JP6678204B2 - 磁気テープ - Google Patents

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Description

本発明は、磁気テープに関する。
磁気記録媒体にはテープ状のものとディスク状のものがあり、データバックアップ等のストレージ用途には、テープ状の磁気記録媒体、即ち磁気テープが主に用いられている。
磁気テープとして、特許文献1には、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側にバックコート層(特許文献1には、「バック層」と記載されている。)を有する磁気テープが開示されている。
特開平1−60819号公報
近年、磁気テープには、磁性層の表面平滑性を高めることが求められている。磁性層の表面平滑性を高めることは、電磁変換特性の向上につながるためである。
しかしながら、本発明者らがバックコート層を有する磁気テープについて検討したところ、特に、磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaが1.8nm以下になるほど磁性層の表面平滑性を高めた磁気テープでは、磁気テープをドライブにおいて走行させた後に、磁気テープのエッジ部分にダメージ(以下、「エッジダメージ」と記載する。)が発生する現象が顕著であることが判明した。この点について、更に説明すると、磁気テープへの情報の記録および/または記録された情報の再生は、磁気テープカートリッジをドライブにセットし、ドライブ内で磁気テープを走行させて、ドライブに搭載されている磁気ヘッドと磁性層の表面とを接触させ摺動させて行われる。磁気テープは磁気テープカートリッジ内にリールに巻き取られた状態で収容されているため、ドライブ内で磁気テープを走行させている間、リールからの磁気テープの送り出しおよび巻き取りが行われる。この巻き取り時に巻き乱れが生じると、リールのフランジ等に磁気テープのエッジが当たり、エッジダメージが発生してしまう。このエッジダメージは、記録時のエラー増加および/または走行安定性の低下を引き起こし得る。したがって、巻き乱れを抑制してエッジダメージを低減することが求められる。
そこで本発明の目的は、磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaが1.8nm以下の磁気テープであって、エッジダメージの発生が抑制された磁気テープを提供することにある。
本発明の一態様は、
非磁性支持体の一方の表面側に強磁性粉末、非磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の表面側に非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する磁気テープであって、
上記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、
上記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRa(以下、「磁性層表面粗さRa」とも記載する。)は、1.8nm以下であり、
In−Plane法を用いた上記磁性層のX線回折分析により求められる六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114);以下、「XRD(X−ray diffraction)強度比」とも記載する。)は0.5以上4.0以下であり、
上記磁気テープの垂直方向角型比は、0.65以上1.00以下であり、かつ
上記バックコート層の表面において振り子粘弾性試験により求められる対数減衰率(以下、「バックコート層表面の対数減衰率」または「対数減衰率」とも記載する。)は、0.060以下である磁気テープ、
に関する。
一態様では、上記対数減衰率は、0.010以上0.060以下であることができる。
一態様では、上記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは、1.2nm以上1.8nm以下であることができる。
一態様では、上記垂直方向角型比は、0.65以上0.90以下であることができる。
一態様では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体と上記磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有することができる。
本発明の一態様によれば、磁性層の表面平滑性が高く、かつエッジダメージの発生が抑制された磁気テープを提供することができる。
対数減衰率の測定方法の説明図である。 対数減衰率の測定方法の説明図である。 対数減衰率の測定方法の説明図である。 磁気テープ製造工程の具体的態様の一例(工程概略図)を示す。
本発明の一態様は、非磁性支持体の一方の表面側に強磁性粉末、非磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の表面側に非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する磁気テープであって、上記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、上記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは1.8nm以下であり、In−Plane法を用いた上記磁性層のX線回折分析により求められる六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114))は0.5以上4.0以下であり、上記磁気テープの垂直方向角型比は0.65以上1.00以下であり、かつ上記バックコート層の表面において振り子粘弾性試験により求められる対数減衰率は0.060以下である磁気テープに関する。
以下、上記磁気テープについて、更に詳細に説明する。以下の記載には、本発明者らの推察が含まれる。かかる推察によって本発明は限定されるものではない。また、以下では、図面に基づき例示的に説明することがある。ただし、例示される態様に本発明は限定されるものではない。
上記磁気テープは、磁性層表面粗さRaが1.8nm以下であるもののエッジダメージの発生の抑制が可能である。この点について、本発明者らは次のように考えている。
磁性層表面粗さRaが1.8nm以下の磁気テープにおいてエッジダメージの発生が顕著となる理由は、磁性層の表面平滑性が高いことにより、巻き取り時に磁性層の表面とバックコート層の表面との接触状態が不安定になるからではないかと、本発明者らは考えている。これに対し、上記磁気テープでは、XRD強度比、垂直方向角型比およびバックコート層表面において測定される対数減衰率がそれぞれ上記範囲であることが、磁性層の表面とバックコート層の表面との接触状態の安定性を高めることに寄与し、その結果、巻き乱れに起因して生じるエッジダメージの発生を抑制できると本発明者らは考えている。この点について、より詳しくは後述する。
本発明および本明細書において、磁気テープの「磁性層(の)表面」とは、磁気テープの磁性層側表面と同義である。「バックコート層(の)表面」とは、磁気テープのバックコート層側表面と同義である。また、本発明および本明細書において、「強磁性六方晶フェライト粉末」とは、複数の強磁性六方晶フェライト粒子の集合を意味するものとする。強磁性六方晶フェライト粒子とは、六方晶フェライト結晶構造を有する強磁性粒子である。以下では、強磁性六方晶フェライト粉末を構成する粒子(強磁性六方晶フェライト粒子)を、単に「粒子」とも記載する。「集合」とは、集合を構成する粒子が直接接触している態様に限定されず、結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している態様も包含される。以上の点は、本発明および本明細書における非磁性粉末等の各種粉末についても同様とする。
本発明および本明細書において、方向および角度に関する記載(例えば垂直、直交、平行等)には、特記しない限り、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。上記誤差の範囲とは、例えば、厳密な角度±10°未満の範囲を意味し、厳密な角度±5°以内であることが好ましく、±3°以内であることがより好ましい。
<磁性層表面粗さRa>
上記磁気テープの磁性層表面において測定される中心線平均表面粗さRa(磁性層表面粗さRa)は、1.8nm以下である。磁性層表面粗さRaが1.8nm以下であることは、電磁変換特性向上の観点から好ましい。ただし上記の通り、磁性層表面粗さRaが1.8nm以下になるほど磁性層の表面平滑性を高めた磁気テープでは、エッジダメージが顕著に発生してしまう。これに対し、上記磁気テープは、XRD強度比、垂直方向角型比およびバックコート層表面において測定される対数減衰率がそれぞれ上記範囲であることにより、エッジダメージの発生を抑制することができる。電磁変換特性向上の観点からは磁性層表面粗さRaが小さいことは好ましい。この点から、磁性層表面粗さRaは、1.7nm以下であることができ、1.6nm以下であることもできる。また、磁性層表面粗さRaは、例えば1.2nm以上または1.3nm以上であることができる。ただし電磁変換特性向上の観点からは磁性層表面粗さRaが小さいほど好ましいため、上記例示した値を下回ってもよい。
本発明および本明細書における磁気テープの磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)により磁性層表面の面積40μm×40μmの領域において測定される値とする。測定条件の一例としては、下記の測定条件を挙げることができる。後述の実施例に示す磁性層表面粗さRaは、下記測定条件下での測定によって求めた値である。
AFM(Veeco社製Nanoscope4)をタッピングモードで用いて磁気テープの磁性層の表面の面積40μm×40μmの領域を測定する。探針としてはBRUKER社製RTESP−300を使用し、スキャン速度(探針移動速度)は40μm/秒、分解能は512pixel×512pixelとする。
磁性層表面粗さRaは、公知の方法により制御することができる。例えば、磁性層に含まれる各種粉末(例えば、強磁性六方晶フェライト粉末、非磁性粉末等)のサイズ、磁気テープの製造条件等により磁性層表面粗さRaは変わり得る。したがって、これらを調整することにより、磁性層表面粗さRaが1.8nm以下の磁気テープを得ることができる。
<XRD強度比、垂直方向角型比>
次に、XRD強度比および垂直方向角型比について説明する。
上記磁気テープ装置の磁気テープは、磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末および非磁性粉末を含む。磁性層において非磁性粉末は、詳細を後述するように、好ましくは研磨剤または突起形成剤として機能し得る。ただし、磁性層表面および/または磁性層表面近傍に存在する非磁性粉末の粒子(非磁性粒子)が、磁性層表面と磁気ヘッドとの摺動時に磁気ヘッドから力を受けて磁性層内部に適度に沈み込まないと、非磁性粉末の粒子との接触によって磁気ヘッドが削れてしまう(ヘッド削れ)と考えられる。他方、磁性層表面と磁気ヘッドとの摺動時、非磁性粉末の粒子が磁性層内部に沈み込み過ぎると、磁性層表面と磁気ヘッドとが接触(真実接触)する面積が大きくなり摺動時に磁気ヘッドから磁性層表面に加わる力が強くなり、磁性層表面がダメージを受けて磁性層表面が削れる原因になると考えられる。
以上のヘッド削れにより発生する削れ屑および磁性層表面の削れにより発生する削れ屑は、磁性層表面とバックコート層表面との間に介在して、巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を低下させてしまうと、本発明者らは推察している。
この点に関して本発明者らは、磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末を構成する粒子の中には、磁性層内部に押し込まれた非磁性粉末の粒子を支えて、その沈み込みの程度に影響を及ぼす粒子(以下、「前者の粒子」ともいう。)と、影響を及ぼさないか影響が少ないと考えられる粒子(以下、「後者の粒子」ともいう。)とが存在すると推察している。後者の粒子は、例えば磁性層形成用組成物の調製時に行われる分散処理により粒子が一部欠けること(チッピング(chipping))により発生した微細な粒子と考えられる。
そして本発明者らは、磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末を構成する粒子(強磁性六方晶フェライト粒子)の中で、前者の粒子は、In−Plane法を用いたX線回折分析において回折ピークをもたらす粒子であり、後者の粒子は微細なため回折ピークをもたらさないか回折ピークへの影響は小さいと考えている。そのため、In−Plane法を用いた磁性層のX線回折分析によってもたらされる回折ピークの強度に基づけば、磁性層内部に押し込まれた非磁性粉末の粒子を支えて、その沈み込みの程度に影響を及ぼす強磁性六方晶フェライト粒子の磁性層における存在状態を制御することができ、その結果、非磁性粉末の粒子の沈み込みの程度を制御することが可能になると本発明者らは推察している。詳しくは、非磁性粉末の粒子は、XRD強度比の値が小さいほど沈み込み易く、その値が大きいほど沈み込み難いと推察している。XRD強度比が0.5以上4.0以下であることにより、非磁性粉末の粒子の沈み込みを、上記のヘッド削れおよび磁性層表面の削れを抑制し得る程度に適度に制御することができると、本発明者らは考えている。このことが、ヘッド削れにより発生する削れ屑および磁性層表面の削れにより発生する削れ屑が磁性層表面とバックコート層表面との間に介在して巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を低下させることを抑制することにつながると、本発明者らは推察している。
一方、垂直方向角型比とは、磁性層表面に対して垂直な方向で測定される飽和磁化に対する残留磁化の比であって、残留磁化が小さいほど値が小さくなる。上記の後者の粒子は微細であり磁化を保持し難いと考えられるため、磁性層において後者の粒子が多く含まれるほど、垂直方向角型比は小さくなる傾向があると推察される。そのため、垂直方向角型比は、磁性層における上記の後者の粒子(微細な粒子)の存在量の指標になり得ると本発明者らは考えている。更に本発明者らは、かかる微細な粒子が磁性層に多く含まれるほど、磁性層の強度が低下し磁気ヘッド等との接触によって磁性層表面が削れやすくなり、削れて発生した削れ屑が磁性層表面とバックコート層表面との間に介在して、巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を低下させてしまうと推察している。これに対し、垂直方向角型比が0.65以上1.00以下の磁性層は、上記の後者の粒子(微細な粒子)の存在量が低減されているため磁性層表面が削れ難いことが、結果的に、巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を高めることに寄与すると、本発明者らは考えている。
以上のように、XRD強度比が0.5以上4.0以下であることおよび垂直方向角型比が0.65以上1.00以下であることは、巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を高めることにつながり、結果的に、エッジダメージの発生を抑制することに寄与すると、本発明者らは推察している。
ただし以上は推察であって、本発明を何ら限定するものではない。
(XRD強度比)
XRD強度比は、強磁性六方晶フェライト粉末を含む磁性層をIn−Plane法を用いてX線回折分析することによって求められる。以下において、In−Plane法を用いて行われるX線回折分析を、「In−Plane XRD」とも記載する。In−Plane XRDは、薄膜X線回折装置を用いて、以下の条件で、磁性層表面にX線を照射して行うものとする。測定方向は、磁気テープの長手方向とする。
Cu線源使用(出力45kV、200mA)
Scan条件:20〜40degreeの範囲を0.05degree/step、0.1degree/min
使用光学系:平行光学系
測定方法::2θχスキャン(X線入射角0.25°)
上記条件は、薄膜X線回折装置における設定値である。薄膜X線回折装置としては、公知の装置を用いることができる。薄膜X線回折装置の一例としては、リガク社製SmartLabを挙げることができる。In−Plane XRDの分析に付す試料は、測定対象の磁気テープから切り出したテープ試料であって、後述する回折ピークが確認できればよく、その大きさおよび形状は限定されるものではない。
X線回折分析の手法としては、薄膜X線回折と粉末X線回折が挙げられる。粉末X線回折は粉末試料のX線回折を測定するのに対し、薄膜X線回折によれば基板上に形成された層等のX線回折を測定することができる。薄膜X線回折は、In−Plane法とOut−Of−Plane法とに分類される。測定時のX線入射角は、Out−Of−Plane法では5.00〜90.00°の範囲であるのに対し、In−Plane法では通常0.20〜0.50°の範囲である。本発明および本明細書におけるIn−Plane XRDでは、上記の通りX線入射角は0.25°とする。In−Plane法は、Out−Of−Plane法と比べてX線入射角が小さいためX線の侵入深さが浅い。したがって、In−Plane法を用いるX線回折分析(In−Plane XRD)によれば、測定対象試料の表層部のX線回折分析を行うことができる。テープ試料については、In−Plane XRDによれば磁性層のX線回折分析を行うことができる。上記のXRD強度比とは、かかるIn−Plane XRDにより得られたX線回折スペクトルの中で、六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114))である。Intは、Intensity(強度)の略称として用いている。In−Plane XRDにより得られるX線回折スペクトル(縦軸:Intensity、横軸:回折角2θχ(degree))において、(114)面の回折ピークは、2θχが33〜36degreeの範囲で検出されるピークであり、(110)面の回折ピークは、2θχが29〜32degreeの範囲で検出されるピークである。
回折面の中で、六方晶フェライト結晶構造の(114)面は、強磁性六方晶フェライト粉末の粒子(強磁性六方晶フェライト粒子)の磁化容易軸方向(c軸方向)近くに位置する。また、六方晶フェライト結晶構造の(110)面は、磁化容易軸方向と直交する方向に位置する。
本発明者らは、In−Plane XRDによって求められるX線回折スペクトルにおいて、六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114);XRD強度比)が大きいほど、磁化容易軸方向と直交する方向が磁性層表面に対してより平行に近い状態で存在する前者の粒子が磁性層に多く存在することを意味し、XRD強度比が小さいほど、そのような状態で存在する前者の粒子が磁性層に少ないことを意味すると推察している。そして、XRD強度比が0.5以上4.0以下である状態とは、前者の粒子が磁性層において適度に整列した状態にあることを意味すると考えられる。このことが、巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を高めることにつながり、結果的に、エッジダメージの発生を抑制することに寄与すると本発明者らは推察している。その推察の詳細は、先に記載した通りである。
XRD強度比は、エッジダメージの発生をより一層抑制する観点から、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、XRD強度比は、0.7以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。XRD強度比は、例えば、磁気テープの製造工程において行われる配向処理の処理条件によって制御することができる。配向処理としては、垂直配向処理を行うことが好ましい。垂直配向処理は、好ましくは、湿潤状態(未乾燥状態)の磁性層形成用組成物の塗布層の表面に対して垂直に磁場を印加することにより行うことができる。配向条件を強化するほど、XRD強度比の値は大きくなる傾向がある。配向処理の処理条件としては、配向処理における磁場強度等が挙げられる。配向処理の処理条件は特に限定されるものではない。0.5以上4.0以下のXRD強度比が実現できるように配向処理の処理条件を設定すればよい。一例として、垂直配向処理における磁場強度は、0.10〜0.80Tとすることができ、または0.10〜0.60Tとすることもできる。磁性層形成用組成物における強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高めるほど、垂直配向処理によりXRD強度比の値は大きくなる傾向がある。
(垂直方向角型比)
垂直方向角型比とは、磁気テープの垂直方向において測定される角型比である。角型比に関して記載する「垂直方向」とは、磁性層表面と直交する方向をいう。即ち磁気テープについて、垂直方向は、磁気テープの長手方向と直交する方向でもある。垂直方向角型比は、振動試料型磁束計を用いて測定される。詳しくは、本発明および本明細書における垂直方向角型比は、振動試料型磁束計において、23℃±1℃の測定温度において、磁気テープに外部磁場を最大外部磁場1194kA/m(15kOe)かつスキャン速度4.8kA/m/秒(60Oe/秒)の条件で掃引して求められる値であって、反磁界補正後の値とする。測定値は、振動試料型磁束計のサンプルプローブの磁化をバックグラウンドノイズとして差し引いた値として得るものとする。
上記磁気テープの垂直方向角型比は、0.65以上である。本発明者らは、磁気テープの垂直方向角型比は、先に記載した後者の粒子(微細な粒子)の存在量の指標になり得ると推察している。磁気テープの垂直方向角型比が0.65以上である磁性層は、かかる微細な粒子の存在量が少ないと考えられる。このことも、詳細を先に記載したように、エッジダメージの発生を抑制することに寄与すると本発明者らは推察している。
エッジダメージの発生をより一層抑制する観点から、上記垂直方向角型比は0.68以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましく、0.73以上であることが更に好ましく、0.75以上であることが一層好ましい。また、角型比は、原理上、最大で1.00である。したがって、上記磁気テープの垂直方向角型比は1.00以下である。上記垂直方向角型比は、例えば0.95以下、0.90以下、0.87以下または0.85以下であってもよい。上記垂直方向角型比の値が大きいほど、磁性層中に上記の微細な後者の粒子が少なくエッジダメージの発生をより一層抑制する観点から好ましいと考えられる。したがって、上記垂直方向角型比は、上記例示した値を上回ってもよい。
上記垂直方向角型比を0.65以上とするためには、磁性層形成用組成物の調製工程において、粒子が一部欠けること(チッピング)によって微細な粒子が発生することを抑制することが好ましいと本発明者らは考えている。チッピングの発生を抑制するための具体的手段は後述する。
<バックコート層表面の対数減衰率>
エッジダメージの発生を抑制することに関して、本発明者らは、巻き取り時のバックコート層表面の面内各部における磁性層表面との密着力の均一性を高めることも、巻き取り時の磁性層表面とバックコート層表面との接触状態の安定性を高めることに寄与すると考えている。そして、上記の密着力には、バックコート層表面から遊離する粘着性成分が影響を及ぼすと推察している。詳しくは、巻き取り時のバックコート層表面の面内各部における磁性層表面との密着力は、上記粘着性成分の量が多いほど不均一となり、上記粘着性成分の量が少ないほど均一性が高まると推察される。
以上の点に関し、後述の方法により測定される対数減衰率は、バックコート層表面から遊離する粘着性成分の量の指標になり得る値であると、本発明者らは考えている。詳しくは、対数減衰率の値は、上記粘着性成分の量が多いほど大きくなり、上記粘着性成分の量が少ないほど小さくなると考えられる。そして本発明者らは、上記磁気テープにおいて、バックコート層表面において測定される対数減衰率が0.060以下であることによって、巻き取り時のバックコート層表面の面内各部における磁性層表面との密着力の均一性を高めることができると考えている。
上記粘着性成分の詳細は明らかではない。ただし本発明者らは、結合剤として用いられる樹脂に由来する可能性があると推察している。詳しくは、次の通りである。
結合剤としては、詳細を後述するように各種樹脂を用いることができる。樹脂とは、2つ以上の重合性化合物の重合体(ホモポリマーおよびコポリマーを包含する。)であり、分子量が平均分子量を下回る成分(以下、「低分子量結合剤成分」と記載する。)も通常含まれる。このような低分子量結合剤成分が、バックコート層表面から多く遊離するほど、巻き取り時のバックコート層表面の面内各部における磁性層表面との密着力は不均一になってしまうと、本発明者らは考えている。上記の低分子量結合剤成分は粘着性を有すると考えられ、上記方法により求められる対数減衰率がバックコート層表面から遊離する粘着性成分の量の指標になるのではないかと、本発明者らは推察している。なお、一態様では、バックコート層は、非磁性粉末および結合剤に加えて、硬化剤を含むバックコート層形成用組成物を、非磁性支持体表面に塗布し、硬化処理を施し形成される。ここでの硬化処理により、結合剤と硬化剤とを硬化反応(架橋反応)させることができる。ただし、低分子量結合剤成分は、硬化反応の反応性に乏しいのではないかと本発明者らは考えている。その理由は明らかではない。硬化反応の反応性に乏しいため、低分子量結合剤成分はバックコート層に留まり難いことが、バックコート層表面から低分子量結合剤成分が遊離しやすい理由の1つではないかと、本発明者らは推察している。
本発明および本明細書において、バックコート層の表面において振り子粘弾性試験により求められる対数減衰率とは、以下の方法により求められる値とする。
図1〜図3は、対数減衰率の測定方法の説明図である。以下、これら図面を参照し対数減衰率の測定方法を説明する。ただし、図示された態様は例示であって、本発明を何ら限定するものではない。
振り子粘弾性試験機内の試料ステージ101において、測定対象の磁気テープの一部(測定用試料)100を、目視で確認できる明らかなしわが入っていない状態で、基板103上に測定面(バックコート層表面)を上方に向けて固定用テープ105等で固定された状態で載置する。
測定用試料100の測定面上に、振り子付丸棒型シリンダエッジ104を、シリンダエッジの長軸方向が測定用試料100の長手方向と平行になるように載せる。こうして測定用試料100の測定面に、振り子付丸棒型シリンダエッジ104を載せた状態(上方から見た状態)の一例を、図1に示す。図1に示す態様では、ホルダ兼温度センサー102が設置され、基板103の表面温度をモニタリングできる構成になっている。ただし、この構成は必須ではない。なお測定用試料100の長手方向とは、図1に示す態様では図中に矢印によって示した方向であり、測定用試料を切り出した磁気テープにおける長手方向をいう。また、本明細書に記載の「平行」等の角度に関する記載には、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。また、振り子107(図2参照)としては、金属、合金等のマグネットに吸着される性質を有する材料製の振り子を用いる。
測定用試料100を載置した基板103の表面温度を5℃/min以下の昇温速度(5℃/min以下であれば任意の昇温速度でよい。)で昇温して80℃として、振り子運動を、振り子107とマグネット106との吸着を解除することにより開始(初期振動を誘起)させる。振り子運動している振り子107の状態(横から見た状態)の一例が、図2である。図2に示す態様では、振り子粘弾性試験機内で、試料ステージ下方に配置されたマグネット(電磁石)106への通電を停止して(スイッチをオフにして)吸着を解除することにより振り子運動を開始し、電磁石への通電を再開して(スイッチをオンにして)振り子107をマグネット106に吸着させることにより振り子運動を停止させる。振り子運動中、図2に示すように、振り子107は振幅を繰り返す。振り子が振幅を繰り返している間、振り子の変位を変位センサー108によりモニタリングして得られる結果から、変位を縦軸に取り、経過時間を横軸に取った変位−時間曲線を得る。変位−時間曲線の一例を、図3に示す。図3では、振り子107の状態と変位−時間曲線との対応が模式的に示されている。一定の測定間隔で、静止(吸着)と振り子運動とを繰り返し、10分以上(10分以上であれば任意の時間でよい。)経過した後の測定間隔において得られた変位−時間曲線を用いて、対数減衰率Δ(無単位)を、下記式から求め、この値を磁気テープのバックコート層表面の対数減衰率とする。1回の吸着の吸着時間は1秒以上(1秒以上であれば任意の時間でよい。)とし、吸着終了から次の吸着開始までの間隔は6秒以上(6秒以上であれば任意の時間でよい。)とする。測定間隔とは、吸着開始から次の吸着開始までの時間の間隔である。また、振り子運動を行う環境の湿度は、相対湿度40〜70%の範囲であれば任意の相対湿度でよい。また、振り子運動を行う環境の雰囲気温度は、20〜30℃の範囲であれば任意の温度でよい。
変位−時間曲線において、変位が極小から再び極小になるまでの間隔を、波の一周期とする。nを、測定間隔中の変位−時間曲線に含まれる波の数とし、Anを、n番目の波における極小変位と極大変位との差とする。図3では、n番目の波の変位が極小から再び極小になるまでの間隔を、Pn(例えば1番目の波についてはP1、2番目についてはP2、3番目についてはP3)と表示している。対数減衰率の算出には、n番目の波の次に現れる極小変位と極大変位との差(上記式中、An+1、図3に示す変位−時間曲線ではA4)も用いる。ただし、極大変位以降に振り子107が静止(吸着)している部分は波の数のカウントには用いない。また、極大変位以前に振り子107が静止(吸着)している部分も、波の数のカウントには用いない。したがって、図3に示す変位−時間曲線では、波の数は3つ(n=3)である。
上記磁気テープのバックコート層の表面において振り子粘弾性試験により求められる対数減衰率は、0.060以下である。エッジダメージの発生をより一層抑制する観点から、対数減衰率は、0.058以下であることが好ましく、0.055以下であることがより好ましく、0.050以下であることが更に好ましく、0.045以下であることが一層好ましく、0.040以下であることがより一層好ましく、0.035以下であることが更により一層好ましい。上記対数減衰率は、例えば0.010以上、または0.012以上であることができる。エッジダメージの発生を抑制する観点からは、対数減衰率は低いほど好ましい傾向がある。したがって、対数減衰率は、上記の例示した下限を下回ってもよい。バックコート層表面の対数減衰率を調整するための手段の具体的態様は、後述する。
以下、上記磁気テープについて、更に詳細に説明する。
<磁性層>
(強磁性粉末)
上記磁気テープの磁性層は、強磁性粉末として強磁性六方晶フェライト粉末を含む。強磁性六方晶フェライト粉末に関して、六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(「M型」とも呼ばれる。)、W型、Y型およびZ型が知られている。上記磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末は、いずれの結晶構造を取るものであってもよい。また、六方晶フェライトの結晶構造には、構成原子として、鉄原子および二価金属原子が含まれる。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、バリウム原子、ストロンチウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。例えば、二価金属原子としてバリウム原子を含む六方晶フェライトは、バリウムフェライトであり、ストロンチウム原子を含む六方晶フェライトは、ストロンチウムフェライトである。また、六方晶フェライトは、二種以上の六方晶フェライトの混晶であってもよい。混晶の一例としては、バリウムフェライトとストロンチウムフェライトの混晶を挙げることができる。
強磁性六方晶フェライト粉末の粒子サイズの指標としては、活性化体積を用いることができる。「活性化体積」とは、磁化反転の単位である。本発明および本明細書に記載の活性化体積は、振動試料型磁束計を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで雰囲気温度23℃±1℃の環境下で測定し、以下のHcと活性化体積Vとの関係式から求められる値である。
Hc=2Ku/Ms{1−[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2
[上記式中、Ku:異方性定数、Ms:飽和磁化、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、V:活性化体積、A:スピン歳差周波数、t:磁界反転時間]
高密度記録化を達成するための方法としては、磁性層に含まれる強磁性粉末の粒子サイズを小さくし、磁性層の強磁性粉末の充填率を高める方法が挙げられる。この点から、強磁性六方晶フェライト粉末の活性化体積は、2500nm3以下であることが好ましく、2300nm3以下であることがより好ましく、2000nm3以下であることが更に好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、活性化体積は、例えば800nm3以上であることが好ましく、1000nm3以上であることがより好ましく、1200nm3以上であることが更に好ましい。
強磁性六方晶フェライト粉末を構成する粒子の形状は、強磁性六方晶フェライト粉末を透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして得た粒子写真において、デジタイザーで粒子(一次粒子)の輪郭をトレースして特定するものとする。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。透過型電子顕微鏡を用いる撮影は、加速電圧300kVで透過型電子顕微鏡を用いて直接法により行うものとする。透過型電子顕微鏡観察および測定は、例えば日立製透過型電子顕微鏡H−9000型およびカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて行うことができる。強磁性六方晶フェライト粉末を構成する粒子の形状に関して、「板状」とは、対向する2つの板面を有する形状をいう。一方、そのような板面を持たない粒子形状の中で、長軸と短軸の区別のある形状が「楕円状」である。長軸とは、粒子の長さを最も長く取ることができる軸(直線)として決定する。一方、短軸とは、長軸と直交する直線で粒子長さを取ったときに長さが最も長くなる軸として決定する。長軸と短軸の区別がない形状、即ち長軸長=短軸長となる形状が「球状」である。形状から長軸および短軸が特定できない形状を不定形と呼ぶ。上記の粒子形状特定のための透過型電子顕微鏡を用いる撮影は、撮影対象粉末に配向処理を施さずに行う。磁性層形成用組成物の調製に用いる強磁性六方晶フェライト粉末および磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末の形状は、板状、楕円状、球状および不定形のいずれでもよい。
なお本発明および本明細書に記載の各種粉末に関する平均粒子サイズは、上記のように撮影された粒子写真を用いて、無作為に抽出した500個の粒子について求められた値の算術平均とする。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて得られた値である。
強磁性六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば特開2011−216149号公報の段落0134〜0136も参照できる。
磁性層における強磁性六方晶フェライト粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。磁性層の強磁性六方晶フェライト粉末以外の成分は少なくとも結合剤および非磁性粉末であり、任意に一種以上の添加剤が含まれ得る。磁性層において強磁性六方晶フェライト粉末の充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
(結合剤、硬化剤)
上記磁気テープは塗布型磁気テープであって、磁性層に結合剤を含む。結合剤とは、一種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、バックコート層および/または後述する非磁性層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報の段落0028〜0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。本発明および本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値をポリスチレン換算して求められる値である。測定条件としては、下記条件を挙げることができる。後述の実施例に示す重量平均分子量は、下記測定条件によって測定された値をポリスチレン換算して求めた値である。
GPC装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー社製、7.8mmID(inner diameter(内径))×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
また、上記結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤は、一態様では加熱により硬化反応(架橋反応)が進行する化合物である熱硬化性化合物であることができ、他の一態様では光照射により硬化反応(架橋反応)が進行する光硬化性化合物であることができる。硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。この点は、バックコート層形成用組成物等の他の層を形成するために用いられる組成物が硬化剤を含む場合に、この組成物を用いて形成される層についても、同様である。好ましい硬化剤は、熱硬化性化合物であり、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011−216149号公報の段落0124〜0125を参照できる。硬化剤は、磁性層形成用組成物中に、結合剤100.0質量部に対して例えば0〜80.0質量部、磁性層の強度向上の観点からは好ましくは50.0〜80.0質量部の量で使用することができる。
(非磁性粉末)
磁性層に含まれる非磁性粉末としては、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末(以下、「突起形成剤」と記載する。)、および研磨剤として機能することができる非磁性粉末(以下、「研磨剤」と記載する。)を挙げることができる。XRD強度比が0.5以上4.0以下である磁性層では、非磁性粉末の粒子の磁性層内部への沈み込みを適度に制御できることが、結果的にエッジダメージの発生を抑制することにつながると本発明者らは推察している。その推察の詳細は、先に記載した通りである。
非磁性粉末の一態様である突起形成剤としては、一般に突起形成剤として使用される各種非磁性粉末を用いることができる。これらは、無機物質であっても有機物質であってもよい。一態様では、摩擦特性の均一化の観点からは、突起形成剤の粒度分布は、分布中に複数のピークを有する多分散ではなく、単一ピークを示す単分散であることが好ましい。単分散粒子の入手容易性の点からは、突起形成剤は無機物質の粉末(無機粉末)であることが好ましい。無機粉末としては、金属酸化物等の無機酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末を挙げることができ、無機酸化物の粉末であることが好ましい。突起形成剤は、より好ましくはコロイド粒子であり、更に好ましくは無機酸化物コロイド粒子である。また、単分散粒子の入手容易性の観点からは、無機酸化物コロイド粒子を構成する無機酸化物は二酸化珪素(シリカ)であることが好ましい。無機酸化物コロイド粒子は、コロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)であることがより好ましい。本発明および本明細書において、「コロイド粒子」とは、少なくとも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエンもしくは酢酸エチル、または上記溶媒の二種以上を任意の混合比で含む混合溶媒の少なくとも1つの有機溶媒100mLあたり1g添加した際に、沈降せず分散しコロイド分散体をもたらすことのできる粒子をいうものとする。また、他の一態様では、突起形成剤は、カーボンブラックであることも好ましい。
突起形成剤の平均粒子サイズは、例えば30〜300nmであり、好ましくは40〜200nmである。
非磁性粉末の他の一態様である研磨剤は、好ましくはモース硬度8超の非磁性粉末であり、モース硬度9以上の非磁性粉末であることがより好ましい。なおモース硬度の最大値は、ダイヤモンドの10である。具体的には、アルミナ(Al23)、炭化珪素、ボロンカーバイド(B4C)、SiO2、TiC、酸化クロム(Cr23)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄、ダイヤモンド等の粉末を挙げることができ、中でもα−アルミナ等のアルミナ粉末および炭化珪素粉末が好ましい。また、研磨剤の粒子サイズに関しては、粒子サイズの指標である比表面積として、例えば14m2/g以上、好ましくは16m2/g以上、より好ましくは18m2/g以上である。また、研磨剤の比表面積は、例えば40m2/g以下であることができる。比表面積とは、窒素吸着法(BET(Brunauer−Emmett−Teller)1点法とも呼ばれる。)により求められる値であって、一次粒子について測定する値とする。以下において、かかる方法により求められる比表面積を、BET比表面積とも記載する。
また、突起形成剤および研磨剤が、それらの機能をより良好に発揮することができるという観点から、磁性層における突起形成剤の含有量は、好ましくは強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部に対して、1.0〜4.0質量部であり、より好ましくは1.5〜3.5質量部である。一方、研磨剤については、磁性層における含有量は、好ましくは強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部に対して1.0〜20.0質量部であり、より好ましくは3.0〜15.0質量部であり、更に好ましくは4.0〜10.0質量部である。
(その他の成分)
磁性層には、上記の各種成分とともに、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して使用することができる。または、公知の方法で合成された化合物を添加剤として使用することもできる。添加剤の一例としては、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれ得る添加剤としては、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。例えば、分散剤としては、カルボキシ基含有化合物、含窒素化合物等の公知の分散剤を挙げることもできる。例えば、含窒素化合物は、NH2Rで表される第一級アミン、NHR2で表される第二級アミン、NR3で表される第三級アミンのいずれであってもよい。上記において、Rは含窒素化合物を構成する任意の構造を示し、複数存在するRは同一であっても異なっていてもよい。含窒素化合物は、分子中に複数の繰り返し構造を有する化合物(ポリマー)であってもよい。含窒素化合物の含窒素部が強磁性六方晶フェライト粉末の粒子表面への吸着部として機能することが、含窒素化合物が分散剤として働くことができる理由と考えられる。カルボキシ基含有化合物としては、例えばオレイン酸等の脂肪酸を挙げることができる。カルボキシ基含有化合物については、カルボキシ基が強磁性六方晶フェライト粉末の粒子表面への吸着部として機能することが、カルボキシ基含有化合物が分散剤として働くことができる理由と考えられる。カルボキシ基含有化合物と含窒素化合物を併用することも、好ましい。
また、研磨剤を含む磁性層に使用され得る添加剤の一例としては、特開2013−131285号公報の段落0012〜0022に記載の分散剤を、磁性層形成用組成物における研磨剤の分散性を向上させるための分散剤として挙げることができる。研磨剤等の非磁性粉末の磁性層形成用組成物における分散性を向上させることは、磁性層表面粗さRaを小さくするうえで好ましい。
<バックコート層>
上記磁気テープは、非磁性支持体の磁性層を有する表面とは反対の表面側にバックコート層を有する。バックコート層の非磁性粉末としては、カーボンブラックと、カーボンブラック以外の非磁性粉末と、のいずれか一方または両方を使用することができる。カーボンブラック以外の非磁性粉末としては、非磁性無機粉末を挙げることができる。具体例としては、α−酸化鉄等の酸化鉄、二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等の非磁性無機粉末を挙げることができる。好ましい非磁性無機粉末は、非磁性無機酸化物粉末であり、より好ましくはα−酸化鉄、酸化チタンであり、更に好ましくはα−酸化鉄である。
カーボンブラック以外の非磁性粉末の形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。これら非磁性粉末の平均粒子サイズは、0.005〜2.00μmの範囲であることが好ましく、0.01〜0.20μmの範囲であることが更に好ましい。また、非磁性粉末のBET(Brunauer−Emmett−Teller)法による比表面積(BET比表面積)は、1〜100m2/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜70m2/g、更に好ましくは10〜65m2/gの範囲である。一方、カーボンブラックの平均粒子サイズは、例えば5〜80nmの範囲であり、好ましくは10〜50nm、更に好ましくは10〜40nmの範囲である。バックコート層における非磁性粉末の含有量(充填率)については、非磁性層の非磁性粉末に関する後述の記載を参照できる。
更にバックコート層は結合剤を含み、任意に公知の添加剤を含むこともできる。バックコート層の結合剤、添加剤等のその他詳細は、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層に関する公知技術を適用することもできる。バックコート層は、好ましくは、硬化剤を含むバックコート層形成用組成物を用いて、硬化工程を経て形成することができる。硬化剤については、先に磁性層に使用可能な硬化剤について記載した通りである。硬化剤は、バックコート層形成用組成物中に、結合剤100.0質量部に対して例えば5.0〜50.0質量部の量で添加し使用することができる。
<非磁性層>
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープは、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体表面上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を介して磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011−216149号公報の段落0146〜0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010−24113号公報の段落0040〜0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。
非磁性層の結合剤、添加剤等のその他詳細は、非磁性層に関する公知技術が適用できる。また、例えば、結合剤の種類および含有量、添加剤の種類および含有量等に関しては、磁性層に関する公知技術も適用できる。
上記磁気テープの非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下である層をいうものとする。非磁性層は、残留磁束密度および保磁力を持たないことが好ましい。
<非磁性支持体>
次に、非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)について説明する。
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
<各種厚み>
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.00〜20.00μm、より好ましくは3.00〜10.00μm、更に好ましくは3.00〜6.00μmであり、特に好ましくは3.00〜4.50μmである。
磁性層の厚みは、近年求められている高密度記録化の観点からは0.15μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましい。磁性層の厚みは、更に好ましくは0.01〜0.10μmの範囲である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する二層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。二層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
非磁性層の厚みは、例えば0.10〜1.50μmであり、0.10〜1.00μmであることが好ましい。
バックコート層の厚みは、0.90μm以下であることが好ましく、0.10〜0.70μmの範囲であることがより好ましく、0.10〜0.55μmの範囲であることが更に好ましく、0.10〜0.50μmの範囲であることが一層好ましい。
磁気テープの各層および非磁性支持体の厚みは、公知の膜厚測定法により求めることができる。一例として、例えば、磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビーム、ミクロトーム等の公知の手法により露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡によって断面観察を行う。断面観察において厚み方向の1箇所において求められた厚み、または無作為に抽出した2箇所以上の複数箇所、例えば2箇所、において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めることができる。または、各層の厚みは、製造条件から算出される設計厚みとして求めてもよい。
<製造方法>
(各層形成用組成物の調製)
磁性層、バックコート層または非磁性層を形成するための組成物は、先に説明した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体を製造するために一般に使用される各種有機溶媒を用いることができる。中でも、塗布型磁気記録媒体に通常使用される結合剤の溶解性の観点からは、各層形成用組成物には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン溶媒の一種以上が含まれることが好ましい。各層形成用組成物における溶媒量は特に限定されるものではなく、通常の塗布型磁気記録媒体の各層形成用組成物と同様にすることができる。また、各層形成用組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられるすべての原料は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程、および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。磁気テープの製造工程では、従来の公知の製造技術を一部または全部の工程において用いることができる。混練工程では、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつニーダを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報および特開平1−79274号公報に記載されている。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を、塗布工程に付す前に公知の方法によってろ過してもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01〜3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
磁性層形成用組成物の分散処理に関しては、先に記載したように、チッピングの発生を抑制することが好ましい。そのためには、磁性層形成用組成物を調製する工程において、強磁性六方晶フェライト粉末の分散処理を二段階の分散処理により行い、第一の段階の分散処理により強磁性六方晶フェライト粉末の粗大な凝集物を解砕した後、分散ビーズとの衝突によって強磁性六方晶フェライト粉末の粒子に加わる衝突エネルギーが第一の分散処理より小さな第二の段階の分散処理を行うことが好ましい。かかる分散処理によれば、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性向上とチッピングの発生の抑制とを両立することができる。
上記の二段階の分散処理の好ましい態様としては、強磁性六方晶フェライト粉末、結合剤および溶媒を、第一の分散ビーズの存在下で分散処理することにより分散液を得る第一の段階と、第一の段階で得られた分散液を、第一の分散ビーズよりビーズ径および密度が小さい第二の分散ビーズの存在下で分散処理する第二の段階と、を含む分散処理を挙げることができる。以下に、上記の好ましい態様の分散処理について、更に説明する。
強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高めるためには、上記の第一の段階および第二の段階は、強磁性六方晶フェライト粉末を他の粉末成分と混合する前の分散処理として行うことが好ましい。例えば、上記非磁性粉末を含む磁性層を形成する場合、上記非磁性粉末と混合する前に、強磁性六方晶フェライト粉末、結合剤、溶媒および任意に添加される添加剤を含む液(磁性液)の分散処理として、上記の第一の段階および第二の段階を行うことが好ましい。
第二の分散ビーズのビーズ径は、好ましくは、第一の分散ビーズのビーズ径の1/100以下であり、より好ましくは1/500以下である。また、第二の分散ビーズのビーズ径は、例えば第一の分散ビーズのビーズ径の1/10000以上であることができる。ただし、この範囲に限定されるものではない。例えば、第二の分散ビーズのビーズ径は、80〜1000nmの範囲であることが好ましい。一方、第一の分散ビーズのビーズ径は、例えば0.2〜1.0mmの範囲であることができる。
なお本発明および本明細書におけるビーズ径は、先に記載した粉末の平均粒子サイズの測定方法と同様の方法で測定される値とする。
上記の第二の段階は、質量基準で、第二の分散ビーズが、強磁性六方晶フェライト粉末の10倍以上の量で存在する条件下で行うことが好ましく、10倍〜30倍の量で存在する条件下で行うことがより好ましい。
一方、第一の段階における第一の分散ビーズ量も、上記範囲とすることが好ましい。
第二の分散ビーズは、第一の分散ビーズより密度が小さいビーズである。「密度」とは、分散ビーズの質量(単位:g)を体積(単位:cm3)で除して求められる。測定は、アルキメデス法によって行われる。第二の分散ビーズの密度は、好ましくは3.7g/cm3以下であり、より好ましくは3.5g/cm3以下である。第二の分散ビーズの密度は、例えば2.0g/cm3以上であってもよく、2.0g/cm3を下回ってもよい。密度の点から好ましい第二の分散ビーズとしては、ダイヤモンドビーズ、炭化ケイ素ビーズ、窒化ケイ素ビーズ等を挙げることができ、密度および硬度の点で好ましい第二の分散ビーズとしては、ダイヤモンドビーズを挙げることができる。
一方、第一の分散ビーズとしては、密度が3.7g/cm3超の分散ビーズが好ましく、密度が3.8g/cm3以上の分散ビーズがより好ましく、4.0g/cm3以上の分散ビーズが更に好ましい。第一の分散ビーズの密度は、例えば7.0g/cm3以下であってもよく、7.0g/cm3超でもよい。第一の分散ビーズとしては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等を用いることが好ましく、ジルコニアビーズを用いることがより好ましい。
分散時間は特に限定されるものではなく、用いる分散機の種類等に応じて設定すればよい。
(塗布工程、冷却工程、加熱乾燥工程、バーニッシュ(burnish)処理工程、硬化工程)
磁性層は、磁性層形成用組成物を、非磁性支持体表面上に直接塗布するか、または非磁性層形成用組成物と逐次または同時に重層塗布することにより形成することができる。各層形成のための塗布の詳細については、特開2010−231843号公報の段落0066を参照できる。
好ましい一態様では、上記磁気テープは、非磁性層形成用組成物と磁性層形成用組成物とを逐次重層塗布することにより製造することができる。逐次重層塗布を含む製造工程は、好ましくは次のように行うことができる。非磁性層を、非磁性層形成用組成物を非磁性支持体表面上に塗布することにより塗布層を形成する塗布工程、および形成した塗布層を加熱処理により乾燥させる加熱乾燥工程を経て形成する。そして形成された非磁性層の表面上に磁性層形成用組成物を塗布することにより塗布層を形成する塗布工程、および形成した塗布層を加熱処理により乾燥させる加熱乾燥工程を経て、磁性層を形成することができる。
一方、バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が形成された(または形成される)表面とは反対の表面側に形成される。好ましくは、バックコート層は、バックコート層形成用組成物を非磁性支持体表面上に塗布することにより塗布層を形成する塗布工程、および形成した塗布層を加熱処理により乾燥させる加熱乾燥工程を経て形成することができる。
好ましい一態様では、上記磁気テープは、バックコート層形成工程が、
非磁性粉末、結合剤、硬化剤および溶媒を含むバックコート層形成用組成物を非磁性支持体表面上に塗布することにより塗布層を形成する塗布工程、
上記塗布層を加熱処理により乾燥させる加熱乾燥工程、ならびに、
上記塗布層に硬化処理を施す硬化工程、
を含み、
上記塗布工程と加熱乾燥工程との間に、上記塗布層を冷却する冷却工程を含み、かつ
上記加熱乾燥工程と硬化工程との間に、上記塗布層表面をバーニッシュするバーニッシュ処理工程を含む製造方法により、製造することができる。
上記製造方法のバックコート層形成工程の中で冷却工程およびバーニッシュ処理工程を実施することは、バックコート層の表面において測定される対数減衰率を0.060以下とするための好ましい手段であると本発明者らは考えている。詳しくは、次の通りである。
塗布工程と加熱乾燥工程との間に塗布層を冷却する冷却工程を行うことは、バックコート層表面から遊離する粘着性成分を、上記塗布層の表面および/または表面近傍の表層部分に局在させることに寄与するのではないかと、本発明者らは推察している。これは、加熱乾燥工程前に上記塗布層を冷却することにより、加熱乾燥工程における溶媒揮発時に粘着性成分が上記塗布層の表面および/または表層部分に移行しやすくなるためではないかと考えられる。ただし、その理由は明らかではない。そして、粘着性成分が表面および/または表層部分に局在した塗布層の表面をバーニッシュ処理することにより、粘着性成分を除去することができると本発明者らは考えている。こうして粘着性成分を除去した後に硬化工程を行うことが、バックコート層の表面において測定される対数減衰率を0.060以下にすることにつながると、本発明者らは推察している。ただし、以上は推察に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
以下、一例として、上記磁気テープの製造方法の具体的態様を、図4に基づき説明する。ただし本発明は、下記具体的態様に限定されるものではない。
図4は、非磁性支持体の一方の表面側に非磁性層と磁性層とをこの順に有し、他方の表面側にバックコート層を有する磁気テープを製造する工程の具体的態様を示す工程概略図である。図4に示す態様では、非磁性支持体(長尺フィルム)を、送り出し部から送り出し、巻き取り部で巻き取る操作を連続的に行い、かつ図4に示されている各部または各ゾーンにおいて塗布、乾燥、配向等の各種処理を行うことにより、走行する非磁性支持体上の一方の表面側に非磁性層および磁性層を逐次重層塗布により形成し、他方の表面側にバックコート層を形成することができる。バックコート層形成工程に冷却ゾーンを含み、かつ硬化処理前にバーニッシュ処理工程を含む点以外は、塗布型磁気記録媒体の製造のために通常行われる製造工程と同様にすることができる。
送り出し部から送り出された非磁性支持体上には、第一の塗布部において、非磁性層形成用組成物の塗布が行われ、非磁性層形成用組成物の塗布層が形成される(非磁性層形成用組成物の塗布工程)。
第一の加熱処理ゾーンでは、形成された塗布層を加熱することにより、非磁性層形成用組成物の塗布層を乾燥させる(加熱乾燥工程)。加熱乾燥処理は、塗布工程後の塗布層を有する非磁性支持体を加熱雰囲気中に通過させることにより行うことができる。ここでの加熱雰囲気の雰囲気温度は、例えば60〜140℃程度である。ただし、溶媒を揮発させて塗布層を乾燥させることができる温度とすればよく、上記範囲に限定されるものではない。また任意に、加熱した気体を塗布層表面に吹き付けてもよい。以上の点は、後述する第二の加熱処理ゾーンにおける加熱乾燥工程および第三の加熱処理ゾーンにおける加熱乾燥工程についても、同様である。
次に、第二の塗布部において、第一の加熱処理ゾーンにて加熱乾燥工程を行い形成された非磁性層表面上に、磁性層形成用組成物が塗布され、磁性層形成用組成物の塗布層が形成される(磁性層形成用組成物の塗布工程)。
その後、磁性層形成用組成物の塗布層が湿潤状態にあるうちに、配向ゾーンにおいて塗布層中の強磁性六方晶フェライト粉末の配向処理が行われる。配向処理については、特開2010−231843号公報の段落0067の記載をはじめとする各種公知技術を適用することができる。先に記載したように、配向処理としては垂直配向処理を行うことが、XRD強度比を制御する観点から好ましい。配向処理については、先の記載も参照できる。
配向処理後の塗布層は、第二の加熱処理ゾーンにおいて加熱乾燥工程に付される。
次いで、第三の塗布部において、非磁性支持体の非磁性層および磁性層が形成された表面とは反対の表面上に、バックコート層形成用組成物が塗布されて塗布層が形成される(バックコート層形成用組成物の塗布工程)。
上記塗布工程後、冷却ゾーンにおいて、塗布工程で形成されたバックコート層形成用組成物の塗布層が冷却される(冷却工程)。例えば、上記塗布層を形成した非磁性支持体を冷却雰囲気中に通過させることにより、冷却工程を行うことができる。冷却雰囲気の雰囲気温度は、好ましくは−10℃〜0℃の範囲とすることができ、より好ましくは−5℃〜0℃の範囲とすることができる。冷却工程を行う時間(例えば、塗布層の任意の部分が冷却ゾーンに搬入されてから搬出されるまでの時間(以下において、「滞在時間」ともいう。))は特に限定されるものではない。滞在時間を長くするほど対数減衰率の値は小さくなる傾向があるため、0.060以下の対数減衰率が実現できるように必要に応じて予備実験を行う等して調整することが好ましい。なお冷却工程では、冷却した気体を塗布層表面に吹き付けてもよい。
その後、第三の加熱処理ゾーンにおいて、冷却工程後の塗布層を加熱処理し乾燥させる。
こうして、非磁性支持体の一方の表面側に、非磁性層および磁性層をこの順に有し、他方の表面側に加熱乾燥されたバックコート層形成用組成物の塗布層を有する磁気テープを得ることができる。ここで得られた磁気テープは、この後に、後述する各種処理を施した後に、製品磁気テープとなる。
得られた磁気テープは、巻き取り部に巻き取られた後に、製品磁気テープのサイズに裁断(スリット)される。スリットは、公知の裁断機を用いて行うことができる。
スリットされた磁気テープは、バックコート層形成用組成物に含まれている硬化剤の種類に応じた硬化処理(加熱、光照射等)を行う前に、加熱乾燥されたバックコート層形成用組成物の塗布層の表面をバーニッシュ処理される(加熱乾燥工程と硬化工程との間のバーニッシュ処理工程)。このバーニッシュ処理により、冷却ゾーンにおいて冷却されて塗布層表面および/または表層部分に移行した粘着性成分を除去できることが、対数減衰率を0.060以下にすることにつながると、本発明者らは推察している。ただし先に記載した通り、推察に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
バーニッシュ処理は、部材(例えば研磨テープ、または研削用ブレード、研削用ホイール等の研削具)により処理対象の表面を擦る処理であり、塗布型磁気記録媒体製造のために公知のバーニッシュ処理と同様に行うことができる。ただし、冷却工程および加熱乾燥工程を経た後、硬化工程前の段階でバーニッシュ処理を行うことは、従来行われていなかった。これに対し、上記段階でバーニッシュ処理を行うことにより、対数減衰率を0.060以下にすることができる。
バーニッシュ処理は、好ましくは、研磨テープによって処理対象の塗布層表面を擦る(研磨する)こと、研削具によって処理対象の塗布層表面を擦る(研削する)ことの一方または両方を行うことにより、実施することができる。研磨テープとしては、市販品を用いてもよく、公知の方法で作製した研磨テープを用いてもよい。また、研削具としては、固定式ブレード、ダイヤモンドホイール、回転式ブレード等の公知の研削用ブレード、研削用ホイール等を用いることができる。また、研磨テープおよび/または研削具によって擦られた塗布層表面をワイピング材によって拭き取るワイピング(wiping)処理を行ってもよい。好ましい研磨テープ、研削具、バーニッシュ処理およびワイピング処理の詳細については、特開平6−52544号公報の段落0034〜0048、図1および同公報の実施例を参照できる。バーニッシュ処理を強化するほど、対数減衰率の値は小さくなる傾向がある。バーニッシュ処理は、研磨テープに含まれる研磨剤として高硬度な研磨剤を用いるほど強化することができ、研磨テープ中の研磨剤量を増やすほど強化することができる。また、研削具として高硬度な研削具を用いるほどバーニッシュ処理を強化することができる。バーニッシュ処理条件に関しては、処理対象の塗布層表面と部材(例えば研磨テープまたは研削具)との摺動速度を速くするほど、バーニッシュ処理を強化することができる。上記摺動速度は、部材を移動させる速度および処理対象の磁気テープを移動させる速度の一方または両方を速くすることにより、速くすることができる。
上記のバーニッシュ処理(バーニッシュ処理工程)後、バックコート層形成用組成物の塗布層に硬化処理を施す。図4に示す態様では、バックコート層形成用組成物の塗布層には、バーニッシュ処理後、硬化処理前に、表面平滑化処理が施される。表面平滑化処理は、磁気テープの磁性層表面および/またはバックコート層表面の平滑性を高めるために行われる処理であり、カレンダ処理によって行うことが好ましい。カレンダ処理の詳細については、例えば特開2010−231843号公報の段落0026を参照できる。カレンダ処理を強化するほど、磁気テープ表面を平滑化すること(即ち、磁性層表面粗さRaの値を小さくすること)ができる。カレンダ処理は、カレンダロールの表面温度(カレンダ温度)を高くするほど、および/または、カレンダ圧力を大きくするほど、強化することができる。
その後、バックコート層形成用組成物の塗布層に、この塗布層に含まれる硬化剤の種類に応じた硬化処理を施す(硬化工程)。硬化処理は、加熱処理、光照射等の上記塗布層に含まれる硬化剤の種類に応じた処理によって行うことができる。硬化処理条件は特に限定されるものではなく、塗布層形成に用いたバックコート層形成用組成物の処方、硬化剤の種類、塗布層の厚み等に応じて適宜設定すればよい。例えば、硬化剤としてポリイソシアネートを含むバックコート層形成用組成物を用いて塗布層を形成した場合には、硬化処理は加熱処理であることが好ましい。なおバックコート層以外の層に硬化剤が含まれる場合、その層の硬化反応も、ここでの硬化処理により進行させることもできる。または別途、硬化工程を設けてもよい。なお硬化工程後に、更にバーニッシュ処理を行ってもよい。
以上により、本発明の一態様にかかる磁気テープを得ることができる。ただし上記の製造方法は例示であって、磁性層表面粗さRa、XRD強度比、垂直方向角型比、バックコート層表面の対数減衰率を調整可能な任意の手段によって、それらの値をそれぞれ上記範囲に制御することができ、そのような態様も本発明に包含される。磁気テープは、通常、磁気テープカートリッジに収容され、磁気テープカートリッジが磁気テープ装置(ドライブ)に装着される。磁気テープには、ドライブにおいてヘッドトラッキングサーボを行うことを可能とするために、公知の方法によってサーボパターンを形成することもできる。ドライブは、磁気テープカートリッジに搭載された磁気テープと、情報の記録および/または再生のための1つ以上の磁気ヘッドと、を少なくとも含む。ドライブにおいて磁気テープを走行させて、磁気テープカートリッジのリールからの磁気テープの送り出しおよび巻き取りを繰り返しても、本発明の一態様にかかる磁気テープであれば、エッジダメージの発生を抑制することができる。また、ドライブにおける磁気テープの走行速度を高速にするほど、情報の記録および記録した情報の再生を、短時間で行うことが可能となる。ここで磁気テープの走行速度とは、ドライブにおける磁気テープと磁気ヘッドとの相対速度をいい、通常、ドライブの制御部において設定される。磁気テープの走行速度を高速にするほど、磁性層の表面とバックコート層の表面との接触状態が不安定になる傾向があり、エッジダメージが発生しやすくなる。このような場合であっても、本発明の一態様にかかる磁気テープであれば、エッジダメージの発生を抑制することができる。本発明の一態様にかかる磁気テープは、例えば、磁気テープの走行速度が3m/秒以上(例えば3〜20m/秒)のドライブにおける使用に好適である。
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の「部」、「%」の表示は、特に断らない限り、「質量部」、「質量%」を示す。また、以下に記載の工程および評価は、特記しない限り、雰囲気温度23℃±1℃の環境において行った。
1.磁気テープの作製
[実施例1]
各層形成用組成物の処方を、下記に示す。
<磁性層形成用組成物の処方>
(磁性液)
板状強磁性六方晶フェライト粉末(M型バリウムフェライト):100.0部
(活性化体積:1500nm3
オレイン酸:2.0部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン製MR−104):10.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:4.0部
(重量平均分子量:70000、SO3Na基:0.07meq/g)
アミン系ポリマー(ビックケミー社製DISPERBYK−102):6.0部
メチルエチルケトン:150.0部
シクロヘキサノン:150.0部
(研磨剤液)
α−アルミナ:6.0部
(BET比表面積:19m2/g、モース硬度:9)
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:0.6部
(重量平均分子量:70000、SO3Na基:0.1meq/g)
2,3−ジヒドロキシナフタレン:0.6部
シクロヘキサノン:23.0部
(突起形成剤液)
コロイダルシリカ:2.0部
(平均粒子サイズ:80nm)
メチルエチルケトン:8.0部
(潤滑剤および硬化剤液)
ステアリン酸:3.0部
ステアリン酸アミド:0.3部
ステアリン酸ブチル:6.0部
メチルエチルケトン:110.0部
シクロヘキサノン:110.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L):3.0部
<非磁性層形成用組成物の処方>
非磁性無機粉末 α酸化鉄:100.0部
(平均粒子サイズ:10nm、BET比表面積:75m2/g)
カーボンブラック:25.0部
(平均粒子サイズ:20nm)
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:18.0部
(重量平均分子量:70000、SO3Na基含有量:0.2meq/g)
ステアリン酸:1.0部
シクロヘキサノン:300.0部
メチルエチルケトン:300.0部
<バックコート層形成用組成物の処方>
非磁性無機粉末 α酸化鉄:80.0部
(平均粒子サイズ:0.15μm、BET比表面積:52m2/g)
カーボンブラック:20.0部
(平均粒子サイズ:20nm)
塩化ビニル共重合体:13.0部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂:6.0部
フェニルホスホン酸:3.0部
シクロヘキサノン:155.0部
メチルエチルケトン:155.0部
ステアリン酸:3.0部
ステアリン酸ブチル:3.0部
ポリイソシアネート:5.0部
シクロヘキサノン:200.0部
<磁性層形成用組成物の調製>
磁性層形成用組成物を、以下の方法によって調製した。
上記磁性液の各種成分を、バッチ式縦型サンドミルによりビーズ径0.5mmのジルコニアビーズ(第一の分散ビーズ、密度6.0g/cm3)を使用して24時間分散し(第一の段階)、その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過することにより分散液Aを調製した。ジルコニアビーズは、強磁性六方晶バリウムフェライト粉末に対して、質量基準で10倍量用いた。
その後、分散液Aをバッチ式縦型サンドミルにより表1に示すビーズ径のダイヤモンドビーズ(第二の分散ビーズ、密度3.5g/cm3)を使用して1時間分散し(第二の段階)、遠心分離機を用いてダイヤモンドビーズを分離した分散液(分散液B)を調製した。下記磁性液は、こうして得られた分散液Bである。ダイヤモンドビーズは、強磁性六方晶バリウムフェライト粉末に対して、質量基準で10倍量用いた。
研磨剤液は、上記の研磨剤液の各種成分を混合してビーズ径0.3mmのジルコニアビーズとともに横型ビーズミル分散機に入れ、ビーズ体積/(研磨剤液体積+ビーズ体積)が80%になるように調整し、120分間ビーズミル分散処理を行い、処理後の液を取り出し、フロー式の超音波分散ろ過装置を用いて、超音波分散ろ過処理を施した。こうして研磨剤液を調製した。
調製した磁性液、研磨剤液、上記の突起形成剤液、ならびに潤滑剤および硬化剤液をディゾルバー攪拌機に導入し、周速10m/秒で30分間攪拌した後、フロー式超音波分散機により流量7.5kg/分で3パス処理した後に、孔径1μmのフィルタでろ過して磁性層形成用組成物を調製した。
先に記載した強磁性六方晶フェライト粉末の活性化体積は、磁性層形成用組成物の調製に用いた強磁性六方晶フェライト粉末と同じ粉末ロットの粉末を使用して測定し算出した値である。測定は、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで行い、先に記載した関係式から活性化体積を算出した。測定は23℃±1℃の環境で行った。
<非磁性層形成用組成物の調製>
上記の非磁性層形成用組成物の各種成分を、バッチ式縦型サンドミルによりビーズ径0.1mmのジルコニアビーズを使用して24時間分散し、その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過することにより、非磁性層形成用組成物を調製した。
<バックコート層形成用組成物の調製>
上記のバックコート層形成用組成物の各種成分のうち潤滑剤(ステアリン酸およびステアリン酸ブチル)、ポリイソシアネートならびにシクロヘキサノン200.0部を除いた成分をオープンニーダにより混練および希釈した後、横型ビーズミル分散機によりビーズ径1mmのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、ローター先端周速10m/秒で1パス滞留時間を2分間とし、12パスの分散処理に供した。その後、上記の残りの成分を添加してディゾルバーで撹拌し、得られた分散液を1μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過することにより、バックコート層形成用組成物を調製した。
<磁気テープの作製方法>
図4に示す具体的態様により磁気テープを作製した。詳しくは、次の通りとした。
厚み4.50μmのポリエチレンナフタレート製支持体を送り出し部から送り出し、一方の表面に、第一の塗布部において乾燥後の厚みが1.00μmになるように非磁性層形成用組成物を塗布し、第一の加熱処理ゾーン(雰囲気温度100℃)にて乾燥させて塗布層を形成した。
その後、第二の塗布部において乾燥後の厚みが0.10μmになるように磁性層形成用組成物を非磁性層上に塗布し塗布層を形成した。形成した塗布層が湿潤状態にあるうちに配向ゾーンにおいて表1に示す強度の磁場を上記塗布層の表面に対し垂直方向に印加し垂直配向処理を施した。その後、上記塗布層を、第二の加熱処理ゾーン(雰囲気温度100℃)にて乾燥させた。
その後、第三の塗布部において、上記ポリエチレンナフタレート製支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対の表面上に、乾燥後の厚みが0.50μmになるようにバックコート層形成用組成物を塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層が湿潤状態にあるうちに雰囲気温度0℃に調整した冷却ゾーンに表1に示す滞在時間で通過させて冷却工程を行った。その後、第三の加熱処理ゾーン(雰囲気温度100℃)にて上記塗布層を乾燥させた。
こうして得られた磁気テープを1/2インチ(0.0127メートル)幅にスリットした後、バックコート層形成用組成物の塗布層表面のバーニッシュ処理およびワイピング処理を行った。バーニッシュ処理およびワイピング処理は、特開平6−52544号公報の図1に記載の構成の処理装置において、研磨テープとして市販の研磨テープ(富士フイルム社製商品名MA22000、研磨剤:ダイヤモンド/Cr23/ベンガラ)を使用し、研削用ブレードとして市販のサファイアブレード(京セラ社製、幅5mm、長さ35mm、先端角度60度)を使用し、ワイピング材として市販のワイピング材(クラレ社製商品名WRP736)を使用して行った。処理条件は、特開平6−52544号公報の実施例12における処理条件を採用した。
上記バーニッシュ処理およびワイピング処理後、金属ロールのみから構成されるカレンダロールで、速度80m/分かつ線圧300kg/cm(294kN/m)にて、表1に示す表面温度のカレンダロールを用いてカレンダ処理(表面平滑化処理)を行った。
その後、雰囲気温度70℃の環境で36時間硬化処理(加熱処理)を行い磁気テープを得て、得られた磁気テープの磁性層に市販のサーボライターによってサーボパターンを形成した。
以上により、実施例1の磁気テープを得た。
[実施例2〜8、比較例1〜8、参考例1、2]
表1に示す各種項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
表1中、分散ビーズの欄および時間の欄に「なし」と記載されている比較例および参考例については、磁性液分散処理において第二の段階を実施せずに磁性層形成用組成物を調製した。
表1中、垂直配向処理磁場強度の欄に「なし」と記載されている比較例および参考例については、配向処理を行わずに磁性層を形成した。
表1中、バックコート層形成工程の冷却ゾーン滞在時間の欄および硬化処理前バーニッシュ処理の欄に「未実施」と記載されている比較例および参考例では、バックコート層形成工程に冷却ゾーンを含まず、かつバーニッシュ処理およびワイピング処理を行わない製造工程により磁気テープを作製した。
2.各種評価
(1)XRD強度比
作製した磁気テープから、テープ試料を切り出した。
切り出したテープ試料について、薄膜X線回折装置(リガク社製SmartLab)を用いて磁性層表面にX線を入射させて、先に記載した方法によりIn−Plane XRDを行った。
In−Plane XRDにより得られたX線回折スペクトルから、六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)および(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)を求め、XRD強度比(Int(110)/Int(114))を算出した。
(2)垂直方向角型比
作製した磁気テープについて、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて先に記載した方法により垂直方向角型比を求めた。
(3)磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRa
原子間力顕微鏡(AFM、Veeco社製Nanoscope4)をタッピングモードで用いて、磁気テープの磁性層表面において測定面積40μm×40μmの範囲を測定し、中心線平均表面粗さRaを求めた。探針としてはBRUKER社製RTESP−300を使用し、スキャン速度(探針移動速度)は40μm/秒、分解能は512pixel×512pixelとした。
(4)バックコート層表面の対数減衰率
測定装置として、株式会社エー・アンド・デイ製剛体振り子型物性試験器RPT−3000W(振り子:株式会社エー・アンド・デイ製剛体振り子FRB−100、おもり:なし、丸棒型シリンダエッジ:株式会社エー・アンド・デイ製RBP−040、基板:ガラス基板、基板昇温速度5℃/min)を用いて、先に記載した方法により実施例、比較例および参考例の各磁気テープのバックコート層表面の対数減衰率を求めた。
ガラス基板としては、市販のスライドグラスを25mm(短辺)×50mm(長辺)のサイズにカットしたものを使用した。磁気テープの長手方向がガラス基板の短辺方向と平行になるように磁気テープをガラス基板の中央に載せた状態で、ガラス基板上の磁気テープの四隅を固定用テープ(東レ・デュポン製カプトンテープ)でガラス基板と固定した。その後、ガラス基板から食み出た部分の磁気テープをカットした。こうして、測定用試料が、ガラス基板上に図1に示すように4箇所で固定されて載置された。吸着時間を1秒間かつ測定間隔を7〜10秒とし、86回目の測定間隔について変位−時間曲線を作成し、この曲線を用いて対数減衰率を求めた。測定は、相対湿度約50%の環境下にて行った。
(5)エッジダメージの評価
実施例、比較例および参考例の各磁気テープ(磁気テープ全長500m)を収容した磁気テープカートリッジを、IBM社製LTO−G7(Linear Tape−Open Generation 7)ドライブにセットし、磁気テープを、磁性層表面と磁気ヘッドとを接触させ摺動させながら、テンション0.6N、走行速度5m/秒で1500往復走行させた。
上記走行後の磁気テープカートリッジを、リファレンスドライブ(IBM社製LTO−G7ドライブ)にセットし、磁気テープを走行させて記録再生を行った。走行中の再生信号を外部AD(Analog/Digital)変換装置に取り込み、磁気テープの一方のエッジに最も近いトラックおよび他方のエッジに最も近いトラックでそれぞれ、再生信号振幅が平均(各トラックでの測定値の平均)に対して70%以上低下した信号をミッシングパルスとして、その発生頻度(発生回数)を磁気テープ全長で除して、磁気テープの単位長さ当たり(1m当たり)のミッシングパルス発生頻度(単位:回/m)として求めた。
エッジダメージが重度に発生しているほど、上記方法で求められるミッシングパルス発生頻度は増加する。したがって、上記方法で求められるミッシングパルス発生頻度は、エッジダメージの指標となる。ミッシングパルス発生頻度が10.0回/m以下であれば、エッジダメージの発生が実用上十分なレベルまで抑制されていると判断することができる。なおエッジダメージが発生する位置は一定ではないため、本評価では、一方のエッジに最も近いトラックでの測定結果と、他方のエッジに最も近いトラックでの測定結果の中で、より大きい測定結果をミッシングパルス発生頻度として採用し、表1に示した。
以上の結果を、表1に示す。
参考例1および2と比較例1〜8との対比から、磁性層表面粗さRaが1.8nm以下の磁気テープ(比較例1〜8)において、エッジダメージが顕著に発生することが確認できる。
更に、実施例1〜8と比較例1〜8との対比から、磁性層表面粗さRaが1.8nm以下の磁気テープにおけるエッジダメージの発生を、XRD強度比、垂直方向角型比およびバックコート層表面の対数減衰率をそれぞれ先に記載した範囲とすることにより抑制できることが確認できる。
本発明は、バックアップテープ等の磁気テープの技術分野において有用である。

Claims (5)

  1. 非磁性支持体の一方の表面側に強磁性粉末、非磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の表面側に非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する磁気テープであって、
    前記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、
    前記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは、1.8nm以下であり、
    In−Plane法を用いた前記磁性層のX線回折分析により求められる六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比、Int(110)/Int(114)、は0.5以上4.0以下であり、
    前記磁気テープの垂直方向角型比は、0.65以上1.00以下であり、かつ
    前記バックコート層の表面において振り子粘弾性試験により求められる対数減衰率は、0.060以下である磁気テープ。
  2. 前記対数減衰率は、0.010以上0.060以下である、請求項1に記載の磁気テープ。
  3. 前記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは、1.2nm以上1.8nm以下である、請求項1または2に記載の磁気テープ。
  4. 前記垂直方向角型比は、0.65以上0.90以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  5. 前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
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