(1)エンジンの全体構造
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係る往復動ピストンエンジンについて説明する。図1は、往復動ピストンエンジン100の概略断面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。
往復動ピストンエンジン100は、気筒2内を往復動する複数のピストン5を備える。また、往復動ピストンエンジン100は、複数のピストン5にそれぞれ連結される複数のコンロッド8と、複数のコンロッド8に共通して連結されるクランク軸7とを含むクランク機構を備える。往復動ピストンエンジン100は、複数の気筒2が特定方向に並ぶ直列多気筒エンジンであり、クランク軸7は特定方向つまり気筒の配列方向(以下、気筒配列方向という場合がある)に延びている。クランク軸7は、ピストン5の往復動に伴って、気筒配列方向に延びる軸X1(以下、適宜、クランク中心軸X1という)回りに回転する。図1の例では、往復動ピストンエンジン100は、4つの気筒2を有する4気筒エンジンである。また、往復動ピストンエンジン100は、例えば4サイクルエンジンである。以下では、適宜、図1の上下方向であってピストン5の往復動方向を単に上下方向として説明する。
往復動ピストンエンジン100は、円筒面状の内周面をそれぞれ有する複数の気筒2が形成されたシリンダブロック3、シリンダブロック3に取り付けられるシリンダヘッド4を備える。
気筒2内には、ピストン5の冠面5Aと気筒2の内周壁2Aと、シリンダヘッド4の下面とによって燃焼室6が区画されている。燃焼室6内で燃料と空気の混合気が燃焼すると、ピストン5は押し下げられる。シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9及び排気ポート10が形成されている。なお、図2では、これらポート9、10の開口部分を開閉する吸気バルブおよび排気バルブや、点火プラグ等の図示は省略している。
ピストン5には、コンロッド8の上端部81が連結されている。具体的には、コンロッド8の上端部81とピストン5とは、クランク中心軸X1と平行な方向に延びる円筒状のピストンピン59によって連結されている。コンロッド8はピストン5に対してピストンピン59の中心軸回りに搖動可能に連結されている。
(2)クランク軸周りの構造
クランク軸7の気筒配列方向の両端部には、略円板状のフライホイール91および略円板状のクランクプーリー92が取り付けられている。
クランク軸7は、気筒配列方向にそれぞれ並ぶ、複数のクランクジャーナル71と、複数のクランクピン72と、クランクジャーナル71とクランクピン72とをつなぐクランクアーム73とを備える。クランクアーム73のクランクピン72との接続側端部とは反対側の端部には、バランスウェイト74が備えられている。
クランクジャーナル71は、クランク軸7の回転軸となる部分である。クランクピン72は、コンロッド8の下端部82(以下、コンロッド大端部82という)に連結される部分であり、各コンロッド大端部82に対応する位置に設けられている。本実施形態では、往復動ピストンエンジン100が直列4気筒エンジンであるのに伴い、4つのクランクピン72が気筒配列方向にほぼ等間隔に配設されている。
図3は、ピストン5が上死点にあるときの、クランク軸7およびコンロッド8を概略的に示す断面図、図4は、クランク角が上死点から進行したときのこれらを示す断面図である。図3、図4および図2を用いて、クランク軸7周りの詳細構造について説明する。
クランクジャーナル71は、クランク中心軸X1を中心とする円柱状を有する。クランクジャーナル71は、シリンダブロック3に形成された軸受孔31に嵌め込まれた環状の主軸受メタル(主軸受部)35により、クランク中心軸X1周りに回転可能に支持されている。主軸受メタル35は、帯状の金属円が環状に成型された滑り軸受けである。
主軸受メタル35が嵌め込まれる軸受孔31は、シリンダブロック3(詳細にはロアブロック)に設けられたクランク中心軸X1と直交する方向に延びる壁部材に形成されている。この壁部材は、シリンダブロック3の気筒配列方向の両端部付近と、隣接する気筒2の中間位置に対応する部分に設けられている。そして、クランクジャーナル71は、クランク軸7の気筒配列方向の両端部付近と、隣接するクランクピン72どうしの間の部分に設けられている。本実施形態では、往復動ピストンエンジン100が直列4気筒エンジンであるのに伴い、5つのクランクジャーナル71と、5つの主軸受メタル35が設けられている。
クランクピン72は、クランクジャーナル71よりもクランク軸7の径方向外側に位置しており、クランクジャーナル71よりも径方向外側の位置でクランク中心軸X1回りに回転する。クランクピン72は、クランク中心軸X1と平行に延びる線を中心とする円柱状を有する。
クランクピン72は、コンロッド大端部82に形成された軸受孔82aに嵌め込まれた環状のコンロッド側軸受メタル85(コンロッド側軸受部)により、コンロッド大端部82に対して相対的に回転可能に支持されている。本実施形態では、コンロッド側軸受メタル85も、主軸受メタル35と同様に、帯状の金属部材により形成されている。
図4に示すように、ピストン5およびコンロッド8の往復動時、コンロッド大端部82がクランクピン72に対して搖動し、クランクピン72は矢印C1で示すようにクランク中心軸X1回りに回転する(図4では時計回りに回転する)。これに伴い、クランクピン72は、矢印C2´で示すように、コンロッド大端部82およびコンロッド側軸受メタル85に対して相対的にクランクピン72の中心軸回りに回転する(図4の例ではクランクピン72はコンロッド側軸受メタル85に対して反時計回りに回転する)。
このように、ピストン5の往復動時、クランクピン72とコンロッド側軸受メタル85とは互いに相対的に回転し、クランクピン72の外周面72aは、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aに対して摺動する。つまり、コンロッド側軸受メタル85は、クランクピン72の外周面72aに対して相対的に所定の方向C2(前記C2´と反対の方向)に摺動する。そして、コンロッド側軸受メタル85は、クランクピン72の外周面72aに対して所定の方向C2に沿って摺動する摺動面85aとして機能する内周面(第2内周面)85aを有している。コンロッド側軸受メタル85の内周面85aとクランクピン72の外周面72aとは、隙間G1をおいて対峙している。
また、ピストン5の往復動時、クランクジャーナル71は主軸受メタル35に対して矢印C3´で示すように回転し(図4の例では、クランク軸7およびクランクジャーナル71は、ピストン5の往復動に伴って時計回りに回転する)、クランクジャーナル71の外周面71aは、主軸受メタル35の内周面35aに対して相対的に所定の方向C3(前記C3´と反対の方向)に摺動する。そして、主軸受メタル35は、クランクジャーナル71の外周面71aに対して所定の方向C3に沿って摺動する摺動面35aとして機能する内周面(第1内周面)35aを有している。クランクジャーナル71の外周面71aと主軸受メタル35の内周面35aとは、隙間G2をおいて対峙している。
前記隙間G1、G2には、潤滑性流体Fが介在している。潤滑性流体Fは、液体又は気体のいずれであっても良く、例えば空気(粘度=1.8×10−5[Pa・s])、水(8.9×10−4[Pa・s])、或いは0W−20クラスの低粘度オイル(6.8×10−3[Pa・s])である。
本実施形態では、隙間G1、G2には、低粘度オイルが供給されるようになっている。簡単に説明すると、シリンダブロック3およびクランク軸7には、シリンダブロック3の外部と前記隙間G1、G2とをつなぐオイル流路60が形成されており、オイルパン(不図示)からオイルポンプ(不図示)によって汲み上げられた低粘度オイルがこれらオイル流路60を通って隙間G1、G2に供給される。
本実施形態では、コンロッド側軸受メタル85と主軸受メタル35とに、クランク軸7の回転時におけるこれらとクランクピン72およびクランクジャーナル71との間の摺動抵抗つまり摩擦抵抗を低減するための構造が採用されている。この構造について次に説明する。
(2−1)張出形状部
主軸受メタル35の摺動面(内周面)35aとコンロッド側軸受メタル85の摺動面(内周面)85aとは、クランク中心軸X1と直交する断面において、それぞれ、対峙するクランクジャーナル71の外周面71a(以下、適宜、被摺動面71aという)およびクランクピン72の外周面72a(以下、適宜、被摺動面72aという)側に張り出す張出形状部Mを有する。本実施形態では、各摺動面35a、85aの全体が、被摺動面71a、72a側に張り出す張出形状部Mとして機能している。なお、図4では張出形状部Mが誇張して描かれているが、実際には目視では判別困難なミクロンオーダーの張り出しを有する形状である。張出形状部Mは、各摺動面35a、85aと一体に被摺動面71a、72aに対して所定の方向C2、C3に摺動する。
張出形状部Mは、被摺動面71a、72aに向けて最も張り出した部分であるマクロ側頂部(頂部)P1と、被摺動面71a、72aに対して最も離間した部分であるマクロ側底部Q1を有する。マクロ側底部(底部)Q1は、マクロ側頂部P1よりも、摺動面35a、85aの摺動方向C2、C3の下流側に設けられる。本実施形態では、摺動方向C2、C3において、マクロ側頂部P1が最も上流側に位置し、周方向に一周回してマクロ側底部Q1が最も下流側に位置している。また、本実施形態では、張出形状部Mは、クランク中心軸X1と直交する断面において、マクロ側頂部P1からマクロ側底部Q1に向けて徐々に拡径する螺旋形状を有し、マクロ側頂部P1において最も突出し、続いて径方向外側へ急激に退行して、マクロ側底部Q1に繋がっている。
張出形状部Mにおいて、摺動面35a、85aが被摺動面71a、72aに対して摺動すると、摺動面35a、85aを被摺動面71a、72aから浮揚させるよう力が作用しこれらの摺動抵抗が低減される。
図5は、コンロッド側軸受メタル85付近を拡大して示した断面図である。ここでは、図5を用い、コンロッド側軸受メタル85における作用を説明する。コンロッド側軸受メタルの摺動面85aが被摺動面72aつまりクランクピン72の外周面72aに対してこれら面の周方向に沿う方向C2に摺動すると、隙間G1に存在する潤滑性流体Fに、摺動方向C2とは逆方向の流入方向H10のフローが生じる。つまり、流路面積の大きいマクロ側底部Q1から流路面積の小さいマクロ側頂部P1に向けて潤滑性流体Fが流れ込む。これにより、潤滑性流体Fはマクロ側頂部P1付近において摺動面85aと被摺動面72aとの間に閉じ込められる。行き場を失った潤滑性流体Fは、摺動面85aと被摺動面72aを拡大させる方向に抗力を生じさせ、この抗力が、摺動面35a、85aを被摺動面71a、72aから浮揚させるように作用する。
同様に、主軸受メタル35においても、その摺動面35aが被摺動面71aに対して摺動すると、潤滑性流体Fはマクロ側頂部P1付近において摺動面85aと被摺動面72aとの間に閉じ込められ、主軸受メタル35の内周面35aとクランクジャーナル71の外周面71aとの間に浮揚力が生じる。
ここで、前記抗力は、潤滑性流体Fの流路面積が最も小さくなるマクロ側頂部P1付近において最も高くなる。そこで、本実施形態では、前記浮揚力が効果的に得られるように、摺動面35a、85aと被摺動面71a、72aとが最も接触しやすい部分に、マクロ側頂部P1が配置されるようになっている。具体的には、燃焼室6内で混合気が燃焼することで生じた爆発荷重(筒内燃焼圧力)がピストン5に加えられると、クランクピン72およびクランクジャーナル71の所定の領域に非常に高い荷重が伝達されて両者が接触しやすくなる。そこで、この荷重伝達領域R1、R2にマクロ側頂部P1を配置している。
例えば、往復動ピストンエンジン100が、圧縮自己着火式型エンジンの場合では、クランク角=0°〜20°の範囲で筒内燃焼圧力が最も高くなる。そこで、本実施形態では、図3に示すように、主軸受メタル35とコンロッド側軸受メタル85とにおいて、ピストン5が上死点に位置する状態で、コンロッド8の上端部81の軸心つまりピストンピン59の中心軸と、コンロッド大端部82の軸心つまりクランクピン72の回転中心線と、を結ぶ線分8Aが摺動面35a、85aと交差する点の近傍に、マクロ側頂部P1が配置されている。本実施形態では、コンロッド側軸受メタル85は、この交差点のうち上側の部分にマクロ側頂部P1が配置され、主軸受メタル35は、この交差点のうち下側の部分にマクロ側頂部P1が配置されている。
<マクロプロファイル>
張出形状部Mによる摺動浮揚の作用を効果的に発現させるためには、そのプロファイルを適正化する必要がある。このプロファイルにおいて重要となるのが、マクロ側頂部P1と被摺動面71a、72aとの間の距離である最小隙間h1と、マクロ側底部Q1と被摺動面71a、72aとの間の距離である最大隙間h2との比である隙間比h2/h1である。また、最小隙間h1を、最適な範囲に設定することも肝要となる。この点を、図6の模式図を参照して説明する。
図6を用いた以下の説明では、所定の被摺動部材Aの被摺動面SAに沿って、傾き面からなる摺動面SBを有する摺動部材Bが摺動方向H1へ摺動するときについて説明する。摺動面SBは、被摺動面SAに最も近い部分となる頂部Pと、頂部Pの摺動方向H1の下流側に配置され被摺動面SAに対して最も遠い底部Qとを有し、摺動方向H1の上流側から下流側に向かって被摺動面SAから徐々に離間する形状を有している。
摺動部材Bが摺動方向H1へ速度Uで摺動しているとき、摺動面SBと被摺動面SAとの間に生じる摺動浮揚力Wは、次の式(1)により求めることができる。
式(1)において、ηは摺動面SBと被摺動面SAとの間に介在する潤滑性流体Fの粘度、Bは摺動面SBの摺動方向の長さ(図6における頂部Pから底部Qまでの長さ)、Cは摺動面SBの摺動方向H1と直交する方向の長さ(図6の紙面と直交する方向の長さ)、Uは摺動面SBの摺動速度である。h1は、最小隙間であって、頂部Pと被摺動面SAとの間の距離、つまり、摺動面SBと被摺動面SAとの間の隙間Gの最小値である。mは、前述の隙間比であって、マクロ側底部Qと被摺動面SAとの間の距離、つまり、隙間Gの最大値を最大隙間h2としたときの、最小隙間h1と最大隙間h2との比率であり、m=h2/h1で表される。
式(1)において、第2項目を負荷容量係数Kwとすると(Kw=6/(m−1)2{lnm−2(m−1)/(m+1)})、摺動浮揚力Wはこの負荷容量係数Kwに比例することになる。
図7は、負荷容量係数Kwと隙間比mとの関係を示したグラフである。このグラフに示されるように、摺動浮揚力Wは、隙間比mが2.2のときに最大となり、隙間比mがこの値から離間するほど小さくなる。この知見より、隙間比mを2.2近傍に設定すれば高い摺動浮揚力Wを得ることができる。具体的には、隙間比mを1.5〜5.0の範囲とすることで、摺動浮揚力Wを、図7のラインC以上とすることができる。この場合、摺動浮揚力Wとして、その最大値(隙間比mが2.2のときの値)の60%以上となる高い値を得ることができる。
式(1)に基づくと、最小隙間h1が小さいほど摺動浮揚力Wは大きくなる。しかし、小さすぎる最小隙間h1は、被摺動面SAと摺動面SBとの間に生じる摩擦係数を大きくする。つまり、最小隙間h1について、前記摩擦係数を小さく抑えることのできる最適な範囲が存在する。前記摩擦係数の大小は、摺動面SBの摺動浮揚時における摩擦の大小に相当し、摩擦係数が小さいほど良好な摺動浮揚が実現できる。この観点から、望ましい最小隙間h1は、0.5μm〜2.0μmの範囲である。h1が2.0μmを超過すると、上掲の式(1)より、摺動浮揚力Wが小さくなる傾向が顕著となる。一方、h1が0.5μmを下回ると、前記摩擦係数が大きくなり、良好な摺動浮揚を阻害する傾向が顕著となる。
以上より、主軸受メタル35およびコンロッド側軸受メタル85に設けられた張出形状部Mのプロファイルとしては、
隙間比m=h2/h1=1.5〜5.0
の範囲に設定することが望ましい。さらに、
最小隙間h1=0.5μm〜2.0μm
の範囲に設定することが望ましい。
最大隙間h2、及び最大隙間h2と最小隙間h1との差分h2−h1である山高さDAは、h1及びmが設定されることにより、自ずと決定される。好ましい山高さDAは、(h1_min×m_min−h1_min)〜(h1_max×m_max−h1_max)より、0.25μm〜8.0μmの範囲である。
なお、望ましい最小隙間h1は、摺動部材Bつまり張出形状部Mおよびピストン5が現に摺動動作を実行している際に望まれる隙間である。そのため、クランクジャーナル71およびクランクピン72の回転および軸受メタル35、85に対する摺動動作に伴って熱膨張した状態で前記の最小隙間h1が確保されるよう、常温設計値を定めることが望ましい。
また、被摺動面つまりクランクジャーナル71の外周面71aおよびクランクピン72の外周面72aを、平滑度が高い面として、最小隙間h1を、これら外周面71a、72aの表面粗さよりも大きい値に設定することが望ましい。これは、摺動浮揚時において、摺動面35a、85aと被摺動面71a、72aとが接触しないようにするためである。例えば、クランクジャーナル71の外周面71aおよびクランクピン72の外周面72aの表面粗さ(算術平均粗さRa)が0.6μmである場合、最小隙間h1を0.5μmに設定すると、前記接触が生じ得る。この接触を回避できるよう、最小隙間h1は、クランクジャーナル71の外周面71aおよびクランクピン72の外周面72aの表面粗さの2倍程度以上に設定することが望ましい。
(2−2)コンロッド側軸受メタルのミクロテクスチャ構造部
コンロッド側軸受メタル85には、張出形状部Mに加えて前記浮揚力を高めるためのミクロテクスチャ構造部40が備えられている。つまり、コンロッド側軸受メタル85の摺動面(内周面)85aには、張出形状部Mのマクロプロファイルによって創出される浮揚をアシストするために、ミクロテクスチャ構造部40が重畳的に配置されている。図8は、コンロッド側軸受メタル85を概略的に示した斜視図である。
本実施形態では、ミクロテクスチャ構造部40の加工領域を少なく抑えつつ浮揚力が効果的に得られるように、マクロ側頂部P1が配置される領域R1付近の領域であってクランクピン72に高い荷重が伝達される領域R11、および、これと対向する領域であってピストン5から高い慣性力が加えられて領域R1、R11と同様にコンロッド側軸受メタル85の摺動面(内周面)85aとクランクピン72の被摺動面(外周面)72aとが接触しやすい領域R12にミクロテクスチャ構造部40が設けられている。一方、本実施形態では、気筒配列方向(コンロッド側軸受メタル85の摺動方向と直交する方向)については、ミクロテクスチャ構造部40は摺動面85aの全体にわたって設けられている。
図9は、図3の一部を拡大した図であってミクロテクスチャ構造部40を拡大して示した、気筒配列方向と直交する断面図である。
ミクロテクスチャ構造部40は、コンロッド側軸受メタル85の摺動面85aに形成された気筒配列方向(つまりコンロッド側軸受メタル85のクランクピン72に対する摺動方向と直交する方向)に延びる複数の溝41からなる。各溝41は、ミクロンオーダーの溝幅を有する微小な溝であり、コンロッド側軸受メタル85のクランクピン72に対する摺動方向に所定のピッチで配列されている。なお、溝41の延びる方向は、前記摺動方向に対して完全に直交する方向でなくとも良く、後述する浮揚の効果が得られる限りにおいて前記直交方向から傾いていても良い。例えば、前記直交方向に対して10°〜20°程度傾いた方向に延びる溝41であっても良い。
<溝の構造及び作用>
この実施形態では、ミクロテクスチャ構造部40が備える複数の溝41は、気筒配列方向と直交する断面において、鋸歯形状を形成している。
具体的には、クランクピン72の外周面72aは前記のように円筒面であり、溝41の各々は、クランクピン72の外周面72aに最も近い部分であるミクロ側頂部42と、最も遠い部分であるミクロ側底部43と、ミクロ側頂部42とミクロ側底部43との間の傾き面44とを備える。傾き面44は、コンロッド側軸受メタル85のクランクピン72に対する摺動方向C2の下流側が深く、上流側が浅くなる傾き面である。
一つの溝41の開口縁は、コンロッド側軸受メタル85の摺動方向C2の上流側の開口縁である上流側縁部41Uと下流側の開口縁である下流側縁部41Dとを含む。これら縁部41U、41Dは、上下方向に隣接する一対のミクロ側頂部42でもある。換言すると、一つの溝41のミクロ側頂部42が、この一つの溝41の上側に隣接する溝41の下流側縁部41Dを兼ねている。つまり、隣接する溝41間にプラトー部のような平面部は存在せず、複数の溝41が上下方向に連設されている。従って、溝ピッチL1は、上流側縁部41Uと下流側縁部41Dとの間の上下方向の長さ(溝幅)と同じである。
溝41は、下流側縁部41Dとミクロ側底部43との間の第1面45と、上流側縁部41Uとミクロ側底部43との間の第2面46とを有している。第1面45はクランクピン72の径方向および気筒配列方向に延びる平面である。第2面46は、クランクピン72の外周面72aに対して傾きを持ち気筒配列方向に延びる平面である。ただし、第2面46は、第1面45のような直交面ではなく、比較的緩い傾きを持つ平面である。本実施形態では、第2面46が前述の傾き面44である。また、第2面46(傾き面44)の摺動方向の幅が溝幅(溝ピッチL1)と一致している。
複数の溝41は、微小な切削刃を用いた各種の切削加工によって形成することができる。例えば、ピストン5を旋盤で回転させながら切削刃を摺動面(コンロッド側軸受メタル85の内周面)85a当接させることで、必要な溝41を形成することができる。また、摺動面85aの一部の領域にのみ溝41を設ける場合には、微小な切削刃を楕円又は円の軌跡を描きながら前記内周面85aに当接させる楕円振動切削加工によって、必要な溝41を形成することができる。
図10は、図9に対応する図であって、クランクピン72とコンロッド側軸受メタル85との摺動時の潤滑性流体Fの流れFAを模式的に示した断面図である。コンロッド側軸受メタル85がその摺動方向C2の下流側に速度H1で移動すると、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aとクランクピン72の外周面72aとの間の隙間G1には、それぞれ潤滑性流体Fが前記摺動方向C2の上流側に向けて相対的に流れ込み、隙間G1には摺動方向C2の下流側から上流側へ流れる流れFAが形成される。この流れFAは層流である。
ここで、溝41の各々は、前記のように摺動方向C2の下流側が深く上流側が浅くなる傾き面44を有する。従って、コンロッド側軸受メタル85の摺動時において、前記層流FAは、比較的広い空間から比較的狭い空間に閉じ込められる動作を繰り返しながら流れる。つまり、上側に向かうに連れてクランクピン72の外周面72aとの隙間Gを狭くする傾き面44によって、流れFAは徐々に狭い空間すなわち流路面積が小さい領域へ閉じ込められ、密度が高められる。このような閉じ込めの作用により、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aにはクランクピン72の外周面72aから離間する方向の力つまりクランクピン72に対して浮揚する大きな浮揚力が付与されることになる。そして、これにより、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aとクランクピン72の外周面72aとの間の摺動抵抗が低減される。
<ミクロテクスチャ構造部のプロファイル>
ミクロテクスチャ構造部40のプロファイルについても、図6、図7及び式(1)に示した技術思想を適用することができる。すなわち、ミクロ側頂部42とクランクピン72の外周面72aとの間の距離を最小隙間h3とし、ミクロ側底部43とクランクピン72の外周面72aとの間の距離を最大隙間h4とするとき、その隙間比m=h4/h3を、1.5〜5.0の範囲に設定することが望ましい。なお、最小隙間h3は、自ずと張出形状部Mについての最小隙間h1と同じく0.5μm〜2.0μmとなる。また、最大隙間h4及び溝深さD(h4−h3)は、最小隙間h3及び隙間比mが設定されることにより、自ずと決定される。
また、このミクロプロファイルに関しても、最小隙間h3は、クランクピン72の外周面72aの表面粗さよりも大きい値、例えば、クランクピン72の外周面72aの表面粗さの2倍程度以上に設定することが望ましい。
また、複数の溝41の溝ピッチL1は、1μm〜1mmの範囲、好ましくは5μm〜100μmの範囲に設定されていることが望ましい。短すぎる溝ピッチL1及び長すぎる溝ピッチL1を持つ溝41からなるミクロテクスチャ構造部40は、いずれも前述の閉じ込めの作用を良好に発揮することができない。上記の範囲に溝ピッチL1を設定することで、大きい浮揚力を発生させることが可能となる。
(2−3)主軸受メタルとミクロテクスチャ構造部との関係
ここで、前記のようにミクロテクスチャ構造部40を設ければ浮揚力が高められる。しかしながら、ミクロテクスチャ構造部40は、複数の溝41を有する構造である。そのため、ミクロテクスチャ構造部40を主軸受メタル35の張出形状部Mに設けると、かえって浮揚力が低下するおそれがある。この点について説明する。
図11は、図1のうちクランク軸7周辺を拡大して示した図である。なお、図11では、図が明瞭になるように断面を示す斜線の一部は省略している。
ピストン5の往復動時、クランク軸7には、ピストン5、コンロッド8、クランクピン72、バランスウェイト74等の往復動あるいは回転(搖動)運動に伴う慣性力が付与され、これにより、クランク軸7は、そのクランク中心軸X1が上下方向あるいは/およびこれと直交する方向に振れるように振動する。
ここで、前記のように、クランク軸7の気筒配列方向の両端には、それぞれ重量の比較的大きいフライホイール91およびクランクプーリー92が接続されている。そのため、クランク中心軸X1の振幅は、クランク軸7のうち特定方向の両端に近づくほど大きくなる。そして、クランク中心軸X1は、その振動途中において、図11の鎖線で示すように気筒配列方向にまっすぐに延びるラインL91に対して、図11の破線で示すラインL92のように上下方向等の振動方向に大きく傾くようになる。具体的には、クランク中心軸X1上に設けられたクランクジャーナル71が、前記ラインL91に対して大きく傾くことになる。なお、図11では、クランク中心軸X1が上下方向に振れる場合について説明したが、クランク中心軸X1が図11の紙面と直交する方向等に振れる場合も、同様に、クランク中心軸X1は、クランク中心軸X1方向の両端部の振幅が最も大きくなるように振動する。
図12は、クランクジャーナル71が前記ラインL91に対して傾いている状態を示した断面図である。この図12に示すように、ラインL91に対してクランクジャーナル71が比較的大きく傾くと、クランクジャーナル71の外周面(被摺動面)71aと、主軸受メタル35の内周面(摺動面)35aとの離間距離が、ラインL91に沿う方向の端部付近で過剰に大きくなってしまう。
そのため、主軸受メタル35の内周面35aに、ミクロテクスチャ構造部40の溝41が形成されていると、溝41の底部とクランクジャーナル71の外周面71aとの間の隙間G2の寸法が過剰に大きくなってしまう。そして、図12の矢印に示すように、潤滑性流体Fがこの比較的大きい隙間部分を通って主軸受メタル35の内周面35aとクランクジャーナル71の外周面71aとの間から外部に逃げてしまい、張出形状部Mによる浮揚力の効果が低減してしまう。
そこで、本実施形態では、コンロッド側軸受メタル85の張出形状部Mにはミクロテクスチャ構造部40を設ける一方、主軸受メタル35の張出形状部Mにはミクロテクスチャ構造部40を設けない。つまり、主軸受メタル35の張出形状部Mはミクロテクスチャ構造部40を具備しない張出形状部とする。
ここで、前記のように、クランク軸7の振幅は、クランク軸7の気筒配列方向の両端部において最も大きくなる。換言すると、図11に示すように、この振幅はクランク軸7の気筒配列方向の中央部分では小さくなる。従って、気筒配列方向の両端部の主軸受メタル35でのみミクロテクスチャ構造部40を省略し、これらを除く主軸受メタル35には張出形状部Mに加えてミクロテクスチャ構造部40を設けてもよい。特に、クランク軸7の気筒配列方向の中央に位置するクランクジャーナル71の振幅および傾きは小さいので、主軸受メタル35のうち気筒配列方向の中央に位置する主軸受メタル35にミクロテクスチャ構造部40を設ければ、これによって浮揚力を高めることが可能になる。
(3)作用等
以上のように、本実施形態では、主軸受メタル35の内周面35aおよびコンロッド側軸受メタル85の内周面85aに張出形状部Mを設け、且つ、その最小隙間h1および隙間比mを前記のように設定することで、クランク軸7の回転時において、張出形状部Mのマクロ側頂部P1付近の部分と、対峙するクランクジャーナル71の外周面71aおよびクランクピン72の外周面72aとの間に、潤滑性流体Fを閉じ込めることができる。そして、これによって、クランクジャーナル71およびクランクピン72を張出形状部Mおよび各軸受メタル35、85に対して浮揚させることができる。そのため、クランクジャーナル71およびクランクピン72と各軸受メタル35、85との間の摺動抵抗を低減できる。
しかも、本実施形態では、クランクピン72の外周面72aと対峙するコンロッド側軸受メタル85の内周面85aに設けられた張出形状部Mにミクロテクスチャ構造部40が設けられて、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aに、気筒配列方向つまりコンロッド側軸受メタル85の内周面85aのクランクピン72に対する摺動方向と直交する方向に延び且つこの摺動方向下流側が深く上流側が浅くなる傾き面44を有する複数の溝41が形成されている。
そのため、傾き面44によって潤滑性流体Fの流れFAを徐々に狭い空間へ閉じ込めてその密度を高め、これによりコンロッド側軸受メタル85の内周面85aとクランクピン72の外周面72aとの間に大きな浮揚力を発生させることができ、これらの間の摺動抵抗を一層低減することができる。
さらに、本実施形態では、このようにコンロッド側軸受メタル85の内周面85aにはミクロテクスチャ構造部40を設ける一方、主軸受メタル35の内周面35aにはミクロテクスチャ構造部40を設けていない。そのため、前記のように、ミクロテクスチャ構造部40ひいては溝41が主軸受メタル35の内周面35aに設けられることで主軸受メタル35とクランクジャーナル71との間の隙間が大きくなりこの隙間に潤滑性流体Fを閉じ込めることができなくなるのを回避することができ、主軸受メタル35に設けた張出形状部Mによる摺動低減効果を高く確保することができる。また、主軸受メタル35にミクロテクスチャ構造部40ひいてはミクロサイズの溝を形成する必要がなく、加工の手間を格段に低減できる。
また、本実施形態では、コンロッド側軸受メタル85に設けたミクロテクスチャ構造部40において、ミクロ側頂部42とクランクピン72の外周面(被摺動面)72aとの隙間を最小隙間h3とし、ミクロ側底部43とクランクピン72の外周面72aとの間の隙間を最大隙間h2として、これらが、h4/h3=1.5〜5.0、の範囲に設定されている。また、ミクロ側頂部42とクランクピン72の外周面72aとの隙間である最小隙間h3が、h3=0.5μm〜2.0μmの範囲に設定されている。そのため、クランクピン72の外周面72aをコンロッド側軸受メタル85の内周面85aから一層良好に浮揚させることができ、前記摺動抵抗を格段に低減させることができる。
また、本実施形態では、ミクロテクスチャ構造部40の溝41の下側縁部41Dとミクロ側底部43との間の第1面45と、溝41の上流側縁部41Uとミクロ側底部43との間の第2面44とが、クランクピン72の外周面72aに対して傾きを持つ平面であり、且つ、第1面45が、クランクピン72の外周面72aに対して第2面44よりも大きい傾きを持つ面であり、第2面44が傾き面44として機能している。
そのため、比較的大きい傾きを持つ第1面45の領域において潤滑性流体Fの流れを拡がらせた後、比較的小さい傾きを持つ第2面44によって潤滑性流体Fの流れを徐々に閉じ込めてゆくことができ、ミクロテクスチャ構造部40およびが設けられたコンロッド側軸受メタル85とクランクピン72の外周面72aとの間に確実に高い浮揚力を付与することができる。
特に、第1面45がクランクピン72の外周面72aに対して直交する方向に延びるように、つまり、第1面45の前記外周面72aに対する傾き角が90°に設定されており、溝41の上下方向の幅の大半を、傾き面44として機能する第2面44にて構成することができる。従って、潤滑性流体Fの閉じ込め効果を高めることができる。
また、複数の溝41が上下方向に並ぶピッチが、1μm〜1mmの範囲に設定されているので、一層大きい浮揚力を発生させることができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、潤滑性流体Fは空気に限らず、水やオイルであってもよい。
また、溝41(ミクロテクスチャ構造部40)の形成領域は、前記に限らず、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aの全域等であってもよい。
ただし、コンロッド側軸受メタル85の内周面85aのうちこの内周面85aとクランクピン72とが接触しやすい前記領域R11、R12にのみ設ければ、ミクロサイズの溝を有し比較的加工が難しいミクロテクスチャ構造部40の加工領域を小さく抑えて作業性およびコストを良好にしつつ、前記のように、爆発荷重が加えられた際に生じる摺動抵抗を効果的に低減することができる。
また、前記のように、気筒配列方向の両端部の主軸受メタル35でのみミクロテクスチャ構造部40を省略し、これらを除く主軸受メタル35には張出形状部Mに加えてミクロテクスチャ構造部40を設けてもよく、この場合には主軸受メタル35とクランクジャーナル71との間の浮揚力を高めることができる。
また、前記実施形態では、溝41の摺動方向(上下方向)の断面形状が鋸歯型のものを例示したが、傾き面44が摺動方向の下流側(下側)が深く上流側(上側)が浅くなる傾向を具備している限りにおいて溝41の形状を変形して良い。例えば、ミクロ側底部43が鋭角的なものとせず、R面としてもよい。また、傾き面44が緩やかな凸面又は凹面であっても良い。
<変形例1>
図13は、変形例1に係るミクロテクスチャ構造部40aを備えた摺動部(コンロッド側軸受メタルあるいは気筒配列方向の両端部を除く主軸受メタル)150の内周面150Sの断面図である。前記の実施形態では、溝41の第1面45が被摺動面200Sに対して直交する方向に延びる平面である例を示した。変形例1では、第1面45が前記直交する方向から傾いた面である例を示す。
ミクロテクスチャ構造部40aの溝41は、その下流側縁部41Dであるミクロ側頂部42とミクロ側底部43との間の第1面45と、上流側縁部41Uであるミクロ側頂部42とミクロ側底部43との間の第2面46とを含む。第1面45及び第2面46のいずれも被摺動面200Sに対して傾きを持つ平面である。第1面45は、被摺動面200Sに対して傾き角θ1を持ち、第2面46は、被摺動面200Sに対して傾き角θ2を持つ。ここで、第1面45は、第2面46よりも大きい傾きを持つ面(θ1>θ2)である。第1面45の、被摺動面200Sに対する傾き角θ1の望ましい範囲は、70°〜90°である。なお、第2面46の傾き角θ2は、θ1に対して十分小さいことが望ましく、例えば10°〜55°程度の範囲から選択することができる。
第1面45は、被摺動面200Sに対して直交する平面であることが望ましいが、前記の制限の範囲で前記直交する方向に対して傾いた平面であってもよい。このような第1面45を持つ溝41であれば、潤滑性流体Fの層流(流れFA)が摺動部150の外周面150Sと被摺動面200Sとの間の隙間Gを流入方向H2に沿って流れる際、比較的大きい傾き角θ1を持つ第1面45の領域において急に前記層流の幅が拡がり、比較的小さい傾き角θ2を持つ第2面46(傾き面44)によって徐々に前記層流が閉じ込められてゆくという動作が繰り返される。このような層流の動作によって、良好な浮揚力が生成される。
<変形例2>
図14は、変形例2に係るミクロテクスチャ構造部40bを備えた摺動部150の外周面150Sの断面図である。前記の実施形態では、複数の溝41が摺動方向(上下方向)H1に密に連設されている例を示した。変形例2では、隣接する溝41間にプラトー(plateau)が設けられている例を示す。
ミクロテクスチャ構造部40bは、複数の溝41と、隣接する溝41の間に配置されたプラトー部49とを含む。プラトー部49は、被摺動面200Sと略平行な平面である。プラトー部49は、一の溝41の上流側縁部41Uとなるミクロ側頂部42と、前記一の溝41の上側に隣接する溝41の下流側縁部41Dとの間に延びる平面である。この場合、溝ピッチL1は、摺動方向H1における溝41の上流側縁部41U〜下流側縁部41Dの長さである溝幅L2と、プラトー部49の長さとが加算されたものとなる。このように、溝間にプラトー部49が存在している態様であっても、プラトー部49が溝幅L2に対して長すぎるものでない限り、浮揚力を発生させることができる。
プラトー部49は平滑度が高い面であることが望ましい。プラトー部49は、最小隙間h1を規定するミクロ側頂部42と同じ高さ位置にある面であり、その平滑度が低いと被摺動面200Sとの接触が問題になるからである。この場合、ミクロ側頂部42と被摺動面200Sとの間の最小隙間h1は、被摺動面200Sの表面粗さと、プラトー部49の表面粗さとを合算した合算表面粗さよりも大きい値に設定されることが望ましい。例えば、クランクピン72の外周面72a及びプラトー部49の算術平均粗さRaがいずれも0.5μmである場合、最小隙間h1はこれらの合算表面粗さ1μmを越える値、好ましくは2倍以上の値に設定することが望ましい。