[車両の排気系統]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るエンジンの排気消音装置を詳細に説明する。先ずは、前記排気消音装置が搭載される車両の排気系統について、図1を参照して概略的に説明する。なお、図1及び他の図面において、前後、左右、上下の方向表示を付している。これらの方向は、車両を基準としている。つまり、以下の説明中において用いている前後、左右、上下の方向は、図1に示している前後方向(車両前後方向)、左右方向(車幅方向)、及び、図1の紙面に垂直な方向である上下方向と一致させている。また、上流、下流というときは、排気のフロー方向を基準としている。
車両は、例えば四輪自動車であり、エンジン1と、当該エンジン1の排気系統を構成する排気装置10とを含む。エンジン1は、例えば直列4気筒のターボ過給機付きガソリンエンジンであり、車室前方のエンジン室に横置き、つまり、車幅方向に気筒が並ぶように設置されている。排気装置10は、このエンジン1に繋がっており、車両下面に沿って後方に向けて延びている。
排気装置10は、排気マニホールド11、ターボ過給機12、排気管路13、第1触媒装置14、第2触媒装置15、プリ消音装置16及びメイン消音装置2(排気消音装置)を備えている。排気マニホールド11は、エンジン1の各シリンダヘッドの排気ポートに接続される分岐端を上流側に、これら排気ポートから排出される排気を一つの流路に集合させる集合端を下流側に有する排気通路を内部に備える。ターボ過給機12は、排気マニホールド11の前記集合端に接続され、エンジン1から排出される排気のエネルギーを利用して、エンジン1の吸気を過給する。
排気管路13は、排気の通路となる管路であり、ターボ過給機12の下流端に接続され、後方に延びている。排気管路13には、上流側から順に、第1触媒装置14、第2触媒装置15及びプリ消音装置16が組み込まれており、末端にはメイン消音装置2が接続されている。第1、第2触媒装置14、15は、エンジン1から排出される排気中の有害成分を浄化するもので、例えば排気中のNOxを一時的に吸蔵し後に還元するNOx吸蔵還元触媒を含む触媒本体と、この触媒本体を収容するケーシングとから構成されている。
プリ消音装置16及びメイン消音装置2は、エンジン1の排気系統において排気騒音を低減させるために組み込まれている。これら消音装置16、2のうち、上流側に配置されるプリ消音装置16は、排気騒音のうち、主に高周波成分を低減する機能を有している。プリ消音装置16は、例えば吸音型の消音装置を採用することができ、排気が通る多孔質の内筒管と、これを覆う外筒管と、内筒管と外筒管との間に充填されたガラスウール等の吸音材とを備える。一方、メイン消音装置2は、排気騒音のうち、主に低中周波成分を低減する機能を有している。以下、このメイン消音装置2の構造について詳細に説明する。
[メイン消音装置の全体構造]
図2は、メイン消音装置2の上面図(後記のアッパープレート20Aを取り外した状態)、図3はその斜視図、図4は、図2のIV−IV線断面図、図4は、図2のIV−IV線断面図である。図5は、図2のV−V線断面図である。メイン消音装置2は、車両後端のリアフロア下に配置され、消音器本体20、排気導入管3、第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bを含む。
消音器本体20は、エンジン1の排気が導入される消音空間S(膨張室)を形成するハウジングである。消音器本体20は、前後方向に比較的短く、左右方向に比較的長い形状、すなわち車幅方向に長手で、上下方向に偏平な、全体として丸味を帯びた直方体状の形状を有している。これにより、消音器本体20内の消音空間Sも、車幅方向に長手で偏平な空間となっている。
消音器本体20は、消音空間Sを区画する壁として、車両の前後方向に並ぶ前壁21及び後壁22と、左右方向(車幅方向)に並ぶ右壁23及び左壁24(一対の側壁)と、上下方向(車高方向)に並ぶ上壁25及び下壁26とを備えている。前壁21は、左右方向に直線的に延びる壁である。後壁22は、上面視で後方に向けて緩やかな凸形状となるように湾曲して、左右方向に延びる壁である。右壁23及び左壁24は、前後方向へ直線的に延びる短尺の壁であり、前壁21と後壁22とを、それぞれ右端側、左端側で繋いでいる。図5に示すように、左右方向の断面視において、左壁24は略半円形に湾曲した形状を備えている(右壁23も同様)。上壁25は、前壁21、後壁22、右壁23及び左壁24からなる側壁で囲まれる空間の上面を封止する壁、下壁26は、前記側壁の下面を封止する壁である。
図4に示す通り、消音器本体20は、車幅方向中央部における車両前後方向の断面視(図2のIV−IV線断面)において、車両後部側が流線型の形状を有している。すなわち、後壁22は、その後方部分が緩やかに後方に向けて先上がりに湾曲する流線型部Stを有している。このような流線型部Stを消音器本体20に具備させることで、平面同士が交差する稜線部分が表出しないようになり、車両後方からの見映えを向上させることができる。
また、図2に示す通り、後壁22と右壁23及び左壁24との角部がラウンド形状とされている。すなわち、上面視において消音器本体20は、後壁22と右壁23とが交差する角部、及び後壁22と左壁24とが交差する角部において、これら角部が面取りされた如き形状のラウンド部Rを備えている。これらラウンド部Rの内周面は、大略的に湾曲した形状となっている。ラウンド部Rは、図13に基づき後述する通り、消音空間Sにおけるスムースな排気フローFの形成に貢献する。
消音器本体20は、上下方向に分割された半割れハウジングである、アッパープレート20Aとボトムプレート20Bとの接合体からなる。アッパープレート20Aは、上側に膨出したキャビティを有する半割れハウジングであり、その下縁の外周に上フランジ部201を有する。ボトムプレート20Bは、下側に膨出したキャビティを有する半割れハウジングであり、その上縁の外周に下フランジ部202を有する。
アッパープレート20Aは、上壁25と前記側壁の概ね上半分とを形成し、ボトムプレート20Bは、下壁26と前記側壁の概ね下半分とを形成する。上フランジ部201と下フランジ部202とが上下に重ね合わされ、接合されることで、アッパープレート20Aとボトムプレート20Bとが一体化され、消音空間Sを有する消音器本体20が形成されている。アッパープレート20Aの上壁25及びボトムプレート20Bの下壁26は、前後方向に延びる複数のビード203を備えている。ビード203は、消音空間Sに向けて凸となる溝形状部であり、消音器本体20の剛性を高める等の目的で設けられている。
排気導入管3、第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bは、消音空間S内において排気が通過する排気経路を構成する排気管である。つまり、消音空間Sという閉じた空間内において、排気を所望の経路に沿って流すために配置される管である。排気導入管3と、第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bとは、互いに分離された管である。排気導入管3は、排気を消音空間Sへ吹き出す排気出口Aを有する。一方、第1、第2排気導出管4A、4Bは各々、消音空間S内の排気を取り入れる第1排気入口B1、第2排気入口B2を有する。排気出口Aから吐出された排気は、消音空間Sに入って膨張し、その後、第1、第2排気入口B1、B2に取り入れられ、それぞれ第1、第2出口開口C1、C2から外部へ放出される。
排気導入管3は、消音空間Sへエンジン1の排気を導入する直線的な中空円管である。排気導入管3の上流端302には、中継管31が差し込まれている。中継管31の上流端は、排気管路13の下流端に接続されている。排気導入管3の下流端301は、上述の排気出口Aである。排気出口Aは、後壁22と対向している。
排気導入管3は、左右方向の中央付近(車幅方向の中央位置)において前壁21を貫通し、排気出口Aが後壁22に近づくように消音空間S内に配置されている。すなわち、図2、図3に示されているように排気導入管3は、排気出口Aが消音器本体20の前後方向中央よりもさらに後壁22に近い位置に配置されるよう、前壁21側から消音空間Sに向けて差し込まれている。本実施形態では、排気出口Aと後壁22との間に後述の整流板6が配置されている。
図4を参照して、排気導入管3の上流端302は、アッパープレート20A及びボトムプレート20Bの前壁21の左右方向中央に各々設けられた凹部である一対の管受け部204、205により、上下から挟まれるように支持されている。また、排気出口Aとなる排気導入管3の下流端301付近が、支持板32にて支持されている。支持板32は板金部材であって、上下方向に延びる縦板321と、縦板321に穿孔された支持孔322と、縦板321の上端、下端にそれぞれ設けられた上フランジ部323、下フランジ部324とを備える。支持孔322は、排気導入管3を貫通させて支持する。上フランジ部323は上壁25に、下フランジ部324は下壁26に、それぞれ固着されている。
なお、排気導入管3は、排気出口Aがやや上を向くように、後ろ上がりに消音器本体20へ取り付けられている。これは、消音空間S内で凝縮した排気中の水分(凝縮水)などが下壁26上に滞留することがあり、その滞留水が排気出口Aを通して排気導入管3へ逆流しないようにするためである。
第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bは、消音空間から前記排気を外部へ放出するための管である。第1、第2排気導出管4A、4Bは同じ構成要素を備え、排気導入管3の左右に対称に、消音空間S内に配置されている。すなわち、排気導入管3を挟んで、第1排気導出管4Aは右壁23側に配置され、第2排気導出管4Bは左壁24側に配置されている。また、第1排気導出管4Aの下流端は右壁23を貫通し、第2排気導出管4Bの下流端は左壁24を貫通している。
第1、第2排気導出管4A、4Bは各々、第1直線管41、第2直線管42及び湾曲管43を備えている。湾曲管43は、U字状に湾曲した管である。第1直線管41と第2直線管42とは、湾曲管43の両端部から左右方向へ平行に各々延び出している。つまり、湾曲管43の両端部に、第1直線管41の一端と第2直線管42の一端とが各々接続されている。なお、第1、第2直線管41、42は、完全に平行に配置されなくとも、略平行に配置されていれば良い。
第1、第2排気導出管4A、4Bの排気フローFにおいて、第1直線管41は、第2直線管42よりも上流側に配置される排気管である。第1直線管41は、直線的に延びる前壁21に隣接するように配置されている。すなわち、第1直線管41の前側の側部と前壁21との前後方向の間隔は、狭小である。一方、第2直線管42は、前壁21から離間し、且つ後壁22からも離間した、消音空間Sの前後方向の略中央位置に配置されている。第1直線管41と第2直線管42との上下方向の高さ位置は、略同一である。湾曲管43は、このような第1、第2直線管41、42同士を接続している。
図5には、第2排気導出管4Bの第1直線管41の左右方向の断面が示されている。第1直線管41は、左右方向に直線状に延びる断面円形の管であり、上流端411(他端)と下流端412(一端)とを備えている。上流端411は、上述の第2排気入口B2(第1排気導出管4Aの第1直線管41の場合は第1排気入口B1)となる開口を備える管端部である。上流端411には、第2排気入口B2に排気をスムースに取り入れるために、ベルマウス状に内径を拡径させる加工が施されている。下流端412は、湾曲管43の上流端431に差し込まれる管端部である。
上述の通り、排気出口Aは後壁22の近傍位置(本実施形態では、後壁22に実質的に相当する整流板6の近傍位置)に配置されているのに対し、第1、第2排気入口B1、B2は、第1直線管41が前壁21に隣接することから、前壁21の近傍位置に配置されている。さらに、排気出口Aは左右方向の中央位置に配置されているのに対し、第1、第2排気入口B1、B2は、前壁21の右端側、左端側に各々配置されている。詳しくは、第1排気入口B1が前壁21付近の右壁23と対向し、第2排気入口B2が前壁21付近の左壁24と対向し、それぞれ右壁23、左壁24と近接する位置に配置されている。このように、排気出口Aと第1、第2排気入口B1、B2とを遠ざけることで、排気導入管3の排気騒音が第1、第2排気導出管4A、4Bに伝わり難い構造とされている。
第2直線管42は、左右方向に直線状に延びる断面円形の管であって、第1直線管41よりも左右幅が長い管である。第2直線管42の上流端(一端)は、湾曲管43の下流端432(図6)に差し込まれている。第1排気導出管4Aの第2直線管42の下流端(他端)は、右壁23を貫通している。この貫通した下流端には、第1テール管44Aが接続されている。また、第2排気導出管4Bの第2直線管42の下流端は、左壁24を貫通している。この貫通した下流端には、第2テール管44Bが接続されている。第1テール管44Aの下流端は第1出口開口C1であり、第2テール管44Bの下流端は第2出口開口C2である。排気は、これら第1、第2出口開口C1、C2から外部へ放出される。
図6は、湾曲管43の斜視図である。図5、図6を参照して、湾曲管43は、断面略円形であってU字型に湾曲した排気経路を作る管である。既述の通り、湾曲管43は、第1直線管41が接続される上流端431と、第2直線管42が接続される下流端432とを備える。湾曲管43は、上下方向に分割された半割れ管である第1半割れ管43Aと第2半割れ管43Bとの接合体からなる。第1半割れ管43Aと第2半割れ管43Bとは、外周フランジ部433と内周フランジ部434とによって互いに接合されている。外周フランジ部433は、U字型に湾曲した湾曲管43の外側湾曲部L1から外方へ延び出している。一方、内周フランジ部434は、湾曲管43の内側湾曲部L2で区画されるU字空間を埋めるように、内側湾曲部L2から内方へ延び出している。
第1半割れ管43Aは、上側に膨出した断面半円形であって下面視でU字型のキャビティを有し、外周フランジ部433の上側を形成する上フランジ部433Aを外周側に、内周フランジ部434の上側を形成する上フランジ部434Aを内周側に、それぞれ有している。第2半割れ管43Bは、下側に膨出した断面半円形であって上面視でU字型のキャビティを有し、外周フランジ部433の下側を形成する下フランジ部433Bを外周側に、内周フランジ部434の下側を形成する下フランジ部434Bを内周側に、それぞれ有している。上フランジ部433Aと下フランジ部433B、及び、上フランジ部434Aと下フランジ部434Bが各々上下に重ね合わされ、接合されることで、湾曲管43が形成される。
湾曲管43は、上流端431及び下流端432に、それぞれ非フランジ部435を備えている。非フランジ部435は、湾曲管43において外周フランジ部433及び内周フランジ部434が存在しない円筒形状の部分である。非フランジ部435には、外周フランジ部433及び内周フランジ部434の肉厚分及びこれらの曲げ代に相当する開口幅のスリットSLが存在している。図5に示されているように、この非フランジ部435に第1直線管41の下流端412が差し込まれている。図示は省いているが、第2直線管42の上流端も、下流端432側の非フランジ部435に差し込まれている。第1直線管41の下流端412は、湾曲管43に対して、非フランジ部435を越え、外周フランジ部433に到達する位置まで差し込まれている。第2直線管42の上流端も同様である。これにより、スリットSLからの漏気通路は塞がれ、気流音の発生を防止している。
図3及び図5に示すように、湾曲管43はセットプレート27により消音器本体20で支持されている。セットプレート27は、上下方向に延びる平板部材であり、上端側に上フランジ部271、下端側に下フランジ部272、中央に2つのバーリング部273を有している。各バーリング部273には、湾曲管43の上流端431及び下流端432の非フランジ部435が各々密に挿通されている。つまり、バーリング部273は、第1、第2直線管41、42の一端が差し込まれた非フランジ部435を支持している。
上フランジ部271は上壁25に接合され、下フランジ部272は下壁26に接合されている。上壁25には図略の溶接孔が設けられ、栓溶接によって上フランジ部271が上壁25に固着されている。下フランジ部272はスポット溶接により下壁26に固着されている。このように、非フランジ部435を形成することによって、湾曲管43の簡易な支持構造、すなわち、単純な丸孔のバーリング部273を備えたセットプレート27にて湾曲管43を上壁25及び下壁26で支持させる構造を実現できると共に、第1、第2直線管41、42もまたセットプレート27にて支持させることができる。
メイン消音装置2は、第1直線管41に適用される第1消音部51と、第2直線管42に適用される第2消音部52と、湾曲管43に適用される湾曲消音部53とを備える。これら消音部51〜53は、各々の管壁に穿孔された多数の小孔と、これらの小孔を有する管壁部分の外周を覆う吸音材と、当該吸音材の周囲を覆う吸音材カバーとからなる。第1、第2排気導出管4A、4Bを通過する排気に気流音(排気騒音)が発生した場合、当該気流音は小孔を通して管外に逃がされ、前記吸音材で吸音される。前記吸音材は、例えばガラスウールである。
第1消音部51は、第1直線管41の管軸方向の所定領域において、その周方向の一部をカバーするように取り付けられている。具体的には第1消音部51は、第1直線管41の全周のうち、第2直線管42と実質的に対向する管壁部分(後側の側部)にだけ設けられている。つまり、前記対向する管壁部分に多数の小孔が穿孔され、当該小孔を有する管壁部分の外周に前記吸音材が配置され、この吸音材を覆うように前記吸音材カバーが第1直線管41の外周面に取り付けられている。このような部分配置とするのは、上述の通り、第1直線管41の前側の側部と前壁21との前後方向の間隔が狭小であり、吸音材及び吸音材カバーを配置するスペースが確保できないためである。
第2消音部52は、第2直線管42の管軸方向の所定領域において、その全周をカバーするように取り付けられている。具体的には第2消音部52は、前記所定領域において、第2直線管42の管壁の全周に亘って前記多数の小孔が穿孔され、当該小孔を有する管壁の全周を覆うように前記吸音材が配置され、この吸音材を覆うことが可能な筒状の吸音材カバーが第2直線管42の外周面に取り付けられている。なお、剛性を高めるため、第1消音部51及び第2消音部52の吸音材カバー同士が、連結部材54によって連結されている。
湾曲消音部53は、図5及び図6に示すように、第1半割れ管43A及び第2半割れ管43Bの膨出頂部付近に穿孔された多数の小孔43Hと、この小孔43Hを有する第1、第2半割れ管43A、43Bの外周面を各々覆う吸音材7と、これら吸音材7を各々覆う上カバー53A、下カバー53B(吸音材カバー)とを備えている。
上カバー53Aは、第1半割れ管43Aの外周の吸音材7を覆い、下カバー53Bは、第2半割れ管43Bの外周の吸音材7を覆っている。上カバー53A及び下カバー53Bは各々、湾曲管43の外側湾曲部L1側に部分フランジ531を、内側湾曲部L2側に添設部532を有している。部分フランジ531は、それぞれ上、下フランジ部433A、433Bと一部だけ重複する形状を備えたフランジ部である。
第1半割れ管43Aの上フランジ部433Aと上カバー53Aの部分フランジ531、及び第2半割れ管43Bの下フランジ部433Bと下カバー53Bの部分フランジ531とが、各々の重ね合わせ部分においてスポット溶接で接合されている。なお、上、下フランジ部433A、433Bは、部分フランジ531の非重複部分においてスポット溶接で接合されている。つまり、外周フランジ部433においては、上、下フランジ部433A、433B及び上下2枚の部分フランジ531が4枚重なり合うものの、2枚重ねのスポット溶接で各々の接合がなされている。添設部532は、湾曲管43の上流端431(下流端432)付近において、それぞれ第1、第2半割れ管43A、43Bの膨出部の外周面に接する湾曲部分である。内側湾曲部L2側については、例えば線溶接により上、下カバー53A、53Bを湾曲管43の外周面に接合することができる。
メイン消音装置2は、さらに整流板6(排気ガイド部)を備える。整流板6は、車幅方向の中央であって、後壁22に隣接する位置に据え付けられており、同じく車幅方向中央に配置された排気導入管3の排気出口Aと対向する位置に配置されている。整流板6は、消音空間S内において排気を所定方向へガイドする機能を有する。具体的には整流板6は、排気出口Aから後壁22へ向かう排気を左右方向(車幅方向の両側)に向かうよう案内する。以下、整流板6について詳述する。
[整流板の詳細]
図7は、整流板6の消音器本体20への取り付け部分の斜視図、図8は、その上面図である。図9は、図4のIX−IX線断面図である。図10は、整流板6及びその取り付け板28の斜視図、図11は、その正面図、図12は、その左側面図である。整流板6は、消音器本体20とは別体の板金部材(板状部材)からなり、大略的に上面視(図8)でV字型の折曲形状を備えている。整流板6は、先端部61、ガイド面62、上フランジ部63及び下フランジ部64を備える。整流板6は、取り付け板28の上に載置、固定されている。
先端部61は、前記V字型の折曲形状における折り曲げ部に相当する、上下方向に延びる部分である。先端部61は、排気出口Aの左右方向中央部に対向するように配置される。図8には、排気導入管3の下流端301及び排気導入管3の管軸Pが示されている。管軸Pの位置が、排気出口Aの左右方向中央部の位置に相当する。先端部61は、上面視で前方に凸の湾曲形状を有している。その先端部61の湾曲突出端(変曲点)が、前後方向に延びる管軸Pの延長線上に配置されている。
ガイド面62は、排気出口Aと対向する位置に配置され、当該排気出口Aから後壁22へ向かう排気を車幅方向の両側に向けて案内する機能を有する面である。ガイド面62は、先端部61を最前部とし、当該先端部61から車両後方側へ向かいつつ車幅方向両側に延びている。すなわちガイド面62は、先端部61から右後方に延びる右ガイド面62Rと、先端部61から左後方に延びる左ガイド面62Lとからなる。排気出口Aの右側領域と右ガイド面62Rの一部、排気出口Aの左側領域と左ガイド面62Lの一部とが対向している。右ガイド面62Rの最後端である右端縁623、及び左ガイド面62Lの最後端である左端縁624は、整流板6において最も後壁22に近接している。
先端部61及びガイド面62は、図4及び図9に示されているように、概ね消音器本体20の上下幅に相当する上下幅、つまり概ね上壁25から下壁26に跨る上下幅を有している。また、排気導入管3が、排気出口A(下流端301)がやや上を向くように、後ろ上がりに消音器本体20へ取り付けられていることに合わせて、先端部61及びガイド面62は上端側が僅かに前下がりとなるように傾いている(図4のIX−IX線は垂線である)。これにより、下流端301と管端縁と先端部61とが略平行な関係とされている。
整流板6の上端側は消音器本体20の上壁25に、整流板6の下端側は取り付け板28を介して下壁26に、それぞれ取り付けられる。この取り付けのために、整流板6は一対の上フランジ部63及び一対の下フランジ部64を備えている。一対の上フランジ部63は、右、左ガイド面62R、62Lの上端縁621から前方に各々延びている。一対の下フランジ部64は、右、左ガイド面62R、62Lの下端縁622から前方に各々延びている。上フランジ部63には、消音器本体20のビード203との型合わせ(図9参照)のため、下方に窪んだ下段部631がそれぞれ設けられている。下フランジ部64は、段差のない平板である。
図9を参照して、上フランジ部63は、上壁25に直接取り付けられている。上フランジ部63は、上壁25の下側に重ね合わされている。下段部631は、下方に凸のビード203に嵌め合わされている。上壁25には、一対の上フランジ部63の配置位置に合わせて溶接孔206が穿孔されている。上フランジ部63は、溶接孔206を利用した栓溶接によって上壁25に固着されている。
一方、下フランジ部64は、取り付け板28を介して下壁26に取り付けられている。取り付け板28は、左右方向に延びる板金部材であり、凸平板部281と、この凸平板部281の右端及び左端から各々延び出した接合部282とを備えている。帯状の板金部材に対して、凸平板部281の高さ位置が左右の接合部282よりも高くなるよう折り曲げ加工を施すことによって、取り付け板28が形成されている。凸平板部281は、整流板6の座面となる部分である。接合部282は、下壁26に接面する部分である。
本実施形態では、下壁26に前後方向に延びる複数のビード203が、所定ピッチで配置されている。つまり、下壁26にはビード203の形成による凹凸が存在している。上壁25側と同様に、下壁26側も栓溶接を採用すると、車両後方に溶接ビードが表出してしまうため、車両後方からの見映えが悪くなる。このため、下壁26側における整流板6の固定においてはスポット溶接の採用が好ましい。この場合、前記凹凸の存在は望ましくない。そこで、ビード203の上を跨ぐように取り付け板28を配置し、整流板6の座面を提供している。図9の例では、凸平板部281は2つのビード203を跨いでいる。接合部282は、ビード203の側方の下壁26に当接している。整流板6の一対の下フランジ部64が取り付け板28にスポット溶接により固着され、さらに取り付け板28の接合部282が下壁26にスポット溶接により固着されている。勿論、下壁26にビード203等の凹凸が存在しない場合は、下フランジ部64を下壁26に直接スポット溶接により固着しても良い。
図13は、メイン消音装置の水平方向の断面図であって、消音空間S内における排気フローを示す図である。ここでは、排気導入管3の排気出口Aから第1排気導出管4Aの第1排気入口B1に至る排気フローF1と、排気出口Aから第2排気導出管4Bの第2排気入口B2に至る排気フローF2とを図示している。
排気導入管3は、排気出口Aが後壁22に近づくように消音空間S内に配置され、後壁22に隣接する整流板6は排気出口Aに対向する位置に配置されている。このため、排気出口Aから吹き出された排気は、先ず整流板6に吹き当たる。排気は、整流板6の先端部61で左右に分流され、右ガイド面62R、左ガイド面62Lでそれぞれガイドされ、これにより排気フローF1、F2が作られる。
右ガイド面62Rで作られる排気フローF1は、後壁22に沿って右方へ向かい、右壁23に吹き当たる。一方、左ガイド面62Lで作られる排気フローF2は、後壁22に沿って左方へ向かい、左壁24に吹き当たる。ここで、消音器本体20は、後壁22と右壁23とが交差する角部、及び、後壁22と左壁24とが交差する角部に、それぞれラウンド部Rを有している。これらラウンド部Rの内面がガイドの役目を果たし、排気フローF1、F2は右壁23、左壁24に沿って前方に向かう。そして、排気フローF1、F2は、第1、第2排気入口B1、B2に進入することになる。その後、排気は第1、第2排気導出管4A、4Bを通過し、それぞれ第1、第2出口開口C1、C2から外部へ放出されるものである。
[作用効果等]
以上説明したメイン消音装置2によれば、次のような作用効果を奏する。メイン消音装置2は、第1、第2排気導出管4A、4Bが、各々第1、第2直線管41、42及び湾曲管43を含むので、消音空間S内における排気管の管長を長くすることができる。これにより、第1、第2排気導出管4A、4B自身での排気騒音の低減度合いを高めることができる。
排気導入管3の排気出口Aが消音器本体20の後壁22に近づくように配置される一方、第1、第2排気導出管4A、4Bの第1、第2排気入口B1、B2が前壁21の近傍位置であって、各々右方側、左方側に配置される。これにより、消音空間S内において、排気出口Aと第1、第2排気入口B1、B2とを遠ざけることができ、排気導入管3の排気騒音を第1、第2排気導出管4A、4Bへ伝達し難くすることができる。
また、排気導入管3の排気出口Aから吐出された排気は、消音器本体20の後壁22に単に吹き付けられるのではなく、専ら整流板6(排気ガイド部)のガイド面62によって、消音器本体20(消音空間S)の長手方向である車幅方向の両側に向けて積極的に案内される。そして、第1、第2排気導出管4A、4Bの各排気入口B1、B2は、前壁21の車幅方向の両側に配置されているので、排気はスムースに第1、第2排気入口B1、B2に向かうことができる。従って、排気抵抗や気流音の発生を抑制することができる。
整流板6は、最前部の先端部61と、先端部61から右後方、左後方に各々延びる右ガイド面62R、左ガイド面62Lを備える。このため、排気出口Aから吐出された排気は、先ず整流板6の先端部61に吹き当たり、当該先端部61から後方に延びる両ガイド面62R、62Lによって、自ずと車幅方向両側、つまり右壁23及び左壁24の方向へ向かうようになる。
また、整流板6は、消音器本体20とは別体の板状部材からなるので、当該整流板6の形状の自由度、配置の自由度を高めることができる。また、消音器本体20の上壁25、下壁26に、それぞれ整流板6の上端側、下端側が取り付けられるので、例えば後壁に整流板6を取り付ける場合に比べて、消音器本体20の剛性を高めることができる。
消音器本体20は、図4に示す通り、車幅方向中央部における車両前後方向の断面視において、後壁22の後方部分に流線型部Stを備えている。流線型部Stを具備させることで、平面同士が交差する稜線部分が表出しないようになり、車両後方からの見映えを向上させることができる。また、消音器本体20の後方部分を流線型とした場合、消音器本体20の後壁22に整流板6を取り付けることは困難となる。しかし、当該整流板6は消音器本体20の上壁25、下壁26に対して取り付けられるので、整流板6の簡易な取り付けを実現することができる。また、整流板6は上フランジ部63、下フランジ部64を備えるので、例えば栓溶接やスポット溶接によって上壁25、下壁26へ容易に固着することができる。
整流板6の下フランジ部64は、下壁26に設けられているビード203を跨いで車幅方向に延びる取り付け板28を介して、下壁26に取り付けられている。下壁26にビード203を具備させることで、消音器本体20の剛性を高めることができる。一方、ビード203の形成によって、下フランジ部64の座面の確保が問題となる。しかし、ビード203を跨ぐ取り付け板28を設けることで、下フランジ部64を確実且つ簡単に下壁26に取り付けることができる。
また、湾曲管43を消音器本体20の上壁25及び下壁26で支持させるためのセットプレート27を備えている。セットプレート27によって第1、第2排気導出管4A、4Bの支持剛性を高めることができると共に、消音器本体20自体の剛性も高めることができる。さらに、前壁21側へ導かれた排気が排気導入管3の排気出口Aに戻ってしまうことを、セットプレート27の配置によって阻止することが可能となる。つまり、セットプレート27は、上下方向に延びる平板であって、排気導入管3を挟み込むように配置されているので、排気出口Aへ戻ろうとする排気フローを遮断する役目を果たし得る。
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示すような種々の変形実施形態を取ることができる。
(1)図14は、変形実施形態に係る整流板6Aを示す斜視図である。先に図7〜図12において示した整流板6と相違する点は、一対の上フランジ部63に一対の上規制片65が、一対の下フランジ部64に一対の下規制片66が、各々設けられている点である。他の構成は同一であるので、ここでは説明を省く。
一対の上規制片65は、一対の上フランジ部63の前端縁からそれぞれ下方に延び、右ガイド面62R、左ガイド面62Lの前方を部分的に覆っている。一対の下規制片66は、一対の下フランジ部64の前端縁からそれぞれ上方に延び、右ガイド面62R、左ガイド面62Lの前方を部分的に覆っている。上、下規制片65、66は、上、下フランジ部63、64の前端側の所定幅を折り曲げることによって形成することができる。上規制片65又は下規制片66のいずれかを省く態様としても良い。
整流板6Aのガイド面62に排気が吹き当たると、その排気の一部に、ガイド面62からの跳ね返りによって前方側へ戻ろうとする排気フローが生じ得る。すなわち、排気の大部分は、右、左ガイド面62R、62Lによって左右方向へガイドされるが、排気の残部が上、下フランジ部63、64にガイドされてしまい、前方側へ戻る排気フローを形成することがある。この排気フローは排気出口Aへ逆流するフローとなり、排気抵抗を上昇させることに繋がる。しかし、上、下規制片65、66を上、下フランジ部63、64に設けることで、ガイド面62から前方側へ離脱しようとする排気フローを規制し、左右方向へ排気を導くことができる。従って、当該整流板6Aの採用により、排気を一層良好に車幅方向の両側に向けて案内させることができる。
(2)図15は、変形実施形態に係るメイン消音装置2Aを示す水平方向の断面図である。上述のメイン消音装置2と相違する点は、排気導入管3及び湾曲管43を支持する支持プレート33が採用され、さらに支持プレート33が排気のガイド機能を備えている点である。他の構成はメイン消音装置2と同一であるので、ここでは説明を省く。
支持プレート33は、一体的に形成されたセットプレート部27A及び内側ガイド部34を備えている。セットプレート部27Aは、左右一対で設けられ、上記実施形態において湾曲管43を支持するセットプレート27と同様な機能を果たす部分である。内側ガイド部34は、一対のセットプレート部27Aの後端縁同士を結ぶように、左右方向に延びている。内側ガイド部34の左右方向中央部は前方側へ突出する凸曲面とされており、当該中央部において排気導入管3の下流端301を支持している。
内側ガイド部34は、上面視において、排気導入管3を挟んで右側及び左側の双方共、緩いS字型の曲面を有している。そして、当該S字型の曲面は、整流板6の右、左ガイド面62R、62Lと所定間隔をおいて対向し、排気の通路を形成している。すなわち、排気出口Aから吐出された排気は、整流板6の右、左ガイド面62R、62Lと内側ガイド部34との間の通路を通り、左右方向へ良好に導かれる。
(3)上記実施形態では、第1、第2排気導出管4A、4Bが第1、第2直線管41、42及び湾曲管43を備える例を示した。これは一例であり、第1、第2排気導出管4A、4Bが湾曲管43を備えない態様としても良い。さらに、本実施形態では、排気経路を180°転換させる湾曲管43を例示したが、U字状に湾曲していればよく180°より若干緩い湾曲、或いは180°を若干超過する湾曲であっても良い。