JP6786056B2 - テレフタル酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、テレフタル酸を製造する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、原料スラリーの分散媒を置換することにより、高純度のテレフタル酸を製造する方法に関する。また、本発明は、原料スラリーが、テレフタル酸結晶粒子及び水を含み、不純物の多い、液相酸化反応より得られた粗テレフタル酸スラリー、又は粗テレフタル酸を接触水素化処理や再結晶処理をすることによって得られたスラリーであり、かかる原料スラリーの分散媒を第二分散媒と効率よく置換できる分散媒置換方法による、テレフタル酸の製造方法に関する。
テレフタル酸は、p−キシレンを代表とするp−アルキルベンゼン等のp−フェニレン化合物の液相酸化反応により製造される。テレフタル酸の製造には、通常、酢酸を溶媒としてコバルト、マンガン等の触媒を利用し、又はこれに臭素化合物、アセトアルデヒドのような促進剤を加えた触媒が用いられる。しかし、上記の如く酢酸を溶媒とするため、液相酸化反応によって得られた粗テレフタル酸スラリーには、4−カルボキシベンズアルデヒド(4CBA)、パラトルイル酸(p−TOL)、安息香酸等や、その他の種々の着色性不純物が多く含まれている。そのため、該スラリーから分離して得られた粗テレフタル酸にもそれら不純物が混入しており、高純度のテレフタル酸を得るにはかなり高度の精製技術が必要とされる。
粗テレフタル酸を精製する方法としては、粗テレフタル酸を酢酸や水、あるいはこれらの混合溶媒等に高温、高圧下で溶解し、接触水素化処理、脱カルボニル化処理、酸化処理、再結晶処理、あるいはテレフタル酸結晶が一部溶解したスラリー状態での高温浸漬処理等の種々の方法が知られている。液相酸化反応による粗テレフタル酸の製造、あるいはその精製においては、いずれの場合も最終的にはテレフタル酸結晶を分散媒から分離する操作が必要となる。
しかるに、酸化反応生成スラリー又は粗テレフタル酸を精製処理したスラリーに不純物として存在する4CBA,p−TOL,安息香酸等の酸化物中間体あるいは着色原因物質等は、高温ではそのほとんどがスラリー分散媒中に溶解している。そのため、該スラリーを100℃前後まで冷却し、テレフタル酸結晶を含むスラリーを形成させると、これらの不純物は、テレフタル酸結晶の中に取り込まれ、高純度のテレフタル酸を得ることは困難になる。
従って、前述の酸化反応後の粗テレフタル酸スラリーあるいは粗テレフタル酸の精製処理後のスラリーについて、可及的高純度のテレフタル酸を分散媒から分離するためには、高温、加圧の条件下において行なうことが必要となってくる。結晶を含むスラリーから分散媒を分離する方法として最も一般的に用いられている方法は遠心分離法である。遠心分離法は、酸化反応後のスラリーあるいは精製処理後のスラリーの場合にも広範に使用されている。遠心分離法は、高速回転をしているバスケット中にスラリーを導入し、分散媒を上部からオーバーフローさせ、結晶は下部へ誘導する方法である。しかしながら、遠心分離機の構造上及び機能上の制約から、高温、高圧下での連続運転にはいくつかの困難を伴うことが知られている。
まず、遠心分離中又は分離後の結晶のリンスが難しいので、結晶への分散媒付着量が多くなり易い。その問題点を解消するために通常は、遠心分離されたテレフタル酸結晶のケーキを再び新鮮な高温溶媒でスラリー化する方法が採られるが、分離操作を複数回行なわなければならない課題がある。さらには、高温、高圧で高速回転を行なうために、遠心分離機の保全、保守が煩雑、困難であるため、それに対する投資が増し、この分野の技術としては高度化されているとは言い難い。
遠心分離法に代わる分離法として、重力によりテレフタル酸結晶の沈降作用を利用した分散媒置換装置が提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2等である。特許文献1によると分散媒置換装置の内部に複数の孔を有する横方向の棚段を設けている。このような構造を持たせないと、装置内流体のチャンネリング又はバックミキシングによって置換の効率が望むほどに良くないためと説明されている。また、特許文献2でも斜面を形成する棚段を設け置換性能の向上を図っている。しかし、スラリーを扱う場合、しかも重力沈降を利用した分散媒置換の場合、このような棚段を設けることは非常に困難を伴う。即ち、棚への堆積、開孔部の閉塞が起こり、運転の安定化には多大な労力を要し、とても高度化された技術とは言い難い。
そこで、棚段を必要としない分散媒置換装置も提案されている(例えば、特許文献3、4)。棚段を必要としない分散媒置換装置の場合、(1)装置上部室に第一分散媒とテレフタル酸結晶からなる原スラリーを供給する供給口、(2)装置下部室に第二分散媒を導入する供給口、(3)装置下部室から主にテレフタル酸結晶と第二分散媒からなる置換スラリーを抜き出す排出口、(4)装置上部室から主に第一分散媒を抜き出す排出口の4つの出入口があり、(1)の供給流量以外は自由に変えることができる。これは運転のフレキシビリティーを生むと同時に、分散媒置換効率等の性能に影響を与えることとなるので、流量管理が相当煩雑である。そこで、例えば、特許文献3には、分散媒置換装置の内部の温度分布を上部が高温になるようにすることによって、シャープな温度変化を見せるゾーンが存在し、この温度ゾーンの位置を維持するように第二分散媒の導入量及び/又は置換スラリーの抜き出し量を制御することにより、容易に分散媒置換装置を高い置換効率で、安定に運転を継続できることが開示されている。
前記特許文献4では、置換効率を極めて高くするために、境界領域における単位厚さ当たりのテレフタル酸含有量の変化量(質量%/m)が15以上500以下にする必要があることを開示している。しかし、テレフタル酸含有量の変化量に基づいて、第二分散媒の導入量及び/又は置換スラリーの抜き出し量を制御するためには、分散媒置換装置内のテレフタル酸含有量を知る必要がある。
分散媒置換塔に供給されるテレフタル酸スラリーは、140〜190℃付近の水溶液スラリーとして供給され、また、第二分散媒は100℃付近の水を底部から供給しているので、分散媒置換装置は、内部に圧力が掛かった状態であり、境界領域の高さに応じて、サンプリングを行い、テレフタル酸の密度を計測するのは困難である。また、特許文献3には、上記(3)の、主にテレフタル酸結晶と第二分散媒からなる置換スラリーを抜き出す排出口の配管、又は分散媒置換塔へ循環する配管内にオンライン密度計を設置し、スラリー中のテレフタル酸含有量を検知する方法が、開示されている。
特開昭57−053431号公報 特開昭55−087744号公報 特開平10−045667号公報 特開2008−239608号公報
分散媒置換塔において分散媒の高い置換率を安定して維持するためには、置換塔下部室のスラリー層上部の界面領域(シャープな温度変化を見せるゾーン)の位置を安定させること、及び置換塔塔下部室のスラリー層のテレフタル酸含有量を一定範囲に維持することが必要になる。これらを一定範囲に制御するには置換塔下部室のスラリー中のテレフタル酸含有量を検知することが必要である。特許文献3に記載されるテレフタル酸結晶と第二分散媒からなる置換スラリーを抜き出す排出口の配管、又は分散媒置換塔へ循環する配管内にオンライン密度計を設置し、スラリー中のテレフタル酸含有量を検知する方法の場合、置換下部室のスラリー濃度のムラに起因する密度計測定の変動が大きく、また、長期間の運転で密度計にテレフタル酸の結晶が付着して測定誤差となるトラブルが起きるため、分散媒置換塔を安定して運転することが難しいという課題がある。
本発明の課題は、p−フェニレン化合物を液相酸化して得られた粗テレフタル酸スラリーあるいは該粗テレフタル酸の接触水素化処理後のテレフタル酸スラリーを分散媒置換塔上部に導入し、該分散媒置換塔下部より置換のための第二分散媒を導入し、分散媒の置換を行うテレフタル酸の製造において、分散媒の置換効率を極めて高く維持し、安定して運転を継続できるテレフタル酸の製造方法を提供することである。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、分散媒置換装置の次の工程に晶析槽を設け、かかる晶析槽内のスラリー量を所定の範囲に保持するとともに、この晶析槽にスラリーの密度計を設けてテレフタル酸の含有量を計測し、晶析槽でのスラリー濃度を一定に保つようにすることで、極めて高い置換効率が安定して得られることを見出した。
即ち本発明は、本発明は次のとおりである。
[1]
p−フェニレン化合物を液相酸化して得られた粗テレフタル酸と分散媒とを含むテレフタル酸原スラリーを分散媒置換塔の上部に導入する工程;
分散媒置換塔の下部から導入された第二分散媒の上昇流と前記テレフタル酸原スラリーとを接触させ、分散媒置換塔下部室に第二分散媒に分散した精製テレフタル酸結晶のスラリー層を形成する工程;
該精製テレフタル酸結晶のスラリーを分散媒置換塔下部室より抜き出し、スラリー濃度を測定する手段を設けた晶析槽に送る工程;
前記晶析槽中のスラリーを固液分離手段に送りテレフタル酸結晶を分離する工程;
を含む、テレフタル酸の製造方法であって、
分散媒置換塔下部室に供給する第二分散媒の流量、分散媒置換塔下部室より抜き出す精製テレフタル酸結晶のスラリー流量、及び晶析槽から固液分離手段に送るスラリーの流量を調節することによって、下記(1)〜(3)の条件を維持する、テレフタル酸の製造方法。
(1)前記晶析槽中のスラリーの体積Vが、前記分散媒置換塔内の全テレフタル酸スラリーの体積Vに対して0.050〜0.80倍の範囲である。
(2)分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、制御目標値の上下800mmの変動範囲である。
(3)晶析槽中のスラリー濃度が、25〜40重量%の範囲である。
[2]
前記分散媒置換塔下部室に攪拌機が設置され、
前記分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、該攪拌機上端部より置換塔内径に対して0.3〜1.5倍上方の範囲である、[1]に記載のテレフタル酸の製造方法。
[3]
前記晶析槽中のスラリーの濃度が上昇した場合、分散媒置換塔下部室より抜き出す精製テレフタル酸結晶のスラリー流量を増加させ、
前記スラリー密度が減少した場合、前記スラリー流量を減少させることにより、
前記晶析槽中のスラリー濃度を25〜40重量%の範囲に維持する、[1]又は[2]に記載のテレフタル酸の製造方法。
[4]
前記分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、
上昇した場合、分散媒置換塔下部に供給する第二分散媒の流量を減少させ、
下降した場合、該流量を増加させることにより、
前記界面領域の位置を制御目標値の上下800mmの変動範囲に維持する、[1]〜[3]のいずれかに記載のテレフタル酸の製造方法。
[5]
前記晶析槽中のスラリー濃度を測定する手段が密度計であり、
該密度計が、晶析槽から精製テレフタル酸結晶のスラリーを抜き出し、晶析槽へと一部循環させる配管に設置されている、[1]〜[4]のいずれかに記載のテレフタル酸の製造方法。
[6]
前記分散媒置換塔内の縦方向に複数の温度計が設置され、
前記分散媒置換塔内の縦方向の温度変化を計測することにより、該分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置を検知する、[1]〜[5]のいずれかに記載のテレフタル酸の製造方法。
[7]
前記テレフタル酸原スラリーが、p−フェニレン化合物を液相酸化した後、落圧及び高温にして得られた粗テレフタル酸スラリーから、反応分散媒を分離することにより得られた粗テレフタル酸結晶を、高温、高圧下で水に溶解させた後、接触水素化処理し、さらに該反応液を複数段の晶析槽を用いて段階的に落圧及び降温してテレフタル酸を晶析させて得られるスラリーである、[1]〜[6]のいずれかに記載のテレフタル酸の製造方法。
本発明によれば、分散媒置換塔を用いたテレフタル酸の製造プロセスにおいて、該分散媒置換塔下部室のスラリー層の上部の界面領域の位置を安定させること、及び置換塔下部室のスラリー層のテレフタル酸含有量を一定範囲に制御することが可能になり、長期間にわたり高い分散媒置換率を維持して分散媒置換塔を運転することができる。
実施例で使用した分散媒置換装置の説明図である。
発明の実施の形態
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態のテレフタル酸の製造方法は、
p−フェニレン化合物を液相酸化して得られた粗テレフタル酸と分散媒とを含むテレフタル酸原スラリーを分散媒置換塔の上部に導入する工程;
分散媒置換塔の下部から導入された第二分散媒の上昇流と前記テレフタル酸原スラリーとを接触させ、分散媒置換塔下部室に第二分散媒に分散した精製テレフタル酸結晶のスラリー層を形成する工程(以下、分散媒置換工程ともいう);
該精製テレフタル酸結晶のスラリーを分散媒置換塔下部室より抜き出し、スラリー濃度を測定する手段を設けた晶析槽に送る工程;
前記晶析槽中のスラリーを固液分離手段に送りテレフタル酸結晶を分離する工程;
を含む。
また、本実施形態のテレフタル酸の製造方法は、分散媒置換塔下部室に供給する第二分散媒の流量、分散媒置換塔下部室より抜き出す精製テレフタル酸結晶のスラリー流量、及び晶析槽から固液分離手段に送るスラリーの流量を調節することによって、下記(1)〜(3)の条件を維持する。
(1)前記晶析槽中のスラリーの体積Vが、前記分散媒置換塔内の全テレフタル酸スラリーの体積Vに対して0.050〜0.80倍の範囲である。
(2)分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、制御目標値の上下800mmの変動範囲である。
(3)晶析槽中のスラリー濃度が、25〜40重量%の範囲である。
本実施形態における粗テレフタル酸は、p−フェニレン化合物の液相酸化で得られる。使用されるp−フェニレン化合物は、パラ位にそれぞれ存在する、カルボキシル基及び/又は液相空気酸化によりカルボキシル基を生成する被酸化性置換基を有する。前記被酸化性置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アルデヒド基、アセチル基等が挙げられる。前記被酸化性置換基は互いに同一であっても、異なっていてもよい。
液相で行う酸化に使用される酸化剤は、例えば、酸素又は空気が使用され、いずれか一方に限定されるものではない。酢酸溶液中、コバルト及びマンガン触媒及び臭化化合物の助触媒の存在下での酸化の場合、酸化剤は空気で充分である。また、酢酸溶液中、コバルト触媒の存在下での酸化の場合、酸化剤は酸素が好ましい。
触媒としてコバルト及びマンガン触媒が使用される場合、臭素化合物も併用することが好ましい。臭素化合物は、通常、助触媒と考えられており、臭化水素又は臭素化ナトリウムが好ましい。コバルト触媒が使用される場合は、促進剤としてアセトアルデヒド、メチルエチルケトン等が好ましく併用される。
酸化反応は、反応を促進するために高温、高圧の条件で行われる。通常、反応温度は、150〜240℃が好ましく、圧力は、1〜3MPaが好ましい。
酢酸溶液中、液相酸化法で得られる粗テレフタル酸は、通常4−カルボキシベンズアルデヒド(4CBA)をはじめ多くの不純物が含まれ、白色度の指標であるOD340の値も、直接成形用ポリマー原料として使用できる水準ではないため、不純物処理等の後処理工程が必要になる。後処理工程における、粗テレフタル酸中の4CBA含量及びその他の不純物の含量は特に上限はない。後処理工程における、OD340についても同様に、特に上限はない。4CBA含量がある程度高くなる酸化反応条件を選ぶことにより、酸化反応による酢酸の燃焼損失を抑制できるため、液相酸化工程における粗テレフタル酸中の4CBA含量は、500ppmあるいはそれ以上となる条件に設定することが全工程的には有利である。
酸化反応により生成した粗テレフタル酸は、反応器内で一部が析出しスラリー状態で存在し、さらに段階的に温度及び圧力を低減する晶析工程を経た後、固液分離装置によって酢酸溶媒と分離される。本実施形態のテレフタル酸の製造方法では、酸化反応後の晶析工程に後述する分散媒置換塔を設け、テレフタル酸スラリーの分散媒(第一分散媒)を新たな分散媒(第二分散媒)に置き換えた後、固液分離を行う。酸化反応後のテレフタル酸スラリーの分散媒置換を行う場合、第二分散媒としては、含水酢酸又は水が好ましい。
酸化反応で得られた粗テレフタル酸は次に接触水素化処理工程に移される。この接触水素化処理は溶液状態で行うために高温高圧で行われる。溶媒としては通常水が使用され、接触水素化温度は200℃以上、好ましくは240〜300℃の範囲が採用される。一方、粗テレフタル酸の濃度は、好ましくは10〜40重量%の範囲である。圧力は、液相を維持し、且つ、接触水素化反応に適切な水素分圧を保持する観点から、好ましくは、30〜80気圧の範囲である。
接触水素化反応の触媒には、第8族貴金属が好適に使用される。該第8族貴金属としては、好ましくは、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウムであり、より好ましくは、パラジウム及び白金がである。なお、第8族貴金属は、必ずしも単独で使用されるものではなくて、必要に応じて2種以上を複合して用いてもよい。
上記触媒は、必ずしも担体に担持させて使用することには限定されないが、通常は担体に担持させて使用することが好ましい。担体としては、通常、多孔性物質が使用され、材質的には炭素系担体が好ましく、活性炭がより好ましく、椰子殻炭がさらに好ましい。触媒の担体への担持量は、微量でも効果があるため、特に範囲が限定されるものではないが、長期活性を維持する観点から、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
接触水素化のための水素量は、4CBAの物質量に対して、少なくとも2倍モル以上である。接触水素化処理時間は、実質的に水素化反応が進行するのに充分な時間であればよく、通常1〜60分、好ましくは2〜20分の範囲である。通常、接触水素化処理は連続式で行われる。
接触水素化処理した粗テレフタル酸溶液は、触媒担体に使用した例えば活性炭の摩耗により生ずる微粉末の混入を防止するために、焼結チタンやその他の焼結金属あるいは炭素粒子で作られた濾過器で濾過後、直列に連結された2〜6段にいたる晶析器あるいはバッチ式結晶化器へ導入され、順次減圧することで、水分の蒸発によって120〜200℃まで降温させることによって、テレフタル酸結晶が晶析し、スラリーとなる。
本実施形態におけるテレフタル酸原スラリーは、p−フェニレン化合物を液相酸化した後、落圧及び高温にして得られた粗テレフタル酸スラリーから、反応分散媒を分離することにより得られた粗テレフタル酸結晶を、高温、高圧下で水に溶解させた後、接触水素化処理し、さらに該反応液を複数段の晶析槽を用いて段階的に落圧及び降温してテレフタル酸を晶析させて得られるスラリーであることが好ましい。
本実施形態のテレフタル酸の製造方法では、接触水素化処理後のテレフタル酸の多段晶析工程における中段晶析器から得られ、温度120〜200℃まで降温させたテレフタル酸結晶と、分散媒とを含むテレフタル酸結晶スラリーを分散媒置換工程、即ち、不純物を多く含有している分散媒(第一分散媒)を新鮮な分散媒(第二分散媒)に置き換える工程に付した後、テレフタル酸結晶と第二分散媒とを含むスラリーを固液分離し、テレフタル酸結晶を得る。接触水素化処理後のテレフタル酸スラリーの分散媒置換を行う場合、第二分散媒として水を用いるのが好ましい。
本実施形態の分散媒置換工程を実施する装置、すなわち、分散媒置換塔は、大きく分けて塔上部室、塔下部室及び塔中間部からなる。塔中間部の径は、スラリーの処理量によって適宜変更することができ、テレフタル酸結晶の処理量1t/hrあたりの塔断面積が0.2〜2mとなるような径が好ましい。塔上部室や塔下部室の径は、塔中間部と同程度の径であればよく、より大きな径とすることもできる。塔上部室は、第一分散媒とテレフタル酸結晶を含む原スラリーの導入部を有する。前記原スラリー導入部は、塔上部室内壁に開口していてもよいが、結晶の分散を良好にする観点から、塔上部室内に延びて開口する導入部であることが好ましい。さらに、前記開口先端部は下向きに設置されていてもよく、また、開口先端部に分散板等の結晶の分散を促進する機構を備えていてもよい。前記塔上部室はさらに、第一分散媒抜き出し部を備え、テレフタル酸結晶を殆ど含まない第一分散媒が抜き出され、所定の処理槽に導かれる。塔下部室には第二分散媒供給部と、該第二分散媒で置換されたテレフタル酸スラリーの抜き出し口、第二分散媒供給流量及び置換スラリー抜き出し流量の調節部並びに塔下部室内スラリー攪拌装置を備えている。第二分散媒で置換されてなる置換スラリーの抜き出し口は、置換スラリーが高比重であるため、位置的には上記同様塔下部室の下方に近い方が好ましい。分散媒置換塔の下部室から抜出された置換スラリーは、晶析槽を経て固液分離手段に送られテレフタル酸の結晶が分散媒と分離される。固液分離手段としては、固液分離装置が好適に使用できる。
本実施形態のテレフタル酸の製造方法において、テレフタル酸中の不純物量を低減し高純度のテレフタル酸を得るには、前記の分散媒置換塔の操作条件、及び運転方法が重要である。以下、分散媒置換塔の好ましい操作条件、及び運転方法の具体例を説明する。
分散媒置換塔の塔上部室に導入された原スラリー中のテレフタル酸結晶は、重力によって塔中間部室を沈降し、塔下部から導入された第二分散媒の上昇液流と向流で接触する。塔下部室まで沈降したテレフタル酸結晶は、第二分散媒で置換され、塔中間部より結晶濃度が高いスラリー層を形成し、スラリー抜出し部より分散媒置換塔外に抜出される。
第二分散媒の温度は、塔上部室に導入される原スラリーと同じ水準に設定してもよく、原スラリーの温度よりも20〜100℃低い温度に設定することにより分散媒置換率を高めることができる。なお、本願において分散媒置換効率は、原スラリー分散媒中に溶解している不純物の除去割合で算出される分散媒置換率で評価する。
分散媒置換塔の圧力は、少なくとも原スラリー及び第二分散媒の温度を維持するに足る圧力とする必要があり、圧力の上限には運転上の制約は無いものの、過大な圧力で運転するには置換塔の耐圧を高める必要があり装置費用の増大を招く。分散媒置換塔の圧力は、好ましくは0.1〜2MPaであり(ゲージ圧力)、より好ましくは0.2〜1.5MPaである。
分散媒置換塔中間部における第二分散媒の上昇液流の線速度は、装置の構造、結晶の大きさ等によっても変化するが、好ましくは0.2〜1.5m/hr(空塔基準)であり、より好ましくは0.5〜1.0m/hrである。線速度が小さすぎると第一分散媒とテレフタル酸結晶の分離が不充分となり、テレフタル酸の純度が低下する。反対に線速度が高すぎると、第二分散媒の使用量が増える欠点がある。
分散媒置換塔下部室内のテレフタル酸結晶のスラリー層は、その流動性を保持することが重要である。これはテレフタル酸結晶が沈降してできるスラリー層が完全な圧密状態になるとスラリーとしての流動性が失われ、工学的な手法によって分散媒置換塔から抜き出すことができなくなるからである。これを防ぐためには塔下部室内のテレフタル酸結晶のスラリー層を常に流動させることが必要となる。そこで、本実施形態に使用する分散媒置換塔では、塔下部のスラリー層中の分散を良くして第二分散媒のチャンネリングや偏流を防ぐために、スラリー層中に攪拌翼を設ける。塔下部室のスラリー層に適度な流動性を与えるための撹拌翼としては、羽根が撹拌軸から水平方向に延びるものであれば特に制限されない。羽根の本数や形状は、特に制限されず、撹拌軸上方向から見たとき一文字、十文字、巴型等の本数や形状が挙げらる。撹拌翼の翼径は、テレフタル酸結晶の堆積層全体を流動化させる長さが必要であり、好ましくは分散媒置換塔塔下部室径の0.2〜0.8倍であり、より好ましくは分散媒置換塔塔下部室径の0.3〜0.7倍である。
前記撹拌翼の回転数は、好ましくは毎分0.1〜20回転であり、より好ましくは毎分0.5〜10回転である。攪拌翼の動力としては、塔下部室のスラリー層の単位体積あたりの動力として0.05〜1.0kWh/mが好ましく、0.1〜0.8kWh/mがより好ましく、0.2〜0.7kWh/mがさらに好ましい。攪拌動力を0.05〜1.0kWh/mの範囲とすることで、塔下部室のスラリー層に適度な流動性を与えてスラリーの固結や付着、及び抜出し口の閉塞を防止するとともに、高い分散媒置換率を達成することができる。
分散媒置換塔下部室に供給する第二分散媒が、スラリー層中でよく分散し、チャンネリングや偏流を防ぐために、スラリー層中に設けた攪拌翼よりあたかもスプリンクラーのように第二分散媒を供給する方法や、堆積層中に設けたリング状スパージャーを介して第二分散媒供給する方法が効果的である。これにより、スラリー層の流動性を保持し、スラリーの固結及び塔下部室や、攪拌翼への結晶の付着を防ぐことができる。第二分散媒がテレフタル酸結晶の堆積層中に均一に分散されることにより、第二分散媒のチャンネリングを防止でき、さらに結晶表面に付着していた種々の不純物等を効率よく洗浄できる効果も得られる。
本実施形態のテレフタル酸の製造方法は、前記した操作条件に加え、以下に示すような方法にて分散媒置換工程を行うことで、テレフタル酸結晶の負荷変動等に対応して、高い分散媒置換率を長期間にわたり安定して得ることができる。高い分散媒置換率を安定して維持するには、後述する置換塔下部室のスラリー層上方に形成される境界領域の位置を一定範囲に維持すること、及び塔下部室のスラリー層の濃度を一定範囲に維持することが重要である。
分散媒置換塔内の塔下部室のスラリー層上方に形成される境界領域は、分散媒置換塔上部を分散媒置換塔下部に対して相対的に高温にし、下部室のスラリー濃度を中間部に対して相対的に高濃度に維持することによって生じる特徴的な温度分布、すなわち上下方向に非常にシャープな温度変化を見せる境界領域を指す。当該境界領域の位置は、例えば、分散媒置換塔下部室内の縦方向に複数の温度計を設置し、分散媒置換塔内の縦方向の温度変化を測定することにより検知ができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、分散媒置換塔下部室内の縦方向に複数の温度計が設置され、前記分散媒置換塔内の縦方向の温度変化を計測することにより、該分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置を検知することが好ましい。
複数の温度計とは、2つ以上の温度計であることが好ましく、5つ以上の温度計であることが好ましい。
前記境界領域の位置は内部の分散媒上昇流に敏感に反応し、この境界領域の位置を調節することで内部の分散媒上昇流を調整できる。この境界領域の位置は、分散媒上昇流が大きくなると高くなり、分散媒上昇流が小さくなると低くなる。従って、境界領域の位置が低くなったことを検知すれば、該検知は分散媒上昇流量が小さくなったことを指す。分散媒上昇流量が小さくなった場合には、分散媒上昇流量を増加させる処置が行われる。分散媒上昇流量を増加させる方法としては、例えば、第二分散媒供給量を増加させる方法、或いは、置換スラリーの抜き出し流量を減少させる操作を行う方法等が挙げられ、好ましくは第二分散媒供給量を増加させる方法である。置換スラリーの抜き出し流量を減少させる操作により界面領域の位置を調節すると、分散媒置換率が低下し、テレフタル酸の品質が悪化することがあるため、第二分散媒供給量で界面位置を調節することが好ましい。
前記境界領域の位置は、分散媒置換塔下部室に設置した攪拌機の上端部より、置換塔内径に対して0.3〜1.5倍上方の位置であることが好ましい。前記境界領域の位置は、好ましくは該目標値の上下800mmの変動範囲に収まるように調節し、より好ましくは該目標値の上下500mmの変動範囲に収まるように調節する。
分散媒置換塔内の縦方向の温度分布における上部を高温にするには、第二分散媒の温度を供給スラリーの温度より低くすることによって行うことができる。分散媒置換塔内の縦方向の温度分布における上部を高温にすることにより、分散媒置換装置の置換効率を高く維持できるのみでなく、下部室のスラリーの分散媒の比重が供給スラリー中の分散媒の比重より高くなり、より安定した系を形成する。
塔下部室のスラリー層の濃度を一定範囲に維持する方法としては、例えば、塔下部室のスラリー層の濃度を直接測定し、得られた濃度に基づきスラリーの抜き出し流量や第二分散媒の供給流量を調節する方法が考えられる。しかし、塔下部室のスラリー層の濃度を直接測定することによる方法は、塔下部室のスラリー層の濃度の測定値の変動が大きいため、該濃度に基づくスラリーの抜き出し流量や第二分散媒の供給流量の調節が難しい。また、塔下部室のスラリー層の濃度を直接測定することは、濃度測定用の配管の閉塞を起こし易い。
本実施形態において、スラリー濃度の測定は、置換塔からテレフタル酸結晶と第二分散媒を含むスラリーを抜き出す晶析槽中のスラリーに対して行うことが好ましい。より具体的には、晶析槽からのスラリー抜き出し配管に密度計を設置し、測定されるスラリー密度からスラリー濃度を算出する。より好ましくは、晶析槽からのスラリー抜き出し配管から分岐し晶析槽にスラリーを循環させる配管に密度計を設置する。晶析槽のスラリーに対し濃度を測定することは、変動の少ないスラリー濃度の測定を可能とし、置換塔内のスラリー濃度の変動を抑えて安定した制御を可能とする。
本実施形態において、密度計で測定される晶析槽のスラリー濃度は、スラリー中のテレフタル酸結晶の質量%として、25〜40質量%の範囲である。スラリー濃度が25質量%より低くなると次の固液分離工程における廃水の処理量が増え、負荷が大きくなる。一方、スラリー濃度が40質量%より高くなると、スラリーの粘性が上がり、配管内での差圧の上昇や、配管内での閉塞が起こりやすくなること等の不具合が生じる可能性が高まる。固液分離工程の負荷増大を抑え、スラリー配管の差圧上昇や閉塞の発生を抑える観点から、前記スラリー濃度は、好ましくは30〜40質量%の範囲である。
本実施形態において、分散媒置換塔内のスラリー濃度を安定して制御するためには、晶析槽中のテレフタル酸スラリーの体積Vが、分散媒置換塔内のテレフタル酸スラリーの体積Vに対して0.050〜0.80倍の範囲を維持するように調節する。晶析槽内のスラリー体積Vが小さすぎると、スラリー濃度の変動が大きくなり、分散媒置換塔内のスラリー濃度の制御が難しくなる。一方、晶析槽内のスラリー体積Vが大きすぎると、検出されるスラリー濃度の変動が小さくなり分散媒置換塔内のスラリー濃度の制御がかえって難しくなる。したがって、分散媒置換塔内のスラリー濃度の制御の容易性の観点から、Vは、Vに対して0.050〜0.80倍の範囲であり、好ましくはVに対して0.10〜0.50倍の範囲である。
さらに、図1に示す本実施形態の好ましい態様について以下に説明する。
図1において、分散媒置換塔1内のテレフタル酸スラリーの体積Vは、原料スラリー導入ノズル3よりも下方部分の置換塔容積に相当する。晶析槽11内のスラリー体積VをVに対して0.050〜0.80倍の範囲とすることにより、置換塔下部室のスラリー層bのスラリー濃度の制御が容易になる。
晶析槽11の下部からテレフタル酸スラリーを抜き出し、次の工程へスラリーを移送する配管から分岐して晶析槽11に循環させる配管の途中に密度計12を設置する。密度計12で測定されるスラリー密度を一定範囲に維持し、かつ、分散媒置換塔内の温度計から測定される境界領域の位置aを、攪拌機8の上端部より置換塔内径に対して0.3〜1.5倍上方の位置を目標値として、該目標値の上下800mmの変動範囲に収まるように運転を行なうことで、極めて高い置換効率を継続維持することができる。スラリー密度が上昇した場合、精製テレフタル酸スラリー抜き出し口5における流量を増加させて、一定に保つようにすればよい。スラリー密度が減少した場合は、逆の操作を行なえばよい。また、置換塔下部室のスラリー層の境界領域の位置aが、低下した場合は第二分散媒の供給量を増加させ、境界領域の位置aが上昇した場合は第二分散媒の供給量を減少させることが好ましい。
本実施形態のテレフタル酸の製造方法では、
1)置換塔下部室のスラリー層上方に形成される境界領域の位置を一定範囲に維持し、2)置換塔下部室から抜き出されたテレフタル酸スラリーの晶析槽内におけるスラリー体積を、分散媒置換塔内のテレフタル酸スラリーの体積に対して0.050〜0.80倍の範囲に維持し、晶析槽内のスラリー濃度を25〜40質量%の範囲に維持することによって、塔下部室のスラリー層の濃度を一定範囲に制御し、
高い分散媒置換率を長期間にわたり安定して維持することが可能になり、良好な品質のテレフタル酸を得ることができる。
次に実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
以下の実施例で求めた分散媒の置換率は、原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き取り口4より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量を求めたものである。
実施例で用いたテレフタル酸水溶液スラリーは、以下の方法により製造した。まず、酸化工程で酢酸溶媒を用いてp−キシレン等の液相酸化反応が行われ、晶析工程で冷却により粗テレフタル酸を析出させた。得られた粗テレフタル酸は、分離工程で結晶が分離され、乾燥工程で乾燥の後、水添工程で水溶媒下の接触水素化反応により精製され、精製テレフタル酸水溶液となり、次の晶析工程でテレフタル酸水溶液スラリーを得た。
<実施例1>
図1に示す装置を用いて水添及び晶析工程後のテレフタル酸水溶液スラリーの分散媒を清浄な水で置換する実験を行った。図1において分散媒置換塔1はステンレススチール製容器であり、その塔径は4mで、置換塔内のテレフタル酸スラリー体積Vは86mであった。分散媒置換塔内の上部には、原料のテレフタル酸水溶液スラリー(以下、原料スラリーともいう)導入ノズル3を設置し、かかる原料スラリー導入ノズル3は原料スラリー供給ポンプ2に連結した。塔頂部には分散媒排出口4を設けた。分散媒置換塔の下部室は半楕円の皿型構造になっており、精製テレフタル酸スラリー抜き出し口5より、分散媒置換処理後の精製テレフタル酸スラリーが抜き出された。前記抜き出し口5の流量は下流のバルブにより調整が可能であった。撹拌翼としては、翼直径が2mであり、45度傾いた羽根4枚が十文字型に配置された撹拌翼8を使用した。各羽根の下側には、第二分散媒導入口9が、羽根1枚につき12個、均等に配置されていた。撹拌翼8の上端部から0.3m上の内壁に、温度計10を設置し、以後1mおきに上方に等間隔に7個の温度計10を設置し、温度分布を計測した。精製テレフタル酸スラリー抜き出し口5から抜き出されたスラリーは、晶析槽11に接続されており、さらに晶析された。晶析槽11の下部から精製テレフタル酸スラリーを抜き出し、次の工程へ移送する配管を分岐させることにより、一部の精製テレフタル酸スラリーを晶析槽11に循環させた。この循環配管の途中にスラリー密度計12を設置し、スラリー密度の測定をできるようにした。
先ず、図1における水供給ポンプ6を駆動し、第二分散媒導入口9を通して系内に100℃の水を80m/hで張り込んだ。分散媒排出口4から水がオーバーフローし始めてから、モーター7を作動させて撹拌翼8を毎分8回転の速度で回転させた。次に、原料スラリー供給ポンプ2を作動させ、原料スラリー導入ノズル3を経由して165℃の原料スラリーを109m/hで供給し、スラリー抜き出し口5からの抜き出し流量を100m/hとし、スラリーの抜き出しを開始した。晶析槽11のスラリー体積Vが30mになったところで、晶析槽11からのスラリー抜き出しを開始し、固液分離装置へスラリーを供給した。以後、晶析槽11内のスラリー体積Vを維持する様に固液分離装置へのスラリー抜き出し量を調節した。また、晶析槽11に設置されている密度計12の値が、30質量%以上になるよう、分散媒置換塔のスラリー抜き出し口5の流量を調節し、31〜32質量%の範囲内で安定させた。さらに、温度計10の指示から、界面領域が下から2〜3番目の温度計の位置になるように、第二分散媒導入ポンプ6の流量を調節した。
系内が定常状態になった後、それぞれの流量の瞬間の流量を読み取ると、以下のようになった。原料スラリー供給ポンプ2で109m/h、精製テレフタル酸スラリー抜き出し口5で97m/h、水供給ポンプ6で75m/h、分散媒排出口4からのオーバーフローはおよそ88m/hだった。なお、晶析槽11に設置された密度計12の値は、31.6質量%で、分散媒置換装置の温度計10の値は、一番下の温度計から順に133℃、150℃、161℃、162℃、161℃、162℃、163℃で、界面の領域は、下から2〜3番目の温度計の位置の高さの範囲にあると判断した。安定状態になった後の分散媒の置換率は、93%〜96%の範囲で安定的に維持することができた。
<比較例1>
実施例1において、原料スラリー供給量は109m/h、第二分散媒供給ポンプ6の流量を75m/hに固定し、精製テレフタル酸スラリー抜き出し口5の流量を95〜100m/hの範囲で調節して、界面位置の制御を行ったこと以外は、実施例1と同じ方法で分散媒置換塔の運転を行なった。密度計12の値は31〜32質量%の範囲に収まっていたものの、界面位置は下から1〜3番目の温度計の範囲、即ち制御目標値の上下約1000mmの範囲で変動し、置換率は86〜95%の範囲で変動した。
<比較例2>
実施例1において、晶析槽内のスラリー体積Vが4mになるようにスラリー抜き出し量を調節して運転を行ったこと以外は、実施例1と同じ方法で分散媒置換塔の運転を行なった。密度計12の値が31〜32質量%の範囲を保つように分散媒置換塔のスラリー抜き出し口5の流量を調節しようしたが、密度計12の値は29〜35%の範囲で変動し、分散媒置換率も82〜90%の範囲で変動した。
<比較例3>
実施例1において、晶析槽内のスラリー体積Vが80mになるようにスラリー抜き出し量を調節して運転を行ったこと以外は、実施例1と同じ方法で分散媒置換塔の運転を行なった。密度計12の値が31〜32質量%の範囲を保つように分散媒置換塔のスラリー抜き出し口5の流量を調節して運転を行ったが、分散媒置換率は85〜95%の範囲で変動した。晶析槽のスラリー保有量が過大であると、スラリー濃度が安定しているにもかかわらず、分散媒置換率の変動が大きかった。
本出願は、2016年3月31日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2016−071319)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1:分散媒置換塔
2:原料スラリー供給ポンプ
3:原料スラリー導入ノズル
4:分散媒排出口
5:精製テレフタル酸スラリー抜き出し口
6:第二分散媒供給ポンプ
7:モーター
8:撹拌翼
9:第二分散媒導入口
10:温度計
11:晶析槽
12:スラリー密度計
a:スラリー層境界領域
b:テレフタル酸結晶スラリー層

Claims (7)

  1. p−フェニレン化合物を液相酸化して得られた粗テレフタル酸と分散媒とを含むテレフタル酸原スラリーを分散媒置換塔の上部に導入する工程;
    分散媒置換塔の下部から導入された第二分散媒の上昇流と前記テレフタル酸原スラリーとを接触させ、分散媒置換塔下部室に第二分散媒に分散した精製テレフタル酸結晶のスラリー層を形成する工程;
    該精製テレフタル酸結晶のスラリーを分散媒置換塔下部室より抜き出し、スラリー濃度を測定する手段を設けた晶析槽に送る工程;
    前記晶析槽中のスラリーを固液分離手段に送りテレフタル酸結晶を分離する工程;
    を含む、テレフタル酸の製造方法であって、
    分散媒置換塔下部室に供給する第二分散媒の流量、分散媒置換塔下部室より抜き出す精製テレフタル酸結晶のスラリー流量、及び晶析槽から固液分離手段に送るスラリーの流量を調節することによって、下記(1)〜(3)の条件を維持する、テレフタル酸の製造方法。
    (1)前記晶析槽中のスラリーの体積Vが、前記分散媒置換塔内の全テレフタル酸スラリーの体積Vに対して0.050〜0.80倍の範囲である。
    (2)分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、制御目標値の上下800mmの変動範囲である。
    (3)晶析槽中のスラリー濃度が、25〜40重量%の範囲である。
  2. 前記分散媒置換塔下部室に攪拌機が設置され、
    前記分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、該攪拌機上端部より置換塔内径に対して0.3〜1.5倍上方の範囲である、請求項1に記載のテレフタル酸の製造方法。
  3. 前記晶析槽中のスラリーの濃度が上昇した場合、分散媒置換塔下部室より抜き出す精製テレフタル酸結晶のスラリー流量を増加させ、
    前記スラリー密度が減少した場合、前記スラリー流量を減少させることにより、
    前記晶析槽中のスラリー濃度を25〜40重量%の範囲に維持する、請求項1又は2に記載のテレフタル酸の製造方法。
  4. 前記分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置が、
    上昇した場合、分散媒置換塔下部に供給する第二分散媒の流量を減少させ、
    下降した場合、該流量を増加させることにより、
    前記界面領域の位置を制御目標値の上下800mmの変動範囲に維持する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。
  5. 前記晶析槽中のスラリー濃度を測定する手段が密度計であり、
    該密度計が、晶析槽から精製テレフタル酸結晶のスラリーを抜き出し、晶析槽へと一部循環させる配管に設置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。
  6. 前記分散媒置換塔内の縦方向に複数の温度計が設置され、
    前記分散媒置換塔内の縦方向の温度変化を計測することにより、該分散媒置換塔下部室に形成されるテレフタル酸結晶のスラリー層と、分散媒置換塔中間部の希薄テレフタル酸スラリーとの界面領域の位置を検知する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。
  7. 前記テレフタル酸原スラリーが、p−フェニレン化合物を液相酸化した後、落圧及び高温にして得られた粗テレフタル酸スラリーから、反応分散媒を分離することにより得られた粗テレフタル酸結晶を、高温、高圧下で水に溶解させた後、接触水素化処理し、さらに該反応液を複数段の晶析槽を用いて段階的に落圧及び降温してテレフタル酸を晶析させて得られるスラリーである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。
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