JP4055913B2 - 高純度テレフタル酸を製造する方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は繊維、フィルム、工業用部材、一般成形品等に広く使用されているポリエステル樹脂の主原料である高純度テレフタル酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレフタル酸は通常、酢酸を溶媒として使用し、コバルトおよびマンガン触媒に臭素化合物を助触媒として或いはコバルト触媒にアセトアルデヒドのような促進剤を加えてp−キシレンを高温高圧下に空気酸化して製造される。
しかし、この液相空気酸化によって得られた粗テレフタル酸は、通常白色度が劣っており、4−カルボキシベンズアルデヒド(4CBA)をはじめパラトルイル酸(pTOL)など、多量の不純物を含んでおり、この粗テレフタル酸のままではグリコールと反応させてポリエステルにするには適さない。
またテレフタル酸を上記方法と同様に酢酸を溶媒とし、高温高圧下、コバルト触媒を使用して、液相酸素酸化して製造する方法も提案されているが、この方法においても4CBA等の不純物の副生が多く、この粗テレフタル酸のままでは前記の方法の場合と同様、直ちにはグリコールと反応させるには適さない。
【0003】
このような4CBA等の不純物を含む粗テレフタル酸から高純度テレフタル酸を製造する方法としては酸化、還元などの反応、或いは単に再結晶により精製処理する方法(高温での第8族貴金属触媒の存在下の接触水素化処理または接触処理、再結晶処理、酸化処理、リスラリー処理、或いはこれらを組み合わせた処理等)が知られているが、現在商業的に行われているのは主として接触水素化処理法であり、例えば特公昭41−16860号には粗テレフタル酸の水溶液を230℃以上の高温溶媒中で第8族貴金属触媒の存在下に接触水素化処理する方法が記載されており、また特公昭47−49049号にはその改良法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特公昭47−49049号では、接触水素化処理をした粗テレフタル酸溶液からテレフタル酸を晶析させる場合、pTOLの混入を防止するため、水の蒸発による冷却速度を1分間当たり2.2〜5.5℃に制御し、結晶の分離温度を120〜150℃の範囲で行うことが記載されている。
この特公昭47−49049号は回分式晶析法について述べたものであり、本発明者の実験によれば、大規模に製造する工業化装置を想定した直列に配置された複数の晶析槽を通過する連続晶析方式でテレフタル酸結晶を晶析させる場合、連続した各晶析槽における上記冷却速度の制御は難しいことが確認された。
【0005】
即ち特公昭47−49049号の方法は、各段の晶析器の圧力をその前段の晶析器の圧力よりも低く設定し、水の蒸発によってスラリー溶液の温度を下げる方法である。しかし晶析器内は完全に均一な圧力になるため各晶析器内の前段晶析器との間にある絞り弁より下流では、設定圧力に見合った温度に達するまで、温度低下は事実上瞬時に行われる。従って特公昭47−49049号の冷却速度を実際に連続晶析法で実現するには、20段以上もの晶析槽が必要になり、工業生産の面では実際的でない。
【0006】
一方バッチ式の晶析方法においては、冷却速度を比較的自由に制御できるが、本発明者が実際にバッチ式晶析方法で実験した結果では、2.2〜5.5℃という冷却速度には特に関係せず、結晶の分離温度を120〜150℃の範囲で行うことによりテレフタル酸結晶へのpTOL混入抑止に効果的であった。
結晶スラリーから高温・高圧で結晶分離を行う方法としては特公昭47−49049号で遠心分離法や濾過法等を提示している。
【0007】
この遠心分離法では、高速回転をしている円筒または円錐状のケーシングにスラリー溶液を導入し、母液を遠心力で上部からオーバーフローさせ、ケーシング内壁に付着した結晶は下部へかき取り羽根で排出されるようになっている。しかしこの遠心分離法では結晶の洗浄が難しく、結晶に付着した母液には多量の不純物が溶解しており、これを乾燥しても高純度のテレフタル酸を得ることはできない。このために分離したテレフタル酸ケーキを再び高温水でスラリー化して、分離操作をもう一度行わなければならないことになる。また遠心分離を高温・高圧下に高速回転で行うために、該装置の日常の保守、管理が煩雑であり、付帯設備のため投資額が増加する。
【0008】
この遠心分離法の問題点を克服するため、高温・高圧で濾過を行うことの改善方法も提案されている。例えば特開平1−299618号ではロータリーバキュウムフィルターを高温・高圧で行うことが記載されているが、高温・高圧下でこのような濾過を大規模に実施するのは困難である。
また液体サイクロンを応用する方法もいくつか提唱されているが、いずれも母液の置換率が不十分である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は接触水素化処理をした粗テレフタル酸溶液から高純度のテレフタル酸を晶析させる際の上記の如き課題の解決法として母液置換法を提案し、特許出願を行った(特願平05−299465号)。
この方法は母液置換塔を用いてテレフタル酸結晶スラリー溶液の母液を新鮮な溶媒に置換するもので、高純度のテレフタル酸を容易に得ることができる。しかしながらこの母液置換法では置換溶媒の全量をテレフタル酸結晶スラリー溶液の処理温度にまで加熱するために、水蒸気の熱源が別に必要である。
本発明者はこのような母液置換法について更に検討した結果、置換溶媒を二系統に分けて系統毎に温度を設定することにより、プロセスにおける低温の熱源を有効に利用でき、使用エネルギーの削減が図られて高純度テレフタル酸の低コスト化が図られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明は、パラ位にカルボキシル基および/またはカルボキシル基生成性被酸化性置換基を有するp−フェニレン化合物を遷移金属化合物の存在下に液相酸化し、得られた粗テレフタル酸を酸化、還元などの反応、或いは再結晶により精製処理した後、落圧、降温を繰り返して120〜220℃の温度に調節されたテレフタル酸結晶スラリー溶液を母液置換塔の上部に導入し、母液置換塔の下部から一系統目の置換溶媒を導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液と同温または導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液の温度よりも100℃以内の低温で供給し、更に下部から一系統目の置換溶媒よりも5〜120℃低温で且つ60℃より高く常圧における置換溶媒の沸点より低い温度で二系統目の置換溶媒を供給してテレフタル酸結晶を沈降せしめ、塔頂より主として導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液の母液と一系統目の置換溶媒を抜き出し、母液置換塔底部より主として塔内で沈降するテレフタル酸結晶と二系統目の置換溶媒のスラリー溶液を抜き出し、塔底部より抜き出されたスラリー溶液からテレフタル酸結晶を分離することを特徴とする高純度テレフタル酸を製造する方法である。
【0011】
本発明の高純度テレフタル酸を製造するために用いられる粗テレフタル酸はp−フェニレン化合物の液相酸化で得られる。使用されるp−フェニレン化合物はパラ位にカルボキシル基及びまたは液相空気酸化によりカルボキシル基を生成する被酸化性置換基を有するものであり、該置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ホルミル基、アセチル基等が挙げられる。これらの置換基は互いに同一であっても、異なっていてもよい。
粗テレフタル酸を製造するために用いられるp−フェニレン化合物としてはパラキシレンが最も一般的である。
【0012】
この液相酸化の溶媒としては水または酢酸、或いはこれらの混合物が用いられる。液相酸化の触媒にはマンガン、コバルト、鉄、クロム、ニッケルなどの遷移金属化合物が用いられ、また助触媒として通常は臭素化合物が用いられ、臭素触媒を使わない場合にコバルト触媒に対して促進剤としてアセトアルデヒド、メチルエチルケトンが併用される。使用される触媒は酸化反応器内でコバルトイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオン、臭化物イオンを生成するものならば特に限定はされない。
液相で行う酸化に使用される酸化剤は酸素または空気が使用される。酢酸溶液中、コバルトおよびマンガン触媒及び臭素化合物の存在下での酸化では空気で十分であり、酢酸溶液中、コバルト触媒の存在下での酸化では酸素が好ましい。
【0013】
酢酸溶液中、液相酸化法で得られる粗テレフタル酸は通常4CBAをはじめ多くの不純物が含まれ、色相の指標であるOD340の値も、直接成形用ポリマー原料として使用できる水準ではないため、通常は精製工程が必要である。その精製処理に用いられる粗テレフタル酸中の4CBA含量その他の不純物の含量およびOD340は特に上限はない。
本発明は粗テレフタル酸を酸化、還元などの反応により、或いは再結晶により精製処理した後、テレフタル酸結晶スラリー溶液を溶媒置換するものである。この精製処理法としては従来技術に記載したように、接触水素化処理、接触処理、再結晶処理、酸化処理、リスラリー処理など多くの方法があり、何れの方法で精製処理されたテレフタル酸でも本発明の溶媒置換に用いられるが、接触水素化処理が最も一般的であるので、次に接触水素化処理について説明する。
【0014】
接触水素化処理は溶液状態で高温・高圧で行われ、接触水素化温度は水素存在下で230℃以上、好ましくは240〜300℃の範囲が採用される。一方、粗テレフタル酸の濃度は10〜40重量%の範囲が好ましく、従って、圧力は液相を維持するに十分であり、しかも接触水素化反応に適切な水素分圧を保持できる圧力が好ましく、通常30〜80気圧の範囲が好ましい。
接触水素化反応の触媒には第8族貴金属が使用されるが、該第8族貴金属としてはパラジウム、白金、ルテニウム、ロジウムが用いられ、特にパラジウムが好適に用いられる。接触水素化触媒は通常は担体に担持させて使用される。
この担体としては通常は多孔性物質が使用されるが、材質的には炭素系担体が好ましく、活性炭、特に粒状椰子殻炭が好適である。触媒の担体への担持量は微量でも効果があり、特に範囲が限定されるものではないが、長期活性を維持するためには、0.1〜1.0重量%程度の担持量が好適である。
【0015】
接触水素化処理溶媒には水または酢酸、或いはこれらの混合物が用いられる。接触水素化のための水素量は少なくとも4CBAに対して2倍モル以上の供給が必要である。接触水素化処理時間は、実質的に水素化反応が進行するに十分な時間であれば良く、充填塔方式の反応の場合は通常1〜60分、好ましくは2〜20分の範囲である。通常、接触水素化処理は連続式で行われる。
接触水素化処理された粗テレフタル酸溶液は、触媒担体に使用した例えば活性炭の摩耗により生ずる微粉末の混入を防止するために、耐食性のある材料の濾過器で濾過後、まず直列に連結された2〜6段の晶析器あるいはバッチ式晶析器へ導入され、順次減圧することで、溶媒の蒸発によって120〜220℃まで降温させることによって、テレフタル酸結晶が晶析しスラリー溶液となる。
このようにして得られたスラリー溶液はテレフタル酸結晶と不純物を多く含む母液からなっており、本発明の母液置換により、不純物を多く含有している母液を新鮮な置換溶媒に置き換えて高純度テレフタル酸が得られる。
【0016】
次に図面を用いて母液置換塔について説明する。図1は本発明の方法に用いられる母液置換塔の説明図である。図1に示す如く母液置換塔は塔型式であり、塔上部に前工程から移送されたテレフタル酸スラリーの導入部、塔下部に二系統の置換溶媒導入部、塔頂部に不純物を含む母液の排出部、塔底部に置換溶媒されたテレフタル酸の排出部を有する。
母液置換塔の機能としては、塔頂部とスラリー導入部の間で結晶の分級作用、スラリー導入部と置換溶媒導入部の間で結晶の沈降洗浄・母液置換作用、置換溶媒導入部とテレフタル酸排出部の間でテレフタル酸結晶と置換溶媒のスラリー化の作用を有する。母液置換塔は内部に構造物の無い形式でも良いが、例えばRDC(ロータリーディスクコンタクター)構造を有する塔、棚段構造を有する塔、長尺通路に分割した塔などの内部構造を有する母液置換塔も用いられる。
【0017】
本発明における置換溶媒としては接触水素化処理で用いられた溶媒に対応して水または酢酸、或いはこれらの混合物が用いられる。
置換溶媒は本発明において母液置換塔の下部から二系統に分けて導入される。一系統目の置換溶媒は母液置換塔内を主として上昇流となって流れ、母液置換部において上部から沈降してくるテレフタル酸結晶と向流接触し、次に母液置換塔へ供給された原料スラリーと混合し、分級部を経て塔頂部から排出される。更に下部に供給される二系統目の置換溶媒は母液置換部から沈降してくるテレフタル酸結晶と混合して高純度テレフタル酸と置換溶媒のスラリーになり塔底部より抜き出される。
【0018】
母液置換塔の上昇流となる一系統目の置換溶媒の温度は基本的には母液置換塔上部に導入されるテレフタル酸結晶スラリー溶液と同じ温度に設定されるが、それよりも低温に設定しても良く、この置換溶媒の温度を低めに設定することにより置換溶媒の加熱にかかる費用の低減が図られる。しかしながら母液置換塔内を上昇流となって流れる置換溶媒と母液置換塔の上部に導入されるテレフタル酸結晶スラリー溶液の温度差を大きくするには自ずと限界があり、この限界を越えると種々の問題が生じ易い。すなわち温度差が大きくなると、テレフタル酸が析出して母液置換塔の壁面へ付着したり、詰まりを起こし易くなり、テレフタル酸の析出とともにpTOLなどの不純物が析出してテレフタル酸の品質が低下する。またテレフタル酸結晶の沈降速度が小さくなるので、母液置換塔の塔径を大きくする必要があり、これは単に設備投資額の増加につながるだけでなく、置換溶媒の上昇流を整然と制御することが難しくなり、品質向上効果そのものも損なわれる。従って母液置換塔を上昇流となって流れる一系統目の置換溶媒の温度は母液置換塔の上部に導入されるテレフタル酸結晶スラリー溶液と同温または導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液の温度よりも100℃以内の低い温度とする。この置換溶媒の上昇流の線速度は装置の構造、結晶の大きさなどによっても変化するが、0.1〜3.0m/hr程度が好ましい。上昇流の線速度が小さすぎるとテレフタル酸と母液の分離が不十分となり、塔下部より得られるテレフタル酸の純度が低下する。反対に上昇流の線速度が大きすぎると、置換溶媒の使用量が増加する。
【0019】
一方、母液置換塔で一系統目より下部に導入され、母液置換塔内を沈降してきたテレフタル酸結晶と共に母液置換塔の塔底部より抜き出される二系統目の置換溶媒は、母液置換塔下部では既に母液が置換されpTOLなどの不純物は少なくなっているため、不純物の析出がテレフタル酸の品質に与える影響は小さい。従って母液置換塔の下部に導入され母液置換塔の塔底部からテレフタル酸結晶と共にスラリーとして抜き出される二系統目の置換溶媒の温度は一系統目の置換溶媒よりも低めに設定され、一系統目の置換溶媒の温度よりも5〜120℃低い温度であり、60℃より高く常圧における置換溶媒の沸点より低い温度範囲とすることが好ましい。
【0020】
本発明において二系統目の置換溶媒は主として母液置換塔底部より抜き出されるようにする。母液置換塔の塔底部から抜き出されるテレフタル酸結晶と置換溶媒のスラリー濃度が高過ぎる場合にはスラリーの取扱操作が困難となり、スラリー濃度が低いと晶析槽から分離される母液の処理負荷が大きくなることから、このスラリー濃度は母液置換塔に導入されるテレフタル酸結晶スラリーと同程度の濃度とすることが好ましい。このように母液置換塔底部より抜き出されるスラリーの濃度が母液置換塔に導入されるスラリーと同程度の場合には、二系統目の置換溶媒量は母液置換塔に導入されるテレフタル酸結晶スラリーの母液量とほぼ同量となる。
【0021】
母液置換塔の塔頂から抜き出された母液は、当該温度における溶解度に相当するテレフタル酸と、分級部において上昇流に同伴して排出されたテレフタル酸の微細結晶を含んでいる。この母液は直列に設置された1〜3個の晶析槽を通過して可能な限り低い温度まで冷却してテレフタル酸を晶析させる。晶析されたテレフタル酸は濾過等の手段で母液から分離回収される。
この分離回収操作で排出される母液中には、当該温度における溶解度に相当するテレフタル酸とその他の有機成分を含んでいるので、必要であれば更に回収のための工程を経るか、或いは直接に排水処理工程へ送られる。
【0022】
母液置換塔の塔底部から抜き出された液流は精製されたテレフタル酸結晶を含む置換溶媒のスラリー溶液であり、直列に設置された1〜3個の晶析槽を通過することで50〜110℃まで冷却され、結晶分離器でテレフタル酸結晶を分離して取り出し、乾燥工程を経て高純度テレフタル酸が得られる。
この際に排出される母液は、当該温度での溶解度に相当するテレフタル酸を含んでいるのみであり、その他の有機不純物および無機不純物は極めて低濃度なので、この母液は接触水素化処理のため粗テレフタル酸を溶解する溶媒として有効に再利用される。
【0023】
前述の如く一系統目の置換溶媒量は塔内の上昇流線速度によって決まるが、母液置換塔の効率的な運転を行うために一系統目の置換溶媒量は母液置換塔に導入されるスラリーの数分の一以下となる。これに対して二系統目の置換溶媒量は母液置換塔に導入されるテレフタル酸結晶スラリーの母液量とほぼ同量となるから、二系統目の置換溶媒量は母液置換塔に導入される置換溶媒の大半を占めることになり、この温度を低く設定することによって置換溶媒の加熱にかかる費用を大幅に抑えることができる。
更に本発明の方法では二系統目の置換溶媒量が多く、その温度を低く設定できるので、例えば低圧晶出槽より発生する低圧スチームなどのプロセス内の低温熱源を置換溶媒の加熱に有効に利用でき、テレフタル酸製造装置における使用エネルギーコストの大幅な低減が図られる。またプロセス内の低温熱源を有効に利用することにより冷却負荷が削減されると共に、母液置換塔の塔底部から抜き出されたスラリー溶液を処理するための冷却負荷が削減され、場合によっては晶析槽数を減らすこともできるので、高純度テレフタル酸の低コスト化が図られる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1
粗テレフタル酸は商業的規模の装置で製造したものを使用した。即ち触媒として酢酸マンガン、酢酸コバルトおよび臭化水素酸を用い、温度205℃、圧力17気圧の条件下、含水酢酸溶媒中でp−キシレンを空気酸化して粗テレフタル酸を製造した。
水素化処理反応器は内径26mm、長さ350mmの形状で、外側に加熱装置を付けてあり、内部にパラジウム0.5%を活性炭に担持させた触媒200ミリリットルが充填されている。また水素化処理反応器には所定の温度にまで水素化処理液を冷却する冷却器と受器があり、受器は母液置換塔に連結されている。
母液置換塔は内部に構造物のない形式である。内径28mm、高さ2500mmの形状で、外部ジャケットを装備しており、スラリー溶液導入口は塔底部から2300mmの位置に、また一系統目の置換水導入口は塔底部から200mm、二系統目の置換水導入口は塔底部から100mmの位置に設けられている。塔頂部と塔底部の排出口にはそれぞれ内容積200リットルの受器が連結されており、該受器には加熱装置、還流冷却器、撹拌装置が装備されている。
【0026】
水素化処理反応器を285℃に加熱し、285℃に加熱された上記粗テレフタル酸の25%水溶液を毎時1400g供給しながら、該反応器の水素ガス供給ラインから水素ガスを毎時0.4ノルマルリットル供給してテレフタル酸水溶液の接触水素化処理を行った。該反応器から流出した水素化処理液を150℃まで冷却し、受器に滞留させた。
母液置換塔の運転に先立って、一系統目の置換水導入口から150℃に加熱された置換水を毎時470gで導入し、母液置換塔を置換水で満たし塔頂部の排出口より受器へ排出した。次に二系統目の置換水導入口から100℃に加熱された置換水を毎時2120gで導入し、塔底部の排出口より受器へ排出した。
以上の操作の後、母液置換塔上部のスラリー溶液導入口から150℃の上記接触水素化処理工程を経たテレフタル酸結晶スラリー溶液を毎時2860g導入し、母液置換塔の塔底部から毎時2900g排出した。塔頂部からは微細結晶を含んだスラリー溶液を毎時2550g排出した。塔底部から排出されたテレフタル酸結晶スラリーは90℃まで下げて、約15分間保持した後、十分に加熱されたG3ガラスフィルターで素早く濾過した後、結晶を熱水で洗浄して乾燥した。
【0027】
この結果、テレフタル酸濃度28重量%で母液置換塔へ導入されたスラリー溶液は、母液置換塔底部からテレフタル酸濃度が27重量%のスラリーとして抜き出された。また、塔頂部からは毎時18gのテレフタル酸(溶液状態と細かい結晶の合計量)が排出された。これはテレフタル酸換算で、母液置換塔に導入されたテレフタル酸の2.2重量%に相当する。
粗テレフタル酸および得られたテレフタル酸の結晶の分析値を表1に示す。
【0028】
比較例1
母液置換塔の二系統目の置換水導入口に導入する置換水の温度は150℃、置換水導入量は毎時2120gに設定した。その他は実施例と同様の条件で行なった。この結果、テレフタル酸濃度28重量%で母液置換塔へ導入されたスラリー溶液は、母液置換塔底部からテレフタル酸濃度が27重量%のスラリーとして抜き出された。得られたテレフタル酸の結晶の分析値を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例と比較例を比べると、表1から精製テレフタル酸の品質には殆ど差が無く、実施例では置換水の大半が100℃で母液置換塔に導入されているため、比較例より置換水の加熱に要するコストは大幅に低減している。
【0031】
【発明の効果】
本発明の方法により、粗テレフタル酸溶液を精製処理した後のスラリー溶液を母液置換塔で処理する際に、母液置換塔内を上昇流となって流れる置換溶媒とテレフタル酸を母液置換塔の塔底部から抜き出すための置換溶媒をそれぞれ必要な温度に制御して二系統で母液置換塔に導入することによって、高純度テレフタル酸の品質を維持したまま置換溶媒の加熱コストを大幅に低減できる。
即ちテレフタル酸を母液置換塔の塔底部から抜き出すための二系統目の置換溶媒は使用量が多く低温で供給するので、テレフタル酸製造プロセス内の低温熱源を有効に用いることができ、使用エネルギー量が大幅に削減されと共に冷却負荷も削減される。また母液置換塔の塔底部から抜き出されたスラリー溶液を処理するための冷却負荷が削減され、場合によっては晶析槽数を減らすこともできるので、高純度テレフタル酸の低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いられる母液置換塔の構造を示す説明図である。
Claims (1)
- パラ位にカルボキシル基および/またはカルボキシル基生成性被酸化性置換基を有するp−フェニレン化合物を遷移金属化合物の存在下に液相酸化し、得られた粗テレフタル酸を酸化、還元などの反応、或いは再結晶により精製処理した後、落圧、降温を繰り返して120〜220℃の温度に調節されたテレフタル酸結晶スラリー溶液を母液置換塔の上部に導入し、母液置換塔の下部から一系統目の置換溶媒を導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液と同温または導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液の温度よりも100℃以内の低温で供給し、更に下部から一系統目の置換溶媒よりも5〜120℃低温で且つ60℃より高く常圧における置換溶媒の沸点より低い温度で二系統目の置換溶媒を供給してテレフタル酸結晶を沈降せしめ、塔頂より主として導入されたテレフタル酸結晶スラリー溶液の母液と一系統目の置換溶媒を抜き出し、母液置換塔底部より主として塔内で沈降するテレフタル酸結晶と二系統目の置換溶媒のスラリー溶液を抜き出し、塔底部より抜き出されたスラリー溶液からテレフタル酸結晶を分離することを特徴とする高純度テレフタル酸を製造する方法。
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