JP6641632B2 - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents
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Description
また、湿式プロセスによりニッケル粉を製造する方法として、特許文献2に開示される還元剤を用いて生成する方法や、特許文献3に開示される高温で還元雰囲気中にニッケル溶液を噴霧することにより、熱分解反応によりニッケル粉を得る噴霧熱分解法などが知られている。しかし、これらの方法は高価な試薬類や多量のエネルギーを必要とするため、経済的とは言えない。
この方法で用いる種結晶は、製品を粉砕するなどして得ることが多いが、手間も要し、また収率が減少するのでコスト増加につながる。また、粉砕によって必ずしも最適な粒径や性状の種結晶が得られるとは限らない。
このように実操業に必要な量の種結晶を安定して得る方法が求められていた。
以下、本発明のニッケル粉の製造方法を図1に示す製造フロー図を参照して説明する。
本発明に用いる硫酸ニッケルアンミン錯体溶液は、特に限定はされないが、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、その成分に合わせて硫酸あるいはアンモニアにより溶解して得られるニッケル浸出液(ニッケルを含む溶液)を、溶媒抽出法、イオン交換法、中和などの浄液工程を施すことにより溶液中の不純物元素を除去して得られる溶液に、アンモニアを添加し、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液としたもの等が適している。
この工程では、先ず硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に分散剤を添加する。
この工程で用いる分散剤は、ポリアクリル酸塩又はリグニンスルホン酸塩であれば特に限定されないが、工業的に安価に入手できるものとしてポリアクリル酸塩では、ポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、リグニンスルホン酸塩では、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムが好適である。
次に、図1に示す本発明に係る製造方法では、上記により分散剤濃度が調整された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、少なくとも、その錯体溶液に不溶であり、析出の母体となる不溶性固体を添加する。
ここで添加する不溶性固体は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液、硫酸アンモニウム水溶液或いはアルカリ溶液への溶解度が小さいものであれば、特に限定はされず、例えば、ニッケル粉、鉄粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、シリカ粉などを用いることができる。
形状や大きさも特に限定はしないが、後述するように互いに衝突させたり、振動を与えたりして表面のニッケル析出物を分離することがあるので、衝撃や摩擦に耐える強度を有し、ニッケル析出物が効果的に分離できるように表面がなだらかな形状であるものが適している。
さらに、ニッケル析出物を分離した後の不溶性固体は、必要に応じて洗浄等の前処理を行った後で再び繰り返して使用することもできる。
本発明では、上記不溶性固体を種晶として用い、分散剤を添加することを特徴とするものであり、加えた不溶性固体を錯体溶液中で十分な分散状態を形成し、その不溶性固体表面に微細なニッケル析出物を生成可能な分散剤を用いるもので、錯体溶液に加えられた不溶性固体の重量の1.0〜20.0重量%の範囲での適量の添加が望ましく、特にポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩が好ましい。
上記不溶性固体を種晶として用い、分散剤にポリアクリル酸塩を用いる場合(図1の製造フローで示す製造方法)、その添加量は混合スラリーに加えられた不溶性固体の重量の1.0重量%を越えて、10.0重量%以下の量とし、望ましくは2.0重量%以上、6.0重量%以下とする。
一方、その上限は6.0重量%を越えても増加傾向だが、あまりに多数の種結晶が生じることはハンドリングや分散剤同士が凝集してしまい、添加量に見合う効果を考えると好ましくないために10.0重量%以下、より好ましくは6.0重量%以下とする。
また、分散剤にリグニンスルホン酸塩を用いる場合(図1の製造フローで示す製造方法)、その添加量は混合スラリーに加えられた不溶性固体の重量の2.0重量%以上、20.0重量%以下の量とする。その添加量が2.0重量%以下では、ニッケル粉を得ることができず、2.0重量%を超えることが必要だが、特に5.0重量%を越えると添加量に比例して発生するニッケル粉の数を制御できて好ましい。
次に、混合スラリー中のニッケル錯イオンを水素により還元処理して不溶性固体表面上にニッケル析出物が生成した複合体を形成する「還元・析出工程」は、バッチ処理にて行う方法、及び連続処理にて行う方法を採ることが可能である。
先ず、バッチ処理において還元・析出処理を行う「還元・析出工程」は、分散剤及び不溶性固体を添加して形成した混合スラリーを、耐高圧高温容器の反応槽内に装入し、反応槽内に貯留された混合スラリーに水素ガスを吹き込んで、混合スラリー中のニッケル錯イオンを還元し、含まれる不溶性固体表面上にニッケルを析出物として生成した複合体を含む還元スラリーを形成する工程である。
さらに、反応時の圧力は1.0〜4.0MPaが好ましい。圧力が、1.0MPa未満では反応効率が低下し、4.0MPaを超えても反応への影響はなく、水素ガスのロスが増加する。
即ち、還元反応の工程を連続処理化することにより、スラリーの入れ替えや、還元処理の条件設定に掛かる時間の削減が可能であり、生産効率の向上が期待できる。また、混合スラリーの流入量を制御することによって、生産量の調製が可能であり、反応槽を小容量化可能となり、設備投資や補修に係る費用が圧縮でき、経済的である。
さらに、反応時の反応槽気相部の圧力は、1.0〜4.0MPaが好ましい。圧力が、1.0MPa未満では反応効率が低下し、4.0MPaを超えても反応への影響はなく、水素ガスのロスが増加する。
この工程は、不溶性固体を使用した場合に行われる工程で、還元・析出工程で生成したニッケル析出物は不溶性固体表面上に付着した状態であり、その状態では利用できないので、表面に形成されたニッケル析出物を不溶性固体と分離、回収するものである。
具体的な分離方法として、例えば発熱で酸化しないように、不溶性固体ごと水中に入れ、回転して不溶性固体同士を衝突させて表面のニッケル析出物を分離し、篩い分けしてニッケル粉を得る方法、湿式篩上で回転させて、分離したニッケル析出物を同時に篩い分けてニッケル粉を得る方法、あるいは、液中に超音波を加えて振動を与え、分離し、篩い分けてニッケル粉を得るなどの方法がある。篩い分けに際しては、目開きが不溶性固体の大きさより細かいものであれば用いることができる。
[混合工程]
ニッケル分で75gに相当する硫酸ニッケル六水和物336gと硫酸アンモニウム330g、25%アンモニア水を191mlを加えて硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を形成した後、図1の製造フローに沿って、先ず、その溶液に種晶とする析出母体となる不溶性固体として、平均粒径(D50)が85μmのサイズのニッケル粉75gを、分散剤として分子量4000のポリアクリル酸ナトリウムを、種晶とする不溶性固体の重量の2重量%に相当する1.5gを添加した後に加え、液量が1000mlになるように純水を加えて調整し、混合スラリーを形成した。
次いで、上記で作製した混合スラリーをオートクレーブの内筒缶に装入し、撹拌しながら185℃に昇温後、その温度を保持した状態で、ボンベから水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力が3.5MPaになるように水素ガスを供給した。
反応が進行するに伴ってニッケルが粉末として析出し、その分濾液のニッケル濃度は低下する。図2に示すように、その濃度変化から計算して30分間で80%以上のニッケルを還元し回収することができた。
回収したニッケル粉を観察したところ、種結晶に使用できるほど微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
ポリアクリル酸ナトリウムを、種晶重量の6重量%に相当する4.5g添加したこと以外は、上記参考例1と同じ条件と方法でニッケル粉を製造して回収した。
その結果を図2に示す。図2に示されるように、参考例1と同様に30分間で80%以上のニッケルを還元し回収することができた。
ポリアクリル酸ナトリウムを種晶重量の10重量%に相当する7.5g添加したこと以外は、上記参考例1と同じ条件と方法でニッケル粉を製造し回収した。
その結果を図2に示す。図2に示されるように、参考例1と同様に30分間で80%以上のニッケルを還元して回収することができた。
ポリアクリル酸ナトリウムを種晶重量の1重量%に相当する0.75g添加した以外は参考例1と同じ条件と方法でニッケル粉を製造して回収した。
その結果を図2に示す。図2に示されるように、濃度変化から計算して30分間で50%程度のニッケルを還元し回収できた。
分散剤と不溶性固体を添加せず、それ以外の液組成や還元条件は参考例1と同様にしてニッケル粉を作製した。
サンプリングした溶液のニッケル濃度は75g/Lから45g/L程度まで低下した。しかし、水素ガス吹き込み終了後の溶液からはニッケル粉は回収できず、内筒缶内の側壁や攪拌機に板状のニッケルのスケーリングが生成している様子が確認できた。
分散剤を添加せず、不溶性固体としてニッケル粉を75g添加した以外は、参考例1と同じ方法でニッケル粉を製造した。
その結果を図3に示す。図3に示されるように、濃度変化から計算して30分間で20%程度のニッケルしか還元できなかった。
ニッケル75gに相当する硫酸ニッケル六水和物336g、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191mlを加えて硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を作製した。さらに図1に示す製造フローに沿って、分子量4000、濃度40%のポリアクリル酸ナトリウム溶液、0.38g、1.88g、3.75g、7.5g、11.3gを、作製した硫酸ニッケルアンミン錯体溶液、それぞれに添加して合計の液量が1000mlになるように調整した5つの溶液を作製した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して不溶性固体とニッケル析出物の複合体を回収し、次いで目開きが75μmの湿式篩を使用して、振動を加えて母体の不溶性固体と、表面のニッケル析出物とを分離してニッケル粉を回収した。
回収したニッケル粉を真球と仮定し、測定した平均粒径:Dとニッケルの密度:ρ=8.9g/cm3を用いて、その回収したニッケル粉の個数を下記(1)式により算出した。
図4から、ポリアクリル酸ナトリウム添加量とニッケル粉個数には相関がみられ、ポリアクリル酸ナトリウムの添加量によりニッケル粉発生量を調整できることがわかる。特に、ポリアクリル酸ナトリウムの添加量が1.0重量%以下ではニッケル粉を得ることができないが、1.0重量%を超えると添加量に比例して発生するニッケル粉の数を制御できることがわかる。
分散剤にリグニンスルホン酸ナトリウムを用い、1.5g、3.0g、4.5g、7.5g、11.3g、15.0gを用いた以外は、参考例1と同様の方法を用いてニッケル粉を製造した。添加したリグニンスルホン酸ナトリウムは不活性固体量のそれぞれ2.0重量%、4.0重量%、6.0重量%、10.0重量%、15.0重量%、20.0重量%に相当する。
得られたニッケル粉を、参考例5と同様に、上記(1)式を用いた算出方法によりニッケル粉の個数を算出した。
上記(1)式を用いて算出したニッケル粉の個数とリグニンスルホン酸ナトリウムの添加量との関係を図5に示す。
[実施例7]
その結果、表1に示すように粒子数が増加しており、また、図6に示す粒度分布より、微細なニッケル粉が生成していることがわかる。
Claims (4)
- 反応槽内に、連続して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液と不溶性固体と分散剤を供給、攪拌して形成したニッケル錯イオンを含む溶液に、水素ガスを吹き込み、前記ニッケル錯イオンを含む溶液中のニッケル錯イオンを還元処理して前記不溶性固体の表面にニッケル粒子の析出物を備えた複合体を形成し、前記複合体を含む還元スラリーを得た後、前記反応槽から前記還元スラリーを抜出する際に、
前記反応槽の液量が一定となるように、
前記硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液と不溶性固体と分散剤の供給量と、
前記還元スラリーの排出量を調整して
前記反応槽内から前記還元スラリーを抜出することを特徴とするニッケル粉の製造方法。 - 前記分散剤の添加量を制御して前記還元処理におけるニッケル析出物の生成により得られるニッケル粉の個数を制御することを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記分散剤がポリアクリル酸塩で、前記添加量が前記反応槽内の不溶性固体の重量の1.0重量%を越えて、10.0重量%以下の量であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記分散剤がリグニンスルホン酸で、前記添加量が前記反応槽内の不溶性固体の重量の2.0重量%を越えて、20.0重量%以下の量であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
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