JP6701032B2 - 操舵制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを備え、ステアリングの操舵に応じて前記転舵輪の転舵をアシストする操舵装置を制御対象とする操舵制御装置に関する。
たとえば特許文献1には、ハンドルの操舵角が一定量に達することによりいわゆるエンド当てが生じ、転舵輪の転舵角が限界角に達する場合に、衝撃を緩和する制御を実行する操舵制御装置が記載されている。この装置は、操舵トルクの絶対値が閾値以上であって且つ操舵トルクの変化速度の絶対値が閾値以上である場合、エンド当てが生じたと判定する。そして、この装置は、エンド当てが生じたと判定すると、ローパスフィルタの位相遅れを利用してエンド当てが生じる直前の電流を現アシスト電流として取得している(段落「0022」)。そして、この装置では、電動機を流れる電流が、現アシスト電流から予め記憶された余剰電流波形の電流値を逐次減算した値となるように、電動機を制御する。これは、エンド当てが生じることによって電動機の回転速度が急低下して誘起電圧が低下することに起因して電動機を流れる電流が大きくなることを抑制し、電動機を流れる電流を、上記転舵角を限界角に維持するのに適切な値とすることを狙ったものである(段落「0041」)。
特開2009−143312号公報
上記エンド当てが生じる直前の電流は、エンド当てが生じたときの電流として適切な値に近いと考えられる。しかし、上記装置では、ローパスフィルタの位相遅れを利用してエンド当てが生じる直前の電流を取得しているが、ローパスフィルタの時定数がエンド当てが生じる直前の電動機の回転速度と合っていない場合、エンド当てが生じる直前の電流として精度のよい値を取得することができない。このため、エンド当てが生じたときの電流をエンド当てが生じる直前の電流に制御することが困難となる。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動機を流れる電流がエンド当てによってエンド当てが生じる直前の電流から過度にずれることを抑制できるようにした操舵制御装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.操舵制御装置は、車両の転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを備え、ステアリングの操舵に応じて前記転舵輪の転舵をアシストする操舵装置を制御対象とし、前記転舵アクチュエータは、電動機を備え、前記電動機の電流を電流指令値にフィードバック制御するフィードバック処理部と、前記転舵輪の転舵角が前記操舵装置の構造によって定まる限界角に到達したか否かを判定するエンド判定処理部と、前記エンド判定処理部によって前記限界角に到達したと判定される場合、前記電動機の電流指令値の大きさを、前記電動機の回転速度の大きさの減少量に基づき設定した制限電流値の大きさ以下に制限するエンド時制限処理部と、を備える。
限界角に到達することで電動機の誘起電圧の大きさが低下することに起因して、限界角に到達した旨の判定がなされた時点では、電動機の電流の検出値の大きさは、限界角に到達する直前において適切な電流よりも大きくなっている傾向がある。そして、電流の検出値の大きさが上記適切な電流を上回る度合いは、電動機の回転速度の大きさの低下量に依存する。このため、限界角に到達した旨の判定がなされた時点の電流の大きさを電動機の回転速度の大きさの低下量に基づき減少補正した値は、限界角に到達する直前における電動機の電流に近くなる。したがって、上記構成では、この補正した電流を制限電流値として、電流指令値を制限電流値以下に制限することによって、電動機を流れる電流がエンド当てによってエンド当てが生じる直前の電流から過度にずれることを抑制できる。
2.上記1記載の操舵制御装置において、操舵トルクの検出値に基づき、前記電流指令値を設定する指令値設定処理部を備え、前記指令値設定処理部は、前記操舵トルクの検出値の大きさが大きい場合に小さい場合よりも前記電流指令値の大きさを大きい値に設定し、前記エンド判定処理部によって前記限界角に到達したと判定される場合、前記指令値設定処理部により設定された前記電流指令値と、前記制限電流値とのうちの大きさが小さい方を、前記限界角に到達する直前の前記電動機の電流として推定する推定処理部を備え、前記エンド時制限処理部は、前記電流指令値を、前記推定処理部によって推定された電流の大きさ以下の値とする。
車両の走行路面であって摩擦が小さい路面である、いわゆる低μ路においては、要求される操舵トルクの大きさが小さいため、操舵トルクの大きさが大きくならない傾向があるものの、限界角に到達することによって、それまでの操舵角の変化速度に応じた操舵装置の慣性によって、限界角に到達する前に対して操舵トルクの大きさが急激に増加する傾向がある。このため、限界角に到達した際、電流指令値の大きさが電流の検出値の大きさよりも大きくなり、電流指令値よりも電流の検出値の方が、限界角に到達する直前の電動機の電流に近い傾向がある。
一方、車両の走行路面であって摩擦が大きい路面である、いわゆる高μ路においては、要求される操舵トルクの大きさが大きいため、限界角に到達する前から、操舵トルクやアシストトルクの大きさが大きくなり、限界角に到達した際のアシストトルクの指令値の大きさの増加量は、低μ路と比較すると小さくなる傾向がある。このため、限界角に到達することによって、誘起電圧の大きさの急激な低下に起因して電流の検出値の大きさが急激に上昇することに鑑みると、電流の検出値の大きさよりも電流指令値の大きさの方が小さい値となり、電流指令値の方が限界角に到達する直前の電動機の電流に近い傾向がある。
そこで、上記構成では、電流指令値と、減少補正された検出値である制限電流値とのうちの大きさが小さい方を、限界角に到達する直前の電動機の電流の推定値とすることにより、低μ路であるか高μ路であるかにかかわらず、限界角に到達する直前の電流を精度よく推定することができる。
3.上記2記載の操舵制御装置において、前記指令値設定処理部は、前記電流指令値の大きさに上限ガード処理を施す上限ガード処理部を備え、前記上限ガード処理部は、前記電流指令値の上限ガード値を、前記電動機の回転速度の大きさが大きい場合に小さい場合よりも小さい値に設定し、前記推定処理部は、前記上限ガード処理が施された前記電流指令値と、前記制限電流値とのうちの大きさが小さい方を、前記限界角に到達する直前の前記電動機の電流として推定する。
高μ路の場合には低μ路の場合と比較して操舵トルクの大きさが大きくなる傾向があり、結果、限界角に到達する前から、電流指令値が上限ガード処理による上限ガード値に制限される傾向がある。このため、限界角に到達した際に生じる衝撃によって操舵トルクの大きさが増加したとしても、これが電流指令値の増加に直ちにはつながりにくい。このため、高μ路においては、限界角に到達したときの電流指令値は、限界角に到達する直前の電流指令値に近似しやすい。そして、電動機の電流がフィードバック処理部によって電流指令値に制御されることに鑑みると、限界角に到達する直前において電動機を流れていた電流は、限界角に到達したときの電流指令値に近似しやすい。このため、電流指令値と減少補正された検出値である制限電流値とのうちの大きさが小さい方を選択する処理の利用価値が特に高い。
4.上記2または3記載の操舵制御装置において、前記エンド判定処理部は、前記限界角に到達した旨の仮判定を実行する仮判定処理部と、前記限界角に到達した旨の本判定を実行する本判定処理部とを備え、前記本判定処理部が前記限界角に到達した旨判定する条件は、前記仮判定処理部が前記限界角に到達した旨判定する条件よりも厳しい条件であり、前記推定処理部は、前記仮判定処理部によって前記限界角に到達したと判定されるときの前記電動機を流れる電流の検出値の大きさを、前記電動機の回転速度の大きさの低下度合いに基づき減少補正した値である前記制限電流値と、前記仮判定処理部によって前記限界角に到達した旨の判定がなされるときの前記電流指令値との大きさが小さい方を前記限界角に到達する直前の前記電動機の電流として推定するものであり、前記エンド時制限処理部は、前記本判定処理部によって前記限界角に到達した旨の判定がなされる場合に、前記電動機の電流指令値の大きさを、前記制限電流値の大きさ以下に制限する。
上記構成の場合、本判定処理部が限界角に到達した旨判定する条件が、仮判定処理部が限界角に到達した旨判定する条件よりも厳しいため、本判定処理部によって限界角に到達したと判定される時点は、仮判定処理部によって限界角に到達したと判定される時点よりも後となる。このため、本判定処理部によって限界角に到達したと判定されたときの検出値等に基づき推定処理部が限界角に到達する直前の電流を推定する場合には、仮判定処理部によって限界角に到達したと判定されたときの検出値等に基づき推定処理部が限界角に到達する直前の電流を推定する場合よりもその推定精度が低くなる。一方、仮判定処理部による判定精度と比較して本判定処理部による判定精度の方が高い。
そこで上記構成では、仮判定処理部によって限界角に到達したと判定されたときの検出値等に基づき限界角に到達する直前の電流を推定することにより、限界角に到達する直前の電流を精度よく推定する。また、電流指令値の大きさを推定処理部によって推定された電流の大きさ以下に制限する処理については、本判定処理部によって限界角に到達すると判定されたときとすることにより、限界角に到達していないにもかかわらず電流指令値の大きさが推定処理部によって推定された電流の大きさ以下に制限されることを抑制することができる。
5.上記2〜4のいずれか1項に記載の操舵制御装置において、前記フィードバック処理部は、前記電動機を流れる電流と前記電流指令値との差を入力とする積分要素の出力値に基づき前記電動機に印加する電圧を操作するものであり、前記エンド時制限処理部は、前記推定処理部によって推定された電流の大きさを前記電動機の回転速度の大きさの減少度合いに基づき減少補正した値を、前記電流指令値とする。
上記構成の場合、限界角に到達する前においては、積分要素の出力値が、限界角に到達する前の誘起電圧の大きさにとって、電動機を流れる電流を電流指令値とするうえで適切な値となっている傾向がある。そして、電流の検出値の大きさが電流指令値の大きさを上回ることに基づき、フィードバック処理部により、電動機に印加する電圧の大きさが低下操作されるため、電圧の大きさの低下操作が、誘起電圧の大きさの低下に対して遅延する傾向がある。この点、上記構成では、推定された電流の大きさを減少補正した値を指令電流値とすることにより、電流指令値の大きさを検出値の大きさが大きく上回るとして電動機に対する印加電圧の大きさが急激に低下操作されるようになる。このため、減少補正する前の電流の大きさに対して検出値の大きさが大きく上昇する事態が生じることを抑制することができる。しかも、推定された電流の大きさの減少補正量が、回転速度の大きさの低下度合いに応じて設定されるため、誘起電圧の大きさの低下度合いに応じて減少補正量を設定することができる。
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の操舵制御装置において、前記フィードバック処理部は、前記電動機を流れる電流と前記電流指令値との差を入力とする積分要素の出力値に基づき前記電動機に印加する電圧を操作するものであって、前記エンド時制限処理部が前記電動機の前記電流指令値の大きさを前記制限電流値の大きさ以下に制限する処理を実行している場合、実行していない場合と比較して前記積分要素のゲインを大きくする。
上記構成の場合、限界角に到達する前においては、積分要素の出力値が、限界角に到達する前の誘起電圧の大きさにとって、電動機を流れる電流を電流指令値とするうえで適切な値となっている傾向がある。そして、電流の検出値の大きさが電流指令値の大きさを上回ることに基づき、フィードバック処理部により、電動機に印加する電圧の大きさが低下操作されるため、電圧の大きさの低下操作が、誘起電圧の大きさの低下に対して遅延する傾向がある。この点、上記構成では、電流制限値の大きさ以下に制限する処理を実行している場合に、すなわち、誘起電圧の大きさが急激に低下する場合に、積分要素のゲインを大きくすることにより、電圧の大きさの低下操作が誘起電圧の大きさの低下に対して遅延することを抑制することができる。
第1の実施形態にかかる操舵制御装置および操舵装置を示す図。 同実施形態にかかる処理の一部を示すブロック図。 同実施形態にかかるエンド当て時電流推定処理の手順を示す流れ図。 (a)および(b)は、低μ路および高μ路の電流の挙動を示すタイムチャート。 同実施形態にかかるエンド当て本判定処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる電流指令値の設定処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかるエンド当て判定フラグのリセット処理の手順を示す流れ図。 第2の実施形態にかかるエンド時電流指令値の設定処理の手順を示す流れ図。 第3の実施形態にかかるフィードバックゲインの設定処理の手順を示す流れ図。
<第1の実施形態>
以下、操舵制御装置にかかる第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかる操舵装置10においては、ステアリングホイール(ステアリング12)が、ステアリングシャフト14を介して転舵アクチュエータPSAのピニオン軸22に連結可能とされている。転舵アクチュエータPSAは、第1ラックアンドピニオン機構20、第2ラックアンドピニオン機構40、表面磁石同期電動機(SPM:電動機50)及びインバータ60を備えている。
第1ラックアンドピニオン機構20は、所定の交叉角をもって配置されたラック軸30とピニオン軸22とを備え、ラック軸30に形成された第1ラック歯32aとピニオン軸22に形成されたピニオン歯22aとが噛合されている。なお、ラック軸30の両端には、タイロッドを介して転舵輪34が連結されている。
第2ラックアンドピニオン機構40は、所定の交叉角をもって配置されたラック軸30とピニオン軸42とを備えており、ラック軸30に形成された第2ラック歯34aとピニオン軸42に形成されたピニオン歯42aとが噛合されている。
ピニオン軸42は、減速機36を介して、電動機50の回転軸52に接続されている。電動機50には、インバータ60が接続されている。インバータ60は、バッテリ62の正極および負極のそれぞれを電動機50の端子に選択的に印加することによってバッテリ62の直流電圧を交流電圧に変換する電力変換回路である。なお、ラック軸30は、ラックハウジング38に収容されている。
制御装置70は、操舵装置10を制御対象とする。制御装置70は、制御対象の制御に際し、ステアリングシャフト14およびピニオン軸22間に設けられたトーションバー16の捩れ量に基づきステアリング12に入力された操舵トルクTrqを検出するトルクセンサ64の検出値や、電動機50の電流iu,iv,iwを検出する電流センサ66の検出値を取り込む。また、制御装置70は、電動機50の回転軸52の回転角度θを検出する回転角度センサ68や、車両の走行速度(車速V)を検出する車速センサ69の出力値を取り込む。制御装置70は、中央処理装置(CPU72)およびメモリ74を備えており、メモリ74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより制御対象の制御を実行する。
図2に、メモリ74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより実現される処理の一部を示す。
アシストトルク設定処理部M10は、操舵トルクTrqと車速Vとに基づき、アシストトルクの指令値(アシスト指令値Trqa*)を設定する。アシストトルク設定処理部M10は、アシスト指令値Trqa*の大きさ(絶対値)を、操舵トルクTrqの大きさ(絶対値)が大きいほど大きい値に設定する。アシストトルク設定処理部M10は、アシスト指令値Trqa*の絶対値を、操舵トルクTrqが同一であっても、車速Vが低い場合には高い場合よりも大きい値に設定する。なお、以下では、操舵トルクTrqの符号を、右旋回側の値である場合に正、左旋回側の値である場合に負と定義する。
電流指令値設定処理部M12は、アシスト指令値Trqa*に基づき、q軸の電流指令値iq0*を設定する。詳しくは、電流指令値設定処理部M12は、アシスト指令値Trqa*の大きさが大きいほど、電流指令値iq0*の大きさ(絶対値)を大きい値に設定する。なお、電流指令値iq0*の符号は、操舵トルクTrqの符号と同様、右旋回側が正であるとする。
上限ガード処理部M14は、q軸の電流指令値iq0*の絶対値が、上限ガード値Ith以下となるように上限ガード処理を施す。ここで、上限ガード値Ithは、電動機50の回転速度ωの大きさ(絶対値)が大きい場合に小さい場合よりも小さい値に設定される。
上限ガード処理部M14によってガード処理が施された電流指令値iq0*である電流指令値iq1*は、切替処理部M16によって選択される場合、q軸の電流指令値iq*として、偏差算出処理部M20に入力される。
一方、電流iu,iv,iwは、dq変換処理部M18によってd軸の電流idおよびq軸の電流iqに変換される。そして、偏差算出処理部M20では、電流指令値iq*から電流iqを減算した値を出力する。そして、q軸フィードバック処理部M22では、偏差算出処理部M20の出力値に基づき、q軸の電流iqを電流指令値iq*にフィードバック制御するための操作量としてq軸の電圧指令値vq*を設定する。具体的には、偏差算出処理部M20の出力値を入力とする比例要素の出力値と積分要素の出力値との和を操作量とする。
偏差算出処理部M24は、d軸の電流指令値(ここでは、「0」を例示)から電流idを減算した値を出力する。d軸フィードバック処理部M26は、偏差算出処理部M24の出力値を入力とし、d軸の電流idをその指令値にフィードバック制御するための操作量であるd軸の電圧指令値vd*を設定する。具体的には、偏差算出処理部M24の出力値を入力とする比例要素の出力値と積分要素の出力値との和を操作量とする。
3相変換処理部M28は、回転角度θに基づき、dq軸の電圧指令値vd*,vq*を、3相固定座標系における電圧指令値vu*,vv*,vw*に変換する。操作信号生成処理部M30は、インバータ60の出力線間電圧が電圧指令値vu*,vv*,vw*によって定まる相間電圧となるように、インバータ60の操作信号MSを生成して出力する。
なお、本実施形態では、q軸フィードバック処理部M22の制御周期や、d軸フィードバック処理部M26の制御周期、q軸の電流iqのサンプリング周期、d軸の電流idのサンプリング周期と比較して、上限ガード処理部M14における上限ガード値Ithの更新周期が長くなっている。
回転速度算出処理部M32は、回転角度θに基づき、電動機50の回転軸52の回転速度ωを算出する。加速度算出処理部M34は、回転速度ωに基づき、回転速度ωの変化速度(角加速度dω)を算出する。
エンド当て処理部M36は、切替処理部M16の入力となるエンド時電流指令値iqthを生成したり、切替処理部M16に切り替えのための情報を提供したりする。本実施形態では、エンド時電流指令値iqthは、ラック軸30がラックハウジング38に接触することにより軸方向への変位が妨げられるいわゆるエンド当てが生じる直前におけるq軸の電流iqの推定値である。
図3に、エンド当て処理部M36が実行する処理の1つであるエンド当て時電流推定処理の手順を示す。この処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。なお、以下では、CPU72を主体として記述する。
図3に示す一連の処理において、CPU72は、まず、q軸の電流iq、電流指令値iq1*、回転速度ω、および角加速度dωの最新の値dω(n)を取得する(S10)。なお、角加速度dωについては、最新の値であることを示すために「dω(n)」と記載しているが、q軸の電流iq、電流指令値iq1*、および回転速度ωについても最新の値を取得する。
次にCPU72は、以下の(a1),(b1),(c1)の条件の論理積が真であるか否かを判定する(S12)。この処理は、ステアリング12が右旋回側に切られることによってエンド当てが生じたか否かを判定する処理である。
(a1)図3に示す一連の処理の1制御周期前のステップS10の処理において取得された角加速度dω(n−1)が、仮判定用加速度閾値dωth1以上である旨の条件。ここで、仮判定用加速度閾値dωth1は、回転速度ωの大きさが低下する場合の値である負の値に設定される。
(b1)ステップS10の処理において取得された角加速度dω(n)が、仮判定用加速度閾値dωth1よりも小さい旨の条件。(b1)の条件と上記(a1)の条件との論理積が真であることによって、ラック軸30の軸方向の変位が急低下し始めた時点であることを検知することができる。換言すれば、エンド当てが生じたことを検知することができる。
(c1)回転速度ωが仮判定用速度閾値ωth1よりも大きい旨の条件。この条件は、後述するエンド当て時の処理を、ラック軸30が勢いよくラックハウジング38に接触した場合に限って行うための設定である。仮判定用速度閾値ωth1は、ラック軸30が勢いよくラックハウジング38に接触した場合の回転速度ωとしてとりうる値に基づき設定されている。
CPU72は、上記(a1),(b1),(c1)の条件の論理積が真であると判定する場合(S12:YES)、q軸の電流iqに、「Kie・dω(n)」を加算した値が、q軸の電流指令値iq1*よりも小さいか否かを判定する(S14)。この処理は、q軸の電流指令値iq1*と、「iq+Kie・dω(n)」とのいずれが、エンド当て直前において実際に流れていたq軸の電流iqに近いかを判定するためのものである。
ここで、「Kie・dω(n)」の絶対値は、エンド当てによるq軸の電流iqの絶対値の増加量の推定値である。すなわち、エンド当てによって回転速度ωの大きさが急低下し、電動機50の誘起電圧の大きさが急激に低下する。ここで、電動機50の抵抗R、インダクタンスL、誘起電圧定数φ、および微分演算子pを用いると、q軸の電流iqとq軸の電圧vqとの間には以下の式(c1)の関係が成立する。
vq=R・iq+ω・L・id+p・Lq・iq+ω・φ …(c1)
エンド当て直前においては、q軸フィードバック処理部M22の積分要素によって、q軸の電圧指令値vq*は、そのときの回転速度ωに応じた誘起電圧「ω・φ」にとって、q軸の電流iqを電流指令値iq*に制御する上で適切な値となっている傾向がある。エンド当てに伴って回転速度ωの大きさが急激に低下し、誘起電圧「ω・φ」の大きさが急激に低下すると、電動機50に印加される電圧vqの大きさが過剰となるため、q軸の電流iqの大きさが増加する。この増加度合いは、回転速度ωの大きさの低下度合いに依存する。このため、エンド当てに伴うq軸の電流iqの大きさの増加量は、角加速度dω(n)の絶対値と正の相関を有する。そこで、定数Kie(>0)を用いて、q軸電流の増加量を「(−1)・Kie・dω(n)」と推定し、エンド当て直前のq軸の電流iqを「iq+Kie・dω(n)」と推定する。ただし、定数Kieは、「iq+Kie・dω(n)」の大きさがエンド当て直前のq軸の電流iqの大きさよりも小さくなることがないように、マージンを持たせて小さめの値に設定する。
ここで、図4に基づき、ステップS14の処理の原理について説明する。
図4は、時刻t1にエンド当てが生じた場合のq軸の電流iqおよび電流指令値iq1*の推移を示すものであり、特に図4(a)は、車両の走行路面であって且つ摩擦係数が小さい路面である、いわゆる低μ路における推移を示し、図4(b)は、車両の走行路面であって且つ摩擦係数が大きい路面である、いわゆる高μ路における推移を示す。
図4(a)に示す低μ路の場合、ステアリング12の操作に要求される操舵トルクTrqの大きさが小さいため、操舵トルクTrqの大きさは、大きくならない傾向があるものの、エンド当てが生じると、ステアリング12やラック軸30、転舵輪34の慣性に起因してトーションバー16が過剰に捩れる。このため、エンド当て前に対してトルクセンサ64が検出する操舵トルクTrqの大きさが急激に増加する傾向がある。操舵トルクTrqの大きさが急激に増加すると、アシスト指令値Trqa*の大きさが急激に増加するため、q軸の電流指令値iq1*の大きさが急激に増加する。したがって、エンド当てが生じたと判定される時刻t2におけるq軸の電流指令値iq1*よりも、その時点におけるq軸の電流iqを「Kie・dω(n)」にて補正した値の方がエンド当て直前のq軸の電流iqに近いと考えられる。
図4(b)に示す高μ路の場合、ステアリング12の操作に要求される操舵トルクTrqの大きさが大きくなる。このため、エンド当てが生じる前から操舵トルクTrqやアシスト指令値Trqa*の大きさが大きくなることから、エンド当て前に対するアシスト指令値Trqa*の大きさの増加量が低μ路と比較して小さくなる傾向がある。一方、誘起電圧の急低下に伴って、図4(b)に例示するように、q軸の電流iqの大きさは急上昇する。このため、高μ路においては、上記(a1)〜(c1)の条件の論理積が真となった時点におけるq軸の電流指令値iq1*の方が、同時点における電流iqを「Kie・dω(n)」にて補正した値よりも、エンド当て直前のq軸の電流iqに近いと考えられる。これは、上述したように、エンド当て直前のq軸の電流iqよりも絶対値が小さい値を推定することを抑制すべく定数Kieをあまり大きい値にできないことに一因がある。
図4(a)および図4(b)に例示するいずれのケースにおいても、エンド当て直前のq軸の電流iqに近いのは、q軸の電流指令値iq1*と、「iq+Kie・dω(n)」とのうちの絶対値が小さい方である。
図3に戻り、CPU72は、ステップS14において肯定判定する場合、エンド時電流指令値iqthを、「iq+Kie・dω(n)」とし(S16)、否定判定する場合、エンド時電流指令値iqthを、q軸の電流指令値iq1*とする(S18)。
一方、CPU72は、上記(a1),(b1),(c1)の条件の論理積が偽であると判定する場合(S12:NO)、以下の(a2),(b2),(c2)の条件の論理積が真であるか否かを判定する(S20)。この処理は、ステアリング12が左旋回側に切られることによってエンド当てが生じたか否かを判定する処理である。
(a2)図3に示す一連の処理の1制御周期前のステップS10の処理において取得された角加速度dω(n−1)が、「(−1)・dωth1」以下である旨の条件。
(b2)ステップS10の処理において取得された角加速度dω(n)が、「(−1)・dωth1」よりも大きい旨の条件。
(c2)回転速度ωが「(−1)・ωth1」よりも小さい旨の条件。
上記(a2),(b2),(c2)の条件は、上記(a1),(b1),(c1)の条件に対応するものである。
CPU72は、上記(a2),(b2),(c2)の条件の論理積が真であると判定する場合(S20:YES)、q軸の電流iqに、「Kie・dω(n)」を加算した値が、q軸の電流指令値iq1*よりも大きいか否かを判定する(S22)。この処理は、ステップS14の処理に対応し、q軸の電流指令値iq1*と、「iq+Kie・dω(n)」とのいずれが、エンド当て直前におけるq軸の電流iqに近いかを判定するためのものである。
CPU72は、「iq+Kie・dω(n)」の方が大きいと判定する場合(S22:YES)、「iq+Kie・dω(n)」の絶対値が電流指令値iq1*の絶対値よりも小さいとして、エンド時電流指令値iqthを、「iq+Kie・dω(n)」とする(S24)。一方、CPU72は、電流指令値iq1*以下であると判定する場合(S22:NO)、電流指令値iq1*の絶対値が「iq+Kie・dω(n)」の絶対値以下であるとして、エンド時電流指令値iqthを、電流指令値iq1*とする(S26)。
なお、CPU72は、ステップS16、S18,S24,S26の処理が完了する場合や、ステップS20において否定判定する場合には、図3に示した一連の処理を一旦終了する。
上記ステップS12,S20の処理は、エンド当ての仮判定である。次に、より信頼性の高いエンド当ての本判定処理について説明する。
図5に、エンド当ての本判定処理の手順を示す。図5に示す処理は、メモリ74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することによりエンド当て処理部M36による処理として実現される。図5に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
図5に示す一連の処理において、CPU72は、まずエンド当て判定フラグFが「0」であるか否かを判定する(S30)。エンド当て判定フラグFは、「0」である場合に、エンド当ての本判定がなされていないことを示し、「1」または「2」である場合に、エンド当ての本判定がなされていることを示す。CPU72は、エンド当て判定フラグFが「0」である場合(S30:YES)、以下の(d1),(e1),(f1),(g1)の条件の論理積が真であるか否かを判定する(S32)。この処理は、ステアリング12が右旋回側に切られることによってエンド当てが生じたか否かを判定する処理である。
(d1)角加速度dωが、本判定用加速度閾値dωth2よりも小さい旨の条件。ここで、本判定用加速度閾値dωth2は、仮判定用加速度閾値dωth1よりも小さい負の値に設定されている。
(e1)回転速度ωが本判定用速度閾値ωth2よりも大きい旨の条件。この条件は、エンド時電流指令値iqthを用いた電動機50の電流の制御を、ラック軸30が勢いよくラックハウジング38に接触した場合に限って行うための設定である。本判定用速度閾値ωth2は、(d1)の条件が(b1)の条件よりも厳しいために、(d1)の条件が成立するタイミングが(b1)の条件が成立するタイミングよりも遅れ、その間に回転軸52の回転速度が減速することに鑑み、仮判定用速度閾値ωth1よりも小さい値に設定されている。
(f1)操舵トルクTrqがトルク閾値Trqthよりも大きい旨の条件。この処理は、エンド時電流指令値iqthを用いた電動機50の電流の制御を、ラック軸30がラックハウジング38に大きな力で接触する場合に限って実行するための条件である。
(g1)電流iqが本判定用電流閾値iqth1よりも大きい旨の条件。この処理は、エンド時電流指令値iqthを用いた電動機50の電流の制御を、ラック軸30がラックハウジング38に大きな力で接触する場合に限って実行するための条件である。
CPU72は、上記論理積が真であると判定する場合(S32:YES)、ステップS32において肯定判定された回数をカウントする右旋回カウンタCpをインクリメントする(S34)。次に、CPU72は、後述するステップS46において肯定判定された回数をカウントする左旋回カウンタCnを初期化する(S36)。そしてCPU72は、右旋回カウンタCpが閾値Cth以上であるか否かを判定する(S38)。ここで閾値Cthは、2以上の整数である。
CPU72は、閾値Cth以上であると判定する場合(S38:YES)、右旋回カウンタCpを初期化し(S40)、エンド当て判定フラグFを「1」とする(S42)。
一方、CPU72は、上記(d1),(e1),(f1),(g1)の条件の論理積が偽であると判定する場合(S32:NO)、下記の(d2),(e2),(f2),(g2)の条件の論理積が真であるか否かを判定する(S46)。この処理は、ステアリング12が左旋回側に切られることによってエンド当てが生じたか否かを判定する処理である。
(d2)角加速度dωが、「(−1)・dωth2」よりも大きい旨の条件。
(e2)回転速度ωが、「(−1)・ωth2」よりも小さい旨の条件。
(f2)操舵トルクTrqが、「(−1)・Trqth」よりも小さい旨の条件。
(g2)電流iqが、「(−1)・iqth1」よりも小さい旨の条件。
CPU72は、上記(d2),(e2),(f2),(g2)の条件の論理積が真であると判定する場合(S46:YES)、右旋回カウンタCpを初期化し(S48)、左旋回カウンタCnをインクリメントする(S50)。そして、CPU72は、左旋回カウンタCnが閾値Cth以上であるか否かを判定する(S52)。そしてCPU72は、閾値Cth以上であると判定する場合(S52:YES)、左旋回カウンタCnを初期化し(S54)、エンド当て判定フラグFを「2」とする(S56)。
CPU72は、ステップS30,S46において否定判定する場合、右旋回カウンタCpおよび左旋回カウンタCnを初期化する(S58)。そしてCPU72は、ステップS42,S56,S58の処理が完了する場合や、ステップS38,S52において否定判定する場合には、図5に示す一連の処理を一旦終了する。
図6に、図2に示した切替処理部M16が実行する処理の手順を示す。図6に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。なお、以下では、主体をCPU72として記載する。
図6に示す一連の処理において、CPU72は、まず、エンド当て判定フラグFが「1」または「2」であるか否かを判定する(S60)。この処理は、電流指令値iq*として、エンド時電流指令値iqthを用いるか否かを判定するためのものである。そしてCPU72は、「1」または「2」であると判定する場合(S60:YES)、q軸の電流指令値iq*として、エンド時電流指令値iqthを選択する(S62)。これに対し、CPU72は、エンド当て判定フラグFが「0」であると判定する場合(S60:NO)、q軸の電流指令値iq*として、図2に示した上限ガード処理部M14が出力する電流指令値iq1*を選択する(S64)。
なお、CPU72は、ステップS62,S64の処理が完了する場合、図6に示す一連の処理を一旦終了する。
次に、エンド当て判定フラグFの初期化処理について説明する。
図7に、エンド当て判定フラグを初期化する処理の手順を示す。図7に示す処理は、メモリ74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより、エンド当て処理部M36の処理として実現される。なお、図7に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
図7に示す一連の処理において、CPU72は、エンド当て判定フラグFが「1」であるか否かを判定する(S70)。そしてCPU72は、「1」であると判定する場合(S70:YES)、エンド当ての本判定後所定時間Tが経過する旨の条件と、上限ガード処理部M14が出力する電流指令値iq1*がエンド時電流指令値iqth以下である旨の条件との論理積が真であるか否かを判定する(S72)。電流指令値iq1*がエンド時電流指令値iqth以下である旨の条件は、電流指令値iq1*の絶対値がエンド時電流指令値iqthの絶対値以下である旨の条件であり、これは、電流指令値iq1*の大きさがエンド当て直前の電流の大きさに対して大きい値となっていることがないかを判定するためのものである。そして、CPU72は、論理積が真であると判定する場合(S72:YES)、エンド当て判定フラグFを「0」とする(S74)。
一方、CPU72は、エンド当て判定フラグFが「1」ではないと判定する場合(S70:NO)、エンド当て判定フラグFが「2」であるか否かを判定する(S76)。そして、CPU72は、エンド当て判定フラグFが「2」であると判定する場合(S76:YES)、エンド当ての本判定後所定時間Tが経過する旨の条件と、上限ガード処理部M14が出力する電流指令値iq1*がエンド時電流指令値iqth以上である旨の条件との論理積が真であるか否かを判定する(S78)。電流指令値iq1*がエンド時電流指令値iqth以上である旨の条件は、電流指令値iq1*の絶対値がエンド時電流指令値iqthの絶対値以下である旨の条件である。そして、CPU72は、論理積が真であると判定する場合(S78:YES)、エンド当て判定フラグFを「0」とする(S74)。
なお、CPU72は、ステップS74の処理が完了する場合や、ステップS72,S76,S78において否定判定する場合には、図7に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで、本実施形態の作用を説明する。
ステアリング12が右旋回側または左旋回側に切られることによって、ラック軸30がラックハウジング38に接触して軸方向への変位が規制されるエンド当てが生じると、電動機50の誘起電圧の大きさが急激に低下することから、電流iqの大きさが上昇する。CPU72は、エンド当ての仮判定がなされると、仮判定直前における電動機50を流れるq軸の電流iqを推定し、エンド時電流指令値iqthとしてメモリ74に一旦記憶する。そして、CPU72は、エンド当ての本判定がなされると、q軸の電流指令値iq*を、エンド時電流指令値iqthとする。これにより、電動機50のq軸電流が、エンド当て直前の電流に制御される。エンド当て直前の電流は、ラック軸30の軸方向への変位の限界付近において、転舵輪34の転舵角を実現する際に実際に電動機50が出力していたアシストトルクを生成する電流に相当する。このため、ラックハウジング38とラック軸30との衝突による衝撃力がアシストトルクによって大きくなることを抑制することができる値である。
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する効果が得られる。
(1)電流指令値iq1*と、電流iqが、「Kic・dω」によって減少補正された値とのうちの大きさが小さい方を、エンド当て直前の電動機50の電流として推定した。これにより、低μ路であるか高μ路であるかにかかわらず、エンド当て直前の電流を精度よく把握することができる。
(2)電流指令値設定処理部M12が設定する電流指令値iq0*に、回転速度ωが高い場合に低い場合よりも小さい値となる上限ガード値Ithによって上限ガード処理を施した。高μ路の場合には低μ路の場合と比較して操舵トルクTrqの大きさが大きくなる傾向があり、結果、エンド当てが生じる前から、電流指令値iq0*が上限ガード値Ithに制限される傾向がある。このため、エンド当てが生じた際に生じる衝撃によって操舵トルクTrqの大きさが増加したとしても、これが電流指令値iq1*の大きさの増加に直ちにはつながりにくい。このため、高μ路においては、エンド当てが生じたときの電流指令値iq1*は、エンド当てが生じる直前の電流指令値に近似しやすい。このため、電流指令値iq1*と、電流iqが、「Kic・dω」によって減少補正された値とのうちの小さい方を選択する処理の利用価値が特に高い。
(3)上限ガード処理部M14による上限ガード値Ithの更新周期を、電流iq,idのサンプリング周期や、アシスト指令値Trqa*の更新周期、q軸フィードバック処理部M22の制御周期等よりも長い値に設定した。この場合、エンド当てが生じるのに伴って回転速度ωの大きさが低下したことを反映したものに上限ガード値Ithが更新されるまでに要する時間が長くなる傾向がある。このため、高μ路において、エンド当てが生じたときの電流指令値iq1*が、エンド当てが生じる直前の電流指令値にいっそう近似した値となりやすい。
(4)エンド当てが生じる直前に電動機50を流れていたq軸の電流iqを、仮判定処理がなされる時点において推定する一方、電流指令値iq*をエンド時電流指令値iqthに制限する処理については、本判定後とした。これにより、エンド当てが生じる直前の電流を精度よく推定することと、エンド当てが生じた確実性が高い場合に電流指令値iq*をエンド時電流指令値iqthとすることとの両立を図ることができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記第1の実施形態では、エンド時電流指令値iqthを、エンド当ての仮判定直前の電流iqの推定値とした。これに対し、本実施形態では、この推定値をさらに減少補正したものを用いる。
図8に、本実施形態にかかるエンド時電流指令値iqthの補正処理の手順を示す。図8に示す処理は、メモリ74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより、エンド当て処理部M36の処理として実現される。図8に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
図8に示す一連の処理において、CPU72は、まず、エンド当て判定フラグFが「1」または「2」であるか否かを判定する(S80)。そして、「1」または「2」であると判定する場合(S80:YES)、図3の処理にて算出されたエンド時電流指令値iqthに、「Kic・dω」を加算することによって、エンド時電流指令値iqthの絶対値を減少補正する(S82)。ここで、係数Kicは、ゼロ以上の値であり、本実施形態では、エンド当ての本判定がなされてから所定時間Tが経過するまでの期間は、固定値Aとされ、所定時間T経過後には、漸減してゼロとなるように設定される。
なお、CPU72は、ステップS82の処理が完了する場合や、ステップS80において否定判定する場合には、図8に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで、本実施形態の作用を説明する。
CPU72は、エンド当ての本判定がなされると、電動機50を流れる電流iqを、エンド時電流指令値iqthに制御する。この期間においては、エンド当てによって回転速度ωの大きさが低下している。このため、図2に示したq軸フィードバック処理部M22の出力するq軸の電圧指令値vq*の大きさが、電流iqを、図3に示した処理によってエンド当て直前の電流iqとして推定された値に制御するうえで適切な値よりも大きい値となっている。q軸フィードバック処理部M22は、q軸の電圧指令値vq*の大きさを、電流iqの大きさが電流指令値iq*の大きさを上回る度合いに応じて減少させる。ここで、本実施形態では、エンド時電流指令値iqthの大きさを、実際に制御したい値である図3の処理において推定された値よりも小さい値とする。換言すれば、電流指令値iq*の大きさを図3の処理において推定された値よりも小さい値とする。このため、電流指令値iq*を図3の処理において推定された値とする場合と比較して、q軸の電圧指令値vq*の大きさを迅速に減少させることができる。
特に、エンド時電流指令値iqthの大きさの減少補正度合いを、角加速度dωの絶対値が大きいほど大きくなるようにすることにより、誘起電圧の大きさの低下速度が大きいほど、エンド時電流指令値iqthの大きさの減少補正度合いを大きくすることができる。このため、誘起電圧の大きさの低下速度が大きいほど、q軸の電圧指令値vq*の絶対値の減少速度を大きくすることができる。そしてこれにより、q軸の電流iqの絶対値が、図3に示した処理によって推定された値の絶対値よりも過度に大きくなることを抑制することができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、エンド当て時であるか否かに応じてq軸フィードバック処理部M22のフィードバックゲインを可変設定する。
図9に、フィードバックゲインの可変設定処理の手順を示す。図9に示す処理は、メモリ74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより、q軸フィードバック処理部M22の処理として実現される。なお、図9に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
図9に示す一連の処理において、CPU72は、まずエンド当て判定フラグFが「1」または「2」であるか否かを判定する(S90)。そして、CPU72は、エンド当て判定フラグFが「0」であると判定する場合(S90:NO)、比例ゲインKpを通常ゲインKp0に設定するとともに、積分ゲインKiを通常ゲインKi0に設定する(S92)。これに対し、CPU72は、エンド当て判定フラグFが「1」または「2」であると判定する場合(S90:YES)、比例ゲインKpを、通常ゲインKp0よりも大きいエンド時ゲインKpeに設定するとともに、積分ゲインKiを、通常ゲインKi0よりも大きいエンド時ゲインKieに設定する(S94)。
なお、CPU72は、ステップS92,S94の処理が完了する場合には、図9に示す一連の処理を一旦終了する。
このように、本実施形態では、エンド当て判定フラグFが「1」または「2」である場合に、フィードバックゲインを大きくすることにより、q軸の電圧指令値vq*を迅速に減少させることができる。しかも、エンド当て判定フラグFが「0」である場合には、「1」または「2」である場合よりもフィードバックゲインを小さい値とすることにより、制御を安定させることができる。
<対応関係>
上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項と、実施形態における事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。なお、以下において、「メモリ74に記憶されたプログラムに従って所定の処理を実行するCPU72」のことを、記載を簡素化するために、「所定の処理を実行するCPU72」と記載する。
1:エンド判定処理部は、ステップS12,S20,S32〜S42,S46〜S56の処理を実行するCPU72に対応する。エンド時制限処理部は、第1または第3の実施形態においては、ステップS62の処理を実行するCPU72に対応し、第2の実施形態においては、ステップS62,S82の処理を実行するCPU72に対応する。また、フィードバック処理部は、q軸フィードバック処理部M22に対応し、操舵制御装置は、制御装置70に対応する。制限電流値は、「iq+Kie・dω(n)」に対応する。
2:指令値設定処理部は、アシストトルク設定処理部M10、電流指令値設定処理部M12、および上限ガード処理部M14に対応する。推定処理部は、ステップS14〜S18,S22〜S26の処理を実行するCPU72に対応する。
3.上限ガード処理が施された電流指令値は、q軸の電流指令値iq1*に対応する。
4.仮判定処理部は、ステップS12,S20の処理を実行するCPU72に対応し、本判定処理部は、ステップS32〜S42,S46〜S56の処理を実行するCPU72に対応する。
5.エンド時制限処理部は、ステップS62,S82の処理を実行するCPU72に対応する。
6.フィードバック処理部によるゲインの可変設定は、図9に示した処理を実行するCPU72に対応する。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態の各事項の少なくとも1つを、以下のように変更してもよい。
・「仮判定処理部について」
上記(a1)〜(c1)の条件の論理積が真である場合や、上記(a2)〜(c2)の条件の論理積が真である場合にエンド当てが生じた旨の仮判定をするものに限らない。たとえば、上記(c1)の条件や上記(c2)の条件を除き、上記(a1)の条件および(b1)の条件の論理積が真である場合や、上記(a2)の条件および(b2)の条件の論理積が真である場合にエンド当てが生じた旨の仮判定をするものであってもよい。
また、ステップS12において肯定判定された次の制御周期において上記(b1)の条件を満たしたり、ステップS20において肯定判定された次の制御周期において上記(b2)の条件を満たしたりする場合に、エンド当てが生じた旨の仮判定をするものであってもよい。なお、仮判定用加速度閾値dωth1を負の値とする代わりに、ゼロとしてもよい。
・「本判定処理部について」
上記(d1)〜(g1)の条件の論理積が真であることや、上記(d2)〜(g2)の条件の論理積が真であることに基づき、エンド当てが生じた旨の本判定をするものに限らない。たとえば、上記(d1)〜(f1)の条件の論理積が真であることや、上記(d2)〜(f2)の条件の論理積が真であることに基づき、エンド当てが生じた旨の本判定をするものであってもよい。また、たとえば、上記(d1),(e1)および(g1)の条件の論理積が真であることや、上記(d2),(e2)および(g2)の条件の論理積が真であることに基づき、エンド当てが生じた旨の本判定をするものであってもよい。またたとえば、上記(d1)および(e1)の条件の論理積が真であることや、上記(d2)および(e2)の条件の論理積が真であることに基づき、エンド当てが生じた旨の本判定をするものであってもよい。
仮判定の成立条件よりも本判定の成立条件の方が厳しくなる設定としては、上記実施形態で例示したものに限らない。たとえば、仮判定用加速度閾値dωth1よりも本判定用加速度閾値dωth2の方が絶対値を大きい値に設定することと、本判定用加速度閾値dωth2を用いた条件の成立回数を仮判定用加速度閾値dωth1を用いた条件の成立回数よりも多くすることとのいずれか一方のみを採用してもよい。これは、たとえば仮判定用加速度閾値dωth1よりも本判定用加速度閾値dωth2の方が絶対値を大きい値に設定する一方、図5のステップS32,S46において1度肯定判定されることにより本判定をしたり、「仮判定処理部について」の欄に記載したように上記(b1)の条件を複数回満たす場合に仮判定をしたりすることで実現できる。もっとも、図3および図5の処理において、仮判定用加速度閾値dωth1と本判定用加速度閾値dωth2とを同一とする変更のみをすることによっても実現できる。
・「エンド判定処理部について」
回転速度ωの絶対値の減少に基づきエンド当てを判定するものに限らない。たとえば、操舵トルクTrqと、その変化速度とに基づき、エンド当てを判定するものであってもよい。具体的には、たとえば、操舵トルクの大きさが所定値以上であって且つ、操舵トルクの変化速度の大きさが規定値以上であることを条件に、エンド当てと判定すればよい。
仮判定処理部および本判定処理部を備えることは必須ではない。これは、たとえば、CPU72が図3のステップS12において肯定判定する場合にエンド当て判定フラグを「1」とし、ステップS20において肯定判定する場合にエンド当て判定フラグを「2」とすることで実現できる。
・「フィードバック処理部について」
たとえば図9の処理のように、q軸フィードバック処理部M22が、積分要素以外に比例要素等を備える場合であっても、エンド当て時におけるゲインの変更を、積分ゲインKiに限って行ってもよい。
また、上記第2の実施形態において、第3の実施形態のように、図9の処理を実行してもよい。
・「推定処理部について」
上記実施形態では、エンド当て時に電動機50のアシストトルクを適切な値とする上で適切な電流としてのエンド当て直前の電流として、特に、エンド当て直前のq軸の電流を推定したがこれに限らない。たとえば「電流の制御について」の欄に記載したように、dq軸に対して所定角度だけずれた回転座標系の電流成分をその指令値に制御するものである場合、その成分であってもよい。この場合、一対の成分のそれぞれを、「Kie・dω」にて減少補正したものと、対応する電流指令値とのうちの大きさが小さい方をエンド当て時の電流の推定値とすればよい。
さらに、回転座標系における成分(直流電流成分)に限らない。たとえば、固定座標系における電流の振幅や、回転座標系における電流ベクトルのノルムであってもよい。ここで、ノルムは、振幅と定数倍の相違を有するのみである。SPMのみならず、「電動機について」の欄に記載したIPMの場合であっても、最小電流最大トルク制御を実行する場合、ノルムは、回転座標系の一対の電流成分の組と1対1の対応関係を有する。このため、ノルムが推定できれば、これに基づき、エンド当て直前の回転座標系の一対の電流成分の組を推定することができる。なお、エンド当て直前のノルムは、たとえば、エンド当ての仮判定時のノルムNを用いた「N+Kie・dω」と、回転座標系における電流指令値ベクトルのノルムとのうちの小さい方とすればよい。
ちなみに、「電流の制御について」の欄に記載したように、SPMを用いて弱め界磁制御を行う場合、q軸の電流iqのみを推定対象とすればよい。
「iq+Kie・dω」と電流指令値iq*とのうちの小さい方を、エンド当て直前の電流として推定するものに限らない。たとえば、「iq+Kie・dω」を、エンド当て直前の電流として推定するものであってもよい。エンド当ての本判定がなされることによってこの推定値を用いる場合であっても、エンド当ての仮判定時における電流iqを用いる場合と比較して、電流指令値iq*をエンド当て時の値に近づけることができる。
・「更新周期について」
上記実施形態では、上限ガード処理部M14による上限ガード値Ithの更新周期を、電流iqのサンプリング周期や、アシスト指令値Trqa*の更新周期、q軸フィードバック処理部M22の制御周期等よりも長い値に設定したが、これに限らない。上限ガード値Ithの更新周期を短くしたとしても、エンド当てが生じることによって誘起電圧の大きさが急激に低下することに起因してq軸の電流iqの大きさが急激に上昇することに鑑みれば、高μ路においてはエンド当ての仮判定がなされた時点における電流iqと比較して電流指令値iq1*の方が絶対値が小さくなりうる。そして、電流指令値iq1*の方がエンド当て直前の電動機50のq軸の電流iqにより近いと考えられる。このため、CPU72がステップS14〜S18,S22〜S26の処理を実行することは有効である。
・「電流の制御について」
q軸の電流iqと電流指令値iq*との差を入力とする比例要素および積分要素の各出力値の和を電圧指令値vq*とするものに限らず、たとえば、積分要素の出力値を電圧指令値vq*とするものであってもよい。また、微分要素の出力値を加味して電圧指令値vq*を設定するものであってもよい。この場合、微分要素によって、誘起電圧の大きさの急激な低下に起因して電圧指令値vq*が電流iqを電流指令値iq*に制御する上で適切な値よりも絶対値が過度に大きくなることを抑制することが可能となる。なお、この場合であっても、第2,第3の実施形態の処理を実行してもよい。
d軸の電流idと電流指令値id*との差を入力とする比例要素および積分要素の各出力値の和を電圧指令値vd*とするものに限らず、たとえば、積分要素の出力値を電圧指令値vd*とするものであってもよい。また、微分要素の出力値を加味して電圧指令値vd*を設定するものであってもよい。
d軸の電圧指令値vd*を、d軸のフィードバック操作量とするものに限らず、たとえば、d軸のフィードバック操作量と、非干渉制御による開ループ操作量「(−1)・ω・L・iq」との和であってもよい。ここでは、インダクタンスLを用いている。
q軸の電圧指令値vq*を、q軸のフィードバック操作量とするものに限らず、たとえば、q軸のフィードバック操作量と、非干渉制御による開ループ操作量「ω・L・id」との和であってもよい。さらに、q軸の電圧指令値vq*を、q軸のフィードバック操作量と、非干渉制御による開ループ操作量と、誘起電圧に応じた開ループ操作量「ω・φ」との和としてもよい。誘起電圧に応じた開ループ操作量を用いる場合であっても、その更新周期や、その更新の入力となる回転速度ωの更新周期の設定によって、エンド当てによって誘起電圧の大きさが急激に低下した割りに開ループ操作量の変更が遅れるなら、電圧指令値vq*が適切な値よりも絶対値が過度に大きくなるおそれがある。そしてその場合には、第2,第3の実施形態の処理を実行することが有効である。
上記実施形態では、d軸の電流指令値id*をゼロとしたが、これに限らず、たとえば負の値として弱め界磁制御を実行してもよい。
回転2次元座標系の電流成分をその指令値に制御するものとしては、dq軸上の電流成分を制御するものに限らず、たとえば、dq軸に対して所定角度だけずれた回転座標系の電流成分をその指令値に制御するものであってもよい。
また、回転2次元座標系の電流成分をその指令値に制御するものとしては、フィードバック制御するものに限らない。たとえば、回転2次元座標系の電流を入力とし、複数のスイッチングモードのそれぞれが仮に選択された場合の未来の電流を予測し、この予測値と指令値との差を小さくするスイッチングモードを実際に採用する、いわゆるモデル予測制御を実行するものであってもよい。この場合、誘起電圧の大きさが急激に低下したとしても、電流を電流指令値に迅速に制御することは可能であるものの、少なくとも電流指令値を適切に設定する上では、図3の処理が有効である。
・「上限ガード処理部について」
上限ガード処理部M14を備えることは必須ではない。これを備えない場合であっても、高μ路においては、要求される操舵トルクの大きさが大きいため、限界角に到達する前から、操舵トルクやアシストトルクの大きさが大きくなり、限界角に到達した際のアシストトルクの指令値の大きさの増加量は、低μ路と比較すると小さくなる傾向がある。このため、限界角に到達する際、電流の検出値の大きさよりも電流指令値の大きさの方が小さい値となることがあるため、ステップS14〜S18,S22〜S26の処理等は有効である。
・「Kic・dω補正について」
図8の処理においては、所定時間TにわたってKicをゼロよりも大きい一定値とした後、漸減させてゼロとし、所定時間Tを、図7のステップS72,S78の所定時間Tと一致させたが、これに限らない。換言すれば、図8の処理における所定時間Tと、図7のステップS72,S78の所定時間Tとが一致している必要はない。
なお、「電動機について」の欄に記載したようにIPMSMを用いる場合、図8の処理において、ステップS82の処理を実行するとともに、d軸の電流指令値id*についてもその絶対値を、回転速度ωの大きさの低下度合いに応じて減少補正してもよい。これにより、リラクタンストルクを減少させることができることから、エンド当てに起因して電動機50のトルクが大きくなる現象が生じることについては、いっそう抑制することができる。
・「エンド時制限処理部について」
たとえば、上記第2の実施形態において、エンド時電流指令値iqthを用いた電流指令値iq*の制限処理の終了条件を、以下のように変更してもよい。すなわち、図7のステップS72の処理に代えて、電流指令値iq1*がエンド時電流指令値iqth以下である旨の条件のみとし、ステップS78の処理に代えて、電流指令値iq1*がエンド時電流指令値iqth以上である旨の条件のみとしてもよい。
・「限界角について」
操舵装置10の構造によって定まる転舵輪34の転舵角の絶対値の上限値である限界角としては、ラック軸30がラックハウジング38に接触する際の転舵角に限らない。たとえば、ステアリング12にスパイラルケーブルが取り付けられている場合において、ステアリング12の操舵角の絶対値がスパイラルケーブルによって定まる上限値となるときにラック軸30がラックハウジング38に接触しない場合には、スパイラルケーブルによって定まる転舵角の最大値であってもよい。ただし、「操舵装置について」の欄に記載したように、操舵装置が舵角比を可変とするアクチュエータを備える場合、限界角は、舵角比に応じて変化する値となる。
・「電動機について」
永久磁石同期電動機としては、SPMに限らず、たとえば埋込磁石同期電動機(IPMSM)であってもよい。また、永久磁石同期電動機に限らない。たとえば、直流電動機であってもよい。また永久磁石を備えない巻線界磁型同期電動機であってもよい。このように、ロータが永久磁石を備えないものであっても、回転速度の大きさが急激に低下する場合には、誘起電圧の大きさの急激な低下に伴ってステータコイルを流れる電流の大きさが急激に上昇するおそれがある。このため、ステップS14〜S18,S22〜S26の処理を実行したり、第2、第3の実施形態の処理を実行したりそれらの変形例を実行したりすることが有効である。
・「制御装置について」
制御装置70が、CPU72およびメモリ74を備えて、上述した各種処理を全てソフトウェア処理するものに限らない。たとえば、図3に示した処理を、専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)にて処理するなど、少なくとも一部の処理を実行するASICを備えたものであってもよい。
・「操舵装置について」
ステアリング12の回転角(操舵角)と転舵輪34の転舵角とが1対1に対応するものに限らず、たとえば、舵角比可変アクチュエータを備えて操舵角と転舵角との比である舵角比を電子制御によって変更可能なものであってもよい。
・「そのほか」
転舵アクチュエータPSAとしては、ラックアンドピニオン型のものに限らない。たとえば、ラッククロス型のものや、ラックパラレル(登録商標)、ラック同軸型のものなどを採用してもよい。
10…操舵装置、12…ステアリング、14…ステアリングシャフト、16…トーションバー、20…第1ラックアンドピニオン機構、22…ピニオン軸、22a…ピニオン歯、30…ラック軸、32a…第1ラック歯、34…転舵輪、34a…第2ラック歯、36…減速機、38…ラックハウジング、40…第2ラックアンドピニオン機構、42…ピニオン軸、42a…ピニオン歯、50…電動機、52…回転軸、60…インバータ、62…バッテリ、64…トルクセンサ、66…シャント抵抗、68…回転角度センサ、69…車速センサ、70…制御装置、72…CPU、74…メモリ。

Claims (6)

  1. 車両の転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを備え、ステアリングの操舵に応じて前記転舵輪の転舵をアシストする操舵装置を制御対象とし、
    前記転舵アクチュエータは、電動機を備え、
    前記電動機の電流を電流指令値にフィードバック制御するフィードバック処理部と、
    前記転舵輪の転舵角が前記操舵装置の構造によって定まる限界角に到達したか否かを判定するエンド判定処理部と、
    前記エンド判定処理部によって前記限界角に到達したと判定される場合、前記電動機の電流指令値の大きさを、制限電流値の大きさ以下に制限するエンド時制限処理部と、を備え、
    前記制限電流値は、前記エンド判定処理部によって前記限界角に到達したと判定されるときの前記電動機を流れる電流の検出値の大きさを、前記電動機の回転速度の大きさの低下度合いに基づき減少補正した値である操舵制御装置。
  2. 操舵トルクの検出値に基づき、前記電流指令値を設定する指令値設定処理部を備え、
    前記指令値設定処理部は、前記操舵トルクの検出値の大きさが大きい場合に小さい場合よりも前記電流指令値の大きさを大きい値に設定し、
    前記エンド判定処理部によって前記限界角に到達したと判定される場合、前記指令値設定処理部により設定された前記電流指令値と、前記制限電流値とのうちの大きさが小さい方を、前記限界角に到達する直前の前記電動機の電流として推定する推定処理部を備え、
    前記エンド時制限処理部は、前記電流指令値を、前記推定処理部によって推定された電流の大きさ以下の値とする請求項1記載の操舵制御装置。
  3. 前記指令値設定処理部は、前記電流指令値の大きさに上限ガード処理を施す上限ガード処理部を備え、
    前記上限ガード処理部は、前記電流指令値の上限ガード値を、前記電動機の回転速度の大きさが大きい場合に小さい場合よりも小さい値に設定し、
    前記推定処理部は、前記上限ガード処理が施された前記電流指令値と、前記制限電流値とのうちの大きさが小さい方を、前記限界角に到達する直前の前記電動機の電流として推定する請求項2記載の操舵制御装置。
  4. 前記エンド判定処理部は、前記限界角に到達した旨の仮判定を実行する仮判定処理部と、前記限界角に到達した旨の本判定を実行する本判定処理部とを備え、
    前記本判定処理部が前記限界角に到達した旨判定する条件は、前記仮判定処理部が前記限界角に到達した旨判定する条件よりも厳しい条件であり、
    前記推定処理部は、前記仮判定処理部によって前記限界角に到達したと判定されるときの前記電動機を流れる電流の検出値の大きさを、前記電動機の回転速度の大きさの低下度合いに基づき減少補正した値である前記制限電流値と、前記仮判定処理部によって前記限界角に到達した旨の判定がなされるときの前記電流指令値との大きさが小さい方を前記限界角に到達する直前の前記電動機の電流として推定するものであり、
    前記エンド時制限処理部は、前記本判定処理部によって前記限界角に到達した旨の判定がなされる場合に、前記電動機の電流指令値の大きさを、前記制限電流値の大きさ以下に制限する請求項2または3記載の操舵制御装置。
  5. 前記フィードバック処理部は、前記電動機を流れる電流と前記電流指令値との差を入力とする積分要素の出力値に基づき前記電動機に印加する電圧を操作するものであり、
    前記エンド時制限処理部は、前記推定処理部によって推定された電流の大きさを前記電動機の回転速度の大きさの減少度合いに基づき減少補正した値を、前記電流指令値とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の操舵制御装置。
  6. 前記フィードバック処理部は、前記電動機を流れる電流と前記電流指令値との差を入力とする積分要素の出力値に基づき前記電動機に印加する電圧を操作するものであって、前記エンド時制限処理部が前記電動機の前記電流指令値の大きさを前記制限電流値の大きさ以下に制限する処理を実行している場合、実行していない場合と比較して前記積分要素のゲインを大きくする請求項1〜5のいずれか1項に記載の操舵制御装置。
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