bの傾斜角度θaを大きくすると、隣接する傾斜部11bの間隔が小さくなる。このため、傾斜角度θaを大きくし過ぎると隣接するリード端子11間の絶縁耐電圧が低下する。従って、傾斜角度θaと捩じれ角度θbは、リード端子11の絶縁耐電圧と機械的強度とを考慮して設計するのがよく、傾斜角度θaおよび捩じれ角度θbの絶対値をともに45°とすれば、絶縁耐電圧と機械的強度とを両立できるので好ましい。
なお、本発明の半導体装置100では、リード端子11が筐体10の長辺側側面10c、10dから、上面10aの長辺と垂直な方向に突出する突出部11aを備えているが、突出部11aは必ずしも備えていなくてもよい。すなわち、筐体の側面から突出するリード端子の部位が、筐体の上面の長辺あるいは短辺に対して所定の傾斜角度θaで傾斜した方向に延伸していてもよい。つまり、図1、図2を用いて説明すれば、リード端子11に突出部11aが無く、傾斜部11bが筐体10の長辺側側面10c、10dに接していてもよい。
しかしながら、本実施の形態1で説明したように、半導体装置100のリード端子11が筐体10の長辺側側面10c、10dから、上面10aの長辺と垂直な方向に突出する突出部11aを備えている方が、長辺側側面10c、10dと接触する部位のリード端子11の間隔を広くすることができるので、長辺側側面10c、10dに沿ってリード端子11間で放電する沿面放電の耐電圧を向上できるので好ましい。また、突出部11aを備えている方が、図6および図7で示したリードフォーミング時の、上側治具25によりリード端子11を押さえ易くなるので好ましい。
また、本発明の半導体装置100によれば、リード端子11の先端部11eの板厚に垂直な方向の幅を広く形成しても、先端部11eを90°回転させて、リード端子11の板厚方向とリード端子11の配列方向とを平行にするので、隣接するリード端子11の先端部11eの間隔を大きくすることができる。このため、先端部11eの表面積を増大させて、はんだ接合時のリード端子11への入熱量を増大させ、リード端子11の温度上昇不足によるはんだ付け不良を防止しつつ、はんだブリッジ不良を防止することができる。この結果、大電流に対応し、はんだ付け部の信頼性が高く、リード端子の機械的強度も高い半導体装置が得られる。
例えば、本発明の半導体装置100では、リード端子11の断面が、幅2mm、厚さ0.7mmであっても、先端部11eを90°回転させてプリント基板に実装するので、隣接する先端部11eの間隔を、リード端子の断面が幅0.7mm、厚さ0.7mmの半導体装置と同じにしつつ、リード端子11の断面積を2.8倍以上とすることができる。従って、本発明の半導体装置100では、リード端子11の断面積を容易に増大することができるので、リード端子11の電気抵抗を大幅に小さくしてジュール損失を低減することが容易に行える。
また、厚さよりも幅の距離が長い金属板は厚さ方向の外力に対する剛性が低く、厚さ方向の外力が加わると容易に変形するが、本発明の半導体装置100では、図1および図2に示すように、リード端子11の屈曲部11cから先端部11eに至る部位のリード端子11の厚さ方向が、リード端子11の配列方向に垂直な方向とは異なる方向となっているため、リード端子11の配列方向に垂直な方向から外力が加わってもリード端子11が変形しにくくなっている。つまり、半導体装置100をプリント基板に実装する際に、筐体10の長辺側側面10c、10dに設けられたリード端子11を挟むように外力が加えられても、リード端子11は変形しにくいので、リード端子11の変形によるプリント基板のスルーホールへの挿入位置ずれ不良を防止することができ、本発明の半導体装置を備えた電力変換装置の信頼性を高くすることができる。
図11は、本発明の実施の形態1における半導体装置に用いられるリードフレームおよび比較例の半導体装置に用いられるリードフレームのモールド後の外観を示す平面図である。図11(a)は、本発明の半導体装置に用いられるリードフレーム20aであって、リード端子となるリード端子形成部21が、枠体部23の外周の辺に垂直な方向から傾斜した方向に延伸した傾斜領域を有している。図11(b)は、比較例の半導体装置に用いられるリードフレーム20bであって、リード端子となるリード端子形成部21が、枠体部23の外周の辺に垂直な方向に延伸している。図11(a)に示す本発明の半導体装置100のリードフレーム20aと、図11(b)に示す比較例の半導体装置のリードフレーム20bとは、リード端子形成部21の長さが同等になっている。
図11に示すように、リード端子形成部21が設けられた筐体10と枠体部23との間の距離は、本発明の半導体装置100に用いられるリードフレーム20aでは距離Laであり、比較例の半導体装置に用いられるリードフレーム20bでは距離Lbである。距離La、距離Lbは、それぞれリード端子形成部21の長さをL、リード端子形成部21の延伸方向とリード端子形成部21が接続された側の外周の辺に垂直な方向との間の角度をθaとすると、L・cosθaで表される。比較例の半導体装置に用いられるリードフレーム20bでは、θa=0°であるので、Lb=Lとなるが、本発明の半導体装置100に用いられるリードフレーム20aでは、θaは0°ではないので、cosθa<1となり、La<Lbの関係が成立する。つまり、本発明の半導体装置100に用いられるリードフレーム20aは、リード端子形成部21が設けられる部位の距離Laを、比較例の半導体装置に用いられるリードフレーム20bよりも短くすることができるので、リード端子形成部21の配列方向に垂直な方向のリードフレームの幅を小さくすることができる。
本発明の半導体装置100に用いられるリードフレーム20aは、リード端子形成部21の配列方向に垂直な方向のリードフレームの幅を小さくすることができるので、リードフレームを形成するのに必要な金属板の面積が小さくなり材料コストを低減できる。また、金属板1枚あたりのリードフレームの取れ台数を多くすることで、リードフレームの製造工程における1台あたりの搬送時間を短くすることができるのでリードフレームの加工コストも低減できる。
図12は、本発明の実施の形態1におけるリードフレームの製造時の外観図を示す平面図である。図12に示すリードフレーム20は、本発明の半導体装置100の4台分のリードフレームであり、それぞれの枠体部23a〜23dが連結されたものである。
本発明の半導体装置100に用いられるリードフレームは、前述のように銅条部品のパンチング加工により製造されるので、図12に示すように複数のリードフレームが連結された状態で製造される。つまり、本発明の半導体装置100に用いられるリードフレーム20のように、リード端子形成部21を傾斜させてリード端子形成部21の配列方向に垂直な方向のリードフレームの幅を小さくすることで、1つの金型によってパンチングできるリードフレームの取れ台数を増加することができるので製造コストを低減できる。
また、半導体装置の製造工程では、筐体10で封止した後にタイバーカットにより半導体装置が個片化される。このため、タイバーカットまでの半導体装置の製造工程においては、複数台分のリードフレームが連結された状態で搬送が行われる。半導体装置の製造装置は、適用可能なリードフレームのサイズに限界があるので、本発明を適用することで、リードフレーム1枚当たりの半導体装置の取れ台数を増加させ、半導体装置1台当たりの搬送時間を短くすることができるため、製造コストを低減できる。
なお、ここでは半導体装置4台分のリードフレームが縦に連結された構造について説明したが、横方向やマトリックス状に連結された構造であっても良く、半導体装置で必要となるリードフレームのサイズに合わせて適切な台数が連結された構造とすることで、同等の効果を得ることができる。
実施の形態2.
図13は、本発明の実施の形態2における半導体装置を示す平面図ある。図13において、図1と同じ符号を付けたものは、同一または対応する構成を示しており、その説明を省略する。また、本発明の実施の形態2では、本発明の実施の形態1と相違する部分について説明し、同一または対応する部分については実施の形態1に記載した通りであり、説明は省略する。本発明の実施の形態1とは、筐体10の上面10aの対向する2つの辺に沿って第1のリード端子11pと第2のリード端子11qとが設けられた構成が相違している。
図13に示すように、実施の形態2の半導体装置200は、実施の形態1の半導体装置100と同様、直方体状の筐体10を有し、筐体10には上面10a、下面10b、長辺側側面10c、10d、短辺側側面10e、10fが設けられている。上面10aの長辺側側面10cに接続された長辺と長辺側側面10dに接続された長辺とは平行であって対向している。長辺側側面10cからは、第1のリード端子11pが突出しており、長辺側側面10cに接続された上面10aの長辺に沿って複数配列されている。また、長辺側側面10dからは、第2のリード端子11qが突出しており、長辺側側面10dに接続された上面10aの長辺に沿って複数配列されている。
図13に示すように、第1のリード端子11pと第2のリード端子11qとは、傾斜部の傾斜方向が互いに逆となっている。すなわち、図13において、第1のリード端子11pの傾斜部の延伸方向は、上面10aの長辺に垂直な方向から反時計回りの方向に傾斜しているが、第2のリード端子11qの傾斜部の延伸方向は、上面10aの長辺に垂直な方向から時計回りの方向に傾斜している。
また、第1のリード端子11pの捩じれ部は、上面10aの長辺に垂直な方向から第1のリード端子11pの傾斜部の延伸方向が傾斜した方向に捩じられており、第2のリード端子11qの捩じれ部は、上面10aの長辺に垂直な方向から第2のリード端子11qの傾斜部の延伸方向が傾斜した方向に捩じられている。つまり、図13の平面視において、第1のリード端子11pの捩じれ部は反時計周りの方向に捩じられており、第2のリード端子11qの捩じれ部は時計回りの方向に捩じられている。すなわち、第1のリード端子11pの捩じれ部の捩じられた方向と、第2のリード端子11qの捩じれ部の捩じられた方向とは逆となっている。
本発明の実施の形態2の半導体装置200は、実施の形態1に説明した半導体装置100と同じ効果を有するが、さらにリード端子の配列方向に垂直な方向から傾斜した方向からの外力に対しても変形しにくいといった効果を奏する。
図1に示した本発明の実施の形態1の半導体装置100では、筐体10の長辺側側面10cから突出しているリード端子11の傾斜部は、上面10aの長辺に垂直な方向から平面視で時計回りの方向に傾斜しており、筐体10の長辺側側面10dから突出しているリード端子11の傾斜部も、上面10aの長辺に垂直な方向から平面視で時計回りの方向に傾斜している。つまり、長辺側側面10cから突出したリード端子11と長辺側側面10dから突出したリード端子11とは同じ向きに傾斜した傾斜部を有している。この結果、リード端子11の屈曲部の断面の厚さ方向も、長辺側側面10cから突出したリード端子11と長辺側側面10dから突出したリード端子11とで同じ向きになっているため、屈曲部の厚さ方向、すなわち、リード端子11の傾斜部の延伸方向の外力に対してリード端子11が変形し易くなっている。図1(a)においては、紙面左下から紙面右上に向かう力あるいはその逆向きの力に対して、リード端子11が変形し易くなっている。
これに対して、本実施の形態2の半導体装置200は、図13に示すように、長辺側側面10cから突出した第1のリード端子11pの傾斜部の延伸方向と、長辺側側面10dから突出した第2のリード端子11qの傾斜部の延伸方向とが異なるので、第1のリード端子11pの傾斜部の延伸方向から外力が加わったとしても、第2のリード端子11qが変形しにくいので、結果として第1のリード端子11pも変形しにくく、第2のリード端子11qの傾斜部の延伸方向から外力が加わったとしても、第1のリード端子11pが変形しにくいので、結果として第2のリード端子11qも変形しにくい。
以上のように、本発明の実施の形態2の半導体装置200は、実施の形態1で説明したように第1のリード端子11p、第2のリード端子11qの配列方向に垂直な方向からの外力に加えて、第1のリード端子11pの傾斜部の延伸方向、および第2のリード端子11qの傾斜部の延伸方向のそれぞれの方向からの外力に対しても変形しにくいので、リード端子が変形し易い特定の方向がなく、より一層リード端子の変形を抑制し、リード端子の変形によるプリント基板のスルーホールへの挿入位置ずれ不良を防止することができ、本発明の半導体装置を備えた電力変換装置の信頼性をより一層高くすることができる。
実施の形態3.
図14は、本発明の実施の形態3における電力変換システムの構成を示すブロック図である。図14の電力変換システムは、実施の形態1で説明した半導体装置100を備えた電力変換装置110を用いた電力変換システムであるが、電力変換システムに用いられる電力変換装置は、半導体装置100の代わりに実施の形態2で説明した半導体装置200を備えた電力変換装置であってもよい。
本実施の形態3では、本発明の半導体装置を適用した電力変換装置として、三相のインバータについて説明するが、本発明の半導体装置が適用される電力変換装置は、三相のインバータに限るものではなく、単相のインバータ、昇圧コンバータや降圧コンバータなどのDC/DCコンバータなど他の電力変換装置であってもよい。
図14に示す電力変換システムは、電源120、電力変換装置110、負荷130から構成される。電源120は、直流電源であり、電力変換装置110に直流電力を供給する。電源120は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源120を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
電力変換装置110は、電源120と負荷130との間に接続された三相のインバータであり、電源120から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷130に交流電力を供給する。図14に示すように、電力変換装置110は、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路111と、主変換回路111を制御する制御信号を主変換回路111に出力する制御回路112とを備えている。
負荷130は、電力変換装置110から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷130は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であってよく、例えば、ハイブリッド電気自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けとして用いられる電動機であってよい。
以下、電力変換装置110の詳細を説明する。主変換回路111は、本発明の半導体装置100を備えており、半導体装置100は、実施の形態1で説明したようにIGBT2とFwD3とを備えている、電力変換装置110は、IGBT2がスイッチングすることによって、電源120から供給される直流電力を三相の交流電力に変換して負荷130に供給する。主変換回路111の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態3に係る主変換回路111は、2レベルの三相フルブリッジ回路であり、半導体装置100の筐体10の内部に設けられた6つのIGBT2とそれぞれのIGBT2に逆並列された6つのFwD3とから構成することができる。6つのIGBT2は2つのIGBT2毎に直列接続されて上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路111の3つの出力端子は、負荷130に接続される。
実施の形態1で説明したように、半導体装置100は、各IGBT2を駆動する駆動回路として制御用素子8を備えているが、半導体装置は、駆動回路を内蔵しない半導体装置であってもよく、その場合には、主変換回路111が駆動回路を備えていてもよい。駆動回路は、主変換回路111に設けられた半導体装置100内のIGBT2を駆動する駆動信号を生成し、半導体装置100のIGBT2のゲート電極に供給する。具体的には、後述する制御回路112からの制御信号に従い、IGBT2をオン状態にする駆動信号とIGBT2をオフ状態にする駆動信号とを各IGBT2のゲート電極に出力する。IGBT2をオン状態に維持する場合、駆動信号はIGBT2の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、IGBT2をオフ状態に維持する場合、駆動信号はIGBT2の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
制御回路112は、負荷130に所望の電力が供給されるよう主変換回路111の半導体装置100内のIGBT2を制御する。具体的には、負荷130に供給すべき電力に基づいて主変換回路111の各IGBT2がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてIGBT2のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路111を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきIGBT2にはオン信号を、オフ状態となるべきIGBT2にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路111が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各IGBT2のゲート電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
次に、電力変換装置110の主変換回路111と本発明の半導体装置100との実装部の構成についてさらに詳しく説明する。
図15は、本発明の実施の形態3における電力変換装置のプリント基板に半導体装置を実装した構成を示す外観図である。図15(a)は、電力変換装置110の主変換回路111のプリント基板12に半導体装置100を実装した正面図、図15(d)は電力変換装置110の主変換回路111のプリント基板12に半導体装置100を実装した状態の一部を裏面側から見た部分下面図である。図15は、実施の形態1で説明した図8に相当し、図8と同じ符号を付けたものは、同一または対応する構成を示しており、その説明を省略する。
図15に示すように、電力変換装置110の主変換回路111のプリント基板12は、半導体装置100のリード端子11の先端部11eが挿入されたスルーホールの形状が、半導体装置100の筐体10の上面10aの長辺に垂直な方向のY方向の幅が、Y方向の幅に垂直な方向のX方向の幅より距離が長くなっている。そして、半導体装置100は、実施の形態1で説明したように、リード端子11の先端部11eでは、筐体10の上面10aの長辺に垂直な方向にリード端子11の幅方向が、上面10aの長辺に平行な方向にリード端子11の厚さ方向が向いているので、図15(b)に示す上面10aの長辺に垂直な方向の幅の方が長いスルーホールにリード端子11の先端部11eを挿入することができる。この結果、本発明の実施の形態3の電力変換装置110では、半導体装置100が実装されるプリント基板12の隣接するランド13間の距離を広げている。
電力変換装置110に接続された電源120からは、600Vあるいは1200Vといった高電圧が印加される場合がある。高電圧によって発生する放電による絶縁破壊は、空間中を放電する空間放電よりも面に沿って発生する沿面放電の方が起こり易い。本発明の電力変換装置110では、半導体装置100のリード端子11を挿入するプリント基板12のスルーホールの形状をリード端子11の配列方向に平行な幅が配列方向に垂直な幅よりも短い構成としたので、隣接するスルーホールのランド13間の間隔を大きくすることができ、ランド13間での沿面放電を発生しにくくして絶縁耐電圧を向上させることができる。
プリント基板には耐トラッキング性と呼ばれる沿面放電が発生する電圧を示した指標があり、耐トラッキング性に優れるプリント基板は高価であり、製品の材料コスト増大を招く。しかし、本発明の電力変換装置110は、本発明の半導体装置100を実装することで、プリント基板12に形成されたスルーホールのランド13の間隔を大きくすることができるため、安価なプリント基板であっても沿面放電が発生する電圧を上昇させることができるので、製品の材料コストを低減できる。
なお、本発明の半導体装置を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。また、電力変換装置に用いられる半導体装置がスイッチング素子としてIGBTを備えた場合について説明したが、スイッチング素子としてMOSFETを備えた半導体装置を用いて電力変換装置を構成してもよい。