以下、本発明の粘着テープについて詳細に説明する。
まず、本発明の粘着テープを説明するのに先立って、本発明の粘着テープを用いて製造された半導体装置について説明する。
<半導体装置>
図1は、本発明の粘着テープを用いて製造された半導体装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す半導体装置10は、QFP(Quad Flat Package)型の半導体パッケージであり、半導体チップ(半導体素子)20と、半導体チップ20を接着層60を介して支持するダイパッド30と、半導体チップ20と電気的に接続されたリード40と、半導体チップ20を封止するモールド部(封止部)50とを有している。
ダイパッド30は、金属基板で構成され、半導体チップ20を支持する支持体としての機能を有するものである。
このダイパッド30は、例えば、Cu、Fe、Niやこれらの合金(例えば、Cu系合金や、Fe−42Niのような鉄・ニッケル系合金)等の各種金属材料で構成される金属基板や、この金属基板の表面に銀メッキや、Ni−Pdメッキが施されているもの、さらにNi−Pdメッキの表面にPd層の安定性を向上するために設けられた金メッキ(金フラッシュ)層が設けられているもの等が用いられる。
また、ダイパッド30の平面視形状は、通常、半導体チップ20の平面視形状に対応し、例えば、正方形、長方形等の四角形とされる。
ダイパッド30の外周部には、複数のリード40が、放射状に設けられている。
このリード40のダイパッド30と反対側の端部は、モールド部50から突出(露出)している。
リード40は、導電性材料で構成され、例えば、前述したダイパッド30の構成材料と同一のものを用いることができる。
また、リード40には、その表面に錫メッキ等が施されていてもよい。これにより、マザーボードが備える端子に半田を介して半導体装置10を接続する場合に、半田とリード40との密着性を向上させることができる。
ダイパッド30には、接着層60を介して半導体チップ20が固着(固定)されている。
この接着層60は、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリイミド系接着剤およびシアネート系接着剤等の各種接着剤を用いて形成される。また、接着層60には、銀粉や銅粉のような金属粒子が含まれていてもよい。これにより、接着層60の熱伝導性が向上することから、接着層60を介して半導体チップ20からダイパッド30に効率よく熱が伝達されるため、半導体チップ20の駆動時における放熱性が向上する。
また、半導体チップ20は、電極パッド21を有しており、この電極パッド21とリード40とが、ワイヤー22で電気的に接続されている。これにより、半導体チップ20と各リード40とが電気的に接続されている。
このワイヤー22の材質は、特に限定されないが、ワイヤー22は、例えば、Au線やAl線で構成することができる。
そして、ダイパッド30、ダイパッド30の上面側に設けられた各部材およびリード40の内側の部分は、モールド部50により封止されている。その結果として、リード40の外側の端部が、半導体封止材料の硬化物で構成されるモールド部50から突出している。
かかる構成の半導体装置10は、例えば、本発明の粘着テープを半導体用ウエハ加工用のものとして用いて以下のようにして製造される。
<半導体装置の製造方法>
図2は、図1に示す半導体装置を、本発明の粘着テープを用いて製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1A]まず、基材4と、基材4の上面(一方の面)に積層された粘着層2と、を有する粘着テープ100を用意する(図2(a)参照。)。
この粘着テープ100が本発明の粘着テープで構成されるが、その詳細な説明は後に行うこととする。
[2A]次に、図2(b)に示すように、図示しないダイサーテーブルの上に、粘着テープ100を設置し、その中心部122に半導体用ウエハ7の半導体素子の無い側の面を、粘着層2の上に置き、軽く押圧し、半導体用ウエハ7を積層(貼付)する(貼付工程)。
なお、粘着テープ100に半導体用ウエハ7を予め貼着した後に、ダイサーテーブルに設置しても良い。
また、本実施形態では、粘着テープ100には、例えば、12インチのような大型の半導体用ウエハ7が積層される。
[3A]次に、粘着層2の外周部121をウエハリング9で固定し、その後、図示しない、ダイシングソー(ブレード)を用いて基板としての半導体用ウエハ7を切断(ダイシング)して半導体用ウエハ7を個片化することで粘着テープ100上に部品としての半導体チップ20を得る(ダイシング工程;図2(c)参照)。
この際、粘着テープ100は、緩衝作用を有しており、半導体用ウエハ7を切断する際の割れ、欠け等を防止する。
また、ブレードを用いた半導体用ウエハ7の切断は、図2(c)に示すように、基材4の厚さ方向の途中まで到達するように実施される。これにより、半導体用ウエハの個片化を確実に実施することができる。
[4A]次に、粘着テープ100が備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を低下させる。
これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で剥離が生じる状態とする。
粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層2にエネルギー線を照射する方法、粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、粘着層2にエネルギー線を粘着テープ100の基材4側から照射する方法を用いるのが好ましい。
かかる方法は、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がなく、また、粘着層2に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
また、エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。これらの中でも、特に、紫外線を用いるのが好ましい。紫外線によれば、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性を効率よく低下させることができる。
[5A]次に、粘着テープ100を図示しないエキスパンド装置で放射状に伸ばして、個片化した半導体用ウエハ7すなわち部品としての半導体チップ20を一定の間隔に開き(図2(d)参照。)、その後、この半導体チップ20を、ニードル等を用いて突き上げた状態とし、この状態で、真空コレットまたはエアピンセットによる吸着等によりピックアップする(ピックアップ工程;図2(e)参照。)。
[6A]次に、ピックアップした半導体チップ20を、接着層60を介してダイパッド30上に搭載し、その後、半導体チップ20が備える電極パッド21とリード40とをワイヤーボンディングすることでワイヤー22により電気的に接続する。
[7A]次に、半導体チップ20をモールド部50で封止する。
このモールド部50による封止は、例えば、形成すべきモールド部50の形状に対応した内部空間を備える成形型を用意し、この内部空間内に配置された半導体チップ20を取り囲むように、粉末状をなす半導体封止材料を内部空間に充填する。そして、この状態で、半導体封止材料を加熱することにより硬化させて、半導体封止材料の硬化物とすることにより行われる。
以上のような工程を有する半導体装置の製造方法により、半導体装置10が得られるが、以下、半導体装置の製造方法に用いられる粘着テープ100(本発明の粘着テープ)について説明する。
<粘着テープ>
図3は、本発明の粘着テープの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
粘着テープ100(本発明の粘着テープ)は、樹脂材料と、導電性材料とを含有する基材4と、この基材4の一方の面に積層された粘着層2と、を備える積層体により構成され、半導体用ウエハ7(半導体基板)を仮固定して用いられるものであり、基材4は、その他方の面側の表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)超であり、かつ、その体積抵抗率が1.0×1016(Ω・m)以下であることを特徴とする。
基材4の粘着層2が積層された一方の面と反対の他方の面側の表面抵抗率と、基材4の体積抵抗率をかかる範囲内に設定することで、前記貼付工程[2A]、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]等において、半導体チップ20に静電気が発生するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、静電気が放電することに起因して、半導体チップがダメージを受け、その結果、半導体チップ20の特性の低下、さらには半導体チップ20の破損を招くのを、的確に抑制または防止することができる。
なお、前記工程[5A]〜前記工程[7A]を繰り返して実施することで、1枚の半導体用ウエハ7から複数の半導体装置10が得られるが、半導体用ウエハ7を切断することで得られた複数の半導体チップ20のうちの数個が粘着テープ100上に残存した状態で、前記工程[5A]〜前記工程[7A]の繰り返しを一旦停止し、この停止の後に再度、前記工程[5A]〜前記工程[7A]を繰り返すことがある。この際、停止の時間が例えば一日以上のように長い場合には、ダイサーテーブル上から、半導体チップ20が貼付された粘着テープ100を取り除く(剥離させる)ことがあるが、このような、ダイサーテーブルからの取り除き時においても、半導体チップ20に静電気が発生するのを的確に抑制または防止することができる。
以下、この粘着テープ100(ダイシングテープ)が有する基材4および粘着層2について、詳述する。
なお、粘着テープ100は、このものが備える粘着層2にエネルギーを付与することで、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下する機能を有するものである。
このような粘着層2にエネルギーを付与する方法としては、粘着層2にエネルギー線を照射する方法および粘着層2を加熱する方法等が挙げられるが、中でも、半導体チップ20が不要な熱履歴を経る必要がないことから、粘着層2にエネルギー線を照射する方法が好適に用いられる。そのため、以下では、粘着層2として、エネルギー線の照射により前記粘着性が低下するものを代表に説明する。
<基材4>
基材4は、主材料としての樹脂材料と、導電性材料とを含有し、この基材4上に設けられた粘着層2を支持する機能を有している。
樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレンのようなポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂(オレフィン系高分子)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、亜鉛イオン架橋体、ナトリウムイオン架橋体のようなアイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂(エステル類高分子)、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン系高分子)、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーのようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(オレフィン系高分子)、アクリル樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート(カーボネート系高分子)等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられ、中でも、エステル類高分子、スチレン系高分子、オレフィン系高分子、カーボネート系高分子、またはこれらの高分子の少なくとも1種が含有されている共重合物であることが好ましい。
これらの樹脂材料は、光(可視光線、近赤外線、紫外線)、X線、電子線等のエネルギー線を透過し得る材料であることから、前記工程[4A]において、エネルギー線を基材4側から基材4を透過させて粘着層2に照射する場合に好ましく用いることができる。
特に、樹脂材料としては、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物を用いることが好ましい。
また、このエラストマーとしては、下記一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと、下記一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
また、基材4は、主材料として含まれる樹脂材料中に分散する、導電性を有する導電性材料を含有している。導電性材料が基材4に含まれることで、導電性材料に帯電防止剤としての機能を発揮させて、基材4の他方の面(下面)側の表面抵抗率を1.0×108(Ω/□)超、かつ、基材4の体積抵抗率を1.0×1016(Ω・m)以下に設定することができるため、前記貼付工程[2A]、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]における、半導体用ウエハ7および半導体チップ20での静電気の発生が的確に抑制または防止される。
この導電性材料としては、導電性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、導電性高分子、界面活性剤、永久帯電防止高分子(IDP)、金属材料、金属酸化物材料および炭素系材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリチオフェンまたはその誘導体としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)が挙げられる。
ポリアニリンまたはその誘導体としては、例えば、ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリン等が挙げられる。
さらに、ポリピロールまたはその誘導体としては、例えば、ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリ3−オクチルピロール等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。
永久帯電防止高分子(IDP)としては、例えば、ポリエステルアミド系、ポリエーテルエステルポリオレフィン系、ポリエーテルエステルアミド系、ポリウレタン系等の全てのIDPを用いることができる。
さらに、金属材料としては、金、銀、銅または銀コート銅、ニッケル等が挙げられ、これらの金属粉が好ましく用いられる。
金属酸化物材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、酸化スズ(SnO2)等が挙げられ、これらの金属酸化物粉が好ましく用いられる。
また、炭素系材料としては、カーボンブラック、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェン等が挙げられる。
これらの中でも、導電性材料としては、導電性高分子、永久帯電防止高分子(IDP)、金属酸化物材料およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらのものは、抵抗率の温度依存性が小さいものであることから、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、基材4が加熱されたとしても、抵抗値の変化量を小さくして、基材4の他方の面側の表面抵抗率を1.0×108(Ω/□)超、かつ、基材4の体積抵抗率を1.0×1016(Ω・m)以下に設定することができる。
なお、導電性材料として、導電性高分子、永久帯電防止高分子(IDP)のような高分子材料を用いた場合、基材4中における配向度を調整することによっても、基材4の他方の面側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率の大きさを、それぞれ、前記下限値超および前記上限値以下に設定することができる。すなわち、基材4を形成する際のMDまたはTDの延伸倍率を適宜調整することにより、基材4の他方の面側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率の大きさを、それぞれ、前記下限値超および前記上限値以下に設定することができる。
また、基材4における、導電性材料の含有量は、導電性材料の種類によっても若干異なるが、5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。これにより、基材4の他方の面側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率の大きさを、それぞれ、前記下限値超および前記上限値以下に確実に設定することができる。
さらに、基材4は、鉱油のような軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレーのような充填材、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、分散剤、中和剤、着色剤等を含有するものであってもよい。
基材4の厚さは、特に限定されないが、例えば、30μm以上150μm以下であるのが好ましく、40μm以上120μm以下であるのがより好ましい。基材4の厚さがこの範囲内であると、前記工程[3A]における半導体用ウエハ7のダイシングを、優れた作業性により実施することができる。
さらに、基材4は、その表面に、粘着層2に含まれる構成材料と反応性を有する、ヒドロキシル基、アミノ基のような官能基が露出していることが好ましい。
また、基材4は、異なる前記樹脂材料で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。さらに、前記樹脂材料をドライブレンドしたブレンドフィルムで構成されるものであってもよい。
なお、基材4を積層体で構成する場合には、奇数の層が積層された奇数層からなるものが好ましい。さらに、奇数層とする場合、その中央に位置する層を中心として、同一の構成材料、構成材料の含有量等からなる同一の層が両側に対称となって積層された対称構造のものがより好ましい。これにより、前記工程[4A]において、エネルギー線を基材4側から基材4を透過させる場合には、基材4におけるエネルギー線の透過率を向上させることができることから、粘着層2にエネルギー線を高効率に照射することができる。
<粘着層>
粘着層2は、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7を粘着して支持する機能を有している。また、この粘着層2は、このものに対するエネルギーの付与により半導体用ウエハ7への粘着性が低下し、これにより、粘着層2と半導体用ウエハ7との間で容易に剥離を生じさせ得る状態となるものである。
かかる機能を備える粘着層2は、(1)粘着性を有するベース樹脂と、(2)粘着層2を硬化させる硬化性樹脂とを主材料として含有する樹脂組成物で構成される。
以下、樹脂組成物に含まれる各成分について、順次、詳述する。
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、粘着性を有し、粘着層2へのエネルギー線の照射前に、半導体用ウエハ7に対する粘着性を粘着層2に付与するために、樹脂組成物中に含まれるものである。
このようなベース樹脂としては、アクリル系樹脂(粘着剤)、シリコーン系樹脂(粘着剤)、ポリエステル系樹脂(粘着剤)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂(粘着剤)またはウレタン系樹脂(粘着剤)のような粘着層成分として用いられる公知のものが挙げられるが、中でも、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。アクリル系樹脂は、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できることから、ベース樹脂として好ましく用いられる。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とするポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするもののことを言う。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いることとする。
また、このアクリル系樹脂は、そのガラス転移点が20℃以下であることが好ましい。これにより、粘着層2へのエネルギー線の照射前において、粘着層2に優れた粘着性を発揮させることができる。
アクリル系樹脂は、凝集力、耐熱性等の改質等を目的として、必要に応じて、ポリマーを構成するモノマー成分として、共重合性モノマーを含むものが用いられる。
このような共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルのようなヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルのようなエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸のようなカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドのようなアミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルのようなアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリルのようなシアノ基含有モノマー、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンのようなオレフィン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのようなスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル系モノマー、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなハロゲン原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルのようなアルコキシ基含有モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら共重合性モノマーの含有量は、アクリル系樹脂を構成する全モノマー成分に対して、40重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
また、共重合性モノマーは、アクリル系樹脂を構成するポリマーにおける主鎖の末端に含まれるものであってもよいし、その主鎖中に含まれるもの、さらには、主鎖の末端と主鎖中との双方に含まれるものであってもよい。
さらに、共重合性モノマーには、ポリマー同士の架橋等を目的として、多官能性モノマーが含まれていてもよい。
多官能性モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよび酢酸ビニルポリマー等も、共重合性モノマー成分として用いることができる。
なお、このようなアクリル系樹脂(ポリマー)は、単一のモノマー成分または2種以上のモノマー成分の混合物を重合させることにより生成させることができる。また、これらモノマー成分の重合は、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、懸濁重合方法等の重合方法を用いて実施することができる。
以上、説明したモノマー成分を重合することにより得られるアクリル系樹脂としては、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているアクリル系樹脂(「二重結合導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、後述する硬化性樹脂の添加を省略したとしても、得られる粘着層2に、上述した粘着層2としての機能を発揮させることができる。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂を構成するポリマー内の側鎖のうち、1/100以上の側鎖のそれぞれに、炭素−炭素二重結合を1個有している二重結合導入型アクリル系樹脂(「二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂」と言うこともある。)であることが好ましい。このように、炭素−炭素二重結合を、アクリル系樹脂の側鎖に導入することは、分子設計の点からも有利である。なお、この二重結合側鎖導入型アクリル系樹脂は、主鎖中や、主鎖の末端にも、炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
このような二重結合導入型アクリル系樹脂の合成方法(すなわち、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を導入する方法)としては、特に限定されず、例えば、共重合性モノマーとして官能基を有するモノマーを用いて共重合して、官能基を含有するアクリル系樹脂(「官能基含有アクリル系樹脂」と言うこともある。)を合成した後、官能基含有アクリル系樹脂中の官能基と反応し得る官能基と、炭素−炭素二重結合とを有する化合物(「炭素−炭素二重結合含有反応性化合物」と言うこともある。)を、官能基含有アクリル系樹脂に、炭素−炭素二重結合のエネルギー線硬化性(エネルギー線重合性)を維持した状態で、縮合反応または付加反応させることにより、二重結合導入型アクリル系樹脂を合成する方法等が挙げられる。
なお、アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合を、全側鎖のうちの1/100以上の側鎖に導入する際の制御手段としては、例えば、官能基含有アクリル系樹脂に縮合反応または付加反応させる化合物である炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の含有量を適宜調節することにより行う方法等が挙げられる。
また、官能基含有アクリル系樹脂に炭素−炭素二重結合含有反応性化合物を縮合反応又は付加反応させる際には、触媒を用いることにより、前記反応を効果的に進行させることができる。このような触媒としては、特に制限されないが、ジラウリン酸ジブチルスズのようなスズ系触媒が好ましく用いられる。このスズ系触媒の含有量としては、特に制限されないが、例えば、官能基含有アクリル系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上1重量部以下であることが好ましい。
また、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aおよび炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとしては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基等が挙げられ、さらに、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aと、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとの組み合わせとしては、例えば、カルボン酸基(カルボキシル基)とエポキシ基との組み合わせ、カルボン酸基とアジリジル基との組み合わせ、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせ、ヒドロキシル基とカルボキシル基との組み合わせ等の各種の組み合わせが挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせであることが好ましい。これにより、これら官能基A、B同士の反応追跡を容易に行うことができる。
さらに、これらの官能基A、Bの組み合わせにおいて、何れの官能基が、官能基含有アクリル系樹脂の官能基Aまたは炭素−炭素二重結合含有反応性化合物の官能基Bとなっていてもよいが、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせの場合、ヒドロキシル基が、官能基含有アクリル系樹脂における官能基Aとなっており、イソシアネート基が、炭素−炭素二重結合含有反応性化合物における官能基Bとなっていることが好ましい。
この場合、官能基含有アクリル系樹脂を構成する官能基Aを有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸のようなカルボキシル基を有するもの、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような酸無水物基を有するもの、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテルのようなヒドロキシル基を有するもの、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルのようなエポキシ基を有するもの等が挙げられる。
また、官能基Bを有する炭素−炭素二重結合含有反応性化合物としては、イソシアネート基を有するものとして、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m−プロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられ、エポキシ基を有するものとして、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
アクリル系樹脂は、前記工程[3A]において、半導体用ウエハ7をダイシングする際に、半導体用ウエハ7等の汚染を防止するという観点から、低分子量物の含有量が少ないものであることが好ましい。この場合、アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは30万〜500万に設定され、より好ましくは50万〜500万に設定され、さらに好ましくは80万〜300万に設定される。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量が、モノマー成分の種類等によっては、50万未満であると、半導体用ウエハ7等に対する汚染防止性が低下し、半導体チップ20を剥離させた際に糊残りが生じるおそれがある。
なお、アクリル系樹脂は、ヒドロキシル基やカルボキシル基(特に、ヒドロキシル基)のような、架橋剤や光重合開始剤に対して反応性を有する官能基(反応性官能基)を有していることが好ましい。これにより、架橋剤や光重合開始剤がポリマー成分であるアクリル樹脂に連結するため、粘着層2からこれら架橋剤や光重合開始剤が漏出することを的確に抑制または防止することができる。その結果、前記工程[4A]におけるエネルギー線照射時により、粘着層2の半導体用ウエハ7に対する粘着性が確実に低下される。
(2)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、例えば、エネルギー線の照射により硬化する硬化性を備えるものである。この硬化によってベース樹脂が硬化性樹脂の架橋構造に取り込まれた結果、粘着層2の粘着力が低下する。
このような硬化性樹脂としては、例えば、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射によって三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を、官能基として少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が用いられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、エステルアクリレートオリゴマー、2−プロペニル−ジ−3−ブテニルシアヌレート等の炭素−炭素二重結合含有基を有しているシアヌレート系化合物、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロキシエチル)2−[(5−アクリロキシヘキシル)−オキシ]エチルイソシアヌレート、トリス(1,3−ジアクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(1−アクリロキシエチル−3−メタクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4−アクリロキシ−n−ブチル)イソシアヌレートのような炭素−炭素二重結合含有基を有しているイソシアヌレート系化合物、市販のオリゴエステルアクリレート、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、官能基数が6官能以上であるオリゴマーが含まれることが好ましく、官能基数が15官能以上であるオリゴマーが含まれることがより好ましい。これにより、エネルギー線の照射により硬化性樹脂をより確実に硬化させることができる。また、このような硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートであることが好ましい。これにより、適度な柔軟性によるピックアップ時の糊割れを抑制できるという効果が得られる。
なお、このウレタンアクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル型またはポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナート等)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等)を反応させて得られたものが挙げられる。
また、硬化性樹脂には、特に限定されないが、重量平均分子量の異なる2つ以上の硬化性樹脂が混合されているのが好ましい。このような硬化性樹脂を利用すれば、エネルギー線照射による樹脂の架橋度を容易に制御することができ、前記工程[5A]における半導体チップ20のピックアップ性を向上させることができる。また、このような硬化性樹脂として、例えば、第1の硬化性樹脂と、第1の硬化性樹脂よりも重量平均分子量が大きい第2の硬化性樹脂との混合物等が用いられてもよい。
硬化性樹脂を、第1の硬化性樹脂と、第2の硬化性樹脂との混合物とする場合、第1の硬化性樹脂の重量平均分子量は、100〜1000程度であることが好ましく、200〜500程度であることがより好ましい。また、第2の硬化性樹脂の重量平均分子量は、1000〜30000程度であることが好ましく、1000〜10000程度であることがより好ましく、2000〜5000程度であることがさらに好ましい。さらに、第1の硬化性樹脂の官能基数は、1〜5官能基であることが好ましく、第2の硬化性樹脂の官能基数は、6官能基以上であることが好ましい。かかる関係を満足することにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
硬化性樹脂は、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上500重量部以下で配合されることが好ましく、10重量部以上300重量部以下で配合されることがより好ましく、20重量部以上200重量部以下で配合されることがさらに好ましい。上記のように硬化性樹脂の配合量を調整することによって、前記工程[5A]における半導体チップ20のピックアップ性を優れたものとすることができる。
なお、この硬化性樹脂は、前述したアクリル系樹脂として、二重結合導入型アクリル系樹脂を用いた場合、すなわち、炭素−炭素二重結合を、側鎖、主鎖中または主鎖の末端に有しているものを用いた場合には、その樹脂組成物中への添加を省略するようにしてもよい。これは、アクリル系樹脂が二重結合導入型アクリル系樹脂である場合には、エネルギー線の照射により、二重結合導入型アクリル系樹脂が備える炭素−炭素二重結合の機能によって、粘着層2が硬化し、これにより、粘着層2の粘着力が低下することから、省略が可能となる。
(3)光重合開始剤
また、粘着層2は、エネルギー線の照射により半導体用ウエハ7に対する粘着性が低下するものであるが、エネルギー線として紫外線等を用いる場合には、硬化性樹脂には、硬化性樹脂の重合開始を容易とするために光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ミヒラーズケトン、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾイン、ジベンジル、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2−ナフタレンスルホニルクロリド、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、o−アクリルオキシベンゾフェノン、p−アクリルオキシベンゾフェノン、o−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−メタクリルオキシベンゾフェノン、p−(メタ)アクリルオキシエトキシベンゾフェノン、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,2−エタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,8−オクタンジオールモノ(メタ)アクリラートのようなアクリラートのベンゾフェノン−4−カルボン酸エステル、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、β−クロールアンスラキノン、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート、ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体、等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの中でも、ベンゾフェノン誘導体およびアルキルフェノン誘導体であることが好ましい。これらの化合物は分子中に反応性官能基として水酸基を備えるものであり、この反応性官能基を介して、ベース樹脂や硬化性樹脂に連結することができ、光重合開始剤としての機能をより確実に発揮させることができる。
光重合開始剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.1重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように光重合開始剤の配合量を調整することによって、粘着テープ100からの半導体チップ20のピックアップ性は好適なものとなる。
(4)架橋剤
さらに、硬化性樹脂には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることで、硬化性樹脂の硬化性の向上が図られる。
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、尿素樹脂系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤、酸無水物系架橋剤、ポリアミン系架橋剤、カルボキシル基含有ポリマー系架橋剤等が挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類等で封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
また、多価イソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種の多価イソシアネートが好ましい。
架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましく、5重量部以上50重量部以下で配合されることがより好ましい。上記のように架橋剤の配合量を調整することによって、粘着テープ100からの半導体チップ20のピックアップ性は好適なものとなる。
(5)その他の成分
さらに、粘着層2を構成する樹脂組成物には、上述した各成分(1)〜(4)の他に他の成分として、粘着付与剤、老化防止剤、粘着調整剤、充填材、着色剤、難燃剤、軟化剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、導電性材料(帯電防止剤)等のうちの少なくとも1種が含まれていてもよい。
なお、他の成分のうち、導電性材料は、粘着層2中に含まれていてもよいが、実質的に含まれていないことが好ましい。これにより、基材4の他方の面側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率の大きさを、それぞれ、1.0×108(Ω/□)超および1.0×1016(Ω・m)以下に比較的容易に設定することができる。
また、これらのうち粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、粘着層2の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上50μm以下であるのが好ましく、10μm以上30μm以下であるのがより好ましい。粘着層2の厚さをかかる範囲内とすることで、粘着層2は、粘着層2へのエネルギー付与前には、良好な粘着力を発揮するとともに、粘着層2へのエネルギー付与後には、粘着層2と半導体用ウエハ7との間において、良好な剥離性を発揮する。
なお、粘着層2は、異なる前記樹脂組成物で構成される層を複数積層した積層体(多層体)で構成されるものであってもよい。
ここで、前述の通り、基材4の他方の面(下面)側の表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)超であり、かつ、基材4の体積抵抗率が1.0×1016(Ω・m)以下であればよいが、基材4の他方の面(下面)側の表面抵抗率は、1.0×108(Ω/□)超1.0×1012(Ω/□)以下であることが好ましく、1.0×1010(Ω/□)以上1.0×1012(Ω/□)以下であることがより好ましい。さらに、基材4の体積抵抗率は、1.0×1010(Ω・m)以上1.0×1016(Ω・m)以下であることが好ましく、1.0×1011(Ω・m)以上1.0×1013(Ω・m)以下であることがより好ましい。このように、基材4の他方の面(下面)側の表面抵抗率が前記範囲内のように比較的高く設定されていたとしても、基材4の体積抵抗率を前記範囲内に設定することにより、前記貼付工程[2A]、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]等において、半導体チップ20に静電気が発生するのをより的確に抑制または防止することができる。そのため、静電気が放電することに起因して、半導体チップがダメージを受け、その結果、半導体チップ20の特性の低下、さらには半導体チップ20の破損を招くのを、より的確に抑制または防止することができる。
特に、本実施形態では、粘着テープ100には、例えば、12インチのような大型の半導体用ウエハ7が積層されており、半導体用ウエハ7は、前記ダイシング工程[3A]において、より長時間、切断されることとなるが、基材4の他方の面(下面)側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率を、前記のように設定することで、このような大型の半導体用ウエハ7においても、半導体チップ20の特性の低下、さらには半導体チップ20の破損が的確に抑制または防止される。
また、基材4の一方の面(上面)側すなわち粘着層2側の表面抵抗率は、1.0×109(Ω/□)超であることが好ましく、1.0×1010(Ω/□)以上1.0×1013(Ω/□)以下であることがより好ましい。このように、基材4の一方の面(上面)側の表面抵抗率が前記範囲内のように比較的高く設定されている場合においても、基材4の体積抵抗率を前記範囲内に設定することにより、前記効果を確実に発揮させることができる。
さらに、粘着層2は、このものに対するエネルギー線の照射により粘着性が低下するものであるが、上述した、基材4の他方の面側の表面抵抗率、基材4の一方の面側の表面抵抗率、および、基材4の体積抵抗率は、それぞれ、粘着層2へのエネルギー線の照射前と照射後とのいずれか一方または双方が前記範囲内に設定されていればよいが、エネルギー線の照射後に前記範囲内に設定されているのが好ましく、エネルギー線の照射前後に前記範囲内に設定されているのがより好ましい。半導体チップ20における静電気の発生は、前記ピックアップ工程[5A]において、粘着テープ100から半導体チップ20をピックアップする際に、より顕著に認められる傾向を示すが、この際の基材4の他方の面側の表面抵抗率、基材4の一方の面側の表面抵抗率、および、基材4の体積抵抗率を前記範囲内に設定することで、半導体チップ20のピックアップ時に、半導体チップ20に静電気が発生するのを的確に抑制または防止することができる。
このようなエネルギー線の照射後における半導体チップ20(半導体用ウエハ7)における静電気の発生の程度は、例えば、以下に示す程度に抑制されていることが好ましい。
すなわち、幅20mmの粘着テープ100を、長さ4インチ以上6インチ以下のシリコンウエハの切片に貼付して、3hr放置し、その後、紫外線照度:55W/cm2、紫外線照射量:200mj/cm2の条件で粘着層2に紫外線を照射した後に、粘着テープ100の一端を持ち、温度24℃、湿度40%Rhの条件下において180°の方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときに前記シリコンウエハにおいて測定されるピーク電位が40V以下であることが好ましく、16V以下であることがより好ましい。
また、幅20mmの粘着テープ100を、長さ4インチ以上6インチ以下のシリコンウエハの切片に貼付して、3hr放置し、その後、紫外線照度:55W/cm2、紫外線照射量:200mj/cm2の条件で粘着層2に紫外線を照射した後に、粘着テープ100の一端を持ち、温度24℃、湿度40%Rhの条件下において180°の方向に300mm/分の速度で引き剥がし、40sec放置した後に前記シリコンウエハにおいて測定される減衰後電位が5.0V以下であることが好ましく、1.5V以下であることがより好ましい。
次に、かかる構成の粘着テープ100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
<粘着テープの製造方法>
図4は、図3に示す粘着テープを製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1B]まず、基材4を用意し、この基材4の上面(一方の面)に粘着層2を形成する(図4(a)参照。)。
基材4の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、カレンダー法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法のような押出成形法、湿式キャスティング法等の一般的な成形方法が挙げられる。なお、基材4が積層体で構成される場合、かかる構成のその基材4の製造方法としては、例えば、共押出し法、ドライラミネート法等の成形方法が用いられる。
また、基材4は、無延伸で用いることができるし、さらに、必要に応じて1軸または2軸の延伸処理を施したものを用いるようにしてもよい。なお、前述の通り、導電性材料として、導電性高分子、永久帯電防止高分子(IDP)のような高分子材料が基材4に含まれる場合、基材4中における配向度を調整することによって、基材4の他方の面側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率の大きさを、適宜設定することができる。そのため、基材4にMDもしくはTDの1軸、または、MDおよびTDの2軸の延伸処理を施して、基材4中における高分子材料の配向度を調整することで、基材4の他方の面側の表面抵抗率および基材4の体積抵抗率の大きさを、それぞれ、前記下限値超および前記上限値以下に設定することができる。
さらに、基材4の表面には、基材4と粘着層2との密着性を向上させることを目的に、コロナ処理、クロム酸処理、マット処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理、プライマー処理、アンカーコート処理のような表面処理が施されていてもよい。
また、粘着層2は、基材4上に、粘着層2の構成材料である樹脂組成物を溶剤に溶解してワニス状にした液状材料を、塗布または散布した後、溶剤を揮発させて粘着層2を形成することにより得ることができる。
なお、溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、基材4上への液状材料の塗布または散布は、例えば、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコートおよびリップコート等の方法を用いて行うことができる。
[2B]次に、基材4上に形成された粘着層2に対して、中心側と外周側とが分離されるように、粘着層2の厚さ方向に基材4を残存させて円環状に粘着層2の一部を除去することにより、粘着層2を中心部122と外周部121とを備えるものとする(図4(b)参照。)。
粘着層2の一部を円環状に除去する方法としては、例えば、除去すべき領域を取り囲むように打ち抜いた後、この打ち抜かれた領域に位置する粘着層2を除去する方法が挙げられる。
また、除去すべき領域に対する打ち抜きは、例えば、ロール状金型を用いる方法や、プレス金型を用いる方法を用いて行うことができる。中でも、連続的に粘着テープ100を製造することができるロール状金型を用いる方法が好ましい。
なお、本工程では、粘着層2の一部をリング状(円形状)に打ち抜いて中心部122と外周部121とを形成したが、粘着層2の一部を打ち抜く形状は、前述した半導体装置の製造方法において、粘着層2の外周部121をウエハリングで固定できる形状となっていれば如何なる形状のものであってもよい。具体的には、打ち抜く形状としては、例えば、上述した円形状の他、楕円状、俵型状のような長円状や、四角形状、五角形状のような多角形状等が挙げられる。
[3B]次に、基材4上に形成された粘着層2に対して、セパレーター1を積層することにより、粘着層2がセパレーター1で被覆された粘着テープ100を得る(図4(c)参照。)。
粘着層2にセパレーター1を積層する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールを用いたラミネート方法、プレスを用いたラミネート方法を用いることができる。これらの中でも、連続的に生産できるという生産性の観点から、ロールを用いたラミネート方法が好ましい。
なお、セパレーター1としては、特に限定されないが、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタラートフィルム等が挙げられる。
また、セパレーター1は、粘着テープ100の使用時に剥がされるために、表面に離型処理が施されたものを使用してもよい。離型処理としては離型剤をセパレーター1表面にコーティングする処理や、セパレーター1表面に細かい凹凸をつける処理等が挙げられる。なお、離型剤としては、シリコーン系、アルキッド系、フッ素系等のものが挙げられる。
以上のような工程を経て、セパレーター1で被覆された粘着テープ100を形成することができる。
なお、本実施形態で製造されたセパレーター1で被覆された粘着テープ100は、前述した粘着テープ100を用いた半導体装置の製造方法において、粘着テープ100をセパレーター1から剥離した後に使用される。
また、セパレーター1が被覆する粘着層2から、このセパレーター1を剥がす際には、粘着層2の面に対してセパレーター1を90度以上180度以下の角度で剥離を行うことが好ましい。セパレーター1を剥離する角度を前記範囲とすることで、粘着層2とセパレーター1との界面以外での剥離を確実に防止することができる。
なお、本実施形態では、半導体装置10を、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)に適用し、かかる構成の半導体装置10を、粘着テープ100を用いて製造する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、各種の形態の半導体パッケージの製造に、粘着テープ100を適用することができ、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等のメモリやロジック系素子に適用することができる。
また、本実施形態では、本発明の粘着テープを、12インチのような大型の半導体用ウエハのダイシングおよび得られた切断片のピックアップに用いる場合について説明したが、当然、12インチの半導体用ウエハに代えて8インチのような小型の半導体用ウエハにも適用できることは言うまでもないし、12インチよりも大型の18インチの半導体用ウエハにも適用できる。
以上、本発明の粘着テープについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の粘着テープが備える各層には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。
また、本発明の粘着テープが備える各層の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
また、本発明は、粘着テープが貼付された半導体用ウエハをダイシングすることで、切断片として半導体チップを得る場合に限らず、静電気が生じることで不具合(静電気によるダスト吸着など)が生じる電子基板加工用途にも、本発明の粘着テープを適用することができる。本発明の粘着テープにより貼付される電子基板としては、上述した半導体用ウエハの他に、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラス基板、アルミナ、窒化ケイ素、酸化チタンなどのセラミック基板、アクリル、ポリカーボネート、ゴムなどの樹脂材料基板、金属材料基板等が挙げられる。
また、本発明は、半導体用ウエハをダイシングするための加工に限らず、半導体封止連結体または半導体基板を薄厚化する薄厚工程時、半導体封止連結体を保管する保管工程時、基板を用いて得られた部品を載せ替えや転写するピックアップ工程時、基板として貼付された部品を輸送する輸送工程時などの各種工程においても、基板および部品のうちの少なくとも1種を仮固定して用いることができる。
<粘着テープ用基材>
本発明の粘着テープ用基材は、図3の粘着テープ100を構成する基材4であり、この基材4の一方の面に積層された粘着層2と組み合わせて使用される。
基材4は、その他方の面側の表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)超であり、かつ、その体積抵抗率が1.0×1016(Ω・m)以下であることを特徴とする。
基材4の粘着層2が積層された一方の面と反対の他方の面側の表面抵抗率と、基材4の体積抵抗率をかかる範囲内に設定することで、前記貼付工程[2A]、前記ダイシング工程[3A]、および、前記ピックアップ工程[5A]等において、半導体チップ20に静電気が発生するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、静電気が放電することに起因して、半導体チップがダメージを受け、その結果、半導体チップ20の特性の低下、さらには半導体チップ20の破損を招くのを、的確に抑制または防止することができる。
本発明の粘着テープ用基材の樹脂材料・製造方法等は、前記基材4と同様のものを使用することができ、前記記載内容を準用するものとする。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
1.原材料の準備
まず、各実施例、比較例および各参考例の粘着テープの製造に用いた原材料を以下に示す。
(樹脂材料1)
樹脂材料1として、ポリプロピレン(住友化学社製、「FS2011DG3」)を用意した。
(導電性材料1)
導電性材料1(高分子型帯電防止剤)として、ペレスタット300(三洋化成社製)を用意した。
(導電性材料2)
導電性材料2として、イオン液体(広栄化学社製、品番:IL-A2)を用意した。
(導電性材料3)
導電性材料3として、ポリチオフェン(荒川化学社製、品番:アラコートAS625)を用意した。なお、AS625中には、導電性材料の他、高分子バインダーとして、アクリル系樹脂を含有する。
(ベース樹脂1)
ベース樹脂1として、第1の共重合体を10重量部と、第2の共重合体を90重量部とからなるものを用意した。なお、第1の共重合体としては、アクリル酸ブチル70重量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル25重量部と、酢酸ビニル5重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が500000の共重合体を用いた。また、第2の共重合体としては、アクリル酸2−エチルヘキシル50重量部と、アクリル酸ブチル10重量部と、酢酸ビニル37重量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が300000の共重合体を用いた。
(硬化性樹脂1)
硬化性樹脂1として、15官能のオリゴマーのウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品番:Miramer SC2152)を用意した。
(架橋剤1)
架橋剤1として、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、品番:コロネートL)を用意した。
(光重合開始剤1)
光重合開始剤1として、ベンジルジメチルケタール(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、品番:イルガキュア651)を用意した。
2.粘着テープの作製
[実施例1]
樹脂材料1(87重量部)と、導電性材料1(13重量部)とを2軸混練機で混練し、その後、混練したものを押出し機で押し出し、乾燥させた後に、MDに延伸倍率101%で延伸する1軸延伸を施すことで、厚さ150μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)および光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが20μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成して実施例1の粘着テープ100を得た。
[実施例2]
樹脂材料1(87重量部)と、導電性材料1(13重量部)とを2軸混練機で混練し、その後、混練したものを押出し機で押し出し、乾燥させた後に、MDに延伸倍率101%で延伸する1軸延伸を施すことで、厚さ100μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)および光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが10μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成して実施例2の粘着テープ100を得た。
[実施例3]
樹脂材料1(80重量部)と、導電性材料1(20重量部)とを2軸混練機で混練し、その後、混練したものを押出し機で押し出し、乾燥させた後に、MDに延伸倍率101%で延伸する1軸延伸を施すことで、厚さ100μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)および光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが10μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成して実施例3の粘着テープ100を得た。
[実施例4]
樹脂材料1(77重量部)と、導電性材料1(23重量部)とを2軸混練機で混練し、その後、混練したものを押出し機で押し出し、乾燥させた後に、MDに延伸倍率101%で延伸する1軸延伸を施すことで、厚さ100μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)および光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが10μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成して実施例4の粘着テープ100を得た。
[比較例1]
樹脂材料1を押出し機で押し出して、厚さ100μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)および光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが20μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成して比較例1の粘着テープ100を得た。
[参考例1]
樹脂材料1を押出し機で押し出して、厚さ100μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)、光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)および、導電性材料2(ベース樹脂100重量部に対して12重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが10μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成した。
次に、導電性材料3を、乾燥後の帯電防止層の厚さが0.3μmになるようにして基材4の他方の面にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の他方の面に帯電防止層を形成することで参考例1の粘着テープ100を得た。
[参考例2]
樹脂材料1を押出し機で押し出して、厚さ100μmの基材4を作製した。
次に、ベース樹脂1(100重量部)、硬化性樹脂1(ベース樹脂100重量部に対して140重量部)、架橋剤1(ベース樹脂100重量部に対して5重量部)、光重合開始剤1(ベース樹脂100重量部に対して3重量部)および、導電性材料2(ベース樹脂100重量部に対して7重量部)が配合された樹脂組成物を含有する液状材料を作製した。この液状材料を、乾燥後の粘着層2の厚さが10μmになるようにして基材4にバーコート塗工した後、80℃で10分間乾燥させて、基材4の一方の面に粘着層2を形成することで参考例2の粘着テープ100を得た。
3.評価
得られた各実施例、比較例および各参考例の粘着テープを、以下の方法で評価した。
3−1.基材の体積抵抗率の評価
各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、粘着層2に対する紫外線照射前後における基材4の体積抵抗率を、それぞれ、JIS K 6911に従って、体積抵抗値測定装置(アドバンテスト社製、「R12702B」)を用いて測定した。
なお、粘着層2の紫外線照射による硬化は、紫外線照度:55W/cm2、紫外線照射量:200mj/cm2の条件で紫外線を照射することにより行った。
3−2.基材の表面抵抗率の評価
各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、粘着層2に対する紫外線照射前後における、基材4の粘着層2側である一方の面側の表面抵抗率ならびに基材4の他方の面側の表面抵抗率を、それぞれ、IEC−61340に従って、表面抵抗値測定装置(トレック・ジャパン社製、「152P−CR」)を用いて測定した。
なお、粘着層2の紫外線照射による硬化は、紫外線照度:55W/cm2、紫外線照射量:200mj/cm2の条件で紫外線を照射することにより行った。
3−3.半導体用ウエハからの引き剥がし後におけるピーク電位の評価
各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、それぞれ、幅20mmとしたものを、長さ4インチ以上6インチ以下のシリコンウエハの切片に貼付して、3hr放置し、その後、紫外線照度:55W/cm2、紫外線照射量:200mj/cm2の条件で粘着層2に紫外線を照射した後に、粘着テープの一端を持ち、温度24℃、湿度40%Rhの条件下において180°の方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときに前記シリコンウエハにおいて測定されるピーク電位を、電圧計(Prostat社製「CVM-780」)のプローブを、粘着テープが引き剥がされた前記シリコンウエハに配置することで測定した。
そして、各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、それぞれ、測定されたピーク電位から、以下の基準にしたがって評価した。
◎:ピーク電位が 16V以下であった。
○:ピーク電位が 16V超、 40V以下であった。
△:ピーク電位が 40V超、 80V以下であった。
×:ピーク電位が 80V超 であった。
3−4.半導体用ウエハからの引き剥がし後における減衰後電位の評価
各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、それぞれ、幅20mmとしたものを、長さ4インチ以上6インチ以下のシリコンウエハの切片に貼付して、3hr放置し、その後、紫外線照度:55W/cm2、紫外線照射量:200mj/cm2の条件で粘着層2に紫外線を照射した後に、粘着テープの一端を持ち、温度24℃、湿度40%Rhの条件下において180°の方向に300mm/分の速度で引き剥がし、40sec放置した後に前記シリコンウエハにおいて測定される減衰後電位を、電圧計(Prostat社製「CVM-780」)のプローブを、粘着テープを引き剥がした40sec後に前記シリコンウエハに配置することで測定した。
そして、各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、それぞれ、測定された減衰後電位から、以下の基準にしたがって評価した。
◎:減衰後電位が 1.5V以下であった。
○:減衰後電位が 1.5V超、 5.0V以下であった。
△:減衰後電位が 5.0V超、 10V以下であった。
×:減衰後電位が 10V超 であった。
3−5.半導体チップの動作性の評価
半導体チップが作り込まれた半導体用ウエハを用意し、半導体用ウエハの半導体チップが作り込まれている面側に、各実施例、比較例および各参考例の粘着テープ100を、粘着層2を半導体用ウエハ側にして固定した。その後、半導体用ウエハを厚さ方向に基材4の途中に到達するまで切断して個片化することで縦6mm×横6mmの大きさの複数の半導体チップを得た後、60℃で基材4の面方向に粘着テープ100を120%の大きさにまで、粘着テープ100を放射状に伸ばした状態で、粘着層2に紫外線を照射することでエネルギーを付与して粘着層2を硬化させた。
次いで、半導体チップを、ニードルを用いて突き上げた状態を維持しつつ、真空コレットによる吸着により、半導体チップをピックアップし、その後、この半導体チップの動作確認を行った。
以上のような、吸着による半導体チップのピックアップを、各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、それぞれ、1000個ずつ繰り返して実施した。
そして、各実施例、比較例および各参考例の粘着テープについて、それぞれ、ピックアップされた半導体チップの動作確認の結果を、以下の基準にしたがって評価した。
◎:1000個の半導体チップのうち、
1つの半導体チップにおいても動作不良が認められなかった
〇:1000個の半導体チップのうち、
1〜2個の半導体チップにおいて動作不良が認められた
×:1000個の半導体チップのうち、
3〜5個の半導体チップにおいて動作不良が認められた
以上のようにして実施した、各種評価の評価結果を表1に示す。
表1に示したように、各実施例の粘着テープでは、基材4の粘着層2と反対側の面の表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)超、かつ、基材4の体積抵抗率が1.0×1016(Ω・m)以下に設定されており、これにより、半導体用ウエハの貼付時における半導体用ウエハ7での静電気の発生を抑制することができ、ピックアップされた半導体チップの動作不良の発生を的確に抑制または防止し得る結果を示した。
これに対して、比較例の粘着テープでは、基材4の粘着層2と反対側の面の表面抵抗率が1.0×108(Ω/□)超となっているものの、基材4の体積抵抗率を1.0×1016(Ω・m)以下に設定することができず、そのため、半導体用ウエハの貼付時に半導体用ウエハ7において静電気が生じ、これに起因して、ピックアップされた半導体チップの動作不良が生じる結果を示した。