JP4839012B2 - インモールド成形用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
本発明のインモールド成形用ポリエステルフィルムは、100℃における破断伸度が200〜600%、破断応力が3〜30MPa、100%伸長時応力が2〜20MPaである。100℃における破断伸度と破断応力、100%伸長時応力が上記を満たさないと、成型加工の際にフィルムが伸びきらず、金型の形状まで変形することができない、フィルムが切断してしまう、もしくは逆にフィルムが伸びすぎで意匠が不均一になってしまうなどの問題が生じる。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとして、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルに、テレフタル酸以外の酸成分及び/又はエチレングリコール以外のグリコール成分が共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートポリエステルフィルムを用いることができる。
本発明においては、上述の特性を満たすポリエステルフィルムとして、多層フィルムを用いることが好ましい。この多層フィルムの構成としては、融点Tm(A)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層Aと、融点Tm(B)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層Bとの少なくとも3層からなる多層フィルムであり、ポリエステル層Aが最外層を形成し、Tm(A)>Tm(B)であり、ポリエステル層Aが一軸以上の延伸配向構造を有しており、ポリエステル層Bが非配向構造であることが好ましい。そして、多層フィルムのポリエステル層Aを構成するポリエステルは、成膜後の1軸以上の延伸処理により配向結晶構造を形成し得るポリエステルであることが好ましい。
本発明において、ポリエステル層A及び/又はポリエステル層Bは、ポリオレフィン樹脂を0.1〜30重量%含有していることも好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン等が挙げられる。そして、例えば、隠蔽性、マット調表面などを要求されるカード、包装分野などにおいては、隠蔽性に優れた粒子、例えば酸化チタン、硫酸バリウム等を、フィルム易滑付与以外の目的に含有させることも当然可能である。
ポリエステルフィルムのフィルム厚み(多層構成の場合は全ての層の厚みの和)は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは20〜300μm、特に好ましくは30〜200μmである。フィルム厚みが10μm未満であるとフィルムの腰が弱く、フィルムが破断しやすくなり、好ましくない。フィルム厚みが500μmを超えると、フィルムの腰が強すぎ、取り扱い性に劣ると共に、成形加工性が劣り好ましくない。
表面粗さを本発明の範囲とするために、ポリエステルフィルムは、少なくとも2種類の不活性粒子を含有することが好ましい。ポリエステルフィルムが多層フィルムである場合、表面のポリエステル層に含有することが好ましい。不活性粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンなどの無機微粒子、触媒残渣の析出微粒子、シリコーン、ポリスチレン架橋体、アクリル系架橋体などの有機微粒子を例示することができる。
ポリエステルフィルムは、少なくとも片方の面の中心線平均表面粗さ(Ra)が20nm以下である。この片方の面とは、意匠となる印刷層を塗設する方の面をいう。フィルムの中心線平均表面粗さ(Ra)が20nmを越えるとフィルム表面の粗さが印刷層に転写してしまい、印刷層の中心線平均表面粗さが粗くなってしまう。これによって印刷層は光沢性の劣ったものとなってしまい、樹脂成形部品の高級感を損ねてしまうなどの問題が生じる。
多層フィルムの構成とする場合、その層構成は通常、ポリエステル層Aとポリエステル層Bからなる。例えば、ポリエステル層Aが表層であり、且つポリエステル層Bが内層である、A/B/A(ここで、/は層の構成を示す)タイプの3層構成、A/B/A/B/Aタイプの5層構成、さらにこれらの順序による7層、9層、2n+1(nは自然数)構成等マルチ多層構成が挙げられる。また、必要に応じて、ポリエステル層Aが2層以上の場合、1以上の層を違うポリマーで構成することができる。ポリエステル層Bが2層以上の場合も同様である。例えば、ポリエステル層Aが2種のポリマー(A1、A2)、ポリエステル層Bが2種のポリマー(B1、B2)からなるとき、A1/B1/A2タイプの3層構成、A1/B1/A2/B2/A1タイプの5層構成等を挙げることができる。これら層構成のうち、3層、5層が好ましく、特に3層が好ましい。
ポリエステルフィルムは、離型層との接着性を向上させる目的、印刷用インクとの接着性を向上させる目的、その他表面加工層との接着性を向上させる目的、これらの層との離型性を発現する目的、滑り性を付与する目的で、片面もしくは両面にコーティング処理を施してもよい。
ポリエステルフィルムのヘーズは、好ましくは5%以下である。ヘーズが5%を超えると、印刷されたフィルムと成形樹脂を一体化させるインモールド成形において、フィルムが印刷層よりも外側の層を形成した場合に意匠が不明瞭となり好ましくない。ヘーズは、滑剤の種類、添加量によって調整することができる。
ポリエステルフィルムの厚み斑は、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。厚み斑が10%を超えると、印刷した際にインク層の厚みが不均一となり、結果として印刷の濃淡が不均一となるなどの問題が生じる。
ポリエステルフィルムの熱収縮率は、150℃、30分間において、好ましくは0.0〜3.0%である。熱収縮率がこの範囲の外にあると、熱をかけて成型加工する際にポリエステルフィルムが変形してしまい、意匠の位置がずれてしまう、インクが剥離してしまう等の問題が生じる為、好ましくない。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法を、3層構成の多層フィルムを例に説明する。ここで説明する多層フィルムは、1軸以上の延伸配向構造を有するポリエステル層Aと非配向構造であるポリエステル層Bとの積層構造を有し、かつ表層がポリエステル層Aからなる。
なお、実施例および比較例において用いた特性の測定方法ならびに評価方法は、次のとおりである。
サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TA Instruments社製、商品名「DSC2920 Modulated」)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度Tg(単位:℃)と融点Tm(単位:℃)を測定した。
固有粘度([η]dl/g)は、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
JIS K7105に準じて、ヘーズ測定機(日本電色工業(株)製、商品名「NDH−2000」)を使用して全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)とを測定し、以下の式からヘーズ(%)を算出した。
ヘーズ(%)=(Td/Tt)×100
内部を150℃にした熱風循環型のオーブン中に、該フィルムの測定する方向に一定の間隔(役30cm)の評点をつけたサンプルを設置した。30分後に取り出したサンプルの評点間距離を測定し、下記式によって収縮率を算出した。
S=100×(L−L0)/L0
(S:熱収縮率(%)、L:熱処理後の評点間間隔(mm)、L0:熱処理前の評点間間隔(mm))
JIS B0601に準じ、(株)小坂研究所製の高精度表面粗さ計 SE−3FATを使用して、針の半径2μm、荷重30mgで拡大倍率20万倍、カットオフ0.08mmの条件下にチャートを描かせ、表面粗さ曲線からその中心線方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向とY軸として、粗さ曲線をY=f(x)で表わした時、次の式で与えられた値をnm単位で表わした。また、この測定は、基準長を1.25mmとして4個測定し、平均値で表わした。
破断応力と破断伸度は、測定装置としてチャック部を加熱チャンバーで覆った引張試験機(東洋ボールドウィン社製、商品名「テンシロン」)を用いて測定した。得られたポリエステルフィルムから、縦方向(MD)と横方向(TD)について、それぞれ長手方向100mm×幅方向10mmのサンプルを採取し、間隔を50mmにセットしたチャックに挟んで固定した。その際、引張試験機のチャック部分に設置されている加熱チャンバーにより、サンプルの存在する雰囲気下は100℃に保った。100mm/分の速度で引張り、試験機に装着されたロードセルで荷重を測定した。荷伸曲線の破断時の荷重と100%伸張時の荷重を読取り、引張前のサンプル断面積で割って各々破断応力(MPa)と100%伸張時応力(MPa)を計算した。また、破断伸度は、初期のチャック間隔(L0)と破断時のチャック間隔(L1)から、下記式を用いて算出し、破断伸度(%)とした。
破断伸度(%)=(L1−L0)/L0×100
出発原料としてテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを用い、かつ酢酸マンガン、リン酸、3酸化アンチモンを触媒として用いて、常法によりエステル交換反応、重縮合反応を実施し、得られたポリマーを反応釜から吐出、冷却して、ポリエチレンテレフタレートのペレット(以下「PET」と略記する)を得た。得られたPETのガラス転移温度は80℃、融点は255℃、固有粘度は0.65であった。
ポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」と略記する)ペレットとしては、ウィンテックポリマー(株)製デュラネックス500FPを使用した。
上記で得られたPETとIA−CO−PETを、(PET)/(IA−CO−PET)=58/42重量%となるように混合した混合物(フィルムとした後にポリエステル層Aとなる)、およびIA−CO−PETとNDC−CO−PETを(IA−CO−PET)/(NDC−CO−PET)=50/50重量%となるように混合した混合物(フィルムとした後にポリエステル層Bとなる)を別々に乾燥、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイ内部で(PETとIA−CO−PETの混合物)|(IA−CO−PETとNDC−CO−PET混合物)|(PETとIA−CO−PETの混合物)の3層に溶融ポリマーを積層し、この状態で冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸多層フィルムを得た。続いて、該多層フィルムを縦方向に110℃で3.0倍延伸、横方向に120℃で3.2倍に逐次2軸延伸した後、235℃で熱固定し、3層フィルムを得た。この3層フィルムの厚み構成は、PETとIA−CO−PETからなる両面の表層(ポリエステル層A)が各2.5μm、IA−CO−PETとNDC−CO−PETからな内層(ポリエステル層B)が45μmの合計50μmであった。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、滑剤としてポリエステル層Aに平均粒子径1.2μmの真球状シリコーンを100ppm、平均粒子径0.1μmの真球状シリカを600ppm含有している。
ポリエステル層Bを形成する樹脂として、上記で得られたIA−CO−PETを単独で用いる以外は実施例1と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。
ポリエステル層Bを形成する樹脂として、上記で得られたNDC−CO−PETを単独で用いる以外は実施例1と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。
3層フィルムの厚み構成をPETとIA−CO−PETからなる両面の表層(ポリエステル層A)が各5μm、IA−CO−PETとNDC−CO−PETからな内層(ポリエステル層B)が40μmの合計50μmとする以外は実施例1と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。得られた3層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。
上記で得られたPETのペレットを乾燥し、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイより溶融押出しして冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸フィルムを得た。続いて、該フィルムを縦方向に100℃で3.3倍、横方向に110℃で3.5倍に逐次2軸延伸した後、235℃で熱固定し、フィルム厚み25μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、滑剤として平均粒子径1.7μmの凝集シリカを80ppm含有している。
上記で得られたIA−CO−PETのペレットを乾燥し、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイより溶融押出しして冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸フィルムを得た。続いて、該フィルムを縦方向に90℃で3.2倍、横方向に100℃で3.4倍に逐次2軸延伸した後、185℃で熱固定し、フィルム厚み25μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、滑剤として平均粒子径1.7μmの凝集シリカを80ppm含有している。
上記で得られたIA−CO−PETおよびPBTのペレットを(IA−CO−PET)/(PBT)=55/45重量%となるように混合した混合物を乾燥し、単軸スクリュー押出し機で溶融した後、ダイより溶融押出しして冷却ドラム上にキャスティングし、未延伸フィルムを得た。続いて、該フィルムを縦方向に100℃で3.0倍、横方向に100℃で3.2倍に逐次2軸延伸した後、195℃で熱固定し、50μm厚みの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの構成を表1に、特性を表2に示す。尚、滑剤として平均粒子径1.7μmの凝集シリカを80ppm、平均粒子径0.1μmの真球状シリカを150ppm含有している。
滑剤としてポリエステル層Aに平均粒子径1.7μmの凝集シリカを660ppm含有している以外は実施例1と同様の方法でフィルム厚み50μmの3層フィルムを得た。
比較例4で得られたフィルムは、十分な成形加工性を発現し、様々な形状の樹脂成形部品に適用可能であったが、表面粗さが粗い為に転写されたインクの表面も粗く、樹脂成形部品の光沢性・外観に劣るものであった。
比較例5のサンプルとして、帝人化成(株)製のA−PET(フィルム厚み50μm)を使用した。
比較例5のサンプルは、成型加工性が高すぎ、且つ熱収縮性が高すぎる為、印刷位置にずれが生じた。また、表面粗さが粗い為に転写されたインクの表面も粗く、樹脂成形部品の光沢性・外観に劣るものであった。
Claims (5)
- 100℃における破断伸度が200〜600%、破断応力が3〜30MPa、100%伸長時応力が2〜20MPaであり、印刷層を塗設する面の中心線平均表面粗さ(Ra)が20nm以下であることを特徴とするインモールド成形用ポリエステルフィルム。
- 150℃、30分における熱収縮率が0.0%〜3.0%である、請求項1記載のインモールド成形用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムが、融点Tm(A)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層Aと、融点Tm(B)℃を示すポリエステルから成るポリエステル層Bとの少なくとも3層からなる多層フィルムであり、ポリエステル層Aが最外層を形成し、Tm(A)>Tm(B)であり、ポリエステル層Aが一軸以上の延伸配向構造を有しており、ポリエステル層Bが非配向構造である、請求項2に記載のインモールド成形用ポリエステルフィルム。
- 表面のポリエステル層は少なくとも2種類の不活性粒子を含有する請求項3に記載の、インモールド成形用ポリエステルフィルム。
- 不活性粒子が平均粒子径1.0〜2.0μmの球状粒子と平均粒子径0.05〜0.5μmの球状粒子の2種類の球状粒子である、請求項4に記載のインモールド成形用ポリエステルフィルム。
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