JP6451775B2 - 往復動ピストンエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、気筒内を往復動するピストンを備えた往復動ピストンエンジンに関する。
従来より、エンジンの燃費性能を高めるために機械損失を低減することが検討されている。
例えば、特許文献1には、気筒内を往復動するピストンを備えた往復動ピストンエンジンにおいて、ピストンが気筒内を往復動する際の気筒の内周面とピストンの外周面との間の摺動抵抗を小さくして、これにより機械損失の低減を図ったものが開示されている。
特開2016−121597号公報
しかし、従来の浮揚構造では、ピストンの外周面を気筒の内周面に対して浮揚させる浮揚力を十分に確保できない場合があった。すなわち、これらピストンと気筒と間に、空気、水、オイルなどの潤滑性流体を介在させて前記浮揚を実現させようとしても、エンジン負荷が高い場合のようにピストンに気筒の内周面に接近する方向の大きな力が作用した場合に、ピストンの外周面が気筒の内周面に接触してしまうことがあった。この場合、摺動抵抗を十分に低減させることはできない。
本発明の目的は、ピストンと気筒との間の摺動抵抗を低減させることができる往復動ピストンエンジンを提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明は、気筒内を上下方向に往復動するピストンと、当該ピストンにピストンピンを介して当該ピストンピンの軸周りに搖動可能に連結されるコンロッドとを備えた往復動ピストンエンジンにおいて、前記ピストンは、燃焼室の下面を構成するピストンヘッドと、当該ピストンヘッドから下方に延びるスカート部とを備え、前記スカート部は、前記ピストンピンの軸および前記気筒の中心軸と直交する方向についてスラスト側に位置するスラスト側スカート本体部と反スラスト側に位置する反スラスト側スカート本体部とを備え、前記スラスト側スカート本体部および反スラスト側スカート本体部は、前記気筒の内周面と隙間をおいて対峙し且つ当該内周面に対して上下方向に摺動する外周面を備え、前記気筒の内周面と前記スカート部の外周面との間には潤滑性流体が介在され、前記スラスト側スカート本体部の外周面と前記反スラスト側スカート本体部の外周面とは、上下方向に沿った断面において前記気筒の内周面側に張り出す張出形状部をそれぞれ有し、前記スラスト側スカート本体部の外周面は、さらに、ピストンの周方向に延びる複数の溝からなるミクロテクスチャ構造部を含み、前記張出形状部は、当該張出形状部の上下方向の中央に設けられて前記気筒の内周面に最も近い部分をマクロ側頂部、当該張出形状部の上下方向の両端部に設けられて前記気筒の内周面から最も遠い部分をマクロ側底部とし、前記マクロ側頂部における前記隙間を最小隙間h3、前記マクロ側底部における前記隙間を最大隙間h4とするとき、h4/h3=1.5〜5.0、の範囲に設定されており、前記ミクロテクスチャ構造部の前記溝の各々は、前記ピストンの周方向に延び且つ下側が深く上側が浅くなる傾き面を有し、前記ミクロテクスチャ構造部の前記溝の、前記気筒の内周面に最も近い部分をミクロ側頂部、最も遠い部分をミクロ側底部とし、前記ミクロ側頂部と前記気筒の内周面との間の隙間を最小隙間h1とし、前記ミクロ側底部と前記気筒の内周面との間の隙間を最大隙間h2とするとき、h2/h1=1.5〜5.0、の範囲に設定されており、前記ミクロテクスチャ構造部は、前記スラスト側スカート本体部の外周面に設けられた前記張出形状部のうちの上下方向の中央部分にのみ形成されており、前記反スラスト側スカート本体部の外周面は、ミクロテクスチャ構造部を具備しない外周面である、ことを特徴とする往復動ピストンエンジンを提供する(請求項1)。
この往復動ピストンによれば、スラスト側スカート本体部の外周面に形成された前記ミクロテクスチャ構造部の作用によって、ピストンが燃焼室内での混合気の燃焼に伴って押し下げられる際に、スラスト側スカート本体部が気筒の内周壁に対して浮揚するようになる。そのため、ピストンと気筒との間の摺動抵抗を低減できる。
具体的には、ピストンの下降時、前記潤滑性流体はスラスト側スカート本体部と気筒の内周面との間を下方から上方に相対的に流れる。これに対して、前記ミクロテクスチャ構造部が備えるミクロサイズの溝の各々は、下側が深く上側が浅くなる傾き面を有している。そのため、潤滑性流体は、前記傾き面によって比較的広い空間から比較的狭い空間に閉じ込められる動作を繰り返しながら上方に流れることになり、この閉じ込めの作用により、気筒の内周面に対してスラスト側スカート本体部の外周面に大きな浮揚力が発生する。
ここで、ピストンには、燃焼に伴って押し下げられる際にそのスラスト側の部分に最も強い横方向の力(気筒の内周面に近づく方向の力)が加えられるため、スラスト側の部分と気筒との摺動抵抗が高くなりやすい。これに対して、本実施形態では、ピストンのスカート部のうちスラスト側に設けられたスラスト側スカート本体部の外周面にのみミクロテクスチャ構造部が設けられている。従って、ミクロサイズの溝を有し比較的加工が難しいミクロテクスチャ構造部の加工領域を小さく抑えて作業性およびコストを良好にしつつ、効果的に気筒とピストンとの摺動抵抗を低減できる。
また、この構成によれば、ミクロテクスチャ構造部において、最小隙間h1と、最小隙間h1と最大隙間h2との隙間比h2/h1とが前記の数値範囲に設定されることで、スラスト側スカート本体部を気筒の内周面から一層良好に浮揚させることができ、前記摺動抵抗を格段に低減させることができる。
さらに、張出形状部において、最小隙間h3と最大隙間h4との比がh4/h3=1.5〜5.0、の範囲に設定されていることで、スラスト側スカート本体部と気筒の内周面との間の摺動抵抗をより一層低減できるとともに、反スラスト側スカート本体部と気筒の内周面との間の摺動抵抗も低減でき、ピストンと気筒との間の摺動抵抗をより確実に小さくできる。
具体的には、ピストンの上方および下方への移動時において、その移動方向の下流側から張出形状部と気筒の内周面との間に流入した潤滑性流体をマクロ側頂部付近において閉じ込めることができ、これにより気筒の内周面に対して両スカート本体部の外周面に浮揚力を生じさせることができる。しかも、前記最小隙間h3と、この最小隙間h3と前記最大隙間h4との隙間比h4/h3とが前記の数値範囲に設定されることで、両スカート本体部を気筒の内周面からより確実に浮揚させることができる。
前記構成において、前記ミクロテクスチャ構造部の前記溝は、当該溝の下側の開口縁と前記ミクロ側底部との間の第1面と、当該溝の上側の開口縁と前記ミクロ側底部との間の第2面と、を含み、前記第1面及び前記第2面は前記気筒の内周面に対して傾きを持つ平面であって、前記第1面は、前記気筒の内周面に対して前記第2面よりも大きい傾きを持つ面であり、前記第2面が前記傾き面であるのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、ピストンの下降時において、比較的大きい傾きを持つ前記第1面の領域において潤滑性流体の流れが拡がり、比較的小さい傾きを持つ前記第2面(前記傾き面)によって潤滑性流体の流れが徐々に閉じ込められてゆくという動作が繰り返され、これにより良好な浮揚力が生成される。
前記構成において、前記第1面は、前記気筒の内周面に対する傾き角が70°〜90°の範囲に設定されているのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、前記溝の上下方向の幅の大半を、前記傾き面として機能する前記第2面にて構成することができる。従って、前記潤滑性流体の閉じ込め効果を高めることができる。
前記構成において、前記複数の溝が上下方向に並ぶピッチは、1μm〜1mmの範囲に設定されているのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、前記複数の溝のピッチが適正化され、一層大きい浮揚力を発生させることが可能となる。
前記構成において、前記複数の溝は、前記ピストンの周方向の両端部分が閉鎖されるように前記スラスト側スカート本体部の外周面のうち前記ピストンの周方向の中央部分に設けられているのが好ましい(請求項)。
この構成によれば、溝内に流入した潤滑性流体が溝からピストンの周方向の外側に抜け出るのを抑制できる。従って、潤滑性流体をより確実に傾き面と気筒の内周面との間に閉じ込めて、前記閉じ込め効果を高めることができる。
前記構成において、前記ピストンピンの軸は、当該軸と直交する断面において、前記ピストンの中心軸よりも反スラスト側に位置するのが好ましい(請求項)。
このようにすれば、前記のように、ミクロテクスチャ構造部によってピストンのスラスト側の部分と気筒の内周面との接触を回避しながら、ピストンピンの軸を反スラスト側に位置させることで燃焼の爆発力をコンロッドに効果的に付与することができる。
本発明によれば、ピストンと気筒の内周面との間に良好な浮揚力を発生させ、両者間の摺動抵抗を低減させることができる。
往復動ピストンエンジンの、気筒軸に沿い且つクランク軸と直交する方向の概略断面図である。 図1の要部拡大図であって、シリンダブロック及びピストンの断面図である。 図2のIII−III線断面図である。 スラスト側スカート本体部の周辺を拡大して示した概略斜視図である。 図2の一部を拡大して示した図である。 図5のVI−VI線における断面を周方向に展開した図である。 ミクロテクスチャ構造部における潤滑性流体の流れを模式的に示した断面図である。 ミクロテクスチャ構造部のプロファイルを説明するための模式図である。 第1摺動面と第2摺動面との間の最小隙間と最大隙間との比である隙間比と、負荷容量係数との関係を示すグラフである。 図2の一部を拡大した断面図である。 スラスト側スカート摺動面の一部を拡大した断面図である。 変形例1に係るミクロテクスチャ構造部を示した断面図である。 変形例2に係るミクロテクスチャ構造部を示した断面図である。
(1)エンジンの全体構造
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係る往復動ピストンエンジンについて説明する。往復動ピストンエンジン100は、気筒2内を往復動するピストン5と、コンロッド8を介してピストン5に連結されたクランク軸7とを備えたエンジンである。気筒2は、円筒面状の内周面を有している。図1は、気筒2の中心軸に沿い且つクランク軸7の中心軸(回転中心線)X2と直交する断面における往復動ピストンエンジン100の概略断面図である。往復動ピストンエンジン100は、例えば、図1の紙面と直交する方向に複数の気筒2が設けられた直列4気筒の4サイクルエンジンである。図2は、図1の一部を拡大して示した図である。
往復動ピストンエンジン100は、気筒2が形成されたシリンダブロック3、シリンダブロック3に取付けられるシリンダヘッド4を備える。以下では、図1の上下方向であって気筒2に対するピストン5の往復動方向を上下方向といい、シリンダヘッド4側を上、シリンダブロック3側を下として説明する。また、適宜、図1の左右方向を左右方向として説明する。このように、請求項および以下の説明における上下方向はピストンの往復動方向を表し、上、下、はそれぞれシリンダヘッド4側と、シリンダブロック3側とを表している。従って、例えば、ピストン5が水平方向に往復動する場合には、請求項および以下の説明における上下方向は、水平方向を表すことになる。
気筒2内には、ピストン5の冠面5Aと気筒2の内周壁(内周面、以下、適宜、気筒内周壁という)2Aと、シリンダヘッド4の下面とによって燃焼室6が区画されている。シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。なお、図1では、これらポート9、10開口部分を開閉する吸気バルブおよび排気バルブの図示は省略している。また、図1では、シリンダヘッド4に設けられる点火プラグ等の図示も省略している。
ピストン5には、コンロッド8の上端部81が連結されている。具体的には、コンロッド8の上端部81とピストン5とは、クランク軸7の中心軸X2と平行な方向に延びる円筒状のピストンピン51によって連結されている。コンロッド8はピストン5に対してピストンピン51の中心軸X3回りに搖動可能に連結されている。
コンロッド8の下端部82には、クランク軸7が連結されている(エンジン100が直列多気筒エンジンの場合は、クランク軸7は気筒2の配列方向に延びている)。燃焼室6内で燃料と空気の混合気が燃焼すると、ピストン5とコンロッド8とが上下方向に往復動し、これに伴ってクランク軸7がその中心軸X2回りに回転する。
(2)ピストンの詳細構造
ピストン5は、その上部を構成するピストンヘッド20と、ピストンヘッド20から下方に延びるスカート部30とを含む。ピストンヘッド20は、燃焼室6の下面として機能するピストン冠面5Aを有する。本実施形態では、ピストンヘッド20の外周面に、コンプレッションリング等がはめ込まれる溝29が形成されている。また、本実施形態では、ピストンヘッド20とスカート部30とは一体物として成形されている。
図3は、図2のIII−III線に沿う断面の概略図である。スカート部30は、上下方向と直交する断面において、気筒2の内周壁2Aに沿うように円弧状にそれぞれ延びる左右一対のスカート本体部31、32と、これらスカート本体部31、32間に位置して略平板状の外周面を有する一対の平板部39とを含む。
具体的には、ピストン5は、ピストンピン51の中心軸(軸)X3および気筒軸と直交する方向についてスラスト側に位置するスラスト側スカート本体部31と、反スラスト側に位置する反スラスト側スカート本体部32とを有する。
図1の例では、燃焼室6内での燃焼に伴って上死点付近に位置するピストン5に下向きの力が加えられると破線に示すようにコンロッド8の下端部82がピストンピン51の中心軸X3に対して右側に移動してクランク軸7が時計回りに回転するようになっている。従って、図1において、左側がクランク軸7の回転方向の上流側およびスラスト側であり、右側がクランク軸7の回転方向の下流側および反スラスト側である。つまり、図2に示すように、上死点付近に位置するピストン5に下向きの力Fbが加えられたとき、コンロッド8には、この力Fbのうち右斜め下方に延びるコンロッド8の軸線に沿う右斜め下向きの成分Fcが加えられ、ピストン5には左向きの力Fs(いわゆる横方向に作用するスラスト力)が加えられることになる。
ここで、本実施形態では、図2に示す断面において、ピストンピン51の中心軸X3は、ピストン5の中心線X1に対して右側つまり反スラスト側にずれており、燃焼の爆発力が効果的にクランク軸7に伝達されるようになっている。つまり、ピストン5が上死点付近において前記爆発力を受けて押し下げられるとき、図1および図2に示す断面において、コンロッド8の軸線はピストンピン51の中心軸X3上の点から右斜め下側に傾斜する。そのため、ピストンピン51の中心軸X3を前記のように配置すれば、ピストン5が前記のように押し下げられた際に、図1の破線で示すように、爆発力を受けるピストン5の冠面5Aとコンロッド8の軸線とのなす角度がより直角に近くなるように、ピストン5を傾けること(図1および図2において反時計回りであってクランク軸7の回転方向と反対方向に傾けること)ができ、コンロッド8およびクランク軸7に爆発力を効率よく伝達することができる。
各スカート本体部31、32は、それぞれ、気筒内周壁2Aと対峙して、ピストン5の往復動に伴って気筒内周壁2Aに沿って上下方向に摺動する外周面31S、32Sを有している。
各スカート本体部31、32の外周面31S、32Sと気筒内周壁2Aとの間には、それぞれ隙間G1、G2が形成されている。隙間G1、G2を含むピストン5の外周面と気筒内周壁2Aとの間には、潤滑性流体Fが介在している。潤滑性流体Fは、液体又は気体のいずれであっても良く、例えば空気(粘度=1.8×10−5[Pa・s])、水(8.9×10−4[Pa・s])、或いは0W−20クラスの低粘度オイル(6.8×10−3[Pa・s])であり、特に好ましくは空気である。
(2−1)ミクロテクスチャ構造
スラスト側スカート本体部31の外周面31S(以下、適宜、スラスト側外周面31Sという)には、ピストン5の往復動時(つまり、スラスト側スカート本体部31の気筒内周壁2Aに対する上下方向の摺動時)に、スラスト側外周面31Sを気筒内周壁2Aに対して浮揚させるためのミクロテクスチャ構造部40が備えられている。
図4は、スラスト側スカート本体部31周辺を拡大して示した概略斜視図である。図5は、図2の一部を拡大した図であってスラスト側外周面31Sに設けられたミクロテクスチャ構造部40を拡大して示した図である。図6は、図5のVI−VI線における断面を周方向に展開した図である。
ミクロテクスチャ構造部40は、スラスト側外周面31Sに形成されたピストン5の周方向(つまり上下方向と直交する方向)に延びる複数の溝41からなる。各溝41は、ミクロンオーダーの溝幅を有する微小な溝であり、上下方向に所定のピッチで配列されている。なお、溝41の延びる方向は、上下方向に対して完全に直交する方向でなくとも良く、後述する浮揚の効果が得られる限りにおいて前記直交方向から傾いていても良い。例えば、前記直交方向に対して10°〜20°程度傾いた方向に延びる溝41であっても良い。
本実施形態では、スラスト側外周面31Sのうち上下方向の中央且つピストン5の周方向の中央となる部分であって燃焼に伴うピストン5の下降時に気筒内周壁2Aに最も近接しやすい部分、にのみミクロテクスチャ構造部40が設けられている。なお、スラスト側スカート本体部31と、反スラスト側スカート本体部32とは、図1に示す断面においてピストン5の左右両端となる部分からピストン5の周方向の両側(図1の紙面の手前側と奥側)にほぼ同じ距離延びるような形状を有している。これに伴い、図6に示すように、各溝41は、その周方向の両端部分が閉鎖されている。
<溝の構造及び作用>
この実施形態では、ミクロテクスチャ構造部40が備える複数の溝41は、上下方向に沿う断面において、鋸歯形状を形成している。
具体的には、気筒内周壁2Aは、上下方向に沿う断面において上下方向に延びる面であり、溝41の各々は、気筒内周壁2Aに最も近い部分であるミクロ側頂部42と、最も遠い部分であるミクロ側底部43と、ミクロ側頂部42とミクロ側底部43との間の傾き面44とを備える。傾き面44は、下側が深く、上側が浅くなる傾き面である。
一つの溝41の開口縁は、上側の開口縁である上側縁部41Uと下側の開口縁である下側縁部41Dとを含む。これら縁部41U、41Dは、上下方向に隣接する一対の頂部42でもある。換言すると、一つの溝41のミクロ側頂部42が、この一つのミクロ側溝41の上側に隣接する溝41の下側縁部41Dを兼ねている。つまり、隣接する溝41間にプラトー部のような平面部は存在せず、複数の溝41が上下方向に連設されている。従って、溝ピッチL1は、上側縁部41Uと下側縁部41Dとの間の上下方向の長さ(溝幅)と同じである。
溝41は、下側縁部41Dとミクロ側底部43との間の第1面45と、上側縁部41Uとミクロ側底部43との間の第2面46とを有している。第1面45は気筒内周壁2Aと直交して、ピストン5の周方向に延びる平面である。第2面46は、気筒2の内周壁2Aに対して傾きを持ちピストン5の周方向に延びる平面である。ただし、第2面46は、第1面45のような直交面ではなく、比較的緩い傾きを持つ平面である。本実施形態では、第2面46が前述の傾き面44である。また、第2面46(傾き面44)の上下方向の幅が溝幅(溝ピッチL1)と一致している。
複数の溝41は、微小な切削刃を用いた各種の切削加工によって形成することができる。例えば、ピストン5を旋盤で回転させながら切削刃をスラスト側外周面31Sに当接させることで、必要な溝41を形成することができる。なお、スラスト側外周面31Sの一部の領域にのみ溝41を設ける場合には、微小な切削刃を楕円又は円の軌跡を描きながらスラスト側外周面31Sに当接させる楕円振動切削加工によって、必要な溝41を形成することができる。
図7は、図5に対応する図であってピストン5の往復動時の潤滑性流体Fの流れFAを模式的に示した断面図である。ピストン5が下方に移動すると、気筒内周壁2Aとスラスト側外周面31Sとの間の隙間G1には、潤滑性流体Fがピストン5の移動方向の下流側である下側から上側へ向けて相対的に流れ込み、隙間G1には下側から上側へ流れる流れFAが形成される。この流れFAは層流である。
ここで、溝41の各々は、前記のように下側が深く上側が浅くなる傾き面44を有する。従って、ピストン5の下降時において、前記層流FAは、比較的広い空間から比較的狭い空間に閉じ込められる動作を繰り返しながら流れる。つまり、上側に向かうに連れて気筒内周壁2Aとの隙間G1を狭くする傾き面44によって、流れFAは徐々に狭い空間へ閉じ込められ、密度が高められる。このような閉じ込めの作用により、スラスト側外周面31Sには気筒内周壁2Aから離間する方向の力つまり気筒内周壁2Aに対して浮揚する大きな浮揚力が付与されることになる。そして、これにより、スラスト側外周面S31と気筒内周壁2Aとの間の摺動抵抗が低減される。
特に、本実施形態では、前記のように、各溝41の周方向の両端部分が閉鎖されているので、溝41に入り込んだ潤滑性流体Fが溝41内から周方向の外側に抜けてしまうのが抑制され、潤滑性流体Fは効果的に気筒内周壁2Aと傾き面44との間に閉じ込められる。
<ミクロテクスチャ構造部のプロファイル>
ミクロテクスチャ構造部40による摺動浮揚の作用を効果的に発現させるためには、溝41のプロファイルを適正化する必要がある。このプロファイルにおいて重要となるのが、溝41のミクロ側頂部42と気筒内周壁2Aとの間の距離である最小隙間h1と、ミクロ側底部43と気筒内周壁2Aとの間の距離である最大隙間h2との比である隙間比h2/h1である。また、最小隙間h1を、最適な範囲に設定することも肝要となる。この点を、図8を参照して説明する。
図8は、ミクロテクスチャ構造部40のプロファイルを説明するための模式図である。以下の説明では、所定の被摺動部材Aの被摺動面SAに沿って、傾き面からなる摺動面SBを有する摺動部材Bが摺動方向H1へ摺動するときについて説明する。摺動面SBは、被摺動面SAに最も近い部分となる頂部Pと、頂部Pの摺動方向H1の下流側に配置され被摺動面SAに対して最も遠い底部Qとを有し、摺動方向H1の上流側から下流側に向かって被摺動面SAから徐々に離間する形状を有している。
摺動部材Bが摺動方向H1へ速度Uで摺動しているとき、摺動面SBと被摺動面SAとの間に生じる摺動浮揚力Wは、次の式(1)により求めることができる。
式(1)において、ηは摺動面SBと被摺動面SAとの間に介在する潤滑性流体Fの粘度、Bは摺動面SBの摺動方向の長さ(図8における頂部Pから底部Qまでの長さ)、Cは摺動面SBの摺動方向H1と直交する方向の長さ(図8の紙面と直交する方向の長さ)、Uは摺動面SBの摺動速度である。h1は、最小隙間であって、頂部Pと被摺動面SAとの間の距離、つまり、摺動面SBと被摺動面SAとの間の隙間Gの最小値である。mは、前述の隙間比であって、底部Qと被摺動面SAとの間の距離、つまり、隙間Gの最大値を最大隙間h2としたときの、最小隙間h1と最大隙間h2との比率であり、m=h2/h1で表される。
式(1)において、第2項目を負荷容量係数Kwとすると(Kw=6/(m−1){lnm−2(m−1)/(m+1)})、摺動浮揚力Wはこの負荷容量係数Kwに比例することになる。
図9は、負荷容量係数Kwと隙間比mとの関係を示したグラフである。このグラフに示されるように、摺動浮揚力Wは、隙間比mが2.2のときに最大となり、隙間比mがこの値から離間するほど小さくなる。この知見より、隙間比mを2.2近傍に設定すれば高い摺動浮揚力Wを得ることができる。具体的には、隙間比mを1.5〜5.0の範囲とすることで、摺動浮揚力Wを、図9のラインC以上とすることができる。この場合、摺動浮揚力Wとして、その最大値(隙間比mが2.2のときの値)の60%以上となる高い値を得ることができる。
式(1)に基づくと、最小隙間h1が小さいほど摺動浮揚力Wは大きくなる。しかし、小さすぎる最小隙間h1は、被摺動面SAと摺動面SBとの間に生じる摩擦係数を大きくする。つまり、最小隙間h1について、前記摩擦係数を小さく抑えることのできる最適な範囲が存在する。前記摩擦係数の大小は、摺動面SBの摺動浮揚時における摩擦の大小に相当し、摩擦係数が小さいほど良好な摺動浮揚が実現できる。この観点から、望ましい最小隙間h1は、0.5μm〜2.0μmの範囲である。h1が2.0μmを超過すると、上掲の式(1)より、摺動浮揚力Wが小さくなる傾向が顕著となる。一方、h1が0.5μmを下回ると、前記摩擦係数が大きくなり、良好な摺動浮揚を阻害する傾向が顕著となる。
以上より、スラスト側外周面31Sに設けられたミクロテクスチャ構造部40のプロファイルの溝41のプロファイルとしては、
隙間比m=h2/h1=1.5〜5.0
の範囲に設定することが望ましい。さらに、
最小隙間h1=0.5μm〜2.0μm
の範囲に設定することが望ましい。
最大隙間h2、及び最大隙間h2と最小隙間h1との差分h2−h1である溝深さDは、h1及びmが設定されることにより、自ずと決定される。好ましい溝深さDは、(h1_min×m_min−h1_min)〜(h1_max×m_max−h1_max)より、0.25μm〜8.0μmの範囲である。
なお、望ましい最小隙間h1は、スラスト側外周面31Sおよびピストン5が現に摺動動作(往復動動作)を実行している際に望まれる隙間である。そのため、ピストン5が往復動に伴って熱膨張した状態で前記の最小隙間h1が確保されるよう、常温設計値を定めることが望ましい。
また、気筒内周壁2Aは、平滑度が高い面であることが望ましい。換言すると、最小隙間h1は、気筒内周壁2Aの表面粗さよりも大きい値に設定されていることが望ましい。これは、摺動浮揚時において、スラスト側外周面31Sと気筒内周壁2Aとが接触しないようにするためである。例えば、気筒内周壁2Aの表面粗さ(算術平均粗さRa)が0.6μmである場合、最小隙間h1を0.5μmに設定すると、溝41のミクロ側頂部42が気筒内周壁2Aに接触し得る。この接触を回避できるよう、最小隙間h1は、気筒内周壁2Aの表面粗さの2倍程度以上に設定することが望ましい。
また、複数の溝41の溝ピッチL1は、1μm〜1mmの範囲、好ましくは5μm〜100μmの範囲に設定されていることが望ましい。短すぎる溝ピッチL1及び長すぎる溝ピッチL1を持つ溝41からなるミクロテクスチャ構造部40は、いずれも前述の閉じ込めの作用を良好に発揮することができない。上記の範囲に溝ピッチL1を設定することで、大きい浮揚力を発生させることが可能となる。
(2−2)マクロプロファイル
本実施形態では、ピストン5と気筒内周壁2Aとの摺動抵抗をより一層小さく抑えるために、スカート本体部31、32に摺動抵抗を抑えることができるマクロな構造が適用されている。
ここで、ミクロテクスチャ構造部40は、スカート本体部31、32のうちスラスト側スカート本体部31にのみ設けられており、反スラスト側スカート本体部32には設けられていないが、前記マクロ構造はスラスト側スカート本体部31と反スラスト側スカート本体部32との両方に設けられている。
図10は、図2の一部を拡大した図であってスカート本体部31、32周辺を示した断面図である。以下では、主として反スラスト側スカート本体部32について説明する。
反スラスト側スカート本体部32の外周面である反スラスト側外周面32Sは、上下方向に沿う断面において、気筒内周壁2A側に張り出す張出形状部Mを有している。ここでは、張出形状部Mが弓形形状を有する例を示している。また、本実施形態では、反スラスト側外周面32S全体が気筒内周壁2A側に張り出しており、この全体が張出形状部Mとして機能している。
張出形状部Mは、上下方向の中央部に、最も気筒内周壁2A側に張り出したマクロ側頂部P1を有し、上下方向の両端部に、最も気筒内周壁2A側への張り出しが小さいマクロ側底部Q1、Q2を有している。なお、図10等では理解を容易にするために、反スラスト側外周面32Sの弓形形状を大きく誇張して描いており、実際には目視では判別困難なミクロンオーダーの張り出しを有する弓形形状である。
この張出形状部Mにおいて、ピストン5が往復動すると、周辺に存在する潤滑性流体Fは反スラスト側外周面32Sと気筒内周壁2Aとの間の隙間G2に引き込まれる。行き場を失った潤滑性流体Fは、反スラスト側外周面32Sと気筒内周壁2Aとの間を拡大させる方向に抗力を生じさせる。この抗力が、反スラスト側外周面32Sを気筒内周壁2Aから浮揚させるように作用する。より具体的には、反スラスト側スカート本体部32に上方向の速度U2が与えられたときには、上側のマクロ側底部Q2からマクロ側頂部P1に向かって潤滑性流体Fが隙間G2に入り込み、反スラスト側外周面32Sと気筒内周壁2Aとの間に摺動浮揚力が生じる。一方、反スラスト側スカート本体部32に下側の速度U1が与えられたときには、下側のマクロ側底部Q1からマクロ側頂部P1に向かって潤滑性流体Fが隙間G2に入り込み、これにより、反スラスト側外周面32Sと気筒内周壁2Aとの間に摺動浮揚力が生じる。
このように、張出形状部Mは、反スラスト側外周面32Sの上下方向の全長を利用して摺動浮揚力を発生させるマクロプロファイルを有する面である。
このマクロプロファイルについても、図8、図9及び式(1)に示した技術思想を適用することができる。すなわち、張出形状部Mのマクロ側頂部P1と気筒内周壁2Aとの間の距離を最小隙間h3とし、マクロ側底部Q1、Q2と気筒内周壁2Aとの間の距離を最大隙間h4とするとき、その隙間比m=h4/h3を、1.5〜5.0の範囲に設定することが望ましい。なお、最小隙間h3は、自ずと溝41についての最小隙間h1と同じく0.5μm〜2.0μmとなる。また、最大隙間h4及び山高さDA(h4−h3)は、最小隙間h3及び隙間比mが設定されることにより、自ずと決定される。
また、このマクロプロファイルに関しても、気筒内周壁2Aの平滑度は高くされることが望ましい。従って、最小隙間h3は、気筒内周壁2Aの表面粗さよりも大きい値、例えば、気筒内周壁2Aの表面粗さの2倍程度以上に設定することが望ましい。
このように設定された張出形状部Mは、前記のように、スラスト側外周面31Sにも設けられている。ただし、スラスト側外周面31Sでは、図10の破線に示すように、張出形状部Mにさらにミクロテクスチャ構造部40が設けられている。具体的には、張出形状部Mのうちマクロ側頂部P1から上方および下方にわたる領域にミクロテクスチャ構造部40が設けられており、この部分を拡大した図11に示すように、気筒内周壁2A側に張り出すスラスト側外周面31Sに対して複数の溝41が形成されている。
(3)作用等
以上のように、本実施形態では、スラスト側外周面31Sつまりスラスト側に位置するスラスト側スカート本体部31の外周面31Sにミクロテクスチャ構造部40が設けられて、このスラスト側外周面31Sに、ピストン5の周方向に延び且つ下側(反燃焼室側)が深く上側(燃焼室側)が浅くなる傾き面44を有する複数の溝41が形成されている。
そのため、前記のように、ピストン5の下降時において、傾き面44によって潤滑性流体Fの流れFAを徐々に狭い空間へ閉じ込めてその密度を高め、これによりスラスト側外周面31Sに気筒内周壁2Aに対する大きな浮揚力を付与することができ、スラスト側外周面31Sと気筒内周壁2Aとの間の摺動抵抗を低減することができる。
特に、本実施形態では、ミクロ側頂部42と気筒内周壁2Aとの隙間を最小隙間h1とし、ミクロ側底部43と気筒内周壁2Aとの間の隙間を最大隙間h2として、これらが、h2/h1=1.5〜5.0、の範囲に設定されている。また、ミクロ側頂部42と気筒内周壁2Aとの隙間である最小隙間h1が、h1=0.5μm〜2.0μmの範囲に設定されている。そのため、スラスト側スカート本体部を気筒の内周壁から一層良好に浮揚させることができ、前記摺動抵抗を格段に低減させることができる。
しかも、本実施形態では、スカート本体部31、32のうちスラスト側のスカート本体部(スラスト側スカート本体部)31の外周面31Sであって気筒内周壁2Aと最も接触しやすい部分にのみミクロテクスチャ構造部40が設けられている。すなわち、前記のように、燃焼に伴うピストン5の下降時にはスラスト側向きの力Fsが加えられるため、ピストン5はスラスト側に変位しやすく、スラスト側スカート本体部31の外周面31Sと気筒内周壁2Aとが最も接触しやすくなる。従って、ミクロサイズの溝を有し比較的加工が難しいミクロテクスチャ構造部40の加工領域を小さく抑えて作業性およびコストを良好にしつつ、効果的に気筒2とピストン5との摺動抵抗を低減できる。
特に、本実施形態では、ピストンピン51の中心軸X3がピストン5の中心線X1に対して右側つまり反スラスト側にずれており、前記のようにピストン5はクランク軸7の回転方向と反対方向つまりスラスト側に傾きやすく、スラスト側スカート本体部31の外周面31Sと気筒内周壁2Aとがより接触しやすいが、この接触を回避することができる。すなわち、ピストンピン51の中心軸X3をピストン5の中心線X1に対して反スラスト側にずらして前記のように燃焼の爆発力を効果的にクランク軸7に伝達しつつ、前記接触を回避して気筒2とピストンと5の摺動抵抗を低減できる。
さらに、本実施形態では、スラスト側外周面31Sと反スラスト側外周面32Sとに、張出形状部Mをそれぞれ設けている。そして、張出形状部Mが、マクロ側頂部P1と気筒内周壁2Aとの隙間を最小隙間h3とし、マクロ側底部Q1、Q2と気筒内周壁2Aとの間の隙間を最大隙間h4として、これらが、h4/h3=1.5〜5.0、の範囲に設定されている。特に、本実施形態では、この最小隙間h3が、h3=0.5μm〜2.0μmの範囲に設定されている。そのため、スラスト側スカート本体部31の外周面31Sを気筒内周壁2Aから一層良好に浮揚させることができるとともに、反スラスト側スカート本体部32の外周面32Sも気筒内周壁2Aから浮揚させることができ、前記摺動抵抗を格段に低減させることができる。
また、本実施形態では、ミクロテクスチャ構造部40の溝41の下側縁部41Dとミクロ側底部43との間の第1面45と、溝41の上側縁部41Uとミクロ側底部43との間の第2面44とが、気筒内周壁2Aに対して傾きを持つ平面であり、且つ、第1面45が、気筒内周壁2Aに対して第2面46よりも大きい傾きを持つ面であり、第2面46が傾き面44として機能している。
そのため、比較的大きい傾きを持つ第1面45の領域において潤滑性流体Fの流れを拡がらせた後、比較的小さい傾きを持つ第2面46によって潤滑性流体Fの流れを徐々に閉じ込めてゆくことができ、ミクロテクスチャ構造部40およびスラスト側外周面31Sに良好な浮揚力を付与することができる。
特に、第1面45が気筒内周壁2Aに対して直交する方向に延びるように、つまり、第1面45の気筒内周壁2Aに対する傾き角が90°に設定されており、溝41の上下方向の幅の大半を、傾き面44として機能する第2面46にて構成することができる。従って、潤滑性流体Fの閉じ込め効果を高めることができる。
また、複数の溝41が上下方向に並ぶピッチが、1μm〜1mmの範囲に設定されているので、一層大きい浮揚力を発生させることができる。
また、本実施形態では、各溝41の周方向の両端部分が閉鎖されている。そのため、前記のように、溝41に入り込んだ潤滑性流体Fが溝41内から周方向の外側に抜けてしまうのが抑制されて、潤滑性流体Fが効果的に気筒内周壁2Aと傾き面44との間に閉じ込められる。従って、より確実に浮揚力を高めることができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ピストンピン51の中心軸X3を、ピストン5の中心線X1と交差するように配置してもよい。
また、前記実施形態では、溝41の摺動方向(上下方向)H1の断面形状が鋸歯型のものを例示したが、傾き面44が摺動方向H1の下流側(下側)が深く上流側(上側)が浅くなる傾向を具備している限りにおいて形状を変形して良い。例えば、底部43が鋭角的なものとせず、R面としてもよい。また、傾き面44が緩やかな凸面又は凹面であっても良い。
<変形例1>
図12は、変形例1に係るミクロテクスチャ構造部40aを備えたスラスト側外周面31Sの断面図である。前記の実施形態では、溝41の第1面45が気筒内周壁2Aに対して直交する方向に延びる平面である例を示した。変形例1では、第1面45が前記直交する方向から傾いた面である例を示す。
ミクロテクスチャ構造部40aの溝41は、その下側縁部41Dである頂部42と底部43との間の第1面45と、上側縁部41Uである頂部42と底部43との間の第2面46とを含む。第1面45及び第2面46のいずれも第1摺動面1Sに対して傾きを持つ平面である。第1面45は、第1摺動面1Sに対して傾き角θ1を持ち、第2面46は、第1摺動面1Sに対して傾き角θ2を持つ。ここで、第1面45は、第2面46よりも大きい傾きを持つ面(θ1>θ2)である。第1面45の、第1摺動面1Sに対する傾き角θ1の望ましい範囲は、70°〜90°である。なお、第2面46の傾き角θ2は、θ1に対して十分小さいことが望ましく、例えば10°〜55°程度の範囲から選択することができる。
第1面45は、気筒内周壁2Aに対して直交する平面であることが望ましいが、前記の制限の範囲で前記直交する方向に対して傾いた平面であってもよい。このような第1面45を持つ溝41であれば、潤滑性流体Fの層流(流れFA)がスラスト側外周面31Sと気筒内周壁2Aとの間の隙間G1を流入方向H2に沿って流れる際、比較的大きい傾き角θ1を持つ第1面45の領域において急に前記層流の幅が拡がり、比較的小さい傾き角θ2を持つ第2面46(傾き面44)によって徐々に前記層流が閉じ込められてゆくという動作が繰り返される。このような層流の動作によって、良好な浮揚力が生成される。
<変形例2>
図13は、変形例2に係るミクロテクスチャ構造部40bを備えたスラスト側外周面31Sの断面図である。前記の実施形態では、複数の溝41が摺動方向(上下方向)H1に密に連設されている例を示した。変形例2では、隣接する溝41間にプラトー(plateau)が設けられている例を示す。
ミクロテクスチャ構造部40bは、複数の溝41と、隣接する溝41の間に配置されたプラトー部49とを含む。プラトー部49は、気筒内周壁2Aと略平行な平面である。プラトー部49は、一の溝41の上側縁部41Uとなる頂部42と、前記一の溝41の上側に隣接する溝41の下側縁部41Dとの間に延びる平面である。この場合、溝ピッチL1は、摺動方向H1における溝41の上側縁部41U〜下側縁部41Dの長さである溝幅L2と、プラトー部49の長さとが加算されたものとなる。このように、溝間にプラトー部49が存在している態様であっても、プラトー部49が溝幅L2に対して長すぎるものでない限り、浮揚力を発生させることができる。
プラトー部49は平滑度が高い面であることが望ましい。プラトー部49は、最小隙間h1を規定する頂部42と同じ高さ位置にある面であり、その平滑度が低いと第1摺動面1Sとの接触が問題になるからである。この場合、ミクロ側頂部42と気筒内周壁2Aとの間の最小隙間h1は、気筒内周壁2Aの表面粗さと、プラトー部49の表面粗さとを合算した合算表面粗さよりも大きい値に設定されることが望ましい。例えば、気筒内周壁2A及びプラトー部49の算術平均粗さRaがいずれも0.5μmである場合、最小隙間h1はこれらの合算表面粗さ1μmを越える値、好ましくは2倍以上の値に設定することが望ましい。
2 気筒
2A 気筒内周壁(気筒の内周面)
5 ピストン
30 スカート部
31 スラスト側スカート本体部
31S スラスト側外周面(スラスト側スカート本体部の外周面)
32 反スラスト側スカート本体部
32S 反スラスト側外周面(反スラスト側スカート本体部の外周面)
40 ミクロテクスチャ構造部
41 溝
42 ミクロ側頂部
43 ミクロ側底部
44 傾き面
M 張出形状部
F 潤滑性流体
L1 溝ピッチ
P1 マクロ側頂部
Q1、Q2 マクロ側底部

Claims (6)

  1. 気筒内を上下方向に往復動するピストンと、当該ピストンにピストンピンを介して当該ピストンピンの軸周りに搖動可能に連結されるコンロッドとを備えた往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記ピストンは、燃焼室の下面を構成するピストンヘッドと、当該ピストンヘッドから下方に延びるスカート部とを備え、
    前記スカート部は、前記ピストンピンの軸および前記気筒の中心軸と直交する方向についてスラスト側に位置するスラスト側スカート本体部と反スラスト側に位置する反スラスト側スカート本体部とを備え、
    前記スラスト側スカート本体部および反スラスト側スカート本体部は、前記気筒の内周面と隙間をおいて対峙し且つ当該内周面に対して上下方向に摺動する外周面を備え、
    前記気筒の内周面と前記スカート部の外周面との間には潤滑性流体が介在され、
    前記スラスト側スカート本体部の外周面と前記反スラスト側スカート本体部の外周面とは、上下方向に沿った断面において前記気筒の内周面側に張り出す張出形状部をそれぞれ有し、
    前記スラスト側スカート本体部の外周面は、さらに、ピストンの周方向に延びる複数の溝からなるミクロテクスチャ構造部を含み、
    前記張出形状部は、当該張出形状部の上下方向の中央に設けられて前記気筒の内周面に最も近い部分をマクロ側頂部、当該張出形状部の上下方向の両端部に設けられて前記気筒の内周面から最も遠い部分をマクロ側底部とし、前記マクロ側頂部における前記隙間を最小隙間h3、前記マクロ側底部における前記隙間を最大隙間h4とするとき、
    h4/h3=1.5〜5.0、
    の範囲に設定されており、
    前記ミクロテクスチャ構造部の前記溝の各々は、前記ピストンの周方向に延び且つ下側が深く上側が浅くなる傾き面を有し、
    前記ミクロテクスチャ構造部の前記溝の、前記気筒の内周面に最も近い部分をミクロ側頂部、最も遠い部分をミクロ側底部とし、前記ミクロ側頂部と前記気筒の内周面との間の隙間を最小隙間h1とし、前記ミクロ側底部と前記気筒の内周面との間の隙間を最大隙間h2とするとき、
    h2/h1=1.5〜5.0、
    の範囲に設定されており、
    前記ミクロテクスチャ構造部は、前記スラスト側スカート本体部の外周面に設けられた前記張出形状部のうちの上下方向の中央部分にのみ形成されており、
    前記反スラスト側スカート本体部の外周面は、ミクロテクスチャ構造部を具備しない外周面であることを特徴とする往復動ピストンエンジン。
  2. 請求項1に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記ミクロテクスチャ構造部の前記溝は、当該溝の下側の開口縁と前記ミクロ側底部との間の第1面と、当該溝の上側の開口縁と前記ミクロ側底部との間の第2面と、を含み、
    前記第1面及び前記第2面は前記気筒の内周面に対して傾きを持つ平面であって、
    前記第1面は、前記気筒の内周面に対して前記第2面よりも大きい傾きを持つ面であり、
    前記第2面が前記傾き面である、ことを特徴とする往復動ピストンエンジン。
  3. 請求項に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記第1面は、前記気筒の内周面に対する傾き角が70°〜90°の範囲に設定されている、ことを特徴とする往復動ピストンエンジン。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記複数の溝が上下方向に並ぶピッチは、1μm〜1mmの範囲に設定されている、ことを特徴とする往復動ピストンエンジン。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記複数の溝は、前記ピストンの周方向の両端部分が閉鎖されるように前記スラスト側スカート本体部の外周面のうち前記ピストンの周方向の中央部分に設けられている、ことを特徴とする往復動ピストンエンジン。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の往復動ピストンエンジンにおいて、
    前記ピストンピンの軸は、当該軸と直交する断面において、前記ピストンの中心軸よりも反スラスト側に位置する、ことを特徴とする往復動ピストンエンジン。
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