本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。例えば、以下の実施形態では、デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを製造する場合として説明するがこれに限定されない。デバイスとしては、銅箔等による配線パターンが形成される配線基板、多数の半導体素子(トランジスタ、ダイオード等)が形成される基板等を製造することもできる。
[第1実施形態]
第1実施形態は、基板に露光処理を施す基板処理装置が露光装置である。また、露光装置は、露光後の基板に各種処理を施してデバイスを製造するデバイス製造システムに組み込まれている。先ず、デバイス製造システムについて説明する。
<デバイス製造システム>
図1は、第1実施形態のデバイス製造システムの構成を示す図である。図1に示すデバイス製造システム1は、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイを製造するライン(フレキシブル・ディスプレイ製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば有機ELディスプレイ等がある。このデバイス製造システム1は、可撓性の基板Pをロール状に巻回した供給用ロールFR1から、該基板Pを送り出し、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを可撓性のデバイスとして回収用ロールFR2に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。第1実施形態のデバイス製造システム1では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールFR1から送り出され、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、順次、n台の処理装置U1、U2、U3、U4、U5、…Unを経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。先ず、デバイス製造システム1の処理対象となる基板Pについて説明する。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んでいる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールFR1となり、この供給用ロールFR1が、デバイス製造システム1に装着される。供給用ロールFR1が装着されたデバイス製造システム1は、1個のデバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールFR1から送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板Pは、複数のデバイスが連なった状態となる。つまり、供給用ロールFR1から送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。尚、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングのための微細な隔壁構造(凹凸構造)をインプリント法等で形成したものでも良い。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールFR2として回収される。回収用ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着される。回収用ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個のデバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。尚、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図1では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において供給用ロールFR1及び回収用ロールFR2を結ぶ方向であり、図1における左右方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、図1における前後方向である。Y方向は、供給用ロールFR1及び回収用ロールFR2の軸方向となっている。Z方向は、鉛直方向であり、図1における上下方向である。
デバイス製造システム1は、基板Pを供給する基板供給装置2と、基板供給装置2によって供給された基板Pに対して各種処理を施す処理装置U1〜Unと、処理装置U1〜Unによって処理が施された基板Pを回収する基板回収装置4と、デバイス製造システム1の各装置を制御する上位制御装置5とを備える。
基板供給装置2には、供給用ロールFR1が回転可能に装着される。基板供給装置2は、装着された供給用ロールFR1から基板Pを送り出す駆動ローラDR1と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC1とを有する。駆動ローラDR1は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを供給用ロールFR1から回収用ロールFR2へ向かう搬送方向に送り出すことで、基板Pを処理装置U1〜Unに供給する。このとき、エッジポジションコントローラEPC1は、基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm程度の範囲から±数十μm程度の範囲に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。
基板回収装置4には、回収用ロールFR2が回転可能に装着される。基板回収装置4は、処理後の基板Pを回収用ロールFR2側に引き寄せる駆動ローラDR2と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC2とを有する。基板回収装置4は、駆動ローラDR2により基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向に引き寄せると共に、回収用ロールFR2を回転させることで、基板Pを巻き上げる。このとき、エッジポジションコントローラEPC2は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、基板Pの幅方向の端部(エッジ)が幅方向においてばらつかないように、基板Pの幅方向における位置を修正する。
処理装置U1は、基板供給装置2から供給された基板Pの表面に感光性機能液を塗布する塗布装置である。感光性機能液としては、例えば、フォトレジスト、感光性シランカップリング材(感光性親撥液性改質材、感光性メッキ還元材等)、UV硬化樹脂液等が用いられる。処理装置U1は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、塗布機構Gp1と乾燥機構Gp2とが設けられている。塗布機構Gp1は、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラR1と、圧胴ローラR1に対向する塗布ローラR2とを有する。塗布機構Gp1は、供給された基板Pを圧胴ローラR1に巻き付けた状態で、圧胴ローラR1及び塗布ローラR2により基板Pを挟持する。そして、塗布機構Gp1は、圧胴ローラR1及び塗布ローラR2を回転させることで、基板Pを搬送方向に移動させながら、塗布ローラR2により感光性機能液を塗布する。乾燥機構Gp2は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアーを吹き付け、感光性機能液に含まれる溶質(溶剤または水)を除去し、感光性機能液が塗布された基板Pを乾燥させることで、基板P上に感光性機能層を形成する。
処理装置U2は、基板Pの表面に形成された感光性機能層を安定にすべく、処理装置U1から搬送された基板Pを所定温度(例えば、数10〜120℃程度)まで加熱する加熱装置である。処理装置U2は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、加熱チャンバHA1と冷却チャンバHA2とが設けられている。加熱チャンバHA1は、その内部に複数のローラ及び複数のエア・ターンバーが設けられており、複数のローラ及び複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を構成している。複数のローラは、基板Pの裏面に転接して設けられ、複数のエア・ターンバーは、基板Pの表面側に非接触状態で設けられる。複数のローラ及び複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。加熱チャンバHA1内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら所定温度まで加熱される。冷却チャンバHA2は、加熱チャンバHA1で加熱された基板Pの温度が、後工程(処理装置U3)の環境温度と揃うようにすべく、基板Pを環境温度まで冷却する。冷却チャンバHA2は、その内部に複数のローラが設けられ、複数のローラは、加熱チャンバHA1と同様に、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。冷却チャンバHA2内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら冷却される。冷却チャンバHA2の搬送方向における下流側には、駆動ローラDR3が設けられ、駆動ローラDR3は、冷却チャンバHA2を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置U3へ向けて供給する。
処理装置(基板処理装置)U3は、処理装置U2から供給された、表面に感光性機能層が形成された基板(感光基板)Pに対して、ディスプレイ用の回路または配線等のパターンを投影露光する露光装置である。詳細は後述するが、処理装置U3は、反射型の円筒マスクM(円筒ドラム21)に照明光束を照明し、照明光束がマスクMにより反射されることで得られる投影光束を基板Pに投影露光する。処理装置U3は、処理装置U2から供給された基板Pを搬送方向の下流側に送る駆動ローラDR4と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC3とを有する。駆動ローラDR4は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向の下流側に送り出すことで、基板Pを露光位置で安定に支持する回転ドラム(基板支持ドラム)25へ向けて供給する。エッジポジションコントローラEPC3は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、露光位置における基板Pの幅方向が目標位置となるように、基板Pの幅方向における位置を修正する。
また、処理装置U3は、露光後の基板Pにたるみを与えた状態で、基板Pを搬送方向の下流側へ送る2組の駆動ローラDR6、DR7を有するバッファー部DLを備えている。2組の駆動ローラDR6、DR7は、基板Pの搬送方向に所定の間隔を空けて配置されている。駆動ローラDR6は、搬送される基板Pの上流側を挟持して回転し、駆動ローラDR7は、搬送される基板Pの下流側を挟持して回転することで、基板Pを処理装置U4へ向けて供給する。このとき、基板Pは、たるみが与えられているため、駆動ローラDR7よりも搬送方向の下流側において生ずる搬送速度の変動を吸収でき、搬送速度の変動による基板Pへの露光処理の影響を縁切りすることができる。また、処理装置U3内には、円筒マスクM(以降、単にマスクMとも呼ぶ)のマスクパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)する為に、基板Pに予め形成されたアライメントマーク、或いは回転ドラム(基板支持ドラム)25の外周面の一部に形成された基準パターン等を検出するアライメント顕微鏡AMG1、AMG2が設けられている。
処理装置U4は、処理装置U3から搬送された露光後の基板Pに対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等を行なう湿式処理装置である。処理装置U4は、その内部に、鉛直方向(Z方向)に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3と、基板Pを搬送する複数のローラと、を有する。複数のローラは、3つの処理槽BT1、BT2、BT3の内部を、基板Pが順に通過する搬送経路となるように配置される。処理槽BT3の搬送方向における下流側には、駆動ローラDR8が設けられ、駆動ローラDR8は、処理槽BT3を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置U5へ向けて供給する。
図示は省略するが、処理装置U5は、処理装置U4から搬送された基板Pを乾燥させる乾燥装置である。処理装置U5は、処理装置U4において湿式処理された基板Pに付着する液滴を除去すると共に、基板Pの水分含有量を調整する。処理装置U5により乾燥された基板Pは、さらに幾つかの処理装置を経て、処理装置Unに搬送される。そして、処理装置Unで処理された後、基板Pは、基板回収装置4の回収用ロールFR2に巻き上げられる。
上位制御装置5は、基板供給装置2、基板回収装置4及び複数の処理装置U1〜Unを統括制御する。上位制御装置5は、基板供給装置2及び基板回収装置4を制御して、基板Pを基板供給装置2から基板回収装置4へ向けて搬送させる。また、上位制御装置5は、基板Pの搬送に同期させながら、複数の処理装置U1〜Unを制御して、基板Pに対する各種処理を実行させる。
<露光装置(基板処理装置)>
次に、第1実施形態の処理装置U3としての露光装置(基板処理装置)の構成について、図2から図5を参照して説明する。図2は、第1実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。図3は、図2に示す露光装置の照明領域及び投影領域の配置を示す図である。図4は、図2に示す露光装置の照明光学系及び投影光学系の構成を示す図である。図5は、マスクに照射される照明光束、及びマスクから射出する投影光束の状態を示す図である。
図2に示す露光装置U3は、いわゆる走査露光装置であり、基板Pを搬送方向に搬送しながら、円筒状のマスクMの外周面に形成されたマスクパターンの像を、基板Pの表面に投影露光する。尚、図2では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっており、図1と同様の直交座標系となっている。
先ず、露光装置U3に用いられるマスクM(図1中の円筒マスクM)について説明する。マスクMは、例えば金属製の円筒体を用いた反射型のマスクとなっている。マスクMのパターンは、Y方向に延びる第1軸AX1を中心とする曲率半径Rmとなる外周面(円周面)を有する円筒基材に形成される。マスクMの円周面は、所定のマスクパターンが形成されたマスク面(第1面)P1となっている。マスク面P1は、所定方向に光束を高い効率で反射する高反射部と所定方向に光束を反射しないまたは低い効率で反射する反射抑制部(低反射部)とを含む。マスクパターンは、高反射部及び反射抑制部により形成されている。ここで、反射抑制部は、所定方向に反射する光が少なくなればよい。このため、反射抑制部は、光を吸収する材料や、光を透過する材料、或いは特定方向以外に光を回折させる材料で構成することができる。露光装置U3は、上記構成のマスクMとして、アルミニウムやSUS等の金属の円筒基材で作成したマスクを用いることができる。このため、露光装置U3は、安価なマスクを用いて露光を行うことができる。
尚、マスクMは、1個の表示デバイスに対応するパネル用パターンの全体または一部が形成されていてもよいし、複数個の表示デバイスに対応するパネル用パターンが形成されていてもよい。また、マスクMは、パネル用パターンが第1軸AX1周りの周方向に繰り返し複数個形成された多面取り、或いは小型のパネル用パターンが第1軸AX1に平行な方向に繰り返し複数形成された多面取りでもよい。さらに、マスクMは、第1の表示デバイスのパネル用パターンと、第1の表示デバイスとサイズ等が異なる第2の表示デバイスのパネル用パターンとが形成された異サイズパターンの多面取りであってもよい。また、マスクMは、第1軸AX1を中心とする曲率半径Rmとなる円周面を有していればよく、円筒体の形状に限定されない。例えば、マスクMは、円周面を有する円弧状の板材であってもよい。また、マスクMは、薄板状であってもよく、薄板状のマスクMを湾曲させて、円周面を有するようにしてもよい。
次に、図2に示す露光装置U3について説明する。露光装置U3は、上記した駆動ローラDR4、DR6、DR7、基板支持ドラム25、エッジポジションコントローラEPC3及びアライメント顕微鏡AMG1、AMG2の他に、マスク保持機構11と、基板支持機構12と、照明光学系ILと、投影光学系PLと、下位制御装置16と、を有する。露光装置U3は、光源装置13から射出された照明光を、照明光学系ILと投影光学系PLの一部とを介して、マスク保持機構11のマスク保持ドラム21(以下、円筒ドラム21とも呼ぶ)に支持されるマスクMのパターンが形成されているマスク面P1に照射し、マスクMのマスク面P1で反射した投影光束(結像光)を、投影光学系PLを介して基板支持機構12の基板支持ドラム25で支持される基板Pに投射する。
下位制御装置16は、露光装置U3の各部を制御し、各部に処理を実行させる。下位制御装置16は、デバイス製造システム1の上位制御装置5の一部または全部であってもよい。また、下位制御装置16は、上位制御装置5に制御され、上位制御装置5とは別の装置であってもよい。下位制御装置16は、例えば、コンピュータを含む。
マスク保持機構11は、マスクMを保持する円筒ドラム21と、円筒ドラム21を回転させる第1駆動部22とを有している。円筒ドラム21は、マスクMの第1軸AX1を回転中心とする曲率半径Rmの円筒となるようにマスクMを保持する。第1駆動部22は、下位制御装置16に接続され、第1軸AX1を回転中心に円筒ドラム21を回転させる。
尚、マスク保持機構11の円筒ドラム21は、その外周面に高反射部と低反射部とでマスクパターンを直接形成したが、この構成に限らない。マスク保持機構11としての円筒ドラム21は、その外周面に倣って薄板状の反射型マスクMを巻き付けて保持してもよい。また、マスク保持機構11としての円筒ドラム21は、予め半径Rmで円弧状に湾曲させた板状の反射型マスクMを円筒ドラム21の外周面に着脱可能に保持してもよい。
基板支持機構12は、基板Pを支持する基板支持ドラム25と、基板支持ドラム25を回転させる第2駆動部26と、一対のエア・ターンバーATB1、ATB2と、一対のガイドローラ27、28とを有している。基板支持ドラム25は、Y方向に延びる第2軸AX2を中心とする曲率半径Rpとなる外周面(円周面)を有する円筒形状に形成されている。ここで、第1軸AX1と第2軸AX2とは互いに平行になっており、第1軸AX1及び第2軸AX2を通る(含む)面を中心面CLとしている。基板支持ドラム25の円周面の一部は、基板Pを支持する支持面P2となっている。つまり、基板支持ドラム25は、その支持面P2に基板Pが巻き付けられることで、基板Pを円筒面状に湾曲させて安定に支持する。第2駆動部26は、下位制御装置16に接続され、第2軸AX2を回転中心に基板支持ドラム25を回転させる。一対のエア・ターンバーATB1,ATB2と一対のガイドローラ27、28が、基板支持ドラム25を挟んで、基板Pの搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。ガイドローラ27は駆動ローラDR4から搬送された基板Pをエア・ターンバーATB1を介して基板支持ドラム25に案内し、ガイドローラ28は基板支持ドラム25を経てエア・ターンバーATB2から搬送された基板Pを駆動ローラDR6に案内する。
基板支持機構12は、第2駆動部26により基板支持ドラム25を回転させることで、基板支持ドラム25に導入した基板Pを、基板支持ドラム25の支持面P2で支持しながら、所定速度で長尺方向(X方向)に送る。
このとき、第1駆動部22及び第2駆動部26に接続された下位制御装置16は、円筒ドラム21と基板支持ドラム25とを所定の回転速度比で同期回転させることによって、マスクMのマスク面P1に形成されたマスクパターンの投影像が、基板支持ドラム25の支持面P2に巻き付けられた基板Pの表面(円周面に倣って湾曲した面)に連続的に繰り返し走査露光される。露光装置U3、第1駆動部22及び第2駆動部26が本実施形態の移動機構となる。また、図2に示した露光装置U3においては、ガイドローラ27よりも基板Pの搬送方向上流側の部分が基板支持ドラム25の支持面P2に基板Pを供給する基板供給部となる。基板供給部には、図1で示した供給用ロールFR1を直接設けても良い。同様に、ガイドローラ28よりも基板Pの搬送方向下流側の部分が基板支持ドラム25の支持面P2から基板Pを回収する基板回収部となる。基板回収部に、図1で示した回収用ロールFR2を直接設けても良い。
光源装置13は、マスクMに照明される照明光束EL1を出射する。光源装置13は、光源31と導光部材32とを有する。光源31は、所定の波長の光を射出する光源である。光源31は、例えば水銀ランプ等のランプ光源、エキシマレーザ等の気体レーザ光源、レーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等の固体レーザ光源である。光源31が射出する照明光は、例えば水銀ランプを用いる場合は紫外域の輝線(g線、h線、i線)が利用でき、エキシマレーザ光源を用いる場合はKrFエキシマレーザ光(波長248nm)やArFエキシマレーザ光(波長193nm)等の遠紫外光(DUV光)が利用できる。ここで、光源31は、i線(365nmの波長)より短い波長を含む照明光束EL1を射出することが好ましい。そのような照明光束EL1として、YAGレーザの第3高調波として射出されるレーザ光(波長355nm)、YAGレーザの第4高調波として射出されるレーザ光(波長266nm)を使うこともできる。
導光部材32は、光源31から出射された照明光束EL1を照明光学系ILに導く。導光部材32は、光ファイバ、またはミラーを用いたリレーモジュール等で構成される。また、導光部材32は、照明光学系ILが複数設けられている場合、光源31からの照明光束EL1を複数に分割し、複数の照明光束EL1を複数の照明光学系ILに導く。本実施形態の導光部材32は、光源31から射出された照明光束EL1を所定の偏光状態の光として偏光ビームスプリッタPBSに入射させる。偏光ビームスプリッタPBSは、マスクMを落射照明するためにマスクMと投影光学系PLとの間に設けられ、S偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。このため、光源装置13は、偏光ビームスプリッタPBSに入射する照明光束EL1が直線偏光(S偏光)の光束となる照明光束EL1を出射する。光源装置13は、偏光ビームスプリッタPBSに波長及び位相が揃った偏光レーザを出射する。例えば、光源装置13は、光源31から射出される光束が偏光された光である場合、導光部材32として、偏波面保存ファイバを用い、光源装置13から出力されたレーザ光の偏光状態を維持したまま導光する。また、例えば、光源31から出力された光束を光ファイバで案内し、光ファイバから出力された光を偏光板で偏光させてもよい。つまり光源装置13は、ランダム偏光の光束が案内されている場合、ランダム偏光の光束を偏光板で偏光してもよい。また光源装置13は、レンズ等を用いたリレー光学系により、光源31から出力された光束を案内してもよい。
ここで、図3に示すように、第1実施形態の露光装置U3は、いわゆるマルチレンズ方式を想定した露光装置である。尚、図3には、円筒ドラム21に保持されたマスクM上の照明領域IRを−Z側から見た平面図(図3の左図)と、基板支持ドラム25に支持された基板P上の投影領域PAを+Z側から見た平面図(図3の右図)とが図示されている。図3の符号Xsは、円筒ドラム21及び基板支持ドラム25の移動方向(回転方向)を示す。マルチレンズ方式の露光装置U3は、マスクM上の複数(第1実施形態では例えば6つ)の照明領域IR1〜IR6に照明光束EL1をそれぞれ照明し、各照明光束EL1が各照明領域IR1〜IR6に反射されることで得られる複数の投影光束EL2を、基板P上の複数(第1実施形態では例えば6つ)の投影領域PA1〜PA6に投影露光する。
先ず、照明光学系ILにより照明される複数の照明領域IR1〜IR6について説明する。図3に示すように、複数の照明領域IR1〜IR6は、中心面CLを挟んで、回転方向の上流側のマスクM上に第1照明領域IR1、第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5が配置され、回転方向の下流側のマスクM上に第2照明領域IR2、第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6が配置される。各照明領域IR1〜IR6は、マスクMの軸方向(Y方向)に延びる平行な短辺及び長辺を有する細長い台形状の領域となっている。このとき、台形状の各照明領域IR1〜IR6は、その短辺が中心面CL側に位置し、その長辺が外側に位置する領域となっている。第1照明領域IR1、第3照明領域IR3及び第5照明領域IR5は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、第2照明領域IR2、第4照明領域IR4及び第6照明領域IR6は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2照明領域IR2は、軸方向において、第1照明領域IR1と第3照明領域IR3との間に配置される。同様に、第3照明領域IR3は、軸方向において、第2照明領域IR2と第4照明領域IR4との間に配置される。第4照明領域IR4は、軸方向において、第3照明領域IR3と第5照明領域IR5との間に配置される。第5照明領域IR5は、軸方向において、第4照明領域IR4と第6照明領域IR6との間に配置される。各照明領域IR1〜IR6は、Y方向に隣り合う台形状の照明領域の斜辺部の三角部同士が、マスクMの周方向(X方向)に回したときに互いに重なるように(オーバーラップするように)配置されている。尚、第1実施形態において、各照明領域IR1〜IR6は、台形状の領域としたが、長方形状の領域でもあってよい。
また、マスクMは、マスクパターンが形成されるパターン形成領域A3と、マスクパターンが形成されないパターン非形成領域A4とを有する。パターン非形成領域A4は、照明光束EL1を反射し難い低反射領域(反射抑制部)であり、パターン形成領域A3を枠状に囲んで配置されている。第1〜第6照明領域IR1〜IR6は、パターン形成領域A3のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
照明光学系ILは、複数の照明領域IR1〜IR6に応じて複数(第1実施形態では例えば6つ)設けられている。複数の照明光学系(分割照明光学系)IL1〜IL6には、光源装置13からの照明光束EL1がそれぞれ入射する。各照明光学系IL1〜IL6は、光源装置13から入射された各照明光束EL1を、各照明領域IR1〜IR6にそれぞれ導く。つまり、第1照明光学系IL1は、照明光束EL1を第1照明領域IR1に導き、同様に、第2〜第6照明光学系IL2〜IL6は、照明光束EL1を第2〜第6照明領域IR2〜IR6に導く。複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んで、第1、第3、第5照明領域IR1、IR3、IR5が配置される側(図2の左側)に、第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5が配置される。第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の照明光学系IL1〜IL6は、中心面CLを挟んで、第2、第4、第6照明領域IR2、IR4、IR6が配置される側(図2の右側)に、第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6が配置される。第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2照明光学系IL2は、軸方向において、第1照明光学系IL1と第3照明光学系IL3との間に配置される。同様に、第3照明光学系IL3、第4照明光学系IL4、第5照明光学系IL5は、軸方向において、第2照明光学系IL2と第4照明光学系IL4との間、第3照明光学系IL3と第5照明光学系IL5との間、第4照明光学系IL4と第6照明光学系IL6との間に配置される。また、第1照明光学系IL1、第3照明光学系IL3及び第5照明光学系IL5と、第2照明光学系IL2、第4照明光学系IL4及び第6照明光学系IL6とは、Y方向からみて対称に配置されている。
次に、図4を参照して、各照明光学系IL1〜IL6について説明する。尚、各照明光学系IL1〜IL6は、同様の構成となっているため、第1照明光学系IL1(以下、単に照明光学系ILという)を例に説明する。
照明光学系ILは、照明領域IR(第1照明領域IR1)を均一な照度で照明すべく、光源装置13の光源31からの照明光束EL1をマスクM上の照明領域IRにケーラー照明する。また、照明光学系ILは、偏光ビームスプリッタPBSを用いた落射照明系となっている。照明光学系ILは、光源装置13からの照明光束EL1の入射側から順に、照明光学モジュールILMと、偏光ビームスプリッタPBSと、1/4波長板41とを有する。
図4に示すように、照明光学モジュールILMは、照明光束EL1の入射側から順に、コリメータレンズ51と、フライアイレンズ52と、複数のコンデンサーレンズ53と、シリンドリカルレンズ54と、照明視野絞り55と、リレーレンズ系56とを含んでおり、第1光軸BX1上に設けられている。コリメータレンズ51は、導光部材32から射出する光を入射して、フライアイレンズ52の入射側の面全体を照射する。フライアイレンズ52の出射側の面の中心は、第1光軸BX1上に配置される。フライアイレンズ52は、コリメータレンズ51からの照明光束EL1を、多数の点光源像に分割した面光源像を生成する。照明光束EL1はその面光源像から生成される。このとき、点光源像が生成されるフライアイレンズ52の出射側の面は、フライアイレンズ52から照明視野絞り55を介して後述する投影光学系PLの第1凹面鏡72に至る各種レンズによって、第1凹面鏡72の反射面が位置する瞳面と光学的に共役となるように配置される。フライアイレンズ52の出射側に設けられるコンデンサーレンズ53の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。コンデンサーレンズ53は、フライアイレンズ52の出射側に形成された多数の点光源像の各々からの光を、照明視野絞り55上で重畳させて、均一な照度分布で照明視野絞り55を照射する。照明視野絞り55は、図3に示した照明領域IRと相似となる台形又は長方形の矩形状の開口部を有し、その開口部の中心は第1光軸BX1上に配置される。照明視野絞り55からマスクMに至る光路中に設けられるリレーレンズ系(結像系)56、偏光ビームスプリッタPBS、1/4波長板41によって、照明視野絞り55の開口部はマスクM上の照明領域IRと光学的に共役な関係に配置される。リレーレンズ系56は、第1光軸BX1に沿って配置された複数のレンズ56a、56b、56c、56dで構成され、照明視野絞り55の開口部を透過した照明光束EL1を偏光ビームスプリッタPBSを介してマスクM上の照明領域IRに照射する。コンデンサーレンズ53の出射側であって、照明視野絞り55に隣接した位置には、シリンドリカルレンズ54が設けられている。シリンドリカルレンズ54は、入射側が平面となり出射側が凸円筒レンズ面となる平凸シリンドリカルレンズである。シリンドリカルレンズ54の光軸は、第1光軸BX1上に配置される。シリンドリカルレンズ54は、マスクM上の照明領域IRを照射する照明光束EL1の各主光線を、XZ面内では収れんさせ、Y方向に関しては平行状態にする。
偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学モジュールILMと中心面CLとの間に配置されている。偏光ビームスプリッタPBSは、波面分割面でS偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。ここで、偏光ビームスプリッタPBSに入射する照明光束EL1をS偏光の直線偏光とすると、照明光束EL1は偏光ビームスプリッタPBSの波面分割面で反射し、1/4波長板41を透過して円偏光となってマスクM上の照明領域IRを照射する。マスクM上の照明領域IRで反射した投影光束EL2は、再び1/4波長板41を通ることによって円偏光から直線P偏光に変換され、偏光ビームスプリッタPBSの波面分割面を透過して投影光学系PLに向かう。偏光ビームスプリッタPBSは、波面分割面に入射された照明光束EL1の大部分を反射すると共に、投影光束EL2の大部分を透過することが好ましい。偏光ビームスプリッタPBSの波面分割面での偏光分離特性は消光比で表されるが、その消光比は波面分割面に向かう光線の入射角によっても変わる為、波面分割面の特性は、実用上の結像性能への影響が問題にならないように、照明光束EL1や投影光束EL2のNA(開口数)も考慮して設計される。
図5は、マスクM上の照明領域IRに照射される照明光束EL1と、照明領域IRで反射された投影光束EL2との振る舞いを、XZ面(第1軸AX1と垂直な面)内で誇張して示した図である。図5に示すように、上記した照明光学系ILは、マスクMの照明領域IRで反射される投影光束EL2の主光線がテレセントリック(平行系)となるように、マスクMの照明領域IRに照射される照明光束EL1の各主光線を、XZ面(第1軸AX1と垂直な面)内では意図的に非テレセントリックな状態にし、YZ面(中心面CLと平行)内ではテレセントリックな状態にする。照明光束EL1のそのような特性は、図4中に示したシリンドリカルレンズ54によって与えられる。
具体的には、マスク面P1上の照明領域IRの周方向の中央の点Q1を通って第1軸AX1に向かう線と、マスク面P1の半径Rmの1/2の円との交点Q2(1/2半径位置)を設定したとき、照明領域IRを通る照明光束EL1の各主光線が、XZ面では交点Q2に向かうように、シリンドリカルレンズ54の凸円筒レンズ面の曲率を設定する。このようにすると、照明領域IR内で反射した投影光束EL2の各主光線は、XZ面内では、第1軸AX1、点Q1、交点Q2を通る直線と平行(テレセントリック)な状態となる。
次に、投影光学系PLにより投影露光される複数の投影領域PA1〜PA6について説明する。図3に示すように、基板P上の複数の投影領域PA1〜PA6は、マスクM上の複数の照明領域IR1〜IR6と対応させて配置されている。つまり、基板P上の複数の投影領域PA1〜PA6は、中心面CLを挟んで、搬送方向の上流側の基板P上に第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5が配置され、搬送方向の下流側の基板P上に第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6が配置される。各投影領域PA1〜PA6は、基板Pの幅方向(Y方向)に延びる短辺及び長辺を有する細長い台形状(矩形状)の領域となっている。このとき、台形状の各投影領域PA1〜PA6は、その短辺が中心面CL側に位置し、その長辺が外側に位置する領域となっている。第1投影領域PA1、第3投影領域PA3及び第5投影領域PA5は、幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、第2投影領域PA2、第4投影領域PA4及び第6投影領域PA6は、幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2投影領域PA2は、軸方向において、第1投影領域PA1と第3投影領域PA3との間に配置される。同様に、第3投影領域PA3は、軸方向において、第2投影領域PA2と第4投影領域PA4との間に配置される。第4投影領域PA4は、軸方向において、第3投影領域PA3と第5投影領域PA5との間に配置される。第5投影領域PA5は、軸方向において、第4投影領域PA4と第6投影領域PA6との間に配置される。各投影領域PA1〜PA6は、各照明領域IR1〜IR6と同様に、Y方向に隣り合う台形状の投影領域PAの斜辺部の三角部同士が、基板Pの搬送方向に関して重なるように(オーバーラップするように)配置されている。このとき、投影領域PAは、隣り合う投影領域PAの重複する領域での露光量が、重複しない領域での露光量と実質的に同じになるような形状になっている。そして、第1〜第6投影領域PA1〜PA6は、基板P上に露光される露光領域A7のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
ここで、図2において、XZ面内で見たとき、マスクM上の照明領域IR1(及びIR3、IR5)の中心点から照明領域IR2(及びIR4、IR6)の中心点までの周長は、支持面P2に倣った基板P上の投影領域PA1(及びPA3、PA5)の中心点から投影領域PA2(及びPA4、PA6)の中心点までの周長と、実質的に等しく設定されている。
投影光学系PLは、複数の投影領域PA1〜PA6に応じて複数(第1実施形態では例えば6つ)設けられている。複数の投影光学系(分割投影光学系)PL1〜PL6には、複数の照明領域IR1〜IR6から反射された複数の投影光束EL2がそれぞれ入射する。各投影光学系PL1〜PL6は、マスクMで反射された各投影光束EL2を、各投影領域PA1〜PA6にそれぞれ導く。つまり、第1投影光学系PL1は、第1照明領域IR1からの投影光束EL2を第1投影領域PA1に導き、同様に、第2〜第6投影光学系PL2〜PL6は、第2〜第6照明領域IR2〜IR6からの各投影光束EL2を第2〜第6投影領域PA2〜PA6に導く。複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んで、第1、第3、第5投影領域PA1、PA3、PA5が配置される側(図2の左側)に、第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5が配置される。第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の投影光学系PL1〜PL6は、中心面CLを挟んで、第2、第4、第6投影領域PA2、PA4、PA6が配置される側(図2の右側)に、第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6が配置される。第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2投影光学系PL2は、軸方向において、第1投影光学系PL1と第3投影光学系PL3との間に配置される。同様に、第3投影光学系PL3、第4投影光学系PL4、第5投影光学系PL5は、軸方向において、第2投影光学系PL2と第4投影光学系PL4との間、第3投影光学系PL3と第5投影光学系PL5との間、第4投影光学系PL4と第6投影光学系PL6との間に配置される。また、第1投影光学系PL1、第3投影光学系PL3及び第5投影光学系PL5と、第2投影光学系PL2、第4投影光学系PL4及び第6投影光学系PL6とは、Y方向からみて対称に配置されている。
再び、図4を参照して、各投影光学系PL1〜PL6について説明する。尚、各投影光学系PL1〜PL6は、同様の構成となっているため、第1投影光学系PL1(以下、単に投影光学系PLという)を例に説明する。
投影光学系PLは、マスクM上の照明領域IR(第1照明領域IR1)におけるマスクパターンの像を、基板P上の投影領域PAに投影する。投影光学系PLは、マスクMからの投影光束EL2の入射側から順に、上記の1/4波長板41と、上記の偏光ビームスプリッタPBSと、投影光学モジュールPLMとを有する。
1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSは、照明光学系ILと兼用となっている。換言すれば、照明光学系IL及び投影光学系PLは、1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSを共有している。
照明領域IRで反射された投影光束EL2は、テレセントリックな状態(各主光線が互いに平行な状態)となって、投影光学系PLに入射する。照明領域IRで反射された円偏光となる投影光束EL2は、1/4波長板41により円偏光から直線偏光(P偏光)に変換された後、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。偏光ビームスプリッタPBSに入射した投影光束EL2は、偏光ビームスプリッタPBSを透過した後、投影光学モジュールPLMに入射する。
投影光学モジュールPLMは、照明光学モジュールILMに対応して設けられている。つまり、第1投影光学系PL1の投影光学モジュールPLMは、第1照明光学系IL1の照明光学モジュールILMによって照明される第1照明領域IR1のマスクパターンの像を、基板P上の第1投影領域PA1に投影する。同様に、第2〜第6投影光学系PL2〜PL6の投影光学モジュールLMは、第2〜第6照明光学系IL2〜IL6の照明光学モジュールILMによって照明される第2〜第6照明領域IR2〜IR6のマスクパターンの像を、基板P上の第2〜第6投影領域PA2〜PA6に投影する。
図4に示すように、投影光学モジュールPLMは、照明領域IRにおけるマスクパターンの像を中間像面P7に結像する第1光学系61と、第1光学系61により結像した中間像の少なくとも一部を基板Pの投影領域PAに再結像する第2光学系62と、中間像が形成される中間像面P7に配置された投影視野絞り63とを備える。また、投影光学モジュールPLMは、フォーカス補正光学部材64と、像シフト用光学部材65と、倍率補正用光学部材66と、ローテーション補正機構67と、偏光調整機構(偏光調整手段)68とを備える。
第1光学系61及び第2光学系62は、例えばダイソン系を変形したテレセントリックな反射屈折光学系である。第1光学系61は、その光軸(以下、第2光軸BX2という)が中心面CLに対して実質的に直交する。第1光学系61は、第1偏向部材70と、第1レンズ群71と、第1凹面鏡72とを備える。第1偏向部材70は、第1反射面P3と第2反射面P4とを有する三角プリズムである。第1反射面P3は、偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72に入射させる面となっている。第2反射面P4は、第1凹面鏡72で反射された投影光束EL2が第1レンズ群71を通って入射し、入射した投影光束EL2を投影視野絞り63へ向けて反射する面となっている。第1レンズ群71は、各種レンズを含み、各種レンズの光軸は、第2光軸BX2上に配置されている。第1凹面鏡72は、第1光学系61の瞳面に配置され、フライアイレンズ52により生成される多数の点光源像と光学的に共役な関係に設定される。
偏光ビームスプリッタPBSからの投影光束EL2は、第1偏向部材70の第1反射面P3で反射され、第1レンズ群71の上半分の視野領域を通って第1凹面鏡72に入射する。第1凹面鏡72に入射した投影光束EL2は、第1凹面鏡72で反射され、第1レンズ群71の下半分の視野領域を通って第1偏向部材70の第2反射面P4に入射する。第2反射面P4に入射した投影光束EL2は、第2反射面P4で反射され、フォーカス補正光学部材64及び像シフト用光学部材65を通過し、投影視野絞り63に入射する。
投影視野絞り63は、投影領域PAの形状を規定する開口を有する。すなわち、投影視野絞り63の開口の形状が投影領域PAの実質的な形状を規定することになる。従って、照明光学系IL内の照明視野絞り55の開口の形状を、投影領域PAの実質的な形状と相似の台形状にする場合は、投影視野絞り63を省略することができる。
第2光学系62は、第1光学系61と同様の構成であり、中間像面P7を挟んで第1光学系61と対称に設けられている。第2光学系62は、その光軸(以下、第3光軸BX3という)が中心面CLに対して実質的に直交し、第2光軸BX2と平行になっている。第2光学系62は、第2偏向部材80と、第2レンズ群81と、第2凹面鏡82とを備える。第2偏向部材80は、第3反射面P5と第4反射面P6とを有する。第3反射面P5は、投影視野絞り63からの投影光束EL2を反射させ、反射させた投影光束EL2を第2レンズ群81を通って第2凹面鏡82に入射させる面となっている。第4反射面P6は、第2凹面鏡82で反射された投影光束EL2が第2レンズ群81を通って入射し、入射した投影光束EL2を投影領域PAへ向けて反射する面となっている。第2レンズ群81は、各種レンズを含み、各種レンズの光軸は、第3光軸BX3上に配置されている。第2凹面鏡82は、第2光学系62の瞳面に配置され、第1凹面鏡72に結像した多数の点光源像と光学的に共役な関係に設定される。
投影視野絞り63からの投影光束EL2は、第2偏向部材80の第3反射面P5で反射され、第2レンズ群81の上半分の視野領域を通って第2凹面鏡82に入射する。第2凹面鏡82に入射した投影光束EL2は、第2凹面鏡82で反射され、第2レンズ群81の下半分の視野領域を通って第2偏向部材80の第4反射面P6に入射する。第4反射面P6に入射した投影光束EL2は、第4反射面P6で反射され、倍率補正用光学部材66を通過し、投影領域PAに投射される。これにより、照明領域IRにおけるマスクパターンの像は、投影領域PAに等倍(×1)で投影される。
フォーカス補正光学部材64は、第1偏向部材70と投影視野絞り63との間に配置されている。フォーカス補正光学部材64は、基板P上に投影されるマスクパターンの像のフォーカス状態を調整する。フォーカス補正光学部材64は、例えば、2枚のクサビ状のプリズムを逆向き(図4ではX方向について逆向き)にして、全体として透明な平行平板になるように重ね合わせたものである。この1対のプリズムを互いに対向する面間の間隔を変えずに斜面方向にスライドさせることにより、平行平板としての厚みを可変にする。これによって第1光学系61の実効的な光路長を微調整し、中間像面P7及び投影領域PAに形成されるマスクパターンの像のピント状態が微調整される。
像シフト用光学部材65は、第1偏向部材70と投影視野絞り63との間に配置されている。像シフト用光学部材65は、基板P上に投影されるマスクパターンの像を像面内において移動可能に調整する。像シフト用光学部材65は、図4のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、図4のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとで構成される。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、中間像面P7及び投影領域PAに形成されるマスクパターンの像をX方向やY方向に微少シフトさせることができる。
倍率補正用光学部材66は、第2偏向部材80と基板Pとの間に配置されている。倍率補正用光学部材66は、例えば、凹レンズ、凸レンズ、凹レンズの3枚を所定間隔で同軸に配置し、前後の凹レンズは固定して、間の凸レンズを光軸(主光線)方向に移動させるように構成したものである。これによって、投影領域PAに形成されるマスクパターンの像は、テレセントリックな結像状態を維持しつつ、等方的に微少量だけ拡大または縮小される。尚、倍率補正用光学部材66を構成する3枚のレンズ群の光軸は、投影光束EL2の主光線と平行になるようにXZ面内では傾けられている。
ローテーション補正機構67は、例えば、アクチュエータ(図示略)によって、第1偏向部材70をZ軸と平行な軸周りに微少回転させるものである。このローテーション補正機構67は、第1偏向部材70の回転によって、中間像面P7に形成されるマスクパターンの像を、その中間像面P7内で微少回転させることができる。
偏光調整機構68は、例えば、アクチュエータ(図示略)によって、1/4波長板41を、板面に直交する軸周りに回転させて、偏光方向を調整するものである。偏光調整機構68は、1/4波長板41を回転させることによって、投影領域PAに投射される投影光束EL2の照度を調整することができる。
このように構成された投影光学系PLにおいて、マスクMからの投影光束EL2は、照明領域IRからテレセントリックな状態(各主光線が互いに平行な状態)で出射し、1/4波長板41及び偏光ビームスプリッタPBSを通って第1光学系61に入射する。第1光学系61に入射した投影光束EL2は、第1光学系61の第1偏向部材70の第1反射面(平面鏡)P3で反射され、第1レンズ群71を通って第1凹面鏡72で反射される。第1凹面鏡72で反射された投影光束EL2は、再び第1レンズ群71を通って第1偏向部材70の第2反射面(平面鏡)P4で反射されて、フォーカス補正光学部材64及び像シフト用光学部材65を透過して、投影視野絞り63に入射する。投影視野絞り63を通った投影光束EL2は、第2光学系62の第2偏向部材80の第3反射面(平面鏡)P5で反射され、第2レンズ群81を通って第2凹面鏡82で反射される。第2凹面鏡82で反射された投影光束EL2は、再び第2レンズ群81を通って第2偏向部材80の第4反射面(平面鏡)P6で反射されて、倍率補正用光学部材66に入射する。倍率補正用光学部材66から出射した投影光束EL2は、基板P上の投影領域PAに入射し、照明領域IR内に現れるマスクパターンの像が投影領域PAに等倍(×1)で投影される。
本実施形態において、第1偏向部材70の第2反射面(平面鏡)P4と、第2偏向部材80の第3反射面(平面鏡)P5は、中心面CL(或いは光軸BX2、BX3)に対して45°傾いた面となっているが、第1偏向部材70の第1反射面(平面鏡)P3と、第2偏向部材80の第4反射面(平面鏡)P6は、中心面CL(或いは光軸BX2、BX3)に対して45°以外の角度に設定される。第1偏向部材70の第1反射面P3の中心面CL(或いは光軸BX2)に対する角度α°(絶対値)は、図5において、点Q1、交点Q2、第1軸AX1を通る直線と中心面CLとのなす角度をθs°としたとき、α°=45°+θs°/2の関係に定められる。同様に、第2偏向部材80の第4反射面P6の中心面CL(或いは第2光軸BX2)に対する角度β°(絶対値)は、基板支持ドラム25の外周面の周方向に関する投影領域PA内の中心点を通る投影光束EL2の主光線と中心面CLとのZX面内での角度をεs°としたとき、β°=45°+εs°/2の関係に定められる。
<マスク及びマスク支持ドラム>
次に、図6及び図7を用いて、第1実施形態の露光装置U3におけるマスク保持機構11の円筒ドラム(マスク保持ドラム)21とマスクMの構成について説明する。図6は、円筒ドラム21及びその外周面に形成されるマスクMの概略構成を示す斜視図である。図7は、円筒ドラム21の外周面を平面に展開したときのマスク面P1の概略構成を示す展開図である。
本実施形態では、マスクMを反射型の薄いシートマスクとし、円筒ドラム21の外周面に巻き付ける場合と、円筒ドラム21を金属製の円筒基材で構成し、円筒基材の外周面に反射型のマスクパターンを直接形成する場合とのどちらであっても適用可能であるが、ここでは簡単のため、後者の場合で説明する。円筒ドラム21の外周面(直径φ)であるマスク面P1に形成されるマスクMは、先の図3に示したように、パターン形成領域A3とパターン非形成領域(遮光帯領域)A4とで構成される。図6、図7中に示すマスクMは、投影光学系PL1〜PL6の各投影領域PA1〜PA6を介して、図3中の基板P上の露光領域A7に投影されるパターン形成領域A3に対応している。マスクM(パターン形成領域A3)は、円筒ドラム21の外周面の周方向のほぼ全域に形成されるが、その第1軸AX1と平行な方向(Y方向)の幅(長さ)をLとすると、円筒ドラム21の外周面の第1軸AX1と平行な方向(Y方向)の長さLaよりも小さい。また、本実施形態の場合、マスクMは円筒ドラム21の外周面の360°に渡って密に配置されるのではなく、周方向に関して所定寸法の余白部92を挟んで設けられる。従って、その余白部92の周方向の両端は、マスクM(パターン形成領域A3)の走査露光方向に関する終端と始端とに対応する。
また、図6において、円筒ドラム21の両端面部には第1軸AX1と同軸のシャフトSFが設けられる。シャフトSFは、露光装置U3内の所定位置に設けられたベアリングを介して円筒ドラム21を支持する。ベアリングは、金属のボールやニードル等を使った接触式のもの、或いは静圧気体軸受のような非接触式のものが使われる。さらに、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)のうち、第1軸AX1と平行なY方向に関して、マスクMの領域よりも外側の端部領域の各々に、円筒ドラム21(マスクM)の回転角度位置を高精度に計測する為のエンコーダスケールを周方向の全面に形成しても良い。回転角度位置を計測するエンコーダスケールが刻設されたスケール円板をシャフトSFと同軸に固定しても良い。
ここで、図7は、図6の円筒ドラム21の外周面を、余白部92中の切断線94で切断し、展開した状態である。また、以下では、外周面を展開した状態でY方向に直交する方向をθ方向とする。図7に示すように、マスク面P1の全周長は、直径がφであるので、円周率をπとして、πφとなる。また、マスク面P1の第1軸AX1と平行な方向の全長Laに対して、マスクM(パターン形成領域A3)の第1軸AX1と平行なY方向の長さLは、L≦Laで形成され、θ方向には長さLbで形成される。マスク面P1の全周長πφから長さLbを差し引いた長さが、余白部92のθ方向の合計寸法である。余白部92内のY方向の離散的な位置の各々には、マスクMの位置合わせの為のアライメントマークも形成される。
ここで、図7に示したマスクMは、液晶表示ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で使用される表示パネルの1つに対応したパターンを形成するためのマスクとする。その場合、マスクMに形成されるパターンとしては、表示パネルの表示画面の各画素を駆動させるTFT用の電極や配線を形成するパターンや、表示デバイスの表示画面の各画素のパターンや、表示デバイスのカラーフィルターやブラックマトリックスのパターン等がある。マスクM(パターン形成領域A3)には、図7に示すように、表示パネルの表示画面に対応するパターンが形成される表示画面領域DPAと、表示画面領域DPAの周囲に配置され、表示画面を駆動する為の回路等のパターンが形成される周辺回路領域TABが設けられる。
マスクM上の表示画面領域DPAの大きさは、製造する表示パネルの表示部の大きさ(対角長Leのインチサイズ)に対応するが、図2、図4に示した投影光学系PLの投影倍率が等倍(×1)の場合は、マスクM上の表示画面領域DPAの実寸(対角長Le)が実際の表示画面のインチサイズとなる。本実施形態では、表示画面領域DPAが、長辺Ldと短辺Lcの長方形とするが、長辺Ldと短辺Lcの長さの比(アスペクト比)は、典型的な例では、Ld:Lc=16:9やLd:Lc=2:1となる。アスペクト比16:9はいわゆるハイビジョンサイズ(ワイドサイズ)で用いる画面の縦横比である。また、アスペクト比2:1はスコープサイズと呼ばれる画面の縦横比であり、テレビ画像では4K2Kのスーパーハイビジョンサイズで使われるアスペクト比である。一例として、アスペクト比が16:9で画面サイズが50インチ(Le=127cm)の表示パネルの場合、マスクM上の表示画面領域DPAの長辺Ldは約110.7cm、短辺Lcは約62.3cmとなる。また、同じ画面サイズ(50インチ)で、アスペクト比が2:1の場合は、表示画面領域DPAの長辺Ldは約113.6cm、短辺Lcは約56.8cmとなる。
図7のように、1つの表示パネル用のマスクM(表示画面領域DPAと周辺回路領域TABを含む)を円筒ドラム21の外周面に形成する場合、表示画面領域DPAの長辺Ldの方向がθ方向(円筒ドラム21の周方向)になるように配置するのが良い。これは、円筒ドラム21の直径φを余り小さくすることなく、円筒ドラム21の第1軸AX1方向の長さLaを余り大きくしないためである。そこで、周辺回路領域TABの幅寸法を含めたマスクMの大きさ(Lb×L)の一例を挙げてみる。周辺回路領域TABの幅寸法は回路構成によって様々であるが、図7中の表示画面領域DPAのY方向の両端側に位置する周辺回路領域TABのY方向の幅の合計を、表示画面領域DPAのY方向の長さLcの10%、表示画面領域DPAのθ方向の両端側に位置する周辺回路領域TABのθ方向の幅の合計を、表示画面領域DPAのθ方向の長さLdの10%としてみる。
この場合、アスペクト比16:9の50インチの表示パネルでは、マスクMの長辺Lbは121.76cm、短辺Lは68.49cmとなる。余白部92のθ方向の寸法はゼロ以上であるので、円筒ドラム21の直径φは、φ≧Lb/πの計算より、38.76cm以上となる。よって、アスペクト比16:9の50インチの表示パネルのパターンを基板Pに走査露光する為には、直径φが38.76mm以上、マスク面P1の第1軸AX1と平行な方向の長さLaが短辺L(68.49cm)以上の円筒ドラム21が必要となる。この場合、直径φとマスクMの短辺Lの比L/φは約1.77である。尚、周辺回路領域TABのθ方向の幅の合計を、表示画面領域DPAのθ方向の長さLdの20%と仮定してみると、マスクMの長辺Lbは132.83cm、短辺Lは68.49cm、円筒ドラム21の直径φは42.28cm以上となり、直径φとマスクMの短辺Lの比L/φは約1.62である。
同様の条件で、アスペクト比2:1の50インチの表示パネルの場合、マスクMの長辺Lbは124.96cm、短辺Lは62.48cmとなる。これより、円筒ドラム21の直径φは、φ≧Lb/πの計算より、39.78cm以上となる。よって、アスペクト比2:1の50インチの表示パネルのパターンを基板Pに走査露光する為には、直径φが39.78cm以上、マスク面P1の第1軸AX1と平行な方向の長さLaが短辺L(62.48cm)以上の円筒ドラム21が必要となる。この場合、直径φとマスクMの短辺Lの比L/φは約1.57である。尚、周辺回路領域TABのθ方向の幅の合計を、表示画面領域DPAのθ方向の長さLdの20%と仮定してみると、マスクMの長辺Lbは136.31cm、短辺Lは62.48cm、円筒ドラム21の直径φは43.39cm以上となり、直径φとマスクMの短辺Lの比L/φは約1.44である。
図7のように、単一の表示パネル用のパターンが形成されたマスクMを円筒ドラム(マスク保持ドラム)21の外周面に配置する場合、走査露光方向と直交するY方向のマスクMの長さLと、マスク面P1の直径φとの関係は、1.3≦L/φ≦3.8の範囲に収まる。ところが、図7に示したマスクMの配置を図7中で90°回転させて、マスクMの長辺LbをY方向、短辺Lをθ方向した場合は、上記の関係から外れてくる。例えば、先のアスペクト比16:9の50インチの表示パネルの場合、周辺回路領域TABのθ方向の幅を表示画面領域DPAの長さLdの10%とすると、マスクMの長辺Lbは121.76cm、短辺Lは68.49cmであるから、マスク面P1の第1軸AX1と平行な方向の長さLの最小値はLb(121.76cm)となり、円筒ドラム21の直径φは、φ≧L/πの計算より、21.80cm以上となる。よって、直径φとマスクMの第1軸AX1と平行な方向の長さLbとの比Lb/φは約5.59となる。同様に、アスペクト比2:1の50インチの表示パネルの場合は、マスクMの長辺Lbが124.96cm、短辺Lが62.48cmであるから、マスク面P1の第1軸AX1と平行な方向の長さLの最小値はLb(124.96cm)、円筒ドラム21の直径φは、φ≧L/πの計算より、19.89cm以上となる。よって、直径φとマスクMの第1軸AX1と平行な方向の長さLbとの比Lb/φは約6.28となる。
このように、マスクMのサイズ(Lb×L)が同じでも、その長辺と短辺の方向によって、比L/φ(又はLb/φ)の値が大きく変化する。比L/φ(又はLb/φ)が大きいということは、円筒ドラム21の直径φが小さく、マスク面P1の湾曲が急峻になることから、パターン転写の忠実度を維持する為に、図3に示した照明領域IR又は投影領域PAの走査露光方向Xsの幅を狭くすることにつながる。或いは、円筒ドラム21の第1軸AX1と平行な方向の長さが倍増することになり、Y方向に配置する複数の投影光学系PL(照明光学系IL)の数をさらに増やすことにつながる。一方、比L/φ(又はLb/φ)が小さくなるということは、1つは円筒ドラム21上のマスクMの第1軸AX1と平行な方向の長さが小さく、例えば図3中の6つの投影領域PA1〜PA6のうちの半分程度しか使わないような状況であり、もう一つは円筒ドラム21の直径φが大きすぎて、図6、図7で示した余白部92のθ方向の寸法が必要以上に大きくなるような状況である。以上のようなことから、円筒ドラム(マスク保持ドラム)21の外形の寸法条件を、1.3≦L/φ≦3.8の関係にすることで、表示パネル用のパターンが形成されたマスクMを使った精密な露光作業が効率的に実施でき、生産性を上げることができる。
図6及び図7に示す例では、円筒ドラム(マスク保持ドラム)21の外周面(マスク面P1)に、1面の表示パネル用のパターンを有するマスクMが担持される例であったが、マスク面P1に複数面の表示パネル用のパターンを形成する場合もある。その場合の幾つかの例を図8〜図10により説明する。
図8は、マスク面P1上に3つの同一サイズのマスクM1を円筒ドラム21の周長方向(θ方向)に配置する場合の概略構成を示す展開図である。図9は、マスク面P1上に4つの同一サイズのマスクM2を円筒ドラム21の周長方向(θ方向)に配置する場合の概略構成を示す展開図である。図10は、図9に示したマスクM2を90°回転させて、マスク面P1上でY方向に2つのマスクM2を並べ、それを円筒ドラム21の周長方向(θ方向)に2組配置する場合の概略構成を示す展開図である。図8から図10に示す例は、円筒ドラム21の1回転中に、基板P上に同一サイズの表示パネルが複数個(ここでは3個または4個)露光されることから、多面取りのマスクMと呼ばれる。また、図8に示すように、投影光学系PLを介して基板P上に走査露光すべきマスク面P1上の領域の全体を、図7に合わせてマスクMとし、マスクMの中には表示パネルとなるべきマスクM1(図9、10ではM2)が、走査露光方向(θ方向)に所定の間隔Sxを伴って配列される。各マスクM1(図9、10ではM2)には、図7と同様に、対角長Leの表示画面領域DPAと、それを取り囲む周辺回路領域TABとが含まれている。
まず、図8に示す例から詳述する。図8において、最も大きい長方形は、円筒ドラム21の外周面であるマスク面P1である。マスク面P1は、切断線94をθ方向の原点としたとき、0°から360°までの回転角に渡ってθ方向に長さπφを有し、第1軸AX1と平行なY方向に長さLaを有する。マスク面P1の内側に破線で示した領域は、基板P上に露光すべき全領域(図3中の露光領域A7)に対応したマスクMとなる。マスクM内にθ方向に並べられる3つのマスクM1は、表示画面領域DPAの長辺方向がY方向となり、短辺方向がθ方向となるように配置される。また、各マスクM1のθ方向に隣接する間隔Sx内には、円筒ドラム21上のマスクM(又はM1)の位置を特定する為のアライメントマーク(マスクマーク)96が、Y方向の3ヶ所に離散的に設けられている。こられのマスクマーク96は、円筒ドラム21の周方向の所定位置に外周面(マスク面P1)に対向して配置された不図示のマスクアライメント光学系を介して検出される。露光装置U3は、マスクアライメント光学系によって検出される各マスクマーク96の位置に基づいて、円筒ドラム21全体、或いは各マスクM1毎の回転方向(θ方向)の位置ずれとY方向の位置ずれとを計測する。
一般に、基板P上に表示パネルのデバイスを形成する場合は多数の層を積層する必要があり、そのため露光装置は、基板P上のどの位置にマスクM(又はM1)のパターンを露光したかを特定する為のアライメントマーク(基板マーク)を、マスクM(又はM1)と共に基板P上に転写する。図8では、そのような基板マーク96aが各マスクM1のY方向の両端部分であって、θ方向に離れた3ヶ所の各々に形成されている。基板マーク96aが占有するマスク(又は基板P)上の領域は、Y方向の幅として数mm程度である。従って、基板P上に露光すべきマスク面P1上のマスクMのY方向の長さLは、各マスクM1のY方向の寸法と、各マスクM1のY方向の両側に確保される基板マーク96aの領域のY方向の寸法との合計となる。
また、マスク面P1上のマスクM全体のθ方向の長さLbは、各マスクM1のθ方向の寸法と各間隔SxのY方向の寸法とを合計した長さをPxとすると、Lb=3Pxとなる。先の図7のように、単一の表示パネルに対応したマスクMを配置する場合は、所定長の余白部92を設けるのが良いが、図8のように、θ方向に間隔Sxを設けて複数のマスクM1を配置する場合は、余白部92のθ方向の長さをゼロにすることができる。すなわち、各マスクM1のθ方向の長さは表示パネルのサイズによって自ずと決まり、間隔Sxとして必要な最小寸法も予め決められるので、φ=3Px/πの関係を満たすように、円筒ドラム21の直径φを設定すれば良い。逆に、露光装置U3に装着可能な円筒ドラム21の直径φの範囲が概ね決まっている場合は、間隔Sxの寸法を変える(大きくする)ことで調整することができる。
ここで、図8のようなマスクMの具体的な寸法の一例を説明する。図8において、マスクM1の表示画面領域DPAの対角長Leを32インチ(81.28cm)、周辺回路領域TABのY方向、θ方向の各寸法を表示画面領域DPAの寸法の10%程度とし、基板マーク96aを形成する領域のY方向の寸法を0.5cm(両側を合せて1cm)とした場合を想定する。アスペクト比16:9の表示パネルでは、マスクM1の短辺寸法が48.83cm、長辺寸法が77.93cmとなり、アスペクト比2:1の表示パネルでは、マスクM1の短辺寸法が43.83cm、長辺寸法が79.97cmとなる。余白部92の寸法をゼロとし、Lb=πφ=3Pxを満たすように、3つのマスクM1と3つの間隔Sxをθ方向に並べる場合、マスクM1のθ方向の長さをLgとすると、間隔Sxは、Sx=(Lb−3Lg)/3で求まる。
そこで、アスペクト比16:9の表示パネル用のマスクM1と、アスペクト比2:1の表示パネル用のマスクM1とのいずれもが、同一径の円筒ドラム21のマスク面P1上に配置可能とする場合には、円筒ドラム21の直径φを43cm程度にすると良い。この場合、アスペクト比16:9の表示パネルではマスクM1の間の間隔Sxを1.196cm、アスペクト比2:1の表示パネルではマスクM1の間の間隔Sxを5.045cmに設定すれば良い。
マスク面P1上のマスクMのY方向の長さLは、マスクM1のY方向寸法と基板マーク96aの形成領域のY方向寸法(1cm)との合計であるので、アスペクト比16:9の表示パネル用のマスクMでは、L=78.93cm、アスペクト比2:1の表示パネル用のマスクMでは、L=80.97cmとなる。従って、円筒ドラム21の直径φ(43cm)とマスクMのY方向の長さLとの比は、アスペクト比16:9の表示パネル用の円筒ドラム21では、L/φ=1.84、アスペクト比2:1の表示パネル用の円筒ドラム21では、L/φ=1.88となる。いずれの場合も、その比L/φは、1.3〜3.8の範囲に収まっている。
また、アスペクト比16:9の表示パネルのパターンを基板P上に露光する場合と、アスペクト比2:1の表示パネルのパターンを基板P上に露光する場合とで、基板P上の間隔Sxのθ方向の寸法を必要最小限にする場合は、自ずと円筒ドラム21の直径φを変える必要がある。例えば、間隔Sxを2cmにする場合、アスペクト比16:9の表示パネル用のマスクM1が形成される円筒ドラム21の直径φは、πφ=3(Lg+Sx)の関係から、φ≧43.77cmとなる。一方、アスペクト比2:1の表示パネル用のマスクM1が形成される円筒ドラム21の直径φは、φ≧40.1cmとなる。この場合も、アスペクト比16:9の表示パネル用の円筒ドラム21では、比L/φ=1.80、アスペクト比2:1の表示パネル用の円筒ドラム21では、比L/φ=2.02となり、1.3〜3.8の範囲に収まる。
尚、そのように露光装置U3に装着すべき円筒ドラム21(マスクM)の直径φが変わる場合に備えて、露光装置U3には、その直径φの差分の1/2程度、円筒ドラム21の第1軸AX1のZ方向の位置をシフトさせる機構が設けられる。上記の例では、直径φの差は、3.67cmであるので、円筒ドラム21の第1軸AX1(シャフトSF)はZ方向に1.835cm程度シフトさせて支持される。さらに、円筒ドラム21の第1軸AX1のZ方向へのシフト量が大きい場合は、図4中に示したシリンドリカルレンズ54を、図5のような照明条件を満たすような凸円筒面の曲率を持つものに変更し、第1偏向部材70の第1反射面(平面鏡)P3の角度α°を調整すると共に、偏光ビームスプリッタPBSと1/4波長板41を全体的にXZ面内で微小量傾ける必要もある。
以上、図8のように円筒ドラム21に形成されるマスクM(3つのマスクM1を含む)には、基板P上に転写される表示パネル用のパターン(マスクM1)に付随して、複数の基板マーク96aがθ方向(走査露光方向)に設けられている。従って、露光装置U3によって、基板P上に表示パネル用のパターン(マスクM1)と共に複数の基板マーク96aを順次転写しておくと、露光時の各種問題を確認することができる。例えば、基板P上に転写された基板マーク96aを用いて、基板P上に生じた欠陥(例えばゴミ付着)の位置を特定したり、或いはマスクのパターンニング誤差、フォーカス誤差、重ね合わせ露光時の重ね誤差等の各種オフセット誤差を計測することができる。計測されたオフセット誤差は、マスク全体の管理に加えて、円筒マスク21上の各マスクM1の位置管理、基板P上に転写される各表示パネルのパターン(マスクM1)の位置管理(補正)に利用される。
図9は、例えばアスペクト比2:1の表示パネル用のマスクM2をY方向が表示画面領域DPAの長辺となるように、θ方向に4個並べて円筒ドラム21のマスク面P1上に配置した例を示す。各マスクM2のθ方向の側辺(長辺)には間隔Sxが設けられ、マスクマーク96、基板マーク96aも先の図8と同様に設けられる。この場合、マスク面P1の周方向(θ方向)の全長πφ(=Lb)は、πφ=4Px=4(Lg+Sx)となる。ここで、表示画面領域DPAの画面サイズを24インチ(Le=60.96cm)とし、周辺回路領域TABのθ方向の合計幅を表示画面領域DPAのθ方向長さの10%、周辺回路領域TABのY方向の合計幅を表示画面領域DPAのY方向長さの20%、さらに、マスクM2のY方向の両端部の各々に配置される基板マーク96aの形成領域のY方向の合計幅を1cmとする。
この場合、表示画面領域DPAのサイズは、長辺54.52cm、短辺27.26cmであるから、マスク面P1上の露光用のマスクMのY方向の全長Lは、マスクM2と基板マーク96aの形成領域とを含み、L=66.43cmとなる。また、マスク面P1上のマスクM2のθ方向の長さLgは、Lg=29.99cmとなるから、間隔Sxを1cmとすると、マスクM(円筒ドラム21)の直径φは、πφ≧4Pxより、39.46cm以上となる。従って、図9のように、アスペクト比2:1の表示パネル用のマスクM2の4面分を円筒ドラム21に設けた場合も、比L/φは1.67となり、1.3〜3.8の範囲に収まる。
図10は、図9に示したマスクM2を90°回転させて長辺をθ方向に向けて配置し、θ方向に2つ、Y方向に2つの計4つをマスク面P1上に配列した場合の例を示す。またここでは、Y方向に並ぶ2つのマスクMの間に、基板マーク96aの形成領域が設けられるものとする。従って、基板マーク96aの形成領域のY方向の合計幅を2cmとすると、マスク面P1上に形成されるマスクMのY方向の全長(短辺)Lは、61.98cmとなり、マスクMのθ方向の全長(長辺)πφは132.86cm、マスクM(円筒マスク21)の直径φは42.29cm以上となり、比L/φは1.47となる。
ところで、4つのマスクM2を図9、又は図10のように配置する場合、間隔Sxを調整すれば、円筒ドラム21の直径φとマスク面P1のY方向の寸法Laを一定にしておくことができる。図9と図10の場合に、マスクMとしてY方向の長さLが大きいのは、図9の場合のL=66.43cmであり、円筒ドラム21(マスクM)として直径φが大きいのは、図10の場合のφ≧42.29cmである。そこで、外周面(マスク面P1)のY方向の寸法LaがLa≧66.43cm、直径φがφ≧42.3cmの円筒ドラム21を用いれば、図9と図10のいずれの配置であっても、マスクM2の4面取りが可能である。この場合も、比L/φは1.57となり、1.3〜3.8の範囲になる。
図8から図10に示すように、マスク面P1には、種々の配置規則で表示デバイス用のマスクパターン(マスクM、M1、M2)が配置される可能性がある。これに対して、円筒ドラム(マスク保持ドラム)21のマスク面P1(外周面)の走査露光方向(θ方向)と直交する方向(Y方向)の長さLと円筒ドラム21の直径φとの関係が、1.3≦L/φ≦3.8の関係を満たすことで、図8から図10のように、多様なサイズの表示パネルのマスクパターン(マスクM1、M2)を複数配置した場合も、隙間(間隔Sx)を少なくした状態でマスクパターンを配置することができる。
また、円筒ドラム21は、1.3≦L/φ≦3.8の関係を満たすことで、照明光学系IL及び投影光学系PLの数の増加を抑制しつつ、装置の大型化を抑制することができる。つまり、円筒ドラム21が細長くなり、照明光学系IL及び投影光学系PLの数が増加することを抑制できる。また、円筒ドラム21の直径φが大きくなって、装置のZ方向の寸法が大きくなることを抑制することができる。
ここで、図7のように、アスペクト比2:1の表示パネル用の1面取りのマスクMを、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)の全面に形成する場合に、図6、図7中の余白部92のθ方向の寸法をゼロとし、マスク面P1のY方向(第1軸AX1方向)の寸法LaをLa=Lとする場合を想定する。また、先に説明したように、画面表示領域DPAの周囲に配置される周辺回路領域TABは、画面表示領域DPAの20%程度となる場合がある。しかしながら、周辺回路領域TABの寸法割合は、実際のパターンの仕様、設計によって画面表示領域DPAの周囲のどの部分に回路となる端子部が配置されるかによって変化する。そのため、正確には特定できないが、マスクMとしての縦横比がより拡大する方向に増えるものとし、画面表示領域DPAの短辺に隣接する周辺回路領域TABの合計幅が、画面表示領域DPAの長辺Ldの20%程度になるものと仮定する。また画面表示領域DPAの長辺に隣接する周辺回路領域TABの合計幅は、画面表示領域DPAの短辺Lcの0〜10%程度であると仮定する。そのような仮定の下で、画面表示領域DPAがアスペクト比2:1の50インチ表示パネルの場合、画面表示領域DPAの長辺Ldは113.59cm、短辺Lcは56.8cmとなる。従って、図7中のマスクMのθ方向の長さLb(=πφ)は136.31cm、円筒ドラム21(マスクM)の直径φは43.39cm、Y方向の長さL(=La)は56.8〜62.48cmとなり、長さLと直径φの比L/φは、1.30〜1.44となる。このように、アスペクト比の大きい表示パネル用のマスクの全体を、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)の全面に1面取りで形成する場合に、比L/φは最も小さな値1.3となる。尚、画面表示領域DPAのアスペクト比2:1の場合で、マスクMが長辺方向のみに周辺回路領域TABの幅を含んで20%大きくなる場合は、図7のような1面取りのマスクMの縦横比(Lb/L)が2.4になることであり、Lb=πφより、比L/φ=π/2.4≒1.30として導かれる。
また、印刷機のように、図7中のマスクMを90°回転させて円筒ドラム21のマスク面P1のほぼ全面に配置させる場合は、先に説明したとおり、比L/φが大きくなり過ぎる。上記の条件のように、画面表示領域DPAのアスペクト比2:1の場合で、1面取りのマスクMが長辺方向のみに周辺回路領域TABの幅を含んで20%大きくなり、余白部92のθ方向の寸法がゼロである場合、L/Lb(πφ)=2.4/1となり、比L/φは7.54となる。この場合、先に例示した50インチの表示パネル用の1面取りのマスクMの場合、Y方向の長さLが136.31cm、θ方向の長さLb(πφ)が56.8cmとなり、円筒ドラム21(マスクM)の直径φは18.1cmとなる。このように、マスクMの長辺方向をθ方向にした場合とY方向にした場合とで、比L/φは大きく変化する。
露光装置U3の投影光学系PLは、円筒ドラム21の直径φが大きく変化する場合、特に直径φが小さくなる場合には、射影によるディストーション誤差や円弧による投影像面の変化の点が大きくなるため、良好な投影像を基板P上に露光することが困難になる。その場合は、例えば図11のように、アスペクト比2:1の画面表示領域DPAを有する表示パネル用の長辺方向をY方向としたマスクM2の2つをθ方向に並べると良い。
図11において、2つのマスクM2の各々は、アスペクト比2:1の画面表示領域DPAと、画面表示領域DPAのY方向の両側に配置される周辺回路領域TABとを含む。周辺回路領域TABのY方向の幅の合計は、画面表示領域DPAの長辺の寸法Ldの20%とし、マスクM2の右隣りには間隔Sxが設けられるものとする。マスクM2の周囲に基板マーク96aやマスクマーク96を配置しないと仮定とすると、2つのマスクM2と間隔Sxとを含むマスクMの全体(マスク面P1)のY方向の寸法LはL=1.2・Ld、θ方向の寸法πφ(Lb)はπφ=2(Lc+Sx)となる。画面表示領域DPAのアスペクト比Aspを、Asp=Ld/Lcとすると、比L/φは以下のように表される。
L/φ=0.6・π・Asp・Lc/(Lc+Sx)
ここで、間隔Sxをゼロにすると、比L/φは、L/φ=0.6・π・Aspとなり、アスペクト比2:1の表示パネル用のマスクM2の2つを図11のような方向で配置した場合、円筒ドラム21(マスク面P1)の直径φと第1軸AX1方向の長さL(=La)との比L/φは3.77(約3.8)となる。この場合、画面表示領域DPA(2:1)が50インチであれば、直径φは36.16cm、長さL(La)は136.31cmとなる。同様に、図11に示したマスクM2を、アスペクト比16:9の表示パネル用とした場合は、間隔Sxをゼロとすると、L/φ=0.6・π・Aspの関係より、比L/φは3.35となる。この場合、画面表示領域DPA(16:9)が50インチであれば、直径φは39.64cm、長さL(La)は132.83cmとなる。
以上のように、画面表示領域DPAの短辺方向が円筒ドラム21の周方向(θ方向)に向き、長辺方向が円筒ドラム21の第1軸AX1の方向(Y方向)に向くようにマスクMを配置する場合でも、2つ以上の同じマスクM2をθ方向に並べることで、比L/φを3.8以下とすることができる。尚、図11で示したマスクM2を、同じ条件でθ方向にn個並べるとすると、先の比L/φを表す関係式は以下のようになる。
L/φ=1.2・π・Asp・Lc/n(Lc+Sx)
この関係式から、製造したい表示パネル用のマスクM2の円筒ドラム21上での配置、必要な間隔Sx等を、1.3≦L/φ≦3.8を満たすように設定することができる。
また、マスク面P1は、表示パネルデバイス用のマスクパターンのマスクM1、M2を、先の図8のように3つ並べたり、図9のように4つ並べたりすることで、比L/φを3.8よりも小さくして配置することが可能となる。この場合、比L/φがどのような値になるかは、Y方向が長手となるようなマスクM1、M2をθ方向にn個並べる場合の関係式から求められる。表示画面領域DPAの周りの周辺回路領域TABの幅によって、マスクM1、M2の縦横寸法も変わってくる為、表示画面領域DPAの長手方向の両側(又は片側)の周辺回路領域TABによって拡大するマスクM1、M2の長手方向の寸法の拡大倍率をe1、表示画面領域DPAの短手方向の両側(又は片側)の周辺回路領域TABによって拡大するマスクM1、M2の短手方向の寸法の拡大倍率をe2とする。
よって、マスク面P1のY方向の寸法LaがマスクM1、M2の長手方向の寸法と一致するように配置する場合、マスク面P1上のマスク領域のY方向の長さLは、L=La=e1・Ldとなる。同様に、マスク面P1上のマスク領域のθ方向の長さπφ(Lb)は、πφ=n(e2・Lc+Sx)となり、比L/φは以下の関係式で表される。
L/φ=e1・π・Asp・Lc/n(e2・Lc+Sx)
この関係式において、図11に示したマスクM2の場合は、n=2、e1=1.2、e2=1.0とした。
例えば、表示パネルデバイス用のマスクM2の表示画面領域DPAの縦横比を16:9(Asp=1.778)とした場合に、マスクM2をθ方向に3面並列に配置(n=3)すると、間隔Sxがゼロの場合、比L/φは、L/φ=e1・π・Asp/n・e2、となり、拡大倍率e1を1.2、拡大倍率e2を1.0にしたとしても、比L/φは2.23となる。
さらに、先の図10に示したように、2行2列でマスクM2(24インチ)を配置した4面取り全体のマスク領域の縦横比が、θ方向に表示画面領域DPAの長辺方向を向けた1面取りのマスクM(50インチ)の縦横比とほぼ同じであれば、周辺回路領域TABの端子部の寸法の違い、或いは間隔Sxの違いだけで、同一寸法の円筒ドラム21にすることが可能になる。
以上のように、表示パネルの表示画面領域DPAのアスペクト比が16:9や2:1等のように、2:1に近い場合、その表示パネル用のマスクM、M1、M2を効率的に円筒ドラム21の外周面に配列する為には、円筒ドラム(円筒マスク)21の走査露光方向(θ方向)と直交する方向(Y方向)の長さLと直径φとの関係が、1.3≦L/φ≦3.8を満たすようにするのが良い。さらに、単一のマスクM、M1、M2の縦横比が2:1に近い場合、それらのマスクを多面取りで複数配列する際は、多面取りによって占有されるマスク面P1上のマスク領域全体の縦横比(L:Lb)を、1:1に近くすると良い。また、間隔Sx(又は余白部92)は一定にすることが好ましい。
また、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)の直径φと、マスク面P1に形成されるマスクパターンの第1軸AX1の方向の全長L(La)との関係は、1.3≦L/φ≦3.8を満たすようにするのが良いが、さらには、1.3≦L/φ≦2.6とすると、上記の効果を好適に得ることができる。一例としては、図11に示したマスクM2の長手方向がθ方向になるように、マスクM2を90°回転させ、Y方向に間隔を空けずに2個並べて2面取りにする場合、L/φ≒2.6となる。この場合、1つのマスクM2のθ方向の長さπφ(Lb)は、πφ=e1・Ldであり、Y方向に並ぶ2つのマスクM2の合計の長さLは、L=2・e2・Lcである。従って、Asp=Ld/Lcより、比L/φは、L/φ=2π・e2/e1・Aspとなり、e1=1.2、e2=1.0、Asp=2/1とすると、L/φ=π/1.2≒2.6となる。
また、露光装置U3は、マスクM(M1、M2)を交換可能とすることが好ましい。マスクを交換可能とすることで、種々のサイズの表示パネル、或いは電子回路基板用のマスクパターンを基板Pに投影露光することができる。また、円筒ドラム21のマスク面P1に形成されるマスク(M、M1、M2等)の面数が種々の場合であっても、各マスク間に生じる隙間(間隔Sx)を必要以上に大きく取ることがなくなる。すなわち、マスク面P1の全面積に占める有効なマスク領域の比率(マスク利用率)の低下を抑えられる。
また、マスクM(M1、M2)は、円筒ドラム21のマスク面P1の直径φと、走査露光方向と直交する方向(Y方向)のマスク領域の長さLとが、共に略同じとなるように交換可能とすることが好ましい。これにより、マスクM(M1、M2)を交換するのみで、露光装置U3側の投影光学系PLや照明光学系IL、或いは基板Pとマスク面P1との距離等の他の部分の調整が不要、若しくは極めて僅かな調整量で済ませることができ、マスク交換後も同等の像品質で種々のデバイスのパターンを転写することができる。
また、上記の実施形態では、円筒ドラム21の直径φを一定として、面取り数や配列の方向を異ならせた種々の面数のデバイス用マスク(M1、M2)をマスク面P1上に配置する場合、或いは円筒ドラム21の直径φを異ならせて種々の面数のデバイスをマスク面P1上に配置する場合がある。しかしながら、いずれの場合も、円筒状のマスク面P1の形状を、1.3≦L/φ≦3.8の関係を満たすようにすることで、マスク面P1に複数のマスクパターンを少ない隙間で配置することができる。これにより、デバイス(表示パネル)のパターンを基板Pに効率よく転写させることができる。また、円筒ドラム21による円筒マスクを、1.3≦L/φ≦3.8の関係を満たす形状とすることで、複数のデバイスパターンの隙間を少なくしつつ、種々の大きさのデバイスのパターンを効率よく配置でき、しかも円筒マスクの直径φの変化を少なくすることができる。
また、図8から図11に示すように、マスクM1、M2の取り付け面数は、製造する表示パネル(デバイス)のサイズに応じて、2面、3面、4面、或いはそれ以上にすることができる。マスクM1、M2の取り付け面数を3面、4面と増やしていくと隙間(間隔Sx)の寸法をより小さくすることができる。
また、円筒ドラム21は、1.3≦L/φ≦3.8を満たすことで、ロール径(直径φ)に対して、照明領域IR又は投影領域PAの走査露光方向(θ方向)の幅、いわゆる露光スリット幅を最適化(大きく)することができる。以下、図12を用いて、円筒ドラム21のマスク面P1の直径φと、走査露光方向の露光スリット幅との関係について説明する。
図12は、円筒ドラム21(マスク面P1)の直径φと露光スリット幅Dの関係を、デフォーカス(Defocus)量を変えてシミュレーションしたグラフである。図12において、縦軸は露光スリット幅D[mm]を表し、これは基板P上に形成される投影領域PA(図3)のθ方向(X方向)の幅を表す。縦軸は円筒ドラム21(マスク面P1)の直径φ[mm]を表す。また、デフォーカス量とは、露光装置U3の投影光学系PLの像側(基板P側)の開口数NA、露光用の照明光の波長λ、プロセス定数k(k≦1)によって定義される焦点深度DOFに基づいて決められる。ここでは、投影像のベストフォーカス面と基板Pの表面とのフォーカス方向の偏差量(デフォーカス量)が、25μmと50μmの2通りの場合についてシミュレーションした。
ここで、図12のシミュレーションでは、投影光学系PLの開口数NAを0.0875、照明光の波長λを水銀ランプのi線の365nm、プロセス定数kを0.5程度としたので、焦点深度DOFは、DOF=k・λ/NA2、より、幅で約50μm(約−25μm〜+25μm)程度得られる。尚、この条件での解像力としては、2.5μmL/Sを得ることができる。図12中の破線で示した25μmデフォーカス時とは、露光スリット幅D内で焦点深度DOFの1/2程度のフォーカス偏差が生じる状態であり、実線で示した50μmデフォーカス時とは、露光スリット幅D内で焦点深度DOF程度のフォーカス偏差が生じる状態である。すなわち、破線で示した25μmデフォーカス時のグラフは、焦点深度DOFの幅の1/2(幅で25μm)を、この円筒ドラム21のマスク面P1の湾曲による誤差として許容した場合の直径φと露光スリット幅Dの関係を示し、実線で示した50μmデフォーカス時のグラフは、焦点深度DOFの幅程度までを、この円筒ドラム21のマスク面P1の湾曲による誤差として許容した場合の直径φと露光スリット幅Dの関係を示している。
図12では、円筒ドラム21の直径φを100mm〜1000mmの範囲で変えたときに許容されるデフォーカス量(ΔZとする)が、25μmになる露光スリット幅Dと、50μmになる露光スリット幅Dとを、以下の計算により求めた。
D=2・〔(φ/2)2−(φ/2−ΔZ)2〕0.5
このシミュレーションより、例えば、直径φが500mmの場合、デフォーカス量ΔZとして25μmまで許容するとした場合の露光スリット幅Dの最大値は約7.1mmとなり、デフォーカス量ΔZとして50μmまで許容するとした場合の露光スリット幅Dの最大値は約10.0mmとなる。
図12に示すように、円筒ドラム21の直径φが大きくなるほど、許容されるデフォーカス量を満足する露光スリット幅Dは大きくなる。表示画面領域DPAのアスペクト比が2:1で、表示画面領域DPAの長手方向のみに周辺回路領域TABが設けられる図11のようなマスクM2の場合、そのマスクM2の1面のみを円筒ドラム21のマスク面P1の全周に、余白部92(間隔Sx)を作らずに形成すると、そのマスクM2の長手方向を、円筒ドラム21の周方向(θ方向)にするか、第1軸AX1の方向(Y方向)にするかで、比L/φは大きく変わる。マスクM2の長手方向を図11のようにY方向にすると、マスクM2の1面のθ方向の長さLc(短手)が、円筒ドラム21の外周面の全周長πφと等しくなり、φ=Lc/πとなる。このとき、円筒ドラム21上のマスクM2の第1軸AX1の方向(Y方向)の長さLは、図11の場合と同様に、L=1.2・Ldとなる。アスペクト比2:1より、Ld=2Lcであるから、この場合の比L/φは、L/φ=2.4・π≒7.5となる。一方、マスクM2の短手方向をY方向にすると、マスクM2の1面のθ方向の全周長πφは1.2・Ldとなり、円筒ドラム21上のマスクM2のY方向の長さLはLcとなる。従って、この場合の比L/φは、L/φ=π/2.4≒1.3となる。
マスクのY方向の長さLを、露光装置U3の投影光学系PLの各投影領域PA1〜PA6(図3)のY方向の合計寸法の範囲内に設定するとして、長さLを一定とすると、比L/φが1.3から7.5に約6倍変化するということは、円筒ドラム21の直径φが約6倍変化することを意味する。直径φの約6倍の変化は、図12中では、例えば、直径φ=150mmから900mmへの変化に相当する。この場合、許容デフォーカス量ΔZを25μmとした場合の露光スリット幅Dは、φ150mmのときの約3.9mmからφ900mmのときの約9.5mmに変化する。従って、マスクのY方向の長さLを一定とする場合、直径φが900mmの円筒マスクから、直径φが150mmの円筒マスクに変わると、露光スリット幅Dは約40%に減少することになる。許容デフォーカス量ΔZを50μmとした場合も同様である。
このため、比L/φが1.3から7.5の範囲を対象とすると、投影像のコントラストを一定で露光を行う場合には、単純には基板Pに与えられる露光量が40%に減少してしまう。基板Pに与えられる露光量を適正値(100%)にする為には、露光スリット幅Dとして9.5mmで設定される投影領域PAによる露光時の基板Pの移動速度に対して、約40%の速度で基板Pを移動させることになる。即ち、基板Pの搬送速度自体を約40%に落とすことになるので、スループット(生産性)は半分以下になってしまう。露光スリット幅Dとして3.9mmで設定される投影領域PAを使った露光時でも、基板Pの搬送速度を落とさない為には、投影領域PA内の投影像の輝度、即ち照明光束EL1の照度を高めることが考えられる。その場合、マスク面P1を照射する照明光束EL1の照度は、露光スリット幅Dが9.5mmの場合の照度に対して約2.5倍にする必要がある。
これに対して、図11のようなマスクM2の2面取りを採用すると、比L/φを約3.8(1.2・π)以下の範囲(1.3〜3.8)とすることができる。マスクのY方向の長さLを一定とする場合、円筒マスク(円筒ドラム21)の直径φの変化は約3倍の範囲となり、例えばφ=900mm〜300mmの間で考えればよい。図12のシミュレーションより、直径φが300mmのときに許容デフォーカス量ΔZを25μmとする場合の露光スリット幅Dは、約5.5mmとなる。従って、露光スリット幅Dが約9.5mmの場合に対して、基板Pの搬送速度は約60%程度までの減少で済む。このように、円筒ドラム21のマスク面P1上に形成されるマスク領域の縦横の比(L:πφ)を、比L/φが約1.3〜約3.8となるように制限することにより、露光スリット幅Dの変化を抑制することができる。
同様に、図11のマスクM2を、図8のようにθ方向に間隔Sxゼロにして3つ並べる場合は、L/φ=0.4π・Aspとなり、円筒ドラム21の直径φは、例えば、500mm〜900mmまで約1.8倍の範囲で変化する可能性がある。デフォーカス量25μmでの露光スリット幅Dは、直径φが900mmの場合の約9.5mmから約7.1mmに減少するが、これはスループットが約75%に低減することに相当する。しかしながら、先の例のように、スループットが半分以下になる場合よりも改善される。さらに、図11のマスクM2を、図9のようにθ方向に間隔Sxゼロにして4つ並べる場合は、L/φ=0.3π・Aspとなり、円筒ドラム21の直径φは、例えば、700mm〜900mmまで約1.3倍の範囲で変化する可能性がある。デフォーカス量25μmでの露光スリット幅Dは、直径φが900mmの場合の約9.5mmから約8.4mmに減少する。これはスループットが約88%に低減することに相当するが、先の例のようにスループットが半分以下になる場合よりも大幅に改善され、実質的にロスの無い露光が可能となる。また、露光スリット幅Dの75%や88%程度の減少であれば、光源31の発光強度を高めたり、光源の数を増やしたりすることで、容易に照明光束EL1の照度を上げることができ、スループットの低下を皆無にできる。尚、マスク領域のサイズは、一定値に近づくにしたがって、スループットが一定になることがわかる。すなわち、表示画像領域DPAの画面サイズ(対角長Le)に応じて、マスクMの1面取り、マスクM1やマスクM2の多面取りを使い分けることで、マスク領域のサイズ(L×πφ)が一定の円筒ドラム21(直径φが変わらない)とすることができ、スループットは一定に保たれる。
ところで、比L/φの範囲を約1.3〜約3.8としたが、これは図11で示したように、アスペクト比2:1の表示パネル用のマスクM2の長手方向の寸法が、周辺回路領域TABの幅を含んで、表示画面領域DPAの長手方向の寸法Ldに対して20%増加する場合(1.2倍になる場合)を想定したからである。そこで、マスクの長手方向の寸法が、表示画面領域DPAの長手方向の寸法Ldに対してe1倍に拡大したとすると、比L/φは、Asp=Ld/Lcとして、以下の範囲で表される。
π/(e1・Asp)≦L/φ≦e1・π
この条件を満たすような円筒ドラム21(円筒マスク)を用いることで、本実施形態の露光装置U3は、円筒面による射影誤差によって生じる投影像のディストーションや、円弧による投影像面の変化(フォーカスずれ)を抑制しつつ、表示パネル(デバイス)用のマスクパターンの複数を、隙間を少なくして基板P上に並べて転写することができる。
以上、本実施形態における円筒マスク(円筒ドラム21)上に形成されるマスクM、M1、M2等の配置例をまとめてみると、図13、図14のようになる。図13は、先の図7と同様に、θ方向を長手方向とするマスクMの1面取りの場合を示し、図14は、先の図11と同様に、Y方向を長手方向とするマスクM2をθ方向に2つ並べる2面取りの場合を示す。図13は、図7と同様に、表示画面領域DPAの対角長Le(インチ)の表示パネル用のマスクMを長辺がθ方向となる向きで配置した場合である。この場合、表示画面領域DPAの長辺寸法Ldと短辺寸法Lcの比(Ld/Lc)をアスペクト比Aspとし、表示画面領域DPAの周りの周辺回路領域TABを含むマスクMの全体を、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)に余白なく形成すると、マスクMのθ方向の長さπφは、πφ=e1・Ld=e1・Asp・Lcとなり、Y方向の長さLは、L=e2・Lcとなる。先に説明した通り、e1は、表示画面領域DPAの長手方向の両側又は片側に付属する周辺回路領域TABの合計幅によって、マスクMの長手方向が表示画面領域DPAの長手方向に対してどの程度拡大するかを表した拡大倍率である。同様に、e2は、表示画面領域DPAの短手方向の両側又は片側に付属する周辺回路領域TABの合計幅(図13中のTa)によって、マスクMの短手方向が表示画面領域DPAの短手方向に対してどの程度拡大するかを表した拡大倍率である。以上のことから、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)として最低限必要な大きさは、πφ×Lであり、このときのマスクMの長さLと直径φの比L/φは、以下のように表される。
L/φ=π・e2/e1・Asp
マスクMの縦横比(πφ:L)がより大きくなる場合を想定して、表示画面領域DPAの長辺に隣接した周辺回路領域TABの幅Taをゼロ(e2=1)とし、拡大倍率e1を1.2(20%増)とすると、比L/φは、π/1.2・Aspとなる。従って、アスペクト比Aspが2(2/1)の場合、比L/φは、π/2.4≒1.3となり、アスペクト比Aspが1.778(16/9)の場合、比L/φは、π/2.134≒1.47となる。
図14は、図11と同様に、表示画面領域DPAの長辺方向をY方向とする2つのマスクM2を、θ方向に並べた2面取りの場合であり、アスペクト比Asp、拡大倍率e1、e2の定義は図13の場合と同じである。表示画面領域DPAの回りの周辺回路領域TABを含む1つのマスクM2のサイズはL×Lgとなり、このマスクM2の2つがθ方向に間隔Sxを挟んで並置される。従って、2つのマスクM2と2つの間隔Sxとを含むマスク全体を、円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)に余白なく形成する場合、マスク全体のθ方向の長さπφは、πφ=2(Lg+Sx)となり、Y方向の長さLは、L=e1・Ldとなる。よって、このときの比L/φは、以下のように表される。
L/φ=π・e1・Ld/2(Lg+Sx)
ここで、拡大倍率e1を1.2(20%増)、表示画面領域DPAの長辺に隣接した周辺回路領域TABの幅Taをゼロ(e2=1)とし、間隔Sxもゼロと仮定すると、Lg=e2・Lc、Ld=Asp・Lcの関係から、比L/φは、0.6π・Aspとなる。
従って、アスペクト比Aspが2(2/1)の場合、比L/φは、約3.8となり、アスペクト比Aspが1.778(16/9)の場合、比L/φは、約3.4となる。
このように、円筒状のマスク面P1上に配置する表示パネル(デバイス)のサイズ(インチ数)、表示画面領域DPAのアスペクト比Asp、周辺回路領域TABの幅等が定まれば、それに基づいて、比L/φが露光装置U3の装置仕様に適合した好適な円筒マスク(円筒ドラム21)を簡単に作製することができる。
さらに、図15から図18を用いて具体例を説明する。まず、上述の図7或いは図13に示すように、表示画面領域DPAの長辺方向をθ方向にしたマスクMを円筒ドラム21のマスク面P1上に1面取りする場合を比較の基準とする。ここで、具体例では、露光装置U3の投影光学系PLは等倍でマスクパターンを基板P上に投影するものとする。従って、円筒ドラム21のマスク面P1には、実際の表示パネルと実寸大のマスクパターンが形成される。また、表示パネルの表示画面領域DPAは、ハイビジョンサイズ(アスペクト比16:9)で60インチの画面とする。この場合、表示画面領域DPAの短辺寸法Lcは74.7cm、長辺寸法Ldは132.8cm、対角長Leは152.4cmとなる。また、周辺回路領域TABも含めたマスクM全体の大きさは、表示画面領域DPAの長辺方向に関する拡大倍率e1を1.2(20%増)、短辺方向に関する拡大倍率e2を1.15(15%増)として、長手方向(θ方向)にe1・Ld=159.4cm、短手方向(Y方向)にe2・Lc=85.9cmとした。さらに、図6又は図7に示した余白部92のθ方向の長さを5.0cmとする。以上の条件でマスクMを円筒ドラム21のマスク面P1に設けることから、マスク面P1のθ方向の寸法πφは164.4cmとなる。よって、円筒ドラム21の直径φは、52.33cm以上である必要があり、例えば、52.5cmに設定される。また、以上の条件のマスクM全体のY方向の長さは、85.9cmとしたが、このマスクMを基準とするので、露光装置U3の各投影光学系PL1〜PL6の投影領域PA1〜PA6をY方向につなげた露光領域のY方向の全幅は、85.9cmよりも少し大きく、87cmあるものとする。ここで、図12に示すシミュレーション結果より、円筒ドラム21(円筒マスクM)の直径φを52.5cmすると、許容されるデフォーカス量を25μmとした場合の露光スリット幅Dは7.4mmとなり、許容されるデフォーカス量を50μmとした場合の露光スリット幅Dは10.3mmとなる。従って、図13に示した基準となるマスクM(円筒ドラム21)を使って基板Pを走査露光する際は、露光スリット幅Dの7.4mm以下、又は10.3mm以下を基準として各種露光条件(基板Pの移動速度、照明光束EL1の照度等)が最適化されているものとする。すなわち、許容されるデフォーカス量ΔZを25μm以下にしたい場合は、露光スリット幅D(投影領域PAの走査露光方向の幅)が7.4mm以下の所定値となるように、図4中の照明視野絞り55の開口、又は投影光学系PL内の投影視野絞り63の開口が調整される。
次に、図13に示した60インチ表示パネル用のマスクMの為に設定した円筒ドラム21の外周面(マスク面P1)に、アスペクト比16:9(Asp=16/9)の32インチ表示パネル用のマスクM3を配置する場合を説明する。円筒ドラム21のマスク面P1の大きさは、Y方向の長さL=85.9cm、θ方向の長さπφ=164.4cmであるが、基準となるマスクMと同様に、表示画面領域DPAの長手方向がθ方向となるように32インチ表示パネル用のマスクM3の1つを配置(1面取り)すると、マスク面P1上のマスクM3の周囲に広い余白部ができてしまう。
この32インチ表示パネルの場合、表示画面領域DPAの長辺の寸法Ldは70.8cm、短辺の寸法Lcは39.9cmになる。また、表示画面領域DPAの長手方向の両側又は片側に隣接する周辺回路領域TABによる拡大倍率e1を1.2(20%増)程度とすると、マスクM3のθ方向の寸法は15cm程拡大し、85.8cmとなり、さらにθ方向に5cm程度の余白部92を設けるとすると、全長では90.8cmとなる。従って、マスクM3は、基準のマスクM用に用意した円筒ドラム21のマスク面P1上で全周長(πφ=164.4cm)の約55%に形成されるに過ぎない。また、基準となる円筒ドラム21のマスク面P1のY方向の長さLが85.9cmであるのに対し、マスクM3のY方向の長さは、表示画面領域DPAの短手方向の拡大倍率e2を1.15(15%増)程度とすると、45.8cmになる。従って、マスクM3は、基準となる円筒ドラム21のマスク面P1上でY方向の寸法(L=85.9cm)の約53%に形成されるに過ぎない。従って、表示画面領域DPAの長手方向がθ方向となるように32インチ表示パネル用のマスクM3の1つを、基準となる円筒ドラム21のマスク面P1に配置すると、マスクM3の占有面積はマスク面P1の全面積の約30%に過ぎず、効率的ではない。
そこで、1つのマスクM3を円筒ドラム21に効率的に配置する為に、マスクM3のθ方向の寸法と余白部92の寸法との合計である全長90.8cmが全周長となるように、円筒ドラム21の直径φを変えたとすると、直径φは最低でも28.91cmあれば良い。そこで、マスクM3用の円筒ドラム21として、直径φが29cmのものを用意したとすると、図12のシミュレーション結果より、直径φ=29cmの場合の露光スリット幅Dは、許容デフォーカス量ΔZが25μmのときは約5.4mm、許容デフォーカス量ΔZが50μmのときは約7.6mmとなる。
これを、基準となる円筒ドラム21に対して設定された露光スリット幅D(7.4mm、又は10.3mm)と比較してみる。基準となるマスク面P1(直径φ=52.5cmの円筒ドラム21)の場合、露光スリット幅Dを10.3mm(許容デフォーカス量50μm)にして、適正露光量が得られるように設定された基板Pの移動速度をV1とする。このとき、同じ条件の基板Pに、直径φ=29cmの円筒ドラム21に形成された32インチ表示パネル用の1面取りのマスクM3のパターンを露光する場合、露光スリット幅Dが7.6mm(許容デフォーカス量50μm)であるため、照度一定とした場合に、適正露光量を得る為の基板Pの移動速度V2は、V2=(7.6/10.3)V1となり、製造ラインの基板処理速度は全体的に、ほぼ25%低下してしまう。許容デフォーカス量ΔZが25μmの場合も、生産性は同程度に低下する。
そこで、アスペクト比16:9の32インチ表示パネル用のマスクM3を、先の図14に示すような配置で、2面取りした円筒マスク(円筒ドラム21)の具体例を図15により説明する。この図15において、表示画面領域DPAの長辺寸法Ldは70.8cm、短辺寸法Lcは39.9cmとなる。また、周辺回路領域TABによるマスクM3の長手方向(Y方向)の拡大倍率e1は1.2程度、短手方向(θ方向)の拡大倍率e2は1.15程度としたので、マスクM3のY方向の長さLは、15cm程度増えて85.8cmとなり、マスクM3のθ方向の長さLgは、6cm程度増えて45.9cmとなる。
ここで、マスクM3の長辺に隣接する間隔Sx(余白部92)のθ方向の寸法を10cmとすると、2つのマスクM3と2つの間隔Sxとを含むマスク領域全体のθ方向の長さは、2(Lg+Sx)より、110.8cmとなる。従って、この場合の円筒ドラム21の直径φは、35.3cm程度であれば良いことになる。また、円筒ドラム21上のマスク面P1のY方向の長さLは最低85.8cmとなる。この長さL(85.8cm)は、基準となる円筒ドラム21で設定した露光領域のY方向の全幅(投影領域PA1〜PA6のY方向の合計長)87cmの範囲内に丁度収まる。よって、図15に示したマスクM3の2面取り用の円筒マスク(φ=35.3cm、L=85.8cmの円筒ドラム21)は、基準となる円筒マスク(φ=52.5cm、L=85.9cmの円筒ドラム21)と同様に、露光装置U3に装着してマスクM3のパターンを基板P上に効率的に露光することができる。
図16は、図15に示した32インチ表示パネル用のマスクM3を2面取りする他の例の概略構成を示す展開図である。ここでは、図15と同じ寸法のマスクM3が、表示画面領域DPAの長手方向をθ方向とするように、Y方向に2つ並べて隙間なく配置されるものと仮定し、2つのマスクM3によるY方向の寸法Lは、91.8cm(2×45.9cm)となる。この長さL(91.8cm)は、基準となる円筒ドラム21で設定した露光領域のY方向の全幅(投影領域PA1〜PA6のY方向の合計長)87cmの範囲内に収まらない。すなわち、図15と同じマスクM3を90°回転させた2面取りは、基準となる円筒ドラム21のマスク面P1上には配置できないことになる。
図17は、図15に示した32インチ表示パネル用のマスクM3を1面取りする他の例の概略構成を示す展開図である。ここでは、図15と同じ寸法のマスクM3の1つが、表示画面領域DPAの短手方向をθ方向とするように配置されるものと仮定し、θ方向の余白部92の間隔Sxを10cmとする。このような、マスクM3の配置は、標準となる円筒ドラム21のマスク面P1に対する占有面積が極めて小さく、非効率である。そこで、図17のような1面取りのマスクM3に適した寸法の円筒ドラム21を想定してみると、円筒ドラム21の全周長πφは、マスクM3のθ方向の寸法Lg(45.9cm)と余白部92(Sx)の寸法(10cm)との合計より、πφ=55.9cmとなる。従って、円筒ドラム21の直径φは17.8cm以上となるので、18cmとしてみる。尚、この場合のマスクM3のY方向の長さLは、図15と同様で85.8cmであるので、比L/φは約4.77となる。
このように、標準となる円筒マスク(円筒ドラム21)の直径φ(52.5cm)よりも小さい直径φ(18cm)にすると、マスク面P1上に効率的にマスクM3を配置できるが、スループット(生産性)は低下する。図12のシミュレーションによると、マスク面P1の直径を18.0cmとすると、許容デフォーカス量ΔZを25μmとした場合の露光スリット幅Dは約4.3mmとなり、許容デフォーカス量ΔZを50μmとした場合の露光スリット幅Dは約6.0mmとなる。従って、基板Pの移動速度V2は、標準となる円筒マスク(円筒ドラム21)を用いたときの基板Pの移動速度V1に対して、露光スリット幅Dの狭小化に応じて低減する。許容デフォーカス量ΔZを25μmとする場合は、V2=(4.3/7.4)V1となり、許容デフォーカス量ΔZを50μmとする場合は、V2=(6.0/10.3)V1となり、いずれの場合も、標準となる円筒マスクを使った場合と比べ、スループットは約58%に低下する。
次に、図15と同じサイズのマスクM3を、図15のように長手方向がY方向に向くように、θ方向に3つ配列する場合の具体例を、図18により説明する。図18のマスクM3の配置は、先の図8と同様の3面取りである。
ここで、3つのマスクM3の各々の長辺に隣接した余白部92(Sx)や間隔Sxのθ方向の寸法を何れも9cmとすると、マスクM3の短辺方向の寸法Lgが45.9cmであるので、マスク領域全体のθ方向の長さは、3(Lg+Sx)より、164.7cmとなる。この場合、マスク領域全体のθ方向の長さを円筒ドラム21の全周長πφと一致するようにすると、円筒ドラム21の直径φは、52.43cm以上となる。この値は、標準となる円筒マスクの直径φ=52.5cmとほぼ同じである。また、マスク領域のY方向の寸法Lは85.8cmであり、露光領域(投影領域PA1〜PA6)のY方向の合計幅87cm以内に収まる。
このように、アスペクト比16:9の32インチ表示パネル用のマスクM3であれば、図18のような3面取りによって、標準となる円筒ドラム21(φ=52.5cm)のマスク面P1上に、余白部92や間隔Sxの寸法を調整するだけで、効率的にマスクM3を配置することができる。従って、マスクM3を図18のように3面取りする場合は、標準となる円筒マスクのサイズ(φ×L)をそのまま使えるので、スループットの低下は生じない。尚、この図18の場合、比L/φは約1.63となり、効率的な生産が可能とみなされる範囲、1.3≦L/φ≦3.8になっている。
図15から図18に示すように、露光装置U3に装着可能な基準となる円筒マスク(円筒ドラム21)のマスク面P1の大きさを基準として、任意の大きさの表示パネルデバイスを作成する場合、円筒ドラム21にマスクを1面取り、或いは多面取りで配置する際の比L/φを1.3〜3.8の範囲にするように、方向性や面数を調整することで、生産効率を低下させずに、効率的にパターンの転写を行うことができる。
また、図15から図18は、表示画面領域DPAがアスペクト比16:9の60インチの1面の表示パネルデバイスを作成する為のマスク面P1の大きさを基準とした。しかしながら、これに限定されない。例えば、表示画面領域DPAを、アスペクト比16:9のハイビジョンサイズで65インチの画面としてもよい。この場合、図13のように配置される表示画面領域DPAの対角長Leは165.1cm、Y方向に延びる短辺Lcは80.9cm、θ方向に延びる長辺Ldは143.9cmとなる。また、周辺回路領域TABも含めたマスクM全体の大きさは、長辺方向(θ方向)に拡大倍率e1=1.2(表示画面領域DPAの長手方向に20%増大)、短辺方向(Y方向)に拡大倍率e2=1.15(表示画面領域DPAの短手方向に15%増大)だけ、表示画面領域DPAのサイズよりも大きくなるものとする。従って、アスペクト比16:9の65インチ表示パネル用の1面取りマスクMの場合、マスクMの長手方向の寸法は、図13に示したようにe1・Asp・Lcより、172.7cm、短手方向の寸法は、図13に示したようにe2・Lcより、93.1cmとなる。1面取りマスクMの場合、θ方向に隣接して余白部92が設けられるが、そのθ方向の寸法(Sx)を5cmとすると、マスク面P1のθ方向の寸法は約178cmとなり、直径φは56.7cm以上となる。また、マスク面P1のY方向の長さは、93.1cmとなるので、この65インチ用の円筒マスクを基準のマスクとして装着可能な露光装置U3には、露光領域のY方向の全幅(投影領域PA1〜PA6のY方向幅の合計)が、例えば、95.0cmなるように、投影領域PAのY方向寸法を変えた6本の投影光学系PLが設けられる。或いは、Y方向にもう1本の投影光学系PLを追加した7本の投影光学系が設けられる。このアスペクト比16:9の65インチ表示パネルの1面取り用の円筒マスク(円筒ドラム21)の比L/φは、L/φ=1.64(≒93.1/56.7)となる。また、円筒マスクの直径φが56.7cmなので、図12のシミュレーション結果より、露光スリット幅Dは、許容デフォーカス量ΔZを25μmとする場合は約7.5mm、許容デフォーカス量ΔZを50μmとする場合は約10.6mmとなる。
そこで、アスペクト比16:9の65インチ表示パネルの1面取り用の円筒マスク(φ=56.7cm、L=93.1cm)に、37インチ表示パネル用のマスクM4の3つを、図18のような配置で多面取りする具体例を、図19を参照して説明する。図19において、37インチの表示画面領域DPAの長辺Ld(Y方向)は、81.9cm、短辺Lc(θ方向)は46.1cmであり、長辺方向への拡大倍率e1、短辺方向への拡大倍率e2を共に1.15(15%増)とすると、マスクM4の長辺寸法L(e1・Ld)は約94.2cm、短辺寸法Lg(e2・Lc)は約53.0cmとなる。
ここで、マスクM4とマスクM4との間隔Sxを、6.0cm程度とすると、マスク面P1上の3つのマスクM4と3つの間隔Sxとのθ方向の合計寸法である全周長πφは、πφ=3Lg+3Sxより、約177cmとなり、直径φは56.4cm以上となる。また、マスクM4のY方向の長さLは、94.2cmであるので、露光領域のY方向の全幅(95cm)内に収まる。尚、図19の場合、7本目の投影光学系PL(投影領域PA7)をY方向に追加して、露光領域のY方向の全幅が95cmになるようにした。以上のことから、図19に示すような37インチ表示パネル用のマスクを3面取りする場合は、65インチ表示パネル用のマスクMを1面取りする為の円筒マスク(円筒ドラム21)と同じ形状寸法のものが使える。このように、図19に示すマスクM4の場合も、基準となる円筒ドラム21のマスク面P1の全面積に対して、3つのマスクM4の間の間隔Sxを少なくして効率的に配置できると共に、基準となる円筒マスクと同等の直径φの円筒ドラム21を使えることから、露光スリット幅Dの減少に伴うスループット低下も抑えられる。
また、表示パネルデバイスの表示画面領域DPAの大きさを37インチとし、その為のマスクM4を2面配置する場合は、上述した図15と同様の配置とすることでも良い。この場合、2つのマスクM4と2つの間隔Sxとのθ方向の合計寸法を円筒マスクの全周長πφとし、間隔Sxを6cm程度にすると、πφ≒118.0cmとなる。従って、マスクM4の2面を周方向に効率的に配置する場合の円筒マスク(円筒ドラム21)の直径φは37.6cm以上となる。
この場合、比L/φは、約2.5(≒94.2/37.6)となる。また、直径φ=37.6cmの円筒ドラム21の場合、図12のシミュレーションより、露光スリット幅Dは、許容デフォーカス量ΔZが25μmの場合は約6mm、許容デフォーカス量ΔZが50μmの場合は約8.6mmとなる。基準となる直径φ=56.7cmの円筒マスクに対して設定される基準となる露光スリット幅D(7.5mm、10.6mm)と比較してみると、許容デフォーカス量ΔZを25μmと50μmのいずれにした場合も、生産性(基板Pの移動速度)は約80%となる。しかしながら、照明光束EL1の照度を、基準となる円筒マスクによる露光時に比べて20%程度大きくすることができれば、実質的な生産性の低下は生じない。
尚、本実施形態の露光装置U3は、円筒マスク(円筒ドラム21)のマスクパターンを等倍で基板Pに投射したが、これに限定されない。露光装置U3は、投影光学系PLの構成や、円筒マスク(円筒ドラム21)の周速度と基板Pの移動速度等を調整し、マスクMのパターンを所定の倍率で拡大して基板Pに投射しても、所定の倍率で縮小して基板Pに投射してもよい。
以上、本実施形態の露光装置U3に装着可能な円筒マスクにおいて、図8、9、図14、15、図18、19に示したように、長方形の表示画面領域DPAの長手方向をY方向として、θ方向に2つ以上のマスク領域(マスクM1、M2、M3、M4)を間隔Sxを空けて並べる多面取りの場合、その円筒マスク(円筒ドラム21)は以下のように構成される。
中心線(AX1)から一定半径(Rm)の円筒面(P1)に沿ってマスクパターン(マスクM1〜M4)が形成され、前記中心線の回りに回転可能に露光装置に装着される円筒マスクであって、前記円筒面には、長辺寸法Ld、短辺寸法Lcのアスペクト比Asp(=Ld/Lc)の表示画面領域(DPA)と、その周辺に隣接した周辺回路領域(TAB)とを含む表示パネル用の長方形のマスク領域(マスクM1〜M4)が、前記円筒面の周方向(θ方向)に間隔Sxを空けて、n(n≧2)個並べて形成され、前記マスク領域の長手方向(Y方向)の寸法Lを前記表示画面領域の長辺寸法Ldのe1倍(拡大倍率e1≧1)、前記マスク領域の短手方向(θ方向)の寸法を前記表示画面領域の短辺寸法Lcのe2倍(拡大倍率e2≧1)としたとき、前記円筒面の前記中心線の方向(Y方向)の長さは前記寸法L(=e1・Ld)以上に設定され、前記円筒面の直径をφとした前記円筒面の全周長πφは、n(e2・Lc+Sx)に設定され、さらに、寸法Lと直径φとの比が、1.3≦L/φ≦3.8の範囲になるように、前記直径φ、前記個数n、前記間隔Sxが設定される。
[第2実施形態]
次に、図20を参照して、第2実施形態の露光装置U3aについて説明する。尚、重複する記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付して説明する。図20は、第2実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の露光装置U3は、円筒状の基板支持ドラム25で、投影領域を通過する基板Pを保持する構成であったが、第2実施形態の露光装置U3aは、XY平面内を1次元又は2次元で移動可能な基板支持機構12aによって、基板Pを平面状に保持する構成となっている。従って、本実施形態における基板Pは、可撓性の樹脂(PETやPEN等)をベースとする枚葉のシート基板だけでなく、枚葉の薄いガラス基板であっても良い。
第2実施形態の露光装置U3aにおいて、基板支持機構12aは、平面状に基板Pを保持する支持面P2を備えた基板ステージ102と、基板ステージ102を中心面CLと直交する面内でX方向に沿って走査移動させる移動装置(図示略)とを備える。
図20の基板Pの支持面P2は実質的にXY面と平行な平面(中心面CLと直交する平面)であるので、マスクMから反射され、投影光学モジュールPLM(投影光学系PL1〜PL6)を通過し、基板Pに投射される投影光束EL2の主光線は、XY面と垂直になるように設定される。
また、第2実施形態においても、投影光学モジュールPLMの投影倍率を等倍(×1)とすると、先の図2と同様に、XZ面内で見たとき、マスクM上の奇数番の照明領域IR1(及びIR3、IR5)の中心点から偶数番の照明領域IR2(及びIR4、IR6)の中心点までの周長距離CCMは、支持面P2に倣った基板P上の奇数番の投影領域PA1(及びPA3、PA5)の中心点から偶数番の第2投影領域PA2(及びPA4、PA6)の中心点までのX方向(走査露光方向)の距離CCPと、実質的に等しく設定されている。
図20の露光装置U3aにおいても、下位制御装置16が、基板支持機構12aの移動装置(走査露光用のリニアモータや微動用のアクチュエータ等)を制御し、円筒マスクMを保持する円筒ドラム21の回転と精密に同期して基板ステージ102を駆動する。その為に、基板ステージ102のX方向やY方向の移動位置は、測長用のレーザ干渉計又はリニアエンコーダによって精密に計測され、円筒ドラム21の回転位置はロータリーエンコーダによって精密に計測される。尚、基板ステージ102の支持面P2は、走査露光中に基板Pを真空吸着、静電吸着する吸着ホルダで構成しても良いし、支持面P2と基板Pとの間に静圧気体ベアリングを形成して基板Pを非接触状態又は低摩擦状態で支持するベール・ヌイ型ホルダで構成しても良い。
ベール・ヌイ型ホルダの場合は、基板Pを可撓性の長尺のシート基板(ウェブ)とし、基板PにX方向(及びY方向)のテンションを与えつつ、基板PをX方向に移動させることができるので、基板ステージ102(ベール・ヌイ型ホルダ)は、X、Y方向に移動させる必要が無く、また支持面P2も投影領域PA1〜PA6を覆う範囲の面積であれば良く、基板ステージ102の小型化が図られる。また、ベール・ヌイ型ホルダの場合は、基板Pが長尺のシート基板であれば、基板Pを長尺方向に連続移動させながら走査露光することができるので、基板Pの吸着/開放等の付加的な時間を必要とする吸着ホルダの場合に比べ、よりロール・ツー・ロール方式の製造に適している。
露光装置U3aのように、支持面P2を実質的にXY面と平行な平面とし、基板Pを平面状に支持した場合も、マスクM(M1〜M4)を円筒状に保持する円筒ドラム21の形状の条件(L/φ)が、先の第1実施形態で説明した関係を満たすことで、各種のサイズの表示パネルのマスクパターンを基板P上に効率的に並べて露光することができると共に、生産性の低下を抑えることができる。
[第3実施形態]
次に、図21を参照して、第3実施形態の露光装置U3bについて説明する。尚、重複する記載を避けるべく、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1、第2実施形態と同様の構成要素については、第1、第2実施形態と同じ符号を付して説明する。図21は、第3実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第2実施形態の露光装置U3aは、マスクで反射した光が投影光束EL2となる反射型マスクを用いる構成であったが、第3実施形態の露光装置U3bは、マスクを透過した光が投影光束EL2となる透過型マスクを用いる構成となっている。
第3実施形態の露光装置U3bにおいて、マスク保持機構11aは、円筒状にマスクMAを保持する円筒ドラム(マスク保持ドラム)21aと、マスク保持ドラム21aを支持するガイドローラ93と、マスク保持ドラム21aを駆動する駆動ローラ98と、駆動部99と、を備える。
マスク保持ドラム21aは、マスクMA上の照明領域IRが配置されるマスク面(P1)を形成する。本実施形態において、マスク面は、Y方向に延びる中心線AX1’から半径Rm(直径φ=2Rm)の円筒面として設定される。円筒面は、例えば、円筒の外周面、円柱の外周面等である。マスク保持ドラム21aは、例えばガラスや石英等で構成され、一定の肉厚を有する円環状の透明筒として構成され、その外周面(円筒面)がマスク面を形成する。
マスクMAは、例えば平坦性のよい短冊状の極薄ガラス板(例えば厚さ100〜500μm)の一方の面にクロム等の遮光層でパターンを形成した透過型の平面状シートマスクとして作成され、それをマスク保持ドラム21aの外周面に倣って湾曲させ、この外周面に巻き付けた(貼り付けた)状態で使用される。マスクMAは、パターンが形成されていないパターン非形成領域を有し、パターン非形成領域(周辺の余白部92等に相当)においてマスク保持ドラム21aに取付けられている。従って、この場合、マスクMAはマスク保持ドラム21aに対して着脱可能である。平面状シートマスクをマスク保持ドラム21a(円環状の透明筒)の外周面に巻き付けてマスクMAとする代わりに、円環状の透明筒によるマスク保持ドラム21aの外周面に直接クロム等の遮光層によるマスクパターンを描画形成して一体化してもよい。この場合も、マスク保持ドラム21aがマスクMAの支持部材(マスク支持部材)として機能する。
ガイドローラ93及び駆動ローラ98は、マスク保持ドラム21aの中心線AX1’に対して平行なY軸方向に延びている。ガイドローラ93及び駆動ローラ98は、マスク保持ドラム21aのY方向の端部付近に外接するが、マスク保持ドラム21aに保持されているマスクMAのパターン形成領域には接触しないように、設けられている。駆動ローラ98は、駆動部99と接続されている。駆動ローラ98は、駆動部99から供給されるトルクをマスク保持ドラム21aに伝えることによって、マスク保持ドラム21aを中心軸周りに回転させる。
本実施形態の光源装置13aは、第1実施形態と同様の光源(図示略)及び複数の照明光学系ILa(ILa1〜ILa6)を備える。各照明光学系ILa1〜ILa6の一部又は全部が、マスク保持ドラム21a(環状の透明筒)の内側に配置され、マスク保持ドラム21aの外周面(マスク面P1)に保持されているマスクMA上の各照明領域IR1〜IR6を、内側から照明する。
各照明光学系ILa1〜ILa6は、フライアイレンズやロッドインテグレータ等を備え、各照明領域IR1〜IR6を、照明光束EL1によって均一な照度で照明する。尚、光源は、マスク保持ドラム21aの内側に配置されていてもよいし、マスク保持ドラム21aの外側に配置されていてもよい。また、光源は、露光装置U3bと別に設置して、光ファイバやリレーレンズ等の導光ユニットを介して導いてもよい。
本実施形態のように、マスクとして透過型円筒マスクを用いた場合も、マスクMAを円筒状に保持するマスク支持ドラム21aの形状の条件(L/φ)が、先の第1実施形態で説明した関係を満たすことで、各種のサイズの表示パネルのマスクパターンを基板P上に効率的に並べて露光することができると共に、生産性の低下を抑えることができる。
以上、第1、第2、第3の各実施形態の露光装置U3、U3a、U3bは、いずれも円筒状のマスク面P1(円筒ドラム21、マスク保持ドラム21a)に形成されたマスクパターンを、投影光学モジュールPLM(PL1〜PL6)を介して、基板P上に投影露光する方式であった。しかしながら、第3の実施形態のように透過型円筒マスク(MA)とする場合は、透過型円筒マスクの外周面(マスク面P1)と被露光対象である基板Pの表面との間が一定のギャップ(数十μm〜数百μm)に保たれるように、透過型円筒マスク(MA)と基板Pとを近接配置し、透過型円筒マスクを回転させつつ基板Pを一方向に同期移動させるプロキシミティ方式の走査露光装置としても良い。
また、第1〜第3の各実施形態の露光装置U3、U3a、U3bでは、装着可能な円筒マスク(円筒ドラム21、マスク保持ドラム21a)の直径φが変わり得ることに対応する為、円筒マスクの支持位置(Z位置)を調整可能とする機構、或いは照明光学系ILや投影光学系PL内の光学素子の状態を調整する機構等が設けられる。その場合、露光装置が装着可能な円筒マスクの直径φには、最小の直径φ1から最大の直径φ2までの範囲が存在する。従って、製造しようとする表示パネルのサイズに応じて、マスク(M、M1〜M4)の1面取り、又は多面取りで円筒マスクを作成する際は、1.3≦L/φ≦3.8の関係と共に、φ1≦φ≦φ2の関係も満たすように、円筒ドラム21やマスク保持ドラム21aの形状寸法を設定するのが良い。
<デバイス製造方法>
次に、図22を参照して、デバイス製造方法について説明する。図22は、デバイス製造システムによるデバイス製造方法を示すフローチャートである。
図22に示すデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターンや配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。次いで、CAD等で設計された各種レイヤー毎のマスクパターンに基づいて、必要なレイヤー分の円筒マスクを製作する(ステップS202)。この時、円筒マスクは、直径φと長さL(La)の関係が、1.3≦L/φ≦3.8を満たし、露光装置に装着可能な条件、φ1≦φ≦φ2を満たすように製作される。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールFR1を準備しておく(ステップS203)。尚、このステップS203にて用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたものでもよい。
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、TFT(薄膜半導体)等によって構成されるバックプレーン層を形成すると共に、そのバックプレーン層に積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS204)。このステップS204には、先の各実施形態で説明した露光装置U3、U3a、U3bに所定の円筒マスクを装着して、基板Pの表面に塗布された光感応層(フォトレジスト層、感光性シランカップリング層等)を露光して、表面にマスクパターンの像(潜像等)を形成する露光工程、露光によってマスクパターンが形成された基板Pを、必要に応じて現像した後、無電解メッキ法によって金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程、或いは、銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等の処理が含まれる。
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(対環境バリア層)やカラーフィルターシート等を貼り合せたりして、デバイスを組み立てる(ステップS205)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行なわれる(ステップS206)。以上のようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレイ)を製造することができる。