以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置としてのデジタル一眼レフカメラ本体(以下、カメラという)1および交換レンズ5の中央断面図であり、図2はカメラ1および交換レンズ5の斜視図である。
交換レンズ5は、カメラ1側のマウント部11と交換レンズ5側のマウント部51によって、カメラ1に対して着脱可能に固定される。交換レンズ5がカメラ1に装着されると、カメラ1の接点部12と交換レンズ5の接点部52が電気的に接続される。これにより、カメラ1は、交換レンズ5が装着されたことを検知する。また、接点部12および52を介してカメラ1から交換レンズ5へ電力の供給や交換レンズ5を制御するための通信を行う。
交換レンズ5のフォーカスレンズ53を透過した光束は、カメラ1のメインミラー13に入射する。メインミラー13は、メインミラー保持枠131に保持され、回転軸部131aによってミラーアップ位置(第1の位置)とミラーダウン位置(第2の位置)との間を回動可能に軸支されている。
メインミラー13はハーフミラーとなっており、メインミラー13を透過した光束は、サブミラー14により下方へ反射され、焦点検出ユニット15へと導かれる。
サブミラー14は、サブミラー保持枠141に保持されている。サブミラー保持枠141は、ヒンジ軸(不図示)によってメインミラー保持枠131に対して回動可能に軸支されている。
焦点検出ユニット15は、フォーカスレンズ53のデフォーカス量を検出し、フォーカスレンズ53が合焦状態となるフォーカスレンズ53の駆動量を算出する。交換レンズ5は、算出された駆動量を接点部12および52を介して受信する。交換レンズ5は、受信した駆動量に基づいてモータ(不図示)を制御し、フォーカスレンズ53を駆動することで焦点調節を行う。
メインミラー13により反射された光束は、光学ファインダ16へと導かれる。光学ファインダ16は、ピント板17、ペンタプリズム18、接眼レンズ19で構成されている。メインミラー13によって光学ファインダ16へと導かれた光束は、ピント板17に被写体像を結像する。使用者は、ペンタプリズム18および接眼レンズ19を介してピント板17上の被写体像を観察可能である。
サブミラー14の後方にはシャッタユニット20が配置されている。シャッタユニット20の後方には、光学ローパスフィルター21、撮像素子ホルダー22、撮像素子23、カバー部材24、ゴム部材25が配置されている。撮影時には、光学ローパスフィルター21を透過した光束が、撮像素子23へと入射する。撮像素子ホルダー22は、ビス(不図示)によってカメラ1の筐体に固定されている。撮像素子23は、撮像素子ホルダー22によって保持されている。カバー部材24は、撮像素子23を保護している。ゴム部材25は、光学ローパスフィルター21を保持するとともに、光学ローパスフィルター21と撮像素子23の間を密閉する。
表示モニタ26は、LCD(液晶表示器)等で構成されたモニタであり、撮影画像の表示や、カメラ1の各種設定状態の表示を行う。
レリーズボタン31は2段スイッチとなっているレリーズボタンである。レリーズボタン31が1段目まで押し込まれた状態を半押し状態といい、この半押し状態で信号SW1(第1の信号)が発生する。信号SW1が発生すると、測光および焦点検出が行われる。レリーズボタン31が半押し状態からさらに押し込まれると、レリーズボタン31が2段目まで押し込まれた全押し状態となる。この全押し状態で信号SW2(第2の信号)が発生する。信号SW2が発生すると、シャッタユニット20が駆動され、撮影が行われる。モードダイアル(設定手段)32は回転操作可能なダイアルである。本実施形態のカメラ1は、モードダイアル32の回転位置によって、ミラー駆動モードが「通常モード」、「サイレントモードA」、「サイレントモードB」の何れかに切り換えられる。
図3は、シャッタユニット20とメインミラー13の分解斜視図である。
シャッタ地板201は、カメラ1内のミラーボックス(不図示)に固定されており、後幕羽根群(羽根部材)212の駆動機構を構成する各部品が取り付けられている。シャッタ地板201には、被写体光束が通過する開口部(露光用開口)201eが形成されている。後幕羽根群212が展開されたときには開口部201eは閉鎖され、後幕羽根群212が重畳されたときには開口部201eは開放される。なお、後幕羽根群212は、通常閉鎖されている。
ミラー駆動レバー(ミラー駆動部材)202は、MG地板203の軸部203aを中心にして回動可能に支持されている。ミラー駆動レバー202に形成された当接部202aは、メインミラー保持枠131の被駆動部である軸部131bと当接する。メインミラー保持枠131は、ミラー駆動レバー202の動きに追従するようにバネ(不図示)によって付勢されている。
カムギア(チャージ部材)204は、シャッタ地板201に形成された軸201bを中心に回動可能に支持されている。
後幕駆動レバー(駆動部材)205は、シャッタ地板201に形成された軸201aを中心にして回動可能に支持されている。後幕駆動レバー205には円筒部205aが形成されており、羽根レバー(羽根移動部材)206は円筒部205aに回動可能に支持されている。羽根レバー206は、後幕羽根群212が開口部201eを閉鎖する閉鎖位置と後幕羽根群212が開口部201eを開放する開放位置との間を回動する。
緊定レバー(係止部材)207は、シャッタ地板201に形成された軸201cを中心にして回動可能に支持されている。緊定レバー207に設けられたカムフォロア207aは、カムギア204に設けられた緊定カム204cと当接する。カムギア204が回動すると、カムフォロア207aが緊定カム204cをトレースして、緊定レバー207は搖動する。
バウンドロックレバー(規制部材)208は、シャッタ地板201に形成された軸201dを中心にして回動可能に支持されている。緊定レバー207がバウンドロックレバー208に設けられたコロ208aを押圧することで、バウンドロックレバー208は回動する。バウンドロックレバー208は、羽根レバー206の移動を規制する規制位置と羽根レバー206の移動規制を解除する解除位置との間を移動する。
アマチャ209は後幕駆動レバー205に設けられており、電磁石210はMG地板203に設けられている。電磁石210は、図6(a)に示されるように、ヨーク210aと、ヨーク210aの外周に設けられたコイル210bで構成されている。コイル210bに電圧を印加すると、ヨーク210aに磁力が発生し、この磁力によってアマチャ209を吸着することができる。
モータ211は、シャッタ地板201に取り付けられている。モータ211の駆動力はシャッタ地板201の背面側に配置されたギア列213を介してカムギア204に伝達され、カムギア204が回転する。この回転によって、ミラー駆動レバー202、後幕駆動レバー205、羽根レバー206、緊定レバー207、バウンドロックレバー208の回動動作が行われ、メインミラー13の回動と後幕羽根群212の往復動作を行うことができる。また、モータ211には端子211a、211bが設けられている。モータ211に流れる電流の向きが切り換わるように端子211a、211bにかける電圧を設定することで、モータ211の駆動方向を切り換えることが可能である。
次に、シャッタユニット20の構成について図4〜図6を参照しながら詳細に説明する。
図4はシャッタユニット20の主要部材のみを抜き出した図であり、図4(a)は被写体側(図2中のメインミラー側)から見た平面図、図3(b)は被写体側から見た斜視図、図4(c)は撮影者側から見た斜視図である。
図5はシャッタユニット20の主要部材のみを抜き出した図であり、図5(a)は図4のA方向から見た側面図、図5(b)は図4のB方向から見た側面図である。
図6は、シャッタユニット20の一部拡大図である。図6(a)は、被写体側から見たシャッタユニット20の略右半分だけを示した平面図である。ミラー駆動レバー202は、主要形状のみを記載している。図6(b)は、図6(a)からミラー駆動レバー202を省略し、カムギア204のみ図5(a)の断面C−Cで切断した状態で示した図である。なお、図面の見易さのために不要な部品は省略して記載している。
なお、図4〜図6は、すべてカメラ1が停止しているときのシャッタユニット20の状態を表わしている。
ミラー駆動レバー202には、ミラー駆動バネ(付勢部材)Sp1が取り付けられている。図6において、ミラー駆動バネSp1は、ミラー駆動レバー202を時計回り方向(メインミラー13をアップさせる方向)に付勢している。また、カムフォロア202bはミラーカム204aに設けられた第1ミラーカム面204a1と当接している。ミラーカム204aは、カムフォロア202bを介してミラー駆動レバー202のミラー駆動バネSp1のチャージ動作を行う。
後幕駆動レバー205には、後幕駆動バネ(第2の付勢部材)Sp2が取り付けられている。図6において、後幕駆動バネSp2は、後幕駆動レバー205を時計回り方向(後幕羽根群212を展開させる方向)に付勢している。また、後幕駆動レバー205に設けられたコロ205bは、カムギア204に設けられた後幕カム(駆動カム)204bと当接している。図6において、後幕駆動レバー205は、オーバーチャージ状態となっている。後幕カム204bは、コロ205bを介して、後幕駆動レバー205に取り付けられた後幕駆動バネSp2のチャージ動作を行う。なお、後幕駆動バネSp2の付勢力は、後述するサブアーム212bの羽根レバー付勢バネSp5の付勢力より強いものになっている。
また、後幕駆動レバー205にはアマチャ支持部205cが設けられており、アマチャ支持部205cには貫通孔部(不図示)が形成されている。貫通孔部には、アマチャ209に一体的に取り付けられ、貫通孔部の内径よりも大きなフランジ部を有するアマチャ軸209aが係合している。アマチャ軸209aは、アマチャ209の吸着面に対して略直交方向に延びている。アマチャ209とアマチャ支持部205cとの間にはアマチャ離反バネ(不図示)が配置されている。マチャ離反バネは、アマチャ209およびアマチャ支持部205cを互いに引き離す方向に付勢している。
羽根レバー206に設けられた駆動ピン206aは、シャッタ地板201に形成された溝部201fを貫通し、後幕羽根群212のメインアーム212aに形成された穴212a1と係合している。後幕羽根群212は、メインアーム212a、サブアーム212b、1番羽根212c、2番羽根212d、3番羽根212e、羽根カシメダボ212fで構成されており、平行リンク機構を形成している。また、サブアーム212bには羽根レバー付勢バネ(第5の付勢部材)Sp5が取り付けられている。羽根レバー付勢バネSp5は、後幕羽根群212を重畳する向きの力を付勢している。駆動ピン206aは穴212a1と係合しているため、羽根レバー206とメインアーム212aは一体的に動作する。羽根レバー206は、溝部201fによって回動範囲が制限されている。また、羽根レバー206に設けられた突出部206cが後幕駆動レバー205に設けられた突起部205dと当接することで、羽根レバー206は後幕羽根群212が展開する際に後幕駆動レバー205と一体的に回動する。
緊定レバー207には、緊定レバー付勢バネ(第3の付勢部材)Sp3が取り付けられている。図6において、緊定レバー付勢バネSp3は、緊定レバー207を反時計回り方向に付勢している。図4〜図6においては、カムフォロア207aは緊定カム(係止カム)204cには当接しておらず、緊定レバー207の係止部207bが羽根レバー206の壁部(凸部)206dに突き当たった状態となっている。また、係止部207bは、羽根レバー206に設けられた被係止部206bを係止している。そのため、後幕羽根群212は、重畳方向に移動することなく展開状態を保っている。
このとき、電磁石210とアマチャ209との吸着面と、係止部207bおよび被係止部206bの間に壁部206dが設けられている。係止部207bと被係止部206bとの間で係止と係止解除を繰り返すことで、係止部207bおよび被係止部206bが摩耗し、摩耗粉が発生することが考えられる。しかし、上述した位置に壁部206dが形成されることで、発生した摩耗粉が電磁石210とアマチャ209との吸着面に付着しにくくなっている。また、電磁石210とアマチャ209との吸着面と係止部207bおよび被係止部206bの係止面が対向していないため、発生した摩耗粉が、電磁石210とアマチャ209との吸着面に付着しにくくなっている。
また、壁部206dは、図5に示すように、フォトインタラプタ215の遮光用の壁としての役割も持っている。フォトインタラプタ215からの出力光を壁部206dが遮光したり、通過させたりすることによって、羽根レバー206の位置検知が可能となっている。
バウンドロックレバー208には、ねじりコイルバネ(第4の付勢部材)Sp4が取り付けられている。図6において、ねじりコイルバネSp4は、バウンドロックレバー208を反時計回り方向に付勢している。また、図6において、バウンドロックレバー208は、羽根レバー206の円弧部206eに接触した状態となっている。緊定レバー207が搖動すると、緊定レバー207の突起部207cがコロ208aに当接して、バウンドロックレバー208は搖動する。
次に、実際に撮影を行う際のシャッタユニット20の動作について、図6〜図21を参照しながら説明する。
以下の説明において、連写駒速やレリーズタイムラグの速さを優先したミラー駆動モードを「通常モード」、連写駒速やレリーズタイムラグが遅い代わりに、ミラー作動音の静音化を目的としたモードを「サイレントモード」と呼ぶ。サイレントモードの中には、省電力を優先した「サイレントモードA」と、ミラー作動音はサイレントモードAと同等で、かつ、レリーズタイムラグの短縮を優先した「サイレントモードB」がある。ここで、ミラー作動音とは、メインミラー保持枠131が撮影光路に対して進退動作を行う際に、メインミラー保持枠131とミラーボックスが衝突する際に発生する衝突音を指している。
また、カムギア204が被写体側から見て時計回りに回転することを正転、反時計回りに回転することを逆転と定義する。同様に、カムギア204が正転するときのモータ211の駆動方向を正転方向(第1の駆動方向)、カムギア204が逆転するときのモータ211の駆動方向を逆転方向(第2の駆動方向)と定義する。逆転方向は正転方向とは反対となる。
図7は、カムギア204のカム線図とモータ211の制御電圧、各位相でのメカの動作を一覧で示した図である。また、通常モードとサイレントモードA、Bそれぞれでの制御を一覧で示し、各ポイントに対応する図面番号(図6、図8〜21)も記載している。図7において、角度A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Aの順で進むことで、カムギア204が360度回転することを示している。また、図7において、BLはバウンドロックを示している。
図8〜図21は、シャッタユニット20の各動作状態を表した図である。図8〜図21において、図6と同じく各図(a)は、被写体側から見たシャッタユニット20の略右半分だけを示した平面図である。ミラー駆動レバー202は、主要形状のみを記載している。各図(b)は、各図の(a)からミラー駆動レバー202を省略し、カムギア204のみ図4(a)の断面C−Cで切断した状態で示した図である。なお、図面の見易さのために不要な部品は省略して記載している。
[通常モード(第1のミラー駆動モード)]
カメラ1が第1の状態である停止状態のとき、カムギア204は、図7の角度Aと角度Bの間で示されるカメラ停止状態(第1の位相)にある。図6は、角度Aの状態を示したものである。通常モードで撮影を行うときは、カメラ停止状態において、撮影者によりレリーズボタン31が半押しされると、信号SW1が発生し、信号SW1が検知されると、測光および焦点検出が行われる。
続いてレリーズボタン31が全押しされると、信号SW2が発生する。信号SW2が検知されると、コイル210bに通電することでアマチャ209とヨーク210aが吸着し、モータ211に正転方向の電圧を印加することでカムギア204が正転する。カムギア204が正転することで、カムギア204の角度は、角度B、C、D、E、Fと順番に進んでいく。
図8は、角度Cの状態を示しており、図6の状態からカムギア204が正転し、羽根レバー206と緊定レバー207の係止が外れた瞬間を表している。図8(b)において、緊定カム204cがカムフォロア207aを押圧することで緊定レバー207が時計回りに回転し、係止部207bが被係止部206bから外れた状態になっている。この状態を「緊定解除状態」と呼ぶ。
図9は、角度Dの状態を示しており、図8の状態から羽根レバー206が反時計まわりに回転した状態を表している。図8において緊定レバー207と羽根レバー206の係止が解除されたことにより、羽根レバー206は反時計回りに回転する。このとき、後幕羽根群212は、シャッタ地板201の開口部201eを覆った状態から開放した状態になる。この羽根レバー206の動作を「羽根リターン動作」と呼ぶ。
図6、図8では、バウンドロックレバー208は、羽根レバー206の円弧部206eに接触した状態で停止していた。図9では、羽根レバー206が反時計回りに回転したことでバウンドロックレバー208も反時計回りに回転し、バウンドロックレバー208のストッパー部208bがシャッタ地板201の突起部201gに当接した状態で止まっている。
羽根リターン動作を行った羽根レバー206は、突出部206cが後幕駆動レバー205の突起部205dに衝突しはねかえる、いわゆるバウンドを起こす。ただし、バウンドロックレバー208のロック部208cが羽根レバー206の時計回りの移動軌跡内に進入しているため、羽根レバー206の被ロック部206fがロック部208cと当接し、バウンド量が制限される。バウンド量が制限されるため、バウンド時間も抑制されることになる。一連の動作を「バウンドロック動作」と呼ぶ。
バウンドロックレバー208のストッパー部208bがシャッタ地板201の突起部201gに当接する位置が、羽根レバー206の開放位置から閉鎖位置への移動を規制する規制位置となる。羽根レバー206が閉鎖位置から開放位置へ移動した後、バウンドロックレバー208が羽根レバー206の移動軌跡内に進入することで、羽根レバー206の開放位置から閉鎖位置への移動を規制する。
また、図9では、カムフォロア207aは、緊定カム204cに形成された第2カム面204c2に当接している。すなわち、緊定レバー207は、図8の状態よりさらに時計回りに回転した状態となっている。
さらに、図9では、コロ205bは、後幕カム204bの後幕カム204bのカム面204b1から離反し、オーバーチャージ状態が解除されている。
図10は、角度Eの状態を示しており、ミラー駆動レバー202のカムフォロア202bがミラーカム204aの第1ミラーカム面204a1から脱落して時計回りに回転した状態を表している。このとき、ミラー駆動レバー202の当接部202aは、図10では不図示のメインミラー保持枠131の軸部131bと当接している。メインミラー保持枠131は、ミラーボックスに当接し、撮影光軸から退避した状態となっている。一連の動作を「ミラーアップ動作」と呼ぶ。
また、図10において、カムフォロア207aは、第2カム面204c2の端部に当接した状態になっている。つまり、緊定レバー207は、図9(角度D)から図10(角度E)の間では動いていない。
図11は、角度Fの状態を示しており、図10の状態から緊定レバー207およびバウンドロックレバー208が時計回りに回転した走行前待機状態(第2の状態)を示している。図10の状態から図11の状態に移動する過程で、カムフォロア207aが第2カム面204c2をトレースする状態から第1カム面204c1をトレースする状態となることにより、緊定レバー207は時計回りに回転する。第1カム面204c1は、回転中心から外周面までのカム径が第2カム面204c2に比べて長くなるように形成されている。また、バウンドロックレバー208は、コロ208aが突起部207cに押圧されることにより、時計回りに回転する。このとき、バウンドロックレバー208のロック部208cは、羽根レバー206の移動軌跡から退避した状態となる。一連の動作を「バウンドロック解除動作」と呼ぶ。バウンドロックレバー208のロック部208cが羽根レバー206の移動軌跡から退避した位置が解除位置となる。後幕駆動レバー205が羽根レバー206を駆動する前に、緊定レバー207がバウンドロックレバー208を規制位置から解除位置に移動させる。
図11の状態において、撮像素子23の画素のリセット走査(以下、電子先幕走行という)を行うことで、撮影露光動作が開始される。電子先幕走行開始後、設定されたシャッタ秒時に対応する時間間隔の経過後、コイル210bへの通電を遮断することで、アマチャ209とヨーク210aが離反する。アマチャ209とヨーク210aが離反することで、後幕駆動バネSp2の付勢力によって後幕駆動レバー205と羽根レバー206が一体的に時計回りに走行する。それに伴い、後幕羽根群212がシャッタ地板201の開口部201eを覆った図12の状態になる。後幕駆動レバー205と羽根レバー206が一体的に走行する動作を「走行動作」と呼ぶ。
ここで、角度Aから角度Fの区間における、モータ211に印加する電圧について説明する。まず、カメラ停止状態において、モータ211を正転させるように電圧(第1の電圧)V1を印加する。モータ211の駆動力はギア列213を経由してカムギア204に伝達され、カムギア204は正転する。カムギア204が角度Dの状態になると、モータ211に印加される電圧は電圧(第2の電圧)V2に切り換えられる。カムギア204が角度Eの状態になると、モータ211に印加される電圧は電圧(第3の電圧)V3に切り換えられる。そして、カムギア204が角度Fの状態になると、モータ211の端子211a、211bの間をショートさせる。すなわち、モータ211にいわゆるショートブレーキをかけることで、カムギア204はファインダ撮影位相(第2の位相)の間で停止する。
電圧V1〜V3の絶対値の間には、次の関係がある。
電圧V1>電圧V2、かつ、電圧V3>電圧V2
電圧V2を電圧V1より低くしている理由は、確実にバウンドロック動作を行うためである。電圧V2を印加している区間(角度D〜角度E、第3の位相)は、図9、10で示すように、バウンドロックレバー208が羽根レバー206の走行軌跡内に進入している状態である。ただし、羽根レバー206が角度Cで羽根リターン動作を開始してからバウンドし、被ロック部206fがロック部208cに接触するまではタイムラグがある。そのため、電圧V2が高いままだと、羽根レバー206がバウンドしてきたときにはバウンドロックレバー208が退避してしまう恐れがある。つまり、バウンドロック動作が完了する前にバウンドロック解除動作が行われてしまい、結果としてバウンド時間が伸びてしまう。
バウンドロック動作を確実に行うために、角度D〜角度Eで示される通常撮影バウンドロック位相を長く設定しても良いが、長く設定し過ぎると、カムギア204のカム一回転で360度という有限の角度に対して、効率的に各位相を割り当てることができない。言い換えると、電圧V2を低くすることで、360度の角度を効率的に活用することが可能となり、チャージ等のより角度が必要な仕事に対して、より大きな角度を割り当てることができるようになる。
通常撮影バウンドロック位相でバウンドロック動作が行われた後は、電圧V2より高い電圧V3でモータ211を駆動することで、できるだけ早くバウンドロック解除動作を行う。そうすることで、レリーズタイムラグの短縮や駒速をアップさせることができる。
走行動作後、再びモータ211に正転方向の電圧が印加され、カムギア204は正転を始める。
角度Gから角度Hにおいて、カムフォロア202bが第2ミラーカム面204a2に押されることでミラー駆動レバー202は反時計回りに回転する。図13は、角度Hの状態を示しており、カムフォロア202bが第1ミラーカム面204a1に当接した状態を表している。図13において、ミラー駆動バネSp1のチャージが完了している。また、メインミラー保持枠131は、ミラー駆動レバー202に連動してダウンし、撮影光軸に進入したミラーダウン状態となっている。一連の動作を「ミラーチャージ動作」と呼ぶ。
角度Iから角度Jにおいて、カムフォロア207aが第1カム面204c1をトレースする状態から第2カム面204c3をトレースする状態となることで、緊定レバー207は反時計回りに回転する。図14は、角度Jの状態を示している。緊定レバー207が反時計回りに回転することにより、バウンドロックレバー208は、反時計回りに回転し、羽根レバー206の円弧部206eに当接する。このとき、コロ208aは、突起部207cから離反した状態となっている。一連の動作を「バウンドロックセット動作」と呼ぶ。
角度Kから角度Mにおいて、カムフォロア207aが第2カム面204c3から脱落し、緊定レバー207は反時計回りに回転する。図15は、角度Mの状態を示しており、緊定レバー207が羽根レバー206の壁部206dに当接した状態を表している。この緊定レバー207の動作を「緊定セット動作」と呼ぶ。
角度Mから角度Aにおいて、カムギア204の後幕カム204bがコロ205bを押すことで後幕駆動バネSp2をチャージし、図6で示される初期状態へと戻る。この動作を「後幕チャージ動作」と呼ぶ。このとき、係止部207bが被係止部206bを係止するため、羽根レバー206の羽根リターン動作は抑制される。また、後幕羽根群212は、シャッタ地板201の開口部201eを覆った状態を保つようになっている。
ここで、角度Fから角度Aの区間における、モータ211に印加する電圧について説明する。駆動開始時は、モータ211を正転させるように電圧V4を印加する。モータ211の駆動力はギア列213を経由してカムギア204に伝達され、カムギア204は正転する。カムギア204が角度Pの状態になると、モータ211に印加される電圧は電圧V5に切り換えられる。カムギア204が角度Aの状態になると、モータ211にショートブレーキをかけることで、カムギア204はカメラ停止状態の位相の間で停止する。
電圧V4、V5の絶対値の間には、次の関係がある。
電圧V4>電圧V5
このような電圧制御を行うことにより、モータ211に同じ電圧を印加する場合よりも、モータ211停止時のカムギア204のオーバーランが小さくなる。すなわち、カメラ停止状態の位相範囲を小さく設定できるようになり、ミラーアップ時の空走時間が短くなるため、駒速アップにつながる。
また、角度Gから角度Aまでの動作を総称して、「チャージ動作」と呼ぶ。
[サイレントモードA(第3のミラー駆動モード)]
次に、カメラ1がサイレントモードAに設定されている時の動作について説明する。
カメラ停止状態において、撮影者によりレリーズボタン31が半押しされると、信号SW1が発生し、信号SW1が検知されると、測光および焦点検出が行われる。続いてレリーズボタン31が全押しされると、信号SW2が発生する。信号SW2が検知されると、コイル210bに通電することでアマチャ209とヨーク210aが吸着し、モータ211に逆転方向の電圧を印加することでカムギア204が逆転する。カムギア204が逆転することで、カムギア204の角度は、角度P、O、N、M、L、K、J、I、H、Gと順番に進んでいく。
図16は、角度Lの状態を示しており、図6の状態からカムギア204が逆転し、緊定レバー207による羽根レバー206の係止が外れた瞬間を表している。図16(b)において、カムフォロア207aが緊定カム204cをトレースすることで、緊定レバー207が時計回りに回転し、係止部207bが被係止部206bから外れた状態になっている。また、コロ205bは、後幕カム204bのカム面204b1から離反し、オーバーチャージ状態が解除されている。
図17は、角度Kの状態を示しており、羽根リターン動作とバウンドロック動作が行われた状態を表している。
図18は、角度Jの状態を示している。図18において、カムフォロア207aは、第2カム面204c3の端部をトレースする状態になっている。つまり、緊定レバー207は、図17(角度K)から図18(角度J)の間では動いていない。
図19は、角度Iの状態を示しており、緊定レバー7のカムフォロア7aはカムトップ4c1の端部に当接した状態となっている。
角度Jから角度Iの間でバウンドロック解除動作が行われ、カムギア204が角度Hの状態になる。
図20は、角度Hの状態を示しており、カムフォロア202bが第1ミラーカム面204a1の端に接触した状態を表している。
図21は、角度Gの状態を示している。角度Hから角度Gにおいて、カムフォロア202bが第2ミラーカム面204a2に沿って移動することで、ミラー駆動レバー202は時計回りに回転し、ミラーアップ動作が行われる。
通常モードのミラーアップ動作では、カムフォロア202bが第1ミラーカム面204a1から脱落することで実行される。一方、サイレントモードAでは、カムフォロア202bが第1ミラーカム面204a1から第2ミラーカム面204a2を摺動することでミラーアップ動作が行われる。したがって、カムギア204の回転速度を遅く制御することで、ミラー駆動レバー202のミラーアップ動作時の回転速度を遅く制御することができ、結果としてミラー作動音を小さくすることができる。
また、図21の状態において、電子先幕走行と走行動作が行われる。
ここで、角度Aから角度Gの区間における、モータ211に印加する電圧について説明する。まず、モータ211を逆転させるように電圧V11を印加する。モータ211の駆動力はギア列213を経由してカムギア204に伝達され、カムギア204は逆転する。カムギア204が角度Kの状態になると、モータ211に印加される電圧は電圧V12に切り換えられる。カムギア204が角度Jの状態になると、モータ211に印加される電圧は電圧V13に切り換えられる。そして、カムギア204が角度Gの状態になると、モータ211にショートブレーキをかけることで、カムギア204はファインダ撮影位相の間で停止する。
電圧V11〜V13の絶対値の間には、次の関係がある。
電圧V11>電圧V12、かつ、電圧V11>電圧V13
電圧V12を電圧V11より低くしている理由は、通常モードと同様に、角度K〜角度Jの区間(中間位相)の間に確実にバウンドロック動作を行うためである。また、電圧V13を低くしているのは、ミラー作動音を小さくするために、カムギア204の回転速度を遅く制御するためである。
言い換えると、バウンドロック動作やミラー作動音に関係がない電圧V11を高い電圧で制御することで、レリーズタイムラグや駒速を可能な限り早くできるようにしている。
走行動作が終了すると、モータ211に正転する方向の電圧が印加され、カムギア204は正転し始め、角度G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Aの順で進む。
この角度Gから角度Aまでの動作は通常モードにおけるチャージ動作と同じ動作を行うため、詳細説明は省略する。図7においても、サイレントモードAの角度Gから角度Aまでの動作は記載を省略している。
[サイレントモードB(第2のミラー駆動モード)]
次に、カメラ1がサイレントモードBに設定されている時の動作について説明する。
カメラ停止状態において、撮影者によりレリーズボタン31が半押しされると、信号SW1が発生する。信号SW1が検知されると、測光および焦点検出が行われるとともに、コイル210bに通電することでアマチャ209とヨーク210aが吸着し、モータ211に逆転方向の電圧V11が印加されることでカムギア4は逆転する。カムギア4が逆転することで、カムギア4の角度は、角度P、O、N、M、L、Kと順番に進んでいく。
角度Kに到達すると電圧V12に切り換えられる。角度Iに到達するとモータ211にショートブレーキがかけられ、カムギア4は角度Iと角度Hの間で停止する。サイレントモードBが設定される場合には、信号SW1が出力されると、前ミラー駆動レバー202がミラーアップ位置への移動を開始する直前の位置までカムギア204を駆動するように、モータ211を第2の駆動方向に駆動する。レリーズボタン31の半押しが保持されている、つまり信号SW1が発生している限り、この状態でコイル210bの通電を維持したまま待機する。この状態を「SW1保持状態」と呼ぶこととする。
SW1保持状態において、レリーズボタン31の全押しによる信号SW2が発生すると、モータ211に逆転方向の電圧V13が印加され、カムギア4は角度H、Gと進む。カムギア4が角度Gに到達すると、モータ211にショートブレーキがかけられ、カムギア204は撮影位相の間で停止する。
角度A、L、K、J、I、H、Gにおけるシャッタユニット20の動作は、サイレントモードAと同じ動作であるため、詳細な説明は省略する。
そして、サイレントモードAと同じく、図21の状態において、電子先幕走行と走行動作が行われる。
走行動作が終了すると、サイレントモードAと同じく、モータ211に正転方向の電圧が印加され、カムギア4は正転し、角度G、H、I・・・O、P、Aと進む。
この角度Gから角度Aまでの動作は通常モードにおけるチャージ動作と同じ動作を行うため、詳細説明は省略する。図5においても、サイレントモードBの角度Gから角度Aまでの動作は記載を省略している。
一方、SW1保持状態から撮影者がレリーズボタン31を全押しすることなく、半押しを解除した場合は、コイル210bへの通電を維持したまま、モータ211に正転方向の電圧V21が印加し、角度I、J、K、L、M、N、O、Pと進む。角度Pに到達すると、モータに印加される電圧は電圧V22に切り換えられる。そして、角度Aに到達すると、モータ211にショートブレーキがかけられ、カムギア204はカメラ停止位相の間で停止するとともに、コイル210bへの通電をカットする。この動作を「復帰動作」と呼ぶこととする。SW1保持状態から信号SW2が出力されることなく、信号SW1が出力されなくなると、信号SW1が出力される前の状態までカムギア204を駆動するように、モータ211を第1の駆動方向に駆動する。
ここで、復帰動作における電圧V21、V22と、チャージ動作における電圧V4、V5について説明する。
チャージ動作の際には、ミラーチャージおよび後幕チャージの負荷がかかっている。一方、復帰動作の際は、ミラーチャージは行われない。また、コイル210bの通電が維持されているため、後幕チャージの負荷もかからない。そのため、チャージ動作におけるカムギア4のオーバーランと復帰動作におけるカムギア204のオーバーランを揃えるために、復帰動作における電圧V21、V22と、チャージ動作における電圧V4、V5を異ならせている。
このようにすることで、復帰動作を行った直後の通常撮影でのレリーズタイムラグと、チャージ動作を行った直後の通常撮影でのレリーズタイムラグを揃えることができるようになり、撮影者の撮影感覚を損なわないようにできる。
また、サイレントモードAとサイレントモードBの説明でわかるように、サイレントモードAではレリーズボタン31の半押しを保持してもコイル210bへ通電されないため省電力であるが、レリーズタイムラグが長い。
一方、サイレントモードBではレリーズボタン31の半押しを保持するとコイル210bへ通電された状態を維持するためサイレントモードAに比べて電力は消費してしまうが、サイレントモードAよりレリーズタイムラグが短いメリットがある。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。