JP6485156B2 - 水圧転写フィルム及びこれを用いた加飾成形品 - Google Patents
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Description
本発明は、高い立体感を表出した意匠を樹脂成形品に付与し得る水圧転写フィルム、その製造方法、及び該フィルムを用いた加飾成形品を提供することを課題とする。
前記意匠層は、アクリルポリマーポリオールと艶消し剤を含む樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により形成されており、
前記絵柄層は、当該絵柄層における他の部分より相対的に明度の低い暗色部分を有しており、
前記意匠層と前記絵柄層とは、前記意匠層によって形成された凹部と、前記絵柄層の暗色部分とが同調するように形成されている、水圧転写フィルム。
項2. 前記凹凸形状が、前記水溶性フィルムの表面上に前記意匠層を有する部分と、前記意匠層を有しない部分とによって形成されている、項1に記載の水圧転写フィルム。
項3. 前記意匠層を形成する樹脂組成物が、ウレタン樹脂を含む、項1または2に記載の水圧転写フィルム。
項4. 前記艶消し剤は、JIS K 5101−13−1:2004に準拠して測定した吸油量が230mL/100g以上である、項1〜3のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
項5. 前記艶消し剤は、体積平均粒径が1〜5μmである、項1〜4のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
項6. 前記艶消し剤が、シリカである、項1〜5のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
項7. 前記絵柄層が木目模様を形成しており、前記暗色部分が前記木目模様における導管部分を形成している、項1〜6のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
項8. 以下の工程(A)及び(B)を順に有する、水圧転写フィルムの製造方法。
工程(A)水溶性フィルムの表面上に、アクリルポリマーポリオールと艶消し剤を含む樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により形成されている意匠層が、凹凸形状を形成するようにして、該意匠層を積層する工程
工程(B)前記意匠層の上に絵柄層を、前記意匠層によって形成された凹部と、前記絵柄層における他の部分より相対的に明度の低い暗色部分とが同調するように積層する工程
項9. 前記艶消し剤は、平均体積粒径が1〜5μmである、項8に記載の水圧転写フィルムの製造方法。
項10. 下記の工程(a)〜(d)を順に有する加飾成形品の製造方法。
工程(a)項1〜7のいずれかに記載の水圧転写フィルムを、水溶性フィルム側が下向きで水面側に向くように水面に浮遊させる工程
工程(b)前記水圧転写フィルムの絵柄層側に活性剤組成物を塗布する活性剤塗布工程
工程(c)該工程(a)及び(b)を経た、水面に浮遊している水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって前記絵柄層を被転写体の被転写面に密着させる工程
工程(d)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程
以下、本発明の水圧転写フィルムを図1〜図3を参照しながら説明する。図1〜図3は、本発明の水圧転写フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。図1〜図3に示されるように、本発明の水圧転写フィルム10は、水溶性フィルム1、意匠層2、及び絵柄層3を順に有している。意匠層2は、前記水溶性フィルムの表面上において凹凸形状を形成している。意匠層2による凹凸形状は、例えば図1に示されるように、水溶性フィルムの表面上において、意匠層2を有する部分(凸部)と、意匠層2を有しない部分(凹部)とによって形成されていてもよい。また、当該凹凸形状は、例えば図2に示されるように、意匠層2の厚みの大きい部分(凸部)と、厚みの小さい部分(凹部)とによって、形成されていてもよい。さらに、意匠層2による凹凸形状は、これら両方によって形成されていてもよい。図3に示されるように、意匠層2と絵柄層3との間には、必要に応じて、プライマー層4が形成されていてもよい。
水溶性フィルムは、本発明の水圧転写フィルムにおいて基材の役割を有し、水圧転写後に加飾成形品を得る際に除去されるものである。水溶性フィルムとしては、水溶性又は水膨潤性を有するものであればよく、従来水圧転写フィルムとして一般に使用されている水溶性フィルムの中から、適宜選択して用いることができる。
意匠層は、アクリルポリマーポリオールと艶消し剤を含む樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により形成されており、かつ、当該意匠層によって形成された凹部と、後述の絵柄層の暗色部分とが同調するように形成される層である。本発明においては、このような特定の樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により構成されており、かつ、意匠層によって形成された凹部と、後述の絵柄層の暗色部分とが同調するように形成されていることにより、意外にも、高い立体感を表出した意匠を樹脂成形品に付与することができ、さらには、例えば観察する角度によって意匠性が変化するような独特の意匠を樹脂成形品に付与し得る。
上記アクリルポリマーポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求められる、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜80,000であることがより好ましく、20,000〜50,000であることが特に好ましい。アクリルポリマーポリオールの分子量が1,000以上であると、耐溶剤性が改善し、絵柄層を形成した際に意匠層が溶解する等の不具合が起こりにくくなり、100,000以下であるとインキ化した際に粘度が低下したり、ゲル化しにくくなるため作業性が向上する。
イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートであればよく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートなどのポリイソシアネートが用いられる。
ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオールを主剤とし、イソシアネートと反応させてなる非架橋型ウレタン樹脂を使用でき、成形性、耐熱性、耐候性、絵柄層との密着性等の観点から、ポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネートとの組合せにより合成されるものが特に好ましい。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。
意匠層において、艶消し剤の具体例としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、及びケイ酸微粉末から選択される無機フィラーや、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は尿素系樹脂から選択される有機フィラーまたは樹脂ビーズが挙げられ、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いることもできる。これらの中でも、好ましくはシリカが挙げられる。
絵柄層は、加飾成形品に装飾性を与える層であり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層によって形成される模様は、相対的に明度の低い暗色部分を有している限り特に制限されず、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様も挙げられる。これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。また、絵柄層における暗色部分は、他の部分より相対的に明度の低い色であれば特に限定されないが、黒色とすることが特に好ましい。
本発明においては、所望により、意匠層と絵柄層との間に、プライマー層を設けてもよい。プライマー層を形成する樹脂としては、意匠層で用いるアクリルポリマーポリオールや、絵柄層で例示したバインダー樹脂と同様のものが挙げられ、溶媒に溶解した塗工液を公知の方法で塗布するなどして形成することができる。また、艶を調整して意匠感を高めるため、意匠層と絵柄層の同調による高い立体感を表出するため、プライマー層は艶消し剤を含んでいることが好ましい。プライマー層に用いる艶消し剤としては、意匠層の項で例示したものが使用できる。プライマー層を形成する樹脂としてアクリルポリマーポリオールを用いる場合、意匠層と同様の理由により、艶消し剤の体積平均粒径は1〜5μmとすることが好ましい。プライマー層が艶消し剤を含む場合、プライマー層が意匠層よりも低い艶を示すように、プライマー層における艶消し剤の含有率は意匠層における艶消し剤の含有率より多いことが好ましく、例えば1.5〜5.0倍とすることが好ましい。プライマー層の厚みとしては、通常0.5〜20μm程度である。
図1及び図2に示されるような、水溶性フィルム1と、意匠層2と、絵柄層3とを有する本発明の水圧転写フィルム10は、例えば、水溶性フィルムの表面上に凹凸形状を形成するようにして、アクリルポリマーポリオールと艶消し剤を含む樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により形成された意匠層2を積層する工程(A)と、意匠層2の上に、意匠層2によって形成された凹部2aと、絵柄層3における他の部分より相対的に明度の低い暗色部分暗色部分3aとが同調するように、絵柄層3を積層する工程(B)を含む製造方法によって製造することができる。
本発明の水圧転写フィルムを用いて、下記の工程(a)〜(d)により加飾成形品を製造することができる。なお、図1に示される水圧転写フィルム10を用いて製造される加飾成形品20は、図4に対応している。
工程(b)前記水圧転写フィルムの絵柄層側に活性剤組成物を塗布する活性剤塗布工程
工程(c)該工程(a)及び(b)を経た、水面に浮遊している水圧転写フィルム上に被転写体5を押圧し、水圧によって前記絵柄層を被転写体5の被転写面に密着させる工程
工程(d)該被転写体5の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程
工程(e):被転写体5の被転写面上にトップコート層を形成する工程。
工程(a)は、工程(b)の前又は後に行うことができる。水圧転写フィルム10は、水溶性フィルム1側が下向きで水面側に向くように水面上に浮遊させる。水圧転写フィルム10を水面に浮遊させるには、枚葉の印刷物を1枚ずつ浮遊させてもよく、また水を一方向に流し、その水面上に連続帯状の水圧転写フィルム10を、連続的に供給して浮遊させてもよい。
工程(b)は、工程(a)の前又は後に行うことができ、水圧転写フィルムの絵柄層側に活性剤組成物を塗布する工程である。この工程で活性剤組成物を塗布することにより、絵柄層の少なくとも一部が溶解乃至膨潤して軟化し(活性化し)、被転写体と密着しやすくなる。
絵柄層に塗布する活性剤組成物は、絵柄層を活性化して、被転写体の被転写面に転写させる機能を有する組成物であれば特に制限はなく、また、被転写体の被転写面に各層を転写させるまで蒸発しないような性状を有することが好ましい。このような活性剤組成物としては、例えばエステル類、アセチレングリコール類、エーテル類、及び樹脂を含む組成物が好ましく挙げられる。
工程(c)は、工程(a)及び工程(b)を経た、水面に浮遊している水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって絵柄層を被転写体の被転写面に密着させる工程である。水圧転写フィルムを浮かべ水圧を印加するための水は、該水圧転写フィルムの水溶性フィルムの種類などに応じ、適宣水温を調整するのがよく、好ましくは25〜50℃程度、より好ましくは25〜35℃である。
被転写体としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、繊維系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂、あるいはこれらを混合した樹脂のほか、鉄、アルミニウム、銅などの金属、陶磁器、ガラス、琺瑯などのセラミックス、木材などの材料からなる構造体を使用することができる。
脱膜工程(d)は、工程(c)の後に行われ、該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する工程である。被転写体の被転写面上に付着している水溶性フィルム1の除去は、例えば、水を用いてシャワー洗浄することで行うことができる。なお、シャワー洗浄の条件は、水溶性フィルム1を形成する材料などにより異なるが、通常は水温15〜60℃程度、洗浄時間10秒〜5分程度が好ましい。そして、工程(d)の後、被転写体を十分乾燥し水分を蒸発させる。
工程(e)は、被転写体の被転写面上に、必要に応じトップコート層を形成する工程である。工程(e)を行う場合、当該工程(e)においては、意匠層に対し、表面強度の向上、表面保護、表面の艶調整などのために必要に応じ塗装を施し、透明ないし半透明のトップコート層を形成する。
水溶性フィルムとして、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム(厚さ40μm)を用い、その片面に、下記のインキを用いて、グラビア印刷により意匠層(厚み3μm)を形成した。このとき、意匠層と絵柄層の同調が、下記の形態となるよう、意匠層を形成するインキの量を調整して、水溶性フィルムの表面上に意匠層が凹凸形状となるように形成した。次に、硝化綿とアルキッド樹脂とを80:20の質量比で含む下記のインキを用いて、意匠層の上に、グラビア印刷により、木目模様を有する絵柄層(3μm)を形成し、水溶性フィルム/意匠層/絵柄層が積層された水圧転写フィルムを得た。絵柄層の木目模様は、黒色インキ、焦茶色インキ、薄茶色インキの3種類のインキをこの順に用い、且つ黒色インキと焦茶色インキを柄状に、薄茶色インキを全面に印刷することにより形成し、黒色インキによって導管部分を表現した。
実施例1において、意匠層は、アクリルポリマーポリオール(重量平均分子量30,000、水酸基価80mgKOH/g)及びウレタンウレア樹脂(ガラス転移点40℃)を80:20の質量比で含み、さらに艶消し剤としてのシリカ(体積平均粒径5μm、吸油量250mL/100g)を含むインキを用いて形成した。アクリルポリマーポリオール及びウレタン樹脂の合計質量と、シリカとの質量比は、3:1とした。
硝化綿とアルキッド樹脂とを80:20の質量比で含み、着色剤として弁柄及びカーボンブラックを所定の配合比率で使用した着色インキ
(意匠層と絵柄層の同調)
実施例1において、意匠層と絵柄層は、意匠層によって形成される凹凸形状の凹部(低艶部分)と、絵柄層の木目模様の導管部分(暗色部分)とを同調させた。
意匠層を形成した後、絵柄層を形成する前に、下記のインキを用いて、グラビア印刷によりプライマー層(厚み1μm)を全面ベタで形成した以外は実施例1と同様にして、水溶性フィルム/意匠層/プライマー層/絵柄層が積層された水圧転写フィルムを得た。
実施例2において、プライマー層は、アクリルポリマーポリオール(重量平均分子量30,000、水酸基価80mgKOH/g)及びウレタンウレア樹脂(ガラス転移点40℃)を80:20の質量比で含み、さらに艶消し剤としてのシリカ(体積平均粒径5μm、吸油量250mL/100g)を含むインキを用いて形成した。アクリルポリマーポリオール及びウレタン樹脂の合計質量と、シリカとの質量比は、1:1とした。
実施例2において、意匠層を形成するインキに含まれる艶消し剤としてシリカ(体積平均粒径2μm、吸油量360mL/100g)を用いた以外は、実施例2と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
実施例1において、意匠層を形成するインキに含まれる艶消し剤としてシリカ(体積平均粒径10μm、吸油量200mL/100g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
実施例2において、意匠層を形成するインキに含まれる艶消し剤としてシリカ(体積平均粒径10μm、吸油量200mL/100g)を用いた以外は、実施例2と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
意匠層を形成するインキとして、下記のものを用い、さらに、意匠層と絵柄層の同調の形態を下記のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
(意匠層を形成するインキ)
比較例1において、意匠層は、硝化綿と、艶消し剤としてのシリカ(体積平均粒径5μm)を含むインキを用いて形成した。硝化綿とシリカ粒子の質量比は、1:1とした。
(意匠層と絵柄層の同調)
比較例1において、意匠層と絵柄層は、意匠層によって形成される凹凸形状の凸部(暗色部分)と、絵柄層の木目模様の導管部分(暗色部分)とを同調させた。
意匠層を形成するインキにシリカを配合しなかったこと以外は、比較例1と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
意匠層を形成するインキとして、下記のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
比較例3において、意匠層は、硝化綿と、艶消し剤としてのシリカ(体積平均粒径5μm)を含むインキを用いて形成した。硝化綿とシリカ粒子の質量比は、1:1とした。
意匠層を形成するインキにシリカを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、水圧転写フィルムを得た。
上記で得られた各水圧転写フィルムの絵柄層に、下記組成の活性剤組成物を3g/m2塗布し、スムージングロールで該活性剤組成物を均一にし、絵柄層の活性剤塗布工程(b)を経た後、水溶性フィルム側が下向きで水面側を向くように水面上に浮遊させた水圧転写フィルムに被転写体を押圧し、水圧によって絵柄層を被転写体の被転写面に密着させる工程(c)、及び水洗による脱膜工程(d)を経て、加飾成形品を得た。実施例1−5及び比較例1−4のいずれの水圧転写フィルムを用いた場合にも、被転写体に良好に追従し、転写加工性(追従性)は優れていた。
フタル酸系アルキッド樹脂 6質量部
マイクロシリカ(顔料) 2質量部
フタル酸ジブチル 17質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート) 60質量部
溶剤(ブチルセロソルブ) 15質量部
上記で得られた加飾成形品を目視により観察し、その意匠性について以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:意匠層の凹凸形状に対応する凹凸感が良好に表出されており、導管部分が凹部として認識され、繊細な立体感が得られた。
△:意匠層の凹凸形状に対応する凹凸感がやや低下したものの十分視認でき、実用にあたり問題が生じない程度の繊細な立体感が得られた。
×:意匠層の凹凸形状に対応する凹凸感が消失したため、繊細な立体感が得られなかった。
上記で得られた加飾成形品を、意匠層の面の水平方向から垂直方向まで観察する角度を変えながら観察した場合の意匠性の変化について、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:水平方向から垂直方向に観察角度が変化するにつれて、凹凸感をより大きく感じるようになり、観察角度によって意匠性が変化した
△:水平方向から45度方向にかけては、意匠性が変化したが、45度方向から垂直方向にかけては意匠性の変化がほとんどなかった
×:観察角度によっても、意匠性はあまり変化しなかった
実施例1−5及び比較例1,3で用いた意匠層を形成するインキについて、以下の方法でインキの貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示す。
評価方法:インキを常温で2週間保管後、手動で攪拌することで沈降した顔料がなくなるかを確認した。
◎:攪拌により容易に沈殿物が再分散し、調製直後とほとんど変わらない状態のインキを得られた
○:再分散に要する攪拌の時間がやや大きいものの、調製直後とほとんど変わらない状態のインキを得られた
△:攪拌後も沈殿物が容器の底部に多く付着しており、貯蔵安定性に問題があった
2 意匠層
2a 凹部
3 絵柄層
3a 暗色部分
4 プライマー層
5 被転写体
10 水圧転写フィルム
20 加飾成形品
Claims (11)
- 水溶性フィルムと、前記水溶性フィルムの表面上において凹凸形状を形成している意匠層と、絵柄層とをこの順に有する水圧転写フィルムであって、
前記意匠層は、アクリルポリマーポリオールと艶消し剤を含む樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により形成されており、
前記絵柄層は、当該絵柄層における他の部分より相対的に明度の低い暗色部分を有しており、
前記意匠層と前記絵柄層とは、前記意匠層によって形成された凹部と、前記絵柄層の暗色部分とが同調するように形成されている、水圧転写フィルム。 - 前記凹凸形状が、前記水溶性フィルムの表面上に前記意匠層を有する部分と、前記意匠層を有しない部分とによって形成されている、請求項1に記載の水圧転写フィルム。
- 前記意匠層を形成する樹脂組成物が、ウレタン樹脂を含む、請求項1または2に記載の水圧転写フィルム。
- 前記艶消し剤は、JIS K 5101−13−1:2004に準拠して測定した吸油量が230mL/100g以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
- 前記艶消し剤は、体積平均粒径が1〜5μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
- 前記艶消し剤が、シリカである、請求項1〜5のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
- 前記絵柄層が木目模様を形成しており、前記暗色部分が前記木目模様における導管部分を形成している、請求項1〜6のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
- 前記意匠層の凹凸形状の凹部が、凸部に比して相対的に艶の低い低艶部分である、請求項1〜7のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
- 以下の工程(A)及び(B)を順に有する、水圧転写フィルムの製造方法。
工程(A)水溶性フィルムの表面上に、アクリルポリマーポリオールと艶消し剤を含む樹脂組成物及びその硬化物の少なくとも一方により形成されている意匠層が、凹凸形状を形成するようにして、該意匠層を積層する工程
工程(B)前記意匠層の上に絵柄層を、前記意匠層によって形成された凹部と、前記絵柄層における他の部分より相対的に明度の低い暗色部分とが同調するように積層する工程 - 前記艶消し剤は、平均体積粒径が1〜5μmである、請求項9に記載の水圧転写フィルムの製造方法。
- 下記の工程(a)〜(d)を順に有する加飾成形品の製造方法。
工程(a)請求項1〜8のいずれかに記載の水圧転写フィルムを、水溶性フィルム側が下向きで水面側に向くように水面に浮遊させる工程
工程(b)前記水圧転写フィルムの絵柄層側に活性剤組成物を塗布する活性剤塗布工程
工程(c)該工程(a)及び(b)を経た、水面に浮遊している水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって前記絵柄層を被転写体の被転写面に密着させる工程
工程(d)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程
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