JP6701790B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ラミネート金属板、遮光テープなど隠蔽性が必要な用途に適して用いられるポリエステルフィルムに関するものである。
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。また、金属缶用途については、缶表面に鮮やかな印刷を施すために白色フィルムを金属板にラミネートした白色ラミネート金属板を製缶する検討がされており(例えば、特許文献1〜3)、塗装を行わないため有機溶剤を使用しない環境低負荷材として提案されている。
特開2000−177085号公報 特開2001−212918号公報 特開平11−262987号公報
しかし、金属板の下地を隠蔽するために、酸化チタンなどの白色顔料を高濃度でフィルムに含有させる場合、フィルム製造時に白色顔料が起点となって結晶化が進行してフィルムが破断しやすくなることから、特許文献1〜3では、フィルム製造の際に使用するポリエステルに共重合成分を重合させてポリマーの結晶化を抑制する方法が適用されている。ただし、共重合成分を含んだポリエステルを適用する場合は融点が低下することから、例えば二軸延伸後の熱固定温度を190℃を超えた範囲に設定すると平面性や耐脆性が低下する場合があり、190℃での収縮率を十分に抑制した高品位のフィルムの製造が困難であるという課題があった。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、薄膜でありながら下地隠蔽性と高温での加工適性が良好なポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 厚みが10〜40μm、ハンター表色系におけるL値が80以上のポリエステルフィルムであって、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直行する方向を方向Yとすると、190℃、20分における方向Xの熱収縮率(Sx)、方向Yの熱収縮率(Sy)が下記式を満たし、少なくとも片面において、120℃10分熱処理前後における入射角60°における光沢度の変化が0%以上15%以下である、ポリエステルフィルム。
|Sx−Sy|≦4%・・・(I)
Sx≦5%・・・(I I)
Sy≦5%・・・(III)
(2) 少なくとも片面の表面粗さSRaが7nm以上30nm以下であり、かつ、少なくとも片面の入射角60°における光沢度が80%以上120%以下である、(1)に記載のポリエステルフィルム。
(3) フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直行する方向を方向Yとすると、方向Xの破断強度(Fx)、方向Yの破断強度(Fy)、方向Xの破断伸度(Lx)、方向Yの破断強度(Ly)がそれぞれ下記式を満たす、(1)または(2)に記載のポリエステルフィルム。
|Fx−Fy|≦30MPa・・・(IV)
140MPa<Fx≦200MPa・・・(V)
140MPa<Fy≦200MPa・・・(VI)
|Lx−Ly|≦30%・・・(VII)
80%<Lx≦195%・・・(VIII)
80%<Ly≦195%・・・(IX)
なくとも片面において、50%延伸前後の入射角60°における光沢度の変化が0%以上20%以下である、(1)から()のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
) フィルムの融点が230℃以上265℃以下である、(1)から()のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
) フィルムに含まれる白色顔料がアナターゼ型酸化チタンである、(1)から()のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
) ポリエステルA層の少なくとも片面にポリエステルB層を有し、ポリエステルB層に白色顔料を含まないことを特徴とする、(1)から()のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
) 金属板にラミネートして使用される、(1)から()のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
) (1)から(8)のいずれかに記載のフィルムを用いた遮光テープ。
本発明のポリエステルフィルムは、金属板と貼り合わせたり、もしくは遮光テープとして使用したりする際に、高い隠蔽性を金属板やテープに付与し、かつ高温での加工を可能にする効果を奏する。
以下、本発明のポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、ジカルボン酸由来の構造単位(ジカルボン酸成分)とジオール由来の構造単位(ジオール成分)のエステル結合により結合されるポリマーを指す。
ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、および、各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸とのエステル誘導体が挙げられる。これらのジオール成分はエチレングリコール以外に1種類のみでもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。これらのジカルボン酸成分はエチレングリコール以外に1種類のみでもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらのジカルボン酸成分、ジオール成分の中でも、耐溶剤性、耐熱性の観点から、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコールが好ましく用いられる。耐溶剤性、耐熱性に加え、製造コストの観点からは、テレフタル酸とエチレングリコールの組合せが最も好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールの組合せからなる、いわゆるポリエチレンテレフタレートとなる場合、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分100モル%に対して0モル%以上20モル%以下が好ましく、0モル%以上10モル%以下がより好ましく、0モル%以上2モル以下がさらに好ましく、特に好ましくは、0モル%、すなわちジカルボン酸成分がテレフタル酸成分のみからなる構成である。テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分が全ジカルボン酸成分100モル%に対して20モル%を超えると、ポリエステルフィルムの融点が低下したり結晶性が低下したりして、耐熱性が不十分となったり、厚みムラが大きくなる場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートとなる場合、エチレングリコール以外のジオール成分は、ポリエステルを構成する全ジオール成分100モル%に対して0モル%以上33モル%以下が好ましく、0%モル以上10モル%以下がより好ましく、0モル%以上5モル%以下がさらに好ましく。特に好ましくは0モル%、すなわちジオール成分がエチレングリコールのみからなる構成である。エチレングリコール以外のジオール成分が全ジオール成分100モル%に対して33モル%を超えると、ポリエステルフィルムの融点が低下したり結晶性が低下したりして、耐熱性が不十分となったり、厚みムラが大きくなる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが10〜40μmであることが重要である。厚みが10μm未満であると、加工時の取り扱い性が困難になったり、下地隠蔽性が不十分になったり、あるいは製膜性が不十分となる場合がある。また、厚みが40μmを超えると、金属板とのラミネートが困難となったり、電子部品の両面接着遮光テープとして使用した際に、電子部品の厚みが大きくなり、小型製品への使用に不利となったりする場合がある。本発明のポリエステルフィルムは、取り扱い性、ラミネート性、製品厚みの観点から、6〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましく、10〜20μmが特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みを10〜40μmとするための方法としては、ポリマーの吐出量、キャストドラム速度、延伸倍率などの製造条件を調整する方法が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、ハンター表色系におけるL値が80以上であることが重要である。ハンター表色系におけるL値が80未満であると、金属や電子部品に対する下地隠蔽性が不十分となる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムのL値は、より隠蔽性を良好とする観点から、82以上が好ましく、84以上がより好ましく、86以上が特に好ましい。また、本発明のポリエステルフィルムのL値が大きいほど下地隠蔽性が良好となるが、製膜性を良好とする観点からは、L値が100以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムのL値を80以上とするための方法としては、白色顔料を所定量フィルムに含有させる方法が挙げられる。白色顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナなどが挙げられ、中でも酸化チタンが好ましい。白色顔料として酸化チタンを含む場合、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンのいずれを含んでもよい。これらの白色顔料の中でも、製造時のスリット性の観点からは、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。本発明のポリエステルフィルムとして例えばアナターゼ酸化チタンを用いる場合、L値を80以上とするためには、フィルム厚みによって異なるものの、フィルム全体に対して5質量%以上40質量%以下含む態様が好ましく、より好ましくは7質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下、特に好ましくは、15質量%以上25質量%以下含む態様である。フィルム全体に対して白色顔料が5質量%未満含まれると、L値が80未満となる場合がある。また、フィルム全体に対して白色顔料が40質量%を超えて含まれると、白色顔料が起点となってフィルムを構成するポリエステルの結晶化が過度に進行し、横延伸時に破断して二軸延伸ポリエステルフィルムが得られない場合がある。
金属板へのラミネート用途においては、ラミネート時、印刷時、製缶時にかかる熱によってもフィルムが変形しないようにするため、190℃における加工適性が重要である。そのため、本発明のポリエステルフィルムは、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直行する方向を方向Yとしたときに、190℃、20分における方向Xの熱収縮率(Sx)、方向Yの熱収縮率(Sy)が下記(I)〜(III)式を満たすことが重要である。
|Sx−Sy|≦4%・・・(I)
Sx≦5%・・・(I I)
Sy≦5%・・・(III)
本発明のポリエステルフィルムの|Sx−Sy|が4%を超えると、金属とのラミネート時、あるいは接着テープへの加工の際に皺が発生したり、印刷加工後に位置ずれが発生したりする場合がある。
本発明のポリエステルフィルムの|Sx−Sy|は、3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、0.6%以下が特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの|Sx−Sy|を4%以下とするための方法としては、縦延伸、横延伸のそれぞれの実効倍率を同じ値近い条件(例えば、縦延伸を3倍、横延伸を3倍、など)に設定し、面配向係数を0.8〜1.4とする方法、Δnを0〜30×10−3とする方法などが挙げられる。ここで、面配向係数とは、フィルムの面内方向の配向の指標を指し、フィルム面内の任意の一方向Xの屈折率(nX)と、方向Xに直交する方向Yの屈折率(nY)、厚み方向Zの屈折率(nZ)を測定し、fn=(nX+nY)/2−nZの式から算出することができる。また、Δnは、フィルムの面内方向の複屈折率を指し、Δn=nX−nYで求められる。
本発明のポリエステルフィルムのSx、Syがそれぞれ5%を超えると、金属とのラミネート時、あるいは接着テープへの加工の際の幅縮みが大きくなり、ラミネート金属板、あるいは両面接着遮光テープの収率が低下する場合がある。Sx、Syはそれぞれ、4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下が特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムのSx、Syそれぞれを5%以下とするための方法としては、二軸延伸後の熱固定温度を190℃以上にする方法、二軸延伸後に、再度縦延伸および/または横延伸を行い、面配向を高くして熱収縮を抑制する方法などが挙げられる。二軸延伸後の熱固定温度は、好ましくは190℃以上250℃以下であり、より好ましくは、200℃以上240℃以下であり、特に好ましくは、210℃以上230℃以下である。また、二軸延伸後に再度縦延伸および/または横延伸を行う場合は、はじめの横延伸後の熱固定を行わないか、100〜120℃に設定した状態で、再度縦延伸およびまたは横延伸を130〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、二軸延伸後の熱固定温度を190℃以上にするためには、ポリエステルフィルムの融点が230℃以上265℃以下であることが、フィルムの品位、耐脆性の観点から好ましい。ポリエステルフィルムの融点は、より好ましくは246℃以上260℃以下であり、さらに好ましくは250℃以上260℃以下であり、特に好ましくは、253℃以上257℃以下である。ポリエステルフィルムの融点が230℃未満であると、熱固定温度を190℃以上に設定した際に融点近くまでフィルムが加熱されるため、フィルムの変形が大きくなって平面性が悪化したり、構成するポリエステルの結晶の融解が開始されてフィルムの配向が低くなり、フィルムが脆くなってしまう場合がある。また、ポリエステルフィルムの融点が265℃を超える場合、溶融押出性が低下して押出精度が不十分となって、フィルムの厚みムラが大きくなってしまう場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、厚み、ハンター表色系におけるL値、190℃、20分における熱収縮率の特性すべてを同時に両立したフィルムを得ることは容易ではない。例えば、40μm以下の薄いフィルムにおいてハンター表色系L値を特定の範囲以上にしようとすると、酸化チタンなどの白色顔料を多量に含有させる必要があるが、白色顔料を多量に含有させれば、前述の通りフィルムを構成するポリマーの結晶化が過度に進行し、横延伸時の破断が生じやすくなる。一方で、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートなどといった共重合ポリエステルを適用し、結晶性を低減させることにより、横延伸時の破断を抑制することができるが、共重合ポリエステルを適用するとポリエステルの融点も低下してしまうため、平面性や耐脆性の観点からフィルムの熱固定温度を十分に上げることができず、190℃熱収縮率を低下することが困難となることがある。
本発明を達成するためには、二軸延伸後の熱固定温度を190℃以上の高温にして熱収縮率を抑制するために、ポリエステルの共重合量が少ない、すなわち融点が高く結晶性が高いポリエステルを適用することが重要である。一方、薄い厚みでハンター表色系におけるL値を80以上とするためには白色顔料を多量に含有させる必要があるが、ポリエステルの結晶性が高くなって延伸時の破断が起こりやすくなることから、本発明を達成するには、融点が高くかつ白色顔料を多量に含有する非常に結晶性の高いポリエステルを使用しながら、薄膜でも延伸時に破断が発生しないよう結晶化を抑制する技術が重要となる。
結晶性の高いポリエステルを使用しながら延伸時の結晶化を抑制する技術としては、キャスト時の熱結晶化抑制、縦延伸時の段階的延伸を行うことによる配向結晶化抑制などが挙げられる。
キャスト時の熱結晶化抑制とは、具体的にはキャストドラムの表面温度を15℃以下に設定し、キャストドラム上のポリマーが結晶化する温度履歴をできるだけ与えないようにする方法である。キャストドラムの表面温度は、13℃以下が好ましく、10℃以下が好ましい。ただし、キャストドラムの表面温度が低すぎるとドラム表面が結露する場合があるので、湿度を低く保つことが好ましい。キャストドラムの表面温度を15℃以下にする方法としては、キャストドラム内に循環させる冷媒の温度を下げたり、単位時間あたりの流量を上げたりする方法、エアーチャンバーでキャストドラム表面に冷気を吹きつける方法、及び、これらを併用する方法などが用いられる。また、エアーチャンバーを用いる方法は、キャストドラム上のフィルムを冷気で直接冷却する観点からも、好ましく用いられる。
縦延伸時の段階的延伸による結晶化抑制技術とは、具体的には、キャスト工程で得られたシートを縦延伸工程で延伸する際に、一度に所望の倍率まで延伸するのではなく、2段階以上で低倍率の延伸を繰り返して延伸時の配向結晶化を抑制する方法である。低倍率の延伸において、一度の延伸倍率は、3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましく、1.8倍以下がさらに好ましく、特に好ましくは1.5倍以下である。また、縦延伸トータルでの延伸倍率は2.5倍以上が好ましく、2.7倍以上がより好ましく、3倍以上が特に好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表面粗さSRaが7nm以上30nm以下であり、かつ、少なくとも片面の入射角60°における光沢度が80%以上120%以下であることが好ましい。少なくとも片面の表面粗さSRaを7nm以上30nm以下とすることで、フィルムの巻き取り性、ならびに印刷部分の光沢が良好となる。少なくとも片面の表面粗さSRaは、7nm以上20nm以下がより好ましく、7nm以上10nm以下がさらに好ましい。また、本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の入射角60°における光沢度を80%以上120%以下とすることで、特に印刷を施していない部分の光沢感を良好とすることができる。入射角60°における光沢度は、より好ましくは80%以上110%以下であり、特に好ましくは、85%以上100%以下である。
本発明の好ましい構成である、少なくとも片面の表面粗さSRa、および入射角60°における光沢度を所定の範囲とする方法としては、本発明のポリエステルフィルムを2層以上の構成とし、少なくとも片面の層において、構成する白色顔料の含有量を、残りの面の層よりも小さくすることなどが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直行する方向を方向Yとすると、方向Xの破断強度(Fx)、方向Yの破断強度(Fy)、方向Xの破断伸度(Lx)、方向Yの破断強度(Ly)がそれぞれ下記式を満たすことが好ましい。
|Fx−Fy|≦30MPa・・・(IV)
140MPa<Fx≦200MPa・・・(V)
140MPa<Fy≦200MPa・・・(VI)
|Lx−Ly|≦30%・・・(VII)
80%<Lx≦195%・・・(VIII)
80%<Ly≦195%・・・(IX)
(IV) 式を満たすことで、2方向のひずみのバランスが良好となり、二軸延伸後のフィルムのカールが起こりにくくなる。また、(V)式、(VI)式を満たすことで、金属板とのラミネートやフィルムへの印刷などで連続搬送工程に投入する場合に高い張力をかけてフィルムを貼っても破断しにくくなり、取り扱い性が良好となる。フィルムが金属板と一緒に変形される際に、クラックを発生せずに変形させることが可能となる。また、(VII)式を満たすことで、2方向のひずみのバランスが良好となり、二軸延伸後のフィルムのカールが起こりにくくなる。また、(VIII)式、(IX)式を満たすことで、フィルムが金属板と一緒に変形される際に、クラックを発生せずに変形させることが可能となる。

本発明のポリエステルフィルムにおいて、(IV)〜(IX)の各式を満たすための方法としては、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの共重合量を低減し、縦と横の延伸倍率をそれぞれ調整する方法などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面において、120℃10分熱処理前後における入射角60°における光沢度の変化が0%以上15%以下であることが、成形や印刷乾燥で熱がかかった際に、加熱むらが生じても外観が不均一にならない点から好ましい。120℃10分熱処理前後における入射角60°における光沢度の変化は、より好ましくは0%以上10%以下、さらに好ましくは、0%以上5%以下である。
本発明の、120℃10分熱処理前後における入射角60°における光沢度の変化を
所定の範囲とする方法としては、本発明のポリエステルフィルムを2層以上の構成とし、少なくとも片面の層において、構成する白色顔料の含有量を、残りの面の層よりも小さくすることなどが挙げられる。白色顔料などの無機粒子を含むフィルムは、表面付近に存在する無機粒子に起因して表面に凹凸形状が形成されるが、このフィルムがガラス転移温度以上に加熱されると、表面積が小さくなるようにフィルムの変形が生じる。この変形によってフィルム表面の白色顔料がフィルム内部に潜るようになり、フィルム表面の凹凸形状が小さくなることから、熱処理後にフィルムの光沢度が変化すると考えられる。そのため、少なくとも片面の層において、白色顔料の含有量が少なくなれば、熱処理後にフィルム内部に潜る白色顔料の量が減少するので、光沢度の変化を小さくすることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、製缶後の光沢感を良好とする観点から、120℃10分熱処理後の光沢度が、80%以上が好ましく、83%以上がより好ましい。また、製缶時の滑り性を良好とする観点から、120℃10分熱処理後の光沢度は、120%以下が好ましい。120℃10分熱処理後の光沢度を80%以上とする方法としては、本発明のポリエステルフィルムを2層以上の構成とし、少なくとも片面の層において、構成する白色顔料の含有量を、残りの面の層よりも小さくすることなどが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面において、50%延伸前後の入射角60°における光沢度の変化が0%以上20%以下であることが、フィルムの成形前後での表面外観変化が少ない点から好ましい。50%延伸前後の入射角60°における光沢度の変化は、より好ましくは0%以上15%以下であり、さらに好ましくは0%以上10%以下であり、特に好ましくは、0%以上5%以下である。
本発明の、少なくとも片面において、50%延伸前後の入射角60°における光沢度の変化を特定の範囲にするための方法としては、本発明のポリエステルフィルムを2層以上の構成とし、少なくとも片面において、構成する白色顔料の含有量を、残りの面の層よりも小さくすること、および、縦延伸時の段階的延伸により、白色顔料の長径を予め面方向に配向させておくことで、その後50%延伸された際にも白色顔料の向きを変化しにくくする方法などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、製缶後の光沢感を良好とする観点から、50%延伸後の入射角60°における光沢度が、80%以上が好ましく、83%以上がより好ましい。また、製缶時の滑り性を良好とする観点から、50%延伸後の入射角60°における光沢度は、120%以下が好ましい。50%延伸後の入射角60°における光沢度を80%以上とする方法としては、本発明のポリエステルフィルムを2層以上の構成とし、少なくとも片面の層において、構成する白色顔料の含有量を、残りの面の層よりも小さくすることなどが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表面粗さ、光沢度、熱処理前後、延伸前後の光沢度変化を特に良好な範囲とするために、ポリエステルA層の少なくとも片面にポリエステルB層を有し、ポリエステルB層に白色顔料を含まない構成が好ましい。ただし、ポリエステルB層には、片面の表面粗さ、光沢度、熱処理前後、延伸前後の光沢度変化を損なわない範囲で、白色顔料以外の公知の易滑性粒子を含んでも構わない。本発明のポリエステルフィルムは、層数、層構成は特に限定されないが、フィルムのカールを抑制し、偏光子に貼り合わせる際の反り低減と干渉色抑制を両立する観点からは、B層/A層/B層、B層/A層/B層/A層/B層、といったように、フィルムが厚み方向に対して対称であり、かつ両表層がポリエステルB層である構成が好ましい。
断面観察で積層構成と確認された場合は、断面観察写真の目視で無機物が多く見えた層をポリエステルA層、無機物が少なく見えた層をポリエステルB層と判別することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、薄膜でありながら下地隠蔽性と高温での加工適性が良好なことから、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板あるいは該鋼板、アルミニウム板にめっき等各種の表面処理を施した金属板にフィルムをラミネートして、得られた金属板を絞り成形やしごき成形加工を行い、金属缶を製造する用途などに好ましく用いられる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、粘着剤層をさらに積層したり、印刷を行ったりして電子部品の構成材となるプラスチック部材、ガラス部材の下地に貼り付けて使用する遮光テープとして好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムは、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に含有させてもよい。
次に、本発明のポリエステルフィルムの好ましい製造方法を以下に説明するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
ポリエステルをベント式二軸押出機に供給し溶融押出する。この際、押出機内を流通窒素雰囲気下で、酸素濃度を0.7体積%以下とし、樹脂温度は265℃〜295℃に制御することが好ましい。また、2種類以上の異なる層を積層させる場合はそれぞれ別々のベント式二軸押出機に供給して溶融押出した後、フィードブロック、マルチマニホールドなどの装置を使用して各溶融押出ポリマーを合流させて積層状態にする。
ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャストドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャストドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャストドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。キャストドラムの表面温度は、隠蔽性と高温での加工適性、延伸性の両立の観点から、15℃以下が好ましい
本発明のポリエステルフィルムは、高温での加工適性、厚みムラの抑制などの観点から、二軸配向フィルムとすることが好ましい。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
かかる延伸方法における延伸倍率としては、長手方向に、好ましくは、2.8倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは3倍以上3.3倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また長手方向の延伸温度は、95℃以上130℃以下が好ましく、延伸前に85℃で1秒以上予熱することが好ましい。
隠蔽性と高温での加工適性を両立させるため、高濃度の白色顔料を含む高結晶性の未延伸フィルムを延伸する場合は、その後の横延伸時の破断を抑制させるため、一度に所望の倍率まで延伸せずに、2段階以上で低倍率の延伸を繰り返して延伸時の配向結晶化を抑制する方法が好ましく用いられる。低倍率の延伸において、一度の延伸倍率は、3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましく、1.8倍以下がさらに好ましく、特に好ましくは1.5倍以下である。また、縦延伸トータルでの延伸倍率は2.5倍以上が好ましく、2.7倍以上がより好ましく、3倍以上が特に好ましい。
幅方向の延伸倍率としては、好ましくは2.8倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは、3倍以上3.5倍以下で、長手方向の延伸倍率にそろえることが好ましい。幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また、85℃の熱収縮率を抑制させるため、延伸前半温度を100℃以上120℃以下、延伸中盤温度を105℃以上130℃以下、さらに延伸後半温度を110℃以上150℃以下とし、延伸前に85℃で1秒以上予熱することが好ましい。
その後、必要に応じて2回目の縦延伸を行ってもよい。2回目の縦延伸を行う場合の延伸倍率は、1倍以上2倍以下が好ましく、1.2倍以上1.6倍以下がより好ましい。また、延伸温度は、140℃以上160℃以下が好ましい。
さらに、二軸延伸、あるいは2回目の縦延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は120℃以上ポリエステルの結晶融解ピーク温度以下の温度で行われるが、好ましくは190℃以上が好ましい。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは5秒以上60秒以下、より好ましくは10秒以上40秒以下、最も好ましくは15秒以上30秒以下で行うのがよい。
さらに、印刷層や粘着層などとの接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、易接着層をコーティングさせることもできる。コーティング層をフィルム製造工程内で設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際、易接着層厚みとしては0.01μm以上1μm以下とすることが好ましい。また、易接着層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。易接着層に好ましく用いられる樹脂としては、接着性、取扱い性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。さらに、140〜200℃条件下でオフアニールすることも好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムは、金属板等にラミネートした後、絞り成形やしごき成形によって製造される金属缶として好ましく使用することができる。また、黒色などの印刷を行うことで、スマートフォンやタブレットなどの電子デバイスの窓枠に設置する遮光テープとして好ましく使用することができる。
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。なお、以下において、実施例1、2、4、5、8、11、13および15は、それぞれ参考例1、2、4、5、8、11、13および15と読み替えるものとする。
(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取して評価した。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価した。
(3)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。
(4)フィルムの融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度をフィルムの融点とした。融点が2箇所以上観測される場合は、最も大きな吸熱ピークをフィルムの融点とした。
(5)フィルムの各層の融点
積層フィルムの場合は、フィルムの各層を削り取ることで、(4)の方法により各層単体の融点を測定することができる。ポリエステルA層とポリエステルB層とを有する積層ポリエステルフィルムの場合は、(3)における断面観察で積層構成と確認された場合は、断面観察写真の目視で無機物が多く見えた層をポリエステルA層、無機物が少なく見えた層をポリエステルB層とした。また、各層それぞれにおいて、融点が2箇所以上観測される場合は、最も大きな吸熱ピークを各層の融点として採用した。
(6)ハンター表色系におけるL値
カラーメーター(スガ試験機製、SM−T)を用いて、JIS P812213−1961に従ってハンター方式での透過モードで測定した値を測定した。光の入射面を、各面5回、両面合計10回測定した。合計10回の測定値の平均を求め、これを当該フィルムの、ハンター表色系におけるL値とした。
(7)表面粗さ
表面粗さ計(小坂研究所製、SE4000)を用いて両面について測定した。触針先端半径0.5μm、測定力100μN、測定長1mm、低域カットオフ0.200mm、高域カットオフ0.000mmの条件で測定し、JIS B0601−2001に準拠して算術平均粗さSRa(nm)を求めた。
(8)光沢度
JIS Z−8741−1997に規定された方法に従って、光沢度計(スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV−5D)を用いて、60°鏡面光沢度を測定した。測定はn=10で行い、最大値と最小値を除いた8回の測定値の平均値を光沢度とした。
(9)190℃20分熱収縮率
フィルムを任意の一方向XおよびX方向に直交する方向Yにそれぞれ長さ70mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに50mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して190℃に加熱した熱風オーブン内に20分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から下記式により熱収縮率を算出した。測定は各フィルムともX方向およびY方向に3サンプル実施して平均値で評価を行った。
熱収縮率(%)={(加熱処理前の標線間距離)−(加熱処理後の標線間距離)}/(加熱処理前の標線間距離)×100。
(10)破断伸度、破断強度
フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとして、150mm×10mm(方向X×方向Y)の矩形に切り出してサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離を50mm(L0)とし、引張速度を300mm/分として引張試験を行い、サンプルが破断した際のチャック間距離(L)を求めた。(L−L0)/L0×100の計算式で求めた値について、10回の測定の平均値を方向Xにおける破断伸度(%)とした。また、破断直前に測定された強度を破断強度(MPa)とした。150mm×10mm(方向Y×方向X)の矩形に切り出してサンプルを作製し、方向Yにおける破断伸度も同様に求めた。
(11)50%延伸後の光沢度変化率
フィルムストレッチャー(ブルックナー社製、KARO−IV)を用いて、下記の条件でフィルムを延伸した後のフィルム表面外観について、以下の基準にてサンプル作製を行った後、光沢度評価を行った。
初期サンプル:100mm×100mm、予熱・延伸温度:120℃、予熱時間:20s、延伸速度:20%/s、延伸倍率:2倍×1倍
光沢度変化率(%)=|延伸前光沢度−延伸後光沢度|/延伸前光沢度×100
(12)120℃10分熱処理後の光沢度変化率
120℃に設定した熱風オーブンに、100mm×100mmに切り取ったサンプルをオーブンの天井真ん中部分に吊るして10分間放置する。10分経過後、サンプルを取り出して光沢度評価を行った。
120℃10分熱処理後光沢度変化率(%)=|熱処理前光沢度−熱処理後光沢度|/熱処理前光沢度×100
(13)加工性評価
A4サイズのフィルムを、2枚のA4サイズの金属枠(4辺それぞれ20mmずつ残し、中心を切り抜いた形状)で挟みこんで金属クリップで固定した。A4サイズのフィルムの中心部に50mm×50mm角(A4サイズの長辺方向(以下、長辺方向)×A4サイズの短辺方向(以下、短辺方向))の印の中心部が重なるようにして印を記入した後、160℃に設定した5m熱風乾燥炉に2.5m/分の搬送速度で投入した。熱風乾燥炉から出たフィルムの升目サイズ、ならびにフィルム状態を確認し、下記基準で評価した。
A:フィルムの升目サイズの変化率が長辺方向、短辺方向とも1%未満で、フィルムの皺が見られなかった。
B:フィルムの升目サイズの変化率が長辺方向、短辺方向のいずれかが1%未満、もう一方が1%以上で、フィルムの皺が見られなかった。
C:フィルムの升目のサイズの変化率が長辺方向、短辺方向とも1%以上で、フィルムの皺が見られなかった。
D:フィルムに皺が見られた。
(14)隠蔽性評価
融点より5℃低い温度まで加熱したティンフリースチール板(鋼板)に油性黒マジックで長さ50mm、幅が0.3mmと1mm、1.5mmの3種類の線を記入後、フィルムの融点より5℃低い温度までティンスチール板を加熱して、その板上にフィルムをゴムロールを使用してラミネートした。得られたラミネート鋼板を目視し、下記基準で評価した。
A:3種類の線ともまったく視認できなかった。
B:3種類の線のうち、1種類の線のみ視認できた。
C:3種類の線のうち、2種類の線を視認できた。
D:3種類の線のうち、3種類とも視認できた。
(15)成形性評価
(14)で得られたラミネート鋼板を絞り比3で絞り加工し、得られた缶を目視で確認し、下記基準で評価した。
A:フィルム表面にフィルム部分の破断、クラックが見られなかった。
B:フィルム表面に2mm以下のフィルム部分の破断、クラックが見られた。
C:フィルム表面に2mmを超え5mm以下のフィルム部分の破断、クラックが見られた。
D:フィルム表面に5mmを超えるサイズのフィルム部分の破断、クラックが見られた。
(16)光沢感評価
(15)で得られた缶について、下記基準で評価した。
A:缶に蛍光灯を映した際に、缶の全面に対して、輪郭がくっきりと視認できる。
B:缶に蛍光灯を映した際に、缶の底面、胴面いずれか一方の輪郭がぼやけて視認され、他方は輪郭がくっきりと視認できる。光沢感が弱く、他方は十分な光沢感を持っている。
C:缶に蛍光灯を映した際に、缶の全面に対して、輪郭がぼやけて視認される。
D:缶に蛍光灯を映した際に、缶の底面、胴面の少なくとも一方の表面が非常に粗く、輪郭がほとんど視認できない。
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
(ポリエステルB)
1,4−シクロヘキサンジメタノールがグリコール成分に対し10モル%共重合された、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
(ポリエステルC)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が80.4モル%、イソフタル酸成分が19.6モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
(白色顔料マスターD)
ポリエステルA中に数平均粒子径1μmのアナターゼ型酸化チタン粒子を粒子濃度50質量%で含有したポリエチレンテレフタレート白色顔料マスター(固有粘度0.65)。
(白色顔料マスターE)
ポリエステルA中に数平均粒子径1μmのルチル型酸化チタン粒子を粒子濃度50質量%で含有したポリエチレンテレフタレート白色顔料マスター(固有粘度0.65)。
(粒子マスターF)
ポリエステルA中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
(粒子マスターG)
ポリエステルA中に数平均粒子径0.7μmの炭酸カルシウム粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有濃度0.65)。
(実施例1)
組成を表の通りとして、原料を酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機に供給し、押出機シリンダー温度を280℃にして原料を溶融させ、口金温度を280℃で、Tダイより10℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ、エアーチャンバー方式で15℃の冷風をキャストドラム上のポリマーに吹きつけながら未延伸シートを得た。次いで、長手方向への予熱温度85℃で1.5秒間予熱を行い、延伸温度115℃で長手方向に3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度85℃で1.5秒予熱を行い、延伸前半温度115℃、延伸中盤温度135℃、延伸後半温度145℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理温度210℃で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例2、3)
熱処理温度を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4、5、6)
厚みを表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例7)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を280℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、フィードブロック内でA層/B層/A層の3層構成になるよう合流させ、合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃で、Tダイより10℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その後は、実施例1と同様にして厚み20μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例8、9、10、13、14、15、16、17)
組成を表の通りに変更した以外は、実施例7と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例11、12)
積層比を表の通りに変更した以外は、実施例7と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例1、2、3、5、7)
組成、厚み、製造条件を表の通りに変更した以外は、実施例7と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例4)
厚みを表の通りに変更した以外は、実施例6と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例6)
厚みを表の通りに変更した以外は、実施例5と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
Figure 0006701790
Figure 0006701790
Figure 0006701790
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本発明は、ラミネート金属板、遮光テープなど隠蔽性が必要な用途に適して用いられるポリエステルフィルムに関するものであり、厚み、ハンター表色系によるL値、熱収縮率を特定の範囲とすることで、薄膜でありながら下地隠蔽性と高温での加工適性が良好なことから、ラミネート金属板、遮光テープなど隠蔽性が必要な用途に適して好ましく用いられる。

Claims (9)

  1. 厚みが10〜40μm、ハンター表色系におけるL値が80以上のポリエステルフィルムであって、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直行する方向を方向Yとすると、190℃、20分における方向Xの熱収縮率(Sx)、方向Yの熱収縮率(Sy)が下記式を満たし、少なくとも片面において、120℃、10分熱処理前後における入射角60°における光沢度の変化が0%以上15%以下である、ポリエステルフィルム。
    |Sx−Sy|≦4%・・・(I) Sx≦5%・・・(II) Sy≦5%・・・(III)
  2. 少なくとも片面の表面粗さSRaが7nm以上30nm以下であり、かつ、少なくとも片面の入射角60°における光沢度が80%以上120%以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直行する方向を方向Yとすると、方向Xの破断強度(Fx)、方向Yの破断強度(Fy)、方向Xの破断伸度(Lx)、方向Yの破断強度(Ly)がそれぞれ下記式を満たす、請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
    |Fx−Fy|≦30MPa・・・(IV)
    140MPa<Fx≦200MPa・・・(V)
    140MPa<Fx≦200MPa・・・(VI)
    |Lx−Ly|≦30%・・・(VII)
    80%<Lx≦195%・・・(VIII)
    80%<Lx≦195%・・・(IX)
  4. なくとも片面において、50%延伸前後の入射角60°における光沢度の変化が0%以上20%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. フィルムの融点が230℃以上265℃以下である、請求項1から4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. フィルムに含まれる白色顔料がアナターゼ型酸化チタンである、請求項1から5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. ポリエステルA層の少なくとも片面にポリエステルB層を有し、ポリエステルB層に白色顔料を含まないことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. 金属板にラミネートして使用される、請求項1から7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載のフィルムを用いた遮光テープ。
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