JP6663174B2 - 薬剤組成物、害虫防除用線香、及び加熱蒸散用製剤 - Google Patents

薬剤組成物、害虫防除用線香、及び加熱蒸散用製剤 Download PDF

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Description

本発明は、揮散性薬剤を含有する薬剤組成物、害虫防除用線香、及び加熱蒸散用製剤に関する。
揮散性薬剤を含有する薬剤組成物を使用した製品として、例えば、害虫防除用線香(蚊取線香等)、加熱蒸散用製剤、仏壇線香、加熱蒸散芳香剤等が挙げられる。これらの製品は、燻煙又は加熱蒸散により、薬剤組成物に含まれる揮散性薬剤を処理対象の空間に揮散させて使用するものである。例えば、揮散性薬剤として害虫防除成分を含有する害虫防除製品は、空間に揮散した害虫防除成分が、当該空間に存在する害虫をノックダウン又は致死させ、さらには当該空間から害虫を排除又は忌避するように作用する。この種の害虫防除製品には、例えば、エムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン等の常温で揮散性を有するピレスロイド系殺虫成分が揮散性薬剤として含まれている。また、最近では、揮散性薬剤として香料成分等の芳香性薬剤を含有させた芳香製品も増加しており、例えば、香り付き線香や、加熱式アロマディフューザー等が市販されている。このような揮散性薬剤を含有した製品においては、殺虫成分や香料成分、さらには煙やミスト等に起因する臭いや刺激を低減した製品が求められる。
従来、刺激を低減した害虫防除製品として、燃焼時に発生する煙の刺激臭を少なくした蚊取線香があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の蚊取線香は、白檀エキス、伽羅エキス等の香料成分を配合したものであり、蚊取線香を燃焼させたときに白檀や伽羅の香りを放出し、燃焼と同時に発生する刺激臭を抑制しようとするものである。
特開平10−167903号公報
しかしながら、特許文献1の蚊取線香は、燃焼時に発生する刺激臭を白檀エキス、伽羅エキス等の香料成分でマスキングしているに過ぎず、刺激を根本的に低減又は緩和するものではない。また、特許文献1の蚊取線香は、主に、支燃剤に含まれる木粉に由来する刺激臭を少なくすることを目的としており、揮散性薬剤である殺虫成分に起因する刺激を低減することは想定していない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、害虫防除用線香、加熱蒸散用製剤等の害虫防除製品や、仏壇線香、加熱蒸散芳香剤等の芳香製品を使用するにあたって、殺虫成分、香料成分、煙、ミスト等に起因する臭いや刺激を根本的に低減又は緩和するための新規且つ有用な薬剤組成物を提供することを目的とする。また、そのような薬剤組成物を用いた製品として、特に、害虫防除用線香、及び加熱蒸散用製剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る薬剤組成物の特徴構成は、
揮散性薬剤を含有する薬剤組成物であって、
使用時の刺激を緩和する刺激緩和剤として、下記の式(I)
Figure 0006663174
(R:水素又はアルキル基,R:アルキル基)
で表されるN−フェニルアルキルアミド誘導体を含有することにある。
本発明者らは、薬剤組成物に含まれる揮散性薬剤(殺虫成分、香料成分等)に起因する臭いや刺激、さらには燻煙時に発生する煙、加熱蒸散時に発生するミスト等に起因する臭いや刺激を低減するため、有効となる物質を探索していたところ、従来、解熱剤や鎮痛剤の成分として使用されていたN−フェニルアルキルアミド誘導体が、薬剤組成物の臭いや刺激に対して優れた低減効果又は緩和効果を発揮し得ることを新たに見出した。そこで、本発明者らは、この新たな知見に基づき、N−フェニルアルキルアミド誘導体を、薬剤組成物の使用時の刺激を緩和する刺激緩和剤として使用することを着想し、本発明を創作するに至った。
すなわち、本構成の薬剤組成物によれば、刺激緩和剤として、上記の式(I)で表されるN−フェニルアルキルアミド誘導体を含有しているため、燻煙時に発生する煙やミストに起因する臭いや刺激の他、殺虫成分や香料成分に起因する臭いや刺激についても効果的に低減又は緩和することが可能となる。従って、本発明の薬剤組成物は、低刺激性の害虫防除製品や芳香製品の原料として適しており、本発明の薬剤組成物を使用した各種製品は、乳幼児や刺激に敏感な人でも、安全且つ快適に使用することができる。
本発明に係る薬剤組成物において、
前記刺激緩和剤は、下記の式(II)
Figure 0006663174
で表されるN−フェニルアセトアミド、又は、下記の式(III)
Figure 0006663174
で表されるN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミドであることが好ましい。
本構成の薬剤組成物によれば、刺激緩和剤として上記の適切な化合物を含有しているため、本発明の薬剤組成物を使用して害虫防除製品や芳香製品を構成した場合、燻煙時に発生する煙やミスト等に起因する臭いや刺激、さらには殺虫成分や香料成分等に起因する臭いや刺激をより効果的に低減又は緩和することができる。
本発明に係る薬剤組成物において、
前記刺激緩和剤を0.0001〜3重量%含有することが好ましい。
本構成の薬剤組成物によれば、刺激緩和剤を上記の適量な範囲で含むものであるため、必要且つ十分な刺激低減効果又は緩和効果を得ることができる。
本発明に係る薬剤組成物において、
低臭性溶剤として、安息香酸ベンジル、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、クエン酸トリエチル、及び3−メトキシ−3−メチルブタノールからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含有することが好ましい。
本構成の薬剤組成物によれば、上記の適切な低臭性溶剤を含有しているため、溶剤の臭気によって刺激緩和剤の効果が損なわれることがなく、確実に臭いや刺激を低減又は緩和することができる。
本発明に係る薬剤組成物において、
前記低臭性溶剤を0.01〜3重量%含有することが好ましい。
本構成の薬剤組成物によれば、低臭性溶剤を上記の適量な範囲で含むものであるため、薬剤組成物を用いた製品中にN−フェニルアルキルアミド誘導体を万遍なく分散させることができ、しかも十分な刺激低減効果又は緩和効果を得ることができる。
本発明に係る薬剤組成物において、
前記揮散性薬剤は、害虫防除成分であることが好ましい。
本構成の薬剤組成物によれば、揮散性薬剤として害虫防除成分を含むため、刺激緩和剤による刺激低減効果又は緩和効果を特に実感し易く、低刺激性の害虫防除製品の原料として適している。
上記課題を解決するための本発明に係る害虫防除用線香の特徴構成は、
上記の薬剤組成物を使用したことにある。
本構成の害虫防除用線香によれば、本発明の薬剤組成物を使用して構成されるため、燻煙時に発生する煙や殺虫成分に起因する臭いや刺激を効果的に低減又は緩和することができる。このように、本構成の害虫防除用線香は、低刺激性の害虫防除製品として、乳幼児や刺激に敏感な人でも、安全且つ快適に使用することができる。
本発明に係る害虫防除用線香において、
支燃剤として、木粉、除虫菊抽出粕粉、柑橘類表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、木炭粉、素灰、及びタルクからなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
本構成の害虫防除用線香によれば、上記の適切な支燃剤を含有しているため、通常の蚊取線香と同様の使い方ができるとともに、支燃剤から発生する独特の臭いが刺激緩和剤によって低減又は緩和され、臭いや刺激の少ない害虫防除用線香として商品価値が高いものとなる。
本発明に係る害虫防除用線香において、
粘結剤として、タブ粉、澱粉、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
本構成の害虫防除用線香によれば、上記の適切な粘結剤を含有しているため、通常の蚊取線香と同様の使い方ができるとともに、刺激緩和剤の効果が阻害されず、確実に臭いや刺激を低減又は緩和することができる。
上記課題を解決するための本発明に係る加熱蒸散用製剤の特徴構成は、
上記の薬剤組成物を使用したことにある。
本構成の加熱蒸散用製剤によれば、本発明の薬剤組成物を使用して構成されるため、加熱蒸散時に発生するミストや殺虫成分又は香料成分に起因する臭いや刺激を効果的に低減又は緩和することができる。このように、本構成の加熱蒸散用製剤は、低刺激性の害虫防除製品又は芳香製品として、乳幼児や刺激に敏感な人でも、安全且つ快適に使用することができる。
本発明の薬剤組成物を使用した実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されることは意図しない。
本発明は、従来、解熱剤や鎮痛剤として使用されていたN−フェニルアルキルアミド誘導体が、揮散性薬剤を含有する薬剤組成物から発生する臭いや刺激に対して優れた低減効果又は緩和効果を発揮し得ることを新たに見出し、これを害虫防除製品や芳香製品の刺激緩和剤として使用することを着想したものである。以下、代表的な害虫防除製品である害虫防除用線香、及び加熱蒸散用製剤を例に挙げて、本発明の薬剤組成物の特徴を説明する。
〔害虫防除用線香〕
害虫防除用線香は、本発明の薬剤組成物に適量の水を加えて混練し、これを渦巻状や棒状等の適切な形状に成形した後、自然乾燥又は加熱乾燥することにより得られる。害虫防除用線香に使用する薬剤組成物には、刺激緩和剤の他、低臭性溶剤、揮散性薬剤、支燃剤、粘結剤、その他の成分が含まれる。このうち、揮散性薬剤は、害虫防除用線香では代表的には殺虫成分や香料成分として使用されるが、ディート、ジメチルフタレート、p−メンタン−3,8−ジオール等の忌避成分、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネート等の抗菌成分、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール等の防黴成分、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α−ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等の芳香成分も使用可能であり、これらの各成分も揮散性薬剤に含まれる。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコール(シス−3−ヘキセノール)や青葉アルデヒドも揮散性薬剤として使用可能である。以下、薬剤組成物を構成する成分について説明する。
<殺虫成分>
害虫防除用線香に含まれる揮散性薬剤であり、有効成分である殺虫成分は、ピレスロイド系殺虫成分が好適に使用される。ピレスロイド系殺虫成分を例示すると、ピレトリン、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、エムペントリン、テラレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート等が挙げられる。ピレスロイド系殺虫成分の化学構造中に不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体又は幾何異性体が存在する場合は、何れの異性体も使用可能である。これらのピレスロイド系殺虫成分は、単独又は二種以上の混合物として使用することができる。
ピレスロイド系殺虫成分の含有量は、薬剤組成物全体の重量(本実施形態の場合、害虫防除用線香全体の重量)に対して、0.005〜2重量%、好ましくは0.01〜1.5重量%、より好ましくは0.01〜1重量%とする。ピレスロイド系殺虫成分の含有量が0.005重量%未満の場合、十分な殺虫効果が得られない可能性がある。ピレスロイド系殺虫成分の含有量が2重量%を超える場合、ピレスロイド系殺虫成分は直接燃焼に寄与する成分ではないため、立ち消えが発生する可能性がある。
<香料成分>
害虫防除用線香は、通常、線香に相応しい香りが付けられているが、最近では、アロマ効果やリラックス効果を得ることを目的として、揮散性を有する様々な香料成分が加えられることがある。本発明の薬剤組成物においても、揮散性薬剤として様々な香料成分を添加することができる。薬剤組成物を害虫防除用線香に使用する場合、燻煙時に香りが空間の隅々まで拡がるように、香料成分として加熱拡散香料を使用することが好ましい。加熱拡散香料とは、燻煙時に香料成分が効率よく広範囲に揮散し、香り立ちが高まる性質を有する香料であり、250〜400℃に沸点を有する香料である。加熱拡散香料を例示すると、ガラクソリド、ムスクケトン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレート、メチルアトラレート、ヘキシルサリシレート、トリシクロデセニルアセテート、オレンジャークリスタル、アンブロキサン、キャシュメラン、カロン、ヘリオトロピン、ジヒドロインデニル−2,4−ジオキサン、インドール、メチルセドリルケトン、メチルβ−ナフチルケトン、メチルジヒドロジャスモネート、ローズフェノン、クマリン、バニリン、スチラックスレジノイド、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリチレート、イオノン、リリーアルデヒド、イソロンギホラノン、アセト酢酸−m−キシリダイド、アセト酢酸−o−トルイダイド、アセトシリンゴン、アセチルトリエチルシトレート、ベンゾフェノン、ベンジルカプリレート、ベンジルシンナメート、ベンジルオイゲノール、ベンジルラウレート、ベンジルメチルチグレート、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルフェニルアセテート、ゲラニルアントラニレ−ト、ゲラニルヘキサノエート、ゲラニルシクロペンタノン、ゲラニルフェニルアセテート、ヘキシルフェニルアセテート、イコサン、インダン、シンナミルブチレート、シンナミルフェニルアセテート、ヘキセニルベンゾエート、シトラールジエチルアセタール、イソアミルベンゾエート、リナリルオクタノエート、1−メンチルサリチレート、シトロネリルアントラニレート、ジメチルフェネチルカルビニルイソブチレート、ジフェニルオキシド、ドデシルブチレート、エチルバニレート、エチルバニリン、メンチルイソバレレート、メトキシエチルフェニルグリシデート、メチル2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゾエート、ネロリジルアセテート、ネリルイソバレレート、オクテニルシクロペンタノン、オクチルカプリレート、フェネチルイソアミルエーテル、フェネチルオクタノエート、フェネチルフェニルアセテート、エチルバニリンアセテート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、エチルヘキシルパルミテート、オイゲニルベンゾエート、ファルネソール、ファルネシルアセテート、ファルネシルメチルエーテル、ホルムアルデヒドシクロドデシルメチルアセタール、ホルミルエチルテトラメチルテトラリン、フルフリルベンゾエート、γ−ドデカラクトン、フェネチルサリチレート、フェノキシエチルプロピオネート、フェニルベンゾエート、フェニルジスルフィド、サンタリルブチレート、テトラヒドロ−プソイド−イオノン、テオブロミン、バレンセン等が挙げられる。加熱拡散香料の化学構造中に不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体又は幾何異性体が存在する場合は、何れの異性体も使用可能である。これらの加熱拡散香料は、単独又は二種以上の混合物として使用することができる。
加熱拡散香料の含有量は、薬剤組成物全体の重量(本実施形態の場合、害虫防除用線香全体の重量)に対して、0.001〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%とする。加熱拡散香料の含有量が0.001重量%未満の場合、十分に芳香を醸し出すことができない可能性がある。加熱拡散香料の含有量が2重量%を超える場合、臭いや刺激が強くなり過ぎて刺激緩和剤の効果が十分に及ばない可能性がある。
<支燃剤・粘結剤>
支燃剤は、害虫防除用線香を安定燃焼させるために配合される。また、支燃剤は、害虫防除用線香の増量剤としても機能する。粘結剤は、原料を結合して固めるバインダーとして配合される。支燃剤及び粘結剤は、害虫防除用線香の基材となるものである。好適な支燃剤を例示すると、木粉、除虫菊抽出粕粉、柑橘類表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、木炭粉、素灰、タルク等が挙げられる。これらの支燃剤は、単独又は二種以上の混合物として使用することができる。好適な粘結剤を例示すると、タブ粉、澱粉(α澱粉、タピオカ粉等)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの粘結剤は、単独又は二種以上の混合物として使用することができる。なお、支燃剤及び粘結剤の含有量は、薬剤組成物全体の重量(本実施形態の場合、害虫防除用線香全体の重量)に対する支燃剤及び粘結剤の合計含有量として、通常90重量%以上とされる。
<刺激緩和剤>
害虫防除用線香の使用時(燻煙時又は加熱蒸散時)の刺激を緩和するため、本発明の薬剤組成物は、刺激緩和剤として、N−フェニルアルキルアミド誘導体を含有する。N−フェニルアルキルアミド誘導体は、下記の式(I)
Figure 0006663174
で表される化合物である。ここで、Rは水素又はアルキル基であり、アルキル基である場合は炭素数が1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。Rはアルキル基であり、炭素数が1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。Rがアルキル基である場合、R及びRは同一のアルキル基でもよく、異なるアルキル基でもよい。N−フェニルアルキルアミド誘導体は、芳香族環にアミド基が直接結合した化学構造を有しており、このような特定の化学構造が、害虫防除用線香の燻煙時に発生する煙や害虫防除用線香に含まれる殺虫成分に対して、本来の殺虫作用を阻害することなく拮抗作用を奏し、臭いや刺激のみを低減又は緩和しているものと推測される。
N−フェニルアルキルアミド誘導体のうち、害虫防除製品の臭いや刺激に対して特に優れた低減効果又は緩和効果を示す好ましい化合物は、式(I)において、Rが水素であり、Rがメチル基である下記の式(II)
Figure 0006663174
で表されるN−フェニルアセトアミド(別名「アセトアニリド」)、又は、式(I)において、Rがメチル基であり、Rがブチル基である下記の式(III)
Figure 0006663174
で表されるN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミド(別名「GARDAMIDE」)である。
詳細については後述の実施例において説明するが、N−フェニルアセトアミド又はN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミドを所定の処方で薬剤組成物に含有し、この薬剤組成物を用いて害虫防除用線香を構成すると、害虫防除用線香の燻煙時に発生する煙や害虫防除用線香に含まれる殺虫成分に起因する臭いや刺激を効果的に低減又は緩和する効果が認められた。なお、刺激緩和剤は、薬剤組成物中での揮散性薬剤の分散剤又は保持剤としても機能する。
N−フェニルアルキルアミド誘導体の含有量は、薬剤組成物全体の重量に対して、0.0001〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%とする。上記の含有量であれば、害虫防除用線香の燻煙時に発生する煙に起因する臭いや刺激、さらには害虫防除用線香に含まれる殺虫成分に起因する臭いや刺激に対して、必要且つ十分な低減効果又は緩和効果を得ることができる。N−フェニルアルキルアミド誘導体の含有量が0.0001重量%未満の場合、刺激緩和剤としての効果が十分に及ばない可能性がある。N−フェニルアルキルアミド誘導体の含有量が3重量%を超える場合、刺激緩和剤としての効果は勿論得られるが、臭いや刺激が十分に緩和され、刺激添加剤をそれ以上添加する意味合いが薄れ、経済的にもメリットが得られない。
<低臭性溶剤>
本発明の薬剤組成物を調製するにあたっては、低臭性溶剤を使用することが好ましい。低臭性溶剤とは、刺激臭のある物質(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)を含まない溶剤である。低臭性溶剤は元々刺激が少ない物質であるため、薬剤組成物に低臭性溶剤を含有させても、揮散性薬剤の効果は低下せず、しかも刺激緩和剤の分散剤又は保持剤としての効力が弱められることも少ない。好適な低臭性溶剤を例示すると、安息香酸ベンジル、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、クエン酸トリエチル、3−メトキシ−3−メチルブタノール等が挙げられる。これらの低臭性溶剤は、単独又は二種以上の混合物として使用することができる。
低臭性溶剤の含有量は、薬剤組成物全体の重量(本実施形態の場合、害虫防除用線香全体の重量)に対して、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%とする。上記の含有量であれば、害虫防除用線香の中にN−フェニルアルキルアミド誘導体を万遍なく分散させることができ、しかも十分な刺激低減効果又は緩和効果を得ることができる。低臭性溶剤の含有量が0.01重量%未満の場合、薬剤組成物中へのN−フェニルアルキルアミド誘導体の分散が不十分となる可能性がある。低臭性溶剤の含有量が3重量%を超える場合、刺激緩和剤としての効果は勿論得られるが、害虫防除用線香の燃焼性が高まって煙が過剰に発生し、刺激緩和剤の効果が十分に及ばない場合がある。
<その他の成分>
本発明の薬剤組成物には、その他の成分として、防黴剤、防腐剤、安定剤、効力増強剤、消臭剤等を含有させることも可能である。防黴剤又は防腐剤を例示すると、デヒドロ酢酸塩、ソルビン酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩等が挙げられる。安定剤を例示すると、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2−ターシャリーブチル−6−(3−ターシャリーブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル 3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。効力増強剤を例示すると、ピペロニルブトキサイド、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。また、本発明の薬剤組成物を害虫防除用線香に使用する場合は、マラカイトグリーン、食品添加物(食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色106号など)等の着色剤を含有させることも可能である。
〔加熱蒸散用製剤〕
加熱蒸散用製剤は、本発明の薬剤組成物をそのまま用いたもの、あるいは本発明の薬剤組成物を水や溶剤等で適宜希釈したものとして調製される。加熱蒸散用製剤は、液体式電気蚊取り器の薬液や、パルプやリンター等の繊維製のマットに含浸させた蚊取りマットとして使用される。
加熱蒸散用製剤に使用する薬剤組成物には、刺激緩和剤の他、低臭性溶剤、揮散性薬剤、界面活性剤、分散剤、その他の成分が含まれる。刺激緩和剤、低臭性溶剤、揮散性薬剤、及びその他の成分については、害虫防除用線香に使用するものと同様の成分が使用可能である。なお、加熱蒸散用製剤では、揮散性薬剤としてピレスロイド系殺虫成分を使用する場合、30℃における蒸気圧が2×10−4〜1×10−2mmHgのピレスロイド系殺虫成分が好ましい。そのようなピレスロイド系殺虫成分として、例えば、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン、トランスフルトリン、テラレスリン、フラメトリン等が挙げられる。
界面活性剤又は分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミド等が使用可能である。
本発明の薬剤組成物を原料として害虫防除用線香及び加熱蒸散用製剤を作製し、それらの性能を評価した。
〔害虫防除用線香〕
下記の表1に示す配合に従って、実施例1〜7及び比較例1〜5にかかる害虫防除用線香を作製した。
<実施例1>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(0.01重量部)、低臭性溶剤としてヘキシレングリコール(0.5重量部)、揮散性薬剤としてdl・d−T80−アレスリン(0.3重量部)、支燃剤として除虫菊抽出粕粉(45重量部)及び柑橘類表皮粉(34重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(4.2重量部)及び澱粉[α澱粉](残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。混練物を押出機にかけてシート状に形成し、さらに打抜機で渦巻型に打ち抜き、その後、水分含有量が7〜10重量%となるまで乾燥させたものを密封包装し、実施例1の害虫防除用線香を作製した。
<実施例2>
刺激緩和剤としてN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミド(3重量部)、低臭性溶剤としてジプロピレングリコール(3重量部)、揮散性薬剤としてdl・d−T80−アレスリン(0.3重量部)、支燃剤としてココナッツシェル粉末(50重量部)及び木粉[トガ](27重量部)、並びに粘結剤として澱粉[タピオカ粉](15重量部)及びカルボキシメチルセルロース(残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、実施例2の害虫防除用線香を作製した。
<実施例3>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(0.1重量部)、低臭性溶剤として安息香酸ベンジル(0.01重量部)及びジプロピレングリコール(0.5重量部)、揮散性薬剤としてメトフルトリン(0.01重量部)、支燃剤として除虫菊抽出粕粉(31重量部)、茶粉末(45重量部)及びタルク(4.8重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(2.6重量部)及び澱粉[α澱粉](残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、実施例3の害虫防除用線香を作製した。
<実施例4>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(3重量部)、低臭性溶剤としてクエン酸トリエチル(0.05重量部)及び3−メトキシ−3−メチルブタノール(0.6重量部)、揮散性薬剤としてトランスフルトリン(0.15重量部)、支燃剤として木粉[モミ](49.2重量部)及び茶粉末(29重量部)、並びに粘結剤として澱粉[α澱粉](13重量部)及びメチルセルロース(残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、実施例4の害虫防除用線香を作製した。
<実施例5>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(0.01重量部)、揮散性薬剤としてd・d−T80−プラレトリン(0.15重量部)、支燃剤として木炭(25重量部)、除虫菊抽出粕粉(51重量部)及びタルク(1.8重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(18重量部)及びカルボキシメチルセルロース(残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、実施例5の害虫防除用線香を作製した。実施例5の害虫防除用線香は、低臭性溶剤を含まないものとした。
<実施例6>
刺激緩和剤としてN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミド(0.01重量部)、溶剤としてトルエン(1重量部)、揮散性薬剤としてガラクソリド、シス−3−ヘキセノール及び微量成分(合計0.5重量部)、支燃剤として柑橘類表皮粉(38重量部)、茶粉末(4.5重量部)及びココナッツシェル粉末(39重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(8重量部)及び澱粉[α澱粉](残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、実施例6の害虫防除用線香を作製した。実施例6の害虫防除用線香は、低臭性溶媒を含まず、通常の溶媒を含むものとした。なお、揮散性薬剤の微量成分には、本明細書に記載する殺虫成分や香料成分等が含まれる。
<実施例7>
刺激緩和剤としてN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミド(0.04重量部)、揮散性薬剤としてヒノキチオール、ペパーミント油及び微量成分(合計2重量部)、支燃剤として木粉[スギ](49重量部)及び木粉[マツ](30重量部)、並びに粘結剤として澱粉[α澱粉](12重量部)及びメチルセルロース(残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、実施例7の害虫防除用線香を作製した。実施例7の害虫防除用線香は、低臭性溶剤を含まないものとした。なお、揮散性薬剤の微量成分には、本明細書に記載する殺虫成分や香料成分等が含まれる。
<比較例1>
低臭性溶剤としてヘキシレングリコール(0.5重量部)、揮散性薬剤としてdl・d−T80−アレスリン(0.3重量部)、支燃剤として除虫菊抽出粕粉(45重量部)及び柑橘類表皮粉(34重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(4.2重量部)及び澱粉[α澱粉](残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、比較例1の害虫防除用線香を作製した。比較例1の害虫防除用線香は、実施例1の害虫防除用線香の配合において、刺激緩和剤を除外したものである。
<比較例2>
刺激緩和剤とは異なる物質であるジメチルアセトアミド(0.01重量部)、低臭性溶剤としてヘキシレングリコール(0.5重量部)、揮散性薬剤としてdl・d−T80−アレスリン(0.3重量部)、支燃剤として除虫菊抽出粕粉(45重量部)及び柑橘類表皮粉(34重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(4.2重量部)及び澱粉[α澱粉](残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、比較例2の害虫防除用線香を作製した。比較例2の害虫防除用線香は、実施例1の害虫防除用線香の配合において、刺激緩和剤に代えてジメチルアセトアミドを添加したものである。
<比較例3>
刺激緩和剤とは異なる物質であるスチレン(0.01重量部)、低臭性溶剤としてヘキシレングリコール(0.5重量部)、揮散性薬剤としてdl・d−T80−アレスリン(0.3重量部)、支燃剤として除虫菊抽出粕粉(45重量部)及び柑橘類表皮粉(34重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(4.2重量部)及び澱粉[α澱粉](残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、比較例3の害虫防除用線香を作製した。比較例3の害虫防除用線香は、実施例1の害虫防除用線香の配合において、刺激緩和剤に代えてスチレンを添加したものである。
<比較例4>
揮散性薬剤としてd・d−T80−プラレトリン(0.15重量部)、支燃剤として木炭(25重量部)、除虫菊抽出粕粉(51重量部)及びタルク(1.8重量部)、並びに粘結剤としてタブ粉(18重量部)及びカルボキシメチルセルロース(残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、比較例4の害虫防除用線香を作製した。比較例4の害虫防除用線香は、実施例5の害虫防除用線香の配合において、刺激緩和剤を除外したものである。
<比較例5>
揮散性薬剤としてヒノキチオール、ペパーミント油及び微量成分(合計2重量部)、支燃剤として木粉[スギ](49重量部)及び木粉[マツ](30重量部)、並びに粘結剤として澱粉[α澱粉](12重量部)及びメチルセルロース(残部)を混合して混合粉(100重量部)を調製し、これに水(100重量部)を添加して十分に混練した。そして、実施例1と同様の手順により、比較例5の害虫防除用線香を作製した。比較例5の害虫防除用線香は、実施例7の害虫防除用線香の配合において、刺激緩和剤を除外したものである。なお、揮散性薬剤の微量成分には、本明細書に記載する殺虫成分や香料成分等が含まれる。
Figure 0006663174
実施例1の害虫防除用線香について、就寝時に使用するため害虫防除用線香の包装を開封すると、線香独特の香りである所謂「安らぎの香り」が発散され、刺激臭や異臭は感じられなかった。この害虫防除用線香を広さ6畳の居間に設置して着火したところ、害虫防除用線香から「安らぎの香り」が持続的に発散され、最後まで刺激臭や異臭が発生することは無かった。その結果、就寝中の使用者にリラックス感をもたらすことができた。このように、本発明の害虫防除用線香は、刺激を抑えてリラックス効果を与えることができるものであるが、害虫防除用線香の性能をより詳細に確認するため、以下に説明する官能試験及び脳波測定を実施した。
<官能試験>
実施例1〜7及び比較例1〜5の害虫防除用線香を、夫々ガラスシリンダー(直径20cm、高さ40cm)に導入し、着火して燃焼させた。そして、線香から発散される香りを10人のパネラーによって評価した。評価項目は、「刺激緩和性」及び「香りの嗜好性」とし、最高点を10点、最低点を1点とし、各線香について10人のパネラーの平均点を求めた。
<脳波測定>
実施例1〜7及び比較例1〜5の害虫防除用線香を、被験者がいる広さ6畳の部屋に設置し、着火して燃焼させた。被験者を部屋の中央に静座させ、脳波測定装置を装着して、ファストα波、ミッドα波(リラックスした状態で意識が集中した状態)、スローα波、β波(緊張、不安、イライラ時の状態)、及びθ波を測定した。そして、これらの測定を5人の被験者に対して実施した。各脳波について、ブランク(線香を使用しない平常時の状態)からの占有率の変化を算出し、ここから「ミッドα波の変化率/β波の変化率」を算出し、5人の被験者の平均値を求めた。「ミッドα波の変化率/β波の変化率」が大きいほど、被験者のリラックス感は大きいと推定することができる。
Figure 0006663174
上記の表2は、官能試験及び脳波測定の結果である。刺激緩和剤を配合した本発明の害虫防除用線香(実施例1〜7)は、含まれる揮散性薬剤の種類に関わらず、刺激緩和性が大きいものとなり、パネラーが刺激臭や異臭を感じることは無かった。香りの嗜好性に関しては、一般に香りは個人の好みによるところが大きいが、本発明の害虫防除用線香(実施例1〜7)の香りは、大部分の人に好まれる傾向があり、汎用性が高い商品となり得るものであった。また、脳波測定の結果より、本発明の害虫防除用線香(実施例1〜7)は、「ミッドα波の変化率/β波の変化率」が大きくなる(すなわち、「リラックスした状態で意識が集中した状態」が「緊張、不安、イライラ時の状態」よりも大きくなる)傾向が見られた。この結果より、本発明の害虫防除用線香を使用した場合、人は特に不快感を抱くことなく、リラックスしながら快適に過ごせることが示唆された。
これに対し、刺激緩和剤を配合していない比較例1の害虫防除用線香は、香りの嗜好性は一部の人にとって比較的良好な結果となったが、刺激緩和性は小さいものとなり、刺激に敏感な人にとって長時間に使用することは困難であった。刺激緩和剤であるN−フェニルアルキルアミド誘導体とは異なる「芳香族環を有さないアミド化合物」(ジメチルアセトアミド)を配合した比較例2の害虫防除用線香、及び刺激緩和剤であるN−フェニルアルキルアミド誘導体とは異なる「アミド基を有さない芳香族化合物」(スチレン)を配合した比較例3の害虫防除用線香は、香りの嗜好性は一部の人にとって比較的良好な結果となったが、刺激緩和性がほとんど認められなかった。刺激緩和剤及び低臭性溶剤を配合していない比較例4の害虫防除用線香は、香りの嗜好性は一部の人にとって比較的良好な結果となったが、刺激緩和性は小さいものとなり、刺激に敏感な人にとって長時間に使用することは困難であった。さらに、刺激緩和剤及び低臭性溶剤を配合していない比較例5の害虫防除用線香は、木粉由来の異臭や刺激臭が強くなり、刺激緩和性及び香りの嗜好性が極めて悪い結果となった。脳波測定に関しても、比較例1〜5の害虫防除用線香は、被験者の「ミッドα波の変化率/β波の変化率」が小さくなる傾向があり、人がリラックスしながら長時間過ごすことは困難であった。
〔加熱蒸散用製剤〕
下記の表3に示す配合に従って、実施例8〜12及び比較例6にかかる加熱蒸散用製剤を作製した。
<実施例8>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(0.001重量部)、揮散性薬剤としてメトフルトリン(0.4重量部)、並びに溶剤として1号灯油及び流動パラフィン(残部)を混合して全体が100重量部となるように調製し、これを実施例8の加熱蒸散用製剤とした。
<実施例9>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(0.1重量部)、揮散性薬剤としてメトフルトリン(0.4重量部)、並びに溶剤として1号灯油及び流動パラフィン(残部)を混合して全体が100重量部となるように調製し、これを実施例9の加熱蒸散用製剤とした。
<実施例10>
刺激緩和剤としてN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミド(0.01重量部)、揮散性薬剤としてメトフルトリン(0.4重量部)、並びに溶剤として1号灯油及び流動パラフィン(残部)を混合して全体が100重量部となるように調製し、これを実施例10の加熱蒸散用製剤とした。
<実施例11>
刺激緩和剤としてN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミド(3重量部)、揮散性薬剤としてメトフルトリン(1.2重量部)、並びに溶剤として1号灯油及び流動パラフィン(残部)を混合して全体が100重量部となるように調製し、これを実施例11の加熱蒸散用製剤とした。
<実施例12>
刺激緩和剤としてN−フェニルアセトアミド(0.1重量部)、揮散性薬剤としてメトフルトリン(0.5重量部)、並びに溶剤として2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)、水及びグリコール系溶剤(残部)を混合して全体が100重量部となるように調製し、これを実施例12の加熱蒸散用製剤とした。
<比較例6>
揮散性薬剤としてメトフルトリン(0.4重量部)、並びに溶剤として1号灯油及び流動パラフィン(残部)を混合して全体が100重量部となるように調製し、これを比較例6の加熱蒸散用製剤とした。比較例6の加熱蒸散用製剤は、実施例8、9又は10の加熱蒸散用製剤の配合において、刺激緩和剤を除外したものである。
Figure 0006663174
実施例8〜12及び比較例6の加熱蒸散用製剤について、官能試験を実施した。官能試験の方法及び評価は、上述した実施例1〜7及び比較例1〜5の害虫防除用線香における官能試験に準じるものとした。官能試験の結果を、加熱蒸散用製剤の配合を示した表3に併せて示す。
刺激緩和剤を配合した本発明の加熱蒸散用製剤(実施例8〜12)は、刺激緩和性が大きいものとなり、パネラーが溶剤や薬剤に起因する刺激臭や異臭を感じることは無かった。これに対し、刺激緩和剤を配合していない比較例6の加熱蒸散用製剤は、刺激緩和性が小さいものとなり、人がリラックスしながら長時間過ごすことは困難であった。
本発明の薬剤組成物は、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、コバエ類、チョウバエ類、イガ類、ハチ類などの飛翔害虫を防除する害虫防除製品において利用可能であるが、ゴキブリ類、ムカデ類などの匍匐害虫を防除する目的でも利用可能である。また、本発明の薬剤組成物を使用した害虫防除用線香、及び加熱蒸散用製剤は、一般住居で使用される害虫防除剤の他、店舗、オフィス、工場等で使用される業務用害虫防除剤、さらには、ペットや家畜等の動物用の害虫防除剤として利用可能である。

Claims (9)

  1. 揮散性薬剤を含有する薬剤組成物であって、
    使用時の刺激を緩和する刺激緩和剤として、下記の式(I)
    Figure 0006663174
    (R:水素又はアルキル基,R:アルキル基)
    で表されるN−フェニルアルキルアミド誘導体(ただし、N−プロピルアセトアニリドを除く)を含有し、
    ここで、前記揮散性薬剤は、害虫防除成分である薬剤組成物。
  2. 揮散性薬剤を含有する薬剤組成物であって、
    使用時の刺激を緩和する刺激緩和剤として、下記の式(I)
    Figure 0006663174
    (R:水素又はアルキル基,R:アルキル基)
    で表されるN−フェニルアルキルアミド誘導体を含有し、
    前記刺激緩和剤は、下記の式(II)
    Figure 0006663174
    で表されるN−フェニルアセトアミド、又は、下記の式(III)
    Figure 0006663174
    で表されるN,2−ジメチル−N−フェニルブタンアミドであり、
    ここで、前記揮散性薬剤は、害虫防除成分である薬剤組成物。
  3. 前記刺激緩和剤を0.0001〜3重量%含有する請求項1又は2に記載の薬剤組成物。
  4. 低臭性溶剤として、安息香酸ベンジル、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、クエン酸トリエチル、及び3−メトキシ−3−メチルブタノールからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含有する請求項1〜3の何れか一項に記載の薬剤組成物。
  5. 前記低臭性溶剤を0.01〜3重量%含有する請求項4に記載の薬剤組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の薬剤組成物を使用した害虫防除用線香。
  7. 支燃剤として、木粉、除虫菊抽出粕粉、柑橘類表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、木炭粉、素灰、及びタルクからなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項6に記載の害虫防除用線香。
  8. 粘結剤として、タブ粉、澱粉、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項6又は7に記載の害虫防除用線香。
  9. 請求項1〜5の何れか一項に記載の薬剤組成物を使用した加熱蒸散用製剤。
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