JP6731105B2 - 硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Description
1つの実施形態においては、セルロースナノファイバーの硫黄含有率は0.01重量%〜35重量%である。
1つの実施形態においては、セルロースナノファイバーはI型結晶構造を有する。
本発明の別の局面においてはセルロースナノファイバーの製造方法が提供される。この製造方法は、ジメチルスルホキシド、無水酢酸およびプロピオン酸無水物から選択される少なくとも1つのカルボン酸無水物、ならびに、硫酸を含む解繊溶液をセルロースに浸透させてセルロースを解繊することを含む。
1つの実施形態においては、上記セルロースと上記解繊溶液との重量割合が前者/後者=0.5/99.5〜50/50である。
1つの実施形態においては、この製造方法により得られるセルロースナノファイバーはセルロースナノファイバー表面の水酸基が硫酸エステル化修飾されたセルロースナノファイバーである。
1つの実施形態においては、上記解繊溶液における硫酸の濃度は0.05重量%〜15重量%である。
1つの実施形態においては、上記解繊溶液におけるカルボン酸無水物の濃度は0.5重量%〜90重量%である。
本発明のさらに別の局面においては、修飾セルロースナノファイバーの製造方法が提供される。この製造方法は、上記の方法によりセルロースナノファイバーを製造する工程と、得られたセルロースナノファイバーをエステル化修飾化剤またはウレタン化修飾化剤とさらに反応させてセルロースナノファイバーの表面を修飾する工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記セルロースナノファイバーを製造する工程で用いる解繊溶液における硫酸の濃度は0.05重量%〜5重量%である。
1つの実施形態においては、上記エステル化修飾化剤はカルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物およびカルボン酸から選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記ウレタン化修飾化剤はイソシアネートである。
本発明のセルロースナノファイバーは、平均繊維径が1nm〜500nmであり、かつ、セルロースナノファイバー表面の水酸基が硫酸エステル化されている。このセルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバー表面の水酸基の全てが硫酸エステル化修飾されていてもよく、一部のみが硫酸エステル化修飾されていてもよい。これまで、硫酸エステル化されたセルロースとして、硫酸エステル化修飾されたセルロース誘導体が知られている。しかしながら、硫酸エステル化修飾されたセルロースナノファイバーは知られていない。本発明の硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーは、天然セルロース固有のI型結晶構造を有する。そのため、セルロースの有する優れた特性が好適に維持され得る。さらに、このセルロースナノファイバーは親水性が高く、保水性および保湿性に優れる。また、本発明の硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーは、カチオン、金属、および、無機粒子等の吸着性にも優れる。さらに、本発明の硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーは抗ウイルス性も有する。なお、後述するように、本発明の硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーは硫酸エステル化修飾率を所望の範囲に調整することができる。そのため、硫酸エステル化修飾率が高い硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーとし、任意の適切な用途にそのまま用いることができる。また、硫酸エステル化修飾率が低い硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーとし、任意の修飾反応化剤でさらに修飾した修飾セルロースナノファイバーとして用いることもできる。なお、本発明の硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーは、アセチル基またはプロピオン基等の他の官能基を有していてもよい。
測定方法:燃焼吸収―IC
測定装置:日本ダイオネクス社製のICS−1500
測定条件:磁性ボードに試料を秤量し、酸素雰囲気下(流量:1.5L/分)環状炉(1350℃)で燃焼させ、発生したガス成分を3%過酸化水素水(20ml)に吸収させて吸収液を得た。得られた吸収液を純水で100mlにメスアップし、希釈液をイオンクロマトグラフィーに供した。測定結果からセルロースナノファイバーに対する硫酸イオン濃度を算出した。さらに、下記式により硫酸イオン濃度から硫黄含有率を換算した。なお、この方法によるセルロースをベースとした硫酸イオン濃度の検出限界値は0.01重量%である。そのため、硫酸イオン濃度から換算した硫黄含有率の定量下限値は0.01重量%である。そのため、硫黄含有率が0.01重量%未満である硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーは無修飾(すなわち、硫酸エステル化修飾されていない)セルロースナノファイバーであり得る。
硫黄含有率(重量%)=硫酸イオン濃度×32/96
TI値=ηa/ηb(ηa:回転数a(rpm)の粘度、ηb:で回転数b(rpm)の粘度、回転数bは回転数aの10倍)
この実施形態においては、E型回転粘度計を使用して、25℃で回転数2.6rpmおよび26rpmにおける粘度を測定し(3回ずつ測定し、その平均値を採用)、下記式からTI(チキソトロピーインデックス)値を算出した。
TI値=(25℃、2.6rpmにおける粘度)/(25℃、26rpmにおける粘度)
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOともいう)、無水酢酸およびプロピオン酸無水物から選択される少なくとも1つのカルボン酸無水物、ならびに、硫酸を含む解繊溶液をセルロースに浸透させてセルロースを解繊させること(以下、解繊工程ともいう)を含む。本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、セルロースを機械的破砕等の前処理することを必要とせず、直接、上記解繊溶液をセルロースに浸透させて、セルロースを解繊し、ナノ化することを特徴とする。
セルロースナノファイバーの原料となるセルロースは、リンターパルプ、木材パルプ、竹パルプ等のパルプ、綿などセルロース単独の形態であってもよく、木材、竹、古紙、藁などリグニンおよびヘミセルロースなどの非セルロース成分を含む混合形態であってもよい。原料セルロースとしては、セルロースI型の結晶構造を含むセルロース物質が好ましい。セルロースI型の結晶構造を含むセルロース物質としては、例えば、木材由来セルロースパルプ、リンターパルプ、綿、セルロースパウダー、木材、竹を含む物質等が挙げられる。
B−2−1.ジメチルスルホキシド
解繊溶液に含まれるDMSOは、浸透性溶媒と解繊および修飾反応助剤として機能すると推測する。解繊溶液は、必要に応じて、DMSO以外の溶媒を含んでいてもよい。例えば、DMSO以外のスルホキシド系溶媒;ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルアセトアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド等のアミド系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル等が挙げられる。DMSO以外の溶媒を含む場合、DMSO以外の溶媒の含有割合は好ましくは解繊溶液の50重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下である。DMSO以外の溶媒の含有割合が高すぎる場合、硫酸エステル化反応速度が低下するおそれがある。
解繊溶液における硫酸濃度は解繊速度と得られる硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの繊維径および硫酸エステル化修飾率に影響を与える。解繊溶液に含まれる硫酸は、硫酸エステル化反応化剤でありながら、解繊速度を促進する役割を有し、解繊効率を向上させる。
解繊溶液における無水酢酸および/またはプロピオン酸無水物の役割は、セルロースの水酸基とエステル化反応するのではなく、DMSOと共にセルロースミクロフィブリルまたはエレメンタリーフィブリルの間に浸透し、セルロースの硫酸エステル化反応と解繊に関与し、これらを促進するものと推測される。解繊溶液における無水酢酸および/またはプロピオン酸無水物の濃度は硫酸エステル化修飾率と解繊度合に大きな影響を与え得る。なお、これらのカルボン酸無水物以外にも、以下に記載する一塩基カルボン酸(モノカルボン酸)無水物(式:R1CO−O−OCR2)を用いてもよい。好ましい一塩基カルボン酸無水物としては、飽和脂肪族モノカルボン酸無水物が挙げられる。具体的には、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、エタン酸プロピオン酸無水物などを用いることができる。なお、これらの一塩基カルボン酸無水物は無水酢酸と併用して用いてもよい。
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法では、上記解繊溶液と原料セルロースとを混合し、解繊溶液をセルロースに浸透させる。これにより、セルロースの水素結合を効率よく切断することができセルロースナノファイバー(硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを含む)が得られる。
解繊の後、解繊溶液にDMSO、硫酸ならびに無水酢酸および/またはプロピオン酸を溶解する溶媒(以下、洗浄用溶媒ともいう)を加えて硫酸エステル化修飾反応と解繊とを停止させるとともに、洗浄してセルロースナノファイバーを回収する。なお、解繊溶液を再利用することを考慮する場合、解繊の後、濾過又は圧搾等の方法で解繊溶液とセルロース成分とを分離した後、セルロース成分を洗浄用溶媒で洗浄することが好ましい。
上記の硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバー(無修飾セルロースナノファイバーを含み得る)は、親水性セルロースナノファイバーである。これらの親水性セルロースナノファイバーの疎水性を向上させるため、親水性セルロースナノファイバーをエステル化反応化剤又はウレタン化反応化剤と反応させて疎水化し、疎水化修飾セルロースナノファイバーとすることができる。本発明の疎水化修飾セルロースナノファイバー(以下、修飾セルロースナノファイバーともいう)の製造方法は、上記セルロースナノファイバーの製造方法で得られたセルロースナノファイバーをカルボン酸無水物またはカルボン酸ビニル等のエステル化修飾化剤またはイソシアネート等のウレタン化修飾化剤とさらに反応させて、セルロースナノファイバーの表面を修飾する工程を含む。
エステル化修飾化剤としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、エステル化修飾化剤は、カルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物およびカルボン酸から選択される少なくとも1種である。カルボン酸無水物およびカルボン酸ビニルが好ましい。
ウレタン化修飾化剤としては、任意の適切な化合物を用いることができ、好ましくはイソシアネート類である。イソシアネート類としては、例えば、イソシアン酸メチル、2−イソシアナトエチルアクリラート、2−イソシアナトエチルメタクリレート等の単官能基のイソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネー等のジイアソシアネート;多官能基イソシアネート等が挙げられる。
用いた原料および装置の詳細は以下の通りである。
原料セルロースとして、セルロースパルプを用いた。セルロースパルプは市販木材パルプ(Georgia Pacific社製、商品名:フラッフパルプARC48000GP、含水率:9重量%)である。
原料セルロースは、解繊前にサンプル瓶に入るサイズ(1cm〜3cm角程度)まで千切った。
無水酢酸、プロピオン酸無水物、硫酸およびDMSOはナカライテスク(株)から購入した。
スターラーは小池精密機器製作所製のマイティ・スターラー(モデルHE−20G)を用いた。なお、オーバル型の強力撹拌子を用いた。
撹拌羽を備えた200ml三口フラスコを用いた。
ペイントシェーカーは米国RED DEVIL社製の1410―00―IVF型シングルを用いた。
セルロースナノファイバーを分散するため、パナソニック社製のミキサー(商品番号:MX−X701)を用いた。
有機溶媒を用いて解繊度合を改良する場合、ミキサーに代えて、M TECHNIQUE社製のクレアミックス(製品名:CLM−0.8s、回転速度:18000rpm)を用いた。
洗浄には日立工機(株)社製の遠心分離機(製品名:CR22G)を用いた。なお、遠心分離速度は12000rpm、遠心時間が30分であった。
(セルロースナノファイバーの形状観察)
セルロースナノファイバーの形状はFE−SEM(日本電子(株)製、製品名:「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察した。なお、平均繊維径は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出した。
得られたセルロースナノファイバーの結晶化度は、参考文献(Textile Res. J. 29:786−794(1959))の記載に基づき、XRD分析法(Segal法)により測定し、下記式により算出した。
結晶化度(%)=[(I200−IAM)/I200]×100%
[式中、I200はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、IAMはアモルファス部(002面と110面間の最低部、回折角2θ=18.5°)の回折強度である]。
一部のサンプルをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で分析し、セルロースナノファイバーの変性の有無を確認した。なお、測定は、NICOLET iS50 FT―IR Spectrometerを用い、反射モードで分析した。
調製したセルロースナノファイバーを蒸留水に分散して、実施例1〜8では0.5重量%の水分散液を、実施例9〜27では0.3重量%の水分散液をそれぞれ調製し、目視で透明性を観察した。分散液の透明性はセルロースナノファイバーの繊維径を反映する。すなわち、セルロースナノファイバーの繊維径が小さくなるほど、分散液の透明性が高くなる。
セルロースナノファイバーの0.5重量%の水分散液(実施例1〜8)または0.3重量%水溶液(実施例9〜30)の粘度は下記方法(JIS Z880準拠)でBROOKFIELD社製DV−III RHEOMETER(スピンドルCPE−42I)を用いて測定した。実施例1〜8で得られたセルロースナノファイバーは、水に分散させて濃度0.5重量%の水分散液を調製し、25℃の温度下で回転数5rpmにおける粘度を測定した。また、実施例9〜30で得られたセルロースナノファイバーは、水に分散させて濃度0.3重量%の水分散液を調製し、25℃の温度下で回転数2.6rpmにおける粘度を測定した。
TI値は下記方法(JIS K 6833準拠)で粘度を測定して求めた。実施例1〜8で得られたセルロースナノファイアバーは、BROOKFIELD社製DV−III RHEOMETER(スピンドルCPE−42I)を使用して、25℃で回転数10rpmおよび100rpmにおける粘度(3回ずつ測定し、その平均値を採用)を測定し、下記式からTI(チキソトロピーインデックス)値を算出した。なお、硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの濃度は0.3重量%である。
TI値=(25℃、10rpmにおける粘度)/(25℃、100rpmにおける粘度)
同様に、実施例9〜30で得られたセルロースナノファイバーは、回転数を2.6rpmおよび26rpmに変更した以外は上記と同様にして粘度(3回ずつ測定し、その平均値を採用)を測定し、下記式からTI(チキソトロピーインデックス)値を算出した。なお、硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの濃度は0.3重量%である。
TI値=(25℃、2.6rpmにおける粘度)/(25℃、26rpmにおける粘度)
セルロースナノファイバーの水分散液3gを採取し、ポリプロピレン(PP)ケースにキャストして105℃の送風乾燥機内で5時間乾燥した。乾燥後の重さを秤量し、分散液中のセルロースナノファイバー濃度を算出した。分散液中のセルロースナノファイバー濃度と分散液の重さに基づきセルロースナノファイバーの収量を算出した。セルロースナノファイバーの収量と用いたセルロースパルプの重さからセルロースナノファイバーの収率を算出した。
燃焼吸収―IC法を用いて硫黄含有率を定量した。すなわち、磁性ボードに乾燥した硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバー(0.01g)を入れ、酸素雰囲気(流量:1.5L/分)環状炉(1350℃)にて燃焼させ、発生したガス成分を3%過酸化水素水(20ml)に吸収させた。得られた吸収液を純水で100mlにメスアップし、希釈液のイオンクロマトグラフィー測定結果から硫酸イオン濃度(重量%)を算出した。下記式により硫酸イオン濃度から硫黄含有率を換算した。分析には、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、イオンクロマトグラフ ICS−1500型を用いた。
硫黄含有率(重量%)=硫酸イオン濃度×32/96
セルロースナノファイバーの表面修飾率は、平均置換度で示し、固体NMRにより測定した。測定モ−ドとして、固体13C−CP/MAS法と固体DP/MAS法の2法を併用した。なお、平均置換度とは、セルロースの繰り返し単位1個当たりの修飾された水酸基の数(置換基の数)の平均値(平均置換度)である。
さらに、乾燥した修飾セルロースナノファイバーをFT−IR(ATRモード)で分析し、周波数1730cm−1のカルボニル基に由来する吸収バンドの有無により修飾有無の確認、および、平均置換度の相対比較を行った。なお、測定は、NICOLET社製「NICOLET MAGNA−IR760 Spectrometer」を用い、反射モードで分析した。
DMSO9g、無水酢酸1.5g(解繊溶液における濃度:14重量%)および硫酸0.2g(解繊溶液における濃度:1.87重量%)を20mlのサンプル瓶に入れ、23℃の室温下で磁性スターラーを用いて約30秒撹拌し、解繊溶液を調製した。
次いで、セルロースパルプ0.3gを加え、同じ室温でさらに60分撹拌した。撹拌後、0.2重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液160mlの中にセルロースを含む解繊溶液を添加・混合し、硫酸を中和した。その後、遠心分離により上澄みを除いた。さらに蒸留水80mlとエタノール80mlを加えて均一分散するまで撹拌した後、同じ遠心条件で遠心分離して上澄みを除いた。同じ手順を繰り返し3回洗浄した。なお、遠心分離の速度は12000rpm、遠心分離時間は50分であった。遠心分離により洗浄した後に蒸留水を加え、全体の重さが50gになるまで希釈した。次に、ミキサーを用いて3分撹拌することにより均一なセルロースナノファイバーの水分散液を得た。得られた水分散液は、固形分(セルロースナノファイバー)0.534重量%であり、外観は透明ゲル状の溶液であった。水分散液の外観を図1に示す。また、セルロースナノファイバーの収率は89%であった。結果を表1に示す。
無水酢酸の添加量を1g(解繊溶液における濃度:9.9重量%)、硫酸の添加量を0.13g(解繊溶液における濃度:1.28重量%)、処理時間を110分とした以外は実施例1と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。
得られたセルロースナノファイバーを実施例1と同様に評価した。得られた分散液の外観は実施例1とほぼ同等な透明ゲル状であり、セルロースナノファイバー濃度が0.546重量%であった。SEM写真を図6に示す。SEM観察の結果、得られた繊維の平均繊維径はほぼ10nm以下であり、繊維径が20nm以上のナノファイバーまたは微細繊維は実質的に含まれていなかった。また、このセルロースナノファイバーの0.3重量%水分散液の25℃における粘度は1690mPa・sであり、TI値は11.0であった。セルロースナノファイバーの結晶化度は78%であった。また、セルロースナノファイバーの収率は91%であった。結果を表1に示す。また、得られたセルロースナノファイバーの硫黄含有率は2.8重量%であった。
無水酢酸の添加量を1.2g(解繊溶液における濃度:11.7重量%)、硫酸の添加量を0.09g(解繊溶液における濃度:0.87重量%)に変更した以外は実施例2と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。なお、硫酸を中和するため、0.1重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液150mlを用いた。
得られたセルロースナノファイバーを実施例2と同様に評価した。得られた分散液の外観は実施例1とほぼ同等な透明ゲル状であり、セルロースナノファイバー濃度が0.540重量%の水分散液が得られた。SEM写真を図7に示す。得られた繊維の平均繊維径は10nm以下であり、繊維径が20nm以上のナノファイバーまたは微細繊維は実質的に含まれていなかった。また、このセルロースナノファイバーの0.3重量%水分散液の25℃における粘度は1801mPa・sであり、TI値は11.2であった。セルロースナノファイバーの結晶化度は80%であった。セルロースナノファイバーの収率は90%であった。結果を表1に示す。また、得られたセルロースナノファイバーの硫黄含有率は2.6重量%であった。
無水酢酸の添加量を0.5g(解繊溶液における濃度:5.2重量%)、硫酸の添加量を0.1g(解繊溶液における濃度:1.04重量%)に変更した以外は実施例3と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。
得られたセルロースナノファイバーを実施例3と同様に評価した。得られた分散液の外観はやや白濁なゲル状であり(図1)、セルロースナノファイバー濃度が0.558重量%の水分散液が得られた。SEM写真を図8(a)に、IRスペクトルを図8(b)にそれぞれ示す。得られた繊維の繊維径は数nm〜100nmであった。また、このセルロースナノファイバーの0.3重量%水分散液の25℃における粘度は1294mPa・sであり、TI値は7.8であった。ナノファイバーの結晶化度は80%であった。セルロースナノファイバーの収率は93%であった。結果を表1に示す。また、得られたセルロースナノファイバーの硫黄含有率は1.5重量%であった。
無水酢酸の添加量を1g(解繊溶液における濃度:9.9重量%)、硫酸の添加量を0.06g(解繊溶液における濃度:0.6重量%)に変更した以外は実施例4と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。
得られたセルロースナノファイバーの水分散液の外観、SEM写真での像は実施例4とほぼ同等であった。水分散液のセルロースナノファイバー濃度は0.552重量%であった。また、このセルロースナノファイバーの0.3重量%水分散液の25℃における粘度は1312mPa・sであり、TI値は8.8であった。ナノファイバーの結晶化度は81%であった。セルロースナノファイバーの収率は92%であった。結果を表1に示す。また、得られたセルロースナノファイバーの硫黄含有率は1.6重量%であった。
無水酢酸の添加量を0.5g(解繊溶液における濃度:5.2重量%)に変更した以外は実施例5と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。
得られたセルロースナノファイバーの水分散液は白濁溶液状の分散液であり、セルロースナノファイバー濃度は0.576重量%であった(図1)。SEMの観察により、得られた繊維の繊維径は数nm〜数百nmであることが判明した。また、このセルロースナノファイバーの0.3重量%水分散液の25℃における粘度は350mPa・sであり、TI値は3.0であった。ナノファイバーの結晶化度は83%であった。セルロースナノファイバーの収率は96%であった。結果を表1に示す。また、得られたセルロースナノファイバーの硫黄含有率は1.3重量%であった。
解繊溶液に無水酢酸を添加しなかった以外は実施例2と同様にしてセルロースの解繊を行った。
得られた解繊物を光学顕微鏡で観察した。パルプは繊維状まで解されていたが、ほとんどの繊維がミクロンオーダーであった。わずかな繊維は繊維径が20nm以下であった。得られた水分散液は室温で1時間放置すると沈殿した。そのため、粘度の測定ができなかった。結果を表1に示す。
解繊溶液に硫酸を添加しなかった以外は実施例2と同様にしてセルロースの解繊を行った。
得られた解繊物を分析した結果、比較例1で得られた解繊物とほぼ同等であった。結果を表1に示す。
実施例2と同じ解繊条件でセルロースパルプを解繊し、スラリー状のセルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバーをそのままガラス基板上に塗布し、ガラス基板ごとをアセトンに浸漬した。約30分後、ゲル状のセルロースナノファイバーフィルムが得られた。得られたフィルムを85℃の送風乾燥機で水分率が50重量%になるまで乾燥した。次いで、メタノール浴に入れ、残留したジメチルスルホキシド、硫酸または酢酸を置換し、再び85℃の乾燥機で全乾まで乾燥し、セルロースナノファイバーフィルムを得た。
実施例2と同じ解繊条件でセルロースパルプを解繊し、スラリー状のセルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバーをそのまま5mlのシリンジで吸い込んだ後、アセトン浴に押し出した。約30分後、ゲル状のセルロースナノファイバーが得られた。得られた繊維を85℃の送風乾燥機で水分率が50重量%まで乾燥した。次いで、メタノール浴に入れ、残留したジメチルスルホキシド、硫酸または酢酸を置換し、再び85℃の乾燥機で全乾まで乾燥し、セルロースナノファイバー繊維を得た。
DMSO18g、無水酢酸2g(解繊溶液における濃度:9.9重量%)と硫酸0.15g(解繊溶液における濃度:0.74重量%)を50mlのサンプル瓶に入れ、23℃の室温下、磁性スターラーで約30秒撹拌し、解繊溶液を調製した。
次に、セルロースパルプ0.6gを加え、23℃の室温で80分撹拌した。撹拌した混合物を炭酸水素ナトリウム3gと蒸留水400mlから調製した水溶液の中に加え、室温で10分間混ぜた後、遠心分離により上澄みを除いた。次いで、蒸留水400mlを加えて均一分散するまで撹拌し、上記と同じ条件で遠心分離し、上澄みを除いた。同じ手順を繰り返し、4回洗浄した。遠心分離により洗浄した後に蒸留水を加え、全体の重量が150gになるまで希釈した。次に、ミキサーを用いて3分撹拌することにより均一なセルロースナノファイバーの水分散液を得た。
得られた水分散液の外観を図9に示す。セルロースナノファイバーの水分散液は半透明なゲルであった。そのIRスペクトルを図10に、XRDパターンを図11に、SEM写真を図12にそれぞれ示す。図10のIRスペクトルからアシル化修飾に関わるカルボニル基の吸収バンド(1730cm−1)が検出されず、代わりに−O−SO3 −1の吸収バンド(1250cm−1、820cm−1)が検出された。これらの吸収バンドは硫酸エステル基による特徴的なバンドであると考えられる。このことから、硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーが得られたことを確認した。
図11のXRDパターンにより天然セルロースのI型結晶構造が確認できた。図12のSEM写真が示すように、50000倍拡大することにより、直径5nm以下のナノファイバーが観察できた。硫黄含有率、結晶化度、粘度とチキソトロピー指数の評価結果を表2に示す。また、分散液の粘度は2030mPa.sであり、TI値は8.6であった。
DMSOの添加量を15gに、無水酢酸の添加量5g(解繊溶液における濃度:24.8重量%)にそれぞれ変更した以外、実施例9と同様にして硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。
得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液の外観を図9に、IRスペクトルを図10に、SEM写真を図13にそれぞれ示す。硫黄含有率、結晶化度、粘度とチキソトロピー指数の評価結果を表2に示す。実施例9と同様にIRスペクトルからアシル化修飾に関わるカルボニル基の吸収バンドが確認できなかった。一方、吸収バンド(1250cm−1および820cm−1)の強度は実施例9に比べて明らかに大きくなった。硫黄含有率の分析結果も硫酸エステル化修飾率が実施例9より大きくなることを示した。分散液の透明性、粘度とチキソトロピー指数のいずれも実施例9に比べ高かった。
DMSOの添加量を13gに、無水酢酸の添加量を7g(解繊溶液における濃度:34.5重量%)にそれぞれ変更した以外は、実施例9と同様にして硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。
得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液の外観を図9に、IRスペクトルを図10にそれぞれ示す。また、硫黄含有率、結晶化度、粘度およびTI値の評価結果を表2に示す。IRスペクトルの吸収バンド(1250cm−1および820cm−1)の強度と硫黄分析結果のいずれも硫酸エステル化修飾率が実施例10より大きくなることを示した。
DMSOの添加量を10gに、無水酢酸の添加量を10g(解繊溶液における濃度:49.6重量%)にそれぞれ変更した以外、実施例9と同様にして硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。
得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液の外観を図9に、IRスペクトルを図10に、SEM写真を図14にそれぞれ示す。また、硫黄含有率、結晶化度、粘度、および、TI値の評価結果を表2に示す。実施例11に比べ、分散液の透明性が低下した。しかし、IRスペクトルの吸収バンド吸収バンド1250cm−1および820cm−1の強度と硫黄分析結果のいずれも硫酸エステル化修飾率が実施例11とほぼ同等であることを示した。
反応(撹拌)時間を150分に変更した以外、実施例9と同様にして硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。
得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液の外観を図15に、IRスペクトルを図16にそれぞれ示す。また、硫黄含有率、結晶化度、粘度とチキソトロピー指数の評価結果を表2に示す。分散液の透明性は実施例9に比べ高かった。硫酸エステル化修飾率も実施例9より大きくなった。
表2に示すDMSO、無水酢酸と硫酸の量を秤量し、50mlのサンプル瓶に入れた後、実施例9と同様に硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液の外観を図17(実施例14および15)に、IRスペクトルを図16(実施例14および15)および図18(実施例16および17)に示す。また、硫黄含有率、結晶化度、粘度とチキソトロピー指数の評価結果を表2に示す。
なお、各実施例で用いた解繊溶液における無水酢酸および硫酸の濃度は以下の通りである。
実施例14の解繊溶液(無水酢酸の濃度:9.8重量%、硫酸の濃度:2.4重量%)
実施例15の解繊溶液(無水酢酸の濃度:19.5重量%、硫酸の濃度:2.4重量%)
実施例16の解繊溶液(無水酢酸の濃度:10重量%、硫酸の濃度:0.5重量%)
実施例17の解繊溶液(無水酢酸の濃度:9.9重量%、硫酸の濃度:1.3重量%)
表2に示す量のDMSO、無水酢酸、硫酸、および、セルロースパルプを秤量し、径5mmのジルコニアビーズ250gと一緒に140mlのマヨネーズ瓶に入れ、23℃の室温下でペイントシェーカーを用いて80分処理した。次いで、実施例9と同様に中和、洗浄し、硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。得られた硫酸エステル化修飾セルロースのIRスペクトルを図18に示す。また、硫黄含有率、結晶化度、粘度とチキソトロピー指数の評価結果を表2に示す。
DMSO18gと無水酢酸2gに代えて、DMSO16gとプロピオン酸無水物4g(解繊溶液におけるプロピオン酸無水物濃度:19.7重量%)を用いた以外実施例17と同様に硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。得られた硫酸エステル化修飾セルロースのSEM写真を図19に、評価結果を表2にそれぞれ示す。
DMSOの添加量を7gに、無水酢酸の添加量を13g(解繊溶液における無水酢酸濃度:63重量%)にそれぞれ変更した以外、実施例9と同様にして硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。評価結果を表2に示す。
フラスコ攪拌法を用いた以外は実施例17と同様にして硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを調製した。すなわち、DMSO、無水酢酸と硫酸とパルプを順次200mlのフラスコに入れ、23℃の室温下、撹拌羽を供えた撹拌棒で2.5時間撹拌した以外は実施例2と同様にしてセルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバーを実施例17と同様に評価した。SEM観察の結果、得られたセルロースナノファイバーの繊維径は実施例17のセルロースナノファイバーとほぼ同様であり、繊維径が20nm以上のナノファイバーは実質的に含まれていなかった。
中和するためのアルカリ物質として、炭酸水素ナトリウム3gに代えてピリジン50gを用いた以外は実施例19と同様に硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバーは実施例21で得られたセルロースナノファイバーに比べ、エタノール等のアルコール類溶媒によく分散した。それ以外の評価結果は実施例19とほぼ同等であった。
無水酢酸を添加しない以外は実施例9と同様にしてセルロースの解繊を行った。得られた解繊物を光学顕微鏡で観察した。パルプは繊維状まで解されたが、ほとんどの繊維はミクロンオーダーとなった。わずかな繊維は繊維径が20nm以下であった。得られた繊維の水分散液は室温で1時間放置すると沈殿した。そのため、粘度の測定ができなかった。
硫酸を添加しない以外は実施例9と同様にしてセルロースの解繊を行った。得られた解繊物を分析した結果、比較例3で得られた解繊物とほぼ同等であった。
実施例10で調製した硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液をポリプロピレンケースにキャスティングし、室温で放置し、水を蒸発した。得られたフィルムの外観と物性評価結果を図20に示す。フィルムの可視光透過率は86%、引張弾性率は4950MPa、強度が106MPa、歪みは5.5%であった。
実施例10で調製した硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの水分散液を50mlのシリンジで吸い込んだ後、1重量%の酢酸カルシウム水溶液に押し出した。約10分間放置することにより、透明ゲル状の糸が得られた。得られた糸を55℃の送風乾燥機で6時間乾燥することにより硫酸エステル修飾セルロースナノファイバーを含む繊維を得た。
ジメチルスルホキシド(DMSO)18g、無水酢酸2g(解繊溶液における濃度:9.9重量%)と硫酸0.15g(解繊溶液における濃度:0.74重量%)を50mlのサンプル瓶に入れ、23℃の室温下、磁性スターラーで約30秒間撹拌し、解繊溶液を得た。
次いで、解繊溶液にセルロースパルプ0.6gを加え、23℃の室温で80分撹拌した。次いで、圧搾法を用いて蒸留水で3回繰り返し洗浄した後、炭酸カリウム0.5gおよび蒸留水400mlから調製した水溶液の中にセルロースを含む解繊溶液を加え、室温で10分間混合した。その後、同様に圧搾法を用いて蒸留水で3回繰り返し洗浄して中性のセルロースナノファイバーを得た。
得られたセルロースナノファイバーを蒸留水に再分散して0.3重量%の水分散液を調製し、ミキサーを用いて3分間撹拌することによりセルロースナノファイバーの水分散液を得た。
得られた水分散液の外観とSEM写真を図21に示す。セルロースナノファイバーの水分散液は半透明なゲルであり、得られた繊維の平均繊維径は10nm以下であった。IRスペクトルを図22に、XRDパターンを図23にそれぞれ示す。図22のIRスペクトルからわかるように、アセチル化修飾に関わるカルボニル基の吸収バンド(1730cm−1)が検出されず、代わりに−O−SO3 −1の吸収バンド(1250cm−1)が検出された。1250cm−1吸収バンドは硫酸エステル官能基由来と考える。図23のXRDパターンから、天然セルロースのI型結晶構造を確認できた。硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。なお、得られたセルロースナノファイバーの硫黄含有率は2.1重量%(硫酸エステル基の置換度は0.12)であった。
なお、実施例25から実施例30はアセチル化修飾セルロースナノファイバーの製造方法に関する実施例であり、アセチル化修飾率として平均置換度を用いたことに伴い、硫酸エステル化修飾率も平均置換度として評価した。
次いで、メタノールと水の混合液に、得られたアセチル化修飾セルロースナノファイバーを分散させ、溶液のpHが8.5になるまで炭酸カリウムの水溶液を加えた。次に上記と同じ条件で、遠心分離を3回繰り返し、洗浄した。得られたアセチル化修飾セルロースナノファイバーのIRスペクトルを図24に、平均置換度とXRDを測定した結果を表4に示す。図24のIRスペクトルにはアセチル化修飾に関わるカルボニル基の吸収バンド(1730cm−1)が、明確に現れていた。本実施例においては、表面水酸基の一部は硫酸エステル化、残る水酸基のほとんどがエステル化修飾(アセチル化修飾)されていると考えられた。
反応(解繊)時間を60分に変更した以外、実施例25の解繊工程と同様にしてセルロースナノファイバーを調製した。得られたセルロースナノファイバーの水分散液の外観およびSEM写真を図25に、IRスペクトルを図26に、XRDパターンを図27にそれぞれ示す。硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。なお、この実施例で得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの硫黄含有率は0.01重量%未満であった。
無水酢酸の添加量を1g(解繊溶液における濃度:5.2重量%)に変更した以外、実施例25の解繊工程と同様にしてセルロースナノファイバーを調製した。得られたセルロースナノファイバーのSEM写真を図28に、IRスペクトルを図29にそれぞれ示す。硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。なお、この実施例で得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの硫黄含有率は0.01重量%未満であった。
硫酸の添加量を0.1g(解繊溶液における濃度:0.5重量%)に変更したこと、反応時間を150分に変更したこと以外、実施例25と同様にしてセルロースナノファイバーを調製した。得られたセルロースナノファイバーのほとんどは繊維径が10nm以下のものであった。硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。なお、得られた硫酸エステル化修飾セルロースナノファイバーの硫黄含有率は2.0重量%であった。
硫酸の添加量を0.26g(解繊溶液における濃度:1.28重量%)に変更した以外、実施例26の解繊工程と同様にしてセルロースナノファイバーを調製した。得られたセルロースナノファイバーのほとんどは繊維径が20nm以下のものであった。硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。
DMSO45g、無水酢酸2.5g(解繊溶液における濃度:5.2重量%)と硫酸0.5g(解繊溶液における濃度:1.04重量%)を250mlのアイボーイに加え、そこにφ5mmのジルコニアビーズ250gを入れてペイントシェーカー(RED DEVID)で23℃の室温下で120分シェーキィングしたこと以外は実施例25の解繊工程と同様にして、解繊、中和、洗浄をした。なお、中和用の炭酸カリウムの添加量は3gであった。得られたセルロースナノファイバーのSEM写真を図30に、IRスペクトルを図31にそれぞれ示す。硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。
無水酢酸を添加しなかった以外、実施例25の解繊工程と同様にして解繊を行った。得られたセルロースの解繊物のSEM写真を図32、硫酸エステル基の平均置換度と結晶化度の評価結果を表3に示す。SEM写真からセルロース繊維がほとんど残ることが判明した。
Claims (9)
- ジメチルスルホキシド、無水酢酸およびプロピオン酸無水物から選択される少なくとも1つのカルボン酸無水物、ならびに、硫酸を含む解繊溶液をセルロースに浸透させてセルロースを解繊することを含む、セルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記セルロースと前記解繊溶液との重量割合が前者/後者=0.5/99.5〜50/50である、請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 得られるセルロースナノファイバーがセルロースナノファイバーの表面の水酸基が硫酸エステル化修飾されたセルロースナノファイバーである、請求項1または2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記解繊溶液における硫酸の濃度が0.05重量%〜15重量%である、請求項1から3のいずれかに記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記解繊溶液におけるカルボン酸無水物の濃度が0.5重量%〜90重量%である、請求項1から4のいずれかに記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の方法によりセルロースナノファイバーを製造する工程と、
得られたセルロースナノファイバーをエステル化修飾化剤またはウレタン化修飾化剤とさらに反応させてセルロースナノファイバーの表面を修飾する工程とを含む、修飾セルロースナノファイバーの製造方法。 - 前記セルロースナノファイバーを製造する工程で用いる解繊溶液における硫酸の濃度が0.05重量%〜5重量%である、請求項6に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記エステル化修飾化剤がカルボン酸無水物、カルボン酸ビニル、カルボン酸ハロゲン化物およびカルボン酸から選択される少なくとも1種である、請求項6または7に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記ウレタン化修飾化剤がイソシアネートである、請求項6または7に記載の修飾セルロースナノファイバーの製造方法。
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