JP6433404B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明はモータの回転子位置情報や回転子速度情報を用いずにセンサレス制御を行って永久磁石同期モータの制御を行うモータ制御装置に関する。
永久磁石同期モータの位置制御にはモータの回転子位置情報が必要である。同様に永久磁石同期モータの速度制御にはモータの回転子速度情報が必要となる。また永久磁石同期モータの電流制御では回転子の位置情報からモータの磁極位置を計算し、これを用いて交流電流信号を直流電流信号に変換する座標変換処理を行う。この位置情報や速度情報を取得するためにはモータの回転子にインクリメンタルエンコーダやアブソリュートエンコーダやレゾルバといった位置速度センサを接続する必要がある。しかし位置速度センサの利用にはコスト増加や設置スペースの増加、センサ故障などの問題があり、モータの電圧や電流の情報からモータの回転子速度や磁極位置を推定する制御方式が広く用いられている。位置情報や速度情報を検出するセンサを位置速度センサ、回転子速度や磁極位置を推定する制御方式をセンサレス制御と呼ぶ。
このセンサレス制御は前述の通り位置速度センサの代替としての利用が主であるが、位置速度センサ付モータの制御装置に適用して位置速度センサの故障検知にも適用可能である。さらに故障検知後に位置速度センサからの磁極位置情報や速度情報の代替として推定速度や推定磁極位置を用いてモータの制御処理を行い、所定の速度指令に従ってモータの停止処理を行う動作も実現できる。
次にセンサレス制御方式の概略を説明する。永久磁石同期モータに適用可能な方式を大別するとオブザーバ方式と誘起電圧方式の2種類がある。まずオブザーバ方式について説明する。モータ制御装置の内部に永久磁石同期モータの数式モデルを設けておき、永久磁石同期モータに印加する電圧値を同数式モデルに入力して永久磁石同期モータの電流を推定する。前記のモデル演算と平行して電流センサを用いてモータ電流の検出を行い検出したモータ電流と前記推定電流を比較する。その電流の差異が前記数式モデルに内包されるモータ速度情報の誤差に起因するものとして、モデルに内包された推定速度のフィードバック修正を行うことで推定速度を得る。電流制御に必要な推定磁極位置は前記推定速度の積分で推定できる。これは所謂適応同定に基づく推定速度と推定磁極位置の取得方法である。数式モデルは単にモータの数式モデルを用いるだけではなく、推定電流と検出電流の差に所定のゲインを乗じた信号を前記数式モデルに入力される電圧値に加算するオブザーバ方式を取る場合が多い。このオブザーバ方式を用いると推定電流の信号応答を所望の値に設定できたり、モータ定数の誤差に対してロバスト性を持たせる等のメリットがある。
次に誘起電圧方式について説明する。これは永久磁石同期モータの誘起電圧に基づいて行うものであり、誘起電圧は永久磁石同期モータ回転子の磁石磁束の時間的な変化によって発生し、モータ電流やモータ電圧からモータモデルに基づいて計算できる。3相の永久磁石同期モータならば磁極位置に対して3相正弦波状の誘起電圧波形となり逆正接計算に
より磁極位置が計算できる。
これらの両センサレス制御方式はどちらもモータの磁極位置やモータ速度を推定できる。またどちらの方式も計算の過程でモータに印加される電圧情報を用いる。このときオブザーバ方式は前記電圧情報に含まれるセンサレス制御系に流入する高周波電圧外乱の感度が比較的低く、比較的滑らかな推定速度や推定磁極位置を得ることができる。一方誘起電圧方式は高周波電圧外乱に対する感度が非常に高く、推定速度や推定磁極位置に高周波電圧外乱成分が流入し過渡的な推定誤差を生じる場合がある。従ってセンサレス制御により永久磁石同期モータを制御する場合、誘起電圧方式よりオブザーバ方式が採用される場合が多くある。位置速度センサ故障時の停止処理においてはなるべく早く永久磁石同期モータを停止させたい場合もあるが、モータに接続された負荷装置の都合により所定の速度指令軌跡に沿って停止させたい場合もあり、このような条件では特にオブザーバ方式が採用される。なお前述した高周波電圧外乱は例えばインバータ出力電圧に含まれるPWMキャリアリプル成分やデッドタイム電圧、永久磁石同期モータが持つ誘起電圧高調波などがある。
両センサレス制御の違いとしてはさらに次に示す脱調の有無がある。オブザーバ方式は電流推定誤差フィードバックによる推定速度情報の修正という構造上、速度推定には遅れが生じる。この遅れが顕著な場合、推定磁極位置と永久磁石同期モータ磁極位置との間にずれが生じる。このずれが多くなると推定磁極位置と永久磁石同期モータの磁極位置が同期しない脱調と呼ばれる状態となる。この脱調状態となると、オブザーバ方式が非脱調状態に復帰するのは困難である。しかし誘起電圧方式はフィードバック構造を持たないため、永久磁石同期モータ磁極位置あるいはモータ速度の急変時に瞬間的な磁極位置推定誤差が発生しても、オブザーバ方式とは異なり非脱調状態に復帰することが可能である。
以上のセンサレス制御方式を適用して位置速度センサの故障検知やその後のモータ停止処理を行う場合について説明する。永久磁石同期モータでは前記の2種類のセンサレス制御方式が実施できるが、前記の高周波電圧外乱の影響により確実な位置速度センサの故障検知や安定したモータ停止制御の実現のためには、可能な限りオブザーバ方式による推定速度や推定磁極位置を用いることが望ましい。このためオブザーバ方式を動作させると次に示すような現象が発生する。位置速度センサ付制御により永久磁石同期モータが高応答に位置制御または速度制御がされる場合、適応同定をベースとしたオブザーバ方式は速度や位置の変化に追従できず脱調状態に容易になり得る。前述したようにオブザーバ方式では一度脱調すると元の同期した状態には戻りにくい。脱調状態であれば正確な速度推定や位置推定が実施できないため、位置速度センサの故障検知が実施できなくなる。このような問題に対し特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術はモータ電圧とモータ電流から求めたモータ誘起電圧より計算した第1の推定速度と、モータ推定磁極位置が真の磁極位置に追従するようPLLを用いて求めた第2の推定速度の2種類を導出する。すなわち計算方式の異なる2種類の推定速度を比較して脱調検出を行うものである。
特許第4198162号公報
位置速度センサの故障検知と故障発生時の安定したモータ停止制御処理を目的としてオブザーバ方式のセンサレス制御を適用する場合、前述した特許文献1に示す技術を用い、特許文献1に記載されたPLLによる推定部をオブザーバによる第1の推定部に置き換えることで目的が達成できる。しかしオブザーバによる第1の推定速度と誘起電圧による第2の推定速度を比較して脱調検知を行う場合、モータが可変速度運転をすると、下述のような課題が生じる。
一般にオブザーバ方式による第1の推定速度はモータ速度に対して特定の遅れ伝達特性を持つ。一方、誘起電圧方式による第2の推定速度は、永久磁石同期モータの誘起電圧波形から推定磁極位置を得て、推定磁極位置を微分することにより得るため、第1の推定速度とは、モータ速度に対する伝達特性が異なる。この伝達特性の違いは特に高周波数領域にて顕著である。ここで言う「周波数」とはモータ速度が含有する成分であり、高い加速度
にてモータが駆動されたり頻繁な加速と減速が実施される場合や高いジャーク(加速度の時間変化率)にてモータが駆動される場合に、モータ速度には高い周波数成分が多く含まれる。このときオブザーバの脱調(オブザーバ脱調ともいう)に至らないまでも、第1の推定速度と第2の推定速度に過渡的な差が生じる。前記第1と第2の推定速度の差でオブザーバ脱調を検知する場合は、その推定速度の差の大きさやその継続時間などの脱調検知基準を設けるが、第1と第2の推定速度の過渡的な差が発生するという原理上、モータ速度の軌跡により推定速度差の軌跡が異なるため、脱調の検知基準の設定に労力を要する課題があった。また所定のモータ速度軌跡で脱調検知基準を調整しても、異なったモータ速度軌跡ではそれが変化するため、オブザーバ脱調を誤って検知してしまう場合があった。誘起電圧方式では永久磁石同期モータの誘起電圧波形から推定磁極位置を得て、推定磁極位置を微分することにより推定速度を得る。元々誘起電圧波形は高周波電圧外乱の影響を受けやすくノイズを含んだ信号となる。さらに微分処理により高周波成分が増幅されるので、第1の推定速度と第2の推定速度を単純に比較すると、この場合もノイズにより非脱調状態にもかかわらず誤った脱調検知を行ってしまう場合があった。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、永久磁石同期モータの速度が高応答に制御されている場合に、モータの回転速度と磁極位置を推定するオブザーバの脱調を高精度に検出できるモータ制御装置を得ることを目的とする。
本発明に係るモータ制御装置においては、永久磁石同期モータの回転子速度と磁極位置
を推定する推定器を備えたモータ制御装置であって、推定器は、モータモデルに基づくオ
ブザーバと適応同定器により永久磁石同期モータの推定速度と推定磁極位置とを求める第
1推定部と、モータ誘起電圧から永久磁石同期モータの推定速度と推定磁極位置とを求め
る第2推定部と、第1推定部の推定磁極位置および第2推定部の推定磁極位置、または第
2推定部の推定速度を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置のリセットの判定
を行う判定・起動処理部を備え、判定・起動処理部は、第1推定部の推定磁極位置と第2推定部の推定磁極位置との差を用いて第1推定部の脱調を検知した場合、第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定を行うものである。



本発明のモータ制御装置によれば、オブザーバ方式である第1推定部からの第1推定速度と誘起電圧方式である第2推定部からの第2推定速度の差に含まれ過渡的な速度推定誤差となる高周波成分の含有量が抑制でき、脱調検知精度を向上できる。
本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置を示すブロック図である 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置おける判定・起動処理部の処理の流れを説明するためのフローチャートである。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置における推定部における動作を整理して表した図である。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置おける磁極位置・速度推定器の詳細構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置の動作を説明する説明図である。 本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置における第1推定部の脱調時の各信号波形の例を示した説明図である 本発明の実施の形態2におけるモータ制御装置の動作を説明するための図である。 本発明の実施の形態3におけるモータ制御装置を示すブロック図である。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1を説明するブロック図であり、永久磁石同期モータの制御装置を示している。図1に示すモータ制御装置は、特に位置速度センサ情報に基づいて永久磁石同期モータの速度制御を行い、並行して前記位置速度センサの故障検知を実施する。さらに故障検知後にセンサレス制御に基づいて永久磁石同期モータの速度制御を継続する場合の永久磁石同期モータの制御装置の構成を示している。なお図1では永久磁石同期モータの制御装置だけではなく、永久磁石同期モータや位置速度センサ、速度指令を生成する上位のコントローラも示している。
図1に示すように永久磁石同期モータを制御するモータ制御装置100は、速度制御器1、電流制御器2、インバータ3、電流センサ4、信号切替器5、磁極位置・速度推定器6、速度換算器7、磁極位置換算器8、故障検知器9で構成される。
また、電流制御器2は、電流制御部2a、座標変換器2b、2c、PWM処理部2dを有している。更に磁極位置・速度推定器6は、第1推定部6a、第2推定部6b、判定・起動処理部6cおよび機械速度換算部6dを備えている。
次に各部の動作について説明する。速度制御器1では上位コントローラ200より送信された速度指令10(ω)とフィードバック速度15(ω)に基づいて速度制御処理が実施され、電流指令11(Id、Iq)が出力される。電流制御器2は電流指令11(Id,Iq)、座標変換用位相16(θ)、検出電流13(Iu,Iv,Iw)を入力して、制御処理を実施しスイッチング指令14を出力する。インバータ3はスイッチング指令14に従って動作し永久磁石同期モータ300に電力を供給する。永久磁石同期モータ300に流れる電流は電流センサ4によって検出され、検出電流13(Iu,Iv,Iw)として電流制御器2に送られる。電流制御器2の内部では電流制御部2aは電流指令11(Id、Iq)と検出電流(Id,Iq)を入力して両者の差がゼロとなるよう制御処理を行い電圧指令(Vd、Vq)を出力する。この電圧指令(Vd,Vq)や電流指令11(Id、Iq*)はモータ回転子の磁極位置に同期した回転座標上の信号であり、座標変換器2bにて3相静止座標上へ、あるいは回転座標上の信号へそれぞれ変換される。電流センサ4から得た検出電流13(Iu,Iv,Iw)は座標変換器2cにて回転座標上の電流Id、Iqに変換される。また電圧指令(Vd,Vq)は座標変換器2bにて静止座標上の電圧指令12(Vu,Vv,Vw)に変換される。 この座標変換処理は座標変換用位相16(θ)が使用される。この座標変換用位相16(θ)が永久磁石同期モータの磁極位置に相当する。位置速度センサ400より出力されたモータ位置信号17は永久磁石同期モータ300の回転子の機械位置である。磁極位置θdetは機械位置一回転に対しモータの極対数倍回転するので前記機械位置を単純に極対数倍すれば得られる。磁極位置換算器8においては前記処理を行い永久磁石同期モータ300の検出磁極位置19(θdet)を出力する。速度換算器7はモータ位置信号17を微分して検出速度18(ωdet)を出力する。以上の速度制御器1や電流制御器2の動作や構成はよく知られた公知の技術であるため詳細な説明は省略する。
次に故障検知器9と信号切替器5の動作について説明する。位置速度センサ400が故障していない通常の動作時は、検出磁極位置19(θdet)を切替部5bを介して座標変換用位相16(θ)に割り当て、検出速度18(ωdet)を切替部5aを介してフィードバック速度15(ω)に割り当てることで、速度制御器1と電流制御器2を動作させる。故障検知器9が位置速度センサ故障の検知を行い、同センサが故障と検知される場合、故障検知信号22を発し、それに応じて信号切替器5が、切替部5a,5bを切替動作させて信号割り当ての変更を行う。位置速度センサ400の故障時は推定磁極位置20(θest)を切替部5bを介して座標変換用位相16(θ)に割り当て、推定速度21(ωest)をフィードバック速度15(ω)に割り当てる。
このような構成とすると、位置速度センサ400の故障時でも永久磁石同期モータ300の運転継続が可能となる。故障検知器9が発する故障検知信号22は上位コントローラ200にも送信され、モータ停止用の速度指令パターンが速度指令10として発生される。位置速度センサ400の故障検知は検出磁極位置19(θdet)と推定磁極位置20(θest)の比較により行う。例えば両者の差が所定値以上であり、その状態が所定時間以上継続したら故障と判定する方法がある。その他にも故障検知は位置速度センサ400の故障モードに応じて色々な方法があり、例えば位置速度センサ内部の論理信号の整合性から内部ロジック回路の異常判定を実施したり、インピーダンスの変化からケーブルの断線検知を行うなどがある。故障検知器9では前記の処理群をまとめて実施し位置速度センサ400の故障検知を行う。上記にて説明した、故障検知器9と信号切替器5の動作はセンサレス制御技術の応用例としてはよく知られた公知の技術となるため詳細な説明は省略する。
次に本発明の要となる磁極位置・速度推定器6の構成と動作について詳細を説明する。磁極位置・速度推定器6は電圧指令12と検出電流13を入力して推定磁極位置20(θest)と推定速度21(ωest)を出力する。磁極位置・速度推定器6は主に第1推定部6aと第2推定部6b、判定・起動処理部6cから構成される。第1推定部6aはオブザーバを用いた適応同定による磁極位置・速度推定動作を行い第1推定磁極位置6eと第1推定速度6fを出力する。第2推定部6bは永久磁石による誘起電圧により磁極位置・速度推定動作を行い第2推定磁極位置6gと第2推定速度6hを出力する。判定・起動処理部6cは第1推定部6aを安定して起動させるために、また第1推定部6aが脱調しても第2推定部6bからの情報を用いて復帰できるように、図2に示すフローチャートに従って判定動作を行う。判定動作の詳細は後述する。第1推定速度6fと第2推定速度6hは共に永久磁石同期モータの磁極位置の回転速度であるため、機械速度換算部6dにて永久磁石同期モータ極対数で割り推定機械速度の換算を行って推定速度21(ωest)として出力する。
永久磁石同期モータ300に接続された位置速度センサ400に異常がないものとしてモータ制御装置が始動すると、判定・起動処理部6cは、第2推定部6bからの第2推定速度6hを入力して前記推定速度の絶対値が閾値となる所定値ωth未満かどうかを判断し(ステップS201)、所定値ωth未満では第1推定部6aへリセットを行うようリセット指示信号6iを出力する(ステップS202)。第1推定部6aではリセット指示信号6iを受信しリセットが必要な場合は、内部で計算している第1推定磁極位置6eを第2推定磁極位置6gにて上書きする。
さらに第1推定速度6fを第2推定速度6hにて上書きする。リセット指示信号6iが発生している間は第1推定部6aではリセット処理が継続される。このとき第1推定磁極位置6eや第1推定速度6fは第2推定部6bからの情報で上書きされるため、第1推定部6a内のオブザーバや適応同定器の働きは停止する。
また、推定磁極位置20(θest)は第2推定磁極位置6gと等しくなる。推定速度21(ωest)は第2推定速度6hと等しくなる。第2推定速度6hの絶対値が所定値(閾値)ωth未満ではリセット処理を継続し続ける(ステップS202)。なお、ステップS202においてリセット指示が出された場合、ステップS206においてモータ運転が終了しているか否かを判断し、モータ運転が終了していなければステップS201に戻り、モータ運転が終了しておれば処理を終了する。
永久磁石同期モータ300が位置速度センサ情報のフィードバックにより適切に制御され、モータ速度が上昇し第2推定速度6hの絶対値が所定値ωthとなると、リセット指示を停止する。このときから第1推定部6aは元々備えられているオブザーバや適応同定器を用いて磁極位置・速度の推定動作を開始する。この第1推定部6aが動作開始する瞬間の第2推定速度6hを第1推定速度6fの初期値とする。また同瞬間の第2推定磁極位置6gを第1推定磁極位置6eの初期値として、オブザーバや適応同定器6a2の動作を開始する。これにより第1推定部を安定に起動させることができる。
さらに、第1推定磁極位置6eを第2推定磁極位置6gの差を監視し、両者の差の絶対値θerが所定の閾値θerth以上か否かを判断し(ステップS203)、絶対値θerが所定の閾値θerth以上であり、それが時間Tth以上継続した場合に(ステップS204)、第1推定部6aのオブザーバが脱調したものとして、判定・起動処理部6cは、リセット指示信号6iを出力する(ステップS205)。ステップS205においてリセット指示が出された場合、ステップS206においてモータ運転が終了しているか否かを判断し、モータ運転が終了していなければステップS201に戻り、モータ運転が終了しておれば処理を終了する。
なお、判定・起動処理部6cは、第1推定磁極位置6eを第2推定磁極位置6gの差に限らず、第1推定磁極位置6eを第2推定磁極位置6gの和・積・商の何れの演算結果を用いて閾値θerthと比較してもよい。
また図2のフローチャート中のステップS202におけるリセット指示は、永久磁石同期モータ300の速度が第1推定部6aが安定に動作できない低い速度であることを理由とするリセット指示であり、また同図のステップS205におけるリセット指示は、第1推定部6aの脱調を検知したことを理由とするリセット指示となる。
なお、図2において、判定・起動処理部6cは、運転条件に応じて、始動時のステップS202におけるリセット指示、または脱調時のステップS205におけるリセット指示のいずれかのみを行っても良い。
図3は、図2におけるフローチャートに従った各部の動作を整理して表わしたものである。第2推定速度6hの絶対値が所定値ωth未満では第1推定部6aは停止し脱調検知も実施しない。同推定速度の絶対値が所定値ωth以上では、第1推定部6aを動作させ、脱調検知も実施する。第2推定部6bは常に動作するものとする。
センサレス制御を適用した位置速度センサの故障検知においては次に示す課題がある。オブザーバ方式は一般的にモータの回転速度が低い場合は安定に動作させることが困難であることが知られている。これは永久磁石同期モータ駆動に必要な電圧に対してインバータデッドタイム電圧などの外乱電圧が低速時ほど相対的に大きくなるためである。このため、オブザーバは永久磁石同期モータが停止状態から所定の速度へ加速する起動時においてはオブザーバを自己起動させることが困難である。永久磁石同期モータ起動時にオブザーバを安定して起動させるには、外部からのモータ励磁位置情報やモータ速度情報が必要となる。これは位置速度センサ情報を用いれば可能であるが、位置速度センサはモータ起動前から故障している可能性もあり、確実な故障検知と故障発生時の安定したモータ停止制御処理の実現のためには位置速度センサ情報なしでオブザーバを起動させる必要があった。
第1推定部6aはオブザーバにもとづく構成のためゼロ速度からの自己始動は困難である。しかし位置速度センサ400の情報を用いて始動する構成とすると当然のことながら位置速度センサ400が故障していると始動ができない。同構成の場合は位置速度センサ400が故障により誤った位置情報を出力している場合は、誤った情報に基づいて始動することになるため、第1推定磁極位置6eや第1推定速度6fは誤差を持ち、本来の目的である位置速度センサ故障検知やその後の停止制御処理が実施できない。第2推定部6bは内部にフィードバック処理構造を持たないため容易に自己始動ができ、ゼロ速度を含む低速度では精度が低いものの推定磁極位置や推定速度を出力できる。本発明はこの性質を利用して第2推定部6bからの推定情報を用いて第1推定部6aを起動するので、前記の第1推定部6aの自己始動困難性を解消できる。かつ第1推定部6aの始動に際して位置速度センサ情報を用いないので、本来の目的である位置速度センサ故障検知や停止制御処理も問題なく実施できる効果がある。永久磁石同期モータの中には磁極位置に依存したモータインダクタンスの変化することを利用し、モータに高周波電流を重畳して磁極位置推定が可能な埋め込み磁石型と呼ばれる種類のものがある一方で、磁極位置に対してインダクタンス変化がない表面磁石型と呼ばれる種類のものがある。図2のフローチャートは特に表面磁石型の永久磁石同期モータに対して有効である。これは埋め込み磁石型永久磁石同期モータのような高周波電流重畳による磁極位置推定ができなくても第1推定部6aを起動できるからである。なお図2のフローチャートは埋め込み磁石型の永久磁石同期モータに対しても適用可能であることはいうまでもない。
次に第1推定部6aからの第1推定磁極位置と第2推定部6bからの第2推定磁極位置の比較により脱調検知を行う効果について説明する。図5はモータ加速運転時の第1推定速度と第2推定速度、第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の一例を示している。第1推定速度と第2推定速度の差がモータの加速パターンにより軌跡が変わる例を示している。図5(a)と図5(b)では加速レートが異なっており、図5(b)の方がより急加速を実施している。このとき、仮に図5(a)に基づいて第1推定速度と第2推定速度の差より、第1推定部6aのオブザーバ脱調検知の閾値を速度差300rpm以上と設定する。しかし図5(b)の記載の通り加速レートが変化した場合、脱調が発生していなくても、前記の閾値を満たし脱調の誤検知を行ってしまう。図5に示すように第1推定速度と第2推定速度の差の軌跡はもとのモータ速度の軌跡の影響を受けるため、それが適用先により大きく変化するような場合では適用先に合わせた調整作業が膨大となる。一方、第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の差異は、最大でも第1推定部起動時の0.5[rad]に留まっており、図5(a)と図5(b)でも波形の形状の差異が少ない。これは上述したように、推定速度と推定磁極位置間の積分特性により、高周波成分が抑制された結果であり、この第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の差に基づいて脱調検知を行うことで誤検知の少ない信頼性の高い脱調検知が実現できる。なおオブザーバの脱調を真のモータ磁極位置へ追従できない状態とすると、少なくとも第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の差の絶対値が90度(1.5708[rad])以上となると、推定磁極位置に基づく回転座標上の各電圧・電流信号の極性が真の値に対し反転するため復帰は困難となりこれが脱調と定義できる。図6はオブザーバ脱調時の第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の信号波形の一例である。時刻0.2[sec]にて第1推定部6aの第1推定磁極位置にオフセット誤差を加算し脱調状態を模擬させたものである。脱調発生後、第2推定部6bの位相が所定の周期で変化するのに対し、第1推定部6aの位相は停止に近い状態となる。このため、第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の差ものこぎり状となり、その絶対値が90度(π/2[rad])以上を脱調検知の閾値とすると、継続時間の閾値は2π/ω/4[sec]となる。以上のように、推定速度の比較に対して脱調検知の閾値の設定も容易である。前記の脱調検知の閾値設定は一例であり、より各推定磁極位置の差の閾値を大きくし継続時間の閾値を長くして誤検知を抑制するほうに調整したり、その逆をして脱調検知の時間を早めることも可能である。
図4は第1推定部6aと第2推定部6bをより詳細に記載した図である。第1推定部6aは、オブザーバ6a1、適応同定器6a2、座標変換器6a3,6a4、積分器6a5で構成され、第2推定部6bは、誘起電圧計算部6b1、3相/2相変換部6b2,6b3、逆正接演算部6b4、微分器6b5で構成されている。
第1推定部6aでは入力された電圧指令12(Vu,Vv,Vw)と検出電流13(Iu,Iv,Iw)を座標変換器6a3,6a4にて回転座標上の信号に変換する。電圧指令12は電圧信号Vd’,Vq’に、検出電流13は電流信号Id‘,Iq’に変換される。座標変換の式は下記の式(1)と式(2)となる。
Figure 0006433404
Figure 0006433404
座標変換に用いるのは第1推定部6aの推定磁極位置6eであり、ここではθest1と記載している。記号「’」は推定磁極位置上の信号を示し、図1に記載した位置速度センサベースの磁極位置上の信号と区別するため記載している。オブザーバ(オブザーバ計算部ともいう)6a1は下記の式(3)に示す回転座標上の永久磁石同期モータの回路方程式より導出される。
Figure 0006433404
L:インダクタンス、R:巻線抵抗、ωre:電気角速度、Φ:誘起電圧定数
下記式(4)にてオブザーバ処理を実施する。オブザーバ6a1や適応同定器6a2の構成は様々な方式が開発されており、ここではその一例を示す。電圧信号Vd’,Vq’を入力として推定電流Idest,Iqestを出力する。オブザーバ6a1はまた推定電流Idest,Iqestと電流信号Id’,Iq’の差異を所定倍してフィードバックする処理も実施しており、そのゲインhはオブザーバ6a1やセンサレス制御の推定速度の推定応答や推定磁極位置の推定応答を調整するパラメータとなるが本発明の本質ではないので説明は省略する。前記のオブザーバ内部情報のリセットは、時間変化する推定変数を検出値で上書きする処理を示す。式(1)や式(2)で用いられる第1推定磁極位置6e(θest1)は第2推定磁極位置6g(θest2)で上書きされる。同時に式(1)で導出される電流信号Id’,Iq’も変化する。下記式(5)においては、リセット時には推定電流Idest,Iqestをそれぞれ、第2推定磁極位置6g(θest2)と式(1)で計算された電流信号Id’,Iq’にて上書きする。推定磁束Φdrestは誘起電圧定数Φで上書きする。式(5)以外のオブザーバ6a1を適用する場合も同様であり、時間変化する状態変数(推定電流)を第2推定磁極位置6g(θest2)を用いて座標変換した検出電流値やモータ定数で上書きする。
Figure 0006433404
Figure 0006433404
h11,h12,h21,h22,h31,h32:オブザーバフィードバックゲイン
適応同定器6a2は電流推定誤差ΔId,ΔIqを入力して推定速度6f(ωest1)を計算する。この適応同定器6a2の処理は積分器6a5でPI(比例・積分)処理によって実施される。下記式(6)はその一例である。リセット時は比例項が保持する成分をゼロ、積分項が保持する成分を第2推定部6bによる推定速度6h(ωest2)にて上書きする。
Figure 0006433404
Kp:適応同定器比例ゲイン、Ki:適応同定器積分ゲイン
式(6)による適応同定器6a2の構成は電流推定誤差ΔIqのみを用いた一例であり、電流推定誤差ΔIdも使用する他の構成方法も知られているが、比例項に相当する箇所をゼロ、積分器などの過去の数値情報を保持する箇所を推定速度6h(ωest2)で上書きすれば同様の動作となる。
式(6)により得られた推定速度6f(ωest1)を積分器6a5で積分することで推定磁極位置6e(θest1)が得られる。オブザーバ方式のセンサレス制御では電流推定誤差ΔId,ΔIqはオブザーバ6a1に内包されるモータ速度情報に誤りがあるため発生するという原理に基づいて処理ループが構成されるので、推定速度6f(ωest1)はオブザーバ6a1にもフィードバックされる。式(4)に示すオブザーバ処理を行うオブザーバ6a1や適応同定器6a2について、それらの構成やフィードバックゲインの設計はまた一つの技術分野が形成されており、また本発明の本質ではないので詳細な説明は省略する。ただし上述したように本質的にフィードバックによる推定機構であるため速度推定や磁極位置推定応答に限界があり、脱調という問題が発生する。
第2推定部6bは下記の式(7)に示す永久磁石同期モータの2相静止座標上の回路方程式に基づく。誘起電圧計算部6b1で計算される誘起電圧Eα、Eβは下記の式(8)となる。
Figure 0006433404
Figure 0006433404
θre:電気角(磁極位置)
誘起電圧波形の推定用の電流信号Iα,Iβ、電圧信号Vα,Vβは3相/2相変換部6b2,6b3において下記の式(9)、式(10)で得る。
Figure 0006433404
Figure 0006433404
式(7)、式(8)に示す回路方程式に基づき誘起電圧波形は下記の式(11)により推定する。推定した誘起電圧波形より逆正接演算部6b4において下記の(12)にて推定磁極位置6g(θest2)を導出する。第2推定部6bの推定速度6h(ωest2)は推定磁極位置6g(θest2)を微分器6b5で時間微分することで入手できる。
Figure 0006433404
Eαest,Eβest:推定誘起電圧
Figure 0006433404
図2に示すフローチャートに基づく判定・起動処理部6cの動作の信号処理面での作用効果は次に説明するとおりである。即ち、1番目の効果としては、第1の推定磁極位置と第2の推定磁極位置の比較により第1推定部6aのオブザーバの脱調検知精度を向上できる。またオブザーバの脱調を検知した場合、誘起電圧方式の第2推定部6bからの推定速度や推定磁極位置情報を用いてリセット処理を行うので、脱調からの復帰ができるとともに、磁極位置・速度推定器6全体の動作として推定磁極位置や推定速度の出力が継続できる。さらにモータ停止時からの自己起動可能な第2推定部からの推定速度や推定磁極位置情報を用いて第1推定部6aの起動時の初期値とすることで、モータ停止時を含む低速時の動作が困難な第1推定部6aの起動が安定に、かつ、その他外部からのモータ位置あるいは速度情報なしに実現できる。
以上に説明した磁極位置・速度推定器6の利用は、サーボモータ向けの駆動システムのような位置速度センサ付制御で高応答な位置あるいは速度制御がなされるモータ制御装置において、位置速度センサ400の故障検知と減速停止制御を確実に実施するときに特に効果がある。サーボモータでは位置あるいは速度制御が500Hzや1kHzといった高応答で実施されるためモータ速度の変化が激しく第1推定部6aのオブザーバの脱調が容易に発生するが、脱調が発生しても磁極位置・速度推定器6の利用により推定磁極位置や推定速度の入手が継続できるため、位置速度センサ400の故障検知が継続できる。磁極位置・速度推定器6全体としてその他外部からのモータ位置あるいは速度情報に依存しないため、故障検知処理のロバスト化が達成できる。特に前記のサーボモータでは表面磁石型の永久磁石同期モータが利用されることが多い。このとき埋め込み磁石型の永久磁石同期モータとは異なり高周波電流重畳による磁極位置推定ができないが、本発明の構成を利用することにより第1推定部6aのオブザーバの起動が安定して実施できる。故障検知後の減速停止制御では、可能な限り第1推定部6aからの推定磁極位置、推定速度に基づいてモータ制御を行うため、サーボモータの負荷装置が要求する速度指令軌跡に沿って滑らかな速度制御が実現できる。
以上のように、オブザーバ方式、誘起電圧方式のどちらのセンサレス制御方式においても推定磁極位置は推定速度に対して積分相当の関係となる。従ってモータ速度を起因として、オブザーバ方式である第1推定部からの第1推定速度と誘起電圧方式である第2推定部からの第2推定速度の差に含まれ過渡的な速度推定誤差となる高周波成分が、第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の差においては、前記積分特性により抑制される。この高周波成分が脱調検知精度の低下を招いていたが、第1推定磁極位置と第2推定磁極位置の差に基づいて検知を行うことで、前記高周波成分の含有量が推定速度と推定磁極位置間の積分特性により抑制でき、脱調検知精度を向上できる。
また、特に第2推定速度に含まれる高周波電圧外乱起因の高周波成分が原因となる脱調検知精度低下の防止に対しても同様の効果がある。
更に、第2推定部はフィードバック構造を持たないため、永久磁石同期モータが停止状態から起動する際にも、外部の情報を必要とせず推定磁極位置や推定速度を出力することが可能である。このため、第2推定部からの推定情報を用いることで、第1推定部のオブザーバを起動して、適切な故障検知や滑らかな停止制御処理が実現できる。
要するに、永久磁石同期モータの回転子速度と磁極位置を推定する推定器は、モータモデルに基づくオブザーバと適応同定器により永久磁石同期モータの推定速度と推定磁極位置とを求める第1推定部と、モータ誘起電圧から永久磁石同期モータの推定速度と推定磁極位置とを求める第2推定部と、第1推定部の推定磁極位置および第2推定部の推定磁極位置、または第2推定部の推定速度を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置のリセットの判定を行う判定・起動処理部を備えたことにより、永久磁石同期モータの速度が高応答に制御されている場合に、モータの回転子速度と磁極位置を推定するオブザーバの脱調を高精度に検出できる。
また、判定・起動処理部は、第1推定部の推定磁極位置および第2推定部の推定磁極位置を用いて第1推定部の脱調を検知した場合、第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定を行うことにより、永久磁石同期モータの速度が高応答に制御されている場合に、オブザーバの脱調が発生してもモータの回転子速度を磁極位置の推定が継続できる。
また、判定・起動処理部は、第2推定部の推定速度の絶対値が予め定められた値を超えた場合に、第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定を行い第1推定部を起動させることのより、磁気突極性を持たない永久磁石同期モータの制御システムにおいて、永久磁石同期モータに接続された位置速度センサ(位置検出器)の情報を用いずにオブザーバを起動することができる。
なお、本実施の形態1においては、判定・起動処理部は、第1推定部の推定磁極位置および第2推定部の推定磁極位置を用いて第1推定部の脱調を検知した場合、第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定と、第2推定部の推定速度の絶対値が予め定められた値を超えた場合に、第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定を共に行う構成について示したが、これらは第1推定部の脱調の検知の機能と、第1推定部の起動の機能となるため、機能としては独立しており、それぞれ片方のみで使用してもよい。
なお以上に説明した本発明の構成は永久磁石同期モータの機種に関わらず、また巻線界磁型の同期モータでも適用可能であることは言うまでもない。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について説明する。モータ制御装置内部の電流制御器2が次に説明するような条件では、本発明の構成は特に有効である。インバータ3は図1に記載した電流制御器2におけるPWM処理部2dからスイッチング指令14を受けて動作し、その結果、永久磁石同期モータ300には矩形波状の電圧が印加される。この矩形波状の電圧には永久磁石同期モータを駆動する成分の他にPWMリプル成分が含まれる。これによりモータを流れる電流にはPWM起因のリプルが含まれる。スイッチング指令14は電圧指令12とキャリア波の大小比較にて生成される。キャリア波は三角波が選択されることが極めて多い。電流制御器2が電流センサ4からの検出電流(信号)13を取り込む場合,所定の周期でサンプリングを実施するが、前記の電流リプルが電流サンプリング値に含まれることを回避するために、三角波の山タイミングまたは谷タイミングに同期して電流サンプリングが実施される。ところが場合によっては、電流制御器2の動作が三角波の山・谷タイミングに同期しなかったり、三角波よりも高速に動作する場合がある。このとき検出電流13には多くの電流リプルが含まれる。またこの電流リプルをキャンセルすべく電流制御器2の電流制御部2aが動作するので電圧指令12も脈動する。このため磁極位置・速度推定器6にも、電圧指令12と検出電流13を介してPWM起因の外乱信号が多量に入力される。ここで第2推定部6bにおける磁極位置推定の過程においては、式(11)から明らかなように電流の微分が含まれる。また第2推定速度ωest2も第2推定磁極位置θest2の微分で導出されるため、第2推定速度ωest2には多くの外乱成分が含まれる。図7は、第2推定速度がPWM起因の電流リプルにより脈動する例を示している。図7はその動作例であり、キャリア周波数4.5kHz、電流制御器2の動作周期を100kHzとした場合の結果である。電流制御器2は三角波よりも早い周期で動作し、かつその山谷に同期していない。このため前記のプロセスにより、第2推定速度ωest2はモータ速度が一定にもかかわらず脈動しており、第1推定速度ωest1と第2推定速度ωest2も脈動が顕著であり、これに基づくと脱調の誤検知の可能性がある。しかし第1推定磁極位置θest1と第2推定磁極位置θest2の差は0.5[rad]以下に保たれており、同磁極位置の差より脱調検知を行い、実施の形態1にて説明したような脱調検知の閾値とすると、誤検知を防止することができる。
サーボモータ向けの駆動システムでは、位置制御応答の高応答化または速度制御応答の高応答化を目的として、それらのマイナーループである電流制御応答の高応答化を行う。このときキャリアである三角波より高い周期で電流制御器2が動作し、図7のような動作状態が顕著に発生する。このような場合でも第1推定磁極位置θest1と第2推定磁極位置θest2の比較により脱調の誤検知を抑制することが可能となる。
実施の形態3.
次に本発明の実施の形態3について説明する。図8は実施の形態3におけるモータ制御装置の構成を示している。
実施の形態1では図1に記載したモータ制御装置内の特定の機能を持った各構成要素が連携して動作し、課題の解決を図るものとして説明したが、プロセッサ上で実行されるプログラムの信号処理とプロセッサ上に設けられた論理回路における信号処理の結果、機能が実現される構成としてもよい。図8はその構成図であり、図中のプロセッサ23はプログラムを記憶装置24より読み出して、実行する。またプロセッサ23は、その処理の過程で一時的に記憶すべき情報を書き込んだり読み出しを行う。
プロセッサ23によりプログラムが実行されて実現される処理は、実施の形態1を示す図1における速度制御器1、電流制御器2、インバータ3、電流センサ4、速度換算器7、磁極位置換算器8、信号切替器5、故障検知器9、磁極位置・速度推定器6と同じとなる。推定磁極位置20(θest)、推定速度21(ωest)、座標変換用位相16(θ)、フィードバック速度15(ω)、故障検知信号22、電流指令11、検出磁極位置19(θdet)、検出速度18(ωdet)、電圧指令12は記憶装置24に一時的に記憶される情報として実現される。速度指令10は上位コントローラ200から通信により送信されるが同様に記憶装置24に一時的に記憶される情報として実現される。電流制御器2内部のPWM処理部2dについてはプロセッサ上に設けられた論理回路にて実現されるためスイッチング指令14は前記論理回路上の信号となる。故障検知信号22はプロセッサ23から通信にて上位コントローラ200へ送信される。プロセッサ上で実行されるプログラムの信号処理とプロセッサ上に設けられた論理回路における信号処理の結果、
機能が実現される構成としても実施の形態1で示すような効果が得られる。
本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することができる。
1 速度制御器、2 電流制御器、6 磁極位置・速度推定、6a 第1推定部、6a1 オブザーバ、6a2 適応同定、6b 第2推定部、6c 判定・起動処理部、9 故障検知器、100 モータ制御装置

Claims (3)

  1. 永久磁石同期モータの回転子速度と磁極位置を推定する推定器を備えたモータ制御装置であって、前記推定器は、モータモデルに基づくオブザーバと適応同定器により永久磁石同期モータの推定速度と推定磁極位置とを求める第1推定部と、モータ誘起電圧から永久磁石同期モータの推定速度と推定磁極位置とを求める第2推定部と、前記第1推定部の推定磁極位置および前記第2推定部の推定磁極位置、ならびに前記第2推定部の推定速度の少なくとも何れかを用いて前記第1推定部の推定速度および推定磁極位置のリセットの判定を行う判定・起動処理部を備え、前記判定・起動処理部は、前記第1推定部の推定磁極位置と前記第2推定部の推定磁極位置との差を用いて前記第1推定部の脱調を検知した場合、前記第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて前記第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定を行うことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記判定・起動処理部は、前記第2推定部の推定速度の絶対値が予め定められた値以上となった場合に、前記第1推定部の推定磁極位置前記第2推定部の推定磁極位置との差を用いて前記第1推定部の脱調を検知することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記判定・起動処理部は、前記第2推定部の推定速度の絶対値が予め定められた値未満の場合に、前記第2推定部の推定速度および推定磁極位置を用いて前記第1推定部の推定速度および推定磁極位置をリセットする判定を行い前記第1推定部を起動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
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