以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置の基本的な構成例を示す。図1の回路装置は、駆動トランジスターSWTと制御回路10と検出回路30とサージ吸収回路40を含む。また回路装置は保護素子PR、出力端子TSW、電源端子TVBを含むことができる。なお本実施形態の回路装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
駆動トランジスターSWT(スイッチングトランジスター)は、インダクターLに対する駆動電流を出力端子TSWに出力する。例えば出力電圧VSW(駆動電圧)を出力端子TSWに出力して、インダクターLを駆動する。この駆動トランジスターSWTは、例えばP型のトランジスター(MOSトランジスター)により実現でき、そのゲートには制御回路10からの制御信号CTが入力される。駆動トランジスターSWTのソースには、電源端子TVBを介して高電位側の電源電圧VBが供給される。駆動トランジスターSWTのドレインは、出力端子TSWのノードNSWに接続される。
制御回路10は、回路装置の各種の制御や各種の処理を行う。具体的には制御回路10は、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を制御する。例えば制御回路10は、駆動トランジスターSWTがオン期間とオフ期間を繰り返すよう制御する。即ち、オンオフの制御信号CTを駆動トランジスターSWTのゲートに出力して、駆動トランジスターSWTをオン又はオフにする制御を行う。制御回路10は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
検出回路30は各種の検出処理を行う。例えば端子電圧VSWの検出を行う。具体的には検出回路30は、出力端子TSWの端子電圧VSW(駆動トランジスターSWTの出力電圧)の異常検出を行う。例えば端子電圧VSWが、異常な電圧値の負電圧(絶対値が所定値以上の負電圧)になったか否かを検出する。例えば検出回路30は、端子電圧VSWが、後述する判定電圧(例えば−0.5V程度)よりも低くなったか否かを検出する。そして制御回路10は、駆動トランジスターSWTのオフ期間内における判定期間において端子電圧VSWが判定電圧よりも低くなったことが検出された場合(継続して低くなったことが検出された場合)に、端子電圧異常が発生したと判断する。この検出回路30は、後述するように、駆動トランジスターSWTのオフ期間において端子電圧VSWが負電圧になることにより高電位側の電源VBから出力端子TSW側に流れる電流を用いて、端子電圧異常を検出している。なお、本実施形態では、VSWを、適宜、出力電圧と呼んだり、端子電圧と呼ぶこととする。
サージ吸収回路40は例えば出力端子TSWに接続される。このサージ吸収回路40は、出力端子TSWに発生した過電圧(回路装置の定格を超える電圧)のサージ(瞬間的な電位変化)を吸収(サージに起因する電荷を放電)する回路である。例えばサージ吸収回路40は放電回路42を含む。放電回路42は、低電位側電源(GND)側から出力端子TSW側に放電電流(電荷)を流す回路である。具体的には放電回路42は、駆動トランジスターSWTのオフ期間において端子電圧異常が検出された場合に、低電位側電源側から出力端子TSW側に放電電流を流す。
保護素子PR(内部保護素子)は、回路装置の保護用(静電気保護、過電流吸収)の素子である。図1では、例えばゲートとソースが接続されてオフ状態に設定されたN型のトランジスター(MOSトランジスター)が保護素子PRとして用いられる。保護ダイオードDIは、このN型のトランジスターのボディーダイオード(寄生ダイオード)である。このように保護素子PRは、出力端子TSWにカソードが接続される保護ダイオードDIを有している。ダイオードDIのアノードは例えば低電位側電源(GND)のノードに接続される。低電位側電源のノードから出力端子TSWのノードNSWへ向かう方向が、ダイオードDIの順方向となる。なお保護素子PRは図1の構成の素子に限定されず、例えば出力端子TSWと低電位側電源との間に保護ダイオードDIを形成するような種々のタイプの保護素子を採用できる。
電源端子TVB、出力端子TSWは、回路装置の外部接続端子(パッド、ピン)である。これらのTVB、TSWの端子は、回路装置が実装される回路基板上の配線に接続される。そして当該配線を介して回路装置の外部装置と電気的に接続される。
出力端子TSWは、ダイオードSBのカソードが接続される端子となっている。即ち、外付け部品であるダイオードSBは、回路装置と共に回路基板に実装され、このダイオードSBのカソードが、回路基板上の配線を介して出力端子TSWに接続される。ダイオードSBのアノードは例えば低電位側電源のノードに接続される。低電位側電源のノードから出力端子TSWのノードNSWへ向かう方向が、ダイオードSBの順方向となる。
ダイオードSBは、駆動トランジスターSWTのオフ期間においてインダクターLに流れる電流が流れる。例えば駆動トランジスターSWTのオン期間においては、駆動トランジスターSWTからの駆動電流がインダクターLに供給される。一方、駆動トランジスターSWTのオフ期間においては、インダクターLに蓄えられた電流(磁気エネルギーとして蓄積された電流)がダイオードSBを流れる。即ち、オン期間において駆動トランジスターSWTからの駆動電流が流れることで、インダクターLに磁気エネルギーが蓄積される。この磁気エネルギーに基づく電流が、オフ期間おいて、低電位側電源(GND)からダイオードSBを介してインダクターLに流れる。
ダイオードSBは、例えばショットキーバリアダイオード(ショットキー接続素子)である。ショットキーバリアダイオードは、金属と半導体との接続によって生じるショットキー障壁を利用したダイオードである。ショットキーバリアダイオードでは、多数キャリアによる動作のため、PN接合ダイオードに比べて順方向電圧(順方向での電圧降下)が低く、スイッチング速度(電子移動度)が高いという特徴がある。このように、順方向電圧が低いダイオードSBを用いれば、例えばスイッチングレギュレート動作を行う際における電力損失を最小限に抑えることができるという利点がある。
そして本実施形態では、保護ダイオードDIの順方向電圧は、ショットキーバリアのダイオードSBの順方向電圧よりも高くなっている。一例として、例えばPN接合のダイオードDIの順方向電圧を0.6V程度とした場合に、ショットキーバリアのダイオードSBの順方向電圧は、例えば0.4V程度(0.2V〜0.5V程度)になる。
図2は、本実施形態の回路装置が適用されたスイッチングレギュレーターの構成例を示す図である。なお、本実施形態の回路装置が適用されるスイッチングレギュレーターは図2の構成には限定されず、図2とは異なる種々の構成のスイッチングレギュレーターに本実施形態は適用可能である。また本実施形態の回路装置が適用される回路は、スイッチングレギュレーターには限定されず、インダクターを用いた電源回路や駆動回路などの種々の回路に本実施形態は適用可能である。
図2では、本実施形態の回路装置と、外付け部品として設けられたインダクターL(コイル)及びキャパシターC(コンデンサー)及びダイオードSB及び抵抗RF1、RF2とにより、スイッチングレギュレーターが構成されている。このスイッチングレギュレーターは、PWM信号(Pulse Width Modulation)に基づいて、電源電圧VOUTを生成するためのスイッチングレギュレート動作を行う。具体的には回路装置には、電源端子TVBを介して電源電圧VBが供給され、駆動トランジスターSWT(スイッチングトランジスター)がオン・オフされるスイッチングレギュレート動作により、電源電圧VBを降圧した電源電圧VOUTがノードNOUTに生成される。この電源電圧VOUTは、外部の負荷90(外部装置等)に供給される。
例えば、駆動トランジスターSWTは、クロック信号に基づくPWM信号によりオン・オフされる。駆動トランジスターSWTがオン・オフされることで、断続された直流電圧の出力信号QSW(VSW)が、回路装置の出力端子TSWを介して外部に出力される。この出力信号QSWは、駆動トランジスターSWTのオン期間において電源電圧VBになる信号である。この出力信号QSWが、インダクターLとキャパシターCから構成されるLC回路に入力されることで、ノードNOUTに、電源電圧VBを降圧した電源電圧VOUTが生成される。
例えば駆動トランジスターSWTのオン期間においては、出力信号QSWとして電源電圧VBが出力され、インダクターLにおいて電気エネルギーが磁気エネルギーに変換されて蓄積される。一方、駆動トランジスターSWTのオフ期間においては、出力信号QSWのノードNSWはハイインピーダンス状態になり、インダクターLに蓄えられた磁気エネルギーが電気エネルギーとしてダイオードSBを介して放電される。このオン期間とオフ期間の時間比であるデューティー比により、電源電圧VOUTの大きさが設定される。
具体的には、抵抗RF1、RF2により構成される電圧分割回路92が、電源電圧VOUTを電圧分割したフィードバック電圧VFBを生成する。抵抗RF1、RF2は、電源電圧VOUTのノードNOUTと低電位側電源(GND)のノードとの間に直列接続される。これらの抵抗RF1、RF2により電圧分割された電圧(ノードNFBの電圧)が、フィードバック電圧VFBとして、回路装置の端子TFBを介して制御回路10に入力される。制御回路10では、例えば基準電圧とフィードバック電圧VFBの比較処理が行われ、比較処理の結果に基づいてPWM信号である制御信号CTが生成される。そして制御信号CTに基づいて駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が行われることで、定電圧の電源電圧VOUTがノードNOUTに生成されるようになる。
このように本実施形態では、回路基板(モジュール)に対してダイオードSBが実装されるが、このダイオードSBが、ハンダ不良や断線などの実装不良で接続不良になった場合(電気的に非接続になった場合)には、誘導性負荷であるインダクターLにより、出力端子TSWに大きな負電圧のサージ(回路装置の定格を超える瞬間的な電位変化)が印加されるおそれがある。このような負電圧のサージは、回路装置の定格の仕様において想定されていないものであるため、回路装置の劣化や破壊や信頼性の低下等を招くおそれがある。
即ち、ダイオードSBが接続不良等でオープン状態になると、駆動トランジスターSWTのオフ期間において、負側の振幅が大きくなってしまう。これにより駆動トランジスターSWTのドレイン電圧が負電圧側に大きく低下する。そして例えばオン期間等においては、駆動トランジスターSWTのソースとドレイン間に過大な電圧が印加されて、劣化又は破壊してしまう。
ここで図1に示すように、回路装置には保護素子PRが設けられており、この保護素子PRのダイオードDI(ボディダイオード、寄生ダイオード)のカソードが出力端子TSWに接続されている。従って、ダイオードSBの接続不良により、駆動トランジスターSWTのオフ期間において出力端子TSWに大きな負電圧のサージが印加されても、この負電圧のサージに基づく過電流を、保護素子PRのダイオードDIにより吸収することも可能である。即ち、GND(VSS)から出力端子TSW側にダイオードDIを介して電流が流れることで、負電圧のサージに基づく過電流を吸収して、回路装置の劣化や破壊を抑制する。
しかしながら、外付けのショットキーバリアのダイオードSBは、例えばスイッチングレギュレート動作時におけるロスを少なくするために、その順方向電圧は小さく、大電流のスイッチング電流が流れることが想定されているダイオードである。これに対して保護素子PRのダイオードDIは、その順方向電圧も大きく、ダイオードSBに比べて、流れることが想定されている電流の値も小さい。従って、ダイオードDIだけでは、出力端子TSWに印加された大きな負電圧のサージを吸収できない。
例えば図3は、出力端子TSWの端子電圧VSWの波形を示すものである。波形WVS(破線)は、ダイオードSBが正常に接続されている場合の波形であり、波形WVP(実線)は、接続不良等によりダイオードSBが外れている場合の波形である。
ダイオードSBが正常に接続されている場合、駆動トランジスターSWTがオンするオン期間TONにおいて、端子電圧VSWは電源電圧VBまで上昇する。そして、このオン期間TONから、駆動トランジスターSWTがオフするオフ期間TOFに切り替わると、インダクターL(誘導性負荷)に流れる電流により、端子電圧VSWは、負電圧である電圧VFSまで下がる。この電圧VFSはショットキーバリアのダイオードSBの順方向電圧に対応する電圧である。その後、時間の経過により端子電圧VSWが徐々に上昇することで、正常時には図3に示すような波形WVSになる。
一方、ダイオードSBが、実装時に接続不良になった場合や、不完全な接続実装状態において市場において断線してしまった場合等においては、駆動トランジスターSWTのオフ期間において、インダクターLに流れる電流は、保護素子PRのダイオードDIを経由したもののみとなる。
そして、保護素子PRのダイオードDIの順方向電圧は、ショットキーバリアのダイオードSBの順方向電圧よりも大きい。このため波形WVPでは、駆動トランジスターSWTのオン期間TONからオフ期間TOFに切り替わった場合に、端子電圧VSWは、ダイオードDIの順方向電圧に対応する電圧VFPまで下がる。この電圧VFPは、波形WVSにおける電圧VFSよりも、負方向側に低い電圧となる。その後、時間の経過により端子電圧VSWが徐々に上昇することで、ダイオードSBの接続不良時には波形WVPになる。
図3から明らかなように、ダイオードSBの接続不良時には、オフ期間TOFにおいて、端子電圧VSWが負電圧方向に大きく振れ、出力端子TSWに大きな負電圧のサージが印加されてしまう。そして、この負電圧のサージが、例えば複数回、連続で印加されると、駆動トランジスターSWTが経時劣化で破壊に至る現象が発生してしまう。
例えば回路装置が組み込まれる電子機器の完成体からみた場合、ダイオードSBの接続不良で回路装置(IC)が破壊されるのは、大きな問題となる。このため、ダイオードSBの接続不良が起こらないように、実装後の検査を充実するにしても、検査等で回路装置が破壊されてしまうことがあると、修復に大きな手間を要し、且つ、コストアップの要因となる。また、出荷検査を通過し、市場に出た後に、ダイオードSBの接続不良が顕在化した場合、対応に更に大きな工数やコストがかかってしまう。また、ダイオードSBに接続不良はあるが、当該接続が完全には断線してない場合にも、負電圧のサージが繰り返し印加されると、回路装置の駆動トランジスターSWT等が徐々に壊れて行き、信頼性が大幅に低下してしまう。
そこで本実施形態では図1の検出回路30が、出力端子TSWの端子電圧VSWの異常検出を行う。そして制御回路10が、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFにおいて端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにする。具体的には制御回路10は、端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収の動作を指示する制御信号CSをアクティブ(例えばHレベル)にして、サージ吸収回路40の動作をオンにする。これにより、出力端子TSWに発生した過電圧のサージを、サージ吸収回路40に吸収させる。そして、例えば、それ以降は(それ以降のオフ期間では)、サージ吸収回路40の動作を例えば常時オンにして、負電圧のサージが出力端子TSWに印加されないようにする。なお、対象となるオフ期間又は当該オフ期間を含む複数のオフ期間においてだけ、サージ吸収回路40の動作をオンにしてもよい。
具体的には、図3の波形WVPのように、オフ期間TOFにおいて出力端子TSWに過度の負電圧のサージが印加される端子電圧異常が検出された場合には、サージ吸収回路40の動作をオン(イネーブル)にする。そして、動作がオンになったサージ吸収回路40による放電動作により、負電圧のサージを吸収する。例えば吸収回路40の放電回路42が低電位側電源(GND)側から出力端子TSW側に放電電流(電荷)を流す放電動作を行うことで、負電圧のサージの電圧レベルの絶対値を低下させる。
このようにサージ吸収回路40が動作することで、出力端子TSWに印加される負電圧(広義には過電圧)のサージの電圧レベルの絶対値が小さくなる。そして、それ以降は、サージ吸収回路40の動作を例えば常時オンにして、大きな振幅の負電圧のサージが駆動トランジスターSWTのドレイン等に印加されないようする。このようにすれば、負電圧のサージが駆動トランジスターSWTに及ぼすストレス等の悪影響を大幅に低減できる。これにより、負電圧のサージによる駆動トランジスターSWT等の劣化や破壊も抑制され、回路装置の破壊前の修理等が可能になり、信頼性を大幅に向上できるようになる。
また本実施形態では、このような端子電圧異常の検出を、回路装置の動作中において、常時に行うことが可能になる。従って、例えば、初期不良としては、ダイオードSBの接続不良は無かったが、製品の使用期間の経過に伴い、ダイオードSBの接続不良が顕在化したような場合にも、当該接続不良による負電圧のサージを検出して、サージ吸収回路40を動作させることができる。従って、経時変化等による回路装置の劣化や破壊等も抑制することが可能になる。なお、本実施形態では、端子電圧異常が負電圧のサージによる場合での本実施形態の手法の適用例を主に説明するが、本実施形態の手法はこれに限定されない。例えば正電圧のサージによる端子電圧異常の検出や判定に対しても、本実施形態の手法は適用可能である。
図4は本実施形態の回路装置の動作を説明する信号波形図である。図4に示すように、駆動トランジスターSWTのゲートに入力される制御信号CTがLレベルになると、P型の駆動トランジスターSWTがオンになる。一方、制御信号CTがHレベルになると、駆動トランジスターSWTはオフになる。そして駆動トランジスターSWTのオン期間TONとオフ期間TOFが繰り返されることで、スイッチングレギュレーターのスイッチングレギュレート動作が実現される。具体的には、図3の電源電圧VOUTの電圧値は、オン期間TONとオフ期間TOFのデューティー比により設定される。例えばデューティー比が1/3となるPWM制御を行えば、電源電圧VB(例えば3.3V)を1/3に降圧した電源電圧VOUT(例えば1.1V)を生成できるようになる。
そして図4のE1では端子電圧異常が検出されている。即ちダイオードSBの接続不良等により、図3の波形WVPに示すような大きな負電圧のサージが出力端子TSWに印加されていることが検出されている。例えば後述するように、端子電圧VSWが判定電圧よりも低くなったことか検出された場合に、端子電圧異常が発生したと判定される。具体的には、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOF内に設定された判定期間において、端子電圧VSWが判定電圧よりも継続して低くなったことが検出された場合に、端子電圧異常が発生したと判定される。
このような端子電圧異常が検出されると、その検出結果がラッチ信号LTによりラッチされ、E2に示すように端子電圧異常の検出信号QDがHレベル(アクティブ)になる。このように端子電圧異常が発生すると、E3に示すようにサージ吸収回路40の動作がオンになる。そして動作がオンになったサージ吸収回路40の放電回路42が、低電位側電源(GND)から出力端子TSW側に電荷を放電する放電動作を行うことで、負電圧のサージを吸収して、当該サージの振幅を最小限にする。
そして、例えば次のオフ期間やそれ以降のオフ期間においても、サージ吸収回路40の動作をオンにして、負電圧のサージを吸収する動作を行わせる。なお、サージ吸収回路40の動作がオンになると、端子電圧VSWの波形も実際には変化するが、図4のE1ではこの波形変化を省略して示している。
図5は本実施形態の回路装置の変形例の動作を説明する信号波形図である。図5では、端子電圧異常が1回検出されただけでは、サージ吸収回路40の動作はオンにならず、複数回検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにする手法を採用している。
例えば図5では、A1に示すように1回目のオフ期間において端子電圧異常が検出され、その検出結果がラッチ信号LTによりラッチされ、A2に示すように端子電圧異常の検出信号QDがHレベルになっている。その後、A3に示すように、次の2回目のオフ期間においても端子電圧異常が検出されており、その検出結果がラッチ信号LPによりラッチされている。これにより、A4に示すように端子電圧異常の検出信号QDがHレベルになると、A5に示すようにサージ吸収回路40の動作がオンになる。即ち、A2、A4のように端子電圧異常が2回検出された場合に、サージ吸収回路40の動作がオンになる。つまり、端子電圧異常が複数回検出された場合に、サージ吸収回路40が動作オフの状態から動作オンの状態に移行する。そして、例えば次のオフ期間やそれ以降のオフ期間においても、サージ吸収回路40の動作をオンにして、負電圧のサージを吸収する動作を行わせる。なお図5のA3においてもサージ吸収による波形変化を省略して示している。
以上のように本実施形態によれば、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFにおいて、出力端子TSWに定格を超えるような負電圧のサージが印加された場合にも、この負電圧のサージによる端子電圧異常を検出回路30により検出して、動作がオンになったサージ吸収回路40により、負電圧のサージを吸収して、サージの振幅を小さくする。従って、ダイオードSBが実装不良により外れることなどが原因で、出力端子TSWに大きな負電圧のサージがかかった場合に、これを検出して、サージ吸収回路40によりサージを吸収できる。従って、駆動トランジスターSWTに加わるストレスを小さくできるため、回路装置の劣化や破壊等を抑制でき、信頼性等を向上できるようになる。
また図5では、駆動トランジスターSWTの第1のオフ期間〜第2オフ期間(広義には第m〜第m+nのオフ期間。m、nは1以上の整数)において端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにしている。つまり、端子電圧異常の検出回数が複数回(n+1回)になった場合、サージ吸収回路40を動作させる。このようにすれば、端子電圧VSWに重畳したノイズ等が原因で、端子電圧異常が誤って検出されてしまった場合にも、これに対処することが可能になる。即ち、端子電圧異常の誤検出が原因で、不必要にサージ吸収回路40が動作してしまうような事態を防止でき、回路装置の安定動作を実現できるようになる。
なお本実施形態では、制御回路10は、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFにおいて端子電圧異常が検出された場合に、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止してもよい。例えば制御回路10は、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFにおいて出力端子TSWの端子電圧異常が検出された場合に、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFからオン期間TONへの切り替えを停止する。例えば駆動トランジスターSWTを常時オフ状態にして、駆動トランジスターSWTがオンオフ動作しないようにする。
例えば図2のスイッチングレギュレーターでは、駆動トランジスターSWTがオンオフ動作することで、定電圧の電源電圧VOUTが生成されるスイッチングレギュレート動作が実現されているが、端子電圧異常が検出された場合には、このオンオフ動作を停止する。このようにオンオフ動作を停止すれば、それ以降は、駆動トランジスターSWTがオンからオフに切り替わる動作は行われなくなり、図3に示すようなオン期間TONからオフ期間TOFに切り替わることで生じる負電圧のサージが発生しなくなる。これにより、負電圧のサージによる駆動トランジスターSWT等の劣化や破壊も抑制され、回路装置の信頼性の向上等を図れるようになる。
図5を例にとれば、A2、A4のように端子電圧異常が2回検出された場合に、A6に示すように駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止する。つまり、端子電圧異常が複数回検出された場合に、駆動トランジスターSWTの動作が、動作イネーブル状態から動作停止状態に移行する。
このようにすれば、ダイオードSBが実装不良により外れることなどが原因で、出力端子TSWに大きな負電圧のサージがかかった場合に、これを検出して駆動トランジスターSWTの動作を停止できるため、回路装置の劣化や破壊等を抑制でき、信頼性等を向上できるようになる。
例えば、サージ吸収回路40によるサージ吸収動作により、回路装置の劣化や破壊等を抑制できるが、端子電圧異常が検出された後も、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が繰り返されると、無駄な電力消費が生じてしまうという問題点がある。また、サージ吸収回路40によるサージ吸収動作だけでは、駆動トランジスターSWTに加わるストレスを完全には除去できない可能性があるという問題点もある。この点、端子電圧異常が検出された場合に、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止する手法を採用すれば、上記問題点を解消できる。
また図5では、駆動トランジスターSWTの第1のオフ期間〜第2オフ期間(第m〜第m+nのオフ期間)において端子電圧異常が検出された場合に、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止している。つまり、端子電圧異常の検出回数が複数回(n+1回)になった場合、オンオフ動作を停止している。このようにすれば、端子電圧VSWに重畳したノイズ等が原因で、端子電圧異常が誤って検出されてしまった場合にも、これに対処することが可能になる。即ち、端子電圧異常の誤検出が原因で駆動トランジスターSWTの動作が停止してしまうような事態を防止でき、回路装置の安定動作を実現できるようになる。
なお図5では、端子電圧異常が検出された場合に、A5、A6に示すように、サージ吸収回路50の動作をオンにするサージ吸収動作オン制御と、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止するオンオフ動作停止制御の両方を行っているが、本実施形態はこれに限定されない。例えば端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収動作オン制御とオンオフ動作停止制御のいずれか一方のみを行うようにしてもよい。或いは、サージ吸収動作オン制御については、図5のA2に示すように端子電圧異常が1回検出されただけで行うようにし、オンオフ動作停止制御については、A4に示すように端子電圧異常が複数回検出されたことを条件に行うようにしてもよい。
また図6、図7にサージ吸収回路40の詳細な構成例を示す。サージ吸収回路40は、端子電圧異常が検出された場合に、低電位側電源(GND)側から出力端子TSW側に放電電流を流す放電回路42を含んでいる。そして図6では、この放電回路42は、低電位側電源側から出力端子TSW側に放電電流を流すバイポーラートランジスターBPDを含んでいる。
このバイポーラートランジスターBPDは、例えばNPN型のトランジスターであり、エミッターが出力端子TSWのノードNSWに接続され、コレクターが低電位側電源(GND)のノードに接続されている。そして、ベースが、動作オン制御用のトランジスターTRのドレインのノードに接続されている。トランジスターTRは例えばN型のトランジスター(MOSトランジスター)であり、そのゲートに制御回路10からの制御信号CSが入力され、そのソースは低電位側電源のノードに接続される。なお、バイポーラートランジスターBPDのベースとノードNSWの間に設けられる抵抗RUは、トランジスターTRのオフ時にベース電位がフローティング状態にならないようにするためのプルアップ抵抗である。
そして制御回路10は、駆動トランジスターSWTのオフ期間において端子電圧異常が検出されると、制御信号CSをHレベル(アクティブ)にする。これにより、N型のトランジスターTRがオンになり、バイポーラートランジスターBPDがオンになることで、バイポーラートランジスターBPDにより構成される放電回路42の放電動作が行われる。この放電動作によって、バイポーラートランジスターBPDのコレクター(GND)からエミッター(TSW)に放電電流が流れることで、負電圧のサージの吸収動作が実現される。即ち、図3の負電圧のサージ(WVP)の振幅が減少し、駆動トランジスターSWTに加わるストレスを低減できる。
図7では、放電回路42が、ダーリントン接続された複数のバイポーラートランジスターBPD1、BPD2、BPD3により構成されている。またバイポーラートランジスターBPD3のベースとノードNSWの間に設けられる抵抗RU3は、トランジスターTRのオフ時にベース電位がフローティング状態にならないようにするためのプルアップ抵抗である。図7においても、端子電圧異常が検出されて、制御回路10からの制御信号CSがHレベルになると、トランジスターTRがオンになることで、ダーリントン接続されたバイポーラートランジスターBPD1、BPD2、BPD3がオンになる。これにより、放電回路42の放電動作による放電電流が流れることで、負電圧のサージの吸収動作が実現される。
なお、サージ吸収回路40の構成は図6、図7に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えばサージ吸収回路40としては、端子電圧異常が検出された場合に過電圧のサージを吸収するための放電動作を行う種々の構成の回路を採用できる。例えばバイポーラートランジスター以外の回路素子を用いて当該放電動作を実現してもよい。
2.詳細な構成例
図8に本実施形態の回路装置の詳細な構成例を示す。なお本実施形態の回路装置は図8の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図8の構成例では、制御回路10、検出回路30、駆動トランジスターSWTに加えて、判定タイミングレジスター50、検出回数レジスター52、判定電圧設定レジスター54が更に設けられている。これらのレジスターは例えばフリップフロップ回路やRAMなどの記憶装置により実現できる。
図8では制御回路10は、駆動トランジスターSWTのオフ期間内に設定された判定期間(後述する図11のTDT)において端子電圧VSWが判定電圧(図11のVT)よりも継続して低くなる端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにする。或いは、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止する。この場合に判定タイミングレジスター50は、判定期間のタイミング情報を記憶する。判定期間のタイミング情報は、例えば判定期間の開始タイミング(図11のt1)や判定期間の長さ(t2)などの設定情報である。
また判定電圧設定レジスター54は、判定電圧(VT)の電圧レベルの設定情報を記憶する。これにより判定電圧の可変設定が可能になる。そして検出回路30は、判定電圧設定レジスター54の設定情報により設定される判定電圧で、端子電圧異常の検出処理を行う。即ち検出回路30は、判定電圧設定レジスター54により設定された判定電圧(VT)よりも端子電圧VSWが低くなったか否かを判定できるようになる。
また検出回数レジスター52は、端子電圧異常の検出回数の情報を記憶する。即ち本実施形態では図5で説明したように、端子電圧異常が連続して複数回検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにする。つまり、駆動トランジスターの第m〜第m+nのオフ期間(図5では第1〜第2のオフ期間)において端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにする。或いは、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止する。この場合に検出回数レジスター52は、端子電圧異常の検出回数に対応するn+1の情報を記憶することになる。
制御回路10は、スイッチ制御回路12、動作制御回路14、判定回路16を含む。スイッチ制御回路12は、駆動トランジスターSWTをオンオフ動作させるためのスイッチ制御を行う。即ち、スイッチ制御回路12は、図4、図5で説明した制御信号CTを駆動トランジスターSWTのゲートに出力して、駆動トランジスターSWTをオン又はオフにする制御を行う。図2で説明したスイッチングレギュレーターへの適用例の場合には、スイッチ制御回路12は、フィードバック電圧VFBに基づいて、PWM信号の制御信号CTを生成して、駆動トランジスターSWTのゲートに出力する。
動作制御回路14は、スイッチ制御回路12、判定回路16、検出回路30などの動作制御を行う。例えば判定回路16からの判定結果等に基づいて各回路の動作制御を行う。
判定回路16は、出力端子TSWの端子電圧異常の検出の判定処理を行う。例えば判定回路16は、検出回路30からの検出結果信号や、判定タイミングレジスター50からのタイミング情報や、検出回数レジスター52からの検出回数情報などに基づいて、端子電圧異常の検出の判定処理を行う。
図9に判定回路16の詳細な構成例を示す。図9に示すように判定回路16は、検出出力継続時間判定回路18と検出回数カウント回路20を含む。これらの検出出力継続時間判定回路18、検出回数カウント回路20は、動作制御回路14によりその動作が制御される。
検出出力継続時間判定回路18は、検出回路30からの検出結果信号QCと、判定タイミングレジスター50からの判定期間のタイミング情報を受ける。そして、これらの検出結果信号QCとタイミング情報(t1、t2)に基づいて、判定期間(TDT)において、端子電圧VSWが継続して判定電圧(VT)を下回ったか否かを判断する。そして、下回っていた場合には、検出出力継続時間判定回路18は、判定パルス信号PLを検出回数カウント回路20に出力する。
検出回数カウント回路20は、検出回数レジスター52からの検出回数情報と、検出出力継続時間判定回路18からの判定パルス信号PLを受ける。そして、判定パルス信号PLがアクティブになるごとに、カウント値をカウントアップ(更新)する。そして、カウント値が、検出回数情報により設定される検出回数に達した場合に、端子電圧異常の判定結果信号QRSを出力する。例えば検出回数が2回に設定されていたとすると、カウント値が2に達した場合に、判定結果信号QRSが、サージ吸収回路40の動作オンを指示する電圧レベルになる。或いは、判定結果信号QRSが、駆動トランジスターSWTの動作停止を指示する電圧レベルになる。
図10、図11は本実施形態の詳細な構成例の動作を説明する信号波形図である。図10に示すように、駆動トランジスターSWTのオン期間TONにおいては、端子電圧VSWは電源電圧VBに設定される。そして、オフ期間TOFになると、端子電圧VSWは、GND(=0V)よりも低い負電圧VMになり、その後、徐々に電圧レベルが上昇する。
図11では、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOF内に、判定期間TDTが設定されている。具体的には、判定タイミングレジスター50には、タイミング情報として、t1、t2の情報が記憶されている。t1は、判定期間TDTのスタートタイミングを決める情報であり、t2は、判定期間TDTの長さを決める情報である。図11では、t1は、オン期間TONの開始タイミングから判定期間TDTのスタートタイミングまでの長さを指定する情報となっている。
図11において、波形WVS(破線)は、ダイオードSBが正常に接続されている場合の端子電圧VSWの波形を模式的に示したものである。波形WVP(実線)は、接続不良等によりダイオードSBが外れている場合の端子電圧VSWの波形を模式的に示したものである。
ダイオードSBが外れている場合の波形WVPでは、最初のオフ期間TOF(第mのオフ期間)内の判定期間TDTにおいて、図11のB1に示すように端子電圧VSWが継続して判定電圧VTを下回っている。即ちB2に示すように、判定期間TDTにおいて、検出回路30の検出信号QCは継続してLレベルになっている。従って、この場合には、図9の検出出力継続時間判定回路18は、端子電圧異常があったと判断して、B3に示すように判定パルス信号PLを出力する。これにより、この判定パルス信号PLを受けた検出回数カウント回路20のカウント値が、例えば0から1にカウントアップする。
なお、ダイオードSBが外れていない場合の波形WVSにおいては、判定期間TDTにおいて端子電圧VSWが判定電圧VTを継続して下回ってはいないので、判定パルス信号PLは出力されない。
次のオフ期間TOF(第m+1のオフ期間)内の判定期間TDTにおいても、波形WVPでは、B4に示すように端子電圧VSWが継続して判定電圧VTを下回っている。即ちB5に示すように、判定期間TDTにおいて、検出信号QCは継続してLレベルになっている。従って、この場合にも、検出出力継続時間判定回路18は、端子電圧異常があったと判断して、B6に示すように判定パルス信号PLを出力する。これにより、検出回数カウント回路20のカウント値が例えば1から2にカウントアップする。そして図11では、検出回数レジスター52に設定される検出回数は2回になっている。従って、検出回数カウント回路20のカウント値が、検出回数に対応する2に達したことで、B7に示すように、サージ吸収回路40の動作がオンになる。またB8に示すように、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止する。
図1等で説明したように、ダイオードSBが接続不良等により外れた場合には、回路装置の内部の保護素子PRのダイオードDIが、オフ期間TOFにおいてインダクターLからの電流が流れる電流経路になる。そして、ショットキーバリアのダイオードSBの順方向電圧は、例えば0.4V程度であるのに対して、保護素子PRのPN接合のダイオードDIの順方向電圧は0.6V程度であり、その差は0.2V程度である。従って、例えば図3において、ダイオードSBを介してインダクターLに電流が流れる場合の波形WVSと、ダイオードSBが外れており、保護素子PRのダイオードDIを介してインダクターLに電流が流れる場合の波形WVPを区別するためには、この0.2Vの範囲内に判定電圧VTを設定する必要がある。このため、例えば回路装置のICのロット毎のプロセスバラツキ等をあった場合にも、適正な判定電圧VTを設定して、端子電圧異常の誤判定が生じないように調整することは、困難であるという課題がある。
そこで本実施形態では、端子電圧VSWと判定電圧VTを単純に比較することはせずに、図11のB2、B5に示すようにオフ期間TOF内に判定期間TDTを設定する。そしてB1、B4に示すように、この判定期間TDT内において、端子電圧VSWが判定電圧VTを継続して負電圧方向に下回っていた場合に、B3、B6に示すように、端子電圧異常が検出されたと判定する。
そして、この判定期間TDTのタイミング(長さ)についても、判定タイミングレジスター50へのタイミング情報(t1、t2)の設定により、可変に調整できるようにする。また、判定電圧VTの電圧レベルについても、判定電圧設定レジスター54への設定により、可変に調整できるようにする。
そして、例えば製品の出荷工程や検査工程等において、判定期間TDTの適切なタイミング情報や、判定電圧VTの適切な電圧レベルの設定情報を、判定タイミングレジスター50や、判定電圧設定レジスター54に書き込むようにする。例えば、ダイオードSBが正常に接続された状態で、端子電圧異常の誤検出が発生しないように、判定期間TDTのタイミングや判定電圧VTを調整する。そして、調整後の判定期間TDTのタイミング情報や判定電圧VTの電圧レベルの設定情報を、判定タイミングレジスター50や判定電圧設定レジスター54に書き込む。これらのレジスターに書き込まれた情報は、例えば回路装置や回路基板等に設けられた不揮発性メモリーに記憶されて保存される。
こうすることで、製品の実動作時において、適正にタイミングが調整された判定期間TDTや適正に電圧レベルが調整された判定電圧VTを用いて、端子電圧異常の判定が行われるようになる。これにより、例えば製品のロット等によって、ダイオードの順方向電圧等にバラツキがある場合にも、これに対応できるようになる。この結果、端子電圧異常の誤検出を防止しながら、ダイオードSBの接続不良等を原因とする負電圧のサージにより回路装置等が劣化又は破壊されてしまうのを抑制できる回路装置の提供が可能になる。
また、端子電圧異常が例えば1回検出されただけで、サージ吸収回路40の動作がオンになったり、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止してしまうと、その後は、例えばスイッチングレギュレーターによる適切な電源電圧(VOUT)の生成ができなくなってしまうという問題がある。例えば端子電圧VSWに重畳したノイズ等が原因で、端子電圧異常の誤検出が発生して、サージ吸収回路40の動作がオンになったり、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止してしまうのは好ましくない。
そこで本実施形態では、図11のB3、B6に示すように、端子電圧異常が複数回検出されたことを条件に、サージ吸収回路40の動作をオンにしたり、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止する。即ち、駆動トランジスターSWTの第m〜第m+nのオフ期間(図11では第1、第2のオフ期間)において連続して端子電圧異常が検出された場合に、サージ吸収回路40の動作をオンにしたり、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止する。この場合に、検出回数の情報(n+1)についても、検出回数レジスター52に設定できるようにして、例えば出荷工程や検査工程等において検出回数についても調整できるようにする。
このようにすれば、端子電圧VSWに重畳するノイズ等が原因で、端子電圧異常の誤検出が生じた場合にも、この端子電圧異常が、複数のオフ期間に亘って連続して検出されない限り、サージ吸収回路40が動作しないようになる。また駆動トランジスターSWTのオンオフ動作は停止しないようになる。従って、端子電圧異常の誤検出を防止しながら、ダイオードSBの接続不良時におけるサージ吸収回路40の動作オンや駆動トランジスターSWTのオンオフ動作の停止も、適正に実現することが可能になる。
なお、検出回数は、可変の回数でなくてもよく、固定の回数であってもよい。また、複数回の検出ではなく、端子電圧異常の1回の検出で、サージ吸収回路40の動作をオンにしたり、駆動トランジスターSWTの動作を停止する変形実施も可能である。
3.検出回路
図12、図13に検出回路30の詳細な構成例を示す。なお検出回路30は図12、図13の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図12では、検出回路30は、抵抗R1〜Rj(jは2以上の整数)と、スイッチ素子SW1〜SWjと、バイポーラートランジスターBPと、インバーターIV1、IV2を含む。抵抗R1及びスイッチ素子SW1は、電源電圧VBのノードとノードNA1の間に直列に設けられる。同様に、抵抗Ri及びスイッチ素子SWiも、電源電圧VBのノードとノードNA1の間に直列に設けられ、抵抗Rj及びスイッチ素子SWj(1<i<j)も、電源電圧VBのノードとノードNA1の間に直列に設けられる。そして制御回路10が、スイッチ素子SW1〜SWjのオンオフ制御を行うことで、電源電圧VBのノードとノードNA1との間の抵抗値が可変に調整される。なお抵抗R1〜Rjとスイッチ素子SW1〜SWjの接続構成は図12の構成に限定されず、少なくとも電源電圧VBとノードNA1との間の抵抗値を可変に設定できる接続構成であればよい。
そして例えば駆動トランジスターSWTのオン期間TONにおいては、出力端子TSWのノードNSWは、電源電圧VBの電圧レベルになっているため、そのベースがGNDに接続されたバイポーラートランジスターBPはオフになる。この結果、ノードNA1の電圧レベルは、電源電圧VBの電圧レベルであるHレベルになり、検出回路30の検出信号QCもHレベルになる。
一方、駆動トランジスターSWTのオフ期間になると、出力端子TSWのノードNSWが負電圧になるため、バイポーラートランジスターBPのベース・エミッター間に電位差が生じ、バイポーラートランジスターBPがオンになることで、電流IAが流れる。
このとき、ノードNA1の電圧VNA1は、電源電圧VBのノードとノードNA1との間の抵抗値をRとした場合に、VNA1=VB−IA×Rと表すことができる。そして、ノードNA1の電圧VNA1が入力される初段のインバーターIV1のしきい値電圧をVth(例えばVth=1.2V)とする。すると、負電圧のサージによって電流IAがバイポーラートランジスターBPを流れた場合に、ノードNA1の電圧VNA1=VB−IA×Rが、インバーターIV1のしきい値電圧Vthを下回ると、検出信号QCがLレベルになる。即ち、絶対値が大きな負電圧のサージにより、大きな電流IAがバイポーラートランジスターBPに流れることで、電圧VNA1=VB−IA×Rがしきい値電圧Vthを下回ると、検出信号QCがLレベルになり、負電圧のサージによる端子電圧異常を検出できるようになる。
そして図12の検出回路30では、スイッチ素子SW1〜SWjのオンオフ設定による抵抗値の調整で、判定電圧VTの電圧レベルの調整が可能になっている。
例えば、判定電圧VTを低い電圧レベルに設定する場合には、電源電圧VBのノードとノードNA1との間の抵抗値Rが高くなるように、スイッチ素子SW1〜SWjのオンオフ設定を行う。このようにすれば、負電圧のサージの電圧の絶対値が小さく、バイポーラートランジスターBPに流れる電流IAが小さい場合にも、ノードNA1の電圧がVNA1=VB−IA×R<Vthとなって、検出信号QCがLレベルに変化するようになる。従って、判定電圧VTを低い電圧レベルに設定できるようになる。
一方、判定電圧VTを高い電圧レベルに設定する場合には、電源電圧VBのノードとノードNA1との間の抵抗値Rが低くなるように、スイッチ素子SW1〜SWjのオンオフ設定を行う。このようにすれば、負電圧のサージの電圧の絶対値が大きくなって、バイポーラートランジスターBPに流れる電流IAが大きくなった場合に、ノードNA1の電圧がVNA1=VB−IA×R<Vthとなって、検出信号QCがLレベルに変化するようになる。従って、判定電圧VTを高い電圧レベルに設定できるようになる。
このように図12では、スイッチ素子SW1〜SWjのオンオフ設定の情報が、判定電圧VTの電圧レベルの設定情報になり、この設定情報は判定電圧設定レジスター54に記憶されることになる。
図13の検出回路30は、P型のトランジスターTB1、TB2、TB3、N型のトランジスターTB4、バイポーラートランジスターBP1〜BP7、抵抗RB1、RB2、RB3、インバーターIV、論理回路LGを含む。
図13では、バイアス電圧BSがトランジスターTB1、TB2のゲートに入力されることで、経路RT1と経路RT2に一定のバイアス電流が流れる。そして駆動トランジスターSWTのオン期間TONにおいては、図4に示すように制御信号CTがLレベルになるため、論理回路LGの第1の入力端子にHレベルの信号が入力されることで、検出回路30の検出信号QCはHレベルになる。
一方、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFになって、出力端子TSWのノードNSWに負電圧のサージが加わると、トランジスターTB4に大きな電流IBが流れる。この電流IBの大半が経路RT2に流れることで、ノードNB3の電圧レベルが下がり、ベース・エミッター間電圧が小さくなったバイポーラートランジスターBP5がオフになる。これにより、プルアップの抵抗RB2によりノードNB4の電圧レベルが上昇し、P型のトランジスターTB3がオフになる。この結果、プルダウンの抵抗RB3により、ノードNB5の電圧レベルがLレベルになる。このとき、オフ期間TOFでは制御信号CTの電圧レベルがHレベルであることから、論理回路LGの第1、第2の入力端子の両方にLレベルの信号が入力され、検出信号QCがHレベルからLレベルに変化する。従って、負電圧のサージによる端子電圧異常を検出できるようになる。
このように図12、図13の検出回路30では、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFにおいて端子電圧VSWが負電圧になることにより高電位側電源VBから出力端子TSW側に流れる電流IA、IBを用いて、端子電圧異常を検出している。即ち、出力端子TSWに負電圧のサージが印加されることで流れる電流IA、IBを利用して、端子電圧異常を検出している。例えば図12では、負電圧のサージにより流れる電流IAを、抵抗(R1〜Rj)により電圧に変換することで、端子電圧VSWと判定電圧VTの比較処理を実現している。このようにすれば、駆動トランジスターSWTのオフ期間TOFでの負電圧のサージを適正に検出して、端子電圧異常を検出できるようになる。
4.検出モード
本実施形態では制御回路10は、回路装置の電源投入後に、端子電圧異常を検出して駆動トランジスターSWTのオンオフ動作を停止するか否かを判断する検査モードを実行している。具体的には回路装置の電源投入後、駆動トランジスターSWTの駆動のソフトスタート期間の終了後に、検査モードを実行する。この検査モードは、例えば製品の出荷工程や検査工程等において行われる。
図14は、この検査モードを説明するフローチャートである。回路装置(回路装置が組み込まれる電子機器)に電源が投入されると(ステップS1)、駆動トランジスターSWTの駆動のソフトスタートが行われる(ステップS2)。ソフトスタート期間では、例えば駆動トランジスターSWTの駆動能力等を落としたスイッチングレギュレート動作等が行われる。
次に、検査モードを実行する(ステップS3)。即ち、外付け部品の接続不良等を検査するための検査モードを実行する。具体的には、端子電圧異常を検出して駆動トランジスターSWTの動作を停止するか否かを判断する検査モードを実行する。そして、端子電圧異常が検出された場合(ステップS4:YES)には、駆動トランジスターSWTの動作を停止する(ステップS5)。一方、端子電圧異常が検出されなかった場合(ステップS4:NO)には、回路装置を正常に動作させる正常動作モードに移行する(ステップS6)。
図14の手法によれば、例えば出荷工程等において、初期不良品を判別して排除できる。例えば検査モードの実行により、端子電圧異常が検出された場合には、当該回路装置(電子機器)は初期不良品であると判断して、除外する。
また図14の手法によれば、例えば回路装置(電子機器)の電源が投入される毎に、端子電圧異常の検出のための検査モードを実行できる。例えば、回路装置の動作中において、常時に端子電圧異常を検出するのではなく、電源が投入される毎に、端子電圧異常の検出のための検査モードを実行する。こうすることで、電源が投入される毎に、ダイオードSBの接続不良等に基づく端子電圧異常を検出して、駆動トランジスターSWTの動作を停止するか否かは判定できるようになる。
また図14では、電源投入後、ソフトスタート期間の経過後に、端子電圧異常の検出のための検査モードが実行される。例えば、駆動トランジスターSWTの駆動能力等が高い状態で動作を開始すると、大電流の突入電流等が発生してしまうおそれがある。このような突入電流が発生すると、突入電流の発生時の電源電圧の電位変化が他の回路に悪影響を及ぼしてしまい、回路装置の動作が不安定になるなどの問題が生じる。このため、例えば電源投入後のソフトスタート期間においては、例えば駆動トランジスターSWTの駆動能力を通常動作時に比べて低くしたソフトスタートが行われる。なお、本実施形態では、スイッチングレギュレーターにより生成した電源電圧(図2のVOUT)を、内蔵するレギュレーター(シリーズレギュレーター、定電圧生成回路)により降圧し、降圧後の電源電圧を外部に出力してもよい。この場合には、ソフトスタート期間において、当該レギュレーターを構成する駆動トランジスターの駆動能力を通常動作時に比べて低くしたソフトスタートを行えばよい。
図14では、このようなソフトスタート期間の終了後に、端子電圧異常の検出のための検査モードを実行している。従って、ソフトスタートによって回路装置の動作が安定した後に、検査モードが実行されるため、端子電圧異常の誤検出等が発生するのを抑制できる。
即ち、ソフトスタートを行わずに、回路装置の動作が不安定な状態で、端子電圧異常の検出のための検査モードを実行してしまうと、例えば端子電圧VSW等が不安定な状態で、判定電圧VTとの比較処理等が行われてしまい、端子電圧異常の誤検出が発生する可能性が高くなる。
この点、ソフトスタート期間が終了して、回路装置が安定に動作した後に検査モードを実行すれば、端子電圧VSW等が安定した状態で、判定電圧VTとの比較処理等を実行できるため、端子電圧異常の誤検出の発生を効果的に低減することが可能になる。
なお、本実施形態の回路装置では、端子電圧異常が検出されたことを通知する異常検出情報が出力されることが望ましい。即ち、異常検出情報を出力することで、端子電圧異常の検出により、サージ吸収回路40の動作がオンになったことや、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止したことを通知する。
この場合の異常検出情報の出力手法としては、種々の手法を想定できる。例えば図15では、端子電圧異常が検出された場合に、制御回路10が、異常検出情報である異常検出フラグを異常検出通知レジスター56に書き込む。そして回路装置には、外部装置とのインターフェース処理を行うI/F(インターフェース)部60が設けられており、マイコン等の外部装置は、I/F部60を介して異常検出通知レジスター56等のレジスターにアクセスできる。従って、外部装置が、異常検出フラグ(広義には異常検出情報)を、I/F部60を介して異常検出通知レジスター56から読み出すことで、異常検出情報が回路装置から出力されるようになる。
また図16では、異常検出情報である異常検出信号SABを出力するための端子TABが設けられている。そして端子電圧異常が検出された場合には、制御回路10が異常検出信号SAB(広義には異常検出情報)を端子TABを介して外部装置に出力し、これにより異常検出情報が回路装置から出力されるようになる。
なお異常検出情報の出力手法は図15、図16に示す手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。また端子TABは、他の信号(例えばデータ信号等)を出力する端子と兼用されるものであってもよい。
例えば端子電圧異常が発生して、サージ吸収回路40の動作をオンにしたり、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止すると、図2のスイッチングレギュレーターを例にとれば、適正な電源電圧VOUTが出力されなくなってしまう。このため、この電源電圧VOUTが供給される電子機器の各デバイスが、正常に動作できなくなってしまい、何ら工夫を施さないと、外部装置はその原因を知ることができない。
そこで図15、図16では、端子電圧異常が発生した場合に、異常検出情報を回路装置から出力する手法を採用している。こうすることで、外部装置は、この異常検出情報により、端子電圧異常が原因で、サージ吸収回路40の動作がオンになったり、駆動トランジスターSWTのオンオフ動作が停止したことを確認できるようになる。従って、例えばこのような異常が発生したことを、例えば電子機器の表示部に表示することなどにより、電子機器のユーザーに伝え、例えば修理等を促すことが可能になる。これによりユーザーの利便性や機器の信頼性等を向上できる。
例えば、ダイオードSBの接続不良等による負電圧のサージの電圧レベルが、1回のサージだけでは回路装置の駆動トランジスターSWTを破壊するレベルとはなっていない段階において、図15、図16のように異常検出情報を出力することで、端子電圧に何らかの異常が発生したことを通知する。このようにすれば、回路装置が破壊してしまう前の段階で、端子電圧異常をユーザー等に伝えることが可能になる。従って、回路装置の破壊前の修理等が可能になり、信頼性を大幅に向上できるようになる。
5.電子機器
図17に、本実施形態の回路装置200が適用された電子機器の構成例を示す。電子機器は、処理部300、記憶部310、操作部320、入出力部330、回路装置200、これらの各部を接続するバス340、モーター280を含む。なお、以下では、電子機器として、モーター駆動によりヘッドや紙送りを制御するプリンターを例にとり説明するが、本実施形態はこれに限定されず、種々の電子機器(例えばスマートフォン、携帯電話機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カーナビゲーションシステム、ロボット、ゲーム機、時計、健康器具、或いは情報処理装置等)に適用可能である。
入出力部330は例えばUSBコネクターや無線LAN等のインターフェースで構成され、画像データや文書データが入力される。入力されたデータは、例えばDRAM等の内部記憶装置である記憶部310に記憶される。操作部320により印刷指示を受け付けると、処理部300は、記憶部310に記憶されたデータの印刷動作を開始する。処理部300は、データの印刷レイアウトに合わせて回路装置200に指示を送り、回路装置200は、その指示に基づいてモーター280を回転させ、ヘッドの移動や紙送りを行う。
回路装置200は、図2等で説明したスイッチングレギュレーターや、不図示のレギュレーターを有する。スイッチングレギュレーターは、モーター280の駆動用の高電圧の電源電圧を降圧して、第1の電源電圧を生成する。レギュレーターは、この第1の電源電圧を降圧して第2の電源電圧を生成する。処理部300、記憶部310、入出力部330等は、この第2の電源電圧に基づいて動作する。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また回路装置、電子機器の構成・動作や、電源電圧の生成手法等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。