図1から図14を参照して、実施の形態における加工システムについて説明する。本実施の形態における加工システムは、所定の工具にてワークを加工する工作機械と、工作機械にワークを着脱するロボットとを備える。
図1に、本実施の形態における加工システムの概略斜視図を示す。本実施の形態の加工システム100は、工作機械にて加工するワーク9をロボット2にて交換する。本実施の形態の工作機械は、数値制御式である。すなわち、工作機械は、予め作成された加工プログラムに基づいて自動的にワーク9を加工することができる。本実施の形態における工作機械は、テーブル11に固定された第1の固定装置4を備える。ワーク9は、固定装置4を介してテーブル11に固定される。
加工システム100は、加工前のワーク9を固定装置4に取り付けたり、加工後のワーク9を固定装置4から取り外したりするロボット2を備える。加工システム100は、ロボット2のアーム21の先端に取り付けられたハンド3を備える。ハンド3は、アーム21の手首部22に固定されている。本実施の形態におけるロボット2は、多関節ロボットである。本実施の形態の多関節ロボットは、アーム21の手首部22の位置および姿勢を自由に変化させることができる。本実施の形態におけるロボット2は、ワーク9を所定の位置および姿勢に配置することができる。
固定装置4は、テーブル11に固定される枠体41を備える。本実施の形態の枠体41は、箱型に形成されている。枠体41は、内部に空洞を有する。固定装置4は、ワーク9を保持する複数の保持部材を備える。保持部材は、枠体41に固定され、枠体41に対して不動の固定保持部材47と、枠体41に対して移動する移動保持部材42とを含む。本実施の形態のワーク9は、平面形状が四角形になるように形成されている。
移動保持部材42は、固定保持部材47と共にワーク9を挟むことができる位置に配置されている。本実施の形態では、ワーク9の一つの方向において、2つの固定保持部材47と一つの移動保持部材42とがワーク9を挟む。また、ワーク9の一つの方向に垂直な方向において、一つの固定保持部材47と一つの移動保持部材42とがワーク9を挟む。
固定装置4は、移動保持部材42を移動させる保持部材駆動モータとしての第1駆動モータ43を含む。移動保持部材42には、ガイド部46が形成されている。ガイド部46は、枠体41に形成された溝部に挿入されている。溝部は、移動保持部材42の移動方向に延びている。移動保持部材42は、この溝部に沿って移動する。本実施の形態における移動保持部材42は、ラックアンドピニオン機構により駆動される。第1駆動モータ43の回転力は、減速機45にて増幅される。第1駆動モータ43が駆動することにより、移動保持部材42は、矢印101に示すようにワーク9に向かう方向およびワークから離れる方向に移動する。
ハンド3は、ハンド本体31と、ワークを把持する把持部材としての爪部32とを含む。ハンド本体31は、把持部材を駆動する把持部材駆動モータとしての第2駆動モータを含む。ハンド駆動モータが駆動することにより、爪部32が開閉する。図1に示す例では、ハンド3は、爪部32が開くことによりワーク9を把持し、爪部32を閉じることによりワーク9を解放することができる。本実施の形態のワーク9は、平面形状が略円形の穴部91を含む。穴部91は、爪部32により把持される部分に相当する。爪部32がワーク9の穴部91の内面に係合することによりワーク9が把持される。なお、ハンドは、この形態に限られず、任意の形態でワークを把持したり解放したりすることができる。
図2に、本実施の形態における加工システムのブロック図を示す。図1および図2を参照して、本実施の形態における加工システム100は、工作機械1、ロボット2およびハンド3を制御する制御装置を備える。本実施の形態の制御装置は、工作機械1を制御する工作機械制御装置7と、ロボット2およびハンド3を制御するロボット制御装置6を含む。工作機械制御装置7とロボット制御装置6とは、通信線15を含む通信装置により互いに接続されている。通信装置は、例えばイーサネット(登録商標)にて通信を実施することができる。
工作機械制御装置7は、動作制御部71と記憶部73とを含む。動作制御部71は、工作機械1のX軸、Y軸およびZ軸等の各移動軸に対して取り付けられた駆動モータ12を制御する。工作機械1において、移動軸の駆動モータ12が駆動することにより、テーブル11に対する工具の相対位置が変化する。すなわち、工作機械1は、ワーク9に対する工具の相対位置を変更しながらワーク9の加工を行うことができる。記憶部73は、ワーク9を加工するための加工プログラム等を記憶する。
ロボット制御装置6は、動作制御部61と記憶部63とを含む。動作制御部61は、ロボット2のアーム駆動モータ23を制御する。アーム駆動モータ23が駆動することにより、ロボット2の位置および姿勢が変化する。また、動作制御部61は、ハンド3の爪部32を駆動する第2駆動モータ33を制御する。動作制御部61は、第2駆動モータ33を制御することによりハンド3の爪部32の開く角度を調整する。
更に、本実施の形態におけるロボット制御装置6は、固定装置4を制御する。動作制御部61は、固定装置4の第1駆動モータ43を制御する。動作制御部61は、移動保持部材42の位置を制御する。記憶部63は、ロボットを動作させる動作プログラム、検出器にて検出された情報、および算出した情報等を記憶する。
ロボット制御装置6は、位置検出部62を含む。固定装置4は、保持部材の位置を検出する検出器を含む。本実施の形態における固定装置4は、第1駆動モータ43の回転角を検出する回転角検出器44を含む。本実施の形態では、第1駆動モータ43の端部に回転角検出器44が配置されている。回転角検出器は、エンコーダ等により構成することができる。回転角検出器44の出力により、第1駆動モータ43の回転角を検出することができる。位置検出部62は、検出した回転角に基づいて、移動保持部材42の位置を検出することができる。移動保持部材42の位置としては、例えば、工作機械の所定の座標系において、移動保持部材42の所定の点の座標値を例示することができる。
ロボット2は、ロボット2の位置および姿勢を検出する検出器を含む。本実施の形態におけるロボット2は、アーム駆動モータ23の回転角を検出する回転角検出器24を含む。回転角検出器24の出力により、アーム駆動モータ23の回転角を検出することができる。ロボット制御装置6の位置検出部62は、検出した回転角に基づいて、ロボット2の位置および姿勢を検出することができる。または、位置検出部62は、ロボット2の位置および姿勢に基づいて、ハンド3の位置および姿勢を算出することができる。
ハンド3は、把持部材としての爪部32の駆動状態を検出する検出器を含む。本実施の形態におけるハンド3は、第2駆動モータ33の回転角を検出する回転角検出器34を含む。ロボット制御装置6の位置検出部62は、回転角検出器34の出力により、爪部32の駆動状態、すなわち爪部32の開き角度を検出することができる。
図1は、ワークを固定装置に配置する前の状態を示している。移動保持部材42は、ワーク9に接触しないようにワーク9が配置される領域から離れた位置に配置される。この状態で、ロボット2は、矢印110に示すように、移動保持部材42および固定保持部材47に囲まれる領域にワーク9を配置する。ロボット2は、ワーク9が枠体41の取付け面41aに接触するようにワーク9を配置する。
図3に、本実施の形態の第1の固定装置にワークを固定したときの概略斜視図を示す。ロボット2が枠体41の取付け面41aにワーク9を配置した後に、矢印103に示すように、複数の移動保持部材42がワーク9に向かって移動する。
ワーク9は、固定装置4に保持されるときに、ハンド3に把持された状態で移動保持部材42に押圧されることにより移動する。本実施の形態におけるロボット制御装置6は、ワーク9の移動に追従するように、ロボット2の位置および姿勢を変更する機能を有する。ロボット制御装置6は、アーム駆動モータ23に供給される電流および回転角検出器24により出力されるロボット2の位置および姿勢等に基づいて、ロボット2に加わる外力の大きさおよび外力の方向を検出する。動作制御部61は、外力が加わる方向にロボット2の位置および姿勢を変えるように、アーム駆動モータ23を駆動する。ロボット制御装置6は、移動保持部材42にてワークを押圧する時に、この機能を有効にすることができる。この制御により、移動保持部材42にてワークを押圧すると共に、ワーク9を固定保持部材47に密着させることができる。
複数の移動保持部材42がワーク9に向かって移動することにより、ワーク9は複数の方向において、移動保持部材42および固定保持部材47に保持される。そして、ワーク9を保持している期間中には、第1駆動モータ43に連続的に電流が供給される。このため、ワーク9を保持している期間中には、移動保持部材42にワーク9に向かう側に移動する力が付与される。
固定装置4がワーク9を固定した後にロボット2は退避する。ハンド3は、第2駆動モータ33が駆動することにより、爪部32を閉じる。爪部32の係合が解除される。次に、矢印102に示すように、ロボット2のアーム21がワーク9から離れる向きに移動することにより、ハンド3がワーク9から離れる。
このように、ロボット2は、固定装置4に加工前のワーク9を取り付けることができる。次に、工作機械1は、ワーク9の加工を行う。ワーク9の加工が完了した後には、ロボット2は、加工後のワーク9を固定装置4から取り外す。この時には、ワーク9を取り付ける手順と逆の手順にて、ワーク9を固定装置4から取り外すことができる。
すなわち、工作機械制御装置7は、テーブル11を移動して固定装置4を予め定められた位置に配置する。次に、ロボット制御装置6は、ハンド3の爪部32を閉じた状態にする。ロボット制御装置6は、ロボット2を駆動することによりワーク9の穴部91に爪部32を挿入する。次に、ロボット制御装置6は、ハンド3の爪部32を開いて、ハンド3にてワーク9を把持する。次に、ロボット制御装置6は、複数の移動保持部材42をワーク9から離れる向きに移動させて、ワーク9の保持を解除する。ワーク9は、ロボット2に把持された状態にて、固定装置4によるワーク9の固定を解除することができる。この後に、ロボット2が駆動してワーク9を固定装置4から離す。そして、ロボット2は、加工後のワーク9を配置する場所までワーク9を搬送する。
本実施の形態における固定装置4は、第1駆動モータ43により、移動保持部材42を移動することができる。油圧式または空気圧式の固定装置では、保持部材の移動距離を調整することはされないが、本実施の形態における固定装置は、保持部材の位置を任意の位置に制御することができる。ワークを固定装置に取り付けたり取り外したりするときに、固定装置は、保持部材の移動距離を最小限にすることができる。例えば、予め定められたワークの寸法に応じて、保持部材の最小限の移動距離を定めることができる。このために、ワークを取り付けたり取り外したりする時間を短くすることができる。この結果、ワークを加工する加工時間の短縮を図ることができる。
本実施の形態の固定装置4は、工作機械1のテーブル11に固定されているが、ロボット制御装置6により制御されている。この構成を採用することにより、工作機械制御装置7とロボット制御装置6との通信に必要な時間を削減することができる。ワーク9を固定装置4に取り付けたり取り外したりする時間を短くすることができる。たとえば、ロボット制御装置6は、ワーク9を固定装置4の所定の位置に配置したことを工作機械制御装置7に送信する必要がなく、ロボット2や工作機械1の待ち時間を少なくすることができる。
なお、固定装置は、工作機械制御装置により制御されていても構わない。または、固定装置を制御する制御装置を独立した制御装置により構成し、ロボット制御装置および工作機械制御装置と通信するように形成することができる。
本実施の形態における固定装置においては、移動保持部材を任意の位置に配置することができるために、形状が異なるワークを加工することができる。すなわち、固定装置は、複数の種類のワークを固定することができる。例えば、固定装置は、大きさが異なるワークを加工することができる。または、固定装置は、保持部材にて固定可能な任意の形状のワークを固定することができる。例えば、固定装置は、平面形状の縦の寸法と横の寸法とが異なるワークを固定することができる。
さらに、本実施の形態の固定装置は、保持部材がワークを押圧する力を調整することができる。本実施の形態において、ロボット制御装置6の動作制御部61は、第1駆動モータ43に供給する電流を調整する。第1駆動モータ43に供給する電流を大きくすることにより、ワーク9を固定する力を大きくすることができる。第1駆動モータ43に供給する電流は、工作機械制御装置7から受信した信号に基づいて調整するようにロボット2の動作プログラムに予め定めておくことができる。
例えば、工作機械1にてワークを加工するときに、切削量が多い重切削を行うときにはワーク9に対して大きな力が加わる。動作制御部61は、第1駆動モータ43に供給する電流を大きくすることにより、ワーク9を強く固定して、安定した加工を行うことができる。一方で、ワーク9の表面を仕上げる仕上げ加工等においては、大きな力でワーク9を固定するとワーク9が変形する場合がある。ワーク9が変形すると加工精度が悪化する。仕上げ加工時には、切り込み量が小さくなるために、ワーク9を保持する力を小さくすることができる。このために、仕上げ加工の時には、動作制御部61は、第1駆動モータ43に供給する電流を小さくすることができる。ワーク9を固定する力を小さくすることにより、ワーク9の加工精度の悪化を抑制することができる。
ところで、固定装置4の第1駆動モータ43には回転角検出器44が取り付けられている。回転角検出器44により移動保持部材42の位置を検出することができる。本実施の形態のロボット制御装置6は、保持部材にてワーク9を保持した時の保持部材の位置に基づいて、ワーク9の保持部材にて保持される部分の寸法を算出する。本実施の形態では、ロボット制御装置6は、移動保持部材42の位置に基づいてワーク9の保持される部分の寸法を算出する。
また、ハンド3は、第2駆動モータ33の駆動状態を検出する回転角検出器34を含む。回転角検出器34にて検出される回転角に基づいて、爪部32の位置、すなわち爪部32の開き角度を算出することができる。ロボット制御装置6は、爪部32にてワーク9を把持した時の爪部32の位置に基づいて、ワーク9の爪部32にて把持される部分の寸法を算出する。例えば、ワーク9の穴部91の内径が大きい時には、爪部32は大きく開いた状態になる。一方で、穴部91の内径が小さい場合には、爪部32は小さく開いた状態になる。このように、爪部32の開き度合いを検出することにより、穴部91の内径を算出することができる。また、ロボット制御装置6は、ロボット2の回転角検出器24の出力によりロボット2の位置および姿勢を検出することができる。
そして、工作機械制御装置7は、ワーク9の固定装置4にて保持される部分の寸法、ワーク9のハンド3にて把持される部分の寸法、およびハンド3の位置および姿勢に基づいて、工作機械1にてワーク9を加工するときのワーク9に対する工具の相対位置を補正する。そして、工作機械1は、補正後の相対位置にてワーク9を加工する。
図4に、本実施の形態の第1の固定装置にてワークを固定したときのワークの拡大正面図を示す。図4には、工作機械の所定の不動点を原点にする機械座標系のX方向およびY方向が設定されている。2つの移動保持部材42は、第1駆動モータ43により矢印103に示す様にワーク9を押圧している。ワーク9には、寸法の誤差が含まれる。
図4に示す例では、ワーク9の穴部91の端部に切削部93を形成する。切削部93を含む領域94が画定される。切削部93には、後の工程において他の部品が挿入される。この加工では、X方向において、領域94がワーク9の幅方向のほぼ中央に配置されるように切削部93を形成する。領域94には、点対称の基準点95が設定される。この例では、基準点95は、穴部91の中心点92からX方向にずれているが、このずれはあっても良いとされている。Y方向においては、切削部93の頂部と領域94の内部における穴部91の頂部との距離HAが予め定められた値になるように切削部93を形成する。
図5に、本実施の形態の切削加工を行うときのロボットシステムの制御のフローチャートを示す。図2、図4および図5を参照して、ステップ121において、ハンド3は加工前のワーク9を把持する。ステップ122において第2駆動モータ33の位置情報(回転角)からワーク9のハンド3に把持される部分の寸法X1を算出する。ロボット制御装置6は、爪部32の開き角度に基づいて把持される部分の寸法X1を算出する。穴部91の直径Dが寸法X1に相当する。
次に、ステップ123においては、ロボット制御装置6は、寸法X1が許容範囲内であるか否かを判別する。ロボット制御装置6は、判定部64を含み、判定部64が判定を行う。すなわち、判定部64は、穴部91の直径Dが大きすぎたり小さすぎたりしていないか否かを判定する。この時の許容範囲は、予め定められている。ステップ123において、寸法X1が許容範囲から逸脱している場合には、ステップ138に移行する。
ステップ138において、ロボット制御装置6は、ワーク9の形状が不良であると判断する。そして、ステップ139において、ロボット制御装置6は、ワーク9の払い出しを行う。例えば、ロボット制御装置6は、ハンド3によるワーク9の把持を解除する。そして、ロボット制御装置6は、ワーク9を不良の保管場所に搬送するようにロボット2を制御する。ステップ123において、寸法X1が許容範囲内である場合には、ステップ124に移行する。
ステップ124において、ロボット2は、ワーク9を固定装置4の取付け面41aに配置する。ステップ125においては、固定装置4は、移動保持部材42を移動してワーク9を保持する。
次に、ステップ126において、ロボット制御装置6は、第1駆動モータ43の位置情報(回転角)に基づいて、ワーク9が保持部材に保持される部分の寸法X2を算出する。本実施の形態において、ロボット制御装置6は、回転角検出器44の出力に基づいて、移動保持部材42の位置を検出する。そして、移動保持部材42の位置および固定保持部材47の位置に基づいて、寸法X2としてワーク9の幅Wを算出する。
次に、ステップ127において、ロボット制御装置6は、ロボット2の回転角検出器24にて検出されたロボット2の位置および姿勢に基づいて、ハンド3の位置および姿勢を検出する。そして、ロボット制御装置6は、ハンド3の位置および姿勢に基づいて、穴部91の中心点92の位置を算出することができる。
次に、ステップ128においては、ワーク9のロボット2により把持される部分と固定装置4に固定される部分との位置の差X3を算出する。本実施の形態のロボット制御装置6は、位置の差X3として、X方向において中心点92と固定保持部材47に保持されている面までの距離DXを算出する。また、ロボット制御装置6は、位置の差X3として、Y方向において中心点92と固定保持部材47に保持されている面までの距離DYを算出する。
ステップ129においては、ロボット制御装置6の判定部64は、寸法X2および位置の差X3がそれぞれの許容範囲内であるか否かを判別する。これらの許容範囲は、予め定められている。寸法X2および位置の差X3の少なくとも一方が許容範囲から外れている場合には、ステップ138に移行する。そして、ワーク9の形状が不良であると判断され、ステップ139においてワーク9は払い出される。このように、ワーク9の形状の不良を加工前に確認することができる。
ステップ129において、寸法X2および位置の差X3がそれぞれの許容範囲内である場合には、ステップ130に移行する。ステップ130においては、ハンド3がワーク9を解放する。そして、ステップ131においては、ロボット2がワーク9から退避する。ロボット制御装置6は、固定装置4によるワーク9の固定が完了した信号を工作機械制御装置7に送出する。
図6に、本実施の形態の加工システムの制御を説明する他のフローチャートを示す。図6のフローチャートは、図5のフローチャートから継続している。ワーク9の寸法X1,X2または位置の差X3が許容範囲から外れているために、図5のステップ139においてワーク9を払い出した後には、ステップ137に移行する。そして、ステップ137において、判定部64は、加工前のワークが残っているか否かを判別する。ステップ137において、加工前のワークがある場合には、図5のステップ121に戻り、ワーク9の加工を繰り返す。
図5のステップ131においてロボット2の退避が完了すると、図6のステップ132に移行する。ステップ132においては、寸法X1,X2および位置の差X3に基づいて、工作機械にて加工するときの位置の補正量を算出する。ロボット制御装置6は、実際に算出された寸法X1,X2および位置の差X3を工作機械制御装置7に送出する。工作機械制御装置7は補正部72を備える。補正部72は、寸法X1,X2および位置の差X3に基づいて、ワーク9に対する工具の相対位置を補正する。
図4には、所望の位置に切削部93が形成された時の領域94の基準点95が示されている。基準点95のX方向の位置は、ワーク9の幅Wの中点に設定する。領域94のY方向の長さHL、すなわち、切削部93のY方向の長さは、穴部の直径Dと予め定められた長さHAに基づいて設定することができる。なお、領域94の幅は、予め定められた長さを設定することができる。
それぞれの切削部93を加工するときのワーク9に対する工具の相対位置、すなわち工具経路は、予め工作機械の加工プログラムにより設定されている。そして、工作機械制御装置7は、領域94の基準点95の位置および長さHLに基づいて、工具経路の補正量を算出する。本実施の形態では、補正部72は、ワーク9に対する工具のX方向の位置の補正量およびワーク9に対する工具のY方向の位置の補正量を算出する。補正部72は、補正量に基づいて補正後の工具経路を生成する。
次に、ステップ133において、工作機械1は、補正後の工具経路を用いてワーク9の加工を行う。ワーク9の個体差に基づいて工具経路を補正しているために、ワーク9の所望の位置に加工を行うことができる。すなわち、工作機械1は、ワーク9の形状誤差を補正して加工することができる。工作機械制御装置7は、ワーク9の加工が終了すると、加工が終了した信号をロボット制御装置6に送出する。
次に、ステップ134において、ロボット制御装置6は、ハンド3にて加工後のワーク9を把持するロボット2の位置および姿勢を算出する。ロボット制御装置6は、寸法X1,X2および位置の差X3に基づいて、加工後のワーク9の穴部91の位置を算出することができる。例えば、穴部91の中心点92の位置を算出することができる。なお、ワーク9の把持を解放した時のロボットの位置および姿勢を記憶部63に記憶しておいて、記憶された位置および姿勢に基づいて、加工後のワークを把持する時のロボットの位置および姿勢を設定しても構わない。この制御により、ロボット2は、ワーク9の形状の誤差を補正してワーク9を把持することができる。
また、ステップ134において、ロボット制御装置6は、寸法X1,X2および位置の差X3に基づいて、ワーク9の把持される部分の寸法を算出しても構わない。例えば、ロボット制御装置6は、加工後の穴部91の寸法を算出しても構わない。そして、ロボット制御装置6は、ハンド3の爪部32の開き角度を算出することができる。この制御により、ハンド3は確実に加工後のワーク9を把持することができる。
次に、ステップ135において、ロボット制御装置6は、ハンド3が加工後のワーク9を把持できるように、ロボット2の位置および姿勢を制御する。そして、ハンド3は、ワーク9を把持する。ステップ136において、ロボット2は加工後のワーク9を予め定められた場所に搬出する。
次に、ステップ137において、ロボット制御装置6は、加工前のワークが残っているか否かを判別する。ステップ137において、加工前のワークがある場合には、図5のステップ121に戻り、ワーク9の加工を繰り返す。このように、本実施の形態の加工システム100は、ワーク9の加工を繰り返すことができる。複数のワークを自動的に加工することができる。
上記の実施の形態においては、寸法X1,X2および位置の差X3に基づいて、ワーク9の形状の判定、工作機械の工具経路の補正、およびワーク9を取り外す時のロボット2の位置および姿勢の補正を行っているが、この形態に限られず、寸法X1,X2および位置の差X3の一部を用いて判定や補正を行っても構わない。
ところで、図4を参照して、上記の実施の形態では、ロボット制御装置6は、移動保持部材42の位置に基づいて、ワーク9が保持部材に保持される部分の寸法を算出している。特に、ロボット制御装置6は、ワーク9の幅Wを算出している。ワーク9の寸法の算出は、この形態に限られず、ワーク9を移動保持部材42にて保持するときのワーク9の移動量に基づいて算出することができる。
図7に、固定装置にてワークを固定するときのワークの部分の概略平面図を示す。ワーク9を枠体41の取付け面41aに配置する場合は、ロボット2は、移動保持部材42と固定保持部材47とに囲まれる領域の内部にワーク9を配置する。例えば、ワーク9は、位置90aに配置される。この場合に、ワーク9と移動保持部材42との間およびワーク9と固定保持部材47との間には、隙間が形成される。そして、ロボット制御装置6は、矢印103に示す様に移動保持部材42を移動することにより、ワーク9を固定保持部材47に密着させる。この時に、ロボット2は、前述のように外力に追従して駆動する。
ワーク9は、固定保持部材47に密着した位置90bに配置される。ワーク9の穴部91の中心点92aは、矢印106に示す向きに移動する。そして、中心点は、穴部91の中心点92bにて示される位置まで移動する。
ロボット制御装置6は、ワーク9を取り付ける時のハンド3の位置情報に基づいて、穴部91の中心点92aの位置および中心点92bの位置を算出することができる。すなわち、ロボット制御装置6は、ワーク9が固定装置4に保持される前と後のハンド3の位置を算出することができる。そして、ロボット制御装置6は、矢印106に示す穴部91の中心点92の移動する向きおよび移動量を算出することができる。ここでの移動量は、X方向の移動量およびY方向の移動量を含む。
ワーク9の寸法の基準となる基準寸法および基準寸法のワークに対する穴部91の中心点92の基準移動量は予め定められている。そして、ロボット制御装置6は、この基準移動量と実際の移動量とに基づいて、ワーク9の寸法を補正することができる。例えば、ワーク9が基準寸法よりも大きい場合には、矢印106に示す移動量は小さくなる。これに対して、ワーク9が基準寸法よりも小さい場合には、矢印106に示す移動量が大きくなる。このため、ロボット制御装置6は、実際に検出した移動量に基づいて、ワーク9の所定の寸法を算出することができる。例えば、ロボット制御装置6は、移動量に基づいて固定保持部材47から穴部91の中心点92までの距離を算出することができる。特に、Y方向の移動量に基づいて穴部91の中心点92のY方向の位置を算出することができる。
このように、ロボット制御装置6は、ワーク9を保持するためにロボット2が追従した時のワーク9の移動量に基づいてワーク9の寸法を算出しても構わない。そして、工作機械制御装置7の補正部72は、加工を行う時のワーク9に対する工具の相対位置を補正する。たとえば、補正部72は、穴部91の中心点92のY方向の位置に基づいて、切削部93を含む領域94の基準点95のY方向の位置を定めることができる。そして、補正部72は、切削部93を切削するためのワーク9に対する工具の相対位置を補正することができる。動作制御部71は、補正後の相対位置にてワーク9を加工するように工作機械1を制御することができる。
図8に、本実施の形態における第2の固定装置の概略斜視図を示す。第2の固定装置5は、第1の固定装置4と同様に、ワーク9の側面を保持する移動保持部材42および固定保持部材47を備える。更に、第2の固定装置5は、ワーク9の上面を保持する移動保持部材53を備える。移動保持部材53は、一方の端部でワーク9を押圧する。枠体41は、取付け面41aから突出する張出し部54を含む。移動保持部材53は、張出し部54に回動可能に支持されている。
第2の固定装置5は、移動保持部材53を駆動する第1駆動モータ48を備える。第1駆動モータ48は、枠体41の側面から突出した張出し部50に固定されている。第1駆動モータ48には、第1駆動モータ48の回転角を検出する回転角検出器49が取り付けられている。第1駆動モータ48は、ロボット制御装置6に制御されている。
第1駆動モータ48の出力軸には、出力軸と共に回転する回転部材51が固定されている。回転部材51には、連結部材52の一方の端部が連結されている。連結部材52の他方の端部は、移動保持部材53の他方の端部を押すように形成されている。
図9に、本実施の形態における第2の固定装置にてワークを固定したときの概略斜視図を示す。図8および図9を参照して、移動保持部材53は、回転部材51および連結部材52を含む機構により、一方の端部が矢印107に示す方向に移動する。第1駆動モータ48が駆動することにより、回転部材51が回転する。回転部材51が回転することにより、連結部材52が移動する。そして、張出し部54に支持された移動保持部材53は、回動することによりワーク9の上面を押圧する。移動保持部材53がワーク9を押圧することにより、ワーク9が保持される。そして、ワーク9を保持している期間中には、第1駆動モータ48に電流が供給されて、移動保持部材53は、矢印108に示すようにワーク9を押圧する。
ワーク9を加工するときに、保持部材がワークを押圧している部分を加工する場合がある。例えば、図9を参照して、移動保持部材53がワーク9に接触している領域において、ワーク9を加工する場合がある。本実施の形態の第2の固定装置5においては、ワーク9を加工している期間中に、保持部材を移動することができる。複数の保持部材のうち一部の保持部材の保持を一時的に解除することができる。
たとえば、移動保持部材53がワーク9に接触している領域に凹部を形成する場合に、ロボット制御装置6は、第1駆動モータ48を駆動して移動保持部材53をワーク9から離した状態にする。移動保持部材53をワーク9から退避させることにより、工作機械1は、移動保持部材53がワーク9に接触していた領域を加工することができる。工作機械による加工が終了した後には、ロボット制御装置6は、第1駆動モータ48を駆動して移動保持部材53にてワーク9を保持することができる。
このように、第2の固定装置を備える加工システムにおいては、ワーク9を加工している期間中に、移動保持部材53を移動させることができる。移動保持部材にてワークを保持する領域を加工するために、ワークを固定する向きを変えたり、別の固定装置を使ったりする必要がなく、同一の固定装置にて連続的に加工することができる。この結果、ワークの加工時間を短くすることができる。また、第3の固定装置は、加工期間中にワークの保持方法を変更することができる。例えば、ワークの加工する部分に応じてワークを保持する部分を変更することができる。
ワークの加工期間中に移動する保持部材としては、ワークを上面から押圧する保持部材に限られず、任意の保持部材を移動させることができる。例えば、図9を参照して、加工を行っている期間中に、ワーク9の側面を保持している移動保持部材42をワーク9から退避させても構わない。
なお、移動保持部材を退避して、退避した部分の加工を行った後に、加工した部分を移動保持部材にて押圧する場合がある。この場合に、ロボット制御装置の動作制御部は、前述の補正の制御により、ワークの加工を行った部分の寸法の補正を行うことができる。そして、動作制御部は、補正後のワークの寸法に応じて、移動保持部材を駆動することができる。
第2の固定装置を備える加工システムのその他の構成、作用、および効果は、第1の固定装置を備える加工システムと同様である。
図10に、本実施の形態における第3の固定装置の概略斜視図を示す。本実施の形態における第3の固定装置8は、工作機械としての旋盤に配置される。第3の固定装置8は、ワーク10を保持するチャック装置である。図10は、第3の固定装置8に加工を行うワーク10が取り付けられた状態を示している。なお、ワーク10が、ロボットにより固定装置8に取り付けられたり、固定装置8から取り外されたりすることは、前述の工作機械と同様である。本実施の形態の旋盤では、回転軸99の延びる方向にワーク10を移動することにより、ワーク10を固定装置8に取り付けたり取り外したりする。
固定装置8は、円板状に形成された基材81を備える。旋盤は、回転軸99にて基材81を回転させる基材駆動モータを備える。基材駆動モータが駆動することにより、基材81は、矢印109に示す方向に回転する。本実施の形態の旋盤では、加工期間中にワーク10は位置を変えずに回転軸99の周りに回転する。旋盤は、工具としてのバイトを備える。本実施の形態の旋盤は、バイトを予め定められた移動軸に沿って移動させる駆動モータを含む。移動軸の駆動モータが駆動することにより、基材81に対する工具の相対位置が変化する。すなわち、移動軸の駆動モータが駆動することにより、ワーク10に対する工具の相対位置が変化する。工作機械制御装置の動作制御部により各移動軸の駆動モータや基材駆動モータが制御されることは前述の工作機械と同様である。
固定装置8は、ワーク10を保持するチャック爪としての移動保持部材82を備える。固定装置8では、複数の移動保持部材82が配置されている。移動保持部材82は、基材81に形成された溝であるガイド部83に沿って移動する。移動保持部材82は、矢印101に示すように、基材81の径方向に移動する。ワーク10は、介在部材84に固定されている。介在部材84は、移動保持部材82に保持されている。すなわち、ワーク10は、介在部材84を介して移動保持部材82に保持されている。
図11に、第3の固定装置にて保持するワークの斜視図を示す。図12に、第3の固定装置にて保持するワークの正面図を示す。図11および図12を参照して、ワーク10は、所定の装置のカムシャフトである。ワーク10は、棒状のシャフト96と、断面形状が円形の円形カム97とを含む。それぞれの円形カム97は、シャフト96の中心軸98に対して偏心するように配置されている。
図10を参照して、本実施の形態の第3の固定装置8は、移動保持部材82を駆動する保持部材駆動モータとして第1駆動モータを含む。固定装置8は、複数の移動保持部材82に対応する複数の第1駆動モータを含む。それぞれの第1駆動モータは、個別に移動保持部材82を駆動する。また、それぞれの第1駆動モータは、ロボット制御装置6の動作制御部61に個別に制御されている。すなわち、複数の第1駆動モータにより独立して移動保持部材82の位置が制御される。
そして、制御装置は、複数の第1駆動モータを同期して駆動することにより、固定装置8におけるワーク10の位置を変更できるように形成されている。固定装置8では、ワーク10を加工している期間中に、基材81に対する介在部材84の相対位置、すなわち、基材81に対するワーク10の相対位置を変更する。複数の移動保持部材82を同時に移動することにより、ワーク10の位置が変更される。
図13に、ワークを加工しているときの第1の状態を示す第3の固定装置およびワークの概略正面図を示す。図13は、シャフト96の表面を切削しているときの図である。基材81の回転軸99に対して、シャフト96の中心軸98が一致するように、ワーク10が配置されている。第1の状態では、複数の移動保持部材82は、基材81の径方向における回転軸99からの距離が同一になるように配置されている。ワーク10は、シャフト96の中心軸の周りに回転するために、シャフト96の断面形状が円形になるように加工することができる。
図14に、ワークを加工しているときの第2の状態を示す第3の固定装置およびワークの概略正面図を示す。シャフト96の加工が完了したら、ロボット制御装置6の動作制御部61は、複数の第1駆動モータを同期して駆動する。それぞれの移動保持部材82が移動する。動作制御部61は、複数の移動保持部材82がワーク10を保持した状態を維持しながら、ワーク10を平行移動させるように、複数の第1駆動モータを制御する。
第2の状態においては、一つの円形カム97の中心軸が、基材81の回転軸99と一致するように移動保持部材82が配置されている。図13に示す第1の状態よりも介在部材84は図14の上側に向かって移動している。
第2の状態においては、一つの円形カム97の中心軸と、基材81の回転軸99とが一致する。このために、一つの円形カム97の断面形状が円形になるように円形カム97の表面の加工を行うことができる。
このように、第3の固定装置を備える加工システムにおいて、制御装置は、複数の保持部材駆動モータを同期して駆動することにより、固定装置におけるワークの位置を変更する。第3の固定装置を備える加工システムは、ワークを加工している期間中に、固定装置におけるワークの位置を変更することができる。第3の固定装置を用いることにより、中心軸が異なる複数の部分を加工する場合に、介在部材を取り換えたり、保持部材を異なる形状の保持部材に取り換えたりする必要はなく、連続して加工を行うことができる。この結果、ワークの加工時間を短くすることができる。
第3の固定装置を備える加工システムのその他の構成、作用、および効果は、第1の固定装置を備える加工システムおよび第2の固定装置を備える加工システムと同様である。
上述のそれぞれの制御においては、機能および作用が変更されない範囲において適宜ステップの順序を変更することができる。上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。
上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。