JP6966606B2 - C6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維およびc6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

C6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維およびc6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、C6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維およびC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法に関する。
セルロースナノファイバー(CNF)とは、植物起因のセルロースをナノ化処理(機械的解繊やTEMPO触媒酸化など)した、繊維幅が数〜数十nm、繊維長が数百nmの微小繊維である。CNFが軽量、高弾性、高強度、低線熱膨張性を有していることから、CNFを含有する複合材料の利用が、工業分野のみならず食品分野や医療分野など様々な分野で期待されている。木材を例にさらに詳説すると、木材中のセルロースは、セルロース30〜40分子が束となった約3nmの超極細幅の高結晶性のミクロフィブリルを形成し植物体を構成している。このセルロース
の構造が維持されたセルロース繊維の集合体であるセルロースナノファイバーは上記特性を発現することができる。とくにセルロースミクロフィブリルレベルに繊維幅が細いセルロースナノファイバー材料は、膨大な比表面積や高アスペクト比、高透明性という特性を有するために様々な応用展開が期待されている。
CNFを機械的に解繊処理する場合、セルロース繊維間が水素結合で強固に結合しているため、CNFを得るまでに大きなエネルギーが必要であった。また、得られたCNFは、繊維長等にばらつきが生じるといった問題があった。さらに、高圧ホモジナイザーやディスクミルといった機械的な解繊処理だけでは、どれほど処理回数を重ねても得られるナノセルロースの繊維幅は最小で数十nmである。そのために、植物繊維を構成するミクロフィブリル(木材の場合は約3nm)に相当する細さの繊維は得られず、高透明性や、高アスペクト比等の特性を発現できないという問題もあった。
そこで、機械的な解繊処理工程を行う前に、予めパルプを構成するセルロース繊維をある程度ほぐした状態にする化学処理工程を行う製法が開発されている(特許文献1〜4)。この製法を使用すれば、パルプを直接機械処理する製法と比べて少ないエネルギーでCNFを得ることができる。しかも、得られたCNFのサイズのばらつきを抑制できるという利点が得られる。
例えば、特許文献1〜3には、パルプを硫酸や過硫酸、塩素系酸化剤などの強酸を用いて化学処理した後、得られたパルプスラリーを解繊機等に供給してCNFを得るという製法が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3のような製法では、化学処理工程において硫酸や過硫酸等を用いるので、取り扱い性の煩雑さに加え、反応後の排水処理の問題や、設備の配管等が腐食するなどの問題が発生している。
また、塩素系酸化剤を使用する場合には、反応時に発生する塩素による環境への影響が懸念されている。さらに、これらの前処理を行った後のパルプは、得られるナノセルロースが高い透明性を有するかは明らかになっていない。
一方、特許文献4には、パルプをリン酸塩と尿素を用いて化学処理した後、得られたパルプスラリーを解繊機等に供給してCNFを得るという製法が開示されている。かかる製法を使用すれば、化学処理工程において硫酸などの強酸を使用する場合に発生する問題を解消することができる。しかも、得られたCNFの表面の水酸基の一部にリン酸エステルを導入できるので、水溶媒中での分散性を向上させることができる旨が記載されている。
また、特許文献4には、固形分濃度0.2質量%に調製することにより透明性の高い(ヘイズ値が5〜15%)CNFを製造することができる旨が記載されている。
特開2017−43677号公報 特開2017−8472号公報 特開2017−25240号公報 特開2017−25468号公報
しかるに、特許文献4の技術では、透明性に関する記載はあるものの、固形分濃度が0.2質量%の際のものである。また、特許文献4には、得られるCNFの繊維長に関する具体的な記載はなく、化学処理後のパルプの解繊性についての具体的な記載もない。さらに、化学処理後のパルプ(セルロースやヘミセルロース)のどの部分に重点的に官能基が導入されているかも不明である。つまり、上記特性(繊維幅の細さ、高透明性)を有するナノセルロースを得るための効率的なセルロースの誘導体化には、セルロースミクロフィブリル表面への化学修飾、特にC6位の水酸基の化学修飾が必要とされているが、特許文献4には、これらに関する記載もなければ示唆もない。
本発明は上記事情に鑑み、透明性に優れたスルホン化微細セルロース繊維、このスルホン化微細セルロース繊維に適したスルホン化パルプ繊維、これら繊維の製造方法およびかかるスルホン化パルプ繊維を含有する誘導体パルプを提供することを目的とする。
本発明のスルホン化パルプ繊維は、分散液の高粘度化に用いられる微細セルロース繊維用のパルプ繊維であり、該パルプ繊維は、セルロース繊維の水酸基の一部がスルホ基で置換したものであり、繊維形状を維持したまま、前記スルホ基に起因する硫黄導入量が0.42mmol/gよりも高く、該パルプ繊維の保水度が250%以上であり、前記セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基が、前記スルホ基で置換したものであることを特徴とする。
本発明のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基がスルホ基で置換した微細セルロース繊維であり、該微細セルロース繊維は、前記スルホ基の導入量が0.42mmol/g〜3.0mmol/g、平均繊維幅が20nm以下、水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液での、B型粘度計を用いて、20℃、回転数6rpm、3分間回転させることで測定される粘度が10,000mPa・s以上、水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液でのヘイズ値が20%以下または水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液での全光線透過率が90%以上、であることを特徴とする。
本発明の誘導体パルプは、複数の繊維からなるパルプであって、複数の繊維が、本発明のスルホン化パルプ繊維を含んでいることを特徴とする。
本発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基が、前記スルホ基で置換したスルホン化パルプ繊維の製造する方法であり、前記パルプを化学的に処理する化学処理工程を含んでおり、該化学処理工程が、前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルファミン酸と尿素を水に溶解させた反応液に接触させる接触工程と、該接触工程後の非絶乾状態のパルプを反応工程に供給し、該反応工程において、パルプ繊維を構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する工程と、を順に行い該反応工程では、前記接触工程後の前記反応液が接触した状態のパルプ繊維を反応温度100℃〜180℃、反応時間1分以上で加熱して反応を進行させる工程を含み、得られるスルホン化パルプ繊維の重合度が、反応前後の重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度)において50%以上であることを特徴とする。
本発明のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基がスルホ基で置換した平均繊維径が20nm以下、スルホ基の導入量が0.42mmol/gよりも高いスルホン化微細セルロース繊維を製造する方法であり、前記パルプを化学的に処理する化学処理工程と、該化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法であり、前記化学処理工程が、前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルファミン酸と尿素を水に溶解させた反応液に接触させる接触工程と、該接触工程後のパルプを構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を順に行い、該反応工程において、反応前後の繊維の重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度)が50%以上となるように調整し、前記微細化処理工程において、微細化前後の繊維の重合度比(微細化処理後の重合度/微細化処理前の重合度)が85%以下、微細化後の繊維の重合度が300〜1000、となるように解繊することを特徴とする。
本発明のスルホン化パルプ繊維によれば、繊維形状を維持したまま所定の値以上の保水性を有しかつ所定の水酸基にスルホ基が置換されているので、取り扱い性の自由度を向上させることができる。
本発明の誘導体パルプによれば、平均繊維長が長く、所定の値以上の保水度を有するパルプ繊維を含んでいるので、取り扱い性の自由度を向上させることができる。
本発明のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維によれば、所定の水酸基にスルホ基が置換されているので、微細セルロース繊維を分散液に分散させた状態における粘性および透明性を向上させることができる。
本発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法によれば、パルプに対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を接触させて反応させることによって、取り扱い性に優れたスルホン化パルプ繊維を製造することができる。また、短い反応時間でもセルロース繊維の水酸基に対してスルホ基を適切に導入させることができる。
本発明のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法によれば、パルプに対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を接触させて反応させることによって、優れた粘性および優れた透明性を有するスルホン化微細セルロース繊維を製造することができる。
本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維、スルホン化パルプ繊維および誘導体パルプの製造方法の概略フロー図である。 実験結果を示したグラフであり、硫黄導入量と保水度を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、保水度を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、繊維長を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、反応条件(温度と時間)に関するものである。 実験結果を示したグラフであり、反応条件(温度と時間)に関するものである。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の繊維表面の拡大写真である。 実験結果を示したグラフであり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の配向強度に関するものである。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の繊維表面の拡大写真である。 実験結果を示した図であり、解繊状況を示した図である。 実験結果を示した図であり、白色度を示した図である。 実験結果を示したグラフであり、透明性に関するものである。 実験結果を示したグラフであり、透明性に関するものである。 実験結果を示したグラフであり、重合度を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、保水度と解繊の関係性を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、保水度と解繊の関係性を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、保水度と解繊の関係性を示したものである。 実験結果を示したグラフであり、解繊時の固形分濃度と解繊の関係性を示したものである。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のFT−IRの測定結果を示した図である。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維に相当するナノセルロース繊維の電気伝導度測定の測定結果を示した図である。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のNMR測定の測定結果を示した図である。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維とNBKPのX線回折結果を示した図である。 実験結果を示した図であり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当するスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維と本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維に相当するナノセルロース繊維のX線回折結果を示した図である。 実験結果を示した図であり、本実施形態の本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維に相当するナノセルロース繊維の表面の拡大写真である。 実験結果を示した図であり、スルホ基のC6位への導入方法についての概略説明図である。
以下では、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維および誘導体パルプ(以下、それぞれを単に、スルホン化パルプ繊維および誘導体パルプという)は、取り扱い性を向上させることができるようにしたことに特徴を有している。とくに、スルホン化パルプ繊維、誘導体パルプは、微細化処理することにより得られる本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維を液体に分散した分散液が高粘度化するようにしたことに特徴を有している。
本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維(以下、単にスルホン化微細セルロース繊維という)は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であって、液体に分散した分散液が優れた粘性、透明性を有するようにしたことに特徴を有している。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法(以下、スルホン化パルプ繊維製法という)は、取り扱い性に優れたスルホン化パルプ繊維を製造することができるようにしたことに特徴を有している。とくに、スルホン化パルプ繊維製法により得られたスルホン化パルプ繊維、誘導体パルプは、微細化処理することにより得られるスルホン化微細セルロース繊維を液体に分散した分散液が高粘度化するようにしたことに特徴を有している。
本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法(以下、スルホン化微細セルロース繊維製法という)は、液体に分散した分散液が、粘性、透明性に優れ、繊維同士のからみあいを向上させたスルホン化微細セルロース繊維を効率的に製造することができるようにしたことに特徴を有している。とくに、スルホン化微細セルロース繊維製法は、スルホン化パルプ繊維製法で製造されたスルホン化パルプ繊維を微細化することにより、簡単にしかも適切に所望の特性を有する微細セルロース繊維を製造することができる。
以下では、まず、スルホン化パルプ繊維、誘導体パルプおよびスルホン化微細セルロース繊維の実施形態について説明した後、スルホン化パルプ繊維製法およびスルホン化微細セルロース繊維製法の実施形態について説明する。
<スルホン化パルプ繊維>
スルホン化パルプ繊維は、複数のセルロース繊維からなるパルプ繊維であって、含有するセルロース繊維を構成するセルロース(D−グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の水酸基(−OH基)の少なくとも一部が下記式(1)で示されるスルホ基でスルホン化されたものである。つまり、スルホン化パルプ繊維は、セルロース繊維の水酸基の一部が、スルホ基で置換されたものである。
具体的には、スルホン化パルプ繊維は、スルホ基を導入することによって、かかる繊維の親水性が向上するようにしたものである。
(−SO r・Zr+ (1)
(ここで、rは、独立した1〜3の自然数であり、Zr+は、r=1のとき、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、r=2または3のとき、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
なお、スルホン化パルプ繊維の親水性は、繊維が保持することができる水分量に影響すると考えられることから、スルホン化パルプ繊維に導入するスルホ基の導入量とスルホン化パルプ繊維が保持することができる水分量(つまり保水度)の両者は何らかの関連性があるものと推察される。
(スルホン化パルプ繊維におけるスルホ基の導入量)
スルホン化パルプ繊維は、上述したようにセルロース繊維を構成するグルコースユニットの水酸基にスルホ基を導入することによって、かかる繊維の親水性が向上するようにしたものである。つまり、スルホン化パルプ繊維は、スルホ基を導入することによって、水系溶媒に分散させた際の分散性を向上させることができるようにしたものである。
このスルホン化パルプ繊維におけるスルホ基の導入量は、スルホ基に起因する硫黄量で表すことができ、繊維が長い状態で分散性を付与することができれば、とくに限定されない。具体的には、スルホン化パルプ繊維は、パルプ繊維に分散性を付与でき、かつパルプ繊維をスルホ基で置換する前の平均繊維長の50%以上となるようにスルホ基の導入量が調整されていればよい。
例えば、スルホン化パルプ繊維1g(質量)あたりのスルホ基に起因する硫黄導入量は、0.1mmol/gよりも高くなるように調整するのが好ましく、より好ましくは、0.2mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらに好ましくは0.42mmol/g〜9.9mmol/gである。
スルホン化パルプ繊維1g(質量)あたりのスルホ基に起因する硫黄導入量は、9.9mmol/gに近づくほど結晶性の低下が懸念され、硫黄を導入する際のコストも増加する傾向にある。
したがって、スルホン化パルプ繊維へのスルホ基の導入量、つまりスルホ基に起因する硫黄導入量は、上記範囲となるように調整するのが好ましい。
なお、スルホ基中の硫黄の原子数は1であるので、後述するスルホン化微細セルロース繊維の場合と同様に硫黄導入量:スルホ基導入量=1:1である。
とくに、スルホン化パルプ繊維におけるスルホ基の導入量(スルホ基に起因する硫黄導入量)において、スルホン化パルプ繊維を水系溶媒に分散させた際のばらけ易くするというという観点では、0.42mmol/gよりも高くなるように調整するのが好ましく、より好ましくは、0.42mmol/g〜9.9mmol/gとなるように調整し、さらに好ましくは0.42mmol/gよりも高く3.0mmol/g以下となるように調整し、さらにより好ましくは0.42mmol/gよりも高く2.0mmol/g以下となるように調整し、さらに好ましくは0.42mmol/gよりも高く1.7mmol/g以下となるように調整し、より好ましくは0.42mmol/gよりも高く1.5mmol/g以下となるように調整する。
スルホン化パルプ繊維1g(質量)あたりのスルホ基に起因する硫黄導入量が0.42mmol/g以下の場合には、スルホン化パルプ繊維を構成する微細繊維同士が強く結合した状態が維持されやすい。
したがって、スルホン化パルプ繊維をばらけ易くさせるという観点では、スルホン化パルプ繊維へのスルホ基の導入量、つまりスルホ基に起因する硫黄導入量は、上記範囲となるように調整するのが好ましい。
なお、スルホン化パルプ繊維におけるスルホ基の導入量の下限値を0.42mmol/gよりも高くなるように調整してもよい。例えば、0.5mmol/g以上に調整してもよいし、0.6mmol/g以上に調整してもよい。
明細書中の繊維がばらけるとは、スルホン化パルプ繊維を水系溶媒に入れた状態において、スルホン化パルプ繊維を構成する複数の微細繊維が自然にばらばらになるような状態をいい、例えば、少しの力でかき混ぜることでスルホン化パルプ繊維を複数の微細繊維にすることができるような状態をいう。
(スルホ基の導入量の測定方法)
スルホン化パルプ繊維に対するスルホ基の導入量は、スルホ基に起因する硫黄導入量で評価することができる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維の場合と同様の測定方法を用いて測定することができる。つまり、スルホン化パルプ繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定することができる。
(スルホン化パルプ繊維の保水度)
スルホン化パルプ繊維は、上述したスルホ基に起因する硫黄導入量に加えて、所定の保水度を有する点においても特徴を有している。具体的には、スルホン化パルプ繊維の保水度、つまり遠心脱水後に含有する水分量が、所定の状態となるようにスルホン化パルプ繊維は、調製されている。
このスルホン化パルプ繊維の保水度は、後述する利用目的や用途に応じて適宜調整されていれば、その範囲はとくに限定されない。
例えば、スルホン化パルプ繊維の保水度は、150%以上となるように調整するのが好ましく、より好ましくは、200%よりも高く、さらに好ましくは220%以上であり、さらにより好ましくは250%であり、さらに好ましくは300%以上であり、さらにより好ましくは500%以上である。
ここで、スルホン化パルプ繊維の保水度を高くすれば、繊維中に水分を多く含むような状態となる。かかる状態において、繊維中に含まれた水分がスルホン化パルプ繊維を構成する微細繊維同士の結合力に影響を及ぼすものと推察される。
つまり、保水度が高くなるように調製したスルホン化パルプ繊維は、スルホン化パルプ繊維の表面を構成する微細繊維同士の結合が弱くなって隣接する微細繊維同士間に隙間が形成され、この形成された隙間に水分が浸入等することによって水分が保持されやすくなっているものと推察される。
このため、スルホン化パルプ繊維の保水度を上記のごとき範囲内となるように調整すれば、以下のような利用目的や用途に応じたスルホン化パルプ繊維を調製することができる。
(脱水性の観点)
例えば、スルホン化パルプ繊維における脱水性の観点では、繊維内に水分量が少ない状態、つまり保水度が低くなるように調製すればよい。
スルホン化パルプ繊維の保水度を低くすることによって、運搬時における輸送コストを抑制することができたり、スルホン化パルプ繊維を製造する際の製造効率や製造コストを抑制できる等の利点が得られる。
(微細化の観点)
一方、スルホン化パルプ繊維を微細化(言い換えれば、ほぐれ易くする)するという観点では、繊維内に水分量が多くなるような状態、つまり保水度が高くなるように調製すればよい。例えば、スルホン化パルプ繊維をほぐれ易く(微細化)するという観点においては、解繊圧力を120〜140MPaとする場合、スルホン化パルプ繊維の保水度を150%よりも高くなるように調整すればよい。
かかる理由としては、スルホン化パルプ繊維の保水度を高くすることによって、スルホン化パルプ繊維を構成する微細繊維同士の結合力を弱くすることができる。すると、スルホン化パルプ繊維の表面や表面に近い内方に位置する部分がフィブリル化しやすくなる。そして、かかる状態のスルホン化パルプ繊維を解繊機等に供すれば、パルプ繊維の微細化がより行い易くなる。つまり、後述するスルホン化パルプ繊維を微細化する際にほぐれ易くできるので、後述するスルホン化微細セルロース繊維を調製する際の作業性や効率性を向上させることができるようになると考えられる。
とくに、詳細については後述するが、原料のパルプをスルホン化して得られるスルホン化パルプ繊維を解繊して得られる微細セルロース繊維は、製造方法により微細セルロース繊維を分散した分散液の粘性に違いが生じるという知見に基づいて、分散液に対して優れた粘性を付与するために、スルホン化パルプの水酸基(C2位,C3位、C6位)のうちC6位の位置に優先的にスルホ基を導入することにより、繊維形状を維持しつつ優れた解繊性を有するスルホン化パルプ繊維を提供すること、このスルホン化パルプ繊維を解繊することにより分散液に対して優れた粘性を付与することができるスルホン化微細セルロース繊維を提供することを目的とするものである。
つまり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維は、硫黄導入量が上記範囲内であり、保水度が上記値以上であり、かつスルホ基の導入位置が優先的にC6である、という構成をとることにより、解繊性(微細化処理)を向上させるとともに、解繊後に得られるスルホン化微細セルロース繊維が分散した分散液に対して高い粘性を付与することができるパルプである。
なお、スルホン化パルプ繊維を微細化する際には、保水度をあまりに高くすると、微細化した繊維の濃度が低くなりすぎたり、収率が低くなるといった傾向が生じる。このため、スルホン化パルプ繊維を微細化した後の微細繊維の収率や濃度等の観点においては、保水度はあまり高くなりすぎないように調整するのが好ましく、例えば、保水度が10,000%以下となるように調整するのが好ましい。詳細は後述する。
明細書中の繊維をほぐすとは、例えば、スルホン化パルプ繊維のスラリーを解繊する場合に、スルホン化パルプ繊維に対してエネルギーを加えることによりスルホン化パルプ繊維を構成する複数の微細繊維がばらばらにさせるようなことをいう。
(保水度の測定方法)
スルホン化パルプ繊維の保水度は、一般的なパルプ繊維の保水度試験(例えば、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.26:2000に準拠した方法)により求めることができる。
(スルホン化パルプ繊維におけるスルホ基の導入位置)
上述したようにスルホン化パルプ繊維は、セルロース繊維を構成するグルコースユニットの水酸基の一部がスルホ基でスルホン化されたものである。スルホ基の置換位置は、とくに限定されないが、グルコースユニットのC6位の水酸基(図21参照)に優先的にスルホ基が置換された状態に調製されているのが好ましい。つまり、スルホン化パルプ繊維は、セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基が、スルホ基で置換されているのである。
このグルコースユニットのC6位の水酸基は、立体的に飛び出すように配置されている(図21参照)。このため、スルホン化パルプ繊維において、グルコースユニットにおいて立体的に飛び出すように配置されたC6位の水酸基にスルホ基が優先的に導入されることにより、隣接する繊維同士(C6位の水酸基にスルホ基が導入されたグルコースユニットを有するに隣接する繊維同士)に電荷的な反発力を発生させることができる。
すると、スルホン化パルプ繊維を微細化する際には、機械的な解繊力に加えて、スルホン化パルプ繊維を構成するセルロース繊維同士の電荷的な反発力を発揮させることができるので、C6位以外にスルホ基が導入されているものと比べて、より低い解繊圧力等で微細化することができるようになる。つまり、このスルホン化パルプ繊維(セルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位の水酸基に優先的にスルホ基が置換されたスルホン化パルプ繊維)が、上述した高い保水度を有するように調製されていれば、解繊時において、より少ないエネルギーで解繊をより行い易い状態にすることができる。
そして、スルホン化パルプ繊維は、C6位にスルホ基を有するので、C6位以外にスルホ基が導入されているもの(つまりC2位やC3位にスルホ基が導入されたスルホン化パルプ、以下C2位やC3位のことをC2―C3位で表すこともある)と比べて繊維形状が大きく異なる。
具体的には、スルホン化パルプ繊維は、C2―C3位のスルホン化パルプと比べて繊維の切断および破壊が少ない状態にできる。つまり、C2―C3位のスルホン化パルプと比べて重合度を高い状態に維持できる。
しかも、スルホン化パルプ繊維は、C6位にスルホ基を有するので、C2―C3位のスルホン化パルプと比べて繊維の結晶領域を高い状態で保持することができる。つまり、C2―C3位のスルホン化パルプと比べて結晶化度を高い状態に維持することができる。
さらに、スルホン化パルプ繊維が上記のごとくC6位に優先的にスルホ基が導入されることにより、高い重合度と高い結晶化度を有する繊維形状になっているので、解繊等により微細化処理して得られるスルホン化微細セルロース繊維においても、スルホ基がC2位、C3位に導入されたものと比べて、優れた特性を発揮させることができる。具体的には、かかるスルホン化微細セルロース繊維を溶液に分散した分散液に対して優れた粘性を発揮させることができる。
上述したグルコースユニットの水酸基へスルホ基が導入されていることは、スルホン化パルプ繊維を微細化処理した後述するスルホン化微細セルロース繊維のFT−IR測定(図19参照)や、電気伝導度測定(図20参照)、NMR測定(図21参照)などを用いて確認することができる。
とくに、上述したグルコースユニットのどの位置の水酸基にスルホ基が導入されているかの確認は、NMR測定により確認することができる。
さらに、スルホン化パルプ繊維の重合度や結晶化度の確認は、実施例に記載の方法により測定することができる(表21参照)。
(スルホン化パルプ繊維の重合度)
スルホン化パルプ繊維の重合度は、上述したように繊維形状が維持される程度、もしくは、このスルホン化パルプ繊維を解繊することにより分散液に対して優れた粘性を付与することができれば、とくに限定されない。例えば、スルホン化微細セルロース繊維を得る観点では350以上であればよい。好ましくは400以上であり、より好ましくは500以上であり、さらに好ましくは600以上である。一方で、取扱性の観点では、例えば、1000以下が好ましく、より好ましくは900以下、さらに好ましくは600以下である。
(スルホン化パルプ繊維の結晶化度)
スルホン化パルプ繊維の結晶化度は、上述したように繊維形状が維持される程度、もしくは、このスルホン化パルプ繊維を解繊することにより分散液に対して優れた粘性を付与することができれば、とくに限定されない。例えば、スルホン化微細セルロース繊維を得る観点では70%以上であり、好ましくは75%以上である。一方で、取扱性の観点では、例えば、90%以下が好ましく、より好ましくは80%以下である。
(スルホン化パルプ繊維の平均繊維長)
スルホン化パルプ繊維は、上述したように繊維形状が維持される程度の平均繊維長であれば、とくにその長さは限定されない。
具体的には、スルホン化パルプ繊維をスルホン化する前後において、平均繊維長が所定の長さを維持していればよい。より具体的には、スルホン化パルプ繊維にスルホ基を導入する前のパルプ繊維における平均繊維長と、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプ繊維の平均繊維長を比較した際、後者(つまりスルホン化パルプ繊維)が前者に比べて50%以上となるように調製するのが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上となるように調製する。言い換えれば、スルホン化パルプ繊維は、原料となるパルプの素材に関わらず、スルホ基を導入する前と後において、平均繊維長が所定の値以上となるように調製されているのである。
例えば、原料として木材系のパルプ繊維を使用し、その平均繊維長が2.6mmとした場合、スルホン化パルプ繊維は、平均繊維長が、原料のパルプ繊維の平均繊維長の50%以上の長さつまり1.3mm以上となるように調製されている。また、パルプ繊維が後述するLBKPで、その平均繊維長が1mm前後のものであれば、スルホン化後の平均繊維幅が0.5mm前後以上となるように調製されている。
スルホン化パルプ繊維の平均繊維長を上記のごとき範囲となるように調製すれば、取り扱い性に優れた繊維とすることができる。
具体的には、繊維同士のからみあいを向上させることができ、ある程度の長さを維持しつつ所望の長さに均質化することができ、微細化する際には微細化後の微細繊維の平均繊維長を長くできる、等の利点が得らえる。
このため、利用目的や用途に応じた優れた自由度を有するスルホン化パルプ繊維を提供することができる。
一方、上記範囲よりも短くなる場合には、スルホン化パルプ繊維が加水分解された際の影響が無視できなくなるので、上記自由度が制限される傾向にある。
したがって、スルホン化パルプ繊維の平均繊維長は、上記範囲となるように調整するのが好ましい。
(平均繊維長の測定方法)
スルホン化パルプ繊維の平均繊維長は、公知の繊維分析器を用いて測定することができる。公知の繊維分析器として、例えば、ファイバーテスター(ローレンツェン&ベットレー(株)社製)を挙げることができる。
以上のごとく、本実施形態のスルホン化パルプ繊維のスルホ基の導入量を調整することによって、繊維長が長い状態を保持したまま分散性を向上させることができるので取り扱い性の自由度を向上させることができるようになる。
しかも、繊維のばらけ易さや後述する微細セルロース繊維の透明度を向上させることができるようになる。
さらに、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の保水度を調整することによって、上述したようにスルホン化パルプ繊維の利用目的や用途に応じて適宜調整することができるので、取り扱い性の自由度を向上させたスルホン化パルプ繊維を提供することができる。
(白色度)
なお、スルホン化パルプ繊維は、複数のスルホン化パルプ繊維を水溶液に分散させて洗浄した後、乾燥する。この乾燥した際の白色度が所定の範囲となるように調整するのが好ましい。
例えば、スルホン化パルプ繊維は、白色度が30%以上となるように調製してもよく、好ましくは40%以上となるように調製してもよい。白色度が30%以上であれば、着色が目立ちにくくなるので、取り扱い性を向上させることができる。
スルホン化パルプ繊維の白色度は、公知の方法を使用すれば求めることができる。例えば、JIS P 8148:2001(紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率))に準拠して測定することができる。
<誘導体パルプ>
誘導体パルプは、複数の繊維からなるパルプであって、上述したスルホン化パルプ繊維を複数含有するように調製されたパルプ繊維である。具体的には、スルホン化パルプ繊維製法を用いて製造した複数のスルホン化パルプ繊維を集合させれば、スルホ基が導入したパルプ繊維を含む誘導体パルプとすることができる。
この誘導体パルプは、スルホン化パルプ繊維製法を用いて製造した複数のスルホン化パルプ繊維のみを集合させたものであってもよいし、セルロース以外の材質からなる繊維(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)や、ポリエステル等の合成繊維、羊毛等の天然繊維など)や、他のパルプ繊維等を含有してもよい。
なお、スルホン化パルプ繊維製法を用いて製造した複数のスルホン化パルプ繊維の含有率が高くなるよう調整すれば、上述したスルホン化パルプ繊維と同様の効果を発揮させやすくなるので好ましい。
<スルホン化微細セルロース繊維>
スルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であって、微細セルロース繊維を構成するセルロース(D−グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の水酸基(−OH基)の少なくとも一部が上記式(1)で示されるスルホ基でスルホン化されたものである。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、微細セルロース繊維の水酸基の一部が、スルホ基で置換されたものである。
スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基を有することによって、かかる繊維の親水性を向上させることができるようになる。つまり、スルホ基をスルホン化微細セルロース繊維に導入することによって、スルホン化微細セルロース繊維を分散液に分散させた際の分散性を向上させることができるようになる。しかも、導入したスルホ基の電子的反発によって、分散液に分散させた状態を維持し易くなる。
また、スルホ基由来の生理活性作用をスルホン化微細セルロース繊維に対して付与することが可能となる。例えば、ヘパリン類似物質として知られている硫酸化多糖の一種であるコンドロイチン硫酸は、ヒアルノニダーゼ阻害活性能や皮膚保湿作用を有することから、乾皮症、皮脂欠乏症などやアトピー性皮膚炎への適用が検討されている。スルホン化微細セルロース繊維も天然多糖類の一種であるため、スルホ基に基づく生理活性作用に基づく医療分野への利用が可能となる。
なお、分散液の溶媒は、水系溶媒であればとくに限定されない。つまり、分散液に用いられる溶媒は、水溶性の溶媒(水溶性溶媒)であればよく、例えば、水のみの場合のほか、アルコール、ケトン、アミン、カルボン酸、エーテル、アミドなどやこれらの混合物などを採用することができる。
また、スルホン化微細セルロース繊維は、他の官能基が結合していてもよく、とくに、スルホ基以外に硫黄を含む官能基(置換基)を含んでいてもよい。
以下の説明では、スルホン化微細セルロース繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基だけを導入した場合を代表として説明する。
(スルホン化微細セルロース繊維におけるスルホ基の導入量)
スルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量は、スルホ基に起因する硫黄量で表すことができ、透明性や分散性をある程度維持することができれば、その導入量はとくに限定されない。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりのスルホ基に起因する硫黄導入量は、0.42mmol/gよりも高くなるように調整するのが好ましく、より好ましくは、0.42mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらに好ましくは0.5mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらにより好ましくは0.6mmol/g〜9.9mmol/gである。
なお、スルホ基中の硫黄の原子数は1であるので、硫黄導入量:スルホ基導入量=1:1である。例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりの硫黄導入が0.42mmol/gの場合には、スルホ基の導入量も当然に0.42mmol/gとなる。
スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりのスルホ基に起因する硫黄導入量が0.42mmol/g以下の場合には、繊維間の水素結合が強固なため分散性が低下する傾向にある。その逆に、かかる硫黄導入量が0.42mmol/gよりも高くすることによって分散性が向上させやすくなり、0.5mmol/g以上とすれば電子的反発性をより強くさせることができるので、分散した状態を安定して維持させやすくなる。一方、かかる硫黄導入量が9.9mmol/gに近づくほど結晶性の低下が懸念され、しかも硫黄を導入する際のコストも増加する傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維へのスルホ基の導入量、つまりスルホ基に起因する硫黄導入量は、上記範囲となるように調整するのが好ましい。
とくに、スルホン化微細セルロース繊維へのスルホ基の導入量(スルホ基に起因する硫黄導入量)において、スルホン化パルプ繊維を構成する微細繊維の分散性の観点では、0.42mmol/gよりも高く3.0mmol/g以下となるように調整するのが好ましく、より好ましくは0.5mmol/g〜3.0mmol/gであり、さらに好ましくは0.5mmol/g〜2.0mmol/gであり、さらにより好ましくは0.5mmol/g〜1.7mmol/gであり、より好ましくは0.5mmol/g〜1.5mmol/gである。
また、スルホン化微細セルロース繊維の透明性の観点においても、上記範囲と同様の範囲となるように調整するのが好ましい。
(スルホ基の導入量の測定方法)
スルホン化微細セルロース繊維に対するスルホ基の導入量は、スルホ基に起因する硫黄導入量で評価することができる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定することができる。
また、後述するスルホン化パルプ繊維からスルホン化微細セルロース繊維を調製する場合には、かかるスルホン化パルプ繊維における硫黄導入量から求めてもよい。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長や平均繊維幅は、繊維同士がからみ易く、しかも水系溶媒に分散させた際に透明性を得やすくなるように調製されていれば、その長さや太さはとくに限定されない。例えば、以下に示す大きさに調製することができる。
(スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長)
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長は、重合度で間接的に表すことができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維は、重合度で280以上となるように調整することができる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は、重合度で300〜1,000となるように調製するのが好ましく、より好ましくは重合度で300〜600となるように調製する。スルホン化微細セルロース繊維の重合度が280よりも低いと、繊維長の低下により繊維のからまりが弱くなる傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維を重合度で表す場合には、重合度が上記範囲内となるように調整するのが好ましい。
なお、グルコース1分子の軸方向の長さを約5Å(約0.5nm)とした場合、スルホン化微細セルロース繊維の重合度が300の場合には、理論上、繊維長が約150nm(約0.15μm)のスルホン化微細セルロース繊維を調製することができる。
(重合度の測定方法)
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長を重合度で表す場合の重合度の測定方法は、とくに限定されない。
例えば、銅エチレンジアミン法で測定することができる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維を0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させて、かかる溶液の粘度を粘度法によって測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の重合度を測定することができる。
(スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅)
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、水系溶媒に分散させた際に透明性を得やすい太さであれば、とくに限定されない。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察した際に、1nm〜1000nmとなるように調製するのが好ましく、より好ましくは2nm〜500nm、さらにより好ましくは2nm〜100nmであり、さらに好ましくは2nm〜30nmであり、よりさらに好ましくは2nm〜20nmである。
微細セルロース繊維の繊維幅が1nm未満であると、セルロース分子として水に溶解したような状態となっているため、微細セルロース繊維としての物性(強度や剛性、又は寸法安定性)が発現しにくくなる。一方、1000nmを超えると微細セルロース繊維とは言えず、通常のパルプに含まれる繊維にすぎないため、微細セルロース繊維としての物性(透明性や強度や剛性、又は寸法安定性)が得られにくい傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、上記範囲内となるように調製するのが好ましい。
とくに、スルホン化微細セルロース繊維の取り扱い性や透明性が求められる用途などの観点においては、さらに以下の範囲内となるように調製するのがより好ましい。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が、30nmよりも大きくなるとアスペクト比が低下して、繊維同士のからみあいが減少する傾向にある。さらに、平均繊維幅が、30nmよりも大きくなると可視光の波長の1/10に近づき、マトリックス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折及び散乱が生じ易く、可視光の散乱が生じてしまい、透明性が低下する傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、取り扱い性や透明性の観点においては、2nm〜30nmが好ましく、より好ましくは2nm〜20nmであり、さらに好ましくは2nm〜10nmである。
また、透明性の観点においては、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が20nm以下となるように調製するのが好ましく、より好ましくは10nm以下となるように調製する。平均繊維幅が10nm以下となるように調製すれば、可視光の散乱をより少なくできるので、高い透明性を有するスルホン化微細セルロース繊維を得ることができる。
(平均繊維幅の測定方法)
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、公知の技術を用いて測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液を、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上のスルホン化微細セルロース繊維を観察する。
観察方法としては、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM−9700)を用いることができる。得られた観察画像中のスルホン化微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
(ヘイズ(Haze)値)
スルホン化微細セルロース繊維の透明性については、分散状態における透明度で評価することができる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維を分散液に分散させた際の固形分濃度が所定の濃度となるように調整した分散液を視認した際の透明性をヘイズ値で評価することができる。
スルホン化微細セルロース繊維を分散させた分散液の固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、スルホン化微細セルロース繊維を水溶性溶媒に、固形分濃度が0.1質量%〜20質量%となるように分散させて調製することができる。
そして、かかる分散液のヘイズ値が、20%以下であれば、スルホン化微細セルロース繊維は透明性を有しているといえる。逆にいうと、固形物濃度が上記範囲内となるように調製した分散液のヘイズ値が20%よりも高い場合には、透明性が適切に発揮されにくい状態にあるといえる。より具体的には、スルホン化微細セルロース繊維を分散させた分散液の固形分濃度が0.2質量%〜0.5質量%となるように調製した場合、この分散液のヘイズ値が20%以下であれば透明性を適正に発揮させた状態となっており、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であればより透明性を有するスルホン化微細セルロース繊維となっている。
したがって、透明性の観点において、スルホン化微細セルロース繊維は、固形分濃度が0.1質量%〜20質量%となるように調製した分散液のヘイズ値が20%以下となるように調製するのが好ましく、より好ましくは固形分濃度が0.2質量%〜0.5質量%となるように調整した際の分散液のヘイズ値が上記範囲となるように調製するのが好ましい。
なお、この分散液の溶媒は、上述した水系溶媒と同様、水溶性の溶媒(水溶性溶媒)であればとくに限定されない。例えば、水溶性溶媒として、水のみの場合のほか、アルコール、ケトン、アミン、カルボン酸、エーテル、アミドなどを単独または2種以上を混合して用いてもよい。
(ヘイズ値の測定方法)
ヘイズ値は、以下のようにして測定することができる。
上述した分散液にスルホン化微細セルロース繊維を所定の固形分濃度となるように分散させる。そして、この分散液をJIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の透明性であるヘイズ値を求めることができる。
(全光線透過率)
なお、スルホン化微細セルロース繊維は、上述した分散液のヘイズ値が上記範囲内において、透明性をより適切に評価できる全光線透過率を調整するのが好ましい。例えば、上述した分散液の全光線透過率(%)は、90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上となるように調整することができる。
(全光線透過率の測定方法)
全光線透過率は、以下のようにして測定することができる。
上述した分散液にスルホン化微細セルロース繊維を所定の固形分濃度となるように分散させる。そして、この分散液を、JIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の全光線透過率を求めることができる。
なお、本明細中において透明性とは、液体の透明性と濁りの両方またはいずれか一方の性質を含んでいる。透明性の評価において、ヘイズ値は液体の濁りをより適切に評価するができ、全光線透過率は透明性をより適切に評価することができる。
以上のごとく、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長および平均繊維幅を、上記のごとき範囲となるように調製することにより、スルホン化微細セルロース繊維に対して優れた透明性を発揮させることができ、しかもスルホン化微細セルロース繊維同士がからみやすい繊維にすることができる。このため、スルホン化微細セルロース繊維を利用した複合材料等においては、透明性に優れ、高い強度を発揮させることが可能となる。
(粘度)
なお、スルホン化微細セルロース繊維が上述した特性を有する場合、スルホン化微細セルロース繊維は、所定の粘度を有する。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維を所定の固形分濃度(例えば、0.2〜0.5質量%)となるように調製した場合、その液体の粘度が、10,000mPa・s以上にすることができる。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、上述した優れた透明性(低いヘイズ値、高い全光線透過率)を有するほか、分散した分散液が優れた粘性をも有するようになる。そして、この分散液の粘性向上に寄与するものとして、スルホン化微細セルロース繊維のC6位のスルホ基があげられる。
以上のごとく、スルホン化微細セルロース繊維は、天然由来のセルロースをベースに基づいて製造されたものであり、分散した分散液が優れた透明性と高い粘性(高粘度化)を有するようになるので、透明性を有するものは増粘剤等として工業はもちろん医薬、食品などの様々な分野で使用することが可能となる。
(粘度の測定方法)
粘度の測定方法は、B型粘度計を用いて測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調製した液体を、B型粘度計を用いて、回転数6rpm、25℃、3分で測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の粘度を測定することができる。
(スルホン化微細セルロース繊維におけるスルホ基の導入位置)
また、スルホン化微細セルロース繊維は、上述したようにセルロース繊維を構成する一部のグルコースユニットの水酸基がスルホ基でスルホン化されたものである。
スルホ基の置換位置は、とくに限定されないが、グルコースユニットのC6位の水酸基(図21参照)に優先的にスルホ基が置換された状態に調製されているのが好ましい。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基が、スルホ基で置換されるように調製されているのである。
このグルコースユニットのC6位の水酸基は、立体的に飛び出すように配置されている(図21参照)。つまり、スルホン化微細セルロース繊維において、繊維表面の露出している部分のグルコースユニットから飛びだすように配置されたC6位の水酸基にスルホ基が優先的に導入された状態となっている。
このため、このスルホン化微細セルロース繊維を水などの水溶性溶媒に分散させれば、スルホン化微細セルロース繊維の繊維表面には、優先的にスルホ基が配置された状態になる。すると、表面に配置されたスルホ基同士の電荷的な反発によって、隣接するスルホン化微細セルロース繊維同士をより適切に分散させた状態にすることができるので、より優れた分散性を発揮させることができる。
したがって、このスルホン化微細セルロース繊維を上述した優れた透明性(低いヘイズ値、高い全光線透過率)を有するように調製した状態で、水などの水溶性溶媒に分散させれば、分散液に分散したスルホン化微細セルロース繊維は、表面に電荷的な反発性を有するスルホ基が多数配置した状態で分散せることができる。このため、水溶性溶媒などの分散液中に均質に分散させることができるから、優れた透明性を適切に維持させることがきるようになる。
また、スルホン化微細セルロース繊維は、C6位にスルホ基を有するので、C6位以外にスルホ基が導入されているもの(つまりC2―C3位のスルホン化微細繊維)と比べて繊維形状が明確に相違する。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は、上述したようにスルホン化パルプを解繊処理して得られる。ここで、機械的な解繊前のスルホン化パルプは、上述したようにC6位にスルホ基を有しているので、C2―C3位のスルホン化パルプと比べて高い重合度および高い結晶化度を有している。つまり、スルホン化微細セルロース繊維とC2―C3位のスルホン化パルプ(C2―C3位のスルホン化微細繊維の解繊前のパルプ)では、繊維形状において、重合度および結晶化度が大きく異なる。前者(スルホン化微細セルロース繊維)は、後者に比べて高い重合度および結晶化度を有している。言い換えれば、スルホン化微細セルロース繊維とC2―C3位のスルホン化微細繊維では、出発物質の繊維形状が上記のごとく大きく異なる。
このため、得られた微細繊維の重合度および結晶化度の値が近似した状態であっても、出発物質の繊維形状が異なるパルプを解繊処理して得られるスルホン化微細セルロース繊維とC2―C3位のスルホン化微細繊維においても、異なる繊維形状を有している。つまり、スルホン化微細セルロース繊維が機械的な力により繊維が解繊されたものであるのに対して、C2―C3位のスルホン化微細繊維では化学的な力により繊維が解繊されたものである。
このように繊維形状が異なることから、C6位にスルホ基を有するスルホン化微細セルロース繊維は、スルホン化微細セルロース繊維を溶液に分散させた状態において、C2―C3位にスルホ基を有するスルホン化微細繊維と比べて、高い粘性を発揮させることができるのである。
したがって、水などの溶液に分散させれば、当該分散液に対して、上述した透明性を付与することに加え、上述した高い粘性を付与することができるスルホン化微細セルロース繊維を提供することができる。つまり、C6位の位置に優先的にスルホ基が導入したスルホン化パルプ繊維を微細化することで得らえるスルホン化微細セルロース繊維は、液体に混合した際の分散性に優れ、得られた分散液が優れた透明性を有しつつ、高い粘性を有する。
なお、スルホン化微細セルロース繊維は、溶液に分散した状態において、透明性の有無にかかわらず、分散液に対して上記のごとき粘性を付与することができることはいうまでもない。
<スルホン化微細セルロース繊維およびスルホン化パルプ繊維の製造方法>
スルホン化パルプ繊維、誘導体パルプおよびスルホン化微細セルロース繊維は、以下に示すスルホン化パルプ繊維製法およびスルホン化微細セルロース繊維製法により製造することができる。
スルホン化パルプ繊維製法の概略は、後述する繊維原料であるパルプを化学処理工程に供することによってスルホン化パルプ繊維を製造する方法であり、この化学処理工程において、供給されたパルプを接触工程で処理した後、反応工程で処理するという方法である。
なお、本明細書において、繊維原料とは、セルロース分子を含むパルプなどの繊維状の原料をいい、パルプとは、複数のパルプ繊維が集合したものをいう。また、このパルプ繊維とは、複数のセルロース繊維が集合したものであり、このセルロース繊維は、複数の微細繊維(例えば、ミクロフィブリル等)が集合したものである。そして、この微細繊維とは、D−グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であるセルロース分子(以下、単にセルロースということもある)が複数集合したものである。繊維原料については詳細を後述する。
スルホン化微細セルロース繊維製法の概略は、繊維原料であるパルプを化学処理工程に供した後、化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法である。
スルホン化微細セルロース繊維は、スルホン化処理をしていない状態の繊維原料を直接に上記微細化処理工程に供給して微細セルロース繊維を得た後、この微細セルロース繊維を構成するセルロースの水酸基の少なくとも一部をスルホ基で置換して調製してもよいし、以下で説明する製法、つまりスルホン化パルプ繊維製法で得られたスルホン化パルプ繊維を上記微細化処理工程に供給し微細化して調製してもよい。後者の方法を採用すれば、すでにセルロース繊維の水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化パルプ繊維を微細化処理工程に供給するので、所望のスルホン化微細セルロース繊維を調製し易くなるという利点が得られる。
そこで、以下の説明では、スルホン化微細セルロース繊維製法において、スルホン化パルプ繊維製法を用いて製造されたスルホン化パルプ繊維を使用する場合を代表として説明する。
誘導体パルプは、上述したように、スルホン化パルプ繊維製法を用いて製造された複数のスルホン化パルプ繊維の集合体とすれば調製することができるので、その製法については割愛する。
なお、以下に示す製造方法は一例にすぎず、上述した特性を有するスルホン化パルプ繊維およびスルホン化微細セルロース繊維を製造することができる方法であれば、以下の方法に限定されない。
まず、スルホン化パルプ繊維製法を説明し、ついでスルホン化微細セルロース繊維製法を説明する。
<スルホン化パルプ繊維の製造方法>
図1に示すように、スルホン化パルプ繊維製法は、セルロースを含む繊維原料を以下に示す方法で化学的に処理する化学処理工程を含んでいる。
(化学処理工程)
スルホン化パルプ繊維製法における化学処理工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を接触させる接触工程と、この接触工程後の繊維原料に含まれるセルロース繊維の水酸基の少なくとも一部にスルホ基を導入する反応工程とを含んでいる。
つまり、スルホン化パルプ繊維製法は、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を導入させる方法において、尿素および/またはその誘導体を用いる点に特徴を有している。このため、以下に示すような従来の製法では得られなかった優れた効果を奏する。
一般的に、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を導入する方法としては、繊維原料にスルホン化剤のみを接触させた状態で加熱処理を行う方法が考えられる。
しかし、スルホン化剤のみで反応させた場合には、1)スルホ基の導入に要する時間が長くなったり、2)スルホン化剤の酸の影響により繊維の短繊維化が起こりやすくなったり、3)スルホン化剤の酸の影響により反応後の繊維に着色が生じてしまいこの着色を処理するために様々な化学処理を行う必要があり着色除去に労力とコストがかかる、などの問題が発生する。
一方、スルホン化パルプ繊維製法では、上述したように、繊維原料に対してスルホン化剤のほかに尿素および/またはその誘導体を接触させる方法を採用している。このため、従来技術のようにスルホン化剤のみで反応させた際に生じる上記1)〜3)などの問題を解決することができる。
具体的には、スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を所定の割合で接触させた後、反応させることによって、
A)スルホ基の導入量を促進させることができる。つまり、尿素を触媒として機能させることによって、反応時間を短くすることができ、
B)一方で、酸による短繊維化という作用を尿素によって抑制することができる。つまり、酸による繊維の短繊維化を防止することができ(図4、表21参照)、
C)酸による繊維の着色を尿素によって抑制することができる。つまり、酸で処理したにも関わらず繊維への着色を抑制した繊維を調製できる(表4参照)、という従来では得られなかった効果を奏するようにしたことに特徴を有している。
D)しかも、得られるスルホン化パルプ繊維は、上述したような保水度を有するように調整することができる、という効果も奏する。
E)さらに、スルホン化パルプ繊維製法では、尿素および/またはその誘導体をスルホン化剤とともに反応液として用いるので、反応液の溶媒として水を使用することができる、という効果も奏する。
ここで、通常、繊維原料にスルホン化剤を反応させてエステル化を行おうとする場合には、反応溶液の溶媒としては、DMFなどの有機溶媒が使用される。
水は、取り扱い性やコスト面等から優れた溶媒である一方、スルホン化剤を用いたエステル化反応には不向きな溶媒である。なぜなら、媒繊維原料とスルホン化剤を水溶媒中で反応させた場合、水の水酸基がリッチな状態となるので、スルホン化剤による繊維原料表面に存在する水酸基への反応性は低くなり、繊維原料中の水酸基との反応性が低下するからである。つまり、水溶媒中で繊維原料とスルホン化剤を反応させた場合、エステル化の反応効率が低下するといった問題が生じる。
しかも、水溶媒中では、スルホン化剤がプロトンを生じやすい状態となる。生じたプロトンは、繊維原料(例えばパルプ繊維)中のグリコシド結合の開裂反応を引き起こすので、繊維原料の短繊維化が生じることにもなる。
さらに、スルホン化剤自体が水と反応し、分解してしまいさらに反応性が低下するという懸念も生じる。
そこで、一般的には、スルホン化剤を用いたエステル化反応では、有機溶媒が用いられている。有機溶媒中では、スルホン化剤のプロトンを解離させにくい状態で反応させることができる。このため、有機溶媒中でスルホン化剤と繊維原料を反応させれば、水溶媒を用いた場合に比べて、両者のエステル化反応を優先的に進行させることができる。
しかも、水溶媒に比べて、スルホン化剤がプロトンを生じにくくなるので、繊維原料(例えばパルプ繊維)中のグリコシド結合の開裂反応も起こりにくくできるので、有機溶媒で反応させたほうが、繊維原料の短繊維化を抑制できるものと考えられている。
しかしながら、スルホン化パルプ繊維製法では、水溶媒の反応液に、スルホン化剤のほかに尿素および/またはその誘導体を用いることによって、繊維原料中の水酸基をスルホン化剤で適切にエステル化することができるようになる。これは、水溶媒中で以下のような反応が進行しているものと推察される。
水溶媒中でスルホン化剤中にプロトンが生じた場合、このプロトンを尿素が受容し、ある種のスルホン化剤の塩となっていると考えられる。このため、水溶媒中においてスルホン化剤によるグリコシド結合の開裂反応を抑制させることができる。
しかも、尿素によって繊維原料の繊維を膨潤させることができるので、尿素とスルホン化剤の塩を繊維原料の繊維内部まで浸潤させることができる。そして、後述するスルホン化パルプ繊維製法の反応工程において繊維を加熱する際に、浸潤先の繊維内部においてもエステル化を進行させることができる。具体的には、繊維原料の表面における繊維中の水酸基のみならず、繊維内部に存在する水酸基ともエステル化反応を進行させることができる。より具体的には、繊維原料の内部、ミクロフィブリルの表面にまでスルホン化剤とのエステル化を形成することができるので、解繊処理後には、繊維幅が非常に細い繊維を形成することができるようになる。そして、スルホン化剤中に生じるプロトンは上述したように尿素によって抑制されるので、繊維原料の短繊維化を抑制できる。
このため、解繊処理後には、繊維長が長く、かつ非常に細い繊維幅を有する繊維を形成することができるようになる。
なお、この解繊処理後の繊維幅が非常に細い繊維が、スルホン化微細セルロースに相当する。また、繊維への着色については、繊維の白色度で表すことができる。
スルホン化パルプ繊維製法では、スルホン化パルプ繊維の保水度を制御することによって、上述したスルホン化パルプ繊維における保水度で説明した利点に加えて製法におけるさらなる利点を得ることができる。以下、具体的に説明する。
ここで、パルプなどの繊維を解繊機等を用いて微細化してナノファイバー等の微細繊維を製造する際には、経済的にも環境的にも微細化効率が重要となる。
通常、このような微細化処理工程で行われる効率化向上の方法としては、微細化前の繊維の重合度を低下させて(つまり解繊機等に供給する繊維の繊維長を短くして)解繊機等に供給した際の解繊等への負荷を低下させるという方法が採用されている。
しかし、このような従来の方法では、微細化効率を向上させることができるものの、得られる微細繊維の平均繊維長が短くなるといった問題が生じている。
一方、得られる微細繊維の平均繊維長を長くするには、微細化前の繊維の重合度を高く維持した状態(つまり解繊機等に供給する繊維の繊維長を長くした状態)で解繊機等に供給する必要がある。
しかし、このような従来の方法では、微細繊維の繊維長をある程度は長くできるものの、繊維が非常に硬い状態(例えば、繊維を構成する微細繊維同士が強固に結合しているような状態)となっているので、解繊機等では容易に微細化することができない。
このため、解繊する際に多大なエネルギー(例えば、高圧ホモジナイザーを用いた場合にはその圧力を200MPa以上にする)と時間(例えば、高速カッターを有する剪断装置(エムテクニック社製、クレアミックス)を用いた場合には30分程度)を要することになり、作業効率の悪化はもちろん、微細化効率も非常に悪くなるといった問題が生じる。しかも、均質な繊維長を有する微細繊維を得にくいといった問題も発生している。
これに対して、スルホン化パルプ繊維製法では、上述したようにスルホン化パルプ繊維が所定の保水度を有するように制御しながら調製することによって、上記のような従来の問題を解決することができるようになる。
(保水度を高くした際の利点)
例えば、スルホン化パルプ繊維製法で製造したスルホン化パルプ繊維の保水度を高くすることによって(例えば、保水度を180%よりも高くする。より好ましくは200%以上とし、さらに好ましくは250%以上とする。)、上述したようにスルホン化パルプ繊維を構成する微細繊維同士の結合力を弱めて、スルホン化パルプ繊維の表面や表面に近い内方に位置する部分をフィブリル化させやすくなる。
すると、スルホン化パルプ繊維を構成する繊維同士をほぐれ易くすることができるので、微細化処理する際に要するエネルギーを小さくすることができる。例えば、高圧ホモジナイザーを用いて微細化処理する場合にはその圧力を低くしたり、処理回数(パス数)を少なくしたりすることができる。したがって、エネルギー量の削減による環境への負荷を低減することができる。
しかも、微細化処理をスムースに行うことができるので、微細化処理に要する時間を短くできるので、生産性を向上させることができる。言い換えれば、生産性を向上させることができるので、製造コスト(生産コスト)を従来の技術で製造する場合と比べて安価にできるようになる。
さらに、微細化処理することにより、分散液に対して優れた透明性、優れた粘性を付与するスルホン化微細セルロース繊維を供給できるようになる。
(保水度を低くした際の利点)
逆に、スルホン化パルプ繊維製法で製造したスルホン化パルプ繊維の保水度を低くすれば、以下のような利点が得られる。
スルホン化パルプ繊維の保水度が低くなるように製造すれば、かかる繊維中の水分量を少なくできるので、脱水性を向上させることができる。この場合、脱水がし易くなるので、固形分濃度が高いスルホン化パルプ繊維を製造することができる。すると、製造したスルホン化パルプ繊維を運搬する際における輸送コストを抑制することができるようになる。
しかも、製造工程において、スルホン化パルプ繊維を洗浄する工程を含む場合には、洗浄工程後の脱水がし易くなるので、操作性および作業性を向上させることができる。このため、上記目的でスルホン化パルプ繊維を製造する場合には、生産性を向上させることができる。言い換えれば、生産性を向上させることができるので、製造コスト(生産コスト)を従来の技術で製造する場合と比べて安価にできるようになる。
したがって、スルホン化パルプ繊維製法では、製造したスルホン化パルプ繊維の保水度を調製することによって、供給先の求めに応じてスルホン化パルプ繊維の状態を適宜調整したスルホン化パルプ繊維を製造することができる。
まとめると、スルホン化パルプ繊維製法を用いれば、上記のごときA)〜D)の効果を奏するスルホン化パルプ繊維を製造することができるので、品質安定性に優れ、取り扱い性に優れたスルホン化パルプ繊維を高い回収率(例えば、70%以上の回収率)で製造することができる。
しかも、高品質なスルホン化パルプ繊維を安定して製造することができるので、所望の利用目的や用途に応じたスルホン化パルプ繊維を効率よく生産することができる。さらに、その製造コストも抑制することができる。
以下、化学処理工程の各工程をより詳細に説明する。
(接触工程)
スルホン化パルプ繊維製法の化学処理工程における接触工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を接触させる工程である。この接触工程は、上記接触を起こさせることができる方法であれば、とくに限定されない。
例えば、スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を共存させた反応液に繊維原料を浸漬等させて反応液を含浸させてもよいし、繊維原料に対してかかる反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対してスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体をそれぞれ別々に塗布したり、含浸させたりしてもよい。
これらの方法のうち、上記反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用すれば、均質にスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体を繊維原料に対して接触させることができるので好ましい。
(反応液の混合比)
上記反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用する場合には、反応液に含まれるスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体の混合比は、とくに限定されない。
例えば、スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、1:2.5となるように調整するこができる。
スルホン化剤と尿素を水に溶解してそれぞれの濃度が、200g/Lと100g/Lになるように調整した場合には、濃度比(g/L)において、スルホン化剤:尿素が2:1の反応液を調製することができる。言い換えれば、尿素は、スルファミン酸100重量部に対して50重量部となるように調製すれば、スルホン化剤:尿素が2:1の反応液を調製することができる。
また、スルホン化剤と尿素を水に溶解してそれぞれの濃度が、200g/Lと500g/Lになるように調整すれば、濃度比(g/L)において、スルホン化剤:尿素が1:2.5の反応液を調製することができる。
(反応液の接触量)
繊維原料に接触させる反応液の量もとくに限定されない。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態において、反応液に含まれるスルホン化剤が、繊維原料の乾燥重量100重量部に対して、1重量部〜20,000重量部であり、反応液に含まれる尿素および/またはその誘導体が、繊維原料の乾燥重量100重量部に対して、1重量部〜100,000重量部となるように調製することができる。
なお、保水度は、上述したような一般的な試験方法(例えば、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.26:2000に準拠した方法)で求めることができる。
(反応工程)
接触工程でスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体と水分を含んだ繊維原料は、次工程の反応工程に供給される。このスルホン化パルプ繊維製法の化学処理工程における反応工程は、上述したように繊維原料に含まれるセルロース繊維の水酸基に接触させたスルホン化剤のスルホ基を置換して、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を導入する工程である。
この反応工程は、セルロース繊維の水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応が可能な方法であれば、とくに限定されない。
例えば、上記反応液を含浸させた繊維原料を所定の温度で加熱すれば、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を適切に導入することができる。
具体的には、スルホン化パルプ繊維製法の化学処理工程における反応工程において、加熱すれば、供給した繊維原料に対して熱を供給しながらスルホン化反応を進行させることができる。つまり、反応工程において加熱を行えば、上記反応液が含浸および/または付着した状態の繊維原料を乾燥しながら繊維原料に含まれるセルロース繊維の水酸基に対してスルホ基を導入するスルホン化反応を行わせることができる。
この場合、反応工程のおける加熱処理により、スルホン化反応を行わせる際の繊維原料の周囲の水分量(繊維原料に付着等した反応液中の水分量、つまり繊維原料中の含水率)を低減できるので、かかる水分による影響(例えば、反応障害や加水分解など)を抑制した状態で、スルホン化反応を行わせることができるようになる。
したがって、反応工程において、所定の温度で加熱しながら反応を行うことにより、供給した繊維原料に含まれるセルロース繊維へのダメージを抑制しつつ、セルロース繊維の水酸基に対するスルホ基の導入効率を向上させることができる。しかも、後述するように、短時間でセルロース繊維の所定の水酸基に対してスルホ基を適切に導入させることができる。
なお、反応工程に供給する際の繊維原料は、上述したように水分を含んでいれば、とくに限定されない。例えば、反応工程に供給する際の繊維原料は、接触工程後の含水率が高い状態のものであってもよいし、反応工程に供給する前に脱水処理等して含水率を低くしてもよいし、乾燥処理等をしてさらに含水率を低くした状態にしてもよい。言い換えれば、反応工程に供給する際の繊維原料が、水分を含んでいない以外の状態つまり含水率が1%以上の非絶乾状態であれば、とくに限定されない。
本明細書中では、このような含水率が1%以上の非絶乾状態の繊維原料を水分を含んだ状態(つまり湿潤状態)といい、反応液を含浸等させたままの状態のものやある程度脱水処理した状態のものはもちろん、ある程度乾燥処理した状態のものも本願明細書では湿潤状態という。
本明細書中では、絶乾とは、含水率が1%よりも低い状態のものをいう。そして、絶乾にする乾燥処理工程とは、例えば、塩化カルシウムや五酸化二リンなどの乾燥剤を入れたデシケータ等で減圧して乾燥処理する工程をいう。つまり、本願明細書中における反応工程に供給する前の繊維原料を乾燥処理する工程は、絶乾にする乾燥処理工程ではない。
反応工程に供給する際の繊維原料が反応液を含浸等させたままの状態とは、例えば、反応液を接触させて水分がしたたり落ちるような状態、つまり、含水率が100%に近い状態であってもよい。
また、反応工程に供給する際の繊維原料が上記接触工程後の繊維原料から水分をある程度除去したような状態とは、反応工程に供給する際に絶乾状態(反応工程へ供給する際の繊維原料の含水率が1%よりも低い状態)でない状態のことをいい、含水率が1%以上であればとくに限定されない。このような接触工程後の繊維原料から水分をある程度除去する方法は、上述したような、接触工程後の繊維原料を脱水等の処理してもよいし、脱水等の処理をした後に乾燥処理をしてもよいし、接触工程後の繊維原料を直接乾燥処理してもよい。この場合、水分がある程度除去されているので、取り扱い性や操作性が向上するという利点が得られる。脱水処理としては、例えば、吸引脱水や遠心脱水等の一般的な処理方法を採用することができ、反応工程へ供給する際の繊維原料の含水率が20%〜80%程度となるように調整することができる。また、乾燥処理としては、例えば、乾燥機などの一般的な装置を用いた乾燥処理を採用することができ、乾燥処理後の繊維原料の含水率が1%以上20%よりも小さくなるように調整することができる。
なお、本明細書中の含水率は、下記式で算出することができる。

含水率(%)=100−(繊維原料の固形分重量(g)/接触工程後の含水率測定時における繊維原料の重量(g))×100

繊維原料の固形分重量(g)は、測定に供する繊維原料自体の乾燥重量である。例えば、反応工程に供給される繊維原料の乾燥重量2gに対して、50%程度の水分量を含む繊維原料を事前に乾燥機を用いて105℃で2時間乾燥させたものを測定して得られた値を用いることができる。
接触工程後の含水率測定時における繊維原料の重量(g)は、接触工程後の測定時における繊維原料の重量である。例えば、上述した反応工程に供給する際の繊維原料の重量や、接触工程後の脱水処理をした後の繊維原料の重量、乾燥処理をした後の繊維原料の重量などが挙げることができる。
(反応工程における反応温度)
反応工程における反応温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロース繊維にスルホ基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。
具体的には、接触工程後の繊維原料を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであればよい。このようなものとしては、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置、熱プレス機(例えば、アズワン(株)製、AH−2003C)を用いたホットプレス法等を採用することができる。とくに、反応工程において、ガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
なお、接触工程後の繊維原料の形状はとくに限定されないが、例えば、シート状にしたものや、ある程度ほぐした状態で上記機器等を用いて加熱すれば、反応を均一に進行させやすくなるので好ましい。
反応工程における反応温度は、上記要件を満たせば、とくに限定されない。
例えば、雰囲気温度は、250℃以下が好ましく、より好ましくは雰囲気温度が200℃以下であり、さらに好ましくは雰囲気温度が180℃以下である。
加熱時における雰囲気温度が250℃よりも高くなると、上述したように熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。一方、反応温度が100℃よりも低くなると、反応時間が長くなる傾向にある。
したがって、作業性の観点から、加熱時における反応温度(具体的には雰囲気温度)が100℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上180℃以下となるように調整する。
(反応工程における反応時間)
反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間(つまり反応時間)は、上述したようにセルロース繊維にスルホ基を適切に導入することができれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程における反応時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整する。より具体的には、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは20分以上とする。
反応時間が1分よりも短い場合は、セルロース繊維の水酸基に対するスルホ基の置換反応がほとんど進行していないと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしてもスルホ基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
つまり、反応工程における反応時間は、繊維原料に反応液を接触させて繊維原料中のセルロース繊維の水酸基の一部をスルホ基に置換することができればよい。この反応工程を経て調製されたスルホン化パルプ繊維は、上記反応液と反応させることによって、反応前後における繊維長保持率(%)を高く維持することができるようになる(図4、図6参照)。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の反応時間は、とくに限定されないが、反応時間や操作性の観点から、5分以上300分以内が好ましく、より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
とくに、後述する微細化処理後に得らえるスルホン化微細セルロース繊維を分散した分散液が、優れた粘性を発揮するようにするためには、反応工程において、反応後のスルホン化パルプ繊維が所定の状態に調製するのが好ましい。具体的には、反応工程において、加熱反応後に得らえるスルホン化パルプ繊維は、加熱反応に供するパルプ(繊維原料)と比べて、重合度の変化率が小さくなるように調製する。つまり、スルホン化パルプ繊維は、加熱反応に供するパルプ(繊維原料)に対して、重合度、結晶化度が高い状態に維持されるように調製する。言い換えれば、反応後の重合度と結晶化度の維持率が高くなるように調製する。
例えば、スルホン化パルプ繊維は、加熱反応に供するパルプ(繊維原料)に対して、重合度比(反応前後の重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度))において、50%以上である。好ましくは、この反応前後の重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度)が55%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。つまり、スルホン化パルプ繊維の繊維状態が、反応前後の重合度において、変化率が小さくなっている。逆にいうと、反応後の重合度の維持率が高くなっている。このため、後述する微細化処理工程で得られる解繊後のスルホン化微細セルロース繊維が分散した分散液において、優れた粘性を発揮させることができるようになる。
また、結晶化度においては、例えば、スルホン化パルプ繊維は、加熱反応に供するパルプ(繊維原料)に対して、結晶化度(つまり反応前後の結晶化度比(反応後の結晶化度/反応前の結晶化度))において80%以上である。好ましくは、この反応前後の結晶化度比(反応後の結晶化度/反応前の結晶化度)が85%以上であり、より好ましくは90%である。つまり、スルホン化パルプ繊維は、反応前後の結晶化度の変化率が小さくなっている。逆にいうと、反応後の結晶化度の維持率が高くなっている。このため、後述する微細化処理工程で得られる解繊後のスルホン化微細セルロース繊維が分散した分散液において、優れた粘性を発揮させることができるようになる。
より具体的には、反応工程において重合度と結晶化度が高い状態に維持されるように、接触工程において、反応液に含まれるスルホン化剤と尿素および/またはその誘導体の混合比を調整する。例えば、濃度比において8:1〜1:5の範囲内となるように調整するのが好ましく、より好ましくは4:1〜1:2.5である。また、スルホン化剤は、重合度比と結晶化度比を調整する観点から、スルファミン酸が好ましい。(表14、表15参照)
(スルホン化剤)
反応工程におけるスルホン化剤は、スルホ基を有する化合物であればとくに限定されない。
例えば、スルファミン酸、スルファミン酸塩、硫黄と共有結合する2つの酸素を持つスルホニル基を有するスルフリル化合物などを挙げることができる。なお、スルホン化剤として、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
スルホン化剤は、上記のような化合物であればとくに限定されないが、硫酸等と比べて酸性度が低く、スルホ基の導入効率が高く、低コストで、安全性が高いので取り扱い性の観点から、スルファミン酸を採用するのが好ましい。
(尿素とその誘導体)
反応工程における尿素とその誘導体のうち、尿素の誘導体は、尿素を含有する化合物であればとくに限定されない。
例えば、カルボン酸アミド、イソシアネートとアミンの複合化合物、チアミドなどを挙げることができる。なお、尿素とその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。また、尿素の誘導体は、上記化合物を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
尿素とその誘導体は、上記のような化合物であればとくに限定されないが、低コストで、環境負荷の影響が少なく、安全性が高いので取り扱い性の観点から、尿素を採用するのが好ましい。
(繊維原料)
スルホン化パルプ繊維の製造方法に用いられる繊維原料は、上述したようにセルロースを含むものであればとくに限定されない。
例えば、一般的にパルプといわれるものを用いてもよいし、ホヤや海藻などから単離されるセルロースなどを含むものを繊維原料として採用することができるが、セルロース分子で構成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
上記パルプとしては、例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプが繊維原料として採用しやすい。
この木材パルプには、様々な種類が存在するが、使用に際してとくに限定されない。例えば、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプなどを挙げることができる。
なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
(乾燥工程)
反応工程に供給する際の繊維原料の状態は、上述したように、反応工程に供給する際に水分を含んだ状態であればよく、かかる状態を維持した状態であれば、接触工程と反応工程の間に乾燥工程を含んでいてもよい。
この乾燥工程は、反応工程の前処理工程として機能する工程であり、接触工程後の繊維原料の含水率を少なくする工程である。
ここで、乾燥工程後の繊維原料は、含水率が1%以上になるように調整するのが望ましい。乾燥工程後の繊維原料の含水率が1%よりも低い状態つまり絶乾状態になるまで乾燥した状態の繊維原料を反応工程に供給した場合、絶乾状態により繊維原料における繊維間の水素結合が強固に作用して反応工程におけるスルホン化反応が適切に進行しにくくなる可能性がある。このため、乾燥工程においては、乾燥工程後の繊維原料の含水率が1%以上となるように調整するのが望ましい。
また、乾燥工程を設ければ、つぎのような利点が得られる。
反応工程へ供給する際の繊維原料の含水率が多い場合には、反応工程における加熱反応でスルファミン酸や尿素等の一部が加水分解を受けて反応効率が低下する可能性があったり、条件によっては微細化用の繊維原料として望ましくない反応が起きてしまう可能性がある。そこで、上記加熱反応時における障害等の可能性を抑制する観点で、反応工程前に繊維原料の含水率を低くする乾燥工程を設けてもよい。
乾燥工程を設けることにより、次工程の反応工程において、上記障害等の可能性を抑制できるほか、エステル化反応の反応時間を短縮でき、しかも操作性を向上させることができるようになる。つまり、乾燥工程を設けることにより、接触工程後の繊維原料に付着している反応液中の水分を反応工程に供給する際に適切に除去した状態にできるので、反応工程に供給する際の繊維原料中のスルファミン酸の濃度を上昇させることができる。このため、反応工程において、繊維原料中の水酸基とスルファミン酸とのエステル化反応をより促進させやすくなるという利点が得られる。
なお、乾燥工程において、乾燥工程後の繊維原料の含水率が上述したように1%以上となるように調整されていれば、その方法はとくに限定されない。例えば、乾燥機を用いて、乾燥工程後の繊維原料の含水率が雰囲気中の水分量とほぼ平衡状態となるように調整してもよいし、含水率が15%以下、10%以下、さらには5%程度にまでなるように調整してもよい。
ここで、本明細書における平衡状態とは、処理施設内における雰囲気中の水分と原料中の水分が見かけ上出入りしなくなる状態のことを意味する。具体的には、一定時間乾燥させたのち、連続して測定した2回の重量の変化量が乾燥開始時の重量に対して1%以内となった状態を意味する(ただし、2回目の重量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とする)。
乾燥工程における乾燥温度は、とくに限定されないが、反応工程における加熱反応の加熱温度よりも低い温度で乾燥するのが望ましい。加熱時における雰囲気温度が100℃よりも高くなると、スルホン化剤等の分解が起こる可能性がある。一方、加熱時における雰囲気温度が20℃よりも低いと、乾燥に時間がかかる。したがって、乾燥工程における乾燥温度は、例えば、乾燥時における雰囲気温度が100℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは、50℃以上100℃以下である。つまり、乾燥工程における乾燥時の雰囲気温度は、100℃以下が好ましく、操作性の観点では20℃以上となるように調整するのが好ましい。
(洗浄工程)
スルホン化パルプ繊維製法の化学処理工程における反応工程の後に、スルホ基を導入した後の繊維原料を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
スルホ基を導入した後の繊維原料は、スルホン化剤の影響により表面が酸性になっている。また、未反応の反応液も存在した状態となっている。このため、反応を確実に終了させ、余分な反応液を除去して中性状態にする洗浄工程を設ければ、取り扱い性を向上させることができるようなる。
この洗浄工程は、スルホ基を導入した後の繊維原料がほぼ中性になるようにできれば、とくに限定されない。
例えば、スルホ基を導入した後の繊維原料が中性になるまで純水等で洗浄するという方法を採用することができる。
また、アルカリ等を用いた中和洗浄を行ってもよい。かかる中和洗浄を行う場合、アルカリ溶液に含まれアルカリ化合物としては、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物などを挙げることができる。そして、無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を挙げることができる。有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、複素環式化合物の水酸化物などを挙げることができる。
<スルホン化微細セルロース繊維の製造方法>
スルホン化微細セルロース繊維は、図1に示すように、上記のごとくスルホン化パルプ繊維製法を用いて調製されたスルホン化パルプ繊維をスルホン化微細セルロース繊維製法における微細化処理工程に供給し、微細化することによって得られる。
そして、スルホン化微細セルロース繊維製法では、微細化処理工程に供給されるスルホン化パルプ繊維が上記のごとく所定の繊維状態となるように調製されていれば、微細化処理後に、分散液に対して優れた粘性を付与することができるスルホン化微細セルロース繊維を調製することができる。そして、このような分散液の増粘性効果は、C6位にスルホ基を有することに起因して生じる現象である。このため、分散させた際に分散液に対して優れた粘性を付与するためには、スルホ基をC6位に優先的に導入したスルホン化微細セルロース繊維を調製することが重要となる。
(微細化処理工程)
スルホン化微細セルロース繊維製法における微細化処理工程は、スルホン化パルプ繊維を微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。
この微細化処理工程に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。
例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。
これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
微細化処理工程において、高圧ホモジナイザーを用いる場合、上述した製法で得られたスルホン化パルプ繊維を水などの水溶性溶媒に分散させた状態で供給する。なお、以下では、スルホン化パルプ繊維を分散させた状態の溶液をスラリーという。
このスラリーのスルホン化パルプ繊維の固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、このスラリーのスルホン化パルプ繊維の固形分濃度が、0.1質量%〜20質量%となるように調整した溶液を高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給すればよい。
例えば、スルホン化パルプ繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調整したスラリーを高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給した場合、同じ固形分濃度のスルホン化微細セルロース繊維が水溶性溶媒に分散した状態の分散液を得ることができる。つまり、この場合であればスルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調整された分散液を得ることができる。
(微細化処理と保水度の関係)
また、微細化処理工程において供給されるスルホン化パルプ繊維の保水度は、上記装置等で微細化し易いように調整されていれば、とくに限定されない。
例えば、微細化の処理効率や使用エネルギーの削減といった観点では、保水度を高くなるように調製したスルホン化パルプ繊維を使用するのが望ましい。そして、これらの観点では、スルホン化パルプ繊維の保水度としては、150%以上となるように調整するのが好ましい。とくに、200%よりも高くなるように調製されたものを用いるのが好ましく、より好ましくは220%以上であり、さらに好ましくは250%であり、よりさらに好ましくは300%以上であり、さらにより好ましくは500%となるように調製されたものを用いるのがよい。一方、保水度が10,000%よりも高くなるとスルホン化処理後のスルホン化パルプ繊維の回収率が低下する傾向にある。
したがって、微細化効率の観点および回収率の観点においては、微細化処理工程に供給する際のスルホン化パルプ繊維の保水度は、150%〜10,000%が好ましく、より好ましくは200%〜10,000%であり、さらに好ましくは220%〜10,000%であり、さらにより好ましくは250%〜5,000%であり、よりさらに好ましくは250%〜2,000%である。
なお、微細化処理工程に供するスルホン化パルプ繊維の保水度が高い場合には、以下の利点も得らえる。
微細化処理工程に供するスルホン化パルプ繊維の保水度が高いほど繊維は膨潤しているので繊維はほぐれ易くなっている。
このため、上述したように微細化処理工程で用いる解繊機等の微細化効率を向上させることはもちろん、用いる解繊機等内で繊維が詰まるなどの不具合の発生を抑制できるという利点が得られる。このため、スムースな微細化(解繊)を行うことができるので、より高濃度のパルプ繊維を解繊機等で処理することができる。
しかも、スムースな微細化(解繊)を行うことができるようになるので、微細化処理工程に要する時間をより短縮することができる。例えば、解繊機を使用する場合には少ない回数のパスで微細化することができる。
ここで、従来、解繊処理の解繊機として高圧ホモジナイザーを用いる場合、高圧ホモジナイザーの解繊圧力が高圧になればなるほど処理能力が大きく落ちてしまうといった問題が生じている。例えば、所望の大きさの繊維を製造するために、解繊圧力が100MPa以上で解繊処理を行う一般的な汎用機を用いた場合には、一時間当たりの処理量が数百Lと非常に製造効率が悪い。一方で、この解繊圧力を数十MPaで行えば、一時間当たりの処理量を数千Lと、桁違いに高い量を処理することができる。しかし、解繊圧力を低く設定しているので、繊維を所望の大きさまで解繊することができないとった問題が生じている。つまり、従来、パルプの解繊処理においては、より低い解繊圧力で、より少ない処理回数での解繊処理が求められている。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維では、保水度を調整することによって解繊性を向上させることができ、また本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法では、保水度を調整することによって優れた解繊性を有するスルホン化パルプ繊維を製造することができるので、上述したような解繊処理における問題も適切に解決することができる。
とくに、スルホン化微細セルロース繊維を分散した分散液が優れた粘性を発揮するためには、スルホン化微細セルロース繊維のC6位へ優先的にスルホ基が導入されていることが重要である旨は上記のとおりである。そして、このような機能を発揮するスルホン化微細セルロース繊維を適切に調製するには、解繊前後の繊維状態を把握することが重要となる。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維製法では、解繊処理工程後に得られるスルホン化微細セルロース繊維は、解繊処理に供するスルホン化パルプ繊維と比べて、重合度の変化率が大きくなるように調製されている。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、解繊処理に供するスルホン化パルプ繊維に対して、重合度が低くなるように調製する。言い換えれば、解繊処理(微細化処理)後の重合度の維持率が低くなるように調製する。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維は、解繊処理に供するスルホン化パルプ繊維に対して、重合度比(微細化処理後の重合度/微細化処理前の重合度)において、85%以下である。好ましくは、この解繊処理前後の重合度比(微細化処理後の重合度/微細化処理前の重合度)が80%以下であり、より好ましくは70%以下である。
以上のごとく、スルホン化微細セルロース繊維は、解繊前後の重合度の変化率が大きくなることにより(逆にいうと、解繊前後の重合後の維持率が小さくなることにより)、スルホン化微細セルロース繊維を分散した際の分散液の粘性が高くできる傾向にある。
また、スルホン化微細セルロース繊維製法では、解繊処理工程後に得られるスルホン化微細セルロース繊維は、解繊処理に供するスルホン化パルプ繊維と比べて、結晶化度の変化率が大きくなるように調製されている。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、解繊処理に供するスルホン化パルプ繊維に対して、結晶化度が低くなるように調製する。言い換えれば、解繊処理(微細化処理)後の結晶化度の維持率が低くなるように調製する。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維は、解繊処理に供するスルホン化パルプ繊維に対して、結晶化度比(微細化処理後の結晶化度/微細化処理前の結晶化度)において、75%以下である。好ましくは、この解繊処理前後の結晶化度比(微細化処理後の結晶化度/微細化処理前の結晶化度)が70%以下であり、より好ましくは60%以下である。
以上のごとく、スルホン化微細セルロース繊維は、解繊前後の結晶化度の変化率が大きくなることにより(逆にいうと、解繊前後の結晶化度の維持率が小さくなることにより)、スルホン化微細セルロース繊維を分散した際の分散液の粘性が高くできる傾向にある。
したがって、本製法を用いることにより、硫黄導入量が所定の範囲内に入るように調整され、スルホン化の導入位置がC6位に優先的に行われるように調整され、重合度および/または結晶化度が所定の範囲内となるように調整されたスルホン化微細セルロース繊維が得られる。そして、かかるスルホン化微細セルロース繊維は、水などの溶液に分散した際、かかる分散液に対して所定の値以上の粘性を付与することができるになっている。
なお、上記したスルホン化微細セルロース繊維の繊維形状は、C6位にスルホ基を有することに起因して生じる現象であり、この理由については後述する実施例にて詳細に説明する。
本発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法を用いることによって本発明のスルホン化パルプ繊維および本発明の誘導体パルプを製造することができ、本発明のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法を用いることによって本発明のスルホン化微細セルロース繊維を製造できることを確認した。また、調製された本発明のスルホン化パルプ繊維および本発明のスルホン化微細セルロース繊維が所定の特性を有していることを確認した。
<実験1>
実験1では、繊維原料として、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)(平均繊維長が2.6mm)を使用した。以下では、実験に供したNBKPを単にパルプとして説明する。
パルプは、大量の純水で洗浄後、200メッシュのふるいで水を切り、固形分濃度を測定後、乾燥させることなく実験に供した。
(化学処理工程)
パルプを以下のように調製した反応液に加え撹拌してスラリー状にした。
このパルプを反応液に加えてスラリー状にする工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における接触工程に相当する。
(反応液の調製)
スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体が以下の濃度となるように調製した。
実験1では、スルホン化剤として、スルファミン酸(純度98.5%、扶桑化学工業製)を使用し、尿素またはその誘導体として、尿素溶液(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。
両者の混合比は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、1:2.5となるように混合し水溶液を調整した。具体的には、スルファミン酸と尿素は、以下のように混合した。
スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/50、200/100、200/200、200/500、50/25、100/50、200/100
反応液の調製の一例を以下に示す。
容器に水100mlを加えた。ついで、この容器にスルファミン酸20g、尿素10gを加えて、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/100(1:0.5)の反応液を調製した。つまり、尿素は、スルファミン酸100重量部に対して50重量部となるように加えた。
(接触工程)
この調製した反応液に対してパルプ2g(乾燥重量)を加えた。
例えば、上記スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/100(1:0.5)の反応液の場合、スルファミン酸は、パルプ100重量部に対して、1000重量部となるように調製した。また、尿素は、500重量部となるように調製した。
比較例1(「乾燥工程有条件」)、比較例2(「乾燥工程無条件」)として、反応液をスルファミン酸濃度200g/Lとして尿素を添加しない比較サンプル(スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/0)を調製した。比較例1、比較例2は、尿素を添加しない以外は、他の実験例と同様の操作を行った。
ブランクパルプとして、反応液に接触させていないNBKP(BL)を使用した。
反応液にパルプを添加して調製したスラリーを10分間撹拌子を用いて撹拌した。撹拌後、スラリーをろ紙(No.2)を用いて吸引ろ過した。吸引ろ過は溶液が滴下しなくなるまで行った。吸引ろ過後、ろ紙からパルプを剥がし、ろ過したパルプを恒温槽の温度を50℃に設定した乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR−115)に入れて含水率が平衡状態になるまで乾燥した。つまり、加熱反応の前に乾燥を行った状態のものを次工程の加熱反応の工程に供給した。以下では、この乾燥を行った条件のものを単に「乾燥工程有条件」という。
反応液にパルプを接触させる工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における接触工程に相当する。スラリーを吸引濾過する工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における脱水処理工程に相当する。そして、ろ過後のパルプを乾燥させる工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における乾燥工程に相当する。
なお、加熱反応の前に上記条件の乾燥を行った「乾燥工程有条件」のパルプおよび加熱反応の前に上記条件の乾燥を行わなかった「乾燥工程無条件」のパルプは、いずれも本実施形態の非絶乾状態のパルプに相当する。また、「乾燥工程有条件」および「乾燥工程無条件」のいずれの条件で調製されたパルプもその含水率は、全て1%以上であった。
含水率は、下記式を用いて算出した。また、平衡状態の評価方法は、恒温槽の温度を50℃に設定した上記乾燥機にて1時間乾燥後、連続して測定した2回の重量の変化量が乾燥開始時の重量に対して1%以内となった状態を平衡状態にあるとした(ただし、2回目の重量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とした)。

含水率(%)=100−(パルプの固形分重量(g)/反応液に接触させた後の含水率測定時におけるパルプ重量(g))×100

パルプの固形分重量(g)とは、測定対象のパルプ自体の乾燥重量をいい、本実験では実験に供した乾燥パルプ2gが相当する。なお、乾燥パルプの重量は、上記乾燥機を用いて温度105℃、2時間乾燥したものを測定した。
本実験では、吸引脱水した後のパルプ重量や、乾燥後のパルプ重量が、反応液に接触させた後の含水率測定時におけるパルプ重量(g)に相当する。
実験では、吸引ろ過後のパルプの含水率は、50%〜80%であり、全て80%以下であった。また、「乾燥工程有条件」の乾燥後のパルプの含水率は、数%〜10%程度(乾燥温度50℃)であった。
(反応工程)
ついで、この乾燥したパルプを次工程の加熱反応の工程に供して加熱反応を行わせた。
加熱反応には、乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR−115)を用いた。
加熱反応の反応条件は以下の通りとした。
恒温槽の温度:100℃、120℃、140℃、加熱時間:5分、25分、60分、120分
この加熱反応が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程に相当する。また、加熱反応における反応条件の温度が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応温度に相当し、加熱反応における反応条件の加熱時間が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応時間に相当する。
加熱反応後、反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプを調製した(実施例1〜16)。
この反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄する工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における洗浄工程に相当する。
また、調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプが、本実施形態の誘導体パルプに相当し、スルファミン酸/尿素処理パルプを構成する反応パルプ繊維が本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当する。つまり、本実施形態の誘導体パルプに相当するスルファミン酸/尿素処理パルプは、本実施形態のスルホン化パルプ繊維に相当する反応パルプ繊維であるスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のみを集合させたものである。
なお、乾燥工程を省略する場合は、吸引ろ過後、ろ紙からパルプを剥がしたものをそのまま加熱反応に供した。つまり、加熱反応の前に上述したような乾燥を行わず、直接次工程の加熱反応に供給した。次工程の加熱反応の反応条件は、上述と同様の条件下で行った。なお、以下では、この乾燥を行わなかった条件のものを単に「乾燥工程無条件」という(実施例17〜22)。
(微細化処理工程)
ついで、調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプを高圧ホモジナイザー(GEAニロソアビ社製、型番;Panda Plus 200)を用いてナノ化(微細化)を行ってナノセルロースを調製した。
高圧ホモジナイザーの処理条件は、以下の通りとした。
高圧ホモジナイザーに供給するスラリー中のスルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。高圧ホモジナイザーの解繊圧力は、120〜140MPaとした。
なお、各スルファミン酸/尿素処理パルプは、高圧ホモジナイザーで解繊回数3回(3パス)処理することによりナノセルロース繊維を調製した。
この高圧ホモジナイザーを用いた解繊操作が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法における微細化処理工程に相当する。そして、調製されたナノセルロース繊維が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維に相当する。
(パルプ収率(%))
化学処理前後でのパルプの収率を下記式から求めた。
化学処理後のパルプの回収は300meshワイヤーを用いて行った。

収率(%)=(化学処理工程後に回収したパルプの固形分重量(g)/化学処理工程前に仕込んだパルプの固形分重量(g))×100

本実験では実験に供した乾燥パルプ2gが、「化学処理工程前に仕込んだパルプの固形分重量(g)」に相当する。
(元素分析(硫黄))
化学処理後のパルプに含まれる硫黄分を燃焼イオンクロマトグラフにより求めた。測定方法はIEC 62321の測定条件に準拠して測定した。
燃焼装置:三菱ケミカルアナリテック社製、型番;AQF−2100 H
イオンクロマト:サーモフィッシャーサイエンス社製、型番;ICS−1600
(保水度の測定)
化学処理後の繊維の保水度の測定は、以下に示すようにTAPPI No.26に準拠して行った。
保水度とは、測定の対象とするパルプスラリーを遠心カップと呼ぼれる容器中で脱水後、容器ごと遠心沈澱管中に入れ、3000Gの遠心力で、15分間遠心分離した後、パルプ中に残存する水の量を乾燥後の試料重量に対する割合で表示した値である。
本実験では、遠心カップには、300メッシュワイヤを貼った塩ビ管(外径3.4cm、内径2.6cm、長さ7.5cm、底部より1.8cmの内部にメッシュを貼り付け)のカップを用いた。遠心処理には、(株)久保田製作所製KUBOTA KR/702型の遠心分離機を用いた。
まず、スルホン化処理後の洗浄パルプ(スルファミン酸/尿素処理パルプ)を、300メッシュの金網ザルで、パルプの固形分量が1〜10%の範囲になるように脱水し、固形分量で0.5gのパルプを図り取る。図り取ったパルプを遠心カップに入れ、吸引ろ過を行い、水分がパルプ表面から引いたところで吸引を止める。その後、遠心脱水(3000G、15分間)し、遠心カップ内のメッシュ上の湿潤パルプ重量と、乾燥後のパルプ重量の比から下記式を用いて保水度を算出した。遠心処理中の内部温度は、20℃±5℃の条件で行った。

保水度(%)=100×(遠心処理後の湿潤パルプ重量(g)−乾燥パルプ重量(g))/乾燥パルプ重量(g)
(FE−SEMを用いた繊維形態の観察)
化学処理後のパルプの表面観察は、FE−SEM(日本電子(株)社製、型番;JSM−7610)を用いて行った。試料は、微細繊維分散液の溶媒をt−ブチルアルコールに置換し、凍結乾燥したものをオスミウムによりコーティングして観察に供した。
(繊維の配向性の測定)
パルプのFE−SEM画像を画像解析し、繊維の配向性を評価した。
画像解析ソフトにはFiberOri8s03を用いた。このソフトは紙表面の繊維配向を学術的に評価することにも用いられている。
(白色度の測定)
白色度の測定は、JIS P 8148:2001 紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)に準拠して測定した。
測定に用いるサンプルは、化学処理後のパルプを水で洗浄し、凍結乾燥後のものを用いた。
白色度の測定は、調製したサンプルのパルプをISO白色度計(日本電色工業(株)製:PF−10)にセットし、白色度を測定した。
(SPMを用いた繊維形態の観察および繊維幅の測定)
高圧ホモジナイザー処理後のナノセルロース繊維を純水で固形分濃度0.001〜0.005質量%に調製し、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行った。
このシリカ基盤上のナノセルロース繊維の観察を、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、型番;SPM−9700)を用いて行った。
繊維幅の測定は、観察画像中の繊維をランダムに20本選び測定した。
(ヘイズ値の測定および全光線透過率の測定)
ヘイズ値の測定および全光線透過率の測定には、ナノセルロース繊維を純水で、固形分濃度が0.5質量%となるように調製した測定溶液を用いた。
なお、微細化処理工程において、高圧ホモジナイザーに供給したスラリー中のスルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度(処理パルプ固形分濃度)が0.5質量%となるように調製したものは、微細処理後に得られた分散液中のナノセルロース繊維の固形分濃度も同じ0.5質量%となる。このため、この分散液は、調整することなく、そのままナノセルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%として測定に供した。
調製した測定溶液から所定量を分取して分光光度計(日本分光(株)社製、型番;V−570)に積分球形(日本分光(株)製 ISN−470)を取り付け、ヘイズ値の測定および全光線透過率を以下のとおり測定した。なお、測定方法は、JIS K 7105の方法に準拠して行った。
純水を入れた石英セルをブランク測定値とし、0.5質量%のナノセルロース分散液の光透過度を測定した。測定波長の範囲は、380〜780nmとした。
全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)の算出は、分光光度計により得られた数値から付属の計算ソフトを用いて計算した。
上記分光光度計に供した測定溶液が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法における分散液に相当する。
(重合度の測定)
JIS P 8215(1998)に従い、ナノセルロース繊維の極限粘度(固有粘度)A法を参考に、ナノセルロース繊維の極限粘度(固有粘度)を測定した。測定時の変更点として、原料としてパルプおよびナノセルロース繊維を固形分量で0.1g計り取り実験に用い、3回の測定の平均値を測定値とした。そして、各固有粘度(η)から、下記式により、ナノセルロース繊維の重合度(DP)を算出した。なお、この重合度は、粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称されることもある。

DP=1.75×[η]
(実験1の結果)
(スルファミン酸/尿素処理パルプの実験結果)
表1、表2は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性表である。表1には、実施例1〜16、BLおよび比較例1について示す。表2には、実施例17〜22、BLおよび比較例2について示す。
Figure 0006966606
Figure 0006966606
表1は、加熱反応前に乾燥を行った条件下(乾燥工程有条件)でのスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性表である(実施例1〜16)。
表2は、加熱反応前に乾燥を行わなかった条件下(乾燥工程無条件)でのスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性表である(実施例17〜22)。
図2〜図6は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性を具体的に示したものである。
図2は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量(mmol/g)および保水度(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示したグラフである(実施例13〜16、比較例1)。
図3は、乾燥工程無条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示したグラフである(実施例17〜22、比較例2)。
図4(A)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のパルプ繊維長(mm)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示したグラフであり、図4(B)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の化学処理前後の繊維長維持率(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示したグラフである(実施例13〜16、比較例1)。
図5は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量(mmol/g)と反応温度との関係を示したグラフである(実施例1〜12)。
図6(A)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の繊維長(mm)と反応温度と処理時間の関係を示したグラフであり、図6(B)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の化学処理前後の繊維長維持率(%)と反応温度と処理時間の関係を示したグラフである(実施例1〜12)。
実験結果から、スルファミン酸と尿素の濃度比において、尿素の混合割合を調整することによって、「乾燥工程有条件」、「乾燥工程無条件」に関わらず、硫黄導入量(mmol/g)が0.56mmol/g〜0.97mmol/gで調整されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(例えば図2参照)を調製できることが確認できた。
図2または図3に示すように、「乾燥工程有条件」、「乾燥工程無条件」に関わらず、スルファミン酸と尿素の濃度比において、尿素の混合割合を調整することによって、保水度が250%〜4600%の範囲で制御されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。つまり、スルファミン酸と尿素の濃度比を調整することによって、硫黄導入量および保水度が制御されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
なお、図2および図3から、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量と保水度は、似たような傾向となったことから、両者間には何らかの関係性があるものと推察された。
図4に示すように、尿素を混合しなかった比較例1と比べて繊維長が長いスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。つまり、製造工程において、尿素を混合することによって、スルファミン酸による短繊維化を防止したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
しかも、反応後の繊維の長さが反応前と比較してほぼ同じ長さに維持されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
図5、図6に示すように、反応温度や加熱時間を調整することによって、硫黄導入量および繊維長が制御されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
図5に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量を0.5mmol/g以上とするには、120℃または140℃の条件下において、15分以上とすればよく、両者よりも温度が低い100℃の条件下においては、35分以上とすればよいことが確認できた。
また、図6に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の繊維長を長くするには、温度が低い条件のものが好ましいことが確認できた。
図7は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(乾燥工程有、反応条件:温度120℃、時間25分)の表面拡大写真(5万倍)である。
図7(A)〜(D)は、それぞれスルファミン酸/尿素比が200/50(1:0.25)、200/100(1:0.5)、200/200(1:1)、200/500(1:2.5)の表面拡大写真である(実施例13〜16)。
図7(E)は、比較例として示したNBKP(BL)の表面拡大写真である。
図7(A)〜(D)のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量は、それぞれ(A)0.56mmol/g、(B)0.84mmol/g、(C)0.97mmol/g、(D)0.65mmol/gであった。
図7(A)〜(D)のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度は、それぞれ(A)980%、(B)1920%、(C)1120%、(D)250%であった。
Figure 0006966606
表3、図8、図9はスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維と表面繊維の配向度との関係を示したものである(実施例13〜16、BL)。
表3は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維と表面繊維の配向度の関係を示したものであり、図8は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の表面繊維の配向度とスルファミン酸/尿素の関係を示したグラフである。
図9はスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(乾燥工程有、反応条件:温度120℃、時間25分)の表面拡大写真(10万倍)である(実施例13〜16)。
図9(A)〜(D)は、それぞれスルファミン酸/尿素比が200/50(1:0.25)、200/100(1:0.5)、200/200(1:1)、200/500(1:2.5)の表面拡大写真である。
図9(E)は、比較例として示したNBKP(BL)の表面拡大写真である。
図9(A)〜(D)のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の配向度は、それぞれ(A)1.18、(B)1.04、(C)1.10、(D)1.30であった。
本測定方法では、配向度(配向強度)が1.1以下は無配向であり、1.1〜1.2はやや配向しており、1.2以上は強い配向となっていると判断した。
この実験結果から、スルファミン酸と尿素の濃度比において、反応液の尿素の混合割合を低くすることによって、表面の繊維の配向性をランダムな状態にさせたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。そして、その逆に、尿素の混合割合を大きくすると、表面の繊維の配向性が整った状態のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。つまり、スルファミン酸と尿素の濃度比を調整することによって、表面の繊維配向性を制御できるスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
また、この実験結果から、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の表面繊維の配向度は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のフィブリル化の程度を示す指標にできることが確認できた。そして、配向度と保水度は、スルファミン酸/尿素比が200/100付近を境に特定の傾向を示すことが確認されたことから(例えば、図2と図8を参照)、保水度を調整することによって、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のフィブリル化を制御できることが確認できた。
図10は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の解繊処理のし易さを確認した図であり、代表として、「乾燥工程有条件」のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を用いた結果を示したものである。
図10(A)に示すように、解繊回数3回(3パス)で平均繊維幅を20nm以下のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維が得られることが確認できた。一方、化学処理を行っていない微細繊維(つまりブランクパルプのNBKP)は、解繊回数20回(20パス)しても平均繊維幅が30nm〜50nmであり、平均繊維幅20nm以下のものは得ることができなかった。
図10の写真は、解繊後の微細繊維をFE−SEMで観察し、観察画像中の繊維幅の測定状況を示したものである。繊維の幅の測定には10万倍の拡大写真を用いた。画像内の繊維幅(例えば、図10の白抜き矢印で示した繊維の幅)の測定方法として、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に二本引き、これらの直線と交錯する繊維の幅を目視で計測した。平均繊維幅は、50本の繊維の平均値から求めた。
Figure 0006966606
表4は、「乾燥工程有条件」のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維と白色度の関係を示したものであり、図11は、スルファミン酸/尿素比と白色度の関係を示したグラフである(実施例13〜16、比較例1、BL)。
表4および図11から、反応液に尿素を混合することによって、スルファミン酸による繊維への着色を抑制したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
また、スルファミン酸と尿素の濃度比において、尿素の混合割合を調整することによって、白色度を制御したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
(ナノセルロース繊維の実験結果)
表5は、「乾燥工程有条件」のナノセルロース繊維の特性表である(実施例23〜39)。
表6は、「乾燥工程無条件」のナノセルロース繊維の特性表である(実施例40〜55)。
Figure 0006966606
Figure 0006966606
表5は、乾燥を行った条件下(乾燥工程有条件)で得られたナノセルロース繊維の特性表である。表5において、実施例39は、他の実施例(例えば実施例36)と同様に「乾燥工程有条件」下でスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した後、微細化処理したものである。また、表5において、実施例39と実施例36は、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))がいずれも2:1であるので、関係性を確認する隣接して表示した。
表6は、乾燥を行わなかった条件下(乾燥工程無条件)で得られたナノセルロース繊維の特性表である。表6において、下の表は表2の実施例17〜20を微細化処理したものであり、上の表の実施例40〜51は、他の他の実施例(例えば実施例17)と同様に「乾燥工程無条件」下でスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した後、微細化処理したものである。
図12〜図14は、ナノセルロースの特性を具体的に示したものである。
図12は、乾燥工程有条件下で得られたナノセルロース繊維の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示したグラフである(実施例35〜38、比較例3)。
図13は、乾燥工程無条件下で得られたナノセルロース繊維の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示したグラフである(実施例52〜55、比較例4)。
図14は、乾燥工程有条件下で得られたナノセルロース繊維の重合度(つまりナノセルロース繊維の平均繊維長に相当するもの)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である(実施例35〜38、BL、比較例3)。
比較例3、比較例4として、反応液をスルファミン酸濃度200g/Lとして尿素を添加しない比較サンプル(スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/0)を調製した。尿素を添加しない以外は、他の実験例と同様の操作を行った。
この実験結果から、表5、表6に示すように、ナノセルロース繊維の平均繊維幅は、すべて20nm以下に調製できることが確認できた。
表5、表6、図12、図13に示すように、測定溶液(つまり分散液)のナノセルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調製した場合、全てにおいて全光線透過率(%)が90%以上となっており、しかもヘイズ値(%)が、42.7%、23.9%のものが一部存在するものの、それ以外は全て20%以下であり、その大半において15%以下のナノセルロース繊維を調製することができることが確認できた。つまり、「乾燥工程有条件」、「乾燥工程無条件」に関わらず、得られたナノセルロース繊維は、分散液における分散性を向上させ、しかも非常に高い透明性を有するナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。なお、分散液の透明性とは、分散液の透明性を全光線透過率で評価し、分散液の濁りをヘイズ値で評価したものである。言い換えれば、反応工程に供給する際のパルプが、水分を含まない絶乾(つまり含水率が1%よりも低いもの)以外であれば、透明性の高いナノセルロース繊維および保水度の高いスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製することができることが確認できた。
なお、透明性が求められている市販の樹脂フィルムにおいて、高い透明性を有するメタクリル製のフィルムの全光線透過率(%)は90%程度であり、汎用樹脂であるポリエチレン製のフィルムのヘイズ値(%)は20%程度であることから、実験で得られたナノセルロース繊維は、従来の市販品と同程度またはそれ以上の品質を有していることが確認できた。
図14に示すように、ナノセルロース繊維は、重合度386〜478となるように調製できることが確認できた。この値は、スルファミン酸のみの条件下で得られナノセルロース繊維(比較例B)と比べて高くできることが確認できた。つまり、反応液において尿素を混合することによって、重合度(つまり繊維長)を向上させたナノセルロース繊維が得らえることが確認できた。言い換えれば、繊維間のからみあいがし易くなったナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
なお、重合度を400、グルコース1分子の軸方向の長さを約5Å(約0.5nm)とした場合、繊維長が約200nmのナノセルロース繊維を得ることができることが確認できた。
表7は、スルファミン酸に類似した化合物を反応液として使用した場合の実験結果を示したものである(実施例53、比較例5、BL)。
Figure 0006966606
この実験では、スルファミン酸に類似した化合物として、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)を使用した。実験方法としては、スルファミン酸の代わりに硫酸水素アンモニウムを用いた以外は同様の方法で行った。
表7に示すように、比較例5において、解繊回数3回(3パス)では、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)/尿素系パルプ繊維を解繊することができなかった。
なお、表7には、比較のために表6の実施例53を示した。
この実験結果から、尿素は、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)を用いたスルホン化において、スルファミン酸/尿素の系と同様の機能(例えば、触媒として機能など)を発揮しないか、または発揮しても十分に機能していないことが確認できた。
したがって、スルファミン酸/尿素の系では、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)を用いてスルホン化する場合と比べて、微細化効率を向上させることができ、しかも、スルホン化の程度を向上させることができることが確認できた。
<実験2>
実験2では、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度を調整することによって、解繊がし易いスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることを確認した。
解繊のし易さの評価は、(実験1)で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ(実施例13〜16、比較例1)を固形分濃度が0.2質量%となるように調製したスラリーを高圧ホモジナイザーに供給し、調製されたナノセルロース繊維が分散した分散液に含まれる繊維残存率に基づいて評価した(実施例56〜59、比較例6)。
また、かかる固形分濃度における全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)もそれぞれ確認した。
高圧ホモジナイザーの条件は以下の通りとした。
まず、高圧ホモジナイザー(株式会社コスにじゅういち社製、型番;N2000−2C−045型)を用いて予備解繊を行った。予備解繊は、解繊圧力10MPaで解繊回数2回、50MPaで解繊回数1回で処理した。そして、この予備解繊を行ったスラリーを高圧ホモジナイザーに供してナノセルロース繊維を調製した。このときの解繊圧力は、(実験1)の約半分の60MPaとした。
なお、高圧ホモジナイザー以外の装置は、(実験1)で使用した装置を使用した。
また、実験2の測定方法において、(実験1)と重複する説明については割愛する。
(繊維残存率(%))
調製されたナノセルロース繊維を含む分散液に含まれる未解繊の繊維の繊維残存率(%)は、解繊処理前と後における固形分0.05g中の測定繊維に基づいて算出した。
使用した装置は、ファイバーテスター(ローレンツェン&ベットレー(株)社製)である。
まず、上記装置を使用して、解繊処理前のスルファミン酸/尿素処理パルプを固形分濃度が0.2質量%となるように調製したスラリーから、固形分0.05g中に測定可能な繊維が何本存在しているかを測定した。
ついで、上記装置を使用して、解繊処理後のナノセルロース繊維の分散液から、固形分0.05g中に測定可能な繊維が何本存在しているかを測定した。
そして、以下の式から繊維残存率(%)を算出した。

繊維残存率(%)=(解繊処理後の測定値/解繊処理前の測定値)×100
(実験2の結果)
表8、図15は、「乾燥工程有条件」で調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)と繊維残存率(%)および高圧ホモジナイザーのパス数との関係を示したものである(実施例56〜59)。
繊維残存率(%)が1%以下の場合には、分散液中に含まれる繊維を目視観察で確認することはできなかった。
Figure 0006966606
表8および図15に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)が高いほど繊維残存率(%)が低くなることが確認できた(実施例56〜59)。
そして、保水度(%)が980%、1120%および1920%のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維が集合したスルファミン酸/尿素処理パルプでは、解繊圧力が60MPa以下、解繊回数1回(1パス)処理で透明度が高いナノセルロース繊維が得られることが確認できた。
しかも、保水度(%)が250%のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維が集合したスルファミン酸/尿素処理パルプであっても、解繊回数2回(2パス)処理によって高い透明度を有するナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
また、表9、図16に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)が比較例D(保水度180%)よりも高ければ、解繊回数1回(1パス)処理で、高い全光線透過率(%)を有するナノセルロース繊維を調製できることが確認できた(実施例56〜59、比較例6)。
Figure 0006966606
図17に示すように、解繊回数2回(2パス)処理によってヘイズ値(%)が15%以下のナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。とくに、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)が1000%以上の場合には、解繊回数1回(1パス)処理でヘイズ値(%)が5%以下のナノセルロース繊維を調製できることが確認できた(実施例56〜59、比較例6)。
比較例6では、解繊処理後に得られた分散液は、沈殿物が多量に含まれ濁った状態であった。そして、図16、図17に示すように、比較例6のヘイズ値(%)がほぼ100%であり、全光線透過率(%)が40%以下であったことから、本条件下での解繊では比較例Dを適切に解繊することができないことが確認できた。
また、解繊回数(パス数)を増加させて解繊を行った場合にも比較例6では十分な解繊結果が得られなかった。
実験2の実験結果より、反応液に尿素を混合する製法を採用することによって、従来の技術では想定されなかった低い解繊圧力であっても解繊を容易に行うことができるスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製できることが確認できた。
しかも、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)を比較例6(保水度180%)よりも高くし、かつスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量を比較例の0.42mmol/gよりも高くなるように調製すれば、透明性の高いナノセルロース繊維を容易に調製できることが確認できた。
とくに、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)が1000%以上となるように調製すれば、解繊圧力60MPa以下、解繊回数1回(1パス)で容易にヘイズ値(%)が5%以下の非常に透明性の優れたナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
<実験3>
実験3では、調製されたナノセルロース繊維への解繊処理におけるスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の固形分濃度の影響について確認した。
この実験では、上述したスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/100(1:0.5)の反応液を用いて上記のごとき製法(乾燥工程有、反応条件:温度120℃、時間25分、保水度1920%)で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(実施例14)を固形分濃度が、それぞれ0.5質量%と0.2質量%となるように調製したスラリーを高圧ホモジナイザーに供給した。そして、得られたナノセルロース繊維の品質を全光線透過率(%)、ヘイズ値(%)および解繊後の未解繊繊維数で評価した(実施例60〜61)。
全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)を(実験1)と同様の方法で測定した。
未解繊繊維数は、解繊処理後における固形分0.05g中の未解繊の繊維をファイバーテスター(ローレンツェン&ベットレー(株)社製)で測定して固形分0.05g中に測定可能な繊維が何本存在しているかを計測した。
(実験3の結果)
実験3の実験結果を表10および図18に示す(実施例60〜61)。
表10および図18は、高圧ホモジナイザーに供給するスラリー中のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の固形分濃度と得られるナノセルロース繊維への影響について確認したものである。
Figure 0006966606
表10および図18に示すように、いずれも全光線透過率(%)が約100%であり、ヘイズ値(%)が5%以下であった。また、未解繊繊維数においては、解繊回数1回(1パス)処理ではいずれも30本以下であり、固形分濃度(0.5質量%と0.2質量%)の違いに大きな差は確認されなかった。
したがって、高圧ホモジナイザーに供給するスラリー中のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の固形分濃度は、0.2質量%〜0.5質量%の範囲内においては、解繊のし易さに影響を与えないことが確認できた。しかも、これらの固形分濃度で調製されたナノセルロース繊維の品質においても、この固形分濃度範囲内であれば、影響を与えないことが確認できた。
<実験4>
実験4では、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維およびナノセルロース繊維中の硫黄が、スルホ基に起因するものであることを確認した。
実験4では、以下のように(実験1)と同様の方法で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維中の硫黄の状態を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR、日本分光株式会社社製、型番:FT/IR―4200)および上述した燃焼イオンクロマトグラフを用いて確認した。
また、調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を(実験1)の方法で微細化処理してナノセルロース繊維を調製して、調製したナノセルロース繊維の硫黄の状態を、電気電導率計(DKK CORPORATION社、CONDUCTIVITY METER、型番AOL−10)を用いて確認した。
実験4では、(実験1)と同様に、スルファミン酸/尿素処理パルプを以下の条件で調製した。
反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200
パルプと反応液を接触させたものを50℃で乾燥した(「乾燥工程有条件」)。その後、120℃、25分の条件下で加熱反応を行った。加熱反応後、反応させたパルプを中性になるまでよく洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した。
実験4では、加熱反応後のパルプ繊維に物理的に吸着した反応液が存在しなくなるように以下の方法により、加熱反応後のパルプを洗浄した。
まず、加熱反応後のパルプが中性になるまで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に投入して10分間撹拌し、中和させた。その後、中和後のパルプを大量の純水で洗浄し乾燥してスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した(実施例62)。なお、このスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維が集合したものがスルファミン酸/尿素処理パルプである。
一方、比較例7は、加熱反応の工程を行わない以外は、洗浄方法を含め実験4の実験例と同様の方法により調製した。
(FT−IR測定)
FT−IR測定は、ATR法により測定を行った。
測定条件は、測定波数範囲600〜4000cm−1、積算回数100回とした。試料はスルホン化処理後、洗浄したサンプルを105℃で乾燥したものを用いた。
(電気伝導度測定)
イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%のナノセルロース繊維含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き200μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。
アルカリを用いた滴定では、イオン交換後のナノセルロース繊維含有スラリーに、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、ナノセルロース繊維含有スラリーと水酸化ナトリウム水溶液の混合液が示す電気伝導度の値の変化を計測した。
(核磁気共鳴装置(NMR)測定)
スルファミン酸/尿素処理パルプのNMRを測定を行った。
測定には、(実験1)で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ(スルファミン酸/尿素比((200g/L)/(200g/L))、硫黄導入量0.97mmol/g)、「乾燥工程有条件」、実施例15)を用いた。
NMRの測定条件は以下のとおりである。
NMR(Agilent Technology(株)社製、型番Agilent 400 DD2、共鳴周波数400MHz)を用いて、断熱パルプを用いたHSQC法により、積算回数480回で測定した。また、内部標準として重水素化したDMSOを用い、中心ピークをF1軸(13C):39.5ppm、F2軸(1H):2.49ppmに合わせた。データの解析にはAgilent Technology(株)製の解析ソフト(Vnmrj 4.2)を用いた。
スルホン化処理後、洗浄し、乾燥したスルファミン酸/尿素処理パルプを、ボールミルで粉砕して粉砕パルプを調製した。ボールミル粉砕条件は、小型遊星ボールミル(Fritsch製のP−7)を用いて、20分間、600rpmで粉砕処理を3回行った。
粉砕パルプ(30g)を重水素化したDMSO溶媒(0.7ml)に分散させ、30分間超音波処理を行いNMR測定用試料を調製した。
内部標準として、重水素化したDMSO(和光純薬工業社製、型番:ジメチルスルホキシド‐d6)を用いた。
ブランクにはコットンセルロースとしてろ紙(ADVANTEC社製、円形定性ろ紙 型番:No.2)を使用し、上述したスルファミン酸/尿素処理パルプと同様の処理を行いNMR測定に供した。
(実験4の結果)
表11に、燃焼イオンクロマトグラフで測定したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維中の硫黄導入量の測定結果を示す(実施例62、比較例7)。
Figure 0006966606
表11に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量は0.97mmol/gであり、比較例7の硫黄導入量は0.01mmol/gであった。
この実験結果から、比較例7に示すように、洗浄によってパルプ繊維に物理的に吸着したスルファミン酸をほぼ完全に洗い流すことができることが確認できた。つまり、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維には、反応液の吸着、洗い残し等による物理的に吸着した硫黄がほぼ存在しないということが確認できた。
また、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、洗浄後も硫黄導入量が0.97mmol/gであったことから、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維に含まれる硫黄は、物理的な吸着ではなく、反応液中のスルファミン酸がスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維の水酸基と化学的に反応し、洗浄、除去され得ない硫黄分として存在しているものと推察された。
図19に、FT−IRの測定結果を示す。
図19から、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(実施例62)では、スルホ基由来と考えられるS=OとS−O由来のピークが1200cm−1および、800cm−1付近に見られる一方で、比較例7では、これらのピークは確認できなかった。
この実験結果から、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維には、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基が導入されており、そのためにFT−IRや、燃焼イオンクロマトグラフ測定により、硫黄の含有が確認できたものと推察された。
図20に、電気伝導度測定の測定結果を示す。
図20から、イオン交換後のナノセルロース繊維含有スラリーは、水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定可能なことが確認できた。また、滴定曲線も、強酸を強塩基で中和した場合のものと同様であった。
この実験結果から、ナノセルロース繊維には強酸基の結合が導入されていることが示唆された。そして、電気伝導度の測定結果からナノセルロース繊維に導入されたスルホ基の導入量は1mmol/gであり(図20の変曲点のNaOH滴下量は、実験に供した微細セルロース繊維の固形分量で除することで算出した)、燃焼イオンクロマト法で得られた測定結果(0.97mmol/g)とほぼ一致することが確認された。
図21に、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のNMR測定の結果を示す。
図21に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維におけるセルロースのC6位の炭素、水素のピークが低磁場側にシフトしていることから、C6位の水酸基がスルホン化されていることが示唆された。
スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のピーク(図21の上のスペクトル図)と未修飾のセルロース(コットンセルロース)(図21の下のスペクトル図)のピークを比べると、どちらの測定結果においても、セルロースを構成するグルコースユニットの6位の炭素、水素由来のピーク(C:60ppm付近、H:3.5〜3.8ppm付近に検出されたピーク)が検出された。一方で、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維には、上記6位の炭素、水素由来のピークよりも低磁場側の位置に、未修飾のセルロースには存在しないピークが検出された。このピークは、グルコースユニットの6位の水酸基がスルホン化されることによって、上記6位の炭素に結合した水酸基が、化学処理によりC:64〜65ppm付近、H:3.8〜4.1付近へケミカルシフトしたためだと考えられる。
これらの結果から、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、セルロースを構成するグルコースユニットの6位の水酸基がスルホン化されていることが示唆された。
なお、Andoらは、針葉樹木材中のセルロースをエステル化した場合、エステル化されたC6位の炭素、水素由来のピークは、グルコースユニットの未修飾のC6位の水酸基由来のピークに対して低磁場側に現れることを報告している(ACS Sustainable Chem. Eng. 2017, 5, 1755−1762)ことから、本製法により調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維も同様に、グルコースユニットの6位の水酸基がスルホン化されることにより、上述したように低磁場側にシフトしていると考えらえる。
また、(実験1)で示したように、本製法を用いて調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を微細処理化したナノセルロース繊維は、「乾燥工程有条件」、「乾燥工程無条件」に関わらず、高い透明性を有しており、いずれの条件でも繊維幅が20nm以下であった。
このことは、本製法で調製されるスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、ミクロフィブリルに露出しているC6位の水酸基が重点的にスルホン化したため、高密度の荷電反発効果が発現しているものと推測された。このため、本製法を用いて調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を簡易な解繊処理を行った場合でも、高い透明性を発揮し、かつ高い分散性を有するナノセルロース繊維が製造できたものと考える。
実験4の実験結果から、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維中には、反応液中の硫黄が化学的に結合した硫黄のみが存在していることができることが確認できた。そして、この硫黄は、S=OとS−O由来の強酸性基であることが確認できた。言い換えれば、測定された硫黄は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維の水酸基に化学結合したスルホ基に起因するものであることが確認できた。
したがって、本製法によって調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維には、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基が化学的に結合した状態で導入されていることが確認できた。
また、本製法によって調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維の水酸基のうち、C6位の水酸基がスルホン化されていることが確認できた。つまり、本製法を用いれば、セルロース繊維におけるC2位やC3位の水酸基よりもC6位の水酸基に優先的にスルホ基が導入することができる。このため、本製法を用いれば、セルロース繊維におけるC2位やC3位の水酸基にスルホ基が導入されたパルプ繊維と比べて、セルロース繊維の溶解や開裂の発生が抑制されたパルプ繊維を調製できることが確認でき、しかも、解繊処理を行えば、高い透明性を有するナノセルロース繊維を製造可能なパルプ繊維を調製できることが確認できた。
<実験5>
実験5では、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維には、反応液中の尿素に基づくウレタン結合が生じていないことを確認した。
実験5では、(実験4)と同様の方法により、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した(実施例63)。
調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維中の窒素含有量を、元素分析装置((株)パーキンエルマージャパン、2400II CHNS/O)用いて測定した。
なお、比較例として、未処理のNBKP(BL)中の窒素含有量を上記元素分析装置を用いて測定した。
(実験5の結果)
表12に、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維およびNBKP中の窒素含有量の測定結果を示す(実施例63、BL)。
Figure 0006966606
表12に示すように、調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(実施例63)は、NBKP(BL)と比べても窒素含量の増加は確認されなかった。
実験5の実験結果から、本製法で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維には、化学処理工程における反応液中に尿素を用いた場合であってもウレタン結合が導入されていないことが確認できた。
ここで、従来の技術には、パルプの化学修飾時に尿素を用いた場合、化学修飾後のパルプ中にカルバメート等のウレタン結合が形成される旨が報告されている。そして、このウレタン結合が形成されることによって、セルロース繊維の分散性が改善され、解繊後に得られるナノセルロース分散液の透明性を向上させることができる旨が報告されている。
しかし、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維中には、ウレタン結合の導入が確認されなかったことから、本製法における反応液中の尿素は、従来の技術とは異なる機序でスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維に作用しているものと推察された。
つまり、本製法において化学処理工程の反応液中に用いられた尿素は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維におけるセルロース解繊性や、ナノセルロース繊維における透明性の向上における寄与はないものと推察された。
<実験6>
実験6では、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、化学処理による繊維への損傷が抑制されていることを、結晶形態の観点から確認した。
なお、(実験1)では、繊維長の維持という観点から、化学処理による繊維への損傷が抑制されていることを確認した。
実験6では、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、(実験1)と同様に以下の条件で調製した。
反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/50
反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/100
反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200
反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/500
パルプと反応液を接触させたものを50℃で乾燥した(「乾燥工程有条件」)。その後、120℃、25分の条件下で加熱反応を行った。加熱反応後のパルプが中性になるまで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に投入して10分間撹拌し、中和させた後、中和後のパルプを大量の純水で洗浄した。その後、凍結乾燥機(EYELA社製、型番:FDU−1200)を用いて乾燥してスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した(実施例64〜67)。
なお、実験6では、熱により結晶部にダメージが生じ、本来の結晶化度を示さなくなる可能性があるため、凍結乾燥機を用いた。
調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の結晶構造は、X線回折装置(株式会社リガク社製、型式:UltimaIV)を用いて測定した。結晶化度は、Segal法により求めた。
比較例として、未処理のNBKP(BL)を凍結乾燥して調製したNBKP繊維の結晶構造を、上記方法と同様の方法で測定した。

X線回折装置の条件
X線源:銅
管電圧:40kV
管電流:40mA
測定範囲:回折角2θ=10°〜30°
X線のスキャンスピード:2°/min

結晶化度の算出
X線回折結果の2θ=10゜〜30゜の回折強度をベースラインとし、2θ=22.6゜の002面の回折強度と、2θ=18.5゜のアモルファス部分の回折強度から次式により結晶化度(%)を算出した。
結晶化度(%)=((I22.6−I18.5)/I22.6)×100
I22.6:2θ=22.6°、002面の回折強度
I18.5:2θ=18.5゜、アモルファス部分の回折強度
(実験6の結果)
表13に、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の結晶化度および結晶構造を示す(実施例64〜67、BL)。
図22に、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のX線回折結果の代表例(反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/100で処理したもの、実施例65)を示す。
Figure 0006966606
表13に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプをいずれの反応液を用いて調製しても結晶化度はいずれも60%以上と高い値を示すことが確認できた。
また、図22のX線回折結果から、スルファミン酸/尿素処理パルプの結晶構造は、未処理のNBKPと同様のI型を保持していることが確認できた。
実験6の実験結果から、本製法を用いて調製したスルファミン酸/尿素処理パルプは、化学処理が行われた場合でも、結晶構造および結晶化度への影響が抑制されていることが確認できた。つまり、化学処理を行った場合であっても、繊維長の観点と、結晶形態の観点のいずれの観点からも繊維への損傷の抑制が確認されたスルファミン酸/尿素処理パルプが調製されていることが確認できた。
したがって、本製法により調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、化学処理によりスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基を導入することができ、かつ化学処理による繊維へのダメージが適切に抑制されていることが確認できた。
<実験7>
実験7では、本製法により調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維とナノセルロース繊維の解繊前後における重合度と結晶化度の関係性を確認した。
スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維およびナノセルロース繊維は、(実験1)と同様の製法(「乾燥工程有条件」)で調製した(実施例68〜71)。
ナノセルロース繊維は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を高圧ホモジナイザー(株式会社コスにじゅういち社製、型番;N2000−2C−045型)を用いて、繊維が目視できなくなるまで行って調製した。
重合度は、(実験1)に示した方法と同様の方法により測定した。また、結晶化度は、(実験6)に示した方法と同様の方法により測定した。なお、ナノセルロース繊維は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を高圧ホモジナイザー(株式会社コスにじゅういち社製、型番;N2000−2C−045型)を用いて、繊維が目視できなくなるまで行った。
スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のX線回折測定には、表15の解繊前の結晶化度が77.4%(実施例69)のものを供した。また、ナノセルロース繊維のX線回折測定には、表15の解繊後の結晶化度が52.0%(実施例70)のものを供した。
(実験7の結果)
解繊前後の重合度の測定結果は、表14に示す(実施例68〜71)。
解繊前後の結晶化度および結晶構造は、表15(実施例68〜71、BL)に示す。
X線回折結果は、図23(実施例69、実施例70)に示す。
Figure 0006966606
Figure 0006966606
表14の実験結果から、解繊処理により繊維の重合度が低下することが確認されたが、本製法を用いれば、解繊後のナノセルロース繊維の重合度が54%〜82%と高い割合で保持されており、それに起因してナノセルロース繊維の繊維長が一般的な水準よりも長くなっていることが予想される。
また、図23の実験結果から、解繊処理の前後において、結晶構造がI型のまま変化がないことが確認できた。また、表15の実験結果から、結晶化度は、解繊前に70%以上であったものが解繊後には42.1〜52.0%程度に減少することが確認できた。
したがって、本製法の解繊処理を用いれば、解繊の前後において結晶構造は維持されたまま、繊維の結晶化度が変化することが確認できた。
<実験8>
実験8では、本製法により調製したナノセルロース繊維の全光線透過率(%)、ヘイズ値(%)と粘度およびTI値の関係性を確認した。
実験8では、(実験1)と同様の製法で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ(スルファミン酸/尿素比((200g/L)/(500g/L))、硫黄導入量0.65mmol/g、保水度250%、「乾燥工程有条件」、実施例16)を固形分濃度が0.5質量%となるように調製したスラリーを(実験2)で用いた高圧ホモジナイザーに供給して得られたナノセルロース繊維の分散液の粘度をB型粘度計(英弘精機(株)製、LVDV−I Prime)を用いて測定した(実施例72〜77)。
粘度測定の測定条件は、以下の通りとした。
回転数6rpm、測定温度25℃、測定時間3分、スピンドルはNo.64
解繊条件は以下の通りとした。
高圧ホモジナイザーによる解繊圧力は30MPa、解繊処理におけるパスの回数は、解繊回数5回(5パス)、解繊回数7回(7パス)、解繊回数9回(9パス)、解繊回数11回(11パス)、解繊回数15回(15パス)、解繊回数20回(20パス)とした。
各パス数毎に得られたナノセルロース繊維の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)は、(実験1)と同様の方法で測定した。
また、各パス数毎に得られたナノセルロース繊維のチキソトロピー性指数(TI値)を測定した。
TI値の算出は、上述のB型粘度計を用いて、回転数6rpmと60rpmで測定を行い、各々の粘度を下記式より算出した。

TI値=(回転数6rpmでの粘度)/(回転数60rpmでの粘度)
また、SPMを用いて解繊後のナノセルロース繊維の繊維形態を観察した。
SPM測定は、(実験1)に示した方法と同様の方法により、各解繊回数のナノセルロース繊維の繊維形態を走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した。
(実験8の実験結果)
実験8の実験結果を表16に示す。
図24には、実施例37の観察写真を代表として示す。
Figure 0006966606
表16に示すように、粘度測定の範囲は、11748〜17846mPa・sであった。また、TI値は、6〜8であった。
また、図24に示すように、解繊後のナノセルロース繊維は、繊維幅が小さくかつ繊維長がある程度の長さに維持されていることが確認できた。
この実験結果から、調製されたナノセルロース繊維は、繊維幅が細く、繊維の重合度および繊維長もある程度維持されていることが確認できた。つまり、調製されたナノセルロース繊維は、高いアスペクト比を有していることが確認できた。
また、表16に示すように、高圧ホモジナイザーによる解繊圧力を30MPaと低圧で解繊処理を行った場合であっても、ヘイズ値が22.7%以下と非常に高い透明性を有するナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
したがって、実験8の実験結果より、本製法を用いれば、繊維幅が細く、繊維長が長いナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。しかも、このような非常に高い透明性を有するナノセルロース繊維を30MPaと非常に低い解繊圧力で調製できることが確認できた。
<実験9>
実験9では、本製法により調製したナノセルロース繊維の繊維幅と透明性の関係性を確認した。
実験9では、ナノセルロース繊維の繊維幅を20nmよりも大きくなるように調製した場合と、20nm以下となるように調製した場合における透明性への影響をヘイズ値および全光線透過率を測定することによって確認した。
ナノセルロース繊維は、繊維幅が20nm以下のものは(実験1)と同様の製法で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(スルファミン酸/尿素比((200g/L)/(200g/L))、硫黄導入量0.97mmol/g、保水度1120%、実施例15)、「乾燥工程有条件」)を固形分濃度が0.5質量%となるように調製したスラリーを(実験2)で用いた高圧ホモジナイザー(解繊圧力60MPa)に供給して調製した(実施例78)。
ナノセルロース繊維の繊維幅が、30nm〜50nmのものはNBKPを固形分濃度が0.5質量%となるように調製したスラリーを(実験1)で用いた高圧ホモジナイザー(解繊圧力130MPaで20パス)に供給して調製した(比較例8)。
ナノセルロース繊維の繊維幅は、(実験1)と同様にSPMを用いて測定した。その際の測定は、ダイナミックモードで行った。
ヘイズ値(%)および全光線透過率(%)は、(実験1)に示した方法と同様の方法により測定した。
(実験9の結果)
実験9の実験結果を表17に示す(実施例78、比較例8)。
Figure 0006966606
表17に示すように、ナノセルロース繊維の繊維幅が20nm以下(図24参照)となるように調製したもの(実施例78)はヘイズ値が1.1%と20%を大きく下回ったが、繊維幅が30nmよりも大きくなるように調製したもの(比較例8)はヘイズ値が50%以上であった。つまり、ナノセルロース繊維の透明性には、繊維幅が大きく寄与しており、繊維幅が約30nmを境にヘイズ値(つまり透明性)が大きく変動することが確認できた。
ここで、木材パルプは一般的に約3nmのセルロースミクロフィブリルが束となり組織を形成している。このセルロースミクロフィブリル同士は水素結合で強固に結びついているために、機械処理だけでは、セルロースミクロフィブリル単位にまで解繊することはできない。そこで、木材パルプのミクロフィブリル単位での解繊には、セルロースミクロフィブリル表面にまで官能基を導入し、電荷的な反発力を用いる必要がある。とくにセルロースミクロフィブリルのC6位の水酸基は、立体的に飛び出すように配置されている(図21参照)。
したがって、本製法を用いれば、この立体的に飛び出すように配置されたC6位の水酸基に対してスルホ基を選択的に導入することができるので、解繊しやすいパルプ繊維を製造することができたものと考える。そして、本製法を用いて、このパルプ繊維を解繊することにより、電荷的な反発により高い分散性と高い透明性を有するナノセルロース繊維を調製することができたものと考える。
<実験10>
実験10では、加熱反応における加熱方法の影響について確認した。
実験10では、加熱反応としてアズワン(株)製 熱プレス機(型番:AH−2003C)を用いたホットプレス法を用いた以外は、(実験1)と同様の方法によりスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した(実施例79)。
ナノセルロース繊維は、(実験1)と同様の方法により調製した(比較例9)。
調製されたナノセルロース繊維のヘイズ値(%)および全光線透過率(%)は、(実験1)に示した方法と同様の方法により測定した。
ホットプレス法の条件は以下のとおりとした。
坪量15g/mのNBKPシート20gに(実験1)と同様の方法で調製した反応液(スルファミン酸/尿素比((200g/L)/(200g/L)))を100ml均一に噴霧し、50℃で乾燥させる(「乾燥工程有条件」)。その後、120℃に熱したホットプレス機で挟み込み、5分間加熱反応を進行させる。加熱反応後は(実験1)と同様に中和、洗浄後、解繊処理を行った。
解繊処理は、まず、高圧ホモジナイザー(株式会社コスにじゅういち社製、型番;N2000−2C−045型)を用いて予備解繊を行った。予備解繊は、解繊圧力10MPaで解繊回数2回、50MPaで解繊回数1回で処理した。そして、この予備解繊を行ったスラリーを高圧ホモジナイザーに供してナノセルロース繊維を調製した。このときの解繊圧力は、(実験1)の約半分の60MPaとした。
(実験10の結果)
実験10の実験結果を表18に示す(実施例79、比較例9)。
Figure 0006966606
表18に示すように、本製法の加熱反応においてホットプレス法を用いれば、加熱時間が5分であっても適切に解繊することができることが確認できた。しかも、調製したナノセルロース繊維は、優れた透明性を有することが確認できた。
<実験11>
実験11では、本製法における化学処理工程を一回のみ行なった場合によるスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維およびナノセルロース繊維への最大硫黄導入量について確認した。
(実験1)と同様の方法で調製した反応液(スルファミン酸/尿素比((200g/L)/(200g/L)))700gに対してパルプ20g(乾燥重量)を加えた。つまり、パルプ1g(乾燥重量)に対して反応液が固形分として10g担持するように調製した。この調製したパルプ(パルプ1g(乾燥重量)に対して反応溶液10g(固形分として))を恒温槽の温度を50℃に設定した(実験1)と同様の乾燥機を用いて乾燥させた(「乾燥工程有条件」)。
その後、乾燥させたパルプを、(実験1)と同様に恒温槽の温度を160℃に設定した乾燥機に入れて、60分間加熱反応を行った。
加熱反応後、乾燥機から取り出したパルプを、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に投入し10分間撹拌した後、中性になるまで純水で洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプを調製した。
ついで、このスルファミン酸/尿素処理パルプを、固形分濃度が0.5質量%となるように調整したスラリーを(実験2)と同様の高圧ホモジナイザーを用いて解繊処理を行いナノセルロース繊維を調製した(実施例80)。
化学処理後のパルプに含まれる硫黄分は、(実験1)と同様の方法で測定した。
ヘイズ値の測定および全光線透過率の測定は、(実験1)と同様の方法で測定した。
(実験11の結果)
実験11の実験結果を表19に示す(実施例80)。
Figure 0006966606
表19に示すように、本製法を用いれば、パルプ1gに対して反応液(固形分)を10倍量担持させた場合には、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維に対して1.7mmol/gの硫黄を導入できることが確認できた。
実験11の結果から、本製法を用いれば、反応液(固形分)の担持量、反応温度および反応時間を制御することにより、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量を制御できることが可能であることが確認できた。
また、表19に示すように、調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を解繊して得られたナノセルロース繊維は、高い透明性を有することが確認できた。
<実験12>
実験12では、反応液にパルプを加えた状態で加熱を行った場合について確認した(比較例10)。
実験12では、(実験1)と同様の方法で調製した反応液(スルファミン酸/尿素比((200g/L)/(200g/L)))100mlに対してパルプ2g(乾燥重量)を加えて、パルプの固形分濃度が2質量%となるスラリー100mLを調製した。
このスラリーをオートクレーブ((株)トミー精工製、型番BS−235)を用いて120℃で2時間加熱した。
(実験12の結果)
オートクレーブから取り出したスラリー中のパルプは、目視において灰色化していたことから、白色度および保水度も非常に低いものであると推定された。
<実験13>
実験13では、スルホン化パルプを構成するセルロース繊維の水酸基のうち、スルホ基の導入場所が解繊性に与える影響について確認した。
ナノセルロース繊維の透明度および粘度は、それぞれ(実験1)および(実験8)と同様の方法により測定した。
実験13では、比較例11〜13として、セルロース繊維のC2―C3位へスルホ基を導入したナノセルロース繊維を従来の方法に基づいて調製した。
比較例11は、濃度が既知である過ヨウ素酸ナトリウム水溶液に固形分濃度20%の丸住製紙製NBKP(パルプ)を固形分質量5g入れ、終濃度として38mMの過ヨウ素酸、パルプ固形分濃度2%となるように調製したものを55℃に設定したウォーターバスにて3時間加温した。その後、大量の純水で洗浄し、濾過脱水を行った。次いで、濃度が既知である二亜硫酸ナトリウム水溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム処理パルプを固形分濃度が2%となるように添加し(このときの二亜硫酸ナトリウムは28mMとなるようにした)、室温にて72時間放置した。反応後大量の純水にて洗浄し、実験に供した。解繊処理は高圧ホモジナイザー(吉田機械工業社製、型番NV30−FA)を用いて行った。解繊条件は、パルプの固形分濃度を0.5%にし、60MPaで4回処理した。
比較例12は、過ヨウ素酸および二亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を1.5倍の57mMにし、二亜硫酸ナトリウム水溶液での反応時間を50時間にした以外、比較例11と同様に行った。
比較例13は、過ヨウ素酸および二亜硫酸ナトリウム水溶液の濃度を3.0倍にした以外、比較例11と同様に行った。
実施例81では、(実験1)と同様に、スルファミン酸/尿素処理パルプを以下の条件で調製した。
反応液:スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200
パルプと反応液を接触させたものを50℃で乾燥した(「乾燥工程有条件」)。その後、120℃、25分の条件下で加熱反応を行った。加熱反応後、反応させたパルプを中性になるまでよく洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した。調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を固形分濃度0.5%に調整し、高圧ホモジナイザー(吉田機械工業社製、型番NV30−FA)を用いて解繊処理を行いナノセルロース繊維を調製した。
解繊圧力およびパス数は表20に示すとおり、最初の2パスを10MPa、次の1パスを50MPa、最後の1パスを60MPa、の合計で4パスで調製した。
(実験13の結果)
表20に、スルホ基の導入位置による解繊性への影響を示す(実施例81、比較例11〜13)。
Figure 0006966606
表20は、C6位にスルホ基が導入されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(実施例81)とC2-C3位にスルホ基が導入されたパルプ(比較例11〜13)の解繊性への影響を示す。
C2-C3位にスルホ基が導入されたパルプでは、スルホ基導入量が多くなるにつれ(0.3→1.0→1.7mmol/g)、得られるナノセルロース繊維の透明性も高くなる傾向が見られた。一方、C6位にスルホ基が導入されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維(実施例81)は、1.0mmol/gで、透明なナノセルロース繊維が得られた。
スルホ基の導入量が同量の実施例81と比較例12を比較すると、実施例81では、スルホ基がC6位に導入されたものでは全光線透過率96%以上、ヘイズ20%以下のナノセルロース繊維が得られたのに対して、スルホ基がC2―C3位に導入された比較例12では解繊後のヘイズ値が20%以上であり透明性は低かった。
これらの結果から、スルホン化パルプを構成するセルロース繊維の水酸基のうちC6位がスルホン化されたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維では、C2―C3位がスルホン化されたものと比べて、透明性が高く、解繊性が優れているといえる。
<実験14>
実験14では、種々の製法により得られたナノセルロース繊維の特徴から、スルホン化工程および解繊処理工程が、ナノセルロース繊維の繊維形状および粘度に与える影響について確認した。
ナノセルロース繊維の重合度および結晶化度の測定は、それぞれ(実験1)および(実験6)と同様により行った。
実験では、(実験1)と同様に以下の条件でスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した。
反応液(実施例82用):スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/50、反応液(実施例83用):スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/100、反応液(実施例84用):スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200、反応液(実施例85用):スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/500
パルプと反応液を接触させたものを(実験13)と同様の条件下(「乾燥工程有条件」)で加熱反応を行った後、洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を調製した。調製したスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維を(実験13)と同様に高圧ホモジナイザーを用いてナノセルロース繊維を調製した。
重合度の測定サンプルは高圧ホモジナイザー(GEAニロソアビ社製、型番;Panda Plus 200)を使用し、120〜140MPaで3パス解繊した。
結晶化度の測定サンプルは高圧ホモジナイザー(株式会社コスにじゅういち社製、型番;N2000−2C−045型)を使用し、10MPaで2回、50MPaで1回解繊後、60MPaで繊維が見えなくなるまで解繊した。
比較例として、(実験13)の比較例11、13と同様の製法で比較例14、15を調製した。比較例16は、以下の製法で調製した。
比較例14〜16のナノセルロース繊維の重合度および結晶化度は、実施例と同様に測定した。
比較例16は、導入場所不明なサンプルとして、以下の手法でスルホン化パルプおよびナノセルロース繊維を調製した。この手法は国際公開第2018/202955号を参考に行った。
硫酸9g(96%)、尿素11g(99%)を純水5gに溶かし、スルホン化溶液を調製した。この溶液23gを、含水率10%のNBKP10gに含浸させた。NBKPは丸住製紙製のNBKPシート(含水率50%)を105℃に熱した乾燥機にて乾燥後、大気中に静置させたものを用いた。スルホン化溶液を含浸させたパルプを室温にて一晩静置させ、150℃の乾燥機にて15分加熱し、スルホン化を行った。スルホン化処理後、炭酸水素ナトリウムで中和し、大量の純水で洗浄し実験に供した。解繊処理は高圧ホモジナイザー(吉田機械工業社製、型番NV30−FA)を用いて行った。解繊条件は、パルプの固形分濃度を0.5%にし、50MPaで3回処理した。
重合度および結晶化度の測定は実施例と同様の方法により行った。
(実験14の結果)
表21には、スルホン化の前後および解繊処理の前後における、パルプ(スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維)とナノセルロース繊維の重合度および結晶化度を示す。
Figure 0006966606
一般的にナノセルロース繊維の粘度は、繊維長や結晶化度等の繊維形状に影響されると言われている。そこで、繊維形状におけるパラメーターを適正な値とすることにより、所望の粘度を発現させることが可能という知見に基づいて、ナノセルロース繊維の繊維長と剛直性と分散液の高粘度化との関係性を確認した。つまり、分散液の高粘度化を発揮させるナノセルロース繊維に関して、繊維長を重合度の観点から、繊維の剛直性を結晶化度の観点から求めた。
上記関係を表21の結果を図25に基づいて説明する。
まず、スルホン化パルプについて説明する。
比較例では、同一製法である比較例14および15において、スルホン化前後で重合度、結晶化度が共に大きく減少した。また、別の手法により調製した比較例16でも同様に大きく減少した。
一方で、本発明による製法で得られた実施例82〜85では、スルホン化前後における重合度および結晶化度において大きな減少は確認されなかった。実施例82〜85では、スルホン化の前後の重合度において、反応後の重合度の維持率(重合度維持率)がいずれも50%以上であった。つまり実施例82〜85では、スルホン化の前後において、反応前後の重合度の比である重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度)が50%以上であった。このスルホン化パルプの重合度比は、スルホン化パルプにおける反応後の重合度の維持率である重合度維持率と同義であり、実施形態におけるスルホン化パルプ繊維の重合度比に相当する。
また、実施例82〜85では、スルホン化の前後の結晶化度において、反応後の結晶化度の維持率(結晶化度維持率)がいずれも80%以上であった。つまり実施例82〜85では、スルホン化の前後において、反応前後の結晶化度の比である結晶化度比(反応後の結晶化度/反応前の結晶化度)が80%以上であった。このスルホン化パルプの結晶化度比は、スルホン化パルプにおける反応後の結晶化度の維持率である結晶化度維持率と同義であり、実施形態におけるスルホン化パルプ繊維の結晶化度比に相当する。
つぎに、ナノセルロース繊維について説明する。
比較例では、同一製法である比較例14および15において、解繊前後で重合度、結晶化度の大きな減少は確認されなかった。また、別の手法により調製した比較例16でも同様に大きな減少は確認されなかった。
一方、本発明による製法で得られた実施例82〜85では、スルホン化パルプの解繊前後における重合度、結晶化度が共に大きく減少した。なお、実験における解繊とは、解繊処理または微細化処理と同義であり、いずれの表記も同じことを意味する。また、解繊を解繊処理、微細化処理と表記する場合がある。
実施例82〜85では、解繊の前後の重合において、解繊後のナノセルロース繊維の重合度の維持率(重合度維持率)が、解繊前のスルホン化パルプの重合度に対していずれも85%以下であった。つまり実施例82〜85では、解繊処理(微細化処理)の前後において、解繊の前後の重合度の比である重合度比(微細化処理後の重合度/微細化処理前の重合度)が85%以下であった。このナノセルロース繊維の重合度比は、ナノセルロース繊維における解繊後の重合度の維持率である重合度維持率と同義であり、実施形態におけるスルホン化微細セルロース繊維の重合度比に相当する。
また、実施例82〜85では、解繊の前後の結晶化度において、解繊後のナノセルロース繊維の結晶化度の維持率(結晶化度維持率)が、解繊前のスルホン化パルプの結晶化度に対していずれも75%以下であった。つまり実施例82〜85では、解繊処理(微細化処理)の前後において、解繊の前後の結晶化度の比である結晶化度比(微細化処理後の結晶化度/微細化処理前の結晶化度)が75%以下であった。このナノセルロース繊維の結晶化度比は、ナノセルロース繊維における解繊後の結晶化度の維持率である結晶化度維持率と同義であり、実施形態におけるスルホン化微細セルロース繊維の結晶化度比に相当する。
また、(実験13)の表20に示すように、比較例12、13のナノセルロース繊維はある程度の透明性を有するものの、粘度は1000mPa・s以下であり、高粘度とは言えなかった。一方、本発明の製法で得られた実施例81では、分散液が、高い透明性を発揮し、粘度においても10,000mPa・s〜20,000mPa・sと高粘度化することが確認できた。
また、本実験(実験14)および先の実験(実験13)の結果から、各工程(スルホン化工程と解繊処理工程)における反応前後および解繊前後の重合度と結晶化度の減少率が、得られるナノセルロース繊維の粘度に影響を与えることが確認できた。かかる現象は、スルホ基の導入場所とも良い相関が得られた。
表21に示すように、C6位が重点的にスルホン化された実施例82〜85と、C2―C3位がスルホン化された比較例14〜16を比較すると、どちらも最終的に得られるナノセルロース繊維の重合度および結晶化度は原料パルプ(スルホン化前のパルプ)と比べて大きく低下していた。
しかしながら、各工程での変化を見ると、実施例82〜85のC6位へのスルホン化反応前後では、反応後のスルホン化パルプの重合度および結晶化度が、スルホン化前の原料パルプの重合度および結晶化度と比べてあまり変化していなかった。これに対して、比較例14〜16のC2-C3位へのスルホン化反応前後では、反応後のスルホン化パルプの重合度および結晶化度が、スルホン化前の原料パルプの重合度および結晶化度と比べて共に大きく減少していた。
また、解繊処理の前後で見ると、C6位にスルホ基が導入された実施例82〜85の解繊前後では、解繊後のナノセルロース繊維の重合度および結晶化度が、解繊前のスルホン化パルプの重合度および結晶化度と比べて共に大きく減少してた。これに対して、C2-C3位にスルホ基が導入された比較例14〜16の解繊前後では、解繊後のナノセルロース繊維の重合度および結晶化度が、解繊前のスルホン化パルプの重合度および結晶化度と比べてあまり変化していなかった。
これらのことは、スルホン化されたナノセルロース繊維における重合度と結晶化度は、最終的に得られる数値が同じであったとしても、スルホ基の導入場所(C6位、C2−C3位)により、各工程(原料パルプ→スルホン化パルプ(スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維)→ナノセルロース繊維)における前後の値の変化の大きさが異なることがわかる。つまり、各工程(スルホン化、解繊処理)における繊維形状に対する影響が、スルホ基の導入場所により異なることが原因であると推察される。そして、これらの結果、得られたナノセルロース繊維が分散した分散液においても、粘度に違いが生じたものと推察された。
まとめると、(実験13)および(実験14)の結果から、スルホ基のC2―C3位への反応はナノセルロース繊維の低粘度化という効果を示すのに対して、スルホ基のC6位への反応はナノセルロース繊維の高粘度化という効果を示す結果に至ることがわかる。
以上の結果を繊維形状の観点から考察すると、一般的に、重合度は繊維長の切断および崩壊により減少し、結晶化度は繊維が破壊および解繊により減少する、と言われている。
<スルホン化反応>
重合後の変化を見ると、スルホ基がC6位に導入した本発明のスルホン化パルプ及びスルホ基がC2―C3位に導入した比較例では、スルホン化前後では重合度の減少はどちらも生じていた。しかし、スルホ基がC2―C3位に導入した比較例のほうがスルホ基がC6位に導入した本発明のスルホン化パルプと比べて、減少率が大きいことから、比較例のほうが本発明のスルホン化パルプよりも繊維の切断及び破壊が生じていると推察される。
結晶化度の変化を見ると、こちらも重合度と同様に減少している。しかし、スルホ基がC2―C3位に導入した比較例のほうがスルホ基がC6位に導入した本発明のスルホン化パルプと比べて、大きく減少していることから、比較例ではC2―C3位へのスルホン化という化学的な反応により繊維が損傷を受け、結晶領域が壊れたことが原因になっているものと推察された。
<微細化処理>
解繊工程前後では、スルホ基がC6位に導入した本発明のナノセルロース繊維(スルホン化ナノセルロース繊維)は、スルホ基がC2―C3位に導入した比較例と比べ、重合度、結晶化度共に大きく減少していた。この現象は解繊処理という機械的な力により繊維の解繊が進み、解繊後のナノセルロース繊維の重合度、結晶化度が減少したのだと考えられる。つまり、スルホ基がC6位に導入した本発明のナノセルロース繊維では、スルホン化工程における重合度および結晶化度ともにあまり変化せず、解繊工程において減少することから、解繊前後の重合度および結晶化度の低下は主に解繊による影響が大きく寄与しているものと考えられる。一方、スルホ基がC2―C3位に導入した比較例では、スルホン化工程における重合度および結晶化度はどちらも大きく減少していることから、このときすでに繊維が崩壊し、結果として解繊処理の前後における重合度および結晶化度の減少が小さかったものと考えられる。
表21の比較例16の結果においても、スルホ基がC2―C3位へ導入された比較例14および15と同様にスルホン化の反応前後において、重合度および結晶化度が大きく減少しており、解繊前後の維持率がいずれも高い値を示していた。このことから、比較例16の製法においてもスルホ基は、C6位よりもC2―C3位に優先的に導入されたものと推察される。そして、その結果、比較例16の製法においても、他の比較例と同様、(実験13)の表20に示すように、分散液が低い粘性を有するナノセルロース繊維しか得ることができなかったものと推察される。
すなわち、スルホン化パルプにおいて、スルホ基の導入場所(C6位かC2−C3位)は、スルホン化の反応前後における重合度と結晶化度の変化量に基づいて把握することができることが確認できた。そして、スルホン化ナノセルロース繊維において、スルホ基の導入場所(C6位かC2−C3位)は、解繊処理の前後における重合度と結晶化度の変化量に基づいて把握できることが確認できた。
具体的には、以下のいずれかの条件を満たせば、C6位の位置にスルホ基が導入したスルホン化パルプまたはスルホン化のナノセルロース繊維であると判定することができる。
(a)スルホン化の反応工程における反応後のスルホン化パルプの重合度が、反応前のパルプに対して、重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度)において、50%以上である。
(b)スルホン化の反応工程における反応後のスルホン化パルプの結晶化度が、反応前のパルプに対して、結晶化度比(反応後の結晶化度/反応前の結晶化度)において、80%以上である。
(c)スルホン化パルプを解繊処理(微細化処理)した後のナノセルロース繊維の重合度が、解繊処理前のスルホン化パルプに対して、重合度比(微細化処理後の重合度/微細化処理前の重合度)において、85%以下である。
(d)スルホン化パルプを解繊処理(微細化処理)した後のナノセルロース繊維の結晶化度が、解繊処理前のスルホン化パルプに対して、結晶化度比(微細化処理後の結晶化度/微細化処理前の結晶化度)において、75%以下である。
そして、本製法を用いれば、C2―C3位へのスルホン化反応が抑制され、C6位が重点的に反応したスルホン化パルプおよびスルホン化のナノセルロース繊維を得ることができる。とくに、本製法により得られるナノセルロース繊維は、溶液に分散した状態において、分散液が高い透明性および/または高い粘性を有する。
以上のごとく、本製法を用いれば、分散液が高い粘性を発揮するのに使用するためのナノセルロース繊維を提供することができる。
とくに、スルホン化反応における反応前後の重合度比および/または結晶化度比、ナノセルロース繊維を調製する際における解繊前後(微細化処理前後)の重合度比および/または結晶化度比、を上記のごとき範囲となるように調製すれば、溶液に分散した状態において、かかる分散液が高い粘性を発揮することができるナノセルロース繊維を提供することができる。
さらに、分散対象となる溶液自体が透明性を有している場合には、分散液の透明性を維持しつつ、かかる分散液が高い粘性を発揮することができるナノセルロース繊維を提供することができる。
そして、本製法により得られるスルホン化パルプは、所定の硫黄導入量、所定の値以上の保水度、そしてスルホ基のC6位への導入が解繊性と解繊後に得られるナノセルロース繊維(スルホン化微細セルロース繊維)において重要であることが確認できた。そして、得られたナノセルロース繊維(スルホン化微細セルロース繊維)は、所定の硫黄導入量、スルホ基のC6位への導入が、分散液の粘性を高くする上で重要であることが確認できた。
本発明のスルホン化パルプ繊維、誘導体パルプ、スルホン化微細セルロース繊維、スルホン化微細セルロース繊維の製造方法およびスルホン化パルプ繊維の製造方法は、工業分野や、食品分野、医療分野、化粧品分野など様々な分野で多くの用途に好適に用いることができ、これらの分野に用いられる複合化材料の原料などとしても好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基がスルホ基で置換した平均繊維径が20nm以下、スルホ基の導入量が0.42mmol/gよりも高い、ヘイズ値が20%以下および/または全光線透過率が90%以上、粘度が10,000mPa・s以上のスルホン化微細セルロース繊維を製造する方法であり、
    前記パルプを化学的に処理する化学処理工程と、該化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法であり、
    前記化学処理工程が、
    前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルファミン酸と尿素を水に溶解させた反応液に接触させる接触工程と、
    該接触工程後のパルプを構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を順に行い、
    該反応工程において、
    前記反応液を接触させたのち脱水処理した後の水分を含んだパルプを反応前後の繊維の重合度比(反応後の重合度/反応前の重合度)が50%以上となるように100℃以上、250℃以下の加熱条件下で調整し、
    前記微細化処理工程において、
    微細化前後の繊維の重合度比(微細化処理後の重合度/微細化処理前の重合度)が85%以下、微細化後の繊維の重合度が300〜1000、となるように解繊する
    ことを特徴とするC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  2. 前記反応工程において、
    反応前後の繊維の結晶化度比(反応後の結晶化度/反応前の結晶化度)が80%以上となるように調整し、
    前記微細化処理工程において、
    微細化前後の繊維の結晶化度比(微細化処理後の結晶化度/微細化処理前の結晶化度)が75%以下となるように調整する
    ことを特徴とする請求項1記載のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  3. セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基がスルホ基で置換した平均繊維径が20nm以下、スルホ基の導入量が0.42mmol/gよりも高い、ヘイズ値が20%以下および/または全光線透過率が90%以上、粘度が10,000mPa・s以上のスルホン化微細セルロース繊維を製造する方法であり、
    前記パルプを化学的に処理する化学処理工程と、該化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法であり、
    前記化学処理工程が、
    前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルファミン酸と尿素を水に溶解させた反応液に接触させる接触工程と、
    該接触工程後のパルプを構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を順に行い、
    前記反応工程において、
    前記反応液を接触させたのち脱水処理した後の水分を含んだパルプを反応前後の繊維の結晶化度比(反応後の結晶化度/反応前の結晶化度)が80%以上となるように100℃以上、250℃以下の加熱条件下で調整し、
    前記微細化処理工程において、
    微細化前後の繊維の結晶化度比(微細化処理後の結晶化度/微細化処理前の結晶化度)が75%以下、微細化後の繊維の結晶化度が42.1%〜52%となるように調整する
    ことを特徴とするC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  4. 前記微細化処理工程において、
    微細化後の繊維の重合度が300〜1000となるように解繊する
    ことを特徴とする請求項3記載のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  5. 前記反応工程において、
    反応後の繊維の結晶化度が70%以上となるように調整する
    ことを特徴とする請求項3または4記載のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  6. 前記反応工程において、
    反応後の繊維の重合度が、350〜1000となるように調整する
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  7. 前記微細化処理工程において、
    該工程に供するパルプの保水度が、250%〜5000%となるように調整する
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  8. 前記反応工程において、
    前記反応液が接触したパルプを反応温度100℃〜180℃で加熱して反応を進行させる工程を含み、該加熱反応に供する際のパルプに含まれる水分が1%〜20%以下となるように調整する
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載のC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
  9. セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基がスルホ基で置換した微細セルロース繊維であり、
    該微細セルロース繊維は、
    前記スルホ基の導入量が0.42mmol/g〜3.0mmol/g、
    平均繊維幅が20nm以下、
    水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液での、B型粘度計を用いて、20℃、回転数6rpm、3分間回転させることで測定される粘度が10,000mPa・s以上、
    水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液でのヘイズ値が20%以下、である
    ことを特徴とするC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維。
  10. セルロース繊維を構成する少なくとも一部のグルコースユニットのC6位の水酸基がスルホ基で置換した微細セルロース繊維であり、
    該微細セルロース繊維は、
    前記スルホ基の導入量が0.42mmol/g〜3.0mmol/g、
    平均繊維幅が20nm以下、
    水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液での、B型粘度計を用いて、20℃、回転数6rpm、3分間回転させることで測定される粘度が10,000mPa・s以上、
    水に固形分濃度0.5質量%に分散させた分散液での全光線透過率が90%以上、である
    ことを特徴とするC6位にスルホ基が導入したスルホン化微細セルロース繊維。
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