JP4961772B2 - 硫酸化セルロース及びその塩から選ばれた化合物並びに皮膚炎治療剤 - Google Patents
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Description
1)結晶セルロースから得られた硫酸化セルロース及びその塩から選ばれた化合物であり、20℃の純水に対する溶解度が3g/L以上である化合物。
2)結晶セルロースの平均重合度が150〜300である前記1)項記載の化合物。
3)硫黄含量が6.5〜19.0重量%である前記1)または2)記載の化合物。
4)重量平均分子量が1,000〜200,000である、前記1)〜3)のいずれか1項記載の化合物。
5)硫酸化セルロースカルシウム塩または硫酸化セルロースナトリウム塩である、前記1)〜4)項のいずれか1項記載の化合物。
6)結晶セルロースから得られた硫酸化セルロース及びその塩から選ばれた化合物であって、硫黄含量が6.5〜19.0重量%であり、重量平均分子量が50,000〜80,000であって、20℃の純水に対する溶解度が3g/L以上である化合物。
7)硫酸化セルロースカルシウム塩または硫酸化セルロースナトリウム塩である、前記6)記載の化合物。
8)温度37℃の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)中において、ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼのヒアルロン酸分解活性を50%阻害する濃度が0.018mg/mL以下である前記1)〜7)項のいずれか1項記載の化合物。
9)NCマウスを用いた皮膚炎モデルに対して皮膚炎抑制作用を示す、前記1)〜7)項のいずれか1項記載の化合物。
10)前記1)〜9)項のいずれか1項記載の化合物を少なくとも1種含有する皮膚炎治療剤。
11)アトピー性皮膚炎を治療するためのものである、前記10)記載の皮膚炎治療剤。
12)前記1)〜9)項のいずれか1項記載の化合物を少なくとも1種含有する化粧料。
また、本発明の硫酸化セルロース化合物の20℃の純水に対する溶解度は3g/L以上、好ましくは15g/L以上20g/L未満である。溶解度が3g/L以上であれば、本発明の硫酸化セルロース化合物は、電解質化され水溶解性が付与されており、特にアトピー様の皮膚症状を予防、またはその症状緩和、改善または治癒に有効である。
本発明の硫酸化セルロース化合物に用いられる結晶セルロースとしては、第十三改正日本薬局方収載品が好ましく、例えば、セルロース微結晶(和光純薬工業(株)、大阪市)や結晶セルロース(商品名セオラス、旭化成(株)、東京)等市販のものが使用できる。本発明で用いられる結晶セルロースの結晶化度(X線回折法[アビセル時報、30号、1973年]により測定)は、63%以上が好ましい。
本発明の硫酸化セルロース化合物の重量平均分子量は、特に限定はされないが、1,000〜200,000が好ましく、50,000〜80,000がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲の硫酸化セルロース化合物は、上記の結晶性の高い結晶セルロースから得られるため、化学的に安定で皮膚炎治療剤の有効成分として好適である。
硫酸化セルロースカルシウム塩は、例えば硫酸化セルロース水溶液に塩化カルシウム水溶液を加えて中和することにより得ることができる。この場合、硫酸化セルロース水溶液の濃度は特に制限は無いが5〜20重量%程度が好ましい。塩化カルシウム水溶液の濃度も特に制限はないが飽和水溶液が好ましい。硫酸化セルロースカルシウム塩を析出沈殿させるにはアルコール系等の両親媒性溶剤であれば良いが、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールである。
また、硫酸化度の違いによるヒアルロニダーゼの阻害活性の測定は、基質となるヒアルロン酸と種々の硫酸化度の硫酸化セルロース化合物からなる溶液に一定濃度のヒアルロニダーゼを加えた後、一定時間反応させ、ヒアルロン酸の分解速度を解析することによって求めることができる。
本発明の硫酸化セルロース化合物は、温度37℃の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)中において、ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼのヒアルロン酸分解活性を50%阻害する濃度が0.018mg/mL以下であることが好ましく、0.015mg/mL以下であることがより好ましい。該濃度が0.018mg/mL以下であれば、一般的に顕著なヒアルロニダーゼ阻害活性があると認められ、皮膚炎治療剤として高い効果が期待できる。
尚、本発明の皮膚炎治療剤は、更に化粧水、乳液、クリーム等の化粧料の形態でも用いられる。
1)溶解度
溶解度は温度20℃で水10mL中に溶解する重量を測定した。
2)硫黄含量
硫黄含量は酸素フラスコ燃焼−イオンクロマトグラフ法により測定した。
3)硫酸化セルロース化合物の重量平均分子量
硫酸化セルロース化合物の重量平均分子量はゲルろ過法により測定した。即ち、プルラン(Pullulan Shodex Standard P−82)を分子量標準とし、被測定物質を、カラムとしてShodex OHpak SB−804HQ、移動層として0.2mol/L塩化ナトリウム溶液を用い、流速0.5mL/分で溶出させ、溶出液を示差屈折器で分析し、溶出時間を測定し、重量平均分子量を求めた。
4)結晶セルロースの平均重合度
結晶セルロースの平均重合度は第十三改正日本薬局方解説書(1996年、廣川書店刊行)D−586〜589に記載された確認試験(3)の方法により測定した。
合成例1
温度計、滴下ロート、攪拌装置、及び窒素ガス導入管を備えた3L(リットル)のセパラブルフラスコに、結晶セルロース(セオラスPH−101(商品名)、平均重合度242)180.0g及びジメチルホルムアミド160mLを投入し、一晩攪拌した。次に、氷冷下18%−無水硫酸−ジメチルホルムアミド錯体1220.75gを35分かけて投入した後、反応容器を20℃の恒温槽に浸け、20分かけて昇温させ20℃で6時間反応させた。
反応終了後、反応容器を5℃まで氷冷し、氷冷しながら反応液を水1220mL中に75分かけて徐々に投入し、続いて、水酸化カルシウムを反応液のpHが7になるまで徐々に投入した。このとき中和に要した水酸化カルシウムは70.82gであった。生じた沈殿をろ別し、ろ液を20Lのイソプロピルアルコール中に投入してポリマーを析出させ、ろ別し、ろ液を40℃で8時間減圧乾燥し、硫酸化セルロースカルシウム塩を得た。得られた硫酸化セルロースカルシウム塩の収量は130gであり、20℃の純水に対する溶解度は15g/L、硫黄含量は14.0重量%、重量平均分子量は77,000であった。
温度計、滴下ロート、攪拌装置、及び窒素ガス導入管を備えた3.0Lのセパラブルフラスコに、結晶セルロース(セオラスPH-101)15.0g及びジメチルホルムアミド75mLを投入し、室温で15時間攪拌した。次に、氷冷下、18.8重量%濃度の無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液337.5gを投入した後、反応容器を24℃の恒温槽に浸け、20分かけて昇温させ24℃で6時間反応させた。
反応容器を5℃まで氷冷し、氷冷しながらイソプロピルアルコール375mLを投入し、析出物を得た。30分攪拌後、沈殿物をろ別し、これを10℃以下に冷却したイオン交換水375mLに溶解し15分間攪拌した。次いで飽和塩化カルシウム水溶液104.0g、イソプロピルアルコール750mLを加えて沈殿を析出させた。これをろ別し、ろ液を40℃で8時間減圧乾燥し、硫酸化セルロースカルシウム塩を得た。得られた硫酸化セルロースカルシウム塩の収量は40.3gであり、20℃の純水に対する溶解度は15g/L、硫黄含量は15.4重量%であった。重量平均分子量は76,000であった。
以下、無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液の使用量を表1のように変化させた以外は合成例2と同様な方法で反応させ合成例3〜7の硫酸化セルロースカルシウム塩を得た。合成例2〜7で得た硫酸化セルロースカルシウム塩の20℃の純水に対する溶解度、硫黄含量、及び重量平均分子量を表1に示した。
合成例8
温度計、滴下ロート、攪拌装置、及び窒素ガス導入管を備えた500mLのセパラブルフラスコに、結晶セルロース(セオラスPH−101)15.0g及びジメチルホルムアミド75mLを投入した。次に、氷冷下19%−無水硫酸−ジメチルホルムアミド錯体163.8gを22分かけて投入した後、反応容器を20℃の恒温槽に浸け、20分かけて昇温させ20℃で6時間反応させた。
反応容器を5℃まで氷冷し、氷冷しながらイソプロピルアルコール500mLを投入し、析出物を得た。30分攪拌後、沈殿物をろ別し、これを10℃以下に冷却したイオン交換水200mLに溶解し15分間攪拌した。次いで20%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが7になるまで徐々に投入した。続いて、イソプロピルアルコール500mLを加えてポリマーを析出させ、ろ別した。これを40℃で8時間減圧乾燥し、硫酸化セルロースナトリウム塩を得た。得られた硫酸化セルロースナトリウム塩の収量は26.8gであり、20℃の純水に対する溶解度は180g/L、硫黄含量は13.6重量%であった。
温度計、滴下ロート、攪拌装置、及び窒素ガス導入管を備えた3.0Lのセパラブルフラスコに、結晶セルロース(セオラスPH-101)75.0g及びジメチルホルムアミド375mLを投入し、室温で15時間攪拌した。次に、氷冷下、17.7重量%濃度の無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液845.9gを投入した後、反応容器を20℃の恒温槽に浸け、20分かけて昇温させ20℃で6時間反応させた。
反応終了後、反応液を水3000mL中に投入し、続いて、20%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが7になるまで徐々に投入した。生じた沈殿をろ別し、ろ液に塩化ナトリウム140.0gを投入し、30分攪拌した。次いで、3Lのメチルアルコール中に投入してポリマーを析出させ、ろ別し、これを40℃で8時間減圧乾燥し、硫酸化セルロースナトリウム塩を得た。得られた硫酸化セルロースカルシウム塩の収量は128.5gであり、20℃の純水に対する溶解度は180g/L、硫黄含量は13.9重量%であった。
合成例1で得た硫酸化セルロースカルシウム塩を日本薬局方注射用水で希釈して、硫酸化セルロースカルシウム塩濃度0.5重量%の皮膚炎治療剤を調製した。
合成例1で得た硫酸化セルロースカルシウム塩を日本薬局方注射用水で希釈して、硫酸化セルロースカルシウム塩濃度0.1重量%の皮膚炎治療剤を調製した。
比較例1として、ヒルドイドソフト(マルホ(株)製、1g中に硫酸化コンドロイチン硫酸3mg含有の軟膏)を用いた。
NC/Nga系雄性マウス(日本エスエルシー(株))の頭部後方から頸部背面及び背部にかけて注意深く剃毛し、上記実施例1及び2で調製した試料は100μLを、比較例1で調製した試料は100mgを、一日一回、10日間にわたり、剃毛部及び耳の外側にプラスチック製のヘラで塗布した。試験は各群6匹ずつで行った。
全例について一日一回、被験物質塗布部位の外表の症状の状態観察を塗布終了後に行った。症状は次の分類表現に基づき耳及び頸背部についてスコア付けし、耳及び頸背部のスコアを合わせた総合スコアを算出した。
0:無症状
1:表皮剥離(鱗屑、落屑)、発赤
2:浮腫
3:痂皮(びらん・潰瘍)が被験物質塗布部位の1/4未満のもの
4:痂皮(びらん・潰瘍)が被験物質塗布部位の1/2未満のもの
5:痂皮(びらん・潰瘍)が被験物質塗布部位の1/2以上のもの
(1)炎症性細胞浸潤
リンパ球、顆粒球、マクロファージ等が混じる細胞浸潤を炎症性細胞浸潤とした。グレード分けについては組織破壊を伴わないものを軽度(+)、組織破壊を伴わないが、真皮全体に認められる場合を中程度(++)、組織破壊を伴わないが、真皮を超えて認められる場合を高度(+++)とした。また、びらんの周辺のみに細胞浸潤が認められる場合には異常所見とはしなかった。
(2)真皮の線維化
真皮の表層のみに線維化が認められる場合または真皮の厚さに変化が認められない場合を軽度(+)、真皮全体の線維化により、真皮が肥厚している場合を中程度(++)、標本上の真皮全体が肥厚している場合を高度(+++)とした。
(3)扁平上皮過形成
細胞の肥大または細胞数の増加により扁平上皮(表皮)の厚さが明らかに肥厚している場合を軽度(+)、乳頭状の間質を伴う場合を中程度(++)、標本全体に肥厚が認められる場合を高度(+++)とした。
(4)びらん
表皮の欠損が200倍の倍率で1視野以内の大きさのものが2箇所以内に認められる場合または2視野以内の大きさのものが1箇所に認められる場合を軽度(+)、2視野を超える大きさのものが1箇所以上に認められる場合を中程度(++)、標本全体に認められる場合を高度(+++)とした。
(5)痂皮
全体の1/3未満の皮膚を被うものを軽度(+)とした(ただし、びらんの部分は除く)。
本試験で用いた近交系NC/Ngaマウスは、7−8週齢を境に顔、耳、頸、背部等に強い痒覚を伴う皮膚炎を自然発症し、その皮膚症状は加齢とともに悪化が見られる。このNC/Ngaマウスの強い痒覚を伴う皮膚炎は、引っかき行動の出現から始まり、出血を伴い、進行すると皮膚のびらん、潰瘍形成へと到り、皮膚は乾燥、肥厚する。これらはヒトのアトピー性皮膚炎ときわめて類似した症状と考えられている。試験には、頸部または背部に痂皮形成(スコア4)が観察された動物を順次使用し、症状及び体重が均一になるよう群分けを行った。
表2に示すように、今試験では、投与期間終了までに、実施例1で調製した皮膚炎治療剤では、6例全例(うち1例で症状の消失)で、実施例2で調製した皮膚炎治療剤では、6例中5例(うち2例で症状の消失)で、比較例1の皮膚炎治療剤では、6例中4例で、それぞれ症状の軽減が見られた。これらの結果は無処置群ではスコアの平均が増加傾向を示す(塗布0日目:4.0、塗布11日目:4.5)ことを考慮すると、症状進展の抑制効果を示唆するものと考えられた。更に表2に示すように、実施例1及び実施例2で調製した皮膚炎治療剤は、比較例の皮膚炎治療剤に比べて、症状進展の抑制効果に優れていることが示された。
また、表3に示すように、実施例1及び実施例2で調製した皮膚炎治療剤は、比較例の皮膚炎治療剤に比べて、病理組織学的所見が認められる固体数の減少が認められた。特に、(1)炎症性細胞浸潤においては、実施例2で調製した皮膚炎治療剤は、比較例の皮膚炎治療剤に比べて、炎症性細胞浸潤が認められる固体数の有意な減少(p<0.01、片側ノンパラメトリック型 Tukey's test)が認められた。
[アトピー性皮膚炎モデルNCマウスの皮膚炎の進展に対する抑制効果試験2]
合成例2〜5で得られた硫酸化セルロースカルシウム塩を用いて、アトピー性皮膚炎モデルマウスNCマウスの皮膚炎の進展に対する抑制効果を評価した。比較例2としてヒルドイドソフト(マルホ(株)製、1g中に硫酸化コンドロイチン硫酸を3mg含有)を用い、比較例3として注射用水((株)大塚製薬工場)を用いた。
2,4,6−トリニトロクロロベンゼン(東京化成工業(株))を100mg秤量し、0.4mLのアセトン(和光純薬工業(株))を加え溶解した後、1.6mLのエタノール((株)ワコーケミカル)を加えた溶液を調整し、感作用2,4,6−トリニトロクロロベンゼンとした。この溶液に最終濃度が0.8%(W/V)となるようオリーブオイル(和光純薬工業(株))を加え、誘発用2,4,6−トリニトロクロロベンゼン溶液とした。この作業は、黄色灯下、褐色ガラス製の容器を用い、投与直前におこなった。
8週齢に達した雄のNC/Nga Tnd Crjマウス(日本チャールズ・リバー(株))の腹部を、エーテル麻酔下でバリカンを用いて毛刈りし、毛刈りした腹部及び足蹠に感作用2,4,6−トリニトロクロロベンゼン溶液の0.15mLをプラスチック製の棒を用いて塗布し、感作させた。誘発は、感作後の4日目に実施した。即ち、感作済みのNCマウスの背部を毛刈りし、毛刈りした背部及び左右の耳に誘発用2,4,6−トリニトロクロロベンゼン溶液を0.15mLをプラスチック製の棒を用いて塗布した。尚、本実施例に用いたNCマウスは、この方法による1回目の誘発で、後述する臨床症状に従った皮膚炎スコアの総計がn=8で25となるモデルマウスである。
合成例2〜5の硫酸化セルロースカルシウム塩を注射用水((株)大塚製薬工場)に溶解し0.1%(W/V)溶液を調製した。この溶液をNCマウスの誘発した部位に0.15mLをプラスチック製の棒を用いて塗布した。投与は、各群n=8匹の2,4,6−トリニトロクロロベンゼン誘発NCマウスを用い、1日1回塗布した。比較例2としてヒルドイドソフト100mg、比較例3として注射用水((株)大塚製薬工場)0.15mLを一日一回同様に塗布した。誘発後の7日目の症状を観察し、次に従ってNCマウスの皮膚症状をスコア化した。その結果を表4に示した。
皮膚炎スコアは(a)掻痒症、(b)発赤、出血、(c)浮腫、(d)擦傷・組織欠損、(e)痂皮形成・乾燥の項目について、無症状(0点)、軽度(1点)、中等度(2点)、高度(3点)を評点化し、その合計を用いた。合計スコアが大きい程、モデルマウスのアトピー症状が重篤になることを意味する。
本実施例の結果から、特に、硫黄含量が9.8%以上の硫酸化セルロースカルシウム塩が、誘発初期のアトピー症状が発症しつつある症状が非常に軽度なマウスに対して有効に機能することが判った。
尚、本実施例は平澤らの先例に従って実施した(平澤ら。Pharmacometrics, 59,123−134,2000)。
[ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼの活性阻害試験1]
合成例2〜7で得た硫黄含量の異なる硫酸化セルロースカルシウム塩を用い、ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼの活性阻害試験を行った。尚、用いた試薬は特に記載しない限り和光純薬工業(株)製である。
下記の6種の溶液を作製した。
溶液A:ウシ睾丸由来ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)溶液(濃度 2.83mg/mL)。
溶液B:0.3mol/L塩化ナトリウム−0.1mol/L酢酸緩衝溶液(pH4.0)。
溶液C:ヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製)の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)溶液(濃度 1.83mg/mL)。
溶液D:0.4mol/L水酸化ナトリウム水溶液。
溶液E:0.8mol/Lホウ酸ナトリウム水溶液。
溶液F:パラ−ジメチルアミノベンズアルデヒド1gに、10N塩酸1.25mL及び酢酸98.75mLを添加した溶液。
溶液A0.025mLを溶液B0.2mLと混合して37℃で20分間保った。これに合成例2から7で得た硫黄含量の異なる硫酸化セルロースカルシウム塩を0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、及び10.0mg/mLの濃度に調製した水溶液0.1mLを各々添加し、37℃で20分間恒温槽に静置した。更に溶液C0.2mLを加えて37℃で20分間恒温槽に静置した。次いで溶液D0.1mL及び溶液E0.1mLを添加して3分間煮沸した後冷却し、溶液F3.0mLを加え37℃で20分間恒温槽に静置し試験溶液を調製した。この試験溶液について、ヒアルロニダーゼの分解により生成した還元端のN−アセチルヘキソサミンを指標として、対照を純水に、585nmにおける吸光度QEを測定した。
溶液Aの代わりに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)を用い、硫酸化セルロースカルシウム塩水溶液の代わりに純水を用いた以外は、上記の試験溶液の調製と同様にして対照溶液1を調製した。この対照溶液1につき、試験溶液の場合と同様にして、585nmにおける吸光度Q1を測定した。
硫酸化セルロースカルシウム塩水溶液の代わりに純水を用い、溶液Cの代わりに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)を用いた以外は、上記の試験溶液の調製と同様にして対照溶液2を調製した。この対照溶液2につき、試験溶液の場合と同様にして、585nmにおける吸光度Q2を測定した。
阻害率(%)={(Q2−Q1)−(QE−Q1)}/(Q2−Q1)
表5に硫黄含量の異なる硫酸化セルロースカルシウム塩溶液の50%阻害濃度と0.015mg/mLにおける阻害率を示す。
[ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼの活性阻害試験2]
(試験溶液の調製)
実施例7〜12と同様に、溶液A0.025mLを溶液B0.2mLと混合して37℃で20分間保った後、これに合成例8で得た硫酸化セルロースナトリウム塩を0.001mg/mL、0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.1mg/mL、1.0mg/mL、及び10.0mg/mLの濃度に調製した水溶液0.1mLを各々添加し、37℃で20分間恒温槽に静置した。更に溶液C0.2mLを加えて37℃で20分間恒温槽に静置した。次いで溶液D0.1mL及び溶液E0.1mLを添加して3分間煮沸した後冷却し、溶液F3.0mLを加え37℃で20分間恒温槽に静置し試験溶液を調製した。この試験溶液について、ヒアルロニダーゼの分解により生成した還元端のN−アセチルヘキソサミンを指標として、対照を純水に、585nmにおける吸光度QEを測定した。対照溶液1と対照溶液2の調製は、実施例7〜12と同様に行った。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率を下記の式に従って求め、硫酸化セルロースナトリウム塩の濃度と該阻害率をプロットして、合成例8で得た硫酸化セルロースナトリウム塩のヒアルロン酸分解活性を50%阻害する濃度(50%阻害濃度)を求めた。
阻害率(%)={(Q2−Q1)−(QE−Q1)}/(Q2−Q1)
表6に硫黄含量の異なる硫酸化セルロースナトリウム塩溶液の50%阻害濃度と0.015mg/mLにおける阻害率を示す。
硫酸化セルロースカルシウム塩または硫酸化セルロースナトリウム塩に代えて皮膚炎治療、保湿効果をうたわれているヒルドイドソフト(マルホ(株)製、1g中に硫酸化コンドロイチン硫酸を3mg含有の軟膏。本品の溶液は軟膏の成分含有量を計算して調製した)と、そのヒアルロニダーゼ阻害活性が高いと言われているヘパリノイドの代表的化合物であるコンドロイチン硫酸二種に対し、実施例7〜13と同様の方法によりヒアルロニダーゼ活性阻害試験を行った。その結果を表7に示す。
表5〜7から明らかなように、硫黄含量が6.5〜19.0重量%の実施例7〜12の硫酸化セルロースカルシウム塩は、50%阻害濃度が0.018mg/mL以下の低い値を示し、比較例4〜6の化合物等に比べて顕著なヒアルロニダーゼ活性阻害効果を示す。また、実施例13の硫酸化セルロースナトリウム塩は、50%阻害濃度が0.011mg/mLを示し、比較例4〜6の化合物等に比べて顕著なヒアルロニダーゼ活性阻害効果を示す。
Claims (10)
- 結晶セルロースから得られた硫酸化セルロース及びその塩から選ばれた化合物であり、20℃の純水に対する溶解度が3g/L以上であり、且つ、硫黄含量が13.1〜15.4重量%である化合物を有効成分として含む皮膚外用剤。
- 結晶セルロースの平均重合度が150〜300である、請求項1記載の皮膚外用剤。
- 前記化合物の重量平均分子量が1,000〜200,000である、請求項1または2記載の皮膚外用剤。
- 前記化合物の重量平均分子量が50,000〜80,000である、請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
- 前記化合物が硫酸化セルロースカルシウム塩または硫酸化セルロースナトリウム塩である、請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
- 温度37℃の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)中において、ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼのヒアルロン酸分解活性を50%阻害する濃度が0.018mg/mL以下である、請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
- NCマウスを用いた皮膚炎モデルに対して皮膚炎抑制作用を示す、請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
- 皮膚炎治療剤である、請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
- アトピー性皮膚炎を治療するためのものである、請求項8記載の皮膚外用剤。
- 化粧料である、請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膚外用剤。
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