JP6532235B2 - パンツタイプ使い捨ておむつ - Google Patents

Description

本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつに関するものである。

パンツタイプ使い捨ておむつは、装着者の体型にフィットさせるために、腰（ウエスト）周りに弾性伸縮材が使用されている。使用される弾性伸縮材としては、糸ゴム等の弾性伸縮部材のほか、弾性伸縮性を有する不織布やフィルム等も存在する。

しかしながら、おむつの装着者は、お腹が膨らんでいることがあり、特に子供等は、お腹が膨らんでいるうえに、おむつのずり落ち等を気にすることなく動き回ることが多い。したがって、腰周りに弾性伸縮材が使用されていても、装着者が動き回ったり、***したりした際に、おむつの腹側がずり落ちることがある。このずり落ちを放置しておくと、おむつ全体がずり落ちてしまい、見栄えが悪いだけではなく、漏れの原因にもなる。

この点、ずり落ちを防止するために、腰周りの弾性伸縮材の伸縮性を強くすることも考えられるが、弾性伸縮材の伸縮性を強くすると、装着者の肌に跡付きやかぶれ等が生じる原因となる。この点、かぶれに関しては、前身頃や後見頃をなす外装体（外装シート）の両側部を切り欠く等して通気口を形成し、もって蒸れ防止を図る提案もなされている（例えば、特許文献１、特許文献２等参照。）。しかしながら、ずり落ちを防止するために腰周りの弾性伸縮材の伸縮性を強くすると、通気性はさほど向上せず、また、跡付きを防止することはできない。

特開２００６−３１４７７１号公報 特開２０１２−２３２１０２号公報

そこで、本発明の主たる課題は、装着者の肌に跡付きやかぶれ等を生じさせることなくずり落ちを防止することができるパンツタイプ使い捨ておむつを提供することにある。

上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
＜参考となる発明＞
股間部から腹側に延在する前身頃をなす外装体の両側部と股間部から背側に延在する後身頃をなす外装体の両側部とが接合されてサイドシール部が形成されるとともに、装着者の胴を通すためのウエスト開口部及び脚を通すための左右一対の脚開口部がそれぞれ形成され、前記外装体の内側に吸収体を含む内装体が設けられた、パンツタイプ使い捨ておむつであって、
前記前身頃をなす外装体及び前記後身頃をなす外装体のうち少なくともいずれか一方の外装体の前記サイドシール部を有する縦方向領域が、幅方向に弾性伸縮するように構成され、
かつ、前記縦方向領域であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、ズレ止め開口部が設けられている、
ことを特徴とする、パンツタイプ使い捨ておむつ。

（作用効果）
前身頃をなす外装体及び後身頃をなす外装体のうち少なくともいずれか一方の外装体のサイドシール部を有する縦方向領域が、幅方向に弾性伸縮するように構成され、かつ、当該縦方向領域であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、ズレ止め開口部が設けられていると、当該ズレ止め開口部に装着者の腸骨稜領域が嵌り、ズレ止め開口部よりウエスト開口部側の外装体が装着者の腸骨稜領域に引っ掛かる。つまり、例えば、ズボンをはきベルトを締めた際に、ズボンのベルトで締めた部位が着用者の腸骨稜領域に引っ掛かり、ズボンがずり落ちなくなるのと同様の状態になる。したがって、前記縦方向領域における弾性伸縮力を強くすることなく、おむつのずり落ちを防止することができる。

＜請求項１記載の発明＞
上記参考となる発明において、
前記前身頃をなす外装体に切抜きが形成され、この切抜きが前記ズレ止め開口部とされ、
前記ズレ止め開口部は、長手方向及び幅方向を有する細長状で、
股間部側が腹側に、かつウエスト側が背側に傾斜した形状である、
ことを特徴とする、パンツタイプ使い捨ておむつ。
（作用効果）
前身頃をなす外装体に切抜きが形成され、この切抜きがズレ止め開口部とされているパンツタイプ使い捨ておむつは、上記作用効果を有しながら、サイドシール部の製造工程を変えることなく得ることができる。
ズレ止め開口部が長手方向及び幅方向を有する細長状で、股間部側が腹側に、かつウエスト側が背側に傾斜した形状であると、おむつのずり落ちをより確実に防止することができる。
＜請求項２記載の発明＞
前記前身頃をなす外装体の幅方向の弾性変形時引張力が３．０〜１６．０Ｎとされ、
かつ、前記ズレ止め開口部の縦方向長さが２０〜８０ｍｍとされている、
請求項１記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。

（作用効果）
前身頃をなす外装体の幅方向の弾性変形時引張力が３．０〜１６．０Ｎとされ、かつ、ズレ止め開口部の縦方向長さが２０〜８０ｍｍとされていると、弾性伸縮力を装着者の肌に跡付きやかぶれ等を生じさせることない範囲に抑えつつ、おむつのずり落ちを確実に防止することができる。

＜第２の参考となる発明＞
上記参考となる発明において、
前記前身頃をなす外装体に両側部から幅方向中心に向けて延在する切欠きが形成され、この切欠きが前記ズレ止め開口部とされている、
パンツタイプ使い捨ておむつ。

（作用効果）
前身頃をなす外装体に両側部から幅方向中心に向けて延在する切欠きが形成され、この切欠きがズレ止め開口部とされているパンツタイプ使い捨ておむつは、上記作用効果を有しながら、サイドシール部の製造工程を変えることなく得ることができる。

＜請求項３記載の発明＞
上記参考となる発明において、
前記外装体のサイドシール部を有する縦方向領域においては、（前記前身頃をなす外装体の幅）＜（前記後身頃をなす外装体の幅）とされ、
かつ、前記サイドシール部においては、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部とされ、
当該装着時乖離部が開口すると前記ズレ止め開口部となる構成とされた、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。

（作用効果）
外装体のサイドシール部を有する縦方向領域においては、（前身頃をなす外装体の幅）＜（後身頃をなす外装体の幅）とされていると、装着時においてサイドシール部が前身頃（腹側）に位置する。したがって、更にサイドシール部においては、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部とされており、当該装着時乖離部が開口するとズレ止め開口部となる構成とされていると、切抜き工程や切欠き工程等の新たな製造工程を設けることなく、サイドシール部の接合方法を変化させるのみで、上記作用効果を得ることができる。

＜請求項４記載の発明＞
上記参考となる発明において、
前記外装体のサイドシール部を有する縦方向領域においては、（前記前身頃をなす外装体の弾性変形時引張力）＞（前記後身頃をなす外装体の弾性変形時引張力）とされ、
かつ、前記サイドシール部においては、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部とされ、
当該装着時乖離部が開口すると前記ズレ止め開口部となる構成とされた、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。

（作用効果）
外装体のサイドシール部を有する縦方向領域においては、（前記前身頃をなす外装体の弾性変形時引張力）＞（前記後身頃をなす外装体の弾性変形時引張力）とされていると、装着時においてサイドシール部が前身頃（腹側）に位置する。したがって、更にサイドシール部においては、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部とされており、当該装着時乖離部が開口するとズレ止め開口部となる構成とされていると、切抜き工程や切欠き工程等の新たな製造工程を設けることなく、サイドシール部の接合方法を変化させるのみで、上記作用効果を得ることができる。

本発明によれば、装着者の肌に跡付きやかぶれ等を生じさせることなくずり落ちを防止することができるパンツタイプ使い捨ておむつとなる。

パンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。 図１の３−３断面図である。 図１の４−４断面図である。 図１の５−５断面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、おむつを展開した状態における平面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの要部のみを示す、断面図である。 パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。 切抜き型のパンツタイプ使い捨ておむつの説明図である。 切欠き型のパンツタイプ使い捨ておむつの説明図である。 サイドシール部利用型のパンツタイプ使い捨ておむつの説明図である。 ズレ止め開口部の形態例（１）（２）及び配置説明図（３）である。 細長状弾性伸縮部材の揺動説明図である。 実施例１に係るズレ止め開口部の形状、及び細長状弾性伸縮部材の揺動形状を示す図である。 実施例２に係るズレ止め開口部の形状、及び細長状弾性伸縮部材の揺動形状を示す図である。 実施例３に係るズレ止め開口部の形状、及び細長状弾性伸縮部材の揺動形状を示す図である。 実施例４に係るズレ止め開口部の形状、及び細長状弾性伸縮部材の揺動形状を示す図である。 実施例５に係るズレ止め開口部の形状、及び細長状弾性伸縮部材の揺動形状を示す図である。 実施例１に係るパンツタイプ使い捨ておむつの左側側面及び正面の写真である。 実施例２に係るパンツタイプ使い捨ておむつの左側側面及び正面の写真である。 実施例３に係るパンツタイプ使い捨ておむつの左側側面及び正面の写真である。 実施例４に係るパンツタイプ使い捨ておむつの左側側面及び正面の写真である。 実施例５に係るパンツタイプ使い捨ておむつの左側側面及び正面の写真である。

以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
本形態のパンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃をなす外装体及び後身頃をなす外装体のうち少なくともいずれか一方の外装体のサイドシール部を有する縦方向領域（Ｔ）であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、後述するズレ止め開口部（符号３００等で示す。）が設けられていることを特徴とする。ズレ止め開口部が設けられていると、当該ズレ止め開口部に装着者の腸骨稜領域が嵌り、ズレ止め開口部よりウエスト開口部（ＷＯ）側の外装体（１２）が装着者の腸骨稜領域に引っ掛かる。したがって、外装体の縦方向領域（Ｔ）における弾性伸縮力を強くすることなく、おむつのずり落ちを防止することができ、ずり落ちを原因とする尿漏れ等を防止することができる。また、外装体の縦方向領域（Ｔ）における弾性伸縮力を強くする必要がないので、ズレ止め開口部に通気口としての機能を期待することもできる。

ズレ止め開口部は、外装体に「切抜き」や「切欠き」が形成されることで、あるいはサイドシール部の一部の領域が装着時乖離部とされることで、設けることができる。そこで、以下では、これらの形態の利点や差異等を明確にするために、まず、全ての形態に共通する要素を説明し、その後に各種形態の特徴となる要素を説明する。

＜基本説明＞
図１〜図８は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例１００を示している。なお、これらの図においては、各要素を認識し易くするために、ズレ止め開口部を省略しているが、本形態のパンツタイプ使い捨ておむつは、後述するズレ止め開口部を有するものである。

パンツタイプ使い捨ておむつ１００は、製品外面（裏面）をなす外装体１２と、外装体１２の内面に貼り付けられた内装体２００とから構成されているものである。符号Ｙは展開状態におけるおむつの全長（前身頃Ｆのウエスト開口ＷＯの縁から後身頃Ｂのウエスト開口ＷＯの縁までの縦方向長さ）を示しており、符号Ｘは展開状態におけるおむつの全幅を示している。

内装体２００は、尿等の***物等を吸収保持する部分であり、外装体１２は着用者の身体に対して内装体２００を支えるための部分である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布などにより、また弾性伸縮部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性伸縮部材の外周面への塗布により形成されるものである。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の溶着手段を用いることもできる。

（内装体）
内装体２００は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体２００は、図３〜図５に示されるように、身体側となる表面シート３０と、液不透過性シート１１と、これらの間に介在された吸収要素５０とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号４０は、表面シート３０を透過した液を速やかに吸収要素５０へ移行させるために、表面シート３０と吸収要素５０との間に設けられた中間シート（「セカンドシート」とも言う。図３に例示した。）を示しており、符号６０は、内装体２００の両脇に***物が漏れるのを防止するために、内装体２００の両側に設けられた、身体側に起立する立体ギャザー６０を示している。

（表面シート）
表面シート３０は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。

また、表面シート３０は、１枚のシートからなるものであっても、２枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート３０は、平面方向に関して、１枚のシートからなるものであっても、２枚以上のシートからなるものであってもよい。

立体ギャザー６０を設ける場合、表面シート３０の両側部は、液不透過性シート１１と立体ギャザー６０との間を通して、吸収要素５０の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート１１及び立体ギャザー６０に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。

（中間シート）
表面シート３０を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート３０より液の透過速度が速い、中間シート４０を設けることができる。この中間シート４０は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート３０上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート４０は省略することもできる。

中間シート４０としては、表面シート３０と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、ＳＭＳ、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン（ＰＰ）でも良いが剛性の高いポリエステル（ＰＥ）が好ましい。目付けは２０〜８０ｇ／ｍ²が好ましく、２５〜６０ｇ／ｍ²がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは２．２〜１０ｄｔｅｘであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。

図３に例示する中間シート４０は、吸収体５６の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート４０の長手方向長さは、吸収体５６の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。

（液不透過性シート）
液不透過性シート１１の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート１１には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート１１として用いることができる。

液不透過性シート１１は、図示のように吸収要素５０の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素５０の両側を回りこませて吸収要素５０の表面シート３０側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ５〜２０ｍｍが適当である。

また、液不透過性シート１１の内側、特に吸収体５６側面に、液分の吸収により色が変化する***インジケータを設けることができる。

（立体ギャザー）
立体ギャザー６０は、内装体２００の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート３０上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態の立体ギャザー６０は、内装体２００の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。

より詳細には、立体ギャザー６０は、内装体２００の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート６２を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材６３を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。立体ギャザー６０のうち先端部と反対側に位置する基端部（幅方向においてシート折り返し部分と反対側の端部）は内装体２００の側縁部の裏面に固定された取付部分６５とされ、この取付部分６５以外の部分は取付部分６５から突出する突出部分６６（折り返し部分側の部分）とされている。また、突出部分６６は、幅方向中央側に向かう付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とからなる。この形態は面接触タイプの立体ギャザーであるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの立体ギャザー（図示略）も採用することができる。そして、突出部分６６のうち前後方向両端部が倒伏状態で表面シート３０の側部表面に対してホットメルト接着剤（これに代えて又はこれとともにヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段を用いることもできる）により固定された前後固定部６７とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分６８とされ、この自由部分６８に前後方向に沿う細長状弾性部材６３が伸長状態で固定されている。

ギャザーシート６２としてはスパンボンド不織布（ＳＳ、ＳＳＳ等）やＳＭＳ不織布（ＳＭＳ、ＳＳＭＭＳ等）、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは１０〜３０ｇ／ｍ²とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材６３としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは４７０〜１２４０ｄｔｅｘが好ましく、６２０〜９４０ｄｔｅｘがより好ましい。固定時の伸長率は、１５０〜３５０％が好ましく、２００〜３００％がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を１００％としたときの値を意味する。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザーシートの間に防水フィルム６４を介在させることもできる。

立体ギャザー６０の自由部分に設けられる細長状弾性伸縮部材６３の本数は２〜６本が好ましく、３〜５本がより好ましい。配置間隔６０ｄは３〜１０ｍｍが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材６３を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材６３を配置しても良い。

立体ギャザー６０の取付部分６５の固定対象は、内装体２００における表面シート３０、液不透過性シート１１、吸収要素５０等適宜の部材とすることができる。

かくして構成された立体ギャザー６０では、細長状弾性伸縮部材６３の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分６６のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図３に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分６５が内装体２００の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において立体ギャザー６０が幅方向外側に開くように起立するため、立体ギャザー６０が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。

立体ギャザー６０の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図７に示すように、立体ギャザー６０の起立高さ（展開状態における突出部分６６の幅方向長さ）Ｗ６は１５〜６０ｍｍ、特に２０〜４０ｍｍであるのが好ましい。また、立体ギャザー６０を表面シート３０表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離Ｗ３は６０〜１９０ｍｍ、特に７０〜１４０ｍｍであるのが好ましい。

なお、図示形態と異なり、内装体２００の左右各側において立体ギャザーを二重に（二列）設けることもできる。

（吸収要素）
吸収要素５０は、吸収体５６と、この吸収体５６の全体を包む包装シート５８とを有する。包装シート５８は省略することもできる。

（吸収体）
吸収体５６は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ（繊維束）を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば１００〜３００ｇ／ｍ²とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば３０〜１２０ｇ／ｍ²とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、１〜１６ｄｔｅｘ、好ましくは１〜１０ｄｔｅｘ、さらに好ましくは１〜５ｄｔｅｘである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、１インチ（２．５４ｃｍ）当たり５〜７５個、好ましくは１０〜５０個、さらに好ましくは１５〜５０個とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体５６中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。

吸収体５６は長方形形状でも良いが、図１に例示するように、前端部、後端部及びこれらの間に位置し、前端部及び後端部と比べて幅が狭い括れ部とを有する砂時計形状を成していると、吸収体５６自体と立体ギャザー６０の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。

また、吸収体の寸法は適宜定めることができるが、前後方向及び幅方向において、内装体の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、図６の符号５６Ｘは吸収体５６の幅を示している。

（高吸収性ポリマー粒子）
吸収体５６には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、例えば５００μｍの標準ふるい（ＪＩＳ Ｚ８８０１−１：２００６）を用いたふるい分け（５分間の振とう）でふるい上に残る粒子の割合が３０重量％以下のものが望ましく、また、１８０μｍの標準ふるい（ＪＩＳ Ｚ８８０１−１：２００６）を用いたふるい分け（５分間の振とう）でふるい上に残る粒子の割合が６０重量％以上のものが望ましい。

高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量（ＪＩＳ Ｋ７２２３−１９９６「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」）が４０ｇ／ｇ以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸（塩）グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸（塩）重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。

高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が７０秒以下、特に４０秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体５６内に供給された液が吸収体５６外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。

また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が１０００Ｐａ以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体５６とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。

高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体５６の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、５０〜３５０ｇ／ｍ²とすることができる。ポリマーの目付け量が５０ｇ／ｍ²未満では、吸収量を確保し難くなる。３５０ｇ／ｍ²を超えると、効果が飽和する。

必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体５６の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の***部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度（量）を高め、女用は中央部の散布密度（量）を高めることができる。また、吸収体５６の平面方向において局所的（例えばスポット状）にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。

（包装シート）
包装シート５８を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のＳＭＳ不織布（ＳＭＳ、ＳＳＭＭＳ等）が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン／ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、５〜４０ｇ／ｍ²、特に１０〜３０ｇ／ｍ²のものが望ましい。

包装シート５８の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体５６の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体５６の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。

（外装体）
外装体１２は、前後方向中央から腹側に延在する前身頃Ｆを構成する部分と、前後方向中央から背側に延在する後身頃Ｂを構成する部分とを有し、これら前身頃Ｆの両側部と後身頃Ｂの両側部とが接合されてサイドシール部１２Ａが形成されるとともに、図８に示すように、装着者の胴を通すためのウエスト開口ＷＯ及び脚を通すための左右一対の脚開口ＬＯが形成されているものである。

外装体１２は、サイドシール部１２Ａを有する縦方向範囲（ウエスト開口ＷＯから脚開口ＬＯの上端に至る縦方向範囲）として定まる胴周り部Ｔと、脚開口ＬＯを形成する部分の前後方向範囲（前身頃Ｆのサイドシール部１２Ａを有する縦方向領域と後身頃Ｂのサイドシール部１２Ａを有する縦方向領域との間）して定まる中間部Ｌとを有する。胴周り部Ｔは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト縁部」Ｗと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Ｕとに分けることができる。通常、胴周り部Ｔ内に幅方向伸縮応力が変化する境界（例えば弾性伸縮部材の太さや伸長率が変化する）を有する場合は、最もウエスト開口ＷＯ側の境界よりもウエスト開口ＷＯ側がウエスト縁部Ｗとなり、このような境界が無い場合は吸収体５６又は内装体２００よりもウエスト開口ＷＯ側がウエスト縁部Ｗとなる。これらの縦方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト縁部Ｗは１５〜４０ｍｍ、ウエスト下方部Ｕは６５〜１２０ｍｍとすることができる。一方、中間部Ｌの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装体１２は、全体としては略砂時計形状をなしている。外装体１２の括れの程度は適宜定めることができ、図１〜図８に示す形態のように、すっきりとした外観とするために最も幅が狭い部分では内装体２００の幅より狭くすることが好ましいが、最も幅が狭い部分でも内装体２００の幅以上となるように定めてもよい。

外装体１２は、図３〜図５に示されるように、二枚のシート材１２Ｓ，１２Ｈをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせて形成されるものであり、内側に位置する内側シート材１２Ｈはウエスト開口ＷＯの縁までしか延在していないが、外側シート材１２Ｓは内側シート材１２Ｈのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分１２ｒは内装体２００のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。

シート材１２Ｓ，１２Ｈとしては、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは１０〜３０ｇ／ｍ²とするのが好ましい。

また、外装体１２の総目付けは２０〜６０ｇ／ｍ²であるのが好ましく、外装体１２のＪＩＳ Ｋ ７１０５に規定される全光線透過率が４０％以上、特に５０％以上となっているのが好ましい。

そして、外装体１２には、胴周りに対するフィット性を高めるため、あるいは後述する「サイドシール部乖離型：第２の例」を実施するために、両シート材１２Ｓ，１２Ｈ間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材１５〜１９が所定の伸長率で設けられている。細長状弾性伸縮部材１５〜１９としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装体１２の両シート材１２Ｓ，１２Ｈの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材１５〜１９の固定には種々の塗布方法によるホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装体１２全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材１５〜１９の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。

なお、両シート材１２Ｓ，１２Ｈ間に細長状弾性伸縮部材１５〜１９を設けるのに変えて、あるいはこれと共に両シート材１２Ｓ，１２Ｈ等として伸縮性不織布や伸縮性フィルム等の弾性伸縮材を使用することもできる。

一例としては、後身頃Ｂ及び前身頃Ｆのウエスト縁部Ｗにおける内側シート材１２Ｈの内側面と外側シート材１２Ｓの折り返し部分１２ｒの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト縁部弾性伸縮部材１７が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。また、ウエスト縁部弾性伸縮部材１７のうち、ウエスト下方部Ｕに隣接する領域に配設される１本または複数本については、内装体２００と重なっていてもよいし、内装体２００と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト縁部弾性伸縮部材１７としては、太さ１５５〜１８８０ｄｔｅｘ、特に４７０〜１２４０ｄｔｅｘ（合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積０．０５〜１．５ｍｍ²、特に０．１〜１．０ｍｍ²。）の糸ゴムを、４〜１２ｍｍの間隔で３〜２２本、それぞれ伸長率１５０〜４００％、特に２２０〜３２０％で固定するのが好ましい。また、ウエスト縁部弾性伸縮部材１７は、その全てが同じ太さと伸長率にする必要はなく、例えばウエスト縁部Ｗの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸長率が異なるようにしてもよい。

また、前身頃Ｆ及び後身頃Ｂのウエスト下方部Ｕにおける内側シート材１２Ｈの外側面と外側シート材１２Ｓの内側面との間には、内装体２００と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、細長状弾性伸縮部材からなるウエスト下方部弾性伸縮部材１５，１９が複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。

ウエスト下方部弾性伸縮部材１５，１９としては、太さ１５５〜１８８０ｄｔｅｘ、特に４７０〜１２４０ｄｔｅｘ（合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積０．０５〜１．５ｍｍ²、特に０．１〜１．０ｍｍ²。）の糸ゴムを、１〜１５ｍｍ、特に３〜８ｍｍの間隔で５〜３０本、それぞれ伸長率２００〜３５０％、特に２４０〜３００％で固定するのが好ましい。

また、前身頃Ｆ及び後身頃Ｂの中間部Ｌにおける内側シート材１２Ｈの外側面と外側シート材１２Ｓの内側面との間には、内装体２００と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、細長状弾性伸縮部材からなる中間部弾性伸縮部材１６，１８が複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。

中間部弾性伸縮部材１６，１８としては、太さ１５５〜１８８０ｄｔｅｘ、特に４７０〜１２４０ｄｔｅｘ（合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積０．０５〜１．５ｍｍ²、特に０．１〜１．０ｍｍ²。）の糸ゴムを、５〜４０ｍｍ、特に５〜２０ｍｍの間隔で２〜１０本、それぞれ伸長率１５０〜３００％、特に１８０〜２６０％で固定するのが好ましい。

なお、図示のように、ウエスト下方部弾性伸縮部材及び中間部弾性伸縮部材１５，１９，１６，１８が、内装体２００と重なる部分の一部又は全部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体２００が幅方向に必要以上に収縮することがなく、モコモコと見た目が悪かったり吸収性が低下したりすることがない。この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体２００を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体２００と重なる部分の一部又は全部では弾性伸縮部材が細かく切断され、収縮力が作用せず（実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい）に、その幅方向両側のみが収縮力作用部分として構成されている形態も含まれる。もちろんウエスト下方部弾性伸縮部材及び中間部弾性伸縮部材１５，１９，１６，１８の配設形態は上記例に限るものではなく、内装体２００と重なる部分を含めて幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、ウエスト下方部弾性伸縮部材及び中間部弾性伸縮部材１５，１９，１６，１８の一部または全部を、内装体２００を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。

また、細長状弾性伸縮部材１５〜１９として酸化チタンを含有するゴムを用いる場合には、酸化チタンの含有量が低い（例えば２％以下の）ものあるいは酸化チタンを含有しないものを用いるのが好ましい。

（外装体分割構造）
上述の例では、前身頃Ｆから後身頃Ｂまでを一体的な外装体１２により連続的に覆っているが、外装体が、装着者の胴周りのうち腹側を覆う腹側外装体と背側を覆う背側外装体とに分割されており、腹側外装体の幅方向中央部内面に内装体の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装体の幅方向中央部内面に内装体の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装体と背側外装体とが股間側で連続しておらず、離間されている形態も採用することができる。この離間距離は１５０〜２５０ｍｍとすることができる。この場合、内装体における液不透過性シートの裏面には、内装体の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装体と背側外装体との間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装体を固定することもできる。股間部外装体としては、前述した外装体に用いられるものと同様の資材を用いることができる。股間部外装体も本発明の外装体に相当する。

＜切抜き型＞
次に、ズレ止め開口部の形態例について説明する。
図９の（１）〜（３）に、切抜き型に属するパンツタイプ使い捨ておむつ１００を示した。本おむつ１００においては、内側シート材１２Ｈ及び外側シート材１２Ｓが積層されてなる外装体１２に切抜きが形成され、この切抜きがズレ止め開口部３００とされている。ズレ止め開口部３００は、外装体１２のサイドシール部１２Ａを有する縦方向領域であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、図示例では外装体１２の胴周り部Ｔに設けられている。ズレ止め開口部３００は、装着者の腰骨部分等と言われる腸骨稜領域が嵌る開口であり、外装体１２の前身頃Ｆであって幅方向中心線を挟んで一対が線対称となるように設けられている。

この形態においては、切り抜かれて出来たズレ止め開口部３００に装着者の腸骨稜領域が嵌り、ズレ止め開口部３００よりウエスト開口部ＷＯ側（通常、ウエスト縁部Ｗ。）の外装体１２が装着者の腸骨稜領域に引っ掛かる。したがって、前身頃Ｆをなす外装体１２や後身頃Ｂをなす外装体１２の胴周り部Ｔにおける弾性伸縮力を強くすることなく、おむつのずり落ちを防止することができる。また、この形態においては、ズレ止め開口部３００の形状を容易に変更することができ、ズレ止め開口部３００の形状を工夫することで、装着者の腸骨稜領域に対するフィット性を高めることができる。さらに、この形態においては、後述する「サイドシール部利用型」による場合と異なり、サイドシール部１２Ａの製造工程を変化させることなく、以上の作用効果を得ることができる。

この形態において、腰周りに細長状弾性伸縮部材を使用する場合、ズレ止め開口部３００よりも前身頃に位置している細長状弾性伸縮部材は、ズレ止め開口部３００を避けるよう揺動させて配置させる。細長状弾性伸縮部材を揺動して配置することで、ズレ止め開口部３００よりも前身頃側に位置している細長状弾性伸縮部材の非存在部位をなくすことができ、弾性伸縮力の低下を防ぐことができる。

揺動する細長状弾性伸縮部材の、ズレ止め開口部３００との最近接距離は１〜１５ｍｍが好ましく、５〜１０ｍｍがより好ましい。揺動する細長状弾性伸縮部材の配置間隔は１〜２０ｍｍ、好ましくは４〜１０ｍｍとすることができる。

揺動する細長状弾性伸縮部材は、弾性伸縮性部材と重なっても良い。

ここで本形態においては、前身頃Ｆをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力を、例えば３．０〜１６．０Ｎ、好ましくは５．０〜１４．０Ｎに抑えることができる。また、後身頃Ｂをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力も同様に、例えば３．０〜１６．０Ｎ、好ましくは５．０〜１４．０Ｎに抑えることができる。この点、前身頃Ｆや後見頃Ｂをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力が３．０Ｎを下回ると、腸骨稜領域がズレ止め開口部３００から外れ易くなり、おむつのずり落ち防止効果が不十分になるおそれがある。また、本おむつ１００のフィット感が不十分になるおそれもある。他方、前身頃Ｆや後見頃Ｂをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力が１６．０Ｎを上回ると、装着者の肌に跡付きやかぶれ等が生じるおそれがある。この点、例えば、特開平１１−０２１７０２公報では、「おむつをずり上げるために、指を掛けうる開口を設ける」との提案がなされており、また、特開２００４−２６７３３５公報においては、「補助開口部に手の指先を引っ掛けてパンツ型おむつを引き上げる」との提案がなされている。しかるに、本形態のズレ止め開口部３００は、装着者の腸骨稜領域が嵌る開口であり、この腸骨稜領域が嵌るという観点から弾性変形時引張力に着目し、検討する必要がある。従って、弾性変形時引張力は、ズレ止め開口部３００に指が掛かり難くなる方向での検討とも言え、上記先願は参考にすることができない。

各ズレ止め開口部３００は、外装体１２の前後方向前端縁からの距離３００Ｘを、例えば１０〜８０ｍｍ、好ましくは２０〜５０ｍｍ、より好ましくは２０〜３０ｍｍとすることができる。また、各ズレ止め開口部３００は、外装体１２の幅方向側端縁からの距離３００Ｙを、例えば５〜８０ｍｍ、好ましくは１５〜７０ｍｍ、より好ましくは２０〜５０ｍｍとすることができる。さらに、各ズレ止め開口部３００は、前後方向の長さ３００Ｌを、例えば２０〜８０ｍｍ、好ましくは４０〜７０ｍｍ、より好ましくは５０〜６０ｍｍとすることができる。また、各ズレ止め開口部３００は、幅方向の長さ３００Ｗを、例えば５〜８０ｍｍ、好ましくは１０〜６０ｍｍ、より好ましくは３０〜５０ｍｍとすることができる。

各ズレ止め開口部３００は、腸骨稜領域にフィットするよう適宜の形状とすることができ、例えば、円形状、縦長楕円形状、横長楕円形状、方形状、縦長長方形状、横長長方形状、任意の形状等とすることができる。また、図９の（２）中に拡大して示すように、これらの形状に合わせて、外装体１２設ける細長状弾性伸縮部材１７，１９を揺動させて配置すると、ズレ止め開口部３００周りのフィット性が向上し、ずり落ち防止効果及びフィット感がいずれも向上する。

ただし、ズレ止め開口部３００の形状や大きさ、位置、あるいは外装体１２に設ける細長状弾性伸縮部材１７，１９の揺動（揺動形状）や配置等は、以下の通りであると、特に好ましいものとなる。

まず、ズレ止め開口部３００の形状は、長手方向及び幅方向を有する細長状、好適には図１２の（１）に示すように楕円形状とし、下端側（股間部側）が前方（腹側Ｆ）に、かつ上端側（ウエストＷ側）が後方（背側Ｂ）に傾斜した形状とするのが好ましい。この点、装着者の腸骨稜領域は、側方から見た場合において、通常、下端側が前方に、上端側が後方に傾斜した形状である。したがって、ズレ止め開口部３００の形状を、楕円形状とし、かつ上記したように傾斜した形状とすることで、装着者の腸骨稜領域をより嵌り易いものとすることができ、ずり落ち防止効果が向上する。

また、ズレ止め開口部３００の傾斜角αは、外装シート１２を自然状態（１００％）での長さに対して１７０％の長さとなるように引張った際に、５０〜８５°となるように設計するのが好ましく、６０〜７０°となるように設計するのがより好ましい。本発明者等が種々の調査を行ったところによると、装着者の腸骨稜領域は、通常、５０〜８５°の傾斜角で傾斜しており、この傾斜に沿わせる趣旨である。

次に、ズレ止め開口部３００の大きさは、外装シート１２を自然状態（１００％）での長さに対して１７０％の長さとなるように引張った際に、長手方向の長さＲ１が４０〜１００ｍｍとなるように設計するのが好ましく、５０〜７０ｍｍとなるように設計するのがより好ましい。また、外装シート１２を自然状態（１００％）での長さに対して１７０％の長さとなるように引張った際に、幅方向の長さＲ２が２０〜７０ｍｍとなるように設計するのが好ましく、３０〜５０ｍｍとなるように設計するのがより好ましい。ズレ止め開口部３００の大きさを以上の範囲とすれば、外装シート１２が伸縮することと相まって多くの装着者に適するものとなる。

さらに、より詳細にズレ止め開口部３００の形状を設計することができる場合は、図１２の（２）に示すように、上記傾斜を前提としつつ、下端側（股間部側）よりも上端側（ウエストＷ側）の方がズレ止め開口部３００の幅Ｒ２が膨らむ形状とするのが好ましい。より詳細には、下端側の膨らみ角βが３０〜６０°の逆雨粒形状（逆たまご形状）となるように設計するのが好ましく、下端側の膨らみ角βが４０°の逆雨粒形状となるように設計するのがより好ましい。この形状は、装着者の腸骨稜領域の形状により沿うものであり、ずり落ち防止効果が一段と向上する。

ここで「逆雨粒形状（逆たまご形状）」とは、上下が線対称となる楕円形状ではなく、例えば、たまごを逆さにしたような、あるいは雨粒を逆さにしたような形状であり、要は下端側に比べて上端側が膨らむ（広がる）楕円形状のことである。なお、この形状は、外装シート１２が伸長しきった状態での形状を意味する。

また、下端側の膨らみ角βとは、外装シート１２を自然状態（１００％）での長さに対して１７０％の長さとなるように引張った際に、図１２の（２）に示す通り、ズレ止め開口部３００の長手方向に関する中間点Ｒｘにおいて接する２本の接線Ｒｙが交わった部分における角度を意味する。さらに、この逆雨粒形状のズレ止め開口部３００の長手方向の長さＲ１、幅方向の長さＲ２は、前述した楕円形状（図１２の（１））のズレ止め開口部３００と同様であるのが好ましい。

ここでズレ止め開口部３００の形成位置は、図１２の（３）に示すように、上端縁からウエストＷまでの長さＳ１が２０〜８０ｍｍであるのが好ましく、４０〜６０ｍｍであるのがより好ましい。また、背側端縁からサイドシール部１２Ａまでの長さＳ２が５〜３０ｍｍであるのが好ましく、１０〜２０ｍｍであるのがより好ましい。本発明者等が種々の調査を行ったところによると、装着者の腸骨稜領域は、通常、おへそから４０ｍｍ下方、最側縁から１０ｍｍ腹側に位置する。したがって、形成位置を上記範囲とすることで、ずり落ち防止効果を確実に奏するようになる。

次に、ズレ止め開口部３００周りの外装体１２に設ける細長状弾性伸縮部材１７，１９の揺動形状や配置等について説明する。

図１３の（１）に示すように、細長状弾性伸縮部材１７，１９は、ズレ止め開口部３００を避けるよう揺動して配置する。前述した通り、細長状弾性伸縮部材１７，１９を揺動して配置することで、細長状弾性伸縮部材１７，１９の非存在部位をなくすことができ、弾性伸縮力の低下を防ぐことができる。この細長状弾性伸縮部材１７，１９の揺動配置は、図１３の（２）に示すように、細長状弾性伸縮部材１７，１９の配置位置が領域Ｚａ、領域Ｚｂ及び領域Ｚｃの３つに区分され、各領域Ｚａ，Ｚｂ，Ｚｃに沿って細長状弾性伸縮部材１７，１９が揺動するように行うのが好ましい。この形態によると、外装シート１２の弾性伸縮力がバランスのとれたものとなるばかりでなく、製造の容易性にも優れたものとなる。

ここで各領域Ｚａ，Ｚｂ，Ｚｃは、以下の通りであると、より好ましいものとなる。
まず、領域Ｚａは、背側Ｂにおいてズレ止め開口部３００の上端縁よりも１０〜４０ｍｍ上側（ウエストＷ側）に位置し、揺動角度γａが４５〜８５°でズレ止め開口部３００の周縁に沿って下側（股間部側）に揺動し、腹側Ｆに至るものである。

次に、領域Ｚｂは、背側Ｂにおいて領域Ｚａよりも下側（股間部側）に位置し、揺動角度γｂが３０〜６０°でズレ止め開口部３００の周縁に沿って上側（ウエストＷ側）に揺動し、腹側Ｆに至るものである。

最後に、領域Ｚｃは、背側Ｂにおいて領域Ｚｂよりも下側（股間部側）、好ましくはズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置し、揺動角度γｃが１５〜４５°でズレ止め開口部３００の周縁に沿って下側（股間部側）に揺動し、腹側Ｆに至るものである。

なお、以上の揺動に関する記載は、細長状弾性伸縮部材１７，１９を配置する際の始点が背側Ｂであることを意味するものではない。配置始点は、腹側Ｆであっても、背側Ｂ及び腹側Ｆにおいて同時配置であっても、揺動形状が以上の通りであればよい。

＜切欠き型＞
図１０の（１）〜（３）に、切欠き型に属するパンツタイプ使い捨ておむつ１００を示した。本おむつ１００においては、内側シート材１２Ｈ及び外側シート材１２Ｓが積層されてなる外装体１２に切欠きが形成され、この切欠きがズレ止め開口部４００とされている。ズレ止め開口部４００は、前述した切抜き型と同様に、腸骨稜当接領域（図示例では胴周り部Ｔ）に設けられているが、外装体１２に両側部、つまりサイドシール部１２Ａから幅方向中心に向けて延在している。本ズレ止め開口部４００も、装着者の腸骨稜領域が嵌る開口であり、外装体１２の前身頃Ｆであって幅方向中心線を挟んで一対が線対称となるように設けられている。ただし、図１０の（３）中に示すように、本ズレ止め開口部４００は、一方のサイドシール部１２Ａから他方のサイドシール部１２Ａまで延在する形態、つまり左右一対のズレ止め開口部４００が連続する形態であってもよい。

本形態においても、前身頃Ｆをなす外装体１２や後身頃Ｂをなす外装体１２の胴周り部Ｔにおける弾性伸縮力を強くすることなく、おむつのずり落ちを防止することができる。この点、腸骨稜領域は装着者によって多少幅方向にずれることがあるが、本形態によると、当該ずれの影響を受けず、この点では、前述切抜き型よりもずり落ち防止効果が優れる。また、本形態においても、サイドシール部１２Ａの製造工程を変化させることなく、以上の作用効果を得ることができる。さらに、本形態においては、ズレ止め開口部４００の延在長さを適宜工夫することで、ズレ止め開口部４００の通気口としての機能を大きく期待することができる。

本形態においては、前身頃Ｆをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力を、切抜き型の場合と同様に、例えば３．０〜１６．０Ｎ、好ましくは５．０〜１４．０Ｎに抑えることができる。また、後身頃Ｂをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力も同様に、例えば３．０〜１６．０Ｎ、好ましくは５．０〜１４．０Ｎに抑えることができる。この点、前身頃Ｆや後見頃Ｂをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力が３．０Ｎを下回ると、腸骨稜領域がズレ止め開口部４００から外れ易くなり、おむつのずり落ち防止効果が不十分になるおそれがある。また、本おむつ１００のフィット感が不十分になるおそれもある。他方、前身頃Ｆや後見頃Ｂをなす外装体１２の幅方向の弾性変形時引張力が１６．０Ｎを上回ると、装着者の肌に跡付きやかぶれ等が生じるおそれがある。

各ズレ止め開口部４００は、外装体１２の前後方向前端縁からの距離４００Ｘを、例えば１０〜８０ｍｍ、好ましくは２０〜５０ｍｍ、より好ましくは２０〜３０ｍｍとすることができる。また、各ズレ止め開口部４００は、前後方向の長さ４００Ｌを、切抜き型の場合と同様に、例えば２０〜８０ｍｍ、好ましくは４０〜７０ｍｍ、より好ましくは５０〜６０ｍｍとすることができる。さらに、各ズレ止め開口部４００は、幅方向の長さ４００Ｗを、例えば５〜１２０ｍｍ、好ましくは１０〜８０ｍｍ、より好ましくは３０〜６０ｍｍとすることができる。

なお、図示例のズレ止め開口部４００は、帯状とされているが、例えば、前後方向の長さ４００Ｌが適宜変化する等してもよい。

＜サイドシール部利用型：第１の例＞
次に、サイドシール部１２Ａを利用してズレ止め開口部を設ける形態例を説明する。
図１１の（１）に、サイドシール部利用（剥離）型（第１の例）のパンツタイプ使い捨ておむつ１００を示した。本おむつ１００は、サイドシール部１２Ａにおいて、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部１２Ａｘとされている。また、外装体１２のサイドシール部１２Ａを有する縦方向領域、本形態では腰回り部Ｔにおいては、（前身頃Ｆをなす外装体１２の幅Ｘｆ）＜（後身頃Ｂをなす外装体１２の幅Ｘｂ）とされている。この形態においては、図１１の（３）に示すように、装着時において装着時乖離部１２Ａｘが開口し、この開口がズレ止め開口部５００となる。また、（前身頃Ｆをなす外装体１２の幅Ｘｆ）＜（後身頃Ｂをなす外装体１２の幅Ｘｂ）とされているので、ズレ止め開口部５００は装着者の腹側に位置する。したがって、切抜き工程や切欠き工程等の新たな製造工程を設けることなく、サイドシール部の接合方法を変化させるのみで、前述した切抜き型や切欠き型と同様の作用効果を得ることができる。

各装着時乖離部１２Ａｘは、サイドシール部１２Ａの前後方向前端縁からの距離５００Ｘを、例えば１０〜８０ｍｍ、好ましくは２０〜５０ｍｍ、より好ましくは２０〜３０とすることができる。また、各装着時乖離部１２Ａｘは、前後方向の長さ５００Ｌを、例えば２０〜８０ｍｍ、好ましくは４０〜７０ｍｍ、より好ましくは５０〜６０ｍｍとすることができる。

各装着時乖離部１２Ａｘについて、非接合とする場合は、溶着、接着等を行わなければよく、他方、接合力が相対的に弱いものとする場合は、例えば、前後方向に間隔を空けて配列された点状の溶着部の列が幅方向に複数本配列されるとともに、幅方向全体にわたる無溶着部を各溶着部の縦方向両側に有するドットパターンでサイドシール部１２Ａを形成するものとし、装着時乖離部１２Ａｘを疎溶着領域とし、他の領域１２Ａｙを密溶着領域とする方法が考えられる。この方法の詳細は、例えば、特開２０１３−１４６４１９号公報等を参考にすることができる。また、上記ドットパターンを利用することを前提としつつ、装着時乖離部１２Ａｘを弱溶着領域とし、他の領域１２Ａｙを強溶着領域とする方法が考えられる。つまり、溶着パターンを同様としつつ溶着力に強弱を付けるわけである。

＜サイドシール部利用型：第２の例＞
図１１の（２）に、サイドシール部利用（剥離）型（第２の例）のパンツタイプ使い捨ておむつ１００を示した。本おむつ１００も、サイドシール部１２Ａにおいて、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部１２Ａｘとされている。一方、第１の例と異なり、腰回り部Ｔにおいて、前身頃Ｆをなす外装体１２の幅と後身頃Ｂをなす外装体１２の幅が同じとされつつ、幅方向の（前身頃Ｆをなす外装体１２の弾性変形時引張力Ｐｂ）＞（後身頃Ｂをなす外装体１２の弾性変形時引張力Ｐｂ）とされている。

この形態においても、図１１の（３）に示すように、装着時において装着時乖離部１２Ａｘが開口し、この開口がズレ止め開口部６００となる。また、幅方向の（前身頃Ｆをなす外装体１２の弾性変形時引張力Ｐｆ）＞（後身頃Ｂをなす外装体１２の弾性変形時引張力Ｐｂ）とされているので、ズレ止め開口部６００は装着者の腹側に位置する。したがって、切抜き工程や切欠き工程等の新たな製造工程を設けることなく、サイドシール部の接合方法を変化させるのみで、前述した切抜き型や切欠き型と同様の作用効果を得ることができる。

各装着時乖離部１２Ａｘの、サイドシール部１２Ａの前後方向前端縁からの距離５００Ｘや前後方向の長さ５００Ｌは、第１の例と同様とすることができる。また、各装着時乖離部１２Ａｘを非接合とする方法や接合力が相対的に弱いものとする方法も第１の例と同様である。

弾性変形時引張力Ｐｆは、例えば５．５〜１６．０Ｎ、好ましくは６．０〜１３．５Ｎとすることができる。他方、弾性変形時引張力Ｐｂは、Ｐｂ＜Ｐｆであって、例えば３．０〜１４．０Ｎ、好ましくは３．５〜１１．５Ｎとすることができる。

この弾性変形時引張力Ｐｆや弾性変形時引張力Ｐｂは、例えば、前述した細長状弾性伸縮部材１５〜１９の伸長率や、太さ（合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積。）、配置する本数、配置する間隔等を変化させることによって調節することができる。

＜用語説明＞
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後（縦）方向」とは腹側（前側）と背側（後側）を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向（左右方向）を意味する。
・「伸長率」は、自然長を１００％としたときの値を意味する。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。
人工尿（尿素：２０ｗｔ％、食塩：８ｗｔ％、塩化カルシウム二水和物：０．３ｗｔ％、酸化マグネシウム七水和物：０．８ｗｔ％、純水：７０．０１ｗｔ％）４９．０ｇに、高吸収性ポリマーを１．０ｇ加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを４０℃×６０％ＲＨの恒温恒湿槽内に３時間放置したあと常温にもどし、カードメーター（Ｉ．ｔｅｃｈｎｏ Ｅｎｇｉｎｅｅｒｉｎｇ社製：Ｃｕｒｄｍｅｔｅｒ−ＭＡＸ ＭＥ−５００）でゲル強度を測定する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。
試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態（試験場所は、温度２０±５℃、相対湿度６５％以下）の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度１０〜２５％、温度５０℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が０．０％の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(２００ｍｍ×２５０ｍｍ、±２ｍｍ)を使用し、２００ｍｍ×２５０ｍｍ（±２ｍｍ）の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、２０倍して１平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器（ＫＥＳ−Ｇ５ ハンディ圧縮計測プログラム）を用い、荷重：１０ｇｆ／ｃｍ²、及び加圧面積：２ｃｍ²の条件下で自動測定する。
・吸水量は、ＪＩＳ Ｋ７２２３−１９９６「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、２ｇの高吸収性ポリマー及び５０ｇの生理食塩水を使用して、ＪＩＳ Ｋ７２２４‐１９９６「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・「弾性変形時引張力」とは、自然長を１００％としたとき、伸びが２００％における引張力（Ｎ）を意味しており、紙おむつのサイドシールを破き、前身頃、または後身頃の幅方向両端部を引張試験機でつかみ、引張速度３００ｍｍ／分で引張試験した値である。

次に、本発明の実施例を説明する。
まず、前述した切抜き型のパンツタイプおむつについて、ズレ止め開口部３００の形状、及び細長状弾性伸縮部材１７，１９の揺動形状を種々変化させたものを複数用意した。次に、これらのパンツタイプおむつをダミー人形に履かせ、各パンツタイプおむつのダミー人形に対するフィット性を目視で評価した。

なお、細長状弾性伸縮部材１７，１９は、自然状態（１００％）での長さに対して２７０％の長さとなるようにして外装シートに固定した。また、配置間隔は５ｍｍとした。さらに、繊度が４７０ｄｔのものを使用した。

ズレ止め開口部３００の形状、及び細長状弾性伸縮部材１７，１９の揺動形状を、図１４〜１８に示した。図１４に示すように、実施例１においては、ズレ止め開口部３００の形状を逆雨粒形状（逆たまご型）とした。細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述領域Ｚａには配置しないものとした。領域Ｚｂにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｂを３０°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように配置した。領域Ｚｃにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｃを１５°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。

図１５に示すように、実施例２においては、ズレ止め開口部３００の形状を円形状とした。領域Ｚａにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γａを４５°とし、背側Ｂにおいてはズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように、腹側Ｆにおいてはズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。領域Ｚｂにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｂを３０°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように配置した。領域Ｚｃにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｃを１５°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。

図１６に示すように、実施例３においては、ズレ止め開口部３００の形状を傾斜する楕円形状とした。領域Ｚａにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γａを４５°とし、背側Ｂにおいてはズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように、腹側Ｆにおいてはズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。領域Ｚｂにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｂを３０°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように配置した。領域Ｚｃにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｃを１５°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。

図１７に示すように、実施例４においては、ズレ止め開口部３００の形状を逆雨粒形状（逆たまご型）とした。領域Ｚａにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γａを４５°とし、背側Ｂにおいてはズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように、腹側Ｆにおいてはズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。領域Ｚｂにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｂを３０°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように配置した。領域Ｚｃにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｃを１５°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。

図１８に示すように、実施例５においては、ズレ止め開口部３００の形状を逆雨粒形状（逆たまご型）とした。領域Ｚａにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γａを３０°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように配置した。領域Ｚｂにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｂを３０°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも上側に位置するように配置した。領域Ｚｃにおける細長状弾性伸縮部材１７，１９は、前述揺動角度γｃを１５°とし、背側Ｂ及び腹側Ｆのいずれにおいてもズレ止め開口部３００の中心点よりも下側に位置するように配置した。

各実施例のパンツタイプおむつを、ダミー人形に履かせた状態で、左側側面及び正面から写真撮影し、図１９〜２３として掲載した。

（評価）
最もフィット性が良かったのは、腸骨及びズレ止め開口部３００の形状が相似する実施例４であった。他方、腸骨及びズレ止め開口部３００の形状が異なる実施例２及び実施例３においては、フィット性が若干低下した。このことから、腸骨及びズレ止め開口部３００の形状が相似するとフィット性が向上することが分かった。

もっとも、両者の形状が一致している場合においても、実施例１のように腹側Ｆに細長状弾性伸縮部材１７，１９が配置されていないと、ズレ止め開口部３００の周辺部が若干浮いた状態になることが分かった。また、実施例５のように、ズレ止め開口部３００の腹側Ｆに細長状弾性伸縮部材１７，１９が配置されているとしても、配置されていない領域も広く存在すると、フィット性が低下することも分かった。

本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。

１１…液不透過性シート、１２…外装体、１２Ａ…サイドシール部、１２ｒ…折り返し部分、１２Ｈ…内側シート材、１２Ｓ…外側シート材、１５〜１９…細長状弾性伸縮部材、３０…表面シート、４０…中間シート（セカンドシート）、５０…吸収要素、５６…吸収体、５８…包装シート、６０…立体ギャザー、６２…ギャザーシート、６３…細長状弾性伸縮部材、６５…取付部分、６６…突出部分、６７…前後固定部、６８…自由部分、１００…パンツタイプ使い捨ておむつ、２００…内装体、３００，４００，５００，６００…ズレ止め開口部、Ｂ…後見頃、Ｆ…前身頃、ＬＯ…脚開口部、Ｔ…胴周り部、Ｕ…ウエスト下方部、Ｗ…ウエスト縁部、ＷＯ…ウエスト開口部、Ｚａ，Ｚｂ，Ｚｃ…領域。

Claims (4)

1. 股間部から腹側に延在する前身頃をなす外装体の両側部と股間部から背側に延在する後身頃をなす外装体の両側部とが接合されてサイドシール部が形成されるとともに、装着者の胴を通すためのウエスト開口部及び脚を通すための左右一対の脚開口部がそれぞれ形成され、前記外装体の内側に吸収体を含む内装体が設けられた、パンツタイプ使い捨ておむつであって、
   前記前身頃をなす外装体及び前記後身頃をなす外装体のうち少なくともいずれか一方の外装体の前記サイドシール部を有する縦方向領域が、幅方向に弾性伸縮するように構成され、
   かつ、前記縦方向領域であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、ズレ止め開口部が設けられ、
   前記前身頃をなす外装体に切抜きが形成され、この切抜きが前記ズレ止め開口部とされ、
   前記ズレ止め開口部は、長手方向及び幅方向を有する細長状で、
   股間部側が腹側に、かつウエスト側が背側に傾斜した形状である、
   ことを特徴とする、パンツタイプ使い捨ておむつ。
2. 前記前身頃をなす外装体の幅方向の弾性変形時引張力が３．０〜１６．０Ｎとされ、
   かつ、前記ズレ止め開口部の縦方向長さが２０〜８０ｍｍとされている、
   請求項１記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
3. 股間部から腹側に延在する前身頃をなす外装体の両側部と股間部から背側に延在する後身頃をなす外装体の両側部とが接合されてサイドシール部が形成されるとともに、装着者の胴を通すためのウエスト開口部及び脚を通すための左右一対の脚開口部がそれぞれ形成され、前記外装体の内側に吸収体を含む内装体が設けられた、パンツタイプ使い捨ておむつであって、
   前記前身頃をなす外装体及び前記後身頃をなす外装体のうち少なくともいずれか一方の外装体の前記サイドシール部を有する縦方向領域が、幅方向に弾性伸縮するように構成され、
   かつ、前記縦方向領域であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、ズレ止め開口部が設けられ、
   前記外装体のサイドシール部を有する縦方向領域においては、（前記前身頃をなす外装体の幅）＜（前記後身頃をなす外装体の幅）とされ、
   かつ、前記サイドシール部においては、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部とされ、
   当該装着時乖離部が開口すると前記ズレ止め開口部となる構成とされた、
   ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
4. 股間部から腹側に延在する前身頃をなす外装体の両側部と股間部から背側に延在する後身頃をなす外装体の両側部とが接合されてサイドシール部が形成されるとともに、装着者の胴を通すためのウエスト開口部及び脚を通すための左右一対の脚開口部がそれぞれ形成され、前記外装体の内側に吸収体を含む内装体が設けられた、パンツタイプ使い捨ておむつであって、
   前記前身頃をなす外装体及び前記後身頃をなす外装体のうち少なくともいずれか一方の外装体の前記サイドシール部を有する縦方向領域が、幅方向に弾性伸縮するように構成され、
   かつ、前記縦方向領域であって装着者の腸骨稜領域に当接する腸骨稜当接領域に、ズレ止め開口部が設けられ、
   前記外装体のサイドシール部を有する縦方向領域においては、幅方向の（前記前身頃をなす外装体の弾性変形時引張力）＞（前記後身頃をなす外装体の弾性変形時引張力）とされ、
   かつ、前記サイドシール部においては、縦方向の少なくとも一部の領域が、他の領域よりも接合力が相対的に弱い、又は非接合の装着時乖離部とされ、
   当該装着時乖離部が開口すると前記ズレ止め開口部となる構成とされた、
   ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。