JP6657897B2 - ミラー部材の加工方法 - Google Patents
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Description
レーザレーダ装置用の光偏向器としては、従来、反射鏡(ミラー部材)を別体の回転部材に固定した構造が知られており、反射鏡としては、一般に硝材に金属蒸着膜を形成した所謂ガラス製の反射鏡が用いられる。
しかし、ガラス製の反射鏡の固定構造では、鏡面の平面度を維持することと、反射鏡を回転部材に対して大きな固定力で保持することとがトレードオフの関係にあり、2つを両立させることが困難である。即ち、固定力を優先して回転部材に対して強く固定すれば鏡面が歪み、平面度の維持を優先して固定力を低下させれば、外部からの振動衝撃に対して十分な固定力が得られず車載部品などに用いる場合には外乱振動/衝撃に対する信頼性を確保できなくなる。いずれにしても硝材からなる反射鏡を回転部材に取り付ける構造には課題が残る。
このような従来例としては、特許文献1、特許文献2がある。
一方、電子写真式の画像形成装置において感光体上に静電潜像を形成するために使用される光走査装置では、鏡面切削加工によりアルミ合金に直接、反射面を形成した光偏向器が用いられている。この光偏向器では、反射鏡(回転多面鏡)と軸とが一体化され、さらに反射面の内側にモータ部が構成され、外周側面に高精度な鏡面が形成されている。
このような反射鏡では、鏡面切削加工により反射面を形成する際、反射面と直交する2つの加工基準面を設け、各加工基準面を保持治具により両側から挟むように押さえて切削加工する。加工基準面と保持治具との接触摩擦力を利用して保持するため、切削加工時のバイトの切り込みで反射鏡が回転することが無いよう、加工基準面はその面積をできるだけ大きくすることが望ましい。従来の回転多面鏡は回転軸方向の反射面の長さ(ミラー部材の厚さ)に比べて回転中心軸から反射面までの距離が大きいため、加工基準面を比較的大きく確保することができ、加工切削力に対抗する十分な保持力が得られていた(例えば、特許文献3)。
しかし、特許文献3の回転多面鏡と同様の構成をレーザレーダ用の光偏向器に適用して製作し、試験を行なったところ、繰り返し光偏向器に振動が加わった際の信頼性、耐久性という観点において、改善の余地があることが明らかになった。
[第一実施形態]
図1(a)及び(b)は本発明の第一実施形態に係る光偏向器、及びそれを用いたレーザレーダ装置の平面図(天板を除いた平面図)、及び要部縦断面図である。
レーザレーダ装置は、一例として車両に搭載され、対象物としての他の車両に光を照射し、その反射光を受光して該他の車両との距離を短時間に測定する装置である。
なお、本発明のレーザレーダ装置は、車両以外の静止物体及び移動物体に搭載されて用いられても良いし、単体で用いられても良い。
また、「対象物」には、車両以外の静止物体及び移動物体も含まれる。
ここでは、距離測定装置が搭載されている車両の移動方向に直交する方向をZ軸方向とするXYZ3次元直交座標系が設定されている。
光源装置10は、光源11と、光源駆動回路、及び受光手段の回路を含む回路基板12と、カップリングレンズ13を有している。
光源11は、回路基板12に実装されており、1つの発光部としての半導体レーザ(端面発光レーザ)を有している。光源11は、射出方向がY軸に平行となるように配置され、+Y側にレーザ光LBを射出する。
光源駆動回路は、光源11を断続的に駆動(パルス駆動)する。光源11の1パルス当たりの発光時間は、一例として数n秒〜100n秒程度とされている。光源11の発光周期は、3μ秒以上とすることが望ましい。
この発光周期が短すぎると、対象物からのレーザ光の反射光が1つ前の発光の対象物からの反射光と干渉し、これら2つ反射光の信号を分離できなくなるおそれがあるからである。
光源11から光パルスを送出した時間と該光パルスの反射光を検出した時間との差をΔt、光速をCとすると、対象物までの距離Lは、L=Δt×C÷2で与えられる。
例えば、Δtが3μ秒のとき、Lは450mとなる。
一般に、距離測定装置では、検出可能な距離は、最大200m程度であり、仮に450m先から反射光が戻ってきたとしてもその光強度は十分に小さいため、連続して送出された2つの光パルスの2つの反射光が干渉してもほとんど影響はない。
検出範囲を近距離に限定し、光出力を適正光量に設定すれば、遠距離からの反射光と干渉することはないので、さらに発光周期は短縮可能である。
図1において、カップリングレンズ13としては平凸レンズが採用されている。カップリングレンズ13は、光源11の+Y側、すなわち光源11からのレーザ光の光路上に配置されている。カップリングレンズ13は光源11からの発散光束をほぼ平行光束、若しくは、わずかに発散する発散光束に変換する。
光偏向器20は、扁平構造のミラー部材21を有し、互いに平行に対向配置された第1反射面21a、第2反射面21bを有している。
各反射面は、回転軸22周りの異なる位置に配置され、回転軸の軸線に対して平行に(非直交状、非交差状に)形成されている。ここでは、第1反射面21aを基準にすると、第2反射面21bは回転軸を中心として180°回転した位置に形成されている。
各反射面21a、21bは、レーザ光を反射することで偏向する偏向面となっている。
回転軸22が回転されると、第1反射面21a及び第2反射面21bは、回転軸と共に該回転軸の軸線周りに回転し、それぞれの反射面が光源装置10に互いに異なるタイミングで(交互に)対向する。
この場合、光源装置10からのレーザ光LBが第1反射面21aに入射するタイミングと、光源装置10からのレーザ光が第2反射面21bに入射するタイミングとは異なる。
第1反射面21aまたは第2反射面21bに入射されたレーザ光LBは、カバー42の前面(透光性部分)を透過し、他の車両に向けて投光される。
なお、発散光束の場合、ミラー部材21での反射光は、徐々に拡散して他の車両に照射されるため、各照射領域のZ軸方向の長さは回転軸と該照射領域との距離に依存し、この距離が長いほど長くなる。
第1反射面21aで偏向され他の車両の照射領域で反射されたレーザ光の一部は、第1反射面21aに入射される。第1反射面21aに入射された車両からの反射光は折り返しミラー43により折り返されて受光手段30に入射する。
同様に、第2反射面21bで偏向され他の車両の照射領域で反射されたレーザ光の一部は、第2反射面21bに入射される。第2反射面21bに入射された車両からの反射光は、折り返しミラー43により折り返され、受光手段30に入射する。
受光素子32は、一例として、フォトダイオードであり、集光レンズ31を介したレーザ光の光路上に配置されている。物体からの反射光は微弱なため、高感度なフォトダイオードが用いられ、例えば、アバランシェフォトダイオードが用いられる。
なお、受光素子32は、その小型化を図る観点から、集光レンズ31の焦点位置近傍に配置されることが好ましい。
この場合、第1反射面21aの偏向面が折り返しミラー43を挟んで光源装置10に対向しているときに、第1反射面21aの偏向面が折り返しミラー43を挟んで集光レンズ31にも対向する。この結果、第1反射面21aで偏向され照射領域で反射されたレーザ光は、第1反射面21a、折り返しミラー43、及び集光レンズ31を介して受光素子32に入射する。
第1反射面21aで偏向され他の車両の照射領域で反射されたレーザ光の一部は、集光レンズ31を通過後、受光素子32に集光され、その集光時に受光素子32から受光信号S1が測定処理装置に出力される。
同様に第2反射面21bで偏向され他の車両の照射領域で反射されたレーザ光の一部は、集光レンズ31を通過後、受光素子32に集光され、その集光時に受光素子32から受光信号S2が測定処理装置に出力される。
同様に、測定処理装置は、光源11から第2反射面21bに各光パルスを送出したタイミングと、該パルスに対応する受光信号を受信したタイミングとの時間差に基づいて照射領域との距離を算出する。
光偏向器のミラー部材21(回転体)が定速回転状態にあるとき、第1反射面21aまたは第2反射面21bの反射面位置を特定するために、同期検出手段が設けられている。
光偏向器20のミラー部材21は一定の回転数で定速回転するため、−120°で出力される同期検出信号を基準にして、−70°〜+70°まで所定の間隔でパルス発光することで、時系列に投光、取得された測定データを投光角度に対応した物体検出データとすることができる。
光偏向器の回転数は、数100rpm〜数1000rpmの範囲で一定の回転数に設定される。
レーザの発光間隔は光偏向器の回転数と、投光角度分解能によって変わる。
回転数が高くなるほど、あるいは、投光角度分解能が小さくなるほど発光間隔は短くなる。
別の一例として、光偏向器の回転数が6000rpm、投光角度分解能が0.25°のとき、発光間隔は6.9μsec、発光周波数は144kHzである。図1のように、−70°〜+70°まで走査し、6.9μsec毎に発光させれば、0.25°毎に561個の測定データが得られる。
回転数、投光角度分解能は用途に適した条件に、適宜設定することができる。
光偏向器20は、対向する両側面に第1反射面21aと第2反射面21bが形成されたミラー部材21と、ミラー部材のX方向(長手方向)中心部にZ軸方向へ貫通して形成された軸孔21c内に焼き嵌めにより一体化された回転軸(軸)22と、ミラー部材の下方に配置された回路基板28と、回路基板28により機械的に保持され円筒状の凸部24aをミラー部材の下面凹所21d内に配置させたハウジング24と、ハウジング24の円筒状の凸部24a内に固定配置されて内周面で軸22を回転自在に軸支する軸受部材23と、軸受部材の下方において軸22に固定された抜け防止部材25a、25bと、ハウジングの円筒状の凸部と軸22との間をシールするシール部材25cと、サブハウジング24bと軸22の下端部との間に配置されたスラスト軸受部材26と、モータ部27と、を備えている。
ミラー部材21の第1反射面21aと第2反射面21bは回転中心軸20aの軸方向に対して平行に形成されている。ここで「軸方向に対して平行」とは、軸方向と交差(直交)しない方向であることを意味する。
モータ部27は、ミラー部材21の下面に固定された筒状のフランジ部21eに固定配置されたロータ磁石27aと、ロータ磁石と対向するハウジング24の外周面に配置されたステータコア27bと、ステータコアに配置された巻線コイル27cと、を備えている。
軸受部材23とスラスト軸受部材26はハウジング24とサブハウジング24bに夫々収納され、シール部材25により油の流出が防止されている。
ロータ磁石27aは周方向12極(6極対)に着磁され、ステータコアには周方向に9つのコイルが配置された、12極9スロット型のブラシレスモータとなっている。図示しないホール素子は、ロータ磁石27aの12極の着磁に対応して、NSの磁極境界を検出する位置検出信号を出力すると共に、1回転当たり6パルス速度検出信号として利用さている。このホール素子信号から波形整形した速度検出信号と不図示のコントローラより供給される基準クロック信号の位相を比較する、いわゆる位相比較制御(PLL制御)により、一定の速度で回転するように制御されている。
次に、ミラー部材の鏡面切削加工の為の装置構成等について説明する。
図3はミラー部材の鏡面加工のための装置構成を示す説明図であり、図4(a)はカッターホルダーの平面図であり、(b)はカッターホルダーの正面構造を保持治具の断面図と共に示す図であり、図5(a)は保持治具の構成をワークと共に示す要部平面図であり、(b)はワークを保持した保持治具の構成を示す縦断面図である。
図4によりカッターホルダー52の詳細を説明する。カッターホルダー52の前面には回転中心からの距離が異なる位置に、粗加工バイト54と仕上げ加工バイト55が取り付けられている。カッターホルダー52が回転し、ステージ53上に固定された保持治具60により保持されたミラー部材21が移動することで、ミラー部材の一方の反射面が回転中心から半径R1に配置された粗加工バイト54により数十μm削られた後に、半径R2(R1>R2)に配置された仕上げ加工バイト55によって数μm程度削られて、鏡面に仕上げられる。
ワーク56としてのミラー部材21は、反射面21a、21bの回転軸方向の長さL1に比較して、回転軸22の回転中心から一方の反射面までの距離L2が小さい扁平なミラー部材となっている。図2において説明したようにミラー部材21の軸孔21cには、回転軸22が焼き嵌めされている。
焼き嵌めは、周知のように軸孔側を加熱膨張させて内径を拡げ、この状態で回転軸を嵌め込んでから冷却することにより、軸孔の収縮により両部材を結合する手法である。本来であれば回転軸を挿入できない程度に小径の軸孔内に軸を挿入して固着する手法である。
なお、ミラー部材21の下面と上面(回転軸22の軸方向両端側面)には、回転軸22の中心部を中心とした同心円弧状の凸面である加工基準面(被保持部)56a、56bが夫々形成されている。ワークの左右側面(回転軸22の軸方向と直交する方向に位置し、且つ軸方向と平行な面)には当接面(被保持部)56c、及び押え面(当接面、被保持部)56dが夫々形成されている。
加工基準面56a、56bは、回転軸22を中心として外径方向等距離の位置に配置された突起であり、夫々の先端面は平坦面となっている。後述する比較例(図9)のようにミラー部材の上下両面が充分に広い面積を揺する場合には加工基準面を完全なリング状に構成することができるが、本例のようにミラー部材を扁平化した場合には上下両面が狭くなるので各加工基準面は円形の一部である円弧状となる。
回転軸22を基準にすると、当接面56cは加工基準面56bよりも遠方(離間位置)に形成されている。鏡面切削加工時には各加工基準面56a、56bがベース61、及び押え部材62により上下から挟むように押さえられると同時に、当接面56cが回転規制部材63に当接され、反対側から当接押え部材64とで弾性的に押さえられて保持される。
押え部材62は外枠66との間に配置された弾性部材62aにより弾性付勢され、当接押え部材64は外枠66との間に配置された弾性部材64aにより弾性付勢される。
言い換えれば、鏡面の平面度を維持することと、ミラー部材の切削加工時に大きな固定力で保持することとはトレードオフの関係にあるが、本発明によればこの2つを両立させることができる。即ち、当接面を押さえる力を大きくすることなく加工時におけるミラー部材の動きを封じて加工精度を高めることができる。
以上の作用、効果は以下の各実施形態においても同様に当てはまる。
図6(a)は本発明の第二実施形態に係る保持治具の構成をワークと共に示す要部平面図であり、(b)はワークを保持した保持治具の構成を示す縦断面図である。
第一実施形態とは光偏向器のミラー部材の構成と保持治具の構成が異なるだけであるため、相違点を中心として説明する。また、同一部分には同一符号を付して説明する。
回転軸22と直交する断面において、当接面56c(56d)にはV溝状(V字凹状)の凹所57が形成され、扁平なミラー部材がさらに軽量化されている。鏡面切削加工時にはV溝内に円柱状の回転規制部材(他部材)73が当接され、保持治具60に固定されて加工される。
図6により、ワーク56(=ミラー部材21)を保持する保持治具60の詳細を説明する。図6の保持治具60の配置は、図4における配置方向に対して反時計回りに90°回転している。
鏡面切削加工により反射面を形成する加工工程では、ミラー部材21の保持は上下左右の2方向から保持力を発生させる構成としている。
第1の保持力は、保持治具60のベース(他部材)61にミラー部材21の下側の加工基準面56aを接触させ、且つ、ミラー部材21の上側の押え面(加工基準面、被保持部)56bが押え部材(他部材)62により上から押えられることにより生成される。一例として実施例ではL1が28mm、L2が6mm程度の扁平な形状となっている。実施例のようにL2が小さい構成では、上下方向に挟み込んで押えるだけでは十分な保持力が得られず、鏡面切削加工時に切削バイトが切り込む時に加わる力で、ワークに回転する力が働き最初に保持した状態から動いてしまう恐れがあり、加工することが出来ない。
当接面は、第一実施形態のように平坦面であってもよいが、本例のように複数の平面が交差した多面状の内壁面であってもよい。
図7(a)は本発明の第三実施形態に係る保持治具の構成をワークと共に示す要部平面図であり、(b)はワークを保持した保持治具の構成を示す縦断面図である。
第一実施形態とは光偏向器のミラー部材の構成と保持治具の構成が異なるだけであるため、その他の構成については説明を省略する。
回転軸22と直交する断面において、当接面(被保持部)56c(56d)には四角い溝状(コ字凹状)の凹所58が形成され、扁平なミラー部材がさらに軽量化されている。鏡面切削加工時には凹所58内に円柱状の回転規制部材(他部材)83が当接され、保持治具60に固定されて加工される。
ワーク56(=ミラー部材21)は、反射面の回転軸方向の長さL1に比較して、回転軸の回転中心から反射面までの距離L2が小さい扁平なミラー部材となっている。ミラー部材21には、軸22が焼き嵌めされている。
鏡面切削加工により反射面を形成する加工工程では、ミラー部材21の保持は2方向から保持力を発生させる構成としている。
第1の保持力は、保持治具60のベース(他部材)61にミラー部材21の加工基準面(被保持部)56aを接触させると共に、ミラー部材21の押え面(加工基準面、被保持部)56bを押え部材(他部材)62により上から押えることにより生成される。一例として実施例ではL1が28mm、L2が6mm程度の扁平な形状となっている。実施例のようにL2が小さい構成では、上下方向に挟み込んで押えるだけでは十分な保持力が得られず、鏡面切削加工時に切削バイトが切り込む時に加わる力で、ミラー部材に回転する力が働き最初に保持した状態から動いてしまう恐れがあり、加工することが出来ない。
回転規制部材83は円柱状である必要は無く、凹所の内壁面、特に回転軸寄りの内面58bと接してこれを回転軸に向けて押圧できる構成であれば多角柱、その他の任意の形状であってもよい。
内壁面(当接面)58bは、回転軸22と平行な方向へ延び、且つ反射面とは直交状態で交差している。
当接面は、第一実施形態のように全面が平坦面であってもよいが、本例のように平坦面の一部、又は全部が凹所となっており、且つ凹所内面が複数の平面が交差した多面状の内壁面である場合に、複数の平面のうちの一面が当接面(回転規制部材が当接する面)であってもよい。或いは当接面は曲面状の凹所の内壁面であってもよい。
回転軸22を基準にすると、凹所58の回転軸寄りの内壁面(当接面)58bは加工基準面56a、56bよりも遠方に形成されている。鏡面切削加工時には各加工基準面が保持治具により上下から挟むように押さえられると同時に、当接面58bが当接部材83に当接され、反対側から当接押え部材64とで弾性的に押さえられて保持される。
図8(a)は本発明の第四実施形態に係る保持治具の構成をワークと共に示す要部平面図であり、(b)はワークを保持した保持治具の構成を示す縦断面図である。
第一実施形態とは光偏向器のミラー部材の構成と保持治具の構成が異なるだけであるため、その他の構成については説明を省略する。
回転軸と直交する断面において、当接面(被保持部)56c(56d)寄りのミラー部材内部には円筒状の貫通穴59が形成され、扁平なミラー部材がさらに軽量化されている。鏡面切削加工時には貫通穴59内に円柱状の回転規制部材(他部材)93が挿入(嵌合)されることにより保持治具60に固定されて加工される。
即ち、回転軸の軸方向と平行な当接面は円筒状に形成された貫通穴59の内壁面59aとして形成されている。鏡面切削加工時には円柱状の回転規制部材93に貫通穴が挿し込まれて保持治具に固定され、ロータとして軽量化されている。
鏡面切削加工により反射面を形成する加工工程では、ミラー部材21の保持は2方向から保持力を発生させる構成としている。
第1の保持力は、保持治具60のベース(他部材)61にミラー部材21の加工基準面56aを接触させつつ、ミラー部材21の押え面(加工基準面、被保持部)56bを押え部材(他部材)62により上から押えることにより得られる。一例として実施例ではL1が28mm、L2が6mm程度の扁平な形状となっている。実施例のようにL2が小さい構成では、上下方向に挟み込んで押えるだけでは十分な保持力が得られず、鏡面切削加工時に切削バイトが切り込む時に加わる力で、ミラー部材に回転する力が働き最初に保持した状態から動いてしまう恐れがあり、加工することが出来ない。
回転軸22を基準にすると、当接面59aは加工基準面56a、56bよりも遠方に形成されている。鏡面切削加工時には加工基準面が保持治具により上下から挟むように押さえられると同時に、当接面が回転規制部材93に当接され、反対側から当接押え部材64とで弾性的に押さえられて保持される。
なお、本例では当接面59aは貫通穴59の内壁であり、内壁面のうちの回転軸22寄りの部分が当接面59aとして有効に機能する。
貫通穴59は円筒状である必要はなく、楕円形、長円形、或いは三角形、四角形、その他の多角柱状であってもよい。貫通穴を楕円形、長円形、或いは多角形状とする場合にはこの貫通穴に挿通される回転規制部材93は貫通穴と同様の形状を有した柱状体とするのが好ましい。当接面59aと回転規制部材とを面接触させつつ押圧力を伝えることができるからである。ミラー部材を円柱状にくり貫いて貫通穴59を形成することで、ミラー部材が軽量化される。円柱状の内壁面は高精度に加工することも容易である。
なお、上記実施形態では、対向する2つの反射面を有した2面のミラー部材を例示したが、これは一例に過ぎず、1面、或いは3面以上の反射面を有したミラー部材であっても良い。
次に、図9に示した比較例の光偏向器120について説明する。
即ち、図9(a)(b)は回転軸方向の反射面の長さに比べて回転中心軸から反射面までの距離を大きくしたミラー部材(比較例)の構成を示す平面図、及びA−A断面図である。
比較例に係る光偏向器120は、対向配置された2つの鏡面121a、121b、及び加工基準面121cを有した反射鏡(ミラ−部材)121と、反射鏡の中心孔121d内に固定した回転軸130と、反射鏡の下面凹所の内壁に固定したロータ磁石131と、回路基板140に固定したハウジング141により支持されたステータコア142、及び巻線コイル143と、ハウジングにより支持されて回転軸130の一部を回転自在に軸支する軸受部材144と、回転軸130の先端部を軸支するスラスト軸受部材145と、抜け止め部材146と、を備えている。ロータ磁石131、ステータコア142、及び巻線コイル143はモータ部を構成している。
本比較例では、反射面の軸方向長L1が28mmであり、回転軸中心から反射面までの距離L2が16mm、L2の2倍が32mmとなるように製作し、ロータ磁石131、モータ部をミラー部材121の下部凹所内部に収納する構成としている。
反射鏡を小型化(薄型化)して上記の如き不具合を解決するために、反射面が互いに平行に対向配置された反射鏡において、反射面の回転軸方向の長さよりも回転軸中心から反射面までの距離が小さい扁平構造とすることが考えられる。しかし、この場合には扁平構造の反射鏡の上下左右側面を保持治具によって固定しながら反射面をバイトを用いた切削により鏡面加工する際に反射面と直交する加工基準面の面積が狭くなるためにこの部分を保持治具によって保持する際に十分な保持力が得られなくなり、加工中に反射鏡が回転してしまい精度の高い鏡面切削加工を実施できず、光偏向器として実現することができなかった。
また、本発明の各実施形態では、図9の比較例に対し、L2の長さを1/2〜1/3程度に薄型に構成できるため、光学設計上も有利となる。
即ち、ミラー部材21を回転させることで、反射された光ビームが各像高を走査することになる。ミラーの内接円半径を小さくすると、この各像高における光ビームのミラー部材への入射位置(反射点)の差(これをサグと定義する)が小さくなる。サグが小さくなることによって、特に広い画角で光ビームを走査しようとするときに、回転するミラーでの光ビームのけられが少なくなり、より効率的に、光ビームを検出領域に照射でき、かつ、検出領域からはね返ってきた光ビームを取り込むことが可能となる。
第1の本発明は、回転軸22の軸方向と平行な反射面を有して回転するミラー部材21の加工方法であって、ミラー部材は、金属部材に反射面を形成するものであり、回転軸の回転中心から反射面までの距離の2倍の長さ(内接円直径)が、反射面の回転軸方向の長さよりも小さく、回転軸と平行な方向を上下方向、回転軸と直交する方向を左右方向と定義すると、ミラー部材における回転軸の軸方向両端側面である上面と下面には、回転軸を中心とした同心円弧状の凸面である加工基準面56a、56bが夫々形成され、ミラー部材における回転軸の軸方向と直交する方向に位置し、且つ回転軸の軸方向と平行であって反射面と接する左右側面には、当接面56c、56dが夫々形成され、加工基準面と当接面に、夫々他部材62、64を当接させることでミラー部材を保持し、鏡面切削加工により反射面を形成することを特徴とする。
Claims (6)
- 回転軸の軸方向と平行な反射面を有して回転するミラー部材の加工方法であって、
前記ミラー部材は、金属部材に前記反射面を形成するものであり、
前記回転軸の回転中心から前記反射面までの距離の2倍の長さが、前記反射面の回転軸方向の長さよりも小さく、
前記回転軸と平行な方向を上下方向、前記回転軸と直交する方向を左右方向と定義すると、
前記ミラー部材における前記回転軸の軸方向両端側面である上面と下面には、前記回転軸を中心とした同心円弧状の凸面である加工基準面が夫々形成され、
前記ミラー部材における前記回転軸の軸方向と直交する方向に位置し、且つ前記回転軸の軸方向と平行であって前記反射面と接する左右側面には、当接面が夫々形成され、
前記加工基準面と前記当接面に、夫々他部材を当接させることで前記ミラー部材を保持し、鏡面切削加工により前記反射面を形成することを特徴とする加工方法。 - 前記加工基準面は、前記回転軸を中心として外径方向等距離の位置に配置された突起であり、夫々の先端面は平坦面となっていることを特徴とする請求項1に記載の加工方法。
- 前記他部材は、弾性部材により弾性付勢されることで、前記加工基準面と前記当接面に、夫々当接させることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工方法。
- 前記当接面にはV溝状の凹所が形成され、鏡面切削加工する際に、回転規制部材を前記凹所へ当接させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の加工方法。
- 前記当接面には四角い溝状の凹所が形成され、鏡面切削加工する際に、回転規制部材を前記凹所へ当接させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の加工方法。
- 前記ミラー部材には内部を上下方向に貫通する貫通孔が形成され、鏡面切削加工する際に、回転規制部材を前記貫通孔へ挿入することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の加工方法。
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