JP6527069B2 - 溶鋼用中間容器の操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶鋼を真空装置内の鋳型に注入して溶鋼を鋳込む際に用いる溶鋼用中間容器の操業方法に関する。
従来より、圧延では製造できないような形状や大型の製品をつくるため、上注ぎ造塊法あるいは下注ぎ造塊法が採用されている。特に、上注ぎ造塊法は、製品の品質規格が厳しい100t超の鋳鍛鋼品用の大型鋼塊(製品)などを製造するために用いられている。
さて、上注ぎ造塊法、下注ぎ造塊法に関わらず、大型鋼塊の造塊時は取鍋と鋳型の間に溶鋼用中間容器を設けて、溶鋼を鋳込むことがある。この理由としては、大型鋼塊の製造には取鍋の収容溶鋼容量の1回分だけでは鋳込みが完了せず、溶鋼が装入された取鍋を複数回搬送して鋳込みを行う必要があるため、取鍋と鋳型の間に設けられた溶鋼用中間容器に搬送された溶鋼を一旦移すことで、溶鋼が装入された取鍋に交換するときにおいても、溶鋼を途切れさせずに連続して鋳込みを可能にするためである。すなわち、取鍋と鋳型の間に設けられた溶鋼用中間容器は、バッファー機能を有するものである。
ところで、操業中の中間容器内には、再酸化生成物(いわゆるスカムと呼ばれるもの)、浮上した介在物、取鍋からの流出スラグなど様々な浮上物が存在している。さらに、溶鋼中には非金属介在物(CaO-Al2O3など、粒径約50μm以下)が懸濁している。
このような状況下で、中間容器内の溶鋼をすべて排出(鋳込み)しようとした場合、浮上物(すなわち不純物)が流出してしまうため、鋳込み末期において、製造される鋼塊の原料・溶製コスト、及び品質を考慮した上で、ある一定量の溶鋼を中間容器内に残して、スラグなどの浮上物の流出を防止するという「残鋼」が通常実施されている。
このような不純物(特に浮上物)が流出することを防止する技術として、特許文献1〜3に示すものがある。
例えば、特許文献1、2は、同文献1の第1図(a)や、同文献2の図4に示すように、溶鋼を鋳込む際に溶鋼排出孔周囲を除いた底部を底上げした、すなわち段差部が設けられた中間容器を用いることで、浮上物等の流出防止を目的としている。
内部に段差部を設けた中間容器を用いて鋳込むと、段差部のない中間容器を用いた場合の残鋼量と同じ量であっても、溶鋼は凹状の非段差部の底に残留するので、段差部の体積分、溶鋼の液深が深くなる。つまり、溶鋼の液深が深いと、溶鋼表面に浮上物等が浮遊することとなり、鋳型へ流出しにくくなる。また一方で、溶鋼の液深が段差部のない中間容器を用いた場合と同じ深さであっても、段差部体積に相当する分、残鋼量を低減することができる。
詳しくは、特許文献1は、タンディッシュ、取鍋等の溶融金属容器において、鋳造末期(鋳型に注入された溶鋼が製造する鋼塊の必要量に達すること)に該容器に残存させる溶融金属量を極小量に抑え、鋳造に際して歩留りを大幅に向上させることを目的としている。概略としては、タンディッシュを用いる連続鋳造末期において、溶鋼量の減少に伴い、溶鋼表面に浮上しているスラグ・保温材の流出を防止するために、多量の溶鋼がタンディッシュ内に残留している状態でタンディッシュからの溶鋼注入を終了し、溶鋼歩留りを低下させている。これに基づき、タンディッシュ、取鍋等の溶融金属容器の注出孔を含む近傍に溶鋼の滞留域を形成し、滞留域を溶鋼へのスラグ巻き込み限界よりも深くし、さらに鋳造末期に注出孔の溶鋼流量を調整することで、該容器内に残存する溶融金属を減少されることができると考えられる。
特許文献2は、鋼の連続鋳造工程において、取鍋からタンディッシュへの溶鋼注入終了直前の注入末期における取鍋内スラグのタンディッシュへの流出を防止して、鋳片の品質を向上させるとともに、溶鋼歩留まりを向上させることのできる取鍋を提供することであり、また、この取鍋を用いた鋳片の製造方法を提供することを目的としている。概略としては、鋼の連続鋳造工程において、取鍋からの注入末期における取鍋内スラグの流出を防止するために、多量の溶鋼が取鍋内に残留している状態で取鍋からタンディッシュへの溶鋼の注入を終了し、溶鋼歩留りを低下させている。これに基づき、底部に突出部を用いた連続鋳造用取鍋を用いることで、注入末期に取鍋内に残留する溶鋼が少なくなっても、溶鋼吐出孔の設置された位置の湯面高さは比較的高いので、渦流が形成されずにスラグのタンディッシュへの流出が防止されると考えられる。渦流が形成された時点では、取鍋内に残留する溶鋼量は極めて少ないため、溶鋼歩留りを向上させることができると同時に、取鍋交換時などの非定常部鋳片の品質を向上することができると考えられる。
一方、中間容器の内部に段差部は設けられていないが、浮上物等の流出防止の技術が特許文献3に開示されている。
特許文献3は、取鍋内に残る溶鋼量を効率よく調節して歩留りの向上を図りつつ、取鍋からタンディッシュへのスラグ流出を防止して、清浄度の高い鋼を連続鋳造する方法を提供することを目的としている。概略としては、取鍋内の溶鋼量の低下に伴って、取鍋の底部に設けた出鋼口の上方付近に溶鋼の渦流が発生し、溶鋼上の浮上スラグ巻き込んで、溶鋼とともに流出し、製品の清浄度が低下するので、取鍋からの溶鋼注入末期において、最適な取鍋残鋼高さで溶鋼注入ノズルを閉めて、溶鋼渦流発生を防止し、浮上スラグの流出を防止するとともに、溶鋼歩留りを向上すると考えられる。
特開昭58−116961号公報 特開2007−54860号公報 特開2003−230947号公報
ここで、特許文献1〜3に開示された造塊技術を用いて鋼塊を鋳造した場合について検討する。
特許文献1の技術を用いて上注ぎ造塊法を行った場合、容器(鍋)内の残存溶融金属が減少したとき、容器内に滞留域が設けられているので、湯面上に浮上するスラグの巻き込みは発生しにくいと考えられるが、一度浮上分離した介在物が鋳型へ流出することを防ぐ技術とはなっていない。
本願出願人は、鋭意研究の末、一度浮上した非金属介在物が鋳型へ流出することに大きく関係するファクタとして、中間容器における溶鋼の水平方向の流れ(水平流)があることを知見している。この観点から特許文献1を考えるに、特許文献1の技術では、水平流による介在物の流出を考慮していないため、最適な操業条件を開示しているとは言い難い。逆に、容器内に滞留域を設けたことで、鋳込み末期に湯面と滞留域以外の距離が短くなることで湯面近傍の水平流が速くなり、一度浮上分離していた介在物が水平流によって、再度溶鋼中に懸濁し鋳型に流出してしまうことが懸念される。
特許文献2の技術を用いて上注ぎ造塊法を行った場合、取鍋内の溶鋼量の低下に伴って、出鋼口の上方付近に発生する溶鋼の渦流によるスラグの流出は防げるものの、水平流による介在物の再懸濁および流出を考慮していないため、最適な操業条件とは言い難い。また、取鍋内に突出部を設けたことで、鋳込み末期に湯面近傍の水平流が速くなり、一度浮上分離していた介在物が水平流によって、溶鋼中に再懸濁し鋳型に流出してしまうことが懸念される。
特許文献3の技術を用いて上注ぎ造塊法を行った場合、溶鋼の注入流量を制御することで、取鍋からタンディッシュへのスラグ流出は防止できると考えられるが、底部を底上げする等の残鋼量低減対策を行っていないため、残鋼量低減効果は小さく最適な操業条件とは言い難い。
まとめると、特許文献1〜3の技術では、溶鋼排出孔周囲における渦流に着目してスラグなどの浮上物の流出を防止しているが、水平流による介在物の再懸濁および流出を抑えることはできない。つまり、特許文献1〜3の技術では、鋼塊の製品品質を向上させることは難しい。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、溶鋼を鋳型に注入して鋳鍛鋼品用の大型鋼塊を製造する際に、一度浮上分離した非金属介在物が鋳型に流出することを防止して高清浄度化を実現し、且つ残鋼量の低減を行うことができる溶鋼用中間容器の操業方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる溶鋼用中間容器の操業方法は、底部の一部に、式(2)を満たす高さを有する段差部を備え、前記段差部は上面平面視で扇形状であって当該段差部の開き角が90°〜180°であり、且つ前記段差部が設けられていない前記底部の他部に溶鋼排出孔が備えられた溶鋼用中間容器を用いて溶鋼を鋳型に注入して造塊するに際しては、
鋳込み末期における前記溶鋼用中間容器内での溶鋼の深さをH(m)と、前記鋳型への鋳込み流量をQ(m/s)とが、式(1)、式(3)を満たすように溶鋼を鋳込むことを特徴とする。
本発明によれば、溶鋼を鋳型に注入して鋳鍛鋼品用の大型鋼塊を製造する際に、懸濁物である非金属介在物が鋳型に流出することを防止して高清浄度化を実現し、且つ残鋼量の低減を行うことができる。
本発明における溶鋼用中間容器が適用される真空上注ぎ鋳造装置の概略図である。 本発明における溶鋼用中間容器の断面斜視図である。 本発明における溶鋼用中間容器の形状の一例を示した概略図である。 本発明における溶鋼用中間容器の形状の一例を示した概略図である。 本発明における溶鋼用中間容器の形状の一例を示した概略図である。 上方平面視で開き角が90°の略扇形状である段差部(形状1)を備えた、No.1〜No.3の鍋模型(中間鍋)の概略を示した図である。 No.1〜No.3の鍋模型を用いて行った介在物流出評価試験(水モデル実験)の結果を、段差部形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。 上方平面視で開き角が120°の略扇形状である段差部(形状2)を備えた、No.4〜No.6の鍋模型(中間鍋)の概略を示した図である。 No.4〜No.6の鍋模型を用いて行った介在物流出評価試験(水モデル実験)の結果を、段差部形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。 上方平面視で開き角が150°の略扇形状である段差部(形状3)を備えた、No.7の鍋模型(中間鍋)の概略を示した図である。 No.7の鍋模型を用いて行った介在物流出評価試験(水モデル実験)の結果を、段差部形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。 上方平面視で開き角が180°の略扇形状である段差部(形状4)を備えた、No.8〜No.10の鍋模型(中間鍋)の概略を示した図である。 No.8〜No.10の鍋模型を用いて行った介在物流出評価試験(水モデル実験)の結果を、段差部形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。 No.3、No.11、No.12の鍋模型を用いて行った介在物流出評価試験(水モデル実験)の結果を、鋳込み流量Qの依存性に基づいてまとめたグラフである。 段差部の高さhに対する規格化残鋼量の関係を示す図である。
以下、本発明にかかる溶鋼用中間容器の操業方法の実施の形態について、図を基に説明する。なお、本発明の溶鋼用中間容器4の操業方法は、上注ぎ造塊法及び下注ぎ造塊法に関わらず、中間容器を用いる場合には適用可能である。本実施形態においては、上注ぎ造塊法を例に挙げて説明する。
まず、本実施形態の溶鋼用中間容器4が用いられている真空上注ぎ鋳造装置1について、説明する。
図1は、真空鋳造を行う真空上注ぎ鋳造装置1の全体を示したものである。図2は、本実施形態の溶鋼用中間容器4を模式的に示した断面斜視図である。なお、図2に関して、底部5を見やすくするために外壁面の一部を仮想線で示している。
図1に示すように、真空上注ぎ鋳造装置1は、上流工程にて精錬処理が行われた溶鋼Xが装入された取鍋2と、この取鍋2の下側に設置され且つバッファー機能を有する溶鋼用中間容器4と、この溶鋼用中間容器4の下側に設置された真空装置13を備えている。
取鍋2は、有底円筒形であって(通常は上に蓋を有するが、上部が開放されていても良い)、底部下面側にノズル3を有し、当該取鍋2の下側に設置された溶鋼用中間容器4(詳細は後述)へノズル3を介して溶鋼Xを排出するものである。
一方、最下側に設置された真空装置13は、鋳造時に内部が略真空状態となる真空タンク15と、この真空タンク15内に設置された鋳型14とを備えている。真空タンク15の上方には、溶鋼用中間容器4があり、真空タンク15の上部には溶鋼用中間容器4の溶鋼排出孔6が開口部16と一致するように設置されている。この開口部16の直下であって真空タンク15の内部に、溶鋼を鋳造する鋳型14が配置されている。
次いで、本発明の特徴である溶鋼用中間容器4、及びその操業方法について、詳細に述べる。
図2に示すように、溶鋼用中間容器4(以降、中間鍋と呼ぶ)は、有底円筒形で形成されたものである。なお、以降の説明においては、有底で円筒形状に形成された中間鍋4を例に挙げて説明するが、例えば有底で矩形状や多角形状、すなわち中間鍋4の外形状がいかなる有底箱形であってもよい。つまり、本発明は、当業者常法の範囲内の中間鍋4であれば適用可能である。
本実施形態の中間鍋4は、その底部5に、鉛直(垂直)上方向に所定の高さを有する段差部7が形成されている。この段差部7は、底部5の一部を覆うように配備されていて、上方平面視で略扇形状となっている。底部5を覆う段差部7の面積は、中間鍋4の底部5の面積に対して所定の範囲とされ、底部5の全面を覆わないものとされている。
すなわち、この中間鍋4は、底部5の一部が底上げされた段差部7で構成される高位領域と、この段差部7の上面から見て低い非段差部10で構成される低位領域とを有するものとなっていて、この低位領域すなわち非段差部10は段差部7に対して凹部とされる。
段差部7の高さhは、中間鍋4を操業する際の重要なファクタとされる。なお、段差部7の高さhに関しては、後述する中間鍋4の操業方法で詳細に説明する。
また、本実施形態における段差部7の上縁8は、段差部7の上面と、非段差部10から鉛直上方向に向かって立設された段差側壁9とが交差する部分のことである。言い換えれば、段差部7の上縁8は、段差部7から非段差部10に切り替わる部分のことである。この段差部7の上縁8長さの合計が、流路長さL(詳細が後述)とされる。
本実施形態の段差部7には、溶鋼X中に懸濁している介在物の流出を防止するための板片状の堰11が、その段差部7の上面から鉛直上方向に立設されている。
図2に示すように、堰11は、段差部7の縁部に立設するように設けられている。すなわち、堰11は非段差部10側を向く側壁を有しており、この側壁が略扇形状とされた段差部7の略中心の上縁8に沿うものとなっている。すなわち堰11の側壁(非段差部10側を向く側壁)と、段差部7の略中心の段差側壁9とが面一となるように立設されている。
なお、堰11の高さ、水平方向の幅、厚み(水平方向において幅に対して交差する方向)など寸法は、当業者常法の範囲を満たすものとされる。この堰11の立設位置、形状に関しては、本実施形態では一例を挙げて説明しただけであり、当業者常法のものであれば特に限定はしない。
一方、中間鍋4の底部5であって、段差部7が形成されていない領域、すなわち非段差部10には、中間鍋4内の溶鋼Xを真空装置13内の鋳型14に注入するための溶鋼排出孔6が設けられている。
また、溶鋼排出孔6を閉鎖すると共に、その溶鋼排出孔6へ流れる溶鋼スループット(溶鋼量)を調整するストッパー12が、中間鍋4内に設けられている。また、溶鋼排出孔6の下端部には、ストッパー12とは別に溶鋼排出孔6を閉鎖可能なスライドバルブ17(スライドプレート)が設けられている。
上記した真空上注ぎ鋳造装置1を用いて溶鋼Xの鋳込みを行うにあたっては、溶鋼処理工程で精錬された溶鋼Xが装入された取鍋2を鋳造ステーションに移動させる。取鍋2内の溶鋼Xを中間鍋4に装入し、溶鋼排出孔6やスライドバルブ17等を開放して中間鍋4内の溶鋼Xを真空タンク15の鋳型14に注入する。中間鍋4内の溶鋼Xを鋳型14に注入しているときには、真空装置13(真空タンク15)が真空状態とされているため、落下中の溶鋼流滴から水素等が脱ガスされる。
また、中間鍋4に貯留した溶鋼Xの保温の確保や溶鋼Xの酸化を防止するために、予め保温材(図示せず)を中間鍋4に投入し、溶鋼Xの液面(湯面)上に滞留させるようにしている。
さて、上記の「発明が解決しようとする課題」で詳細を述べたように、例えば特許文献1〜3などの従来手法で溶鋼Xの鋳込みを行った場合、溶鋼Xの表面に浮遊しているスラグなどの浮上物の流出を防止することはできるが、溶鋼排出孔6周囲における渦流によるスラグ流出のみしか着目されていなかったので、一度浮上分離した非金属介在物が(単に、介在物と呼ぶこともある。)水平流によって溶鋼X中への再懸濁および鋳型への流出を防止することは困難であった。
詳しくは、鋳込み末期にて実施される残鋼においては、中間鍋4内における残鋼(溶鋼X)の液面が通常操業時より低くなっている。このように中間鍋4内における溶鋼Xの液面(湯面)が低くなると、湯面と段差部7の距離が短くなり速い水平流が発生する。この水平流によって一度浮上した介在物が再度溶鋼X中に再懸濁し、中間鍋4の底部5に備えられた溶鋼排出孔6を経由して懸濁した非金属介在物が鋳型14へ流出するようになる。
なお、鋳込み末期とは、鋳型14に着目した場合、溶鋼Xの湯面が鋳型14上部の押湯部に差し掛かり、中間鍋4からの溶鋼Xの注入を停止する時期のことである。言い換えれば、鋳込み末期とは、鋳型14内における溶鋼Xの注入量が所定の量になったとき、溶鋼Xの注入を停止する時期のことである。
そこで、本願出願人は、非金属介在物の流出防止を実現すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、残鋼時つまり鋳込み末期で溶鋼Xの深さHが低くなると、段差部7の上縁8上において水平流(溶鋼Xが流路の断面積を通過する際の水平方向を向く流れ)が発生していることを確認した。
なお、水平流とは、溶鋼Xが段差部7の上面から溶鋼排出孔6へ向かう際、段差部7の上縁8に対して横切る溶鋼Xの流れのことである。すなわち水平流とは、段差部7の上縁8に対して交差する方向を向く溶鋼Xの流れのことである。
この水平流は、残鋼時において、その流速vが速いと溶鋼Xの液面上における介在物の浮上分離層からの介在物の再懸濁・流出を引き起こす原因となり、従来技術のように、溶鋼排出孔6周囲のスラグ流出だけの着目では、一度浮上分離した非金属介在物が水平流によって溶鋼X中への再懸濁および鋳型へ流出することを防止することができない。それ故、非金属介在物が鋳造される鋼塊に悪影響を与えることとなり、その鋼塊の清浄度を担保することは困難である。
そこで、この水平流を正確にコントロールすることが非金属介在物の鋳型14への流出を大幅に低減することが可能であることを知見した。すなわち、溶鋼Xの水平流が中間鍋4の操業に大きく関係するファクタであることを見出した。
このような理由により、本実施形態の中間鍋4の操業方法においては、溶鋼Xを鋳型14に注入する際、中間鍋4内における溶鋼Xの水平方向の流れ(水平流)に着目し、その水平流に基づいて中間鍋4の操業条件を定義している。
以下に、本実施形態における中間鍋4の操業条件、すなわち操業方法について、詳細に述べる。
本実施形態における中間鍋4の操業方法は、底部5の一部に、式(2)を満たす高さを有する段差部7を備えると共に、段差部7が設けられていない底部5の他部に溶鋼排出孔6が備えられた中間鍋4を用いて溶鋼Xを鋳型14に注入して造塊するに際しては、鋳込み末期における中間鍋4内での溶鋼Xの深さH(m)と、鋳型14への鋳込み流量Q(m/s)とが、式(1)、式(3)を満たすように溶鋼Xを鋳込むこととしている。
具体的には、本実施形態の中間鍋4は、鋳鍛鋼品用の大型鋼塊の製造に用いられるものであり、容量は20〜100tonの範囲である。なお、鋳造される鋼塊の重量及び鋼種は、本発明によって規定されるものではない。
次に、中間鍋4の内部の寸法の定義について、詳細に説明する。
図2、図3に示すように、中間鍋4の底面に形成された段差部7の高さをh(m) とし、非段差部10から段差部7の上面に至るまでの距離と定義する。すなわち、段差部7の高さhは、段差部7と非段差部10との高低差によって構成される凹部の深さともいえる。
溶鋼Xが鋳型14に上注ぎ注入される鋳込みの時間が経つに従って低下する中間鍋4内における溶鋼Xの深さをH(m) とし、非段差部10から溶鋼Xの液面までの距離(溶鋼液深)と定義する。
なお、鋳込み末期においては取鍋2から中間鍋4へ溶鋼Xの移注がなくなり、鋳型14への鋳込みのみが行われている。そのため、中間鍋4の溶鋼量は減少し、それにともない溶鋼Xの深さH(湯面)は浅くなる。なお、溶鋼Xの深さHの定義に関しては、操業中において、時々刻々と変化する溶鋼Xの湯面高さの状態を対象としている。
さて、溶鋼Xが段差部7から溶鋼排出孔6へ向かう際、段差部7の上縁8を横切って通過する溶鋼Xの流れを水平流とする。その水平流の断面積は、段差部7の上縁8において鉛直上方向に切った断面積であって、溶鋼Xの深さHと段差部7の高さhとの差と、段差部7の上縁8長さの合計を掛け合わせた値で、例えば図2中のグレー色で囲んだ範囲である。
そして、水平流の断面積における水平方向の長さ、言い換えれば、段差部7の上縁8長さ(堰11以外の上縁8長さ)の合計を、流路長さL(m)と定義する。
例えば、図3に示すように、上方平面視で略扇形状とされた段差部7と、その段差部7で且つ略扇形状の中心に立設された堰11とを備える中間鍋4の場合は、流路長さLは堰11の両端に形成される段差部7の上縁8(L1,L2)の合計と定義される(L=L1+L2)。
一方、図4に示すように、上方平面視で溶鋼排出孔6を囲むように形成された段差部7と、底部5の中心に立設された堰11とを備える中間鍋4の場合は、流路長さLは溶鋼排出孔6を囲む外周囲と定義される。
また、図5に示すように、上方平面視で略扇形状とされた段差部7のみを備える中間鍋4の場合は、流路長さLは段差部7の上縁8(L1,L2,L3)の合計と定義される(L=L1+L2+L3)。
このように、中間鍋4内に段差部7を設け、非段差部10側が凹状となるようし、流路長さLを明確に定義することで、中間鍋4内部の形状(堰11が設けられているか否か)如何によらないパラメータとすることができる。
中間鍋4から鋳型14へ流し込む単位時間あたりの溶鋼体積を、鋳込み流量Q(m/s)と定義する。鋳込み流量Qは、溶鋼排出孔6上部にあるストッパー12の開度調整や、下部にあるスライドゲート17(スライドバルブ)やスライディングノズル18などの開度調整により調整することができる。
ここで、溶鋼Xの深さH、段差部7の高さh、流路長さL、鋳込み流量Qの関係を式(1)と定義した理由について述べる。
前述で詳細に説明したが、本発明では、中間鍋4の操業中において、溶鋼X中の非金属介在物が鋳型14へ流出することを防止するためには、段差部7の上縁8を通過する水平流の流速(平均断面流速)vをコントロールする。ここで、水平流の流速vは、以下のように定義される。
溶鋼Xが段差部7の上面側から、非段差部10に設けられている溶鋼排出孔6に流れ込む際、段差部7の上縁8を横切るように通過する水平流の断面積は、((H−h)×L)で表される(図2中のグレー色)。また、図3に示すように、鋳込み流量Qで鋳込みを行っている場合、段差部7の上面から非段差部10に流れ込む流量も等しくQとなる。
よって、鋳込み流量Qを水平流の断面積((H−h)×L)で除すことで、水平流の流速vを算出することができる。本実施形態においては、鋳込み流量Qを水平流の断面積((H−h)×L)で除した値、すなわち水平流の流速vを0.12(m/s)未満と定義した。
定義した式(1)を満たす水平流となるように鋳込む、すなわち水平流の流速vを0.12(m/s)より遅くすると、一度浮上分離した非金属介在物の再懸濁を防止することができるので非金属介在物の流出を防止することができると共に、中間鍋4に残す溶鋼量(残鋼量)を極限まで減らすことが可能となる。それ故、鋼塊の製品清浄度の悪化を防止することができる。
なお、鋳込み流量Qを原理的にゼロにすることはできるが、これは鋳込みを行っていない状況を示すので、実際には実施されることはない。また、実操業上、鋳型14への鋳込み溶鋼量が少なすぎる、つまり水平流の流速vがゼロに近い場合、溶鋼排出孔6付近で溶鋼Xが凝固し詰まってしまう虞や、溶鋼Xの流量が少なすぎるために鋳込み流量Qが安定せず、断続的に溶鋼Xが供給される懸念がある。
この懸念を鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、本願発明者は鋳込み流量Qの下限を、0.0006(m/s) と導出した。
次に、段差部7の高さhを式(2)とした理由について述べる。
通常、中間鍋4は繰り返し使用されるため、使用頻度が多くなると耐火物の溶損によって、段差部7の高さhがなくなるため、残鋼の低減効果が持続しない。このことより、本実施形態においては、段差部7の高さhが0.02(m)以上必要であると知見し、下限と定義した。
一方で、段差部7の高さhを際限なく増加させる(高くする)と、後述する式(3)を満たすために溶鋼Xの深さHも大きな値となるので、残鋼量を増加させることに繋がってしまう。
例えば、鋳込み流量Qと流路長さLを同じ数値とした場合、段差部7の高さhを大きくすると溶鋼Xの深さHも大きくせねばならず、定常時の溶鋼Xの液面が上昇する。この場合、中間鍋4の上端から液面までの距離が短くなり、溶鋼飛散物が鍋蓋や鍋外に飛び出しやすくなり、操業上、問題が生じる。
このことより、式(1)を変形して(h<H−Q/(0.12L))とし、中間鍋4の操業条件、つまり鋳込み流量Qや流路長さLに基づいて、段差部7の高さhの上限を定めることとしている。
さらに、溶鋼Xの深さHと段差部7の高さhとの関係を、式(3)とした理由について述べる。
溶鋼Xの深さHと段差部7の高さhとの差がゼロ以下(H−h≦0)となるまで溶鋼Xの深さHが浅くなった、すなわち溶鋼Xの液面が段差部7の上面より低くなった場合、必ず介在物浮上分離層の再懸濁が引き起こる。このような介在物の再懸濁が起こってしまうと、介在物が流出する虞があるので、溶鋼Xの深さHは段差部7の高さhよりも高くする必要がある。それ故、式(3)に表すように、溶鋼Xの液面が段差部7の上面より高くなるように定義した。
以上述べたように、中間鍋4の操業条件を明確に定義することで、鋼塊を鋳造する際に、溶鋼X中に懸濁した非金属介在物が取鍋2から中間容器を経由して鋳型14内に流出するまでに、中間容器内で湯面上に浮上した介在物を分離除去することができ、品質欠陥の原因となる非金属介在物を減少させることができる。つまり、本実施形態の中間鍋4の操業方法は、鋼塊の高清浄度化を可能とする鋳込み手法である。
[実施例]
以下に、本実施形態の中間鍋4の操業方法の実施例と、対比するための比較例について、図と表に基づいて説明する。
まず、本実施形態の中間鍋4の操業方法における実施例と、対比するための比較例の実施条件について、以下に述べる。
本実施形態の中間鍋4の操業方法を評価するにあたり、介在物流出評価実験(水モデル実験)を行った。詳しくは、介在物を模した模擬粒子を混入させた水を溶鋼Xと見立てると共に、実機の中間鍋4の形状を模して製作した鍋模型を用いて、水モデルにおける水平流による介在物巻き込み状況、すなわち介在物の流出状況を評価した。
鍋模型4は、所定の条件を満たした形状(相似形状)で、且つ内部を観察するために、透明のアクリル製のものを使用した。また、鍋模型4の内径Dを、390(mm)とした。
なお、水モデルの流動状態に関し、無次元数として、式(4)で表されるFr数(フルード数)を実機と合わせることで、実際の中間鍋4の内径と異なっていても、実操業における溶鋼Xの流動状態の相似条件を満たすこととなる。このことから、水モデルの水平流が、実操業における溶鋼Xの水平流と同じとなることが保証される。つまり、実験の鍋模型4のサイズが同一であっても、移注流速uを変えることで、任意のサイズで中間鍋4の操業実験を行うことができる。
用意した鍋模型4に介在物を模した模擬粒子を懸濁させた蒸留水を、溶鋼Xの深さHが340〜390(mm)の範囲となるまで注ぎ、模擬粒子を浮上分離させる。なお、介在物を模した模擬粒子として、ポリスチレン粒子を使用した。
そして、鍋模型4内から所定の流量で水を外部に排出する。このとき、鍋模型内の水モデルが外部へ排出され終わるまで、鍋模型4内部を高速度カメラで動画を撮影する。
続いて、撮影した動画を用いて、鍋模型4内から外部へ排出される際における水モデルの水平流を解析する。水平流を解析するにあたっては、まず高速度カメラにて撮影した動画から、一定間隔、例えば水モデルの液面が特定の溶鋼Xの深さHに達したときの介在物浮上分離層における介在物の再懸濁の有無を確認する。
再懸濁の有無の確認後、水モデル実験で得られた数値(鍋模型4の縮尺や寸法、Fr数など)を、実機の設備スケールに換算し、実機の中間鍋4の寸法及び水平流の流速vを算出する。
本実施例においては、上方平面視での段差部7の形状及び、高さhが異なる12個の鍋模型4を用いて、水モデル実験を行った。なお、図6〜図15、表1〜表6に記載されている数値は、すべて実機スケールに換算済みである。
No.1〜No.12の鍋模型4を用いた水モデル実験においては、高速度カメラにて撮影した水モデルの流れの動画を用い、溶鋼Xの深さHと段差部7の高さhとの差(H−h)が0.01(m)減ってゆくごとに水平流を観察して、介在物の流出を解析することとしている。
まず、本実施例の水モデル実験を、段差部7形状の依存性の観点から考察し、その結果について述べる。
図6は、上方平面視で開き角が90°の略扇形状である段差部7(形状1)を備えた、No.1〜No.3の鍋模型(中間鍋4)の概略を示した図である。
表1は、水モデル実験において、水モデルでNo.1〜No.3の各鍋模型4から外部へ排出され終わるまで撮影された動画を解析して得られた数値を基に、介在物の流出の有無を確認したものである。
図7は、表1に示した介在物の流出の有無を、段差部7形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。
表1に示すように、No.1の鍋模型4は、流路長さLが1.53(m)、高さhが式(2)を満たすように0.15(m)で形成されている。また、鋳込み流量Qは0.0128(m/s)で、一定としている。なお、以降に述べるNo.2〜No.10の鍋模型4を用いた水モデル実験においても、鋳込み流量QはNo.1の水モデル実験と同様の値で、一定としている。
No.1の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.25(m)のとき、水平流の流速vは、0.034(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.119(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.06(m)のとき、水平流の流速vが0.14(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることを確認した(×印)。
次いで、No.2の鍋模型4は、流路長さLが1.53(m)、高さhが式(2)を満たすように0.18(m)で形成されている。
No.2の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.22(m)のとき、水平流の流速vは、0.038(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.119(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.06(m)のとき、水平流の流速vが0.14(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できる(×印)。
さらに、No.3の鍋模型4は、流路長さLが1.53(m)、高さhが式(2)を満たすように0.216(m)で形成されている。
No.3の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.18(m)のとき、水平流の流速vは、0.046(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.113(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できる(○印)。
一方、(H−h)が0.06(m)のとき、水平流の流速vが0.131(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できる(×印)。
図7に示すように、段差部7形状の依存性の観点から考察すると、No.1〜No.3の鍋模型(中間鍋4)のような段差部7の形状如何にもかかわらず、式(1)〜式(3)すべてを満たすように、水平流の流速vを0.12(m/s)より遅くして鋳込むことで、介在物の鋳型14への流出を防止することができる。
図8は、上方平面視で開き角が120°の略扇形状である段差部7(形状2)を備えた、No.4〜No.6の鍋模型(中間鍋4)の概略を示した図である。
表2は、水モデル実験において、水モデルでNo.4〜No.6の各鍋模型4から外部へ排出され終わるまで撮影された動画を解析して得られた数値を基に、介在物の流出の有無を確認したものである。
図9は、表2に示した介在物の流出の有無を、段差部7形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。
表2に示すように、No.4の鍋模型4は、流路長さLが1.44(m)、高さhが式(2)を満たすように0.15(m)で形成されている。
No.4の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.25(m)のとき、水平流の流速vは、0.036(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.08(m)のとき、水平流の流速vが0.111(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.127(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
次いで、No.5の鍋模型4は、流路長さLが1.44(m)、高さhが式(2)を満たすように0.18(m)で形成されている。
No.5の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.22(m)のとき、水平流の流速vは、0.040(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.08(m)のとき、水平流の流速vが0.111(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.127(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
さらに、No.6の鍋模型4は、流路長さLが1.44(m)、高さhが式(2)を満たすように0.216(m)で形成されている。
No.6の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.18(m)のとき、水平流の流速vは、0.048(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.08(m)のとき、水平流の流速vが0.106(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.12(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
図9に示すように、段差部7形状の依存性の観点から考察すると、No.4〜No.6の鍋模型(中間鍋4)のような段差部7の形状如何にもかかわらず、式(1)〜式(3)すべてを満たすように、水平流の流速vを0.12(m/s)より遅くして鋳込むことで、介在物の鋳型14への流出を防止することができる。
図10は、上方平面視で開き角が150°の略扇形状である段差部7(形状3)を備えた、No.7の鍋模型(中間鍋4)の概略を示した図である。
表3は、水モデル実験において、水モデルでNo.7の鍋模型4から外部へ排出され終わるまで撮影された動画を解析して得られた数値を基に、介在物の流出の有無を確認したものである。
図11は、表3に示した介在物の流出の有無を、まとめたグラフである。
表3に示すように、No.7の鍋模型4は、流路長さLが1.45(m)、高さhが式(2)を満たすように0.15(m)で形成されている。
No.7の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.15(m)のとき、水平流の流速vは、0.059(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.08(m)のとき、水平流の流速vが0.110(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.126(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
図11に示すように、段差部7形状の依存性の観点から考察すると、形状3で形成された段差部7を備えるNo.7の中間鍋4であっても、式(1)〜式(3)満たすように、すなわち水平流の流速vを0.12(m/s)より遅くして鋳込むことで、介在物の鋳型14への流出を防止することができる。
図12は、上方平面視で開き角が180°の略扇形状である段差部7(形状4)を備えた、No.8〜No.10の鍋模型(中間鍋4)の概略を示した図である。
表4は、水モデル実験において、水モデルがNo.8〜No.10の各鍋模型4から外部へ排出され終わるまで撮影された動画を解析して得られた数値を基に、介在物の流出の有無を確認したものである。
図13は、表4に示した介在物の流出の有無を、段差部7形状の依存性に基づいてまとめたグラフである。
表4、図12に示すように、No.8の鍋模型4は、流路長さLが1.48(m)、高さhが式(2)を満たすように0.15(m)で形成されている。
No.8の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.15(m)のとき、水平流の流速vは、0.058(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.08(m)のとき、水平流の流速vが0.108(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.124(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
次いで、No.9の鍋模型4は、流路長さLが1.48(m)、高さhが式(2)を満たすように0.18(m)で形成されている。
No.9の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.17(m)のとき、水平流の流速vは、0.051(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.08(m)のとき、水平流の流速vが0.108(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.124(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
さらに、No.10の鍋模型4は、流路長さLが1.48(m)、高さhが式(2)を満たすように0.216(m)で形成されている。
No.10の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.18(m)のとき、水平流の流速vは、0.047(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.117(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.06(m)のとき、水平流の流速vが0.135(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
図13に示すように、段差部7形状の依存性の観点から考察すると、No.8〜No.10の中間鍋4のような段差部7の形状如何にもかかわらず、式(1)〜式(3)すべてを満たすように、水平流の流速vを0.12(m/s)より遅くして鋳込むことで、介在物の鋳型14への流出を防止することができる。
ここで、本実施例の水モデル実験を、鋳込み流量Qの依存性の観点から考察し、その結果について述べる。
表5は、水モデル実験において、水モデルがNo.11、No.12の各鍋模型4から外部へ排出され終わるまで撮影された動画を解析して得られた数値を基に、介在物の流出の有無を確認したものである。
図14は、表5に示した介在物の流出の有無を、鋳込み流量Qの依存性に基づいてまとめたグラフである。
表5に示すように、No.11及び、No.12の鍋模型4は、段差部7が共に形状1であって、流路長さLが1.53(m)、高さhが式(2)を満たすように0.216(m)で形成されている。
No.11の鍋模型4を用いた水モデル実験において、鋳込み流量Qは0.0193(m/s)[1.16(m/min)]である。
No.11の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.18(m)のとき、水平流の流速vは、0.069(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.11(m)のとき、水平流の流速vが0.111(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.1(m)のとき、水平流の流速vが0.121(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
次いで、No.12の鍋模型4を用いた水モデル実験において、鋳込み流量Qは0.0064(m/s)[0.39(m/min)]である。
No.12の鍋模型4を用いた水モデル実験において、(H−h)が0.18(m)のとき、水平流の流速vは、0.023(m/s)と確認できる。同様に(H−h)が0.01(m)減少ごとに水平流の流速vを観察すると、(H−h)が0.04(m)のとき、水平流の流速vが0.096(m/s)となり、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
一方、(H−h)が0.03(m)のとき、水平流の流速vが0.124(m/s)となり、介在物が流出してしまっていることが確認できた(×印)。
表1に示すように、鋳込み流量Qが0.0128(m/s)[0.77(m/min)]であるNo.3の鍋模型4を用いた水モデル実験においても、同様に観察すると、(H−h)が0.07(m)のとき、水平流の流速vが0.113(m/s)で、介在物の流出が防止されていると確認できた(○印)。
図14に示すように、鋳込み流量Qの依存性の観点から考察すると、鋳込み流量Qが同じ値(一定値)であっても、式(1)〜式(3)すべてを満たさないと、介在物の流出が発生してしまうことが考えられる。すなわち、式(1)〜式(3)すべてを満たす、水平流の流速vを0.12(m/s)より遅くして鋳込むことで、介在物の鋳型14への流出を防止することができる。
まとめると、本実施形態における中間鍋4の操業方法は、段差部7の形状、及び鋳込み流量Qの依存性はなく、式(1)〜式(3)満たすようにしておけば、介在物の鋳型14への流出を防止することができる。
さて、以下に本実施形態の中間鍋4の操業方法における残鋼低減効果を述べる。
表6は、段差部7の高さhに対する、残鋼低減効果を示したものである。
図15は、表6に示した段差部7の高さhに対する規格化残鋼量(%)をまとめたグラフである。
表6及び図15を参照するに、上方平面視で形状1〜3で、且つ高さhが異なる段差部7を備える各鍋模型(中間鍋4)においては、水平流の流速vを0.12(m/s)未満にすると、介在物の流出を防止しつつ、残鋼量が低減されていることが確認できる。
すなわち、以上述べた本実施形態の中間鍋4の操業方法で定義した式(1)〜式(3)を満たすように、実操業を行えば、段差部7の形状に拘わらずに、介在物の流出を防止しつつ、残鋼を少なくすることが可能となる。
また、表6及び図15示すように、本実施形態の中間鍋4の操業方法で定義した式(1)〜式(3)、すなわち水平流の流速vを0.12(m/s)未満にすることにより、段差部7の高さhの上限(h=0.145m)が定義されることとなる。
以上述べたように、本発明よれば、溶鋼Xを鋳型14に注入して鋳鍛鋼品用の大型鋼塊を製造する際に、スラグ流出の抑制のみならず、製品品質を低下させる介在物が鋳型14に流出することを防止して高清浄度化を実現し、かつ残鋼低減を行うことができる。すなわち、本発明は、鋼塊の鋳造において、介在物よる欠陥の発生を防止することができ、溶鋼歩留ならびに製品品質を向上させることが可能である。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
1 真空上注ぎ鋳造装置
2 取鍋
3 ノズル
4 溶鋼用中間容器(中間鍋、鍋模型)
5 底部
6 溶鋼排出孔
7 段差部
8 上縁
9 段差側壁
10 非段差部
11 堰
12 ストッパー
13 真空装置
14 鋳型
15 真空タンク
16 開口部
17 スライドバルブ
18 スライディングノズル
X 溶鋼

Claims (1)

  1. 底部の一部に、式(2)を満たす高さを有する段差部を備え、前記段差部は上面平面視で扇形状であって当該段差部の開き角が90°〜180°であり、且つ前記段差部が設けられていない前記底部の他部に溶鋼排出孔が備えられた溶鋼用中間容器を用いて溶鋼を鋳型に注入して造塊するに際しては、
    鋳込み末期における前記溶鋼用中間容器内での溶鋼の深さをH(m)と、前記鋳型への鋳込み流量をQ(m/s)とが、式(1)、式(3)を満たすように溶鋼を鋳込む
    ことを特徴とする溶鋼用中間容器の操業方法。
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