以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例であるシャッタ装置を搭載したデジタル一眼レフカメラ(撮像装置)の概略構成を示す。
図1において、101はデジタル一眼レフカメラ(カメラ本体)であり、102は該カメラ101に対して着脱可能に装着される交換レンズである。交換レンズ102内には、撮像光学系103が収容されている。交換レンズ102は、不図示のマウント機構を介してカメラ101に電気的及び機械的に接続される。撮影光学系103には、変倍レンズやフォーカスレンズが含まれ、これらを光軸L1の方向に移動させることで変倍や焦点調節を行うことができる。
106はCCDセンサやCMOSセンサにより構成される撮像素子であり、パッケージ124に収納されている。撮像光学系103から撮像素子106に至る撮像光路中には、後述するメインミラー111、サブミラー122、シャッタ装置であるフォーカルプレンシャッタ(以下、単にシャッタという)、光学ローパス及び赤外線カットフィルタ156が設けられている。
メインミラー111は、光学ファインダによる被写体観察時には、サブミラー122とともに撮像光路内に配置される。撮像光路内に配置されたメインミラー111は、撮像光学系103からの光束の一部を反射させ、他を透過させる。メインミラー111で反射された光束は、ピント板105上に被写体像を形成する。さらに、ピント板105を透過した光束は、ペンタプリズム112及び接眼レンズ109を介して使用者の眼に導かれる。これにより、光学ファインダによる被写体観察が可能となる。
メインミラー111を透過した光束は、サブミラー122により反射されて焦点検出ユニット121に導かれる。焦点検出ユニット121は、位相差検出方式によって撮像光学系103のデフォーカス量を求める。該デフォーカス量から合焦を得るためのフォーカスレンズの駆動量が算出され、その駆動量に応じてフォーカスレンズを移動させることで合焦状態を得ることができる。
メインミラー111及びサブミラー122は、撮像時には撮像光路外に退避する。撮像光学系103からの光束は、シャッタ113におけるシャッタ羽根2〜5,10〜13により形成された開口又はスリットを通過して撮像素子106上に被写体像を形成する。被写体像は撮像素子106の光電変換作用によって電気信号に変換される。該電気信号は、不図示の画像処理回路によって画像信号に変換されて、背面ディスプレイ107に表示されたり、半導体メモリ等の記録媒体に記録されたりする。背面ディスプレイ107は、液晶パネルや有機EL等の自発光素子により構成される。
119はカメラ101を起動するメインスイッチであり、180は光学ファインダ内に各種情報を表示するファインダ内表示デバイスである。
次に、シャッタ113の構成について、図2〜図5を用いて説明する。図2〜図5は、撮像素子106の反対側(又は撮像素子側)から見たシャッタ113の構成を、撮像素子106の長辺方向に半分に切断して示している。図2は後述するセット動作の途中であって、アーマチャがヨークに当接する直前の状態を示す。図3はセット動作が完了したオーバーチャージ状態(後述する先羽根及び後羽根駆動部材がセット位置としてのオーバーチャージ位置に到達した状態)を示す。図4は先羽根及び後羽根駆動部材がオーバーチャージ位置から後述する駆動準備位置への移行途中の状態を示す。図5は先羽根及び後羽根駆動部材がオーバーチャージ位置から駆動準備位置への移行が完了した状態を示す。
これらの図において、1はシャッタ開口1aを有する基板(以下、シャッタ地板という)である。1bは先幕用羽根駆動部材(先幕用シャッタ羽根をばね力によって駆動する部材:以下、先羽根駆動部材という)20に設けられた先幕駆動ピン20cをシャッタ地板1の反対面側に突出させるための長孔である。1cは後述する後幕用羽根駆動部材(後幕用シャッタ羽根をばね力によって駆動する部材:以下、後羽根駆動部材という)29に設けられた後幕駆動ピン(図3参照)29cをシャッタ地板1の反対面側に突出させるための長孔である。
2〜5は先幕用シャッタ羽根であり、このうち2は先スリット形成羽根、3〜5は先覆い羽根である。これらの先幕用シャッタ羽根2〜5は、シャッタ地板1の反対面側に設けられた不図示の2本の先羽根用アームに回転自在に取り付けられており、該2本の先羽根用アームとともに平行リンクを構成する。2本の先羽根用アームのうち主アームは、シャッタ地板1に設けられた軸1dに回動可能に取り付けられ、前述した先羽根駆動部材20の先幕駆動ピン20cに連結されている。先羽根駆動部材20も軸1dに回動可能に取り付けられており、該先羽根駆動部材20が回動することで主アームが軸1d回りで回動する。2本の先羽根用アームの従アームは、シャッタ地板1に設けられた不図示の軸に回動可能に取り付けられており、主アームとともに回動して先幕用シャッタ羽根2〜5を平行移動させる。
10〜13は後幕用シャッタ羽根であり、このうち10は後スリット形成羽根、11〜13は後覆い羽根である。これらの後幕用シャッタ羽根10〜13は、シャッタ地板1の反対面側に設けられた不図示の2本の後羽根用アームに回転自在に取り付けられており、該2本の後羽根用アームとともに平行リンクを構成する。2本の後羽根用アームのうち主アームは、シャッタ地板1に設けられた軸1eに回動可能に取り付けられ、前述した後羽根駆動部材29の後羽根駆動ピン29cに連結されている。後羽根駆動部材29も軸1eに回動可能に取り付けられており、該後羽根駆動部材29が回動することで主アームが軸1e回りで回動する。2本の後羽根用アームの従アームは、シャッタ地板1に設けられた不図示の軸に回動可能に取り付けられており、主アームとともに回動して後幕用シャッタ羽根10〜13を平行移動させる。
不図示のカバー板は、シャッタ開口1aに対応する開口を有し、シャッタ地板1との間に先幕用及び後幕用シャッタ羽根2〜5,10〜13を挟む。
18はセット部材としてのチャージレバーである。該チャージレバー18は、シャッタ地板1に設けられた軸1hに回動可能に取り付けられている。該チャージレバー18は、入力アーム部18aと、入力アーム部18aに一体的に設けられ入力ピン18bと、先羽根出力アーム部18cと、後羽根出力アーム部18dとを有する。これらの出力アーム部18c,18dはそれぞれ、軸1hを中心として放射状に延びる第1のカム部(第1の領域)18e,18f(18fは図3参照)と、軸1hを中心とした円弧状に延びる第2のカム部(第2の領域)18g,18hとを有する。
第1のカム部18e,18fは、チャージレバー18の単位回転角(単位動作量)に対して羽根駆動部材20,29を大きく(第1の移動量で)回動させる。一方、第2のカム部18g,18hは、チャージレバー18の単位回転角に対して羽根駆動部材20,29を小さく(第1の移動量より小さい第2の移動量で)回動させる。なお、チャージレバー18の単位回転角に対する羽根駆動部材20,29の回動量をチャージ効率とするとき、第1のカム部18e,18fのチャージ効率は相対的に大きく、第2のカム部18g,18hのチャージ効率は相対的に小さいと言える。
第1のカム部18e,18fは、シャッタ羽根2〜5,10〜13の駆動を完了した羽根駆動部材20,29をアーマチャ23,32がヨーク26,35に当接する位置の手前(図2参照)まで戻すよう高速で回動させる。第2のカム部18g,18hは、それに続いて羽根駆動部材20,29をセット位置としてのオーバーチャージ位置まで少ない角度だけ回動させる。第2のカム部18g,18hを設けることで、羽根駆動部材20,29のオーバーチャージ位置を安定させることができる。なお、出力アーム部18c,18dには、羽根駆動部材20,29を第1のカム部18e,18fで駆動する状態から第2のカム部18g,18hで駆動する状態への移行をスムーズに行わせるための曲面部が形成されている。
チャージレバー18は、図3に示す位置(オーバーチャージ位置)で不図示のストッパに当接して、それ以上の回動を阻止される。
なお、チャージレバー18は、その動作によって、後述する制動部材を羽根駆動部材20,29に対して作用する状態と作用しない状態とに移行させる機能も有する。このような構成により、シャッタ113を構成する部品点数を少なくすることができるとともに、構成を簡単にすることができる。
先羽根駆動部材20は、前述したようにシャッタ地板1に設けられた軸1dに回動可能に取り付けられている。先羽根駆動部材20に設けられたアーム部20aの先端裏面には、回転可能なコロ21が取り付けられている。また、先羽根駆動部材20に設けられた他のアーム部20bの先端には、前述した先羽根駆動ピン20cが設けられている。
22は先羽根駆動ばねであり、軸1dの回り取り付けられたトーションばねである。先羽根駆動ばね22の一端は不図示の先幕速度調節部材に支持されており、他端は先羽根駆動部材20の突起20eに掛けられている。これにより、先羽根駆動ばね22は、先羽根駆動部材20に軸1d回りでの時計回り方向の回動力(駆動力)を与える。
また、先羽根駆動部材20のアーム部20bの上部には、アーマチャ保持部20dが形成されている。アーマチャ保持部20dには、アーマチャ軸24が取り付けられており、アーマチャ軸24上には、アーマチャ(鉄片)23が該アーマチャ軸24の軸方向にある程度の移動が許容された状態で取り付けられている。
25はアーマチャばねであり、圧縮コイルばねが使用されている。アーマチャばね25は、アーマチャ軸24の周囲におけるアーマチャ23とアーマチャ保持部20dとの間に圧縮された状態で配置されている。アーマチャばね25は、アーマチャ23が後述するヨークと当接する直前でのアーマチャ23の姿勢を安定させる作用を有する。また、アーマチャばね25は、アーマチャ23がヨークと当接した後における先羽根駆動部材20のオーバーチャージ位置までの回動を許容する(回動ストロークを吸収する)作用も有する。
26,27は先幕用電磁マグネットを構成するヨークとコイルであり、不図示のマグネット地板に固定されている。コイル27への通電によってヨーク26にアーマチャ23を吸着させることができ、コイル27への通電を停止することによってヨーク26によるアーマチャ23の吸着を解除することができる。
後羽根駆動部材29は、前述したようにシャッタ地板1に設けられた軸1eに回動可能に取り付けられている。後羽根駆動部材29に設けられたアーム部29aの裏面には、回転可能なコロ30が取り付けられている。また、後羽根駆動部材29に設けられた他のアーム部29bの先端には、前述した後羽根駆動ピン29c(図3参照)が設けられている。
31は後羽根駆動ばねであり、軸1eの回りに取り付けられたトーションばねである。後羽根駆動ばね31の一端は不図示の後幕速度調節部材に支持されており、他端は後羽根駆動部材29の突起29eに掛けられている。これにより、後羽根駆動ばね31は、後羽根駆動部材29に軸1e回りでの時計回り方向の回動力(駆動力)を与える。
また、後羽根駆動部材29のアーム部29aの上部には、アーマチャ保持部29dが形成されている。アーマチャ保持部29dには、アーマチャ軸33が取り付けられており、アーマチャ軸33上には、アーマチャ(鉄片)32が該アーマチャ軸33の軸方向にある程度の移動が許容された状態で取り付けられている。
34はアーマチャばねであり、圧縮コイルばねが使用されている。アーマチャばね34は、アーマチャ軸33の周囲におけるアーマチャ32とアーマチャ保持部29dとの間に圧縮された状態で配置されている。アーマチャばね34は、アーマチャ32が後述するヨークと当接する直前でのアーマチャ32の姿勢を安定させる作用を有する。また、アーマチャばね34は、アーマチャ32がヨークと当接した後における後羽根駆動部材29のオーバーチャージ位置までの回動を許容する(回動ストロークを吸収する)作用も有する。
35,36は後幕用電磁マグネットを構成するヨークとコイルであり、不図示のマグネット地板に固定されている。コイル36への通電によってヨーク35にアーマチャ32を吸着させることができ、コイル36への通電を停止することによってヨーク35によるアーマチャ32の吸着を解除することができる。
先幕用及び後幕用電磁マグネットのコイル27,36に対する通電/通電停止タイミングを制御することで、シャッタ秒時を正確に制御することができる。
37は先羽根制動部材であり、板ばね材料により形成されている。先羽根制動部材37は、減速アーム部(減速部)37aと保持アーム部(移動阻止部)37bとを有する。各アーム部は、シャッタ地板1に設けられた軸1iに独立して回動可能に取り付けられている。
減速アーム部37aは、先羽根駆動部材20のアーム部20aの側面に押圧される押圧部37cと、チャージレバー18の先羽根出力アーム部18cに接触可能な先端部37dとを有する。減速アーム部37aの時計回り方向の回動は、軸1dのシャッタ地板面近くに設けられた不図示の座によって阻止される。
保持アーム部37bは、先羽根駆動部材20のアーマチャ保持部20dの裏面に設けられた係止突起20fと係合可能である。保持アーム部37bの先端には、先羽根駆動部材20の軸1d回りでの時計回り方向の回動を阻止するための係止部37eが設けられている。
38は先羽根制動部材37の減速アーム部37aに軸1i回りでの時計回り方向の回動力を与える減速ばねであり、軸1iの周囲に取り付けられている。減速ばね38は、減速アーム部37aに掛けられた可動アーム部38aと、シャッタ地板1に設けられたばね掛け部1jに掛けられた固定アーム部38bとを有する。
39は保持/減速ばね(図2及び図3参照)であり、その第1の可動アーム部39aを介して先羽根制動部材37の保持アーム部37bに、軸1i回りでの時計回り方向の回動力を与える。保持/減速ばね39は、シャッタ地板1に設けられた軸1hの周囲に取り付けられている。
1kはシャッタ地板1に設けられたストッパであり、保持アーム部37bの軸1i回りでの時計回り方向の回動を、これに当接した後述する先羽根保持解除部材42の出力アーム部42bを介して阻止する。
40は後羽根制動部材であり、板ばね材料により形成されている。後羽根制動部材40は、減速アーム部(減速部)40aと保持アーム部(移動阻止部)40bとを有する。各アーム部は、シャッタ地板1に設けられた軸1lに独立して回動可能に取り付けられている。
減速アーム部40aは、後羽根駆動部材29のアーム部29bの側面に押圧される押圧部40cと、チャージレバー18の裏面に設けられた突起部18iに当接可能な立ち曲げ部40d(図3参照)とを有する。
保持アーム部40bは、後羽根駆動部材29のアーマチャ保持部29dの裏面に設けられた係止突起29fと係合可能である。保持アーム部40bの先端には、後羽根駆動部材29の軸1e回りでの時計回り方向の回動を阻止するための係止部40eが設けられている。
41は保持ばねであり、その可動アーム部41aを介して後羽根制動部材40の保持アーム部40bに、軸1l回りでの時計回り方向の回動力を与える。保持ばね41は、軸1lの周囲に取り付けられており、その固定アーム部41bは、シャッタ地板1に設けられたばね掛け部1mに掛けられている。
前述した保持/減速ばね39の第2の可動アーム部39bは、減速アーム部40aに軸1l回りでの時計回り方向の回動力を与える。上述したばね掛け部1mは、これに当接した減速アーム部40aの時計回り方向での回動を阻止するストッパとしても機能する。
1nはシャッタ地板1に設けられたストッパであり、これに当接した保持アーム部40bの軸1l回りでの時計回り方向の回動を阻止する。
先羽根保持解除部材42は、入力アーム部42aと出力アーム部42bを有し、シャッタ地板1に設けられた軸1pに回動可能に取り付けられている。
チャージレバー18が初期位置から回動して羽根駆動部材20,29をオーバーチャージ位置に回動させた後、初期位置に復帰する際に、該初期位置の近傍で、チャージレバー18の裏面に設けられた突起部18j(図5参照)が入力アーム部42aに当接する。これにより、入力アーム部42aが保持/減速ばね39の付勢力に抗して押される。この結果、先羽根保持解除部材42は、軸1p回りで時計回り方向に回動する。そして、出力アーム部42bは、先羽根制動部材37の保持アーム部37bを軸1i回りで反時計回り方向に回動させる。これと同時に、チャージレバー18における入力アーム部18aの先端裏面に設けられた突起部18kは、後羽根制動部材40の保持アーム部40bに当接し、保持ばね41の付勢力に抗して保持アーム部40bを軸1l回りで反時計回り方向に回動させる。
先羽根制動部材37の係止部37eと後羽根制動部材40の係止部40eはそれぞれ、先羽根駆動部材20の係止突起20fと後羽根駆動部材29の係止突起29fの回動領域から退避する。
次に、上記のように構成されたシャッタ113の動作について説明する。
シャッタ羽根2〜5,10〜13の走行が完了した状態では、先幕用シャッタ羽根2〜5はシャッタ開口1aを閉じ、後幕用シャッタ羽根10〜13はシャッタ開口1aを開放している。また、チャージレバー18は、不図示のストッパにより軸1h回りでの反時計回り方向の回動を阻止される初期位置に位置する。
この状態から、入力アーム部18aに設けられた入力ピン18bに、不図示のモータからの駆動力F1が入力されることで、チャージレバー18は軸1h回りで時計回り方向に回動、すなわちオーバーチャージ位置までのセット動作(チャージ動作)を開始する。
チャージレバー18が回動を開始すると、先羽根出力アーム部18cに設けられた第1のカム部18eが、先羽根駆動部材20のアーム部20aの先端に取り付けられたコロ21を介して先羽根駆動部材20を軸1d回りで反時計回り方向に回動させる。また、これと同時に、後羽根出力アーム部18dに設けられた第1のカム部18fが、後羽根駆動部材29のアーム部29aの先端に取り付けられたコロ30を介して後羽根駆動部材29を軸1e回りで反時計回り方向に回動させる。
図2には、コロ21,30が、先羽根及び後羽根出力アーム部18c,18dにおける第1のカム部18e,18f上から第2のカム部18g,18hにつながる曲面部上にある状態を示している。すなわち、両羽根駆動部材20,29が第1のカム部18e,18fにより駆動される状態から第2のカム部18g,18hにより駆動される状態に移行する途中を示している。この状態では、アーマチャ23,32はヨーク26,35に当接していない。
そして、この移行途中以降であって、アーマチャ23がヨーク26に当接する前においては以下のように動作する。上記移行途中まで勢いよく反時計回り方向に回動してきた先羽根駆動部材20のアーム部20aの側面には、先羽根制動部材37の減速アーム部37aに設けられた押圧部37cがそのばね力によって押圧される。これにより、先羽根駆動部材20の反時計回り方向への回動速度(移動速度)が減少する。すなわち、減速部である減速アーム部37aが先羽根駆動部材20に作用する。
なお、本実施例では、第1のカム部18eで駆動される状態から第2のカム部18gで駆動される状態に移行する途中から先羽根駆動部材20が減速アーム部37a(押圧部37c)による減速作用を受ける場合について説明する。しかし、第2のカム部18gが先羽根駆動部材20を反時計回り方向に更に回動する構成とし、第2のカム部18gで駆動される状態に移行した後から先羽根駆動部材20が減速作用を受けるようにしてもよい。このことは、この後に説明する後羽根駆動部材29についても同じである。
また、アーマチャがヨークに当接する前とは、少なくともアーマチャのシャッタ走行後の位置からヨークに当接する位置までの移動範囲のうち半分を超えてから当接するまでの間とするのが、オーバーチャージ動作を高速で行う観点から好ましい。
一方、先羽根駆動部材20のアーマチャ保持部20dの裏面に設けられた係止突起20fは、保持/減速ばね39から付勢力が与えられている先羽根制動部材37の保持アーム部37bに設けられた係止部37eを該付勢力に抗して押しやる。これによっても、先羽根駆動部材20は減速作用を受ける。
これらの減速作用によって、先羽根駆動部材20の回動が十分に減速され、アーマチャ23は十分な低速でヨーク26に当接する(図3参照)。
また、後羽根駆動部材29についても、上記移行途中以降に同様に減速される。すなわち、上記移行途中まで勢いよく反時計回り方向に回動してきた後羽根駆動部材29のアーム部29bの側面には、後羽根制動部材40の減速アーム部40aに設けられた押圧部40cがそのばね力によって押圧される。これにより、後羽根駆動部材29の反時計回り方向への回動速度(移動速度)が減少する。すなわち、減速部である減速アーム部40aが後羽根駆動部材29に作用する。
一方、後羽根駆動部材29のアーマチャ保持部29dの裏面に設けられた係止突起20fは、保持ばね41から付勢力が与えられている後羽根制動部材40の保持アーム部40bに設けられた係止部40eを該付勢力に抗して押しやる。これによっても、後羽根駆動部材29は減速作用を受ける。
これらの減速作用によって、後羽根駆動部材29の回動が十分に減速され、アーマチャ32は十分な低速でヨーク35に当接する(図3参照)。
以上のように、アーマチャ23,33の速度が十分に減速された状態でヨーク26,35に当接することで、セット動作を高速で行いつつも、アーマチャ23,33とヨーク26,35の吸着面が粗くなることを回避できる。したがって、シャッタ秒時の制御精度を高く維持することができる。また、金属部材であるアーマチャ23,33とヨーク26,35が当接することによって発生する音を小さくすることができる。
図3に示すようにアーマチャ23とヨーク26とが当接する位置(駆動準備位置とほぼ同じ位置)までセット動作が進むと、先羽根駆動部材20の係止突起20fは、先羽根制動部材37の係止部37eを完全に乗り越える。係止部37eは、先羽根根制動部材37が保持/減速ばね39の付勢力を受けることで係止突起20fの回動領域内に保持され、該係止突起20fと係合可能となる。
また、アーマチャ23とヨーク26が当接する直前(十分な減速作用を受けた後)では、チャージレバー18の先羽根出力アーム部18cが回動しながら先羽根制動部材37の先端部37dに当接してこれを押す。これにより、先羽根制動部材37の減速アーム部37aは、その押圧部37cが先羽根駆動部材20のアーム部20aの側面から離れる位置に押し戻される。つまり、減速アーム部37aが先羽根駆動部材20に作用しない状態に移行する。これにより、アーマチャ23とヨーク26が当接する際にこれらに余分な力が加わらず、アーマチャ23とヨーク26の当接面(吸着面)にこじりが生じない。したがって、こじりによって吸着面が粗くなることを回避できる。
一方、後羽根駆動部材29側でも同様に、アーマチャ32とヨーク35とが当接する位置までセット動作が進むと、後羽根駆動部材29の係止突起29fは、後羽根制動部材40の係止部40eを完全に乗り越える。係止部40eは、後羽根制動部材40が保持/減速ばね39の付勢力を受けることで係止突起40fの回動領域内に保持され、該係止突起40fと係合可能となる。
また、アーマチャ32とヨーク35が当接する直前(十分な減速作用を受けた後)では、回動するチャージレバー18の裏面に設けられた突起部18iが後羽根制動部材40の立ち曲げ部40dに当接する。これにより、後羽根制動部材40の減速アーム部40aは、その押圧部40cが後羽根駆動部材29のアーム部29bの側面から離れる位置まで押し戻される。つまり、減速アーム部40aが後羽根駆動部材29に作用しない状態に移行する。これにより、アーマチャ32とヨーク35が当接する際にこれらに余分な力が加わらず、アーマチャ32とヨーク35の当接面(吸着面)にこじりが生じない。したがって、こじりによって吸着面が粗くなることを回避できる。
図3には、以上の動作を経て到達したオーバーチャージ状態を示す。アーマチャばね25,34は、前述したように、オーバーチャージ動作における羽根駆動部材20,29の回動ストロークを吸収するよう圧縮されている。
この状態から、カメラのレリーズ信号が発生して撮像シーケンスがスタートすると、所定のタイミングで先幕及び後幕用電磁マグネットのコイル27,36に通電される。これにより、先幕及び後幕用電磁マグネットのヨーク26,35はアーマチャ23,32を吸着する。
そして、図1に示したメインミラー111及びサブミラー122が撮像光路外に退避すると、メインミラー111の動きに連動したチャージレバー18は、オーバーチャージ位置(セット位置)から軸1h回りで反時計回り方向に回動する。
図4には、チャージレバー18及び羽根駆動部材20,29がオーバーチャージ位置から駆動準備位置に移動する途中の状態を示す。
チャージレバー18が入力ピン18bに不図示のモータからの駆動力F2を受けて軸1h回りで反時計回り方向に回動すると、再び先羽根制動部材37における減速アーム部37aの押圧部37cが、先羽根駆動部材20のアーム部20aの側面を押圧する。この押圧力(付勢力)は、先羽根駆動部材20の羽根駆動方向(軸1d回りでの時計回り方向)への回動を補助するように働く。
また、ヨーク26とアーマチャ23の吸着が維持された状態で先羽根駆動部材20が時計回り方向に僅かに回動する。このとき、先羽根制動部材37の係止部37eが先羽根駆動部材20の係止突起20fの回動領域内における該係止突起20fに対してわずかな隙間を形成する位置に入り込んでいる。このため、仮に衝撃等によってヨーク26よるアーマチャ23の吸着が外れても、係止突起20fがわずかに動いて係止部37eに係合するので、先羽根駆動部材20が駆動準備位置を超えて羽根駆動方向に回動することが阻止される。すなわち、移動阻止部である保持アーム部37bが先羽根駆動部材20に作用する。さらに、このときにヨーク26とアーマチャ23間に生ずる隙間もわずかであるため、通電中の先幕用電磁マグネットに発生している磁力によって再びアーマチャ23はヨーク26に吸着される。
一方、後幕側でも同様に、再び後羽根制動部材40における減速アーム部40aの押圧部40cが、後羽根駆動部材29のアーム部29bの側面を押圧する。この押圧力(付勢力)は、後羽根駆動部材29の羽根駆動方向(軸1e回りでの時計回り方向)への回動を補助するように働く。
また、ヨーク35とアーマチャ32の吸着が維持された状態で後羽根駆動部材29が時計回り方向に僅かに回動する。このとき、後羽根制動部材40の係止部40eが後羽根駆動部材29の係止突起29fの回動領域内における該係止突起29fに対してわずかな隙間を形成する位置に入り込んでいる。このため、仮に衝撃等によってヨーク35よるアーマチャ32の吸着が外れても、係止突起29fがわずかに動いて係止部40eに係合するので、後羽根駆動部材29が駆動準備位置を超えて羽根駆動方向に回動することが阻止される。すなわち、移動阻止部である保持アーム部40bが後羽根駆動部材29に作用する。さらに、このときにヨーク35とアーマチャ32間に生ずる隙間もわずかであるため、通電中の後幕用電磁マグネットに発生している磁力によって再びアーマチャ32はヨーク35に吸着される。
このようにして、羽根駆動部材20,29は、図5に示す駆動準備位置に到達する。そして、チャージレバー18が入力ピン18bに駆動力F2を受けて軸1h回りで反時計方向に回動し、初期位置に復帰することにより、シャッタ113は露光準備完了状態となる。
チャージレバー18の初期位置への復帰動作中における該初期位置の直前で、該チャージレバー18の裏面に設けられた突起部18jは先羽根保持解除部材42の入力アーム部42aに当接してこれを押圧する。突起部18jは、保持/減速ばね39の付勢力に抗して先羽根保持解除部材42を軸1p回りで時計回り方向に回動させる。これにより、先羽根保持解除部材42の出力アーム部42bは、先羽根制動部材37の保持アーム部37bを軸1i回りで反時計回り方向に回動させる。すなわち、保持アーム部37bを先羽根駆動部材20に作用しない状態に移行させる。
これと同時に、チャージレバー18の入力アーム部18aの先端裏面に設けられた突起部18kが、後羽根制動部材40の保持アーム部40bに当接してこれを押圧する。突起部18kは、保持ばね41の付勢力に抗して保持アーム部40bを軸1l回りで反時計回り方向に回動させる。すなわち、保持アーム部40bを後羽根駆動部材29に作用しない状態に移行させる。
先羽根制動部材37の係止部37eと後羽根制動部材40の係止部40eはそれぞれ、先羽根駆動部材20の係止突起20f及び後羽根駆動部材20の係止突起29fの回動領域から退避する。この退避に際して、係止部37e,40eはそれぞれ、係止突起20f,29fに接触しないように構成されている。
本実施例では、羽根駆動部材20,29がオーバーチャージ位置から駆動準備位置に移動するまでの間、係止部37e,40eが係止突起20f,29fに対してわずかな隙間をあけて係合可能な位置に配置される場合について説明した。しかし、これらの間に隙間をあけずに当接(係合)させるようにしてもよい。この場合、羽根駆動部材20,29を、羽根駆動方向に作用する付勢力に抗してそれとは反対方向に回動させない(リフトを発生させない)ように、係止部37e,40eが係止突起20f,29fに対して容易に逃げられるように構成する必要がある。
シャッタ113が露光準備完了状態になると、まず、先幕用電磁マグネットのコイル27への通電が停止され、ヨーク26によるアーマチャ23の吸着が解除される。これにより、先羽根駆動部材20は、先羽根駆動ばね22の付勢力及び先羽根制動部材37の減速アーム部37aからの補助的な付勢力によって時計回り方向に回動し、前述した先幕用の主アーム及び従アームを同方向に回動させる。減速アーム部37aからの補助的な付勢力は、先羽根駆動ばね22に必要な付勢力を軽減する。
そしてこれに伴い、先幕用シャッタ羽根2〜5は、平行リンクの作用によってシャッタ開口1aの長辺に対して平行な姿勢を維持しながらシャッタ開口1aを閉じる位置から開ける位置に向かって走行する。
先幕シャッタ羽根2〜5の走行開始後、所定のシャッタ秒時が経過すると、後幕用電磁マグネットのコイル36への通電も停止され、ヨーク35によるアーマチャ32の吸着が解除される。これにより、後羽根駆動部材29は、後羽根駆動ばね31の付勢力及び後羽根制動部材40の減速アーム部40aからの補助的な付勢力によって時計回り方向に回動し、前述した後幕用の主アーム及び従アームを同方向に回動させる。減速アーム部40aからの補助的な付勢力は、後羽根駆動ばね31に必要な付勢力を軽減する。
そしてこれに伴い、後幕用シャッタ羽根10〜13は、平行リンクの作用によってシャッタ開口1aの長辺に対して平行な姿勢を維持しながらシャッタ開口1aを開ける位置から閉じる位置に向かって走行する。
各電磁マグネットのコイルへの通電停止タイミング、すなわち先幕シャッタ羽根2〜5の走行開始タイミングと後幕シャッタ羽根10〜13の走行開始タイミングが正確に制御されることで、撮像素子106の適正な露光が行われる。以上で、シャッタ113の露光動作が終了する。そして、次の露光動作に備えて、再びオーバーチャージ位置へのセット動作が開始される。
以上説明した実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、実施例に対して種々の変形や変更が可能である。