本発明は潤滑油添加剤の製造方法に関し、特に粘度指数向上剤として好適に使用できる潤滑油添加剤の製造方法に関するものである。本発明の潤滑油添加剤の製造方法は、マクロモノマーを生成するマクロモノマー合成工程と、マクロモノマーを含む単量体成分を重合する重合工程とを有する。
マクロモノマー合成工程では、沸点200℃以上の高沸点溶媒を含む溶媒中、あるいは潤滑油基油を含む溶媒中、金属触媒の存在下、官能基と炭素数50以上の炭化水素基を有する化合物と、前記官能基との反応性基と重合性二重結合を有する化合物とを反応させて、マクロモノマーを生成する。なお本明細書では、官能基と炭素数50以上の炭化水素基を有する化合物を「マクロ化合物」と称し、マクロ化合物の有する官能基との反応性基を有する化合物を「カウンター化合物」と称する場合がある。
マクロ化合物は、炭素数50以上の炭化水素基を有しており、マクロモノマー合成工程でマクロ化合物をカウンター化合物と反応させ、得られたマクロモノマーを重合工程で重合することにより、重合体中にマクロ化合物に由来した炭化水素基が取り込まれる。このようにして得られた重合体は、せん断安定性に優れたものとなり、潤滑油に添加して用いることにより、潤滑油の粘度指数を向上させることができる。
マクロ化合物の炭化水素基の炭素数は、マクロモノマーを重合して得られる重合体の潤滑油への溶解性、粘度指数向上効果、せん断安定性の観点から、50以上であり、好ましくは70以上であり、より好ましくは100以上であり、さらに好ましくは150以上である。前記炭化水素基の炭素数の上限は特に限定されないが、例えば3500以下が好ましく、1500以下がより好ましく、700以下がさらに好ましい。
マクロ化合物の炭化水素基は、炭化水素単量体由来の繰り返し構造またはその水素化物を含むことが好ましく、当該炭化水素単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等のモノオレフィン類;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン(別名ジイソブテン)等のアルカジエン類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。なかでも炭化水素単量体としては、モノオレフィン類、アルカジエン類などが好ましく、従って、マクロ化合物の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、炭化水素単量体がアルカジエン類である場合、アルカジエン類由来の繰り返し構造には不飽和結合が含まれうるが、その場合は当該不飽和結合が水素化(水素添加)されていてもよい。これらモノオレフィン類およびアルカジエン類の炭素数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、マクロモノマーを重合することにより得られる重合体(潤滑油添加剤)の低温時の結晶化を抑制し増粘を防ぐ点から、分岐鎖状であることが好ましい。分岐鎖状のマクロ化合物の炭化水素基は、分岐鎖状のアルキレン基を繰り返し単位として含むことが好ましく、分岐鎖状のアルキレン基と直鎖状のアルキレン基の両方を繰り返し単位として含むのが好ましい。分岐鎖状アルキレン基としては、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,2−ヘキシレン基等が挙げられる。直鎖状アルキレン基としては、エチレン、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基等が挙げられる。
マクロ化合物の炭化水素基は不飽和結合を含まないことが好ましい。従って、マクロ化合物の炭化水素基は、脂肪族飽和炭化水素基であることが特に好ましい。
マクロ化合物の有する官能基は、カウンター化合物の反応性基と付加反応または縮合反応する基であり、水酸基、アミノ基、カルボキシ基およびそのエステル化物、イソシアネート基、スルホ基等が挙げられ、製造容易性や入手容易性の点から、水酸基、カルボキシ基およびそのエステル化物が好ましい。マクロ化合物はこのような官能基を1つのみ有していることが好ましく、より好ましくはマクロ化合物の末端部にそのような官能基を有する。
マクロ化合物の数平均分子量は、マクロモノマーを重合して得られる重合体の潤滑油への溶解性、粘度指数向上効果、せん断安定性の観点から、750以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、2000以上がさらにより好ましく、また50000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましい。なお、マクロ化合物の数平均分子量は、実施例に記載の数平均分子量の測定方法により求める。
カウンター化合物は、マクロ化合物の官能基との反応性基と重合性二重結合(ラジカル重合性基)を有しており、マクロ化合物とカウンター化合物とが金属触媒の存在下で反応することにより、カウンター化合物がマクロ化合物に付加したマクロモノマーが生成する。このようにして得られたマクロモノマーには、マクロモノマーの末端部またはその近傍に重合性二重結合が導入されることとなる。カウンター化合物の有する反応性基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシ基およびそのエステル化物、イソシアネート基、スルホ基、オキサゾリン基等が挙げられる。カウンター化合物はこのような反応性基を1つのみ有することが好ましい。
マクロ化合物とカウンター化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とが反応するウレタン化反応、イソシアネート基とアミノ基が反応するウレア化反応、カルボキシ基と水酸基とが反応するエステル化反応、カルボキシ基とアミノ基とが反応するアミド化反応、スルホ基と水酸基とが反応するスルホン酸エステル化反応、スルホ基とアミノ基が反応するスルホンアミド化反応、水酸基とカルボキシ基のエステル化物とが反応するエステル交換反応、オキサゾリン基とカルボキシ基が反応するアミドエステル化反応等が挙げられる。これらの中でも、金属触媒による反応促進作用が好適に発揮される点から、ウレタン化反応、ウレア化反応、エステル化反応、エステル交換反応、またはアミド化反応が好ましく、反応性に優れる点から、ウレタン化反応が特に好ましい。
カウンター化合物としては、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2,2−ジメチル−2−イソシアナトエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;4−アミノスチレン、4−ビニルベンゼンスルホン酸等のスチレン類;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
マクロ化合物とカウンター化合物の組み合わせとしては、水酸基を有するマクロ化合物とイソシアネート基、カルボキシ基またはスルホ基を有するカウンター化合物との組み合わせ、アミノ基を有するマクロ化合物とイソシアネート基、カルボキシ基またはスルホ基を有するカウンター化合物との組み合わせ、イソシアネート基を有するマクロ化合物と水酸基またはアミノ基を有するカウンター化合物との組み合わせ、カルボキシ基を有するマクロ化合物と水酸基、アミノ基またはオキサゾリン基を有するカウンター化合物との組み合わせ、カルボキシ基のエステル化物を有するマクロ化合物と水酸基を有するカウンター化合物との組み合わせ、スルホ基を有するマクロ化合物と水酸基またはアミノ基を有するカウンター化合物との組み合わせが挙げられる。なかでも、マクロ化合物としては、製造容易性や入手容易性から、水酸基を有するマクロ化合物を用いることが好ましい。カウンター化合物としては、水酸基を有するマクロ化合物との反応性から、イソシアネート基、カルボキシ基、またはカルボキシ基のエステル化物を有するカウンター化合物を用いることが好ましく、イソシアネート基を有するカウンター化合物を用いることがより好ましい。
マクロ化合物とカウンター化合物の使用量は、マクロ化合物1モルに対して、カウンター化合物を0.7モル以上1.5モル以下とすることが好ましく、0.8モル以上1.3モル以下がより好ましい。
マクロモノマー合成工程では、マクロ化合物とカウンター化合物との反応を、金属触媒の存在下で行う。これにより、マクロ化合物とカウンター化合物との反応が促進され、高沸点溶媒や潤滑油基油を含む溶媒中でも、マクロ化合物とカウンター化合物とからマクロモノマーを効率的に製造することが可能となり、反応時間の短縮化を図ることができる。さらに後段の重合工程において、反応液中に金属触媒由来の金属が残存していても、マクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を好適に行うことができる。
金属触媒は、マクロ化合物とカウンター化合物との反応を促進するものであれば特に限定されないが、第3族元素、第4族元素、第5族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、および第15族元素よりなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含む金属触媒を用いることが好ましい。第3族の金属元素としては、スカンジウム、イットリウムが挙げられる。第4族の金属元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ラザホージウムが挙げられる。第5族の金属元素としては、バナジウム、ニオブ、タンタル、ドブニウムが挙げられる。第12族の金属元素としては、亜鉛、カドミウム、水銀が挙げられる。第13族の金属元素としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが挙げられる。第14族の金属元素としては、ゲルマニウム、スズ、鉛が挙げられる。第15族の金属元素としては、アンチモン、ビスマスが挙げられる。なかでも、優れた触媒作用を示す点から、金属触媒としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、およびビスマスよりなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含む金属触媒を用いることが好ましく、チタン触媒および/またはスズ触媒を用いることがさらに好ましい。チタン触媒および/またはスズ触媒を用いれば、マクロモノマー合成工程において、マクロ化合物とカウンター化合物との反応が速やかに進行するとともに、これらの触媒に由来する金属が後段の重合工程の反応液中に残存していても、マクロモノマーの重合率を高めることができ、より高分子量の重合体を得ることが容易になる。
金属触媒は、第16族元素を含む基または配位子を有することが好ましい。この場合、当該基または配位子に含まれる第16族元素が、金属触媒の金属原子に結合または配位していることが好ましい。第16族元素としては、酸素、硫黄 、セレン、テルル等が挙げられ、なかでも酸素または硫黄を含む基または配位子が好ましい。このような基または配位子としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシロキシ基、アシレート基、カテコラート基、チオール基、チオシアナート基等が挙げられ、特に酸素を含む基または配位子が好ましく用いられる。
マクロモノマー合成工程で反応溶媒として用いる高沸点溶媒は、1気圧での沸点が200℃以上の溶媒であれば特に限定されないが、マクロ化合物やカウンター化合物との反応性を有しないか、反応性が低い溶媒であることが好ましい。高沸点溶媒の反応溶媒としての取り扱い性を考慮すると、高沸点溶媒は常温で液体であることが好ましく、高沸点溶媒の1気圧での融点は例えば25℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がさらに好ましい。
高沸点溶媒としては、例えば、炭素数12以上のアルカン(例えば、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン)、および当該アルカンの炭素−炭素結合の1以上が二重結合または三重結合で置き換えられたアルケン、アルカジエン、アルキン等の鎖状脂肪族炭化水素類;炭素数10以上のシクロアルカン(例えば、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン、シクロヘプタデカン、シクロオクタデカン、シクロノナデカン)、および当該シクロアルカンの炭素−炭素結合の1以上が二重結合または三重結合で置き換えられたシクロアルケン、シクロアルカジエン、シクロアルキン等の環状脂肪族炭化水素類;ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、テトラセン、フェナントレン、シクロテトラデカヘプタエン、アズレン等の芳香族炭化水素類;ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコ−ルジエーテル類(両末端がエーテル化したグリコール類);ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類(両末端がエーテル化およびエステル化したグリコール類);トリエチレングリコールジアセテート等のグリコールジエステル類(両末端がエステル化したグリコール類);安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル類;ブチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル等のフェニルエーテル類;アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン等のフェニルケトン類等が挙げられる。高沸点溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
マクロモノマー合成工程では、潤滑油基油を反応溶媒として用いてもよい。潤滑油基油は、上記に説明した高沸点溶媒と同様に高い沸点を有し、基本的に常温で液体で存在し、またマクロ化合物やカウンター化合物との反応性も低いため、マクロ化合物とカウンター化合物との反応溶媒として好適に用いることができる。
本発明では、マクロモノマー合成工程と重合工程を経て得られる反応液中に上記に説明した沸点200℃以上の溶媒や潤滑油基油が含まれており、これらの高沸点溶媒や潤滑油基油が潤滑油に添加されても、潤滑油の品質に影響を与えないか、大きく品質を損なわないため、マクロモノマー合成工程と重合工程を経て得られる反応液は、溶媒置換をすることなく潤滑油添加剤としての使用が可能となる。そのため、潤滑油添加剤を簡便に製造することができる。なお、マクロモノマー合成工程と重合工程を経て得られる反応液が潤滑油添加剤として用いられることを考慮すると、マクロ化合物とカウンター化合物との反応は潤滑油基油中で行うことが好ましい。
潤滑油基油としては、公知の潤滑油基油を用いることができ、鉱油系基油や合成系基油が好適に挙げられる。鉱油系基油としては、パラフィン系やナフテン系等の基油が挙げられる。鉱物系基油には、原料基油を溶剤精製したり、水素化分解または水素化異性化処理したものも含まれる。合成系基油としては、炭化水素系、エステル系、エーテル系、シリコーン系、フッ素系等の基油が挙げられる。
鉱油系基油の具体例としては、以下に示す油(1)〜(7)を原料とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。得られる潤滑油添加剤の品質を高めることが容易な点を考慮すると、潤滑油基油としては、(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)または(9)が好ましく用いられる。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1)〜(2)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合油
(5)基油(1)〜(4)のいずれかの脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)〜(6)から選ばれる2種以上の混合油
(8)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油。
(9)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油。
合成系基油としては、具体的には、ポリα−オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、なかでもポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)およびそれらの水素化物が挙げられる。
高沸点溶媒および潤滑油基油は、最終的に得られる潤滑油添加剤に高沸点溶媒や潤滑油基油が持ち込まれた際に、潤滑油添加剤としての要求品質を確保することが容易な点から、粘度指数が100以上であることが好ましく、120以上がより好ましく、また160以下が好ましい。例えば、粘度指数が100未満であると、粘度−温度特性や熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化しやすくなったり、摩擦係数が上昇したり、摩耗防止性が低下しやすくなる。一方、粘度指数が160を超えると、低温粘度特性が低下しやすくなる。粘度指数は、JIS K 2283に基づき測定される。また、高沸点溶媒および潤滑油基油の100℃における動粘度は、1〜20mm2/sであることが好ましい。
マクロモノマー合成工程では、上記に説明した高沸点溶媒または潤滑油基油を含む溶媒中でマクロ化合物とカウンター化合物との反応を行う。反応溶媒中の高沸点溶媒の含有量、すなわち沸点200℃以上の留分の含有量は、例えば50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。反応溶媒は沸点200℃以上の留分のみから構成されていてもよいが、それよりも低沸点の留分が含まれていてもよい。反応溶媒として潤滑油基油を用いる場合は、反応溶媒中の潤滑油基油の含有量は、例えば70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。反応溶媒は潤滑油基油のみから構成されていてもよい。
マクロモノマー合成工程における反応溶媒の使用量は特に限定されないが、反応液中のマクロ化合物とカウンター化合物の合計の濃度が5質量%以上70質量%以下となる程度が好ましい。
マクロ化合物とカウンター化合物とを反応させる際の温度は、反応溶媒の種類や反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また180℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましい。反応時間は、反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、20分〜16時間(好ましくは30分〜12時間)行えばよい。
マクロモノマー合成工程では、マクロ化合物とカウンター化合物とを反応させることにより、例えば下記式(1)で表されるマクロモノマーが得られる。下記式(1)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、ウレア結合(−NH−CO−NH−)、エステル結合(−CO−O−)、アミド結合(−NH−CO−)、スルホン酸エステル結合(−SO2−O−)、またはスルホンアミド結合(−SO2−NH−)を含む連結基を表し、R2はマクロモノマーの高分子構造部(炭化水素基)を表す。
式(1)のXの連結基に含まれるウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、アミド結合、スルホン酸エステル結合、またはスルホンアミド結合の各結合の方向は特に限定されない。ウレタン結合を例にとると、ウレタン結合は窒素原子がR2側に位置してもよく、酸素原子がR2側に位置してもよい。連結基Xは前記結合を必須的に含む限り、前記結合の2種以上を有するものであってもよく、メチレン基やエーテル結合(−O−)などの他の2価の連結基を有するものであってもよい。連結基Xは、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合またはアミド結合を含むものがより好ましい。
式(1)のR2の高分子構造部は、上記のマクロ化合物の炭化水素基の説明が参照される。
マクロモノマー合成工程を行うことにより、マクロモノマーを含有する反応液が得られる。本発明の製造方法では、このようにして得られたマクロモノマーを含有する反応液を次の重合工程で使用し、マクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を行う。すなわち、マクロモノマー合成工程で使用した金属触媒由来の金属の存在下、マクロモノマー合成工程で使用した高沸点溶媒または潤滑油基油を含む溶媒中で、マクロモノマーを含む単量体成分を重合し、これによりマクロモノマー由来の単位を含む重合体を得る。本発明の製造方法によれば、マクロモノマー合成工程と重合工程を連続的に行うことができるため、マクロ化合物を原料としてマクロモノマー由来の単位を含む重合体を簡便に製造することができる。また、得られる重合体をより高分子化されたものとすることができるため、これを潤滑油に添加して用いたときに、粘度指数を効果的に高めることが可能となる。
マクロモノマー合成工程から重合工程に移行する際には、マクロモノマー合成工程で使用した金属触媒および当該金属触媒由来の金属を反応液から積極的に分離しなくてよい。本発明の製造方法では、マクロモノマー合成工程で使用した金属触媒や当該金属触媒由来の金属を分離しなくても、重合工程においてマクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を好適に行うことができる。例えば、マクロモノマー合成工程で得られた反応液中のマクロモノマー(MM)と金属触媒に由来する金属(Me)の含有比(質量基準)をMe1/MM1としたとき、重合工程で重合反応に供する反応液中のマクロモノマー(MM)と金属触媒由来の金属(Me)の含有比Me2/MM2が0.5×Me1/MM1以上2.0×Me1/MM1以下であることが好ましく、0.7×Me1/MM1以上1.5×Me1/MM1以下がより好ましく、0.8×Me1/MM1以上1.2×Me1/MM1以下がさらに好ましい。
マクロモノマー合成工程から重合工程に移行する際、マクロモノマー合成工程で使用した高沸点溶媒または潤滑油基油は、反応液から積極的に分離しなくてよい。本発明の製造方法では、マクロモノマー合成工程で使用した高沸点溶媒や潤滑油基油を重合工程の反応溶媒としても使用することができる。重合工程では、マクロモノマー合成工程で得られた反応液に、上記に説明した高沸点溶媒や潤滑油基油またはそれ以外の溶媒をさらに加えて、重合反応を行ってもよい。なお、重合工程で得られる重合体が潤滑油添加剤として用いられることを考慮すると、重合反応は潤滑油基油中で行うことが好ましく、重合工程で溶媒を追加する場合も、追加溶媒として潤滑油基油を加えることが好ましい。これにより、重合後の溶媒置換が不要となり、プロセスを簡略化することができる。
重合工程で使用する反応溶媒中の高沸点溶媒の含有量、すなわち沸点200℃以上の留分の含有量は、例えば50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。反応溶媒は沸点200℃以上の留分のみから構成されていてもよいが、それよりも低沸点の留分が含まれていてもよい。反応溶媒として潤滑油基油を使用する場合は、重合工程で使用する反応溶媒中の潤滑油基油の含有量は、例えば70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。反応溶媒は潤滑油基油のみから構成されていてもよいが、それ以外の成分が含まれていてもよい。マクロモノマー合成工程では、マクロ化合物とカウンター化合物との縮合反応により水が生成しうることから、重合工程で使用する反応溶媒中にはこのように生成した水が含まれていてもよい。
重合工程における反応溶媒の使用量は特に限定されないが、反応液中の単量体成分、重合開始剤、その他の成分の合計量の濃度が、全体の10質量%以上70質量%以下となる程度が好ましい。
重合工程では、触媒工程で得られたマクロモノマーを含む単量体成分をラジカル重合する。重合工程における単量体成分の重合方法は、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれでもよいが、得られる重合体の潤滑油添加剤としての取り扱い性を考慮すると、溶液重合により重合を行うことが好ましい。なお、分散媒、乳化剤、分散剤等を使用する場合は、特に制限なく公知のものが使用できる。
重合工程では、単量体成分として、マクロモノマー合成工程で得られたマクロモノマーを必須的に用いる。マクロモノマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。マクロモノマーの使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、6質量部以上が好ましく、7質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましく、また25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、18質量部以下がさらに好ましく、16質量部以下がさらにより好ましく、これにより、得られる重合体(潤滑油添加剤)の粘度指数向上効果を高めたり、せん断安定性を高めることが容易になる。重合工程では、さらにアルキル(メタ)アクリレートやマレイミド系単量体を単量体成分として用いてもよい。重合工程で使用する単量体成分の詳細は後述する。
重合の際には重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては公知の重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等の過酸化物等を用いることができる。また、下記に説明するように多官能開始剤を用いることもできる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01〜3質量部とすることが好ましい。
重合工程では、連鎖移動剤等を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、分子量分布の小さい重合体を得やすくなる。また、解重合による熱分解も抑制しやすくなる。連鎖移動剤としては、ブタンチオール、オクタンチオール、オクタデカンチオール、ドデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、ドデシルメルカプタン、エチレングリコールビスチオグリコレート等のメルカプタン;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。また、下記に説明するように多官能連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01〜3質量部とすることが好ましい。
重合反応の温度は、反応溶媒の種類や重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また180℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましい。重合反応の時間は、重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、1〜48時間(好ましくは3〜24時間)行えばよい。
重合工程では、単量体成分として、マクロモノマーに加え、アルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が1〜40のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、また95質量部以下が好ましく、92質量部以下がより好ましく、90質量部以下がさらに好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。以下、当該アルキル(メタ)アクリレートを「短鎖アルキル(メタ)アクリレート」と称する場合がある。単量体成分として短鎖アルキル(メタ)アクリレートを用いれば、マクロモノマーとの重合反応を好適に進行させやすくなり、また得られる重合体の耐熱性や粘度指数向上効果を高めることができる。
短鎖アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基が挙げられる。短鎖アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、好ましくは直鎖状または分岐鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。短鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを少なくとも用いることが好ましく、これとともにメチル(メタ)アクリレートを併用してもよい。
短鎖アルキル(メタ)アクリレートは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。短鎖アルキル(メタ)アクリレートを単量体成分として用いる場合、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、35質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上がさらにより好ましく、また74質量部未満が好ましく、72質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、68質量部以下がさらにより好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が7〜40のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることも好ましい。以下、当該アルキル(メタ)アクリレートを「長鎖アルキル(メタ)アクリレート」と称する場合がある。単量体成分として長鎖アルキル(メタ)アクリレートを用いれば、得られる重合体の潤滑油や基油への溶解性を高めることができる。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、好ましくは直鎖状または分岐鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。また、その炭素数は10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上がさらに好ましく、また35以下が好ましく、30以下がより好ましい。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。長鎖アルキル(メタ)アクリレートを単量体成分として用いる場合、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、12質量部以上がさらに好ましく、また50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。
単量体成分としてのアルキル(メタ)アクリレートとしては、上記に説明した短鎖アルキル(メタ)アクリレートと長鎖アルキル(メタ)アクリレートを併用することが特に好ましく、これにより、潤滑油や基油への溶解性や耐熱性に優れた重合体を得やすくなり、また重合体を潤滑剤に添加した際に、粘度指数を高めることが容易になる。
重合工程では、単量体成分としてマレイミド系単量体を用いることも好ましい。単量体成分としてマレイミド系単量体を用いることにより、重合体の主鎖にスクシンイミド環構造が導入され、これにより、得られる重合体の潤滑油や基油への溶解性を確保しつつ、せん断安定性や耐熱性を高めることができる。さらには潤滑油に添加した際に、スラッジ等の清浄分散性の向上や金属表面の摩耗抑制等の効果が期待される。
マレイミド系単量体としては、下記式(2)で表されるものが好ましく用いられる。式(2)中、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、R5は水素原子または炭素数が1〜40の有機基を表す。
式(2)のR3およびR4のアルキル基は、炭素数1〜8が好ましく、炭素数1〜4がより好ましく、炭素数1〜3がさらに好ましい。R3およびR4としては、水素原子、メチル基またはエチル基がより好ましく、水素原子またはメチル基がさらに好ましい。
式(2)のR5の有機基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキル基に含まれる−CH2−の一部が−O−に置き換えられた基等が挙げられ、これらの基には、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、アルキル基(アリール基、アラルキル基の場合)、アルコキシ基、カルボキシ基等の置換基が結合していてもよい。R5の有機基は、重合体の潤滑油や基油への溶解性を高める点から、炭素数1〜24が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましい。
R5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。R5のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。R5のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。R5のアルキル基に含まれる−CH2−の一部が−O−に置き換えられた基としては、ポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。
マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−デシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−テトラデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−2−デシルテトラデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシルエチルマレイミド、N−ヒドロキシルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、マレイミド系単量体の入手容易性や、重合体の潤滑油や基油への溶解性を高めることが容易な点から、マレイミド系単量体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドが好ましい。
マレイミド系単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。マレイミド系単量体を単量体成分として用いる場合、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
重合工程では、上記に説明した単量体成分以外の単量体成分(以下、「その他の単量体成分」と称する場合がある)を用いてもよい。その他の単量体成分は、ラジカル重合性単量体であれば特に限定されず、ラジカル重合性基を分子内に1個有する単官能単量体と、ラジカル重合性基を分子内に2個以上有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体の例としては、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート、不飽和モノまたはジカルボン酸エステル、不飽和カルボン酸類、ビニル芳香族化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン類、シアン化ビニル、N−ビニル化合物等が挙げられる。これらの単官能単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよく、また単量体成分として使用しなくてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルフォリノアルキレン(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和モノまたはジカルボン酸エステルとしては、例えば、ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ジブチルマレエート、ジラウリルマレエート、ジオクチルフマレート、ジステアリルフマレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチル酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、ジイソブテン等が挙げられる。
シアン化ビニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
これらの単官能単量体のうち、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートやN−ビニル化合物が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、N−ビニルピロリドンが特に好ましい。
その他の単量体成分のうち、多官能単量体の例としては、多官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニルなどが挙げられる。これらの多官能単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよく、また単量体成分として使用しなくてもよい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシル等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物等;ビスアリルナジイミド化合物等が挙げられる。
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
その他の単量体成分を単量体成分として用いる場合、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましく、また40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
なお、重合工程で得られる重合体の潤滑油や基油への溶解性を高めたり、粘度指数向上効果を高める点からは、その他の単量体成分としてスチレン系単量体の使用量はできるだけ抑えることが好ましい。従って、スチレン系単量体を使用する場合は、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、3質量部未満であることが好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。スチレン系単量体には、スチレンのみならず、スチレンのベンゼン環やビニル基に置換基が結合したものも含まれ、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレンが含まれる。また、ビニルエーテル、オレフィン類の使用量が多いとラジカル共重合性が落ちる場合があるため、重合体の製造容易性の点から、これらの単量体成分を使用する場合は、その合計使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下がより好ましい。
単量体成分として多官能単量体を使用する場合は、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。多官能単量体の使用量が多すぎると、重合時にゲル化が進行したり、重合体の基油溶解性が低下したりする場合がある。ただし、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシルのように、環化しながら重合が進行する多官能単量体を使用する場合は、その使用量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。この場合、主鎖に導入される環構造の効果により、重合体の耐熱性が向上するとともに、せん断安定性を改善することができる。
重合工程では、多官能連鎖移動剤や多官能重合開始剤を用いてもよい。すなわち、多官能連鎖移動剤および/または多官能重合開始剤の存在下で単量体成分の重合を行ってもよい。このように重合反応を行うことにより、重合体中に多官能連鎖移動剤や多官能重合開始剤由来の分岐単位が導入され、得られる重合体の潤滑油や基油への溶解性を大きく損ねることなく、せん断安定性を改善することができる。
多官能連鎖移動剤としては3官能以上の多価メルカプタンを用いることが好ましく、例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)など、水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシ基含有メルカプタン類のポリエステル化合物、トリアジン多価チオール類、多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて1分子当たり3個以上のメルカプト基を導入してなる化合物、多価カルボン酸の複数のカルボキシ基とメルカプトエタノールをエステル化してなる1分子当たり3個以上のメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。これらの多官能連鎖移動剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能重合開始剤としては3官能以上の過酸化物を用いることが好ましく、例えば、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの3官能以上の有機過酸化物等が挙げられる。これらの多官能重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能連鎖移動剤および多官能重合開始剤の各使用量は、全単量体成分100質量部に対して0質量部以上であればよく、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、また3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
重合工程で、マクロモノマーを含む単量体成分を重合することにより、マクロモノマー由来の単位を含む重合体が得られる。本発明の製造方法によれば、このような重合体を簡便に製造することができるとともに、重合体が高沸点溶媒または潤滑油基油を含む溶媒に溶解した溶液の形態として得られるため、これを潤滑油添加剤として用いることが容易になる。例えば、重合後の溶媒置換をしなくても、潤滑油添加剤として用いることが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、より高分子化された重合体を得ることができるため、これを潤滑油に添加して使用することにより優れた粘度指数向上効果を発揮するものとなる。
重合工程で得られた重合体は、重量平均分子量(Mw)が10万以上であることが好ましく、25万以上がより好ましく、31万以上がさらに好ましく、また70万以下が好ましく、65万以下がより好ましく、60万以下がさらに好ましい。重合体の重量平均分子量が小さい場合は、重合体の粘度指数向上効果が低下したり、重合体を潤滑油に添加した際の増粘効果が低下しやすくなるため所望の粘度に調整するために粘度指数向上剤の使用量が増え、コスト面で不利となる。重合体の重量平均分子量が過度に大きい場合は、重合体の潤滑油や基油への溶解性が低下したり、重合体のせん断安定性が低下しやすくなる。
重合体の数平均分子量(Mn)は9万以上が好ましく、11万以上がより好ましく、また30万以下が好ましく、25万以下がより好ましい。
重合体のMwとMnから算出される分子量分布(Mw/Mn)は4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.2以下がさらに好ましい。分子量分布が4.0を超えると重合体の潤滑油や基油への溶解性が不足したり、重合体のせん断安定性が低下しやすくなる。一方、分子量分布の下限は1.0が好ましいが、重合体の合成が容易な点から、分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましい。なお、重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により求める。
重合体のガラス転移温度(Tg)は、−50℃以上が好ましく、−40℃以上がより好ましく、−30℃以上がさらに好ましく、また0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下がさらに好ましい。重合体のTgがこのような範囲であれば、重合体の潤滑油や基油への溶解性が確保され、高い粘度指数を維持したまま、室温付近での流動性を高めやすくなる。
重合体のSP値(溶解度パラメータ)は、8.8以上が好ましく、8.9以上がより好ましく、9.0以上がさらに好ましく、また9.6以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.4以下がさらに好ましい。潤滑油基油のSP値は一般に8.0〜8.5程度の値を示すが、重合体のSP値が8.8以上であれば、これを潤滑油に添加した際に粘度指数を高めやすくなる。一方、重合体のSP値が9.6以下であれば、重合体の潤滑油や基油への溶解性を確保しやすくなる。
重合体は、潤滑油添加剤としての使用、特に粘度指数向上剤としての使用を考慮すると、粘度指数向上効果とせん断安定性を高いレベルで両立できるものであることが好ましい。せん断安定性の具体的数値としては、下記に示す方法で求めるSSIや分解開始温度が指標となる。
重合体のSSIは38以下であることが好ましく、36以下がより好ましく、34以下がさらに好ましく、これにより重合体のせん断安定性や貯蔵安定性が向上する。重合体のSSIの下限値は特に限定されないが、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、さらにより好ましくは5以上である。SSIが0.1未満の場合には、重合体の粘度指数向上効果が低下しやすくなる。重合体のSSIは、100℃における動粘度が7.0mm2/秒となるように基油に重合体を希釈し、超音波ホモジナイザーによるせん断処理前後の動粘度と基油の100℃における動粘度を測定し、次式により求める:SSI={1−(せん断処理後の動粘度−基油の動粘度)/(せん断処理前の動粘度−基油の動粘度)}×100。
重合体の分解開始温度は、290℃以上であることが好ましく、295℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましく、310℃以上が特に好ましく、また500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、380℃以下が特に好ましい。重合体の分解開始温度が高くなることにより、耐熱性が向上し、熱分解安定性、せん断安定性が良好なものとなる。一方、過度に耐熱性を向上させた場合は、重合体を潤滑油に添加した際に、溶解性が不足したり、粘度指数が低下する傾向がある。
重合工程で得られた重合体溶液は、必要に応じて潤滑油基油で希釈し、これを潤滑油添加剤としてもよい。潤滑油添加剤に含まれる重合体の含有量は、潤滑油添加剤100質量部中、例えば5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましく、また70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましい。潤滑油添加剤には、上記に説明したマクロモノマー合成工程と重合工程で得られた重合体以外の重合体成分をさらに添加してもよく、そのような重合体成分としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン水素化共重合体、これらのグラフトポリマーやくし形ポリマー、星形ポリマー等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られた潤滑油添加剤は、潤滑油に配合して用いることができ、特に粘度指数向上剤として好適に用いることができる。本発明は潤滑油組成物の製造方法も提供することができ、この場合、上記に説明したマクロモノマー合成工程と重合工程に加え、重合工程で得られた潤滑油添加剤を潤滑油に配合して潤滑油組成物を得る配合工程を有するものとなる。
配合工程では、潤滑油組成物中の重合体の含有量が、潤滑油組成物100質量部中、好ましくは0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上10質量部以下となるように、潤滑油添加剤を配合することが好ましい。
潤滑油組成物は、上記の潤滑油添加剤(粘度指数向上剤)以外に任意の添加剤が配合されてもよく、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤、さび止め剤、抗乳化剤、および金属不活性化剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤が配合されることが好ましい。
流動点降下剤としては、潤滑油に用いられる任意の流動点降下剤が使用できる。流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート類、ナフタレン−塩素化パラフィン縮合生成物、フェノール−塩素化パラフィン縮合生成物などが挙げられる。これらの中ではポリメタクリレート類が好ましい。
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。摩耗防止剤(または極圧剤)としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、MoDTC、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
金属系清浄分散剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩または塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウムまたはカルシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。
無灰清浄分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰清浄分散剤が使用できる。無灰清浄分散剤としては、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤としては、具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、またはイミダゾール系化合物等が挙げられる。
泡消剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm2/sのシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェートなどのコハク酸イミドモリブデン錯体や有機モリブデン酸のアミン塩等の有機モリブデン化合物のほか、基本構造として炭素数8以上30以下の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基を同じ分子内にもつ構造のものが挙げられる。極性基としては、アミンやポリアミン、アミドや、これらを同時に分子内に持つ、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等尿素やアルケニルコハク酸イミドタイプ、エステル、アルコールやジオール、あるいはエステルと水酸基を同時にもつ、例えばモノアルキルグリセリンエステルなどが挙げられる。そのほかアミンと水酸基とを同じ分子内に持つ、例えばアルキルアミンアルコキシアルコール等など様々である。
さび止め剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
潤滑油組成物が、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤、さび止め剤、抗乳化剤、および金属不活性化剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する場合、それぞれの含有量は、例えば、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上10質量部以下であればよい。
潤滑油組成物が金属系清浄分散剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上30質量部未満であることが好ましい。含有量が0.01質量部に満たない場合には、省燃費効果が短期間しか持続しないおそれがあり、また30質量部以上の場合には含有量に見合った効果が得られにくくなる。
潤滑油組成物が泡消剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.0001質量部以上0.01質量部以下であることが好ましい。
潤滑油組成物が摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上3質量部以下であることが好ましい。摩擦調整剤の含有量が0.01質量部未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また3質量部を超えると、他の添加剤の効果を阻害しやすくなったり、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)分析および評価方法
(1−1)マクロモノマーの反応率
マクロモノマーの反応率は、1H−NMR(Varian社製、400MHz)を用いて求めた。1H−NMRの測定は、サンプルとしてマクロモノマーの基油溶液0.1gを重クロロホルム0.8gに溶解させた溶液を使用し、室温下、400MHzの共鳴周波数で行った。このような測定条件で、(a)化学シフト4.25−4.3ppmの積分強度の合計(未反応の2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのエステルに隣接した炭素原子に結合したプロトンに由来する積分強度の合計)、および(b)化学シフト4.2−4.25ppmの積分強度の合計(反応後の2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのエステルのエステルに隣接した炭素原子に結合したプロトンに由来する積分強度の合計)をそれぞれ測定し、(a)と(b)の合計を100%としたときの(b)の割合(%)を算出し、これをマクロモノマーの反応率とした。また、マクロモノマーの反応率が100%に達した時間を反応完了時間とした。
(1−2)マクロモノマーの重合率
マクロモノマーの重合率は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製、HLC−8320GPC ECOSEC)を用いて求めた。具体的には、単離したマクロモノマーをテトラヒドロフランに溶解した検量線溶液を作製し、それをゲル浸透クロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合溶液をテトラヒドロフランに溶解させたサンプル溶液を作製し、同様にゲル浸透クロマトグラフィーで測定した。ピーク面積と溶液中のマクロモノマー濃度の関係から、マクロモノマーの重合率を求めた。ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件を下記に示す。
−カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
−展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
−展開溶媒の流量:1.0mL/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
−サンプル濃度:0.5%
−注入量:200μL
(1−3)マクロモノマー以外の単量体成分の重合率
マクロモノマーを除く各単量体成分の重合率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC−2010plus)を用いて求めた。具体的には、各単量体とトリデカンをメチルイソブチルケトン溶解した検量線溶液を作製し、それらをガスクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合体溶液とトリデカンをメチルイソブチルケトンに溶解させたサンプル溶液を作製し、同様にガスクロマトグラフィーで測定した。内部標準法により、各単量体成分の重合率を求めた。ガスクロマトグラフィーの測定条件を下記に示す。
−カラム:GLサイエンス製 Inert Cap1(液相の膜厚:0.25μm、長さ:30m、内径:0.25mm)
−温度:40℃(5分保持)+40℃〜170℃(10℃/分)+170℃〜210℃(5℃/分)+210℃〜330℃(15℃/分)+330℃(20分保持)
−気化室温度:200℃
−検出器温度:350℃(FID)
−キャリアガス:ヘリウム(カラム流量1.33mL/分)
−注入量:0.5μL(スプリット法、スプリット比:30.0)
−内部標準試料:トリデカン
−希釈溶剤:メチルイソブチルケトン(MIBK)
(1−4)重量平均分子量および数平均分子量
重量平均分子量と数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製、HLC−8320GPC ECOSEC)を用いて求めた。測定条件は下記の通りである。
−カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
−展開溶媒:テトラヒドロフラン
−展開溶媒の流量:1.0mL/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
−サンプル濃度:0.5%
−注入量:200μL
(1−5)粘度指数
100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように基油(SK社製、YUBASE4:米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃、動粘度19.6mm2/s))に重合体を希釈し、JIS K 2283の方法で測定した。
(1−6)基油溶解性
重合体の基油溶液(重合体濃度25重量%)の外観を目視で観察し、以下の評価基準で基油溶解性を評価した。
○:外観が均一であり、重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、重合体の不溶解物が認められる。
(2)潤滑油添加剤(重合体の基油溶液)の製造例
(2−1)実施例1
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL製、Krasol(登録商標)HLBH−5000M、数平均分子量8200)48.6質量部、2−イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工製、カレンズAOI(登録商標))1.38質量部、基油(SK社製、YUBASE4)50質量部、金属触媒としてテトラオクチルチタネート(マツモトファインケミカル社製)0.1質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで70℃に加熱しながら1時間撹拌を行い、表1に示すマクロモノマー1の基油溶液を得た。この基油溶液のマクロモノマー1の濃度は50質量%であり、反応率は100%であった。このようにして得られたマクロモノマー基油溶液を24質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)40質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)18質量部、N−フェニルマレイミド(PMI)3質量部、基油(SK社製、YUBASE4)143.1質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を反応容器に仕込み、反応容器内に窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに重合開始剤としてt−アミルパーオキソイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.049質量部を基油(SK社製、YUBASE4)4.76質量部に溶解した溶液を加え、さらに、重合開始剤としてt−アミルパーオキソイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.193質量部を基油(SK社製、YUBASE4)12.9質量部に溶解させた溶液とPMI2質量部をBMA25重量部に溶解させた溶液とを4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、その後4時間の熟成を行った。そこに、基油(SK社製、YUBASE4)130.5質量部を加え希釈することで、重合体1の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−2)実施例2
実施例1において、テトラオクチルチタネート0.1質量部を0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、濃度50質量%のマクロモノマー1の基油溶液を得て(反応率100%)、さらにマクロモノマー1を含む単量体成分を重合させることにより、重合体2の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−3)実施例3
実施例1において、2−イソシアナトエチルアクリレート1.38質量部を1.50質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、濃度50質量%のマクロモノマー1の基油溶液を得て(反応率100%)、さらにマクロモノマー1を含む単量体成分を重合させることにより、重合体3の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−4)実施例4
実施例1において、マクロモノマー基油溶液を得る際の基油(SK社製、YUBASE4)の使用量を50質量部から307.1質量部に変更し、重合の際のマクロモノマー基油溶液の使用量を24質量部から85.7質量部に、ステアリルメタクリレート18質量部をラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート混合物(質量比=54/46)(SLMA)23質量部に、基油(SK社製、YUBASE4)の使用量を143.1質量部から81.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、濃度14質量%のマクロモノマー1の基油溶液を得て(反応率100%)、さらにマクロモノマー1を含む単量体成分を重合させることにより、重合体4の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−5)実施例5
実施例4において、2−イソシアナトエチルアクリレート1.38質量部を2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工製、カレンズMOI(登録商標))1.38質量部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行うことで、表1に示すマクロモノマー2の基油溶液を得た。この基油溶液のマクロモノマー2の濃度は14質量%であり、反応率は100%であった。その後、実施例4と同様の操作を行ってマクロモノマー2を含む単量体成分を重合させることにより、重合体5の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−6)実施例6
実施例1において、金属触媒として、テトラオクチルチタネート0.1質量部をチタンエチルアセトアセテート(マツモトファインケミカル社製)0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、濃度14質量%のマクロモノマー1の基油溶液を得て(反応率100%)、さらにマクロモノマー1を含む単量体成分を重合させることにより、重合体6の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−7)実施例7
実施例1において、金属触媒として、テトラオクチルチタネート0.1質量部をジブチルスズジラウレート0.05質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、濃度14質量%のマクロモノマー1の基油溶液を得て(反応率100%)、さらにマクロモノマー1を含む単量体成分を重合させることにより、重合体7の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−8)比較例1
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL製、Krasol(登録商標)HLBH−5000M)24.4質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート0.6質量部、基油(SK製、YUBASE4)75質量部、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.03質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで70℃に加熱しながら19時間撹拌を行い、マクロモノマー2の基油溶液を得た。この基油溶液のマクロモノマー2の濃度は25質量%であり、反応率は100%であった。このようにして得られたマクロモノマー基油溶液を48質量部、BMA40質量部、SMA18質量部、PMI3質量部、基油(SK製、YUBASE4)119.1質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を反応容器に仕込み、反応容器内に窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに重合開始剤としてt−アミルパーオキソイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.049質量部を基油(SK製、YUBASE4)4.76質量部に溶解した溶液を加え、さらに、重合開始剤としてt−アミルパーオキソイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.193質量部を基油(SK製、YUBASE4)12.9質量部に溶解させた溶液とPMI2質量部をBMA25重量部に溶解させた溶液とを4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、その後4時間の熟成を行った。そこに、基油(SK製、YUBASE4)130.5質量部を加え希釈することで、重合体8の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−9)比較例2
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL製、Krasol(登録商標)HLBH−5000M)57.9質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート2.1質量部、トルエン40質量部、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.06質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで70℃に加熱しながら7時間撹拌を行い、マクロモノマー2の基油溶液を得た(反応率100%)。これに水10質量部を加え10分間撹拌した後、静置して、デカンテーションで油相のみを回収した。回収した油相に硫酸マグネシウム5質量部を加え、10分間撹拌した後、ろ過により硫酸マグネシウムを除去した。残った油相を105℃で加熱撹拌しながらオイルポンプで減圧し、トルエンを除去することで、マクロモノマー2を得た。このようにして単離したマクロモノマー2を12質量部、BMA40質量部、SMA18質量部、PMI3質量部、基油(SK製、YUBASE4)155.1質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を反応容器に仕込み、反応容器内に窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに重合開始剤としてt−アミルパーオキソイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.049質量部を基油(SK製、YUBASE4)4.76質量部に溶解した溶液を加え、さらに、重合開始剤としてt−アミルパーオキソイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.193質量部を基油(SK製、YUBASE4)12.9質量部に溶解させた溶液とPMI2質量部をBMA25重量部に溶解させた溶液とを4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、その後4時間の熟成を行った。そこに、基油(SK製、YUBASE4)130.5質量部を加え希釈することで、重合体9の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−10)比較例3
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL製、Krasol(登録商標)HLBH−5000M)43.8質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート1.2質量部、トルエン55質量部を仕込んだ。これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで60℃に加熱しながら6時間撹拌を行い、マクロモノマー1のトルエン溶液を得たが、反応率は10%であった。
(2−11)比較例4
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL製、Krasol(登録商標)HLBH−5000M)97.2質量部、2−イソシアナトエチルアクリレート2.8質量部、ジブチルスズジラウレート0.1質量部を仕込んだ。これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで80℃に加熱しながら4時間撹拌を行ったが、反応開始1時間以降は反応率が変化せず、4時間後の反応率は90%であった。
(3)結果
表2および表3には、各製造例の製造条件と、得られた重合体の物性評価結果を示した。実施例1〜7は、基油中で金属触媒を使用して反応を行った例を表し、比較例1,2は、基油またはトルエン中でアミン系触媒を使用して反応を行った例を示し、比較例3は、トルエン中で触媒を使用せずに反応を行った例を表し、比較例4は、無溶媒下で金属触媒を使用して反応を行った例を表す。いずれの製造例でも、水酸基を有するマクロ化合物と、イソシアネート基を有するカウンター化合物(2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート)とを反応させており、実施例1〜7および比較例1,2ではさらに、当該反応で得られたマクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を行っている。
トルエン中で触媒を使用せずに反応させた比較例3では、マクロ化合物とカウンター化合物との反応はほとんど進まなかった。無溶媒下で金属触媒を使用して反応させた比較例4では、マクロ化合物とカウンター化合物との反応が途中で止まってしまい、反応率が100%に至らなかった。アミン系触媒を使用した場合は、トルエン溶媒中ではマクロ化合物とカウンター化合物の反応は比較的速やかに進行したが(比較例2)、基油中では反応完了まで長い時間を要した(比較例1)。比較例1では、マクロ化合物とカウンター化合物との反応で得られたマクロモノマーの基油溶液をそのまま重合工程で用いてマクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を行ったが、マクロモノマーの重合率が低く、得られた重合体の重量平均分子量も低いものとなった。比較例2では、重合工程の前に溶媒置換および精製を行ったため、重合反応を好適に進行させることができたが、製造が煩雑となった。
一方、金属触媒を使用した実施例1〜7では、基油中でもマクロ化合物とカウンター化合物との反応が速やかに進行した。さらに、当該反応によって得られたマクロモノマーの基油溶液をそのまま重合工程で用いてマクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を行ったところ、マクロモノマーを効率的に重合させることができ、また比較的重量平均分子量の高い重合体が得られた。