以下、本発明について、詳述する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部基準で、ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)を30〜80質量部、全ジオール成分の12〜50モル%がシクロヘキサンジメタノール成分であるシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を12〜55質量部及びポリカーボネート樹脂(C)を2〜20質量部含有する熱可塑性樹脂(D)100質量部に対し、ブタジエン系ゴムをコアとするコア/シェル型エラストマー(E)を2〜8質量部、ガラス繊維(F)を65〜110質量部含有し、コア/シェル型エラストマー(E)の数平均粒径が100〜350nmであることを特徴とする。
[ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)]
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位(以下「ET単位」と称す場合がある。)の比率(以下「ET比率」と称す場合がある。)が好ましくは90当量%以上であるポリエチレンテレフタレート樹脂であり、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂はET単位以外の構成繰り返し単位を10当量%未満の範囲で含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、例えば、エチレングリコール/イソフタル酸/テレフタル酸共重合体(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート)や、1,4−ブタンジオール/イソフタル酸/テレフタル酸共重合体(イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート)、1,4−ブタンジオール/イソフタル酸/デカンジカルボン酸共重合体等が挙げられ、中でもアルキレンテレフタレートコポリエステルが好ましい。
上記の様なテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとを含む原料は、エステル化触媒又はエステル交換触媒の存在下におけるエステル化反応又はエステル交換反応により、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレーテ及び/又はそのオリゴマーを形成させ、その後、重縮合触媒及び安定剤の存在下で高温減圧下に溶融重縮合を行ってポリマーとされる。
エステル化触媒は、テレフタル酸がエステル化反応の自己触媒となるため特に使用する必要はない。また、エステル化反応は、エステル化触媒と後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であり、また、少量の無機酸等の存在下に実施することができる。エステル交換触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、マンガン等の金属化合物が好ましく使用されるが、中でも得られるポリエチレンテレフタレートの外観上、マンガン化合物が特に好ましい。
重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、錫化合物等の反応系に可溶な化合物が単独又は組み合わせて使用される。重縮合触媒としては、色調及び透明性等の観点から二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。これらの重縮合触媒には重合中の分解反応を抑制するために安定剤を併用してもよく、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物の1種又は2種以上が好ましい。
上記の触媒の使用割合は、全重合原料中、触媒中の金属の質量として、通常1〜2000ppm、好ましくは3〜500ppmの範囲とされ、安定剤の使用割合は、全重合原料中、安定剤中のリン原子の質量として、通常10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmの範囲とされる。触媒及び安定剤の供給は、原料スラリー調製時の他、エステル化反応又はエステル交換反応の任意の段階において行うことができる。更に、重縮合反応工程の初期に供給することもできる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)は通常0.3〜1.5dl/gの範囲にあるが、本発明で用いるポリエチレンテレフタレート樹脂(A)としては、IVが0.4〜1.2dl/gのものが好ましい。IVが0.4を下回る場合は強度が低下しやすく、また1.2を超える場合は流動性が十分でない。より好ましいIVは0.45〜1.0dl/gであり、更には0.5〜0.9dl/gが特に好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度の調整は、公知のポリエチレンテレフタレート樹脂の製造条件を適宜選択することにより行いことができる。例えば、重合時間、触媒量、重合時の真空度等を適宜設定することにより行えばよい。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
[シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ジオール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分として共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を含有する。なお、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)とは異なる樹脂である。
ここで、シクロヘキサンジメタノールは、全ジオール成分の12〜50モル%であり、好ましくは15モル%以上、より好ましくは17モル%以上、特には20モル%以上であることが好ましく、また、好ましくは48モル%以下、45モル%以下であることがより好ましい。全ジオール成分に対するシクロヘキサンジメタノールが上記下限値未満では、ウェルド強度改善効果が十分ではなく、一方、上記上限値を超えても、ウェルド強度が低下する。
また、シクロヘキサンジメタノールとしては、例えば、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールを主要な成分とする限り、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分、並びに、エチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分が更に共重合されたものであってもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸;テトラブロムフタル酸、テトラブロムテレフタル酸等の如きハロゲン置換フタル酸、メチルイソフタル酸等の如きアルキル置換フタル酸類;2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等の如きナフタレンジカルボン酸類;4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸等の如きジフェニルジカルボン酸類;4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂肪族または脂環族ジカルボン酸類等が挙げられる。
なお、本発明において、ジカルボン酸成分としては、共重合される前の原料の段階での、例えば、炭素数1〜4程度のそのアルキルエステル等のエステル形成性誘導体をも含むものとする。
また、エチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分としては、特に制限はされないが、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオールに由来する構成単位が例示できる。
これらの共重合成分は1種または2種以上用いることができ、またその割合は全ジカルボン酸(オキシカルボン酸はその半分量がカルボン酸として計算)当り20モル%以下、特に10モル%以下であることが好ましい
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、従来公知の方法で製造する事ができる。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法又は溶液重合法を挙げる事ができる。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)製造時には従来既知の触媒を用いる事ができる。例えば、ナトリウム、マグネシウムのアルコキサイド;亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタニウム、ゲルマニウム、アンチモン、スズ等の脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物;金属マグネシウムなどが挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、複数のものを同時に用いることもできる。
上記した触媒の中でも、チタニウム、ゲルマニウムの脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物がより好ましい触媒として挙げられる。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の固有粘度は、フェノールとテトラクロロエタンの質量比1/1の混合溶媒による30℃での測定値で、0.5〜1.5dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.55〜1.2dl/g、更には0.6〜1.0dl/gであることが好ましい。共重合ポリエチレンテレフタレート(B)の固有粘度がこの範囲にある場合には、本発明の樹脂組成物の成形性がより良好であり、さらにそれを成形してなる成形体の強度がより高くなるため好ましい。
[ポリカーボネート樹脂(C)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(C)を含有する。
ポリカーボネート樹脂(C)の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の製造方法
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限はないが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次にポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂(C)の粘度平均分子量(Mv)は、13,000〜28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、流動性、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品が得られやすく、13,000を下回ると、耐衝撃性が著しく低下しやすく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(C)の分子量の下限は、より好ましくは13,500、さらに好ましくは14,000であり、その上限はより好ましくは26,000、特に好ましくは25,000である。
なお、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂(C)の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これによりポリカーボネート樹脂の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)と共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)とポリカーボネート樹脂(C)の含有量の割合は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部基準で、(A)を30〜80質量部、(B)を12〜55質量部、(C)を2〜20質量部である。ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)及びポリカーボネート樹脂(C)を含有する系においては、その組成領域において性質が劇的に変化することが判明した。すなわち、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の含有量が12質量部を下回るとウェルド強度が低下し、また55質量部を超えた場合もウェルド強度が低下する。ポリカーボネート樹脂(C)の含有量が20質量部を超えるとウエルド強度が低下し、2質量部を下回るとウエルド強度は良いものの、強度が十分ではない。
好ましい含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計100質量部基準で、(A)を30〜77質量部、(B)を13〜52質量部、(C)を3〜19質量部であり、より好ましくは(A)が40〜73質量部、(B)が4〜50質量部、(C)が4〜18質量部である。
[コア/シェル型エラストマー(E)]
コア/シェル型エラストマー(E)としては、ブタジエン系ゴムをコアとし、これと共重合可能な単量体成分をグラフト重合したグラフト共重合体を用いる。ブタジエン系ゴムをコアとするコア/シェル型エラストマー(E)を所定量含有することで、ウェルド強度を効果的に高めることができる。
このようなグラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。なかでも、乳化重合で行うのが最も容易であり、好ましい方法である。
上記ブタジエン系ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下のものが好ましく、更には−30℃以下のものが好ましい。ブタジエン系ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴムなどを好ましく挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
ブタジエン系ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。ここで、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の一方又は双方をさす。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
本発明に用いるコア/シェル型エラストマー(E)は、ウエルド強度の点から、ポリブタジエン含有ゴム成分をコア層とし、その周囲にメタアクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなるコア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ブタジエン系ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、メタアクリル酸成分は、10質量%以上含有するものが好ましい。
このようなコア/シェル型エラストマー(E)の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレングラフト共重合体、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエングラフト共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴムグラフト共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレングラフト共重合体等が挙げられる。この様なゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ブタジエン系ゴムをコアとし、メタアクリル酸エステル系共重合体をシェルとするコア/シェル型エラストマーを製造する方法には、制限はないが、通常、ブタジエン系ゴム成分のラテックス中に、上記メタアクリレート成分を添加し、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤または酸化剤もしくは還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤などの乳化剤および連鎖移動剤などを用いて、乳化グラフト重合等により製造する方法が好ましく挙げられる。
コア/シェル型エラストマー(E)は、その平均粒子径が100〜350nmである。平均粒子径を350nm以下とすることにより、ウェルド強度が良好となり、100nmを下回ると耐衝撃性が低下する。
ここで、コア/シェル型エラストマー(E)の数平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)により測定され、具体的には、本発明の熱可塑性樹脂組成物(ペレット)を株式会社日立ハイテクノロジー製走査電子顕微鏡「SU8020」を用い、印加電圧2.0kV、倍率10,000倍で観察される画像から300個の粒子の数平均粒径として定義される。
コア/シェル型エラストマー(E)の含有量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)及びポリカーボネート樹脂(C)を含有する熱可塑性樹脂(D)100質量部に対し、2〜8質量部であり、好ましくは2.5質量部以上であり、好ましくは7質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。コア/シェル型エラストマー(E)の含有量が少な過ぎると、ウエルド強度が低下し、多過ぎるとウェルド強度、非ウェルド部の強度が低下する。
[ガラス繊維(F)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維(F)を、熱可塑性樹脂(D)100質量部に対し、65〜110質量部と高い含有量で含有することを特徴とする。このような割合で、ガラス繊維(F)を含有することで、非ウェルド部の強度と寸法安定性を効果的に高めるすることができる。ガラス繊維(F)の好ましい含有量は、熱可塑性樹脂(D)100質量部に対し、68質量部以上であり、105質量部以下である。
ガラス繊維としては、通常熱可塑性樹脂に使用されているものであれば、Aガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成や、チョツプドストラント、ロービングガラス、熱可塑性樹脂とガラス繊維の(長繊維)マスターバッチ等の配合時のガラス繊維の形態を問わず、公知のいかなるガラス繊維も使用可能である。なかでも本発明に用いるガラス繊維としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を向上させる目的から無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。
ガラス繊維の数平均繊維長は1mm以上10mm以下であることが好ましく、1.5〜6mmであることがより好ましく、2〜5mmであることがさらに好ましい。
数平均繊維長が10mmを超えると成形品の表面からのガラス繊維の脱落が発生しやすく、生産性が低下しやすい。数平均繊維長が1mm未満では、ガラス繊維のアスペクト比が小さいため、機械的強度の改良が不十分となりやすい。
ガラス繊維の直径は3〜20μmであることが好ましい。これらは、従来公知の任意の方法に従い、ガラス繊維のストランドを、具体的には例えばハンマーミルやボールミルで粉砕することにより製造できる。ガラス繊維の直径が3μm未満の場合は、同様に機械的強度の改良が不十分で、20μmを超えると外観が低下しやすい。ガラス繊維の直径は、より好ましくは5〜15μm、さらに好ましくは、6〜14μmである。
ガラス繊維は、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリカーボネート樹脂との密着性を向上させる目的で、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤などにより表面処理を行うことができる。
また、ガラス繊維は、通常はこれらの繊維を多数本集束したものを、所定の長さに切断したチョップドストランド(チョップドガラス繊維)として用いることが好ましく、このとき使用するガラス繊維は収束剤を配合することが好ましい。収束剤を配合することで成形品の生産安定性が高まる利点に加え、良好な機械物性を得ることができる。
収束剤としては、特に制限はないが、例えばウレタン系、エポキシ系、アクリル系等の収束剤が挙げられる。なかでも、ウレタン系、エポキシ系収束剤がより好ましく、エポキシ系収束剤がさらに好ましい。
チョップドストランド(チョップドガラス繊維)のカット長についても特に制限はないが、通常1〜10mm、好ましくは1.5〜6mm、より好ましくは2〜5mmである。
ガラス繊維は、繊維断面が実質的に真円形の、具体的には繊維断面の扁平率(長径/短径)が1以上1.5未満の断面がほぼ円形のガラス繊維であってもよい。この際の扁平率は1〜1.4が好ましく、1〜1.2がより好ましく、1〜1.1が特に好ましい。
また、ガラス繊維は、断面形状が扁平であるガラス繊維であることが、流動性の点から好ましく、具体的には繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5以上8以下であるような扁平断面ガラス繊維が挙げられる。
ガラス繊維としては、ガラス繊維ミルドファイバー(Milled Fiber)といわれるものも好ましく、これは、詳しくは、ミルドガラスファイバーは、ガラス単繊維(フィラメント)を数十本から数千本束ねたガラス繊維のストランドを、所定の長さに切断したガラス繊維チョップドストランドを、粉砕したものである。この際のガラス繊維チョップドストランドは、前述したように収束剤により表面処理されたものが好ましい。
ミルドガラスファイバーは、好ましくは、平均繊維径に対する平均繊維長の比(アスペクト比)が10以下の短繊維である。ミルドガラスファイバーのアスペクト比は、好ましくは8以下、より好ましくは7以下であり、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3以上である。アスペクト比が、10を超える場合は、ソリや異方性が大きくなるほか、成形品外観が悪化する傾向にある。
また、ミルドガラスファイバーの平均繊維径は、数平均繊維径で好ましくは1〜25μmであり、より好ましくは5〜17μmであり、平均長さは、好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜300μm、更に好ましくは20〜200μmである。平均繊維径が1μm未満の短繊維のミルドガラスファイバーでは、成形加工性が損なわれやすく、また、平均繊維径が25μmより大きいと、外観が損なわれ、補強効果が不十分となる傾向がある。
[安定剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、色相の悪化を防止するので好ましい。
安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。特に、リン系安定剤を含有すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂のエステル交換反応を効果的に抑制することができ、耐衝撃性等の機械的特性が良好となる傾向にあり好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましい。
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(R1O)3−nP(=O)OHn
(式中、R1は、アルキル基又はアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)
で表される化合物またはその金属塩である。より好ましくは、R1が炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。金属塩としてはアルカリ土類金属や亜鉛、鉛、錫の塩、特には亜鉛塩が好ましい。
長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物としては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等又はその金属塩が挙げられる。これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものは例えばADEKA社の商品名「アデカスタブ AX−71」(オクタデシルアシッドホスフェート)、城北化学工業社製の商品名「JP−518Zn」(オクタデシルアシッドホスフェートZn塩)等として市販されている。
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R2O−P(OR3)(OR4)
(式中、R2、R3及びR4は、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R2、R3及びR4のうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、このものは、例えばADEKA社製、商品名「PEP−36」として市販されている。
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R5−P(OR6)(OR7)
(式中、R5、R6及びR7は、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R5、R6及びR7のうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂(D)100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.001〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.005〜0.6質量部である。
[離型剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
なお、上述した離型剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂(D)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[染顔料]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望により染顔料を含有していてもよい。染顔料を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品に、色彩、光漏れ防止性、光反射性、隠蔽性、耐候性等を付与することができる。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、白雲母、硫酸カルシウム等の白色顔料;カーボンブラック;カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料及び有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
これらの中では、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の白色顔料、カーボンブラック、シアニン系化合物、キノリン系化合物、アンスラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が染顔料を含有する場合、その含有量は、必要な特性に応じて適宜選択すればよいが、熱可塑性樹脂(D)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.7質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。
特に、上記した白色顔料を含有する場合の含有量は、熱可塑性樹脂(D)100質量部に対して、好ましくは2〜8質量部であり、より好ましくは2.5質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、また、より好ましくは7.5質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。含有率が8質量部を超える場合は、機械的性質、特に強度が低下し、また、含有率が2質量部より少ない場合は、十分な白色度が得られなくなりやすい。白色顔料としては、特に酸化チタンが好ましい。
[添加剤等]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤、またポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、コア/シェル型エラストマー以外の他の樹脂を含有することができる。これらは一種または二種以上を配合してもよい。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、樹脂組成物を調製することもできる。さらには、ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)及びポリカーボネート樹脂(C)、あるいは他の熱可塑性樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維(F)の繊維状の強化充填材は、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常260〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、成形不良の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、安定剤の使用が望ましい。
上記した樹脂組成物をペレタイズしたペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
[成形品]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を製造する方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、アウトサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状(正方形、円形状、楕円形状あるいは特殊な形状の枠)、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特に薄肉の成形品を溶融樹脂射出部のゲートが2つ以上である多点ゲート型の金型を用いて射出成形、インサート成形やアウトサート成形する場合に特に好適に使用できる。金型のゲート構造自体に制限はなく、サイドゲート構造、フィルムゲート構造(フラッシュゲート構造と呼ばれることもある)、ダイレクトゲート構造、ピンゲート構造、サブマリンゲート構造、ダイヤフラムゲート構造、トンネルゲート構造を例示することができる。
ゲート数は2以上であり、薄肉化や成形品の複雑化の程度にもよるが、2〜15程度が好ましい。
また、薄肉の成形品とは、最大厚みが2mm以下である成形品をいい、最大肉厚が2mm、好ましくは1.8mm、より好ましくは1.6mm、さらに好ましくは1.5mm、なかでも1mm、また0.7mm、特には0.5mm以下、最も好ましくは0.4mm以下の成形品をいう。
また、成形品の形状に制限はなく、平板状であっても曲板状、折れ板状、円筒状、箱状、曲面状等であってもよく、表面は平坦であっても凹凸等を有してもよく、また断面は傾斜していたり楔型断面等であってもよい。
射出成形時の成形条件としては、成形機の仕様によっても変動はあるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、通常、シリンダー温度は280〜340℃、金型温度を50〜70℃とすることがそれぞれ好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れ、ウエルド部及びウエルド部以外の強度が高く、また寸法安定性に優れるので、上記した薄肉成形品を製造するのに好適であり、特に多点ゲートを有する金型を用いて射出成形、インサート成形あるいはアウトサート成形にて成形する場合に用いて好適である。
アウトサート成形は、射出成形時に溶融樹脂を流し込む金型キャビティに、予め金属板金を収容しておき、その金属板金上に直接枠状成形品を成形する手法である。この方法は金属部材を金型内にセットし次いで樹脂を射出する点でインサート成形の一種であるが、樹脂を金属板金の一部に成形により付着一体化させて複合部品を作る成形法であるのでアウトサート成形と当業界で呼ばれている成形技術である。
アウトサート成形に使用する射出成形機は特に限定されるものではなく、各種の公知の射出成形機が使用でき、射出成形に先立ち、予め金属板金を金型キャビティ内に収容する。本発明の樹脂組成物をアウトサート成形する場合、金属板金としては、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅製等のもの、特にはステンレス製のものが好ましく、その厚みは0.1〜0.4mmの範囲にあるものが好ましい。
金型には、成形品1個あたり、6点以上、さらには8点以上、特には10点以上というような多数のゲートを設けることが好ましい。このような場合には成形品中に多数のウェルドが発生し成形品の強度が著しく低下するリスクが高いが、本発明の樹脂組成物では、このような多数ゲートの場合でも得られた成形品のウエルド強度を高く維持することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は小型薄肉でも高い強度(剛性)と耐衝撃性に優れる成形品を製造できるので、これらの特性が厳しく求められる電気電子機器の部品、例えば各種携帯端末等における部品収納枠やケース等として好適に使用することができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定方法は、前述したとおりである。
(実施例1〜14、比較例1〜26)
[熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造]
以下の表2以下に記した各成分のうち、ガラス繊維以外の各成分を下記表2以下に記した割合(質量比)で配合し、タンブラーミキサーにて20分均一に混合した後、日本製鋼所社製二軸押出機「TEX30α」に供給するとともに、下記表2以下に記載した割合でガラス繊維を二軸押出機途中より溶融樹脂中へサイドフィードで供給した。スクリュー回転数300rpm、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
[バーフロー長測定による流動性評価]
上記で得られたペレットを、100℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製射出成形機(型締め力55T)と、樹脂流動部が螺旋状であり、その厚みが1mm、幅6mmである金型を用い、シリンダー温度300℃、射出速度200mm/s、射出圧上限150MPa、金型温度60℃の条件で成形し、流動長(単位:mm)を測定した。
[非ウエルド部強度の測定]
上記で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製射出成形機(型締め力55T)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度60℃の条件で、ダンベル形状試験片(厚さ1mm、細い部分の幅6mm、つかみ部を含めた長さ115mm)を射出成形した。
上記のダンベル形状試験片を用いて、引張破断強度(単位:MPa)を測定した。
[ウエルド部強度の測定]
上記で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製射出成形機(型締め力55T)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度60℃の条件で、厚さ1.6mm×横13mm×縦100mmの試験片を成形した。本成形に用いた金型は上記の試験片の両端にゲートが設けられており、試験片の中央にウェルドが形成されるようになっている。
測定には、東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機「DG−CB」を使用した。23℃の温度条件下で、本試験片を1.6mm×100mmの面を下にして、ハンマーを振り下ろした際にハンマーがウェルド部に当たるように上述の装置に静置し、ハンマーを振り下ろして試験片の中央ウエルド部における衝撃強度(ノッチなし、単位:kJ/m2)を測定した。
以上の結果を以下の表2以下に示す。なお、表中、実施例1は「実1」、比較例1は「比1」のように略記した。