JP2010041868A - 同期電動機のロータ回転監視装置および制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】所定の状況下で、同期電動機のロータの回転運動状態を簡単な手法で容易に監視する。
【解決手段】同期電動機1の電機子巻線に流れる電流を検出する電流検出手段4,5と、電機子巻線の電流の目標値と電流検出値との偏差を“0”に収束させるように電機子巻線の印加電圧の目標値を決定する電圧指令値決定手段15と、決定された電圧指令値に応じて電機子巻線に電圧を印加する電圧印加手段3と、電動機1のロータの回転運動状態を監視すべき状況としてあらかじめ定められた状況下で、電圧指令値決定手段15に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に、その保持状態で電圧指令値決定手段15が決定する電圧指令値に基づき、ロータの回転運動状態を監視する監視手段13,14,23,25とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】同期電動機1の電機子巻線に流れる電流を検出する電流検出手段4,5と、電機子巻線の電流の目標値と電流検出値との偏差を“0”に収束させるように電機子巻線の印加電圧の目標値を決定する電圧指令値決定手段15と、決定された電圧指令値に応じて電機子巻線に電圧を印加する電圧印加手段3と、電動機1のロータの回転運動状態を監視すべき状況としてあらかじめ定められた状況下で、電圧指令値決定手段15に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に、その保持状態で電圧指令値決定手段15が決定する電圧指令値に基づき、ロータの回転運動状態を監視する監視手段13,14,23,25とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、同期電動機のロータの回転運動状態を監視するロータ回転監視装置と、このロータ回転監視装置を備えた制御システムとに関する。
ロータに永久磁石を備えた同期電動機(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)では、その出力トルクや回転速度の制御を要する運転を行うために、ステータに対するロータの磁極位置(磁極の回転角度位置)を逐次認識する必要がある。この場合、レゾルバや、ロータリエンコーダ、ホール素子などに代表される磁極位置センサを使用して、ロータの磁極位置を検出する場合と、該磁極位置センサを使用せずに、所謂センサレス制御の手法の推定演算処理により、ロータの磁極位置を推定する場合とがある。センサレス制御による同期電動機(以下、単に電動機ということがある)のロータの磁極位置の推定手法としては、例えば、特許文献1、非特許文献1に見られる手法が一般に知られている。
なお、本明細書では、“センサレス制御”というのは、ロータの磁極位置を検出するハード構成のセンサを備えず、ロータの磁極位置を推定するという意味で使用する。
特許文献1に見られる技術は、電動機のロータの回転が停止した状態での、状態方程式を利用した手法によって、電動機の電機子巻線にパルス電圧を印加しつつ、停止しているロータの磁極位置を推定しようとするものである。
また、非特許文献1に見られる技術では、電動機のロータの回転速度が中・高速域であるときには、電動機の誘起電圧を利用した手法により、ロータの磁極位置を推定する。また、電動機のロータの回転速度が低速域であるときには、電動機のインダクタンスを利用した手法によりロータの磁極位置を推定するようにしている。
特許3282657号公報
竹下隆晴,他3名,「全速度領域におけるセンサレス突極形PM同期電動機制御」,社団法人電気学会,平成12年,電学論D,120巻2号,p.240−247
ところで、磁極位置センサを備えた電動機の制御システムでは、該磁極位置センサが故障すると、該磁極位置センサの出力により示される磁極位置が異常なものとなる。このため、ロータの磁極位置やロータの回転速度を適正に把握することができなくなって、電動機の所望の運転を行うことができなくなる。
また、センサレス制御システムでは、例えば磁極位置の推定誤差などに起因して、電動機の運転を安定に行うことが困難となる場合がある。
従って、磁極位置センサにより検出された磁極位置又はセンサレス制御で推定された磁極位置の異常の発生が検知された場合に、制御システムの動作を一旦停止するなど、該異常の発生に対応した処理を行う必要がある。
しかるに、この場合、電動機のロータの回転速度を適正に把握することができないために、ロータが未だ回転している状態で、電動機の電機子巻線に電圧を印加するインバータ回路などの駆動回路への電源電力の供給を遮断してしまう(該駆動回路と電源との間のスイッチをオフにする)恐れがある。そして、このような場合には、電動機のロータの回転によって該電動機の電機子巻線に発生する誘起電圧が、駆動回路に印加され、該駆動回路に損傷を及ぼす恐れがあるという不都合がある。
従って、磁極位置センサにより検出された磁極位置、あるいは、センサレス制御で推定された磁極位置の異常が発生した場合に、なんらかの手法により、電動機のロータの回転運動状態を監視することが望まれていた。
また、センサレス制御システムでは、電動機の運転を開始しようとする場合に、センサレス制御の手法による磁極位置の推定を開始する前に、電動機の負荷側から与えられる外力によって、電動機のロータが既に回転している場合がある。例えば、ファンを駆動する電動機にあっては、風などの影響で、電動機の運転を開始する前に、電動機のロータが既に回転している場合がある。
そして、このように、電動機の運転開始前に、電動機のロータが回転していると、従来のセンサレス制御システムでは、次のような不都合を生じる。
すなわち、例えば前記特許文献1に見られる技術では、ロータが停止している状態での状態方程式を利用して、磁極位置を推定しようとするものであるため、電動機の運転開始前にロータが既に回転していると、磁極位置を適切に推定することができなくなる。また、前記非特許文献1に見られる技術では、電動機の運転開始前にロータが既に回転している場合に、どの程度の回転速度で回転しているかが判らないので、誘起電圧を利用する手法と、インダクタンスを利用する手法とのいずれの手法で、ロータの磁極位置を推定すべきかを決定することができない。そして、この場合、いずれか一方の手法で、ロータの磁極位置を推定しながら、電動機の運転を開始しようとすると、該運転開始前のロータの回転速度によっては、磁極位置の推定値の信頼性を確保することができないために、電動機の所望の運転を行うことが困難となる。
従って、電動機の運転開始前に、なんらかの手法により、電動機のロータの回転運動状態を把握することが望まれていた。
以上のように、磁極位置センサを備えた電動機の制御システム、および、センサレス制御システムのいずれにおいても、所定の状況下で、電動機のロータの回転運動状態を監視することが望まれていた。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、所定の状況下で、同期電動機のロータの回転運動状態を簡単な手法で容易に監視することができるロータ回転監視装置を提供することを目的とする。さらに、このロータ回転監視装置を使用して、磁極位置の検出値又は推定値の異常が発生した場合の処理を適切に行うことができる制御システムを提供することを目的とする。また、該ロータ回転監視装置を使用して、センサレス制御システムにおける電動機の運転開始を適切に行うことができる制御システムを提供することを目的とする。
本発明の同期電動機のロータ回転監視装置は、前記の目的を達成するために、ロータに永久磁石を備えた同期電動機におけるロータの回転運動状態を監視する装置であって、前記同期電動機の電機子巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記電機子巻線の電流の目標値である電流指令値と前記電流検出手段の出力により示される前記電機子巻線の電流検出値とが入力され、該電流指令値と電流検出値との偏差を“0”に収束させるように前記電機子巻線に印加する電圧の目標値である電圧指令値を決定する電圧指令値決定手段と、前記決定された電圧指令値に応じて前記電機子巻線に電圧を印加する電圧印加手段と、前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況としてあらかじめ定められた状況下で、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に、その保持状態で該電圧指令値決定手段が決定する電圧指令値である監視用電圧指令値に基づき、前記ロータの回転運動状態を監視する監視手段とを備えたことを特徴とする(第1発明)。
この第1発明によれば、前記監視手段は、前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況下で、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持する。このため、前記電圧指令値決定手段は、同期電動機の電機子巻線に流れる電流を“0”に保持するように、前記電圧指令値を決定する。そして、この電圧指令値に応じて、前記電機子巻線に電圧が印加されるので、電動機の電機子巻線に電流が流れないこととなる。
ここで、電動機のロータが回転している状態で電動機の電機子巻線に電流が流れないように該電機子巻線に電圧を印加している状態は、ロータの回転によって電機子巻線に発生する誘起電圧を打ち消す電圧を該電機子巻線に印加している状態である。従って、この状態で、前記電圧指令値決定手段が決定する電圧指令値は、ロータの実際の回転速度に依存したものとなる。より詳しくは、電機子巻線の電流が“0”になる状態での当該電圧指令値により規定される電機子巻線の印加電圧の大きさと、ロータの回転速度との間には、比例関係が成立することとなる。
そこで、第1発明では、前記監視手段は、前記電流指令値を“0”に保持した状態で電圧指令値決定手段が決定する電圧指令値、すなわち、電機子巻線に流れる電流が“0”に保持されるように決定した電圧指令値を前記監視用電圧指令値として用い、該監視用電圧指令値に基づき、前記ロータの回転運動状態を監視する。この場合、該監視用電圧指令値は、電動機のロータの回転速度に依存したものとなる。従って、該監視用電圧指令値に基づいて、ロータの回転運動状態を適正に把握することができることとなる。
このように第1発明によれば、同期電動機のロータの回転運動状態を監視すべき状況下で、該電動機の電機子巻線に流れる電流が“0”に保持されるように電圧指令値を決定し、該電圧指令値に応じて電機子巻線に電圧を印加するという簡単な処理を実行するだけで、該電圧指令値に基づいて、ロータの回転運動状態を適切に把握することができることとなる。
よって、第1発明によれば、所定の状況下で、同期電動機のロータの回転運動状態を簡単な手法で容易に監視することができる。
かかる第1発明では、前記監視用電圧指令値から前記ロータの電気角速度を推定する速度推定手段と、該速度推定手段で推定された電気角速度の積分値を前記ロータの磁極位置推定値として求める積分手段とを備え、前記電圧指令値決定手段は、前記監視手段により前記電流指令値が“0”に保持された状態で、前記積分手段により求められた前記磁極位置推定値を使用するベクトル制御の演算処理を実行することにより、前記電圧指令値を決定することが好適である(第2発明)。
すなわち、前記監視用電圧指令値は、前記したように電動機のロータの回転速度に依存するので、前記速度推定手段によって、該監視用電圧指令値から該ロータの電気角速度を推定することができる。そして、この推定された電気角速度を前記積分手段により積分してなる積分値としての前記ロータの磁極位置推定値(ロータの回転角度)は、該ロータの回転周期と同じ周期で変化することとなる。ひいては該磁極位置推定値は、ロータの回転に伴い前記電機子巻線に発生する誘起電圧に同期して変化することとなる。このため、前記監視手段により前記電流指令値が“0”に保持された状態で、前記積分手段により求められた磁極位置推定値を使用するベクトル制御の演算処理を実行することにより、該磁極位置推定値が実際の磁極位置に対して誤差を有していても、電機子巻線に流れる電流がスムーズに速やかに“0”に収束するように、前記電圧指令値を決定されることとなる。
このため、電機子巻線の電流の頻繁な変動を抑制しつつ、速やかに電機子巻線の電流を“0”に収束させることができる。すなわち、前記電圧指令値に基づいてロータの回転運動状態を適切に監視し得る状態を速やかに実現することができる。
次に、本発明の同期電動機の制御システムの第1の態様は、前記第1発明のロータ回転監視装置と、前記ロータの磁極位置を検出又は推定する磁極位置把握手段と、該磁極位置把握手段に検出又は推定された磁極位置の異常の有無を検知する磁極位置異常検知手段とを備え、該磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知されていない状態での前記同期電動機の運転時に、前記磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置を使用するベクトル制御の演算処理を前記電圧指令値決定手段に実行させることにより、前記電圧指令値を決定するようにした同期電動機の制御システムであって、前記監視手段は、前記磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知された場合に、前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況下であるとして、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に前記監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているか否かを判断する手段であり、前記磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知された後、前記監視手段により前記ロータの回転が停止していると判断された場合に、前記電圧印加手段への電源電力の供給を遮断する処理を含む所定のエラー処理を実行するエラー処理実行手段を備えることを特徴とする(第3発明)。
かかる第3発明によれば、前記磁極位置異常検知手段により、前記磁極位置検出手段が検出又は推定した磁極位置の異常の発生が検知された場合に、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値が“0”に保持されると共に前記監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているかが判断される。なお、ロータの回転が停止している場合、すなわち、ロータの回転速度が“0”である場合には、前記監視用電圧指令値により規定される電機子巻線の印加電圧の大きさが“0”となる。従って、該監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているかを判断することができる。
そして、第3発明では、前記エラー処理実行手段は、前記磁極位置異常検知手段により前記磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置の異常の発生が検知された後、前記監視手段により前記ロータの回転が停止していると判断された場合に、前記電圧印加手段への電源電力の供給を遮断する処理を含むエラー処理を実行する。このため、前記電圧印加手段への電源電力の供給を遮断は、電動機のロータの回転が停止したことが確認された後に行われることとなる。その結果、駆動回路に備える素子等が、電動機の電機子巻線に発生する誘起電圧によって、損傷を受けるようなことを確実に防止することができる。
よって、第3発明によれば、第1発明のロータ回転監視装置を使用して、磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置の異常が発生した場合の処理を適切に行うことができる。
かかる第3発明では、前記第2発明と同様に、前記監視用電圧指令値から前記ロータの電気角速度を推定する速度推定手段と、該速度推定手段で推定された電気角速度の積分値を前記ロータの磁極位置推定値として求める積分手段とを備え、前記電圧指令値決定手段は、前記監視手段により前記電流指令値が“0”に保持された状態で、前記積分手段により求められた前記磁極位置推定値を使用するベクトル制御の演算処理を実行することにより、前記電圧指令値を決定する。そして、この場合、前記積分手段は、前記磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知される直前に、前記磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置を前記積分値の初期値として前記磁極位置推定値を求める手段であることが好ましい(第4発明)。
この第4発明によれば、前記積分手段は、前記磁極位置異常検知手段により前記磁極位置把握手段が検出又推定した磁極位置の異常の発生が検知される直前に、該磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置を前記積分値の初期値として前記磁極位置推定値を求めるので、該磁極位置推定値の、実際の磁極位置に対する誤差を小さくできる。このため、前記電圧指令値決定手段によって、電動機の電機子巻線の電流を、より一層素早く“0”に収束させるように電圧指令値を決定することができるようになる。ひいては、該電圧指令値に基づいてロータの回転運動状態を適切に監視し得る状態をより一層、素早く実現することができる。
また、本発明の同期電動機の制御システムの第2の態様は、前記第1発明又は第2発明のロータ回転監視装置を備え、前記同期電動機の運転時に、前記ロータの磁極位置の推定処理を含むセンサレス制御の演算処理を前記電圧指令値決定手段に実行させることにより、前記電圧指令値を決定するようにした同期電動機の制御システムにおいて、前記監視手段は、前記同期電動機の運転開始の要求が発生した場合に、前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況下であるとして、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に前記監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているか否かを判断する手段であり、該監視手段により前記ロータの回転が停止していると判断された場合に、前記同期電動機の運転を開始することを特徴とする(第5発明)。
かかる第5発明によれば、前記同期電動機の運転開始の要求が発生した場合に、すなわち、同期電動機の運転を開始しようとする状況で、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値が“0”に保持されると共に前記監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているかが判断される。なお、ロータの回転が停止している場合には、前記監視用電圧指令値により規定される電機子巻線の印加電圧の大きさが“0”となるので、前記第3発明の場合と同様に、該監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているかを判断することができる。
そして、第5発明では、該監視手段により前記ロータの回転が停止していると判断された場合に、前記同期電動機の運転を開始する。すなわち、電動機のロータの回転が停止したことが確認された後に、前記ロータの磁極位置の推定処理を含むセンサレス制御の演算処理によって前記電圧指令値を決定する運転が開始される。その結果、同期電動機の運転開始前に、電動機の負荷状態などによって、該電動機のロータが回転している場合であっても、確実に、該電動機のロータの回転が停止した後に、該電動機の運転を開始することができる。すなわち、センサレス制御による磁極位置の推定を適切に行い得る状態から、電動機の運転を開始することができる。
よって、第5発明によれば、センサレス制御システムにおける電動機の運転開始を適切に行うことができる。
なお、前記ベクトル制御の演算処理では、ロータの界磁極の磁束方向(所謂d軸方向)の推定方向をγ軸方向、該γ軸方向と直交する方向(所謂q軸方向の推定方向)をδ軸方向とするγδ座標系での各軸方向の電圧の指令値(目標値)を前記電圧指令値として決定するようにすればよい。この場合、γ軸電圧指令値(γ軸方向の電圧指令値)とδ軸電圧指令値(δ軸方向の電圧指令値)との合成ベクトルの大きさが、電機子巻線の印加電圧の大きさを示すものとなる。
本発明の第1実施形態を図1〜図3を参照して以下に説明する。なお、本実施形態は、前記第1〜第4発明の一実施形態である。
図1は本実施形態における同期電動機の制御システムの全体構成を示すブロック図である。同図において、1は同期電動機、2は同期電動機1の運転制御を行う制御装置である。
同期電動機1は、PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor)と言われる電動機、すなわち、そのロータに永久磁石を備えた同期電動機である。この場合、同期電動機1は、PMSMのうちのIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)とSPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)とのいずれであってもよい。また、同期電動機1(以下、単に電動機1ということがある)は、本実施形態では、複数相の電機子巻線(ステータコイル)、例えばU相、V相、W相の3相分の電機子巻線を有する。この電動機1の出力軸1aには、該電動機1の出力トルクを付与する負荷Wが接続される。
電動機1の電機子巻線は、駆動回路部としてのパワー・ドライブ・ユニット3(以下、PDU3という)を介して図示しない直流電源に接続され、該PDU3を介して直流電源との間での通電が行われる。PDU3は、図示を省略するインバータ回路を含んでおり、電動機1のU相、V相、W相のそれぞれの電機子巻線の印加電圧の目標値である相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cが制御装置2から入力されるようになっている。そして、PDU3は、各相の電機子巻線の実際の印加電圧(インバータ回路の出力電圧)が、入力された相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cになるように、PWM制御によりインバータ回路のスイッチ素子のオン・オフを制御する。これにより、PDU3から電動機1の各相の電機子巻線に、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの電圧が印加される。ひいては、該相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cに応じて各相の電機子巻線の電流(相電流)が制御される。
本実施形態の制御システムでは、電動機1の運転制御を行うために次のようなセンサが備えられている。すなわち、PDU3と電動機1との間の電流路には、3相のうちの少なくとも2つの相、例えば、U相、V相の電機子巻線を流れる電流(相電流)をそれぞれ検出する電流センサ4,5が備えられている。さらに、電動機1には、そのステータに対するロータの永久磁石の、所定の基準位置からの回転角度位置(以下、単に磁極位置という)を検出する磁極位置センサ6が付設されている。該磁極位置センサ6は、例えばレゾルバ、ホール素子、ロータリーエンコーダなどから構成され、ロータの磁極位置に応じた出力を発生する。
制御装置2は、マイクロコンピュータ等により構成された電子回路ユニットである。この制御装置2は、あらかじめ実装されたプログラムにより実現される制御処理を実行することで、電動機1の運転に係わる制御を行う。この場合、制御装置2が実行する主要な制御処理としては、磁極位置センサ6により検出された磁極位置が正常である場合における電動機1の運転時に実行する通常運転用の制御処理(以下、通常モード制御処理)と、磁極位置センサ6の故障等に起因して該磁極位置センサ6により検出された磁極位置の異常が発生した場合に実行する制御処理(以下、フェイルモード制御処理という)とがある。
前記通常モード制御処理では、制御装置2は、電動機1のロータの実際の回転速度を目標とする回転速度に一致させるように前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定して、PDU3に出力する。これにより、制御装置2は、電動機1のロータの実際の回転速度を目標とする回転速度に一致させるように、PDU3を介して電動機1の各相の電機子巻線の通電を制御する。
また、前記フェイルモード制御処理では、制御装置2は、電動機1の各相の電機子巻線の電流(相電流)を“0”に保つように、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定して、PDU3に出力する。これにより、制御装置2は、電動機1の各相の電機子巻線に電流が流れないようにする。さらに、制御装置2は、このように各相の電機子巻線の電流(相電流)を“0”に保ちながら、電動機1のロータの電気角速度を所定の演算処理により推定し、その推定した電気角速度をロータの回転運動状態を示す指標として監視する。そして、制御装置2は、該電気角速度が“0”になって、電動機1のロータの回転が停止していることが確認されると、PDU3への電源供給を遮断する処理を含む所定のエラー処理を実行する。
これらの制御処理を実行する制御装置2には、前記電流センサ4,5の出力によりそれぞれ示されるU相電流検出値iu_sとV相電流検出値iv_sとが入力されると共に、前記磁極位置センサ6の出力により示される磁極位置検出値θeが入力される。さらに、制御装置2には、前記通常モード制御処理での電動機1のロータの回転速度の目標値である速度指令値ωr_cが外部から入力される。なお、磁極位置検出値θeおよび速度指令値ωr_cは、通常モード制御処理で使用され、フェイルモード制御処理では使用されない。補足すると、本実施形態では、磁極位置検出値θeは電気角での磁極位置であり、速度指令値ωr_cは機械角での回転速度(角速度)の目標値である。
この場合、本実施形態では、通常モード制御処理およびフェイルモード制御処理のいずれにおいても、制御装置2は、基本的には、電動機1のロータの永久磁石の磁束方向をd軸方向、このd軸方向に対して直交する方向をq軸方向とする、所謂dq座標系で電動機1を取り扱うベクトル制御の演算処理によって、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定する。該dq座標系は、電動機1のステータに対してロータと一体に回転する回転座標系である。
ここで、一般に、かかるベクトル制御の演算処理を実行する場合、センサによるロータの磁極位置の検出値、あるいは、適当な推定演算による磁極位置の推定値を基に、上記dq座標系のd軸方向およびq軸方向を認識(推定)することとなる。そして、その認識したdq座標系でベクトル制御の演算処理を実行することとなる。この場合、ロータの磁極位置の検出値または推定値が真値に対して誤差を有する場合には、該検出値または推定値から認識されるd軸方向およびq軸方向は、それぞれ、実際の(真の)d軸方向、q軸方向に対してずれを生じる。この場合、ロータの磁極位置の検出値または推定値から認識(推定)されるd軸方向およびq軸方向を、それぞれγ軸方向、δ軸方向という。また、そのγ軸方向およびδ軸方向を2軸方向とする回転座標系をγδ座標系という。
図2はdq座標系とγδ座標系との関係を示している。ロータの磁極位置の検出値または推定値の、真値に対する誤差(偏差)をΔθeとおくと、γδ座標系のγ軸方向およびδ軸方向は、それぞれ、図示の如く、d軸方向、q軸方向からΔθeだけ、位相(角度)がずれた方向となる。そして、Δθe=0であれば、γ軸方向およびδ軸方向は、それぞれ、d軸方向、q軸方向と一致する。
本実施形態における制御装置2で実行されるベクトル制御の演算処理は、dq座標系の推定座標系としての上記γδ座標系での処理である。この場合、前記通常モード制御処理でのγδ座標系のγ軸方向およびδ軸方向は、前記磁極位置センサ6による磁極位置検出値θeを基に認識される方向である。また、前記フェイルモード制御処理では、後述する磁極位置簡易推定値θe_eを基に認識される方向である。
以上説明した制御装置2の制御処理の概要を踏まえて、該制御処理の詳細を以下に説明する。図1に示すように、制御装置2は、その制御処理の機能的手段として、磁極位置センサ6による磁極位置検出値θeを微分する(θeの単位時間当たりの変化量を求める)ことで算出される電気角速度をロータの極対数により除算することによって、機械角でのロータの回転速度ωr(以下、速度検出値ωrという)を求める速度算出部10と、外部から入力される速度指令値ωr_cと上記速度検出値ωrとの偏差Δω(=ωr_c−ωr。以下、速度偏差Δωrという)を求める偏差算出部11と、この速度偏差Δωrに応じて、該速度偏差Δωrを“0”に収束させるためのγ軸電流(電機子巻線の電流のγ軸方向の電流成分)の目標値iγ_c1とδ軸電流(電機子巻線の電流のδ軸方向の電流成分)の目標値iδ_c1との組をフィードバック則などの公知の演算処理により決定する速度制御部12とを備える。
ここで、本実施形態では、電動機1のγ軸電流およびδ軸電流の目標値には、前記通常モード制御処理における目標値と、前記フェイルモード制御処理における目標値とがある。そして、速度制御部12が決定するγ軸電流およびδ軸電流のそれぞれの目標値iγ_c1,iδ_c1は、通常モード制御処理での目標値である。また、前記フェイルモード制御処理でのγ軸電流およびδ軸電流のそれぞれの目標値は、いずれも“0”である。以降の説明では、通常モード制御処理でのγ軸電流およびδ軸電流のそれぞれの目標値iγ_c1,iδ_c1を、それぞれ、第1γ軸電流指令値iγ_c1、第1δ軸電流指令値iδ_c1という。また、前記フェイルモード制御処理でのγ軸電流およびδ軸電流のそれぞれの目標値を、それぞれ、第2γ軸電流指令値(=0)、第2δ軸電流指令値(=0)という。
そして、制御装置2は、実際に使用するγ軸電流の目標値iγ_c(以下、実使用γ軸電流指令値iγ_cという)を、第1γ軸電流指令値iγ_c1と第2γ軸電流指令値(=0)とから選択的に決定するγ軸電流指令選択切替部13と、実際に使用するδ軸電流の目標値iδ_c(以下、実使用δ軸電流指令値iδ_cという)を、第1δ軸電流指令値iδ_c1とフェールモード用δ軸電流指令値とから選択的に決定するδ軸電流指令選択切替部14とを備える。γ軸電流指令選択切替部13は、通常モード制御処理の実行時には、実使用γ軸電流指令値iγ_cとして、第1γ軸電流指令値iγ_c1を選択し、フェイルモード制御処理の実行時には、実使用γ軸電流指令値iγ_cとして、第2γ軸電流指令値(=0)を選択する。同様に、δ軸電流指令選択切替部14は、通常モード制御処理の実行時には、実使用δ軸電流指令値iδ_cとして、第1δ軸電流指令値iδ_c1を選択し、フェイルモード制御処理の実行時には、実使用δ軸電流指令値iδ_cとして、第2δ軸電流指令値(=0)を選択する。
以降の説明では、説明の便宜上、γ軸電流指令選択切替部13およびδ軸電流指令選択切替部14をそれぞれ、その機能的な意味で、スイッチ13,14ということがある。この場合、γ軸電流指令選択切替部13が、iγ_cとして第1γ軸電流指令値iγ_c1を選択する場合におけるスイッチ13の動作位置を通常モード位置、iγ_cとして第2γ軸電流指令値(=0)を選択する場合におけるスイッチ13の動作位置をフェイルモード位置という。同様に、δ軸電流指令選択切替部14が、iδ_cとして第1δ軸電流指令値iδ_c1を選択する場合における該スイッチ14の動作位置を通常モード位置、iδ_cとして第2δ軸電流指令値(=0)を選択する場合における該スイッチ14の動作位置をフェイルモード位置という。
また、制御装置2は、前記電流センサ4,5によるU相電流検出値iu_sおよびV相電流検出値iv_sと、前記実使用γ軸電流指令値iγ_cおよび実使用δ軸電流指令値iδ_cとが入力され、これらの入力値を基に、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組を求める電圧指令値決定部15を備える。
この電圧指令値決定部15は、より詳しくは、入力されたU相電流検出値iu_sおよびV相電流検出値iv_sの組をγ軸電流の検出値としてのγ軸電流検出値iγとδ軸電流の検出値としてのδ軸電流検出値iδとの組に変換するuvw/γδ座標変換部15aと、入力された実使用γ軸電流指令値iγ_cとγ軸電流検出値iγとの偏差Δiγ(=iγ_c−iγ)を算出する偏差算出部15bと、入力された実使用δ軸電流指令値iδ_cとδ軸電流検出値iδとの偏差Δiδ(=iδ_c−iδ)を算出する偏差算出部15cと、上記偏差Δiγ,Δiδから、これらの偏差Δiγ,Δiδをそれぞれ“0”に収束させるためのγ軸電圧(電機子巻線の電圧のγ軸方向の成分)の目標値としてのγ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧(電機子巻線の電圧のδ軸方向の成分)の目標値としてのδ軸電圧指令値vδ_cとをそれぞれフィードバック則などの公知の演算処理により決定するγ軸電流制御部15d及びδ軸電流制御部15eと、該γ軸電圧指令値vγ_c及びδ軸電圧指令値vδ_cの組を、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組に変換するγδ/uvw座標変換部15fとから構成される。従って、電圧指令値決定部15は、γ軸電流検出値iγとδ軸電流検出値iδとをそれぞれ実使用γ軸電流指令値iγ_c、実使用δ軸電流指令値iδ_cに収束させるように(上記偏差Δiγ及びΔiδを“0”に収束させるように)、γ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cの組、ひいては、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組を決定する。
ここで、uvw/γδ座標変換部15aは、U相電流検出値iu_sと、V相電流検出値iv_sとの組から成るベクトルを、電動機1のロータの磁極位置に応じて規定される公知の座標変換行列によって座標変換することにより、γ軸電流検出値iγとδ軸電流検出値iδとの組を算出する。また、γδ/uvw座標変換部15fは、γ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧指令値vδ_cとの組から成るベクトルを、電動機1のロータの磁極位置に応じて規定される公知の座標変換行列によって座標変換することにより、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組を算出する。
この場合、本実施形態では、uvw/γδ座標変換部15a及びγδ/uvw座標変換部15fの座標変換で使用する磁極位置の値(以下、座標変換用磁極位置θaという)としては、磁極位置センサ6による磁極位置検出値θeと、後述する積分器23により算出される磁極位置簡易推定値θe_eとがある。そして、本実施形態の制御装置2は、座標変換用磁極位置θaを、磁極位置検出値θeと磁極位置簡易推定値θe_eとから選択的に決定して、uvw/γδ座標変換部15a及びγδ/uvw座標変換部15fに与える座標変換用磁極位置選択切替部21を備える。この座標変換用磁極位置選択切替部21は、通常モード制御処理の実行時には、座標変換用磁極位置θaとして、磁極位置検出値θeを選択し、フェイルモード制御処理の実行時には、磁極位置簡易推定値θe_eを選択する。
以降の説明では、説明の便宜上、座標変換用磁極位置選択切替部21を、その機能的な意味でスイッチ21ということがある。この場合、座標変換用磁極位置選択切替部21が、θaとして磁極位置検出値θeを選択する場合における該スイッチ21の動作位置を通常モード位置、θaとして磁極位置簡易推定値θe_eを選択する場合における該スイッチ21の動作位置をフェイルモード位置という。
また、制御装置2は、磁極位置センサ6から入力される磁極位置検出値θeの異常の発生の有無を検知する磁極位置異常検知部22(磁極位置異常検知手段)と、前記フェイルモード制御処理の実行時に、簡易的な演算処理により、電動機1のロータの電気角速度を推定する簡易速度推定部23と、この簡易速度推定部23により推定された電気角速度(以下、電気角速度簡易推定値ωe_eという)を積分することで、ロータの磁極位置の簡易的な推定値としての前記磁極位置簡易推定値θe_eを算出する積分器24と、前記電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”であるか否かを判断する回転速度判断部25と、この回転速度判断部25の判断結果に応じてエラー処理を実行するエラー処理部26とを備える。
この場合、磁極位置異常検知部22には、磁極位置センサ6による磁極位置検出値θeの異常の発生を検知するために、該磁極位置検出値θeが逐次入力される。そして、磁極位置異常検知部22は、例えば、入力される磁極位置検出値θeの時間的変化率が所定の閾値を超えた場合に、磁極位置検出値θeの異常が発生したことを検知する。
補足すると、磁極位置センサ6の種類によっては、該磁極位置センサ6の異常が発生したときに、そのことを示す異常発生信号が該磁極位置センサ6から出力される場合もある。このような場合には、磁極位置異常検知部22は、該異常発生信号の出力の有無に基づいて、磁極位置検出値θeの異常の発生の有無を判断するようにしてもよい。
前記簡易速度推定部23には、前記γ軸電流制御部18およびδ軸電流制御部19でそれぞれ決定されるγ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧指令値vδ_cとが入力される。そして、該簡易速度推定部22は、これらの入力値から、電気角速度簡易推定値ωe_eを算出する。この演算処理の詳細を以下に説明する。
前記dq座標系での電動機1の電圧方程式は、一般に次式(1)により表される。
そして、dq座標系のd軸方向およびq軸方向に対して、γδ座標系のγ軸方向およびδ軸方向が図2に示した如く角度Δθeの位相差を有するとすると、γδ座標系での電圧方程式は、次式(2)となる。
ここで、式(2)において、iγ=iδ=0とすると、次式(3)が得られる。
従って、電動機1の電機子巻線の電圧のγδ座標系での大きさ、すなわち、γ軸電圧vγとδ軸電圧vδの合成電圧ベクトルの大きさ|vγδ|と、ロータの電気角速度ωe_eとの間には、Δθeに依存することなく、次式(4a)または(4b)の関係(比例関係)が成立する。
従って、電動機1のロータが回転している状態で、電動機1の各相の電機子巻線の実際の電流が“0”になるように(ひいては、γ軸電流およびδ軸電流が“0”なるように)、各相の電機子巻線への印加電圧を制御した状態では、式(4a)または式(4b)により、ロータの電気角速度ωe_eを推定することができることとなる。
そこで、本実施形態では、制御装置2は、フェイルモード制御処理では、前記スイッチ13,14をフェイルモード位置に動作させることで、前記実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cをいずれも“0”に保持する。すなわち、制御装置2は、γ軸電流およびδ軸電流が共に“0”に保持されること、ひいては、電動機1の各相の電機子巻線の実際の電流が“0”に保持されることを目標として、電動機1の各相の電機子巻線の印加電圧を制御する。そして、この状態で、簡易速度推定部23が、入力されるγ軸電圧指令値vγ_cと、δ軸電圧指令値vδ_cとから、vδ_cの符号に応じて、式(4a)または(4b)により、電気角速度簡易推定値ωe_eを算出する。
より詳しくは、簡易速度推定部23は、入力されるγ軸電圧指令値vγ_cと、δ軸電圧指令値vδ_cとから、これらの合成電圧ベクトルの大きさ|vγδ|を、式(4c)に従って算出する。そして、簡易速度推定部22は、vδ_c>0である場合には、算出した|vγδ|を使用して、式(4a)の右辺の演算を実行することにより、電気角速度簡易推定値ωe_eを算出する。また、簡易速度推定部22は、vδ_c<0である場合には、算出した|vγδ|を使用して、式(4b)の右辺の演算を実行することにより、電気角速度簡易推定値ωe_eを算出する。この場合、式(4a),(4b)の演算に必要な誘起電圧定数Keの値は、電動機1のロータの電気角速度ωeと誘起電圧との関係(比例関係)を表す比例定数であり、あらかじめ実験などに基づいて同定された値が使用される。
以上が、簡易速度推定部22の演算処理の詳細である。
補足すると、本実施形態では、前記PDU3が本発明における電圧印加手段に相当し、電流センサ4,5が本発明における電流検出手段に相当し、磁極位置センサ6が本発明における磁極位置把握手段に相当する。また、前記電圧指令値決定部15が本発明における電圧指令値決定手段に相当し、前記積分器24が本発明における積分手段に相当し、簡易速度推定部23が本発明における速度推定手段に相当する。また、前記γ軸電流指令選択切替部13(スイッチ13)、δ軸電流指令選択切替部14(スイッチ14)、簡易速度推定部23および回転速度判断部25によって、本発明における監視手段が実現される。この場合、前記実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cをいずれも“0”に保持した状態で、電圧指令値決定部15で決定されるγ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧指令値vδ_cとの組が、本発明における監視用電圧指令値に相当する。さらに、前記磁極位置異常検知部22が本発明における磁極位置異常検知手段に相当し、エラー処理部26が本発明におけるエラー処理実行手段に相当する。
次に、制御装置2の全体的な制御処理を図3を参照して説明する。図3は、その全体的な制御処理を示すフローチャートである。
制御装置2は、磁極位置センサ6による磁極位置検出値θeが正常である場合の電動機1の運転時には、通常モード制御処理を実行しながら(STEP1)、磁極位置異常検知部22により磁極位置検出値θeの異常の発生の有無を監視する(STEP2)。
この場合、通常モード制御処理では、前記スイッチ13,14,21の動作位置は、いずれも通常モード位置である。そして、この状態で、前記速度算出部10、偏差算出部11、速度制御部12、及び電圧指令値決定部15の前記した処理が、所定の演算処理周期で逐次実行される。これにより、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組が逐次決定される。そして、この相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの電圧が、前記した如くPDU3から電動機1の各相の電機子巻線に印加され、電動機1の各相の電機子巻線の通電が制御される。
この通常モード制御処理では、前記スイッチ13,14の動作位置が通常モード位置であるので、電圧指令値決定部15に入力される実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cは、それぞれ、前記速度制御部12が決定する第1γ軸電流指令値iγ_c1、第1δ軸電流指令値iδ_c1である。このため、電圧指令値決定部15のγ軸電流制御部15dおよびδ軸電流制御部15eがそれぞれ決定するγ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧指令値vδ_cとの組、ひいては、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組は、γ軸電流検出値iγ_cおよびδ軸電流検出値iδ_cを、それぞれ、第1γ軸電流指令値iγ_c1、第1δ軸電流指令値iδ_c1に収束させるように、決定される。従って、電動機1の各相の電機子巻線の通電は、速度検出値ωrが速度指令値ωr_cになるようにフィードバック制御されることとなる。
なお、通常モード制御処理では、uvw/γδ座標変換部15及びγδ/uvw座標変換部位20の座標変換処理では、磁極位置センサ6による磁極位置検出値θeが、座標変換用磁極位置θaとして使用される。
このように、制御装置2が通常モード制御処理を実行している時に、磁極位置センサ6の故障等に起因して磁極位置検出値θeの異常が発生すると、それが磁極位置異常検知部22で検知される(STEP2の判断結果がYESになる)。この時、STEP3において、前記スイッチ13,14,21の動作位置が、それぞれ通常モード位置からフェイルモード位置に切り替わり、フェイルモード制御処理が開始される。
この場合、フェイルモード制御処理では、前記スイッチ13,14,21がそれぞれフェイルモード位置に動作した状態で、前記電圧指令値決定部15の前記した処理が、所定の演算処理周期で逐次実行される。これにより、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組が逐次決定される。そして、この相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの電圧がPDU3から電動機1の各相の電機子巻線に印加される。さらに、フェイルモード制御処理では、上記のように相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを決定するのと並行して、前記簡易速度推定部23、積分器24、回転速度判断部25及びエラー処理部26の処理が実行される。
このフェイルモード制御処理では、前記スイッチ13,14の動作位置がフェイルモード位置であるので、前記実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cは、それぞれ、第2γ軸電流指令値(=0)、第2δ軸電流指令値(=0)となる。すなわち、iγ_c及びiδ_cは、定常的に“0”に保持される。このため、前記電圧指令値決定部15では、γ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cの組、ひいては、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組は、電動機1の各相の電機子巻線に流れる電流が定常的に“0”に保持されるように決定されることとなる。換言すれば、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cにより規定される、PDU3から電動機1の各相の電機子巻線への印加電圧が、ロータの回転に伴い各相の電機子巻線に発生する誘起電圧を打ち消すように、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cが決定されることとなる。これにより、電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”になるように、PDU3から各相の電機子巻線への印加電圧が制御される。
そして、このように電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”になるように制御しながら、前記簡易速度推定部23が、前記γ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cから前記式(4a)又は(4b)により、電気角速度簡易推定値ωe_eを所定の演算処理周期で逐次算出する。さらに、積分器24により、電気角速度簡易推定値ωe_eが逐次積分され、前記磁極位置簡易推定値θe_eが逐次算出される。このように積分器24により算出される磁極位置簡易推定値θe_eは、座標変換用磁極位置選択切替部21(スイッチ21)を介して前記uvw/γδ座標変換部15a及びγδ/uvw座標変換部15fに前記座標変換用磁極位置θaとして与えらる。なお、本実施形態では、積分器24の積分処理では、磁極位置異常検知部22により、磁極位置検出値θeの異常の発生が検知される直前(フェールモード制御処理の開始直前)における磁極位置検出値θeが、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値として設定される。
図3の説明に戻って、上記のようにフェイルモード制御処理の実行中に、簡易速度推定部23が算出する電気角速度簡易推定値ωe_eは、回転速度判断部24で監視され、該電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”になったか否かが判断される(STEP4)。ここで、磁極位置検出値θeの異常の発生の直後は、その発生前の電動機1の運転制御によって、一般には、該電動機1のロータが回転している。このように、該ロータが回転している状態では、ωe_e≠0であるので、STEP4の判断結果は否定的となる。そして、この状態では、STEP4の判断処理が継続的に行われる。
その後、電動機1のロータの回転が停止すると、STEP4の判断結果が肯定的になる。この時、前記エラー処理部25が所定のエラー処理を実行する(STEP5)。このエラー処理では、エラー処理部25は、例えば、直流電源とPDU3との間に設けられているスイッチ(図示しない)をオフにして、直流電源からPDU3への電源電力の供給を遮断する。さらに、該エラー処理部25は、電動機1の制御システムのリセット処理などを実行する。
以上が、制御装置2の全体的な制御処理である。
かかる本実施形態では、電動機1の運転中に、磁極位置異常検知部22により磁極位置検出値θeの異常の発生が検知された場合に、制御装置2は、前記フェイルモード制御処理によって、まず、電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”に保持されるように、PDU3から該電機子巻線への印加電圧を規定するγ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cの組、ひいては、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを決定する。そして、このようにvγ_cおよびvδ_cを決定しながら、制御装置2は、前記簡易速度推定部23および積分器24の演算処理を実行する。
このとき、電動機1の各相の電機子巻線の電流を“0”に保持するように、電動機1の電機子巻線の印加電圧を制御しながら、簡易速度推定部23の演算処理を行うので、電動機1のロータの実際の電気角速度の推定値として十分な信頼性を有する前記電気角速度簡易推定値ωe_eを算出することができる。従って、該電気角速度簡易推定値ωe_eによって、磁極位置検出値θeの異常の発生後のロータの回転運動状態を把握することができる。
また、この場合、フェイルモード制御処理において積分器24により算出される磁極位置簡易推定値θe_e、すなわち、前記uvw/γδ座標変換部15a及びγδ/uvw座標変換部15fに、座標変換用磁極位置θaとして与えられる磁極位置簡易推定値θe_eは、ロータの回転周期に同期して変化する。このため、γδ/uvw座標変換部15fで算出される相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_c、ひいては、PDU3から電動機1の各相の電機子巻線に印加される電圧は、比較的速やかに、該電機子巻線に発生する誘起電圧に同期するようになる。その結果、磁極位置検出値θeの異常の発生の検知後、電動機1の各相の電機子巻線の電流を、その頻繁な変動を抑制しつつ、速やかに“0”に収束させることができる。特に、本実施形態では、前記したように磁極位置検出値θeの異常の発生が検知される直前(フェイルモード制御処理の開始直前)における磁極位置検出値θeが、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値として設定されるので、フェイルモード制御処理の開始直後に積分器24により算出される磁極位置簡易推定値θe_eの誤差が比較的小さいものとなる。このため、電動機1の各相の電機子巻線の電流を“0”に収束させることを円滑且つ迅速に行うことができる。
そして、このように、電動機1の各相の電機子巻線の電流を速やかに“0”に収束させることができることから、信頼性の高い前記電気角速度簡易推定値ωe_eを前記簡易速度推定部23により算出し得る状態を、磁極位置検出値θeの異常の発生後、速やかに実現することができる。すなわち、磁極位置検出値θeの異常の発生後、速やかに、電動機1のロータの電気角速度を高い信頼性で推定することができる。
また、制御装置2は、このように簡易速度推定部23により算出された電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”になった時、すなわち、電動機1のロータの回転が停止して、電動機1で発生する誘起電圧が“0”もしくは十分に微小なものとなった時に、前記エラー処理部25によりエラー処理を実行して、PDU3への電源電力の供給を遮断する。このため、電動機1で発生する誘起電圧によって、PDU3の駆動回路などが損傷を受けたりするのを回避することができる。
なお、本実施形態では、磁極位置検出値θeの異常の発生が検知される直前(フェールモード制御処理の開始直前)における磁極位置検出値θeを、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値として設定するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値を、“0”など、磁極位置検出値θeの異常の発生が検知される直前における磁極位置検出値θeに依存しない固定値に設定してもよい。ただし、電動機1の各相の電機子巻線の電流をできるだけ素早く“0”に収束させる上では、前記した如く、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値を設定することが有利である。
次に、本発明の第2実施形態を図4及び図5を参照して説明する。この実施形態は、前記第1〜第5発明の一実施形態である。なお、本実施形態は、前記第1実施形態のものと一部の構成及び制御処理だけが相違するものであるので、第1実施形態と同一部分については、第1実施形態と同一の参照符号を用い、説明を省略する。
図4は本実施形態における電動機の制御システムの機能的構成を示すブロック図である。同図において、1は第1実施形態のものと同じ同期電動機(以下、単に電動機という)、30は電動機1の運転制御を行う制御装置である。
電動機1の各相の電機子巻線は、第1実施形態と同様にPDU3を介して図示しない直流電源に接続されている。また、PDU3と電動機1の各相の電機子巻線との間の電流路には、第1実施形態と同様に電流センサ4,5を備える。ただし、本実施形態の制御システムでは、磁極位置センサは備えられていない。本実施形態のシステム構成のうちの制御装置30以外の構成は、磁極位置センサが備えられていないことを除いて、第1実施形態と同じである。
制御装置30は、第1実施形態の制御装置2と同様に、マイクロコンピュータ等により構成された電子回路ユニットであり、あらかじめ実装されたプログラムにより実現される制御処理を実行することで、電動機1の運転に係わる制御を行う。この場合、制御装置30が実行する主要な制御処理としては、所謂センサレス制御の手法により電動機1のロータの磁極位置を推定しつつ、電動機1の運転を行う制御処理(以下、センサレス制御処理という)と、このセンサレス制御処理による電動機1の運転を開始する前に実行する制御処理(以下、起動前制御処理という)と、センサレス制御処理の実行中に推定された磁極位置の異常が発生した場合に実行する制御処理(以下、フェイル制御処理という)とがある。
センサレス制御処理では、制御装置30は、公知のセンサレス制御の手法により電動機1のロータの磁極位置および回転速度を推定しつつ、電動機1のロータの実際の回転速度を目標とする回転速度に一致させるように、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定して、PDU3に出力する。これにより、制御装置30は、第1実施形態における通常モード制御処理と同様に、電動機1のロータの実際の回転速度を目標とする回転速度に一致させるように、PDU3を介して電動機1の各相の電機子巻線の電流を制御する。
また、起動前制御処理では、制御装置30は、前記第1実施形態におけるフェイルモード制御処理と同様に、電動機1の各相の電機子巻線の電流(相電流)を“0”に保つように、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定して、PDU3に出力する。これにより、制御装置30は、電動機1の各相の電機子巻線に電流が流れないようにする。さらに、制御装置30は、このように各相の電機子巻線の電流(相電流)を“0”に保ちながら、記第1実施形態におけるフェイルモード制御処理と同様に、電動機1のロータの電気角速度を所定の演算処理により推定し、その推定した電気角速度をロータの回転運動状態を示す指標として監視する。そして、制御装置30は、該電気角速度が0になって、電動機1のロータの回転が停止していることが確認されると、前記センサレス制御処理を開始する。
また、前記フェイル制御処理では、制御装置30は、前記第1実施形態のフェイルモード制御処理と同じ制御処理を実行する。すなわち、該フェイル制御処理を概略的に説明すると、制御装置30は、電動機1の各相の電機子巻線の電流(相電流)を“0”に保つように、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定しながら、電動機1のロータの電気角速度を推定・監視する。そして、制御装置30は、該電気角速度が“0”になって、電動機1のロータの回転が停止していることが確認されると、PDU3への電源供給を遮断する処理を含むエラー処理を実行する。
これらの制御処理を実行する制御装置30には、前記電流センサ4,5の出力によりそれぞれ示されるU相電流検出値iu_sとV相電流検出値iv_sとが入力される。さらに、制御装置30には、センサレス制御処理の実行時に、電動機1のロータの回転速度の目標値である速度指令値ωr_cが第1実施形態の場合と同様に外部から入力される。
この場合、本実施形態では、センサレス制御処理および起動前制御処理のいずれにおいても、制御装置30は、第1実施形態で説明したγδ座標系でのベクトル制御の処理によって、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを逐次決定する。
以上説明した制御装置30の制御処理の概要を踏まえて、該制御処理の詳細を以下に説明する。この場合、制御装置30の機能的手段の多くは、第1実施形態の制御装置2と同じである。そこで、以下の制御装置30の説明においては、制御装置2と同じ機能を有する部分については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて詳細な説明を省略し、制御装置2と相違する機能的手段を中心に説明する。
図4に示すように、制御装置30は、第1実施形態の制御装置2と同様に、偏差算出部11、速度制御部12、γ軸電流指令選択切替部13(スイッチ13)、δ軸電流指令選択切替部14(スイッチ14)、電圧指令値決定部15、座標変換用磁極位置選択切替部21(スイッチ21)、磁極位置異常検知部22、簡易速度推定部23、積分器24、回転速度判断部25、及びエラー処理部26を備える。そして、本実施形態における制御装置30は、第1実施形態における磁極位置センサ6および速度算出部10の代わりの機能的手段として、磁極位置・速度推定部31を備える。
この場合、前記磁極位置・速度推定部31は、センサレス制御処理の実行時に、電圧指令値決定部15のγ軸電流制御部15dおよびδ軸電流制御部15eでそれぞれ決定されるγ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cと、uvw/γδ座標系変換部15aで求められるγ軸電流検出値iγおよびδ軸電流検出値iδとを基に、公知のセンサレス制御の手法によって、電動機1のロータの磁極位置の推定値θe_e1と回転速度(機械角での角速度)の推定値ωr_e1とを算出する。例えば、磁極位置・速度推定部31は、電動機1のロータの回転速度が低い状態では、電動機1のインダクタンスを利用した公知の手法で、磁極位置推定値θe_e1を算出し、ロータの回転速度がある程度高くなると、電動機1の誘起電圧を利用した公知の手法で、磁極位置推定値θe_e1を算出する。また、回転速度推定値ωr_e1は、磁極位置推定値θe_e1の微分値(単位時間当たりの変化量)をロータの極対数で除算することにより、あるいは、磁極位置推定値θe_e1を算出する過程で算出される電気角速度をロータの極対数で除算することにより算出される。
そして、本実施形態では、前記偏差演算部11は、制御装置30に外部から与えられる速度指令値ωr_cと、磁極位置・速度推定部31により算出された回転速度推定値ωr_e1との偏差を速度偏差Δωrとして算出して、速度制御部12に入力する。
また、本実施形態では、磁極位置異常検知部22には、センサレス制御処理の実行中に、前記磁極位置・速度推定部31で算出された磁極位置推定値θe_e1が逐次入力される。そして、磁極位置異常検知部22は、例えば、入力される磁極位置推定値θe_e1の時間的変化率(θe_e1の変化速度)が異常な変化を示した場合に、磁極位置推定値θe_e1の異常が発生したことを検知する。
なお、磁極位置推定値θe_e1の代わりに(あるいは、θe_e1に加えて)、磁極位置異常検知部22に、前記磁極位置・速度推定部31で算出された電気角速度(あるいは回転速度推定値ωr_e1)を入力するようにしてもよい。
また、本実施形態では、γ軸電流指令選択切替部13(スイッチ13)は、センサレス制御処理の実行時には、電圧指令値決定部15に入力する実使用γ軸電流指令値iγ_cとして、第1γ軸電流指令値iγ_c1を選択し、起動前制御処理およびフェイル制御処理の実行時には、“0”である第2γ軸電流指令値を選択する。同様に、δ軸電流指令選択切替部14(スイッチ14)は、センサレス制御処理の実行時には、電圧指令値決定部15に入力する実使用δ軸電流指令値iδ_cとして、第1δ軸電流指令値iδ_c1を選択し、起動前制御処理およびフェイル制御処理の実行時には、実使用δ軸電流指令値iδ_cとして、“0”である第2δ軸電流指令値を選択する。
さらに、本実施形態では、座標変換用磁極位置選択切替部21(スイッチ21)は、センサレス制御処理の実行時には、座標変換用磁極位置θaとして、前記磁極位置・速度推定部31で算出された磁極位置推定値θe_e1を選択し、起動前制御処理およびフェイル制御処理の実行時には、前記積分器23により算出された磁極位置簡易推定値θe_eを選択する。
以降の説明では、第1実施形態の場合と同様に、前記γ軸電流指令選択切替部13(スイッチ13)が、iγ_cとして第1γ軸電流指令値iγ_c1を選択する場合における該スイッチ13の動作位置をセンサレス制御用位置、iγ_cとして第2γ軸電流指令値(=0)を選択する場合におけるスイッチ13の動作位置を起動前/フェイル制御用位置という。同様に、前記δ軸電流指令選択切替部14(スイッチ14)が、iδ_cとして第1γ軸電流指令値iδ_c1を選択する場合における該スイッチ14の動作位置をセンサレス制御用位置、iδ_cとして第2δ軸電流指令値(=0)を選択する場合における該スイッチ14の動作位置を起動前/フェイル制御用位置という。さらに、前記座標変換用磁極位置選択切替部21(スイッチ21)が、θaとして磁極位置推定値θe_e1を選択する場合における該スイッチ21の動作位置をセンサレス制御用位置、θaとして磁極位置簡易推定値θe_eを選択する場合における該スイッチ21の動作位置を起動前/フェイル制御用位置という。
以上説明した以外の制御装置30の機能的構成およびその各部の機能は、前記第1実施形態の制御装置2と同じである。
補足すると、本実施形態では、前記PDU3が本発明における電圧印加手段に相当し、電流センサ4,5が本発明における電流検出手段に相当し、磁極位置・速度推定部31が本発明における磁極位置把握手段に相当する。また、前記電圧指令値決定部15が本発明における電圧指令値決定手段に相当し、前記積分器24が本発明における積分手段に相当し、簡易速度推定部23が本発明における速度推定手段に相当する。また、前記γ軸電流指令選択切替部13(スイッチ13)、δ軸電流指令選択切替部14(スイッチ14)、簡易速度推定部23および回転速度判断部25によって、本発明における監視手段が実現される。この場合、前記実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cをいずれも“0”に保持した状態で、電圧指令値決定部15で決定されるγ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧指令値vδ_cとの組が、本発明における監視用電圧指令値に相当する。さらに、前記磁極位置異常検知部22が本発明における磁極位置異常検知手段に相当し、エラー処理部26が本発明におけるエラー処理実行手段に相当する。
次に、制御装置30の全体的な制御処理を図5を参照して説明する。図5は、その全体的な制御処理を示すフローチャートである。
制御装置30は、その動作用電源が投入される等によって、電動機1の運転開始の要求が発生すると、まず、前記スイッチ13,14,21をいずれも起動前/フェイル制御用位置に動作させた状態で、起動前制御処理を開始する(STEP11)。
この起動前制御処理では、前記スイッチ13,14,21がそれぞれ起動前/フェイル制御用位置に動作した状態で、前記電圧指令値決定部15の前記した処理が、所定の演算処理周期で逐次実行される。これにより、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組が逐次決定される。そして、この相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの電圧がPDU3から電動機1の各相の電機子巻線に印加される。さらに、起動前制御処理では、上記のように相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを決定するのと並行して、前記簡易速度推定部23、積分器24、および回転速度判断部24の処理が逐次実行される。
この起動前制御処理では、前記スイッチ13,14の動作位置が起動前/フェイル制御用位置であるので、前記実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cは、それぞれ、定常的に“0”に保持される。このため、前記電圧指令値決定部15では、前記第1実施形態におけるフェイルモード制御処理の場合と同様に、γ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cの組、ひいては、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組は、電動機1の各相の電機子巻線に流れる電流が定常的に“0”に保持されるように決定されることとなる。これにより、電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”になるように、PDU3から各相の電機子巻線への印加電圧が制御される。
そして、このように電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”になるように制御しながら、前記簡易速度推定部23が、前記γ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cから前記式(4a)又は(4b)により、電気角速度簡易推定値ωe_eを所定の演算処理周期で逐次算出する。さらに、積分器24により、電気角速度簡易推定値ωe_eが逐次積分され、前記磁極位置簡易推定値θe_eが逐次算出される。このように積分器24により算出される磁極位置簡易推定値θe_eは、座標変換用磁極位置選択切替部21(スイッチ21)を介して前記uvw/γδ座標変換部15a及びγδ/uvw座標変換部15fに前記座標変換用磁極位置θaとして与えらる。なお、本実施形態では、起動前制御処理における積分器24の積分処理では、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値としてあらかじめ定められた固定値(例えば“0”)が使用される。
このように起動前制御処理において、簡易速度推定部23により算出される電気角速度簡易推定値ωe_eは、回転速度判断部24で監視され、該電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”であるか否かが判断される(STEP12)。ここで、起動前制御処理の実行前は、制御システムは、その全体の動作が停止している。そして、この状態では、電動機1のロータは、負荷側から与えられる外力によって、回転している場合がある。例えば、電動機1が、ファン駆動用の電動機である場合には、風などの影響で、電動機1のロータが回転している場合がある。このように、制御システムの全体の動作が停止している場合であっても、電動機1のロータが負荷状態の影響などで、回転している場合がある。そして、ロータがこのように回転している状態では、ωe_e≠0であるので、STEP12の判断結果は否定的となる。そして、この状態では、STEP12の判断処理が継続的に行われる。
電動機1のロータが当初から回転しておらず、あるいは、回転が停止すると、STEP12の判断結果が肯定的になる。この時、制御装置30は、STEP13で、スイッチ13,14,21の動作位置を起動前/フェイル制御用位置からセンサレス制御用位置に切替えて、前記センサレス制御処理による電動機1の運転を開始する。さらに、制御装置30は、センサレス制御処理を実行しながら、磁極位置異常検知部22により磁極位置推定値θe_e1の異常の発生の有無を監視する(STEP14)。
この場合、センサレス制御処理では、前記スイッチ13,14,21がセンサレス制御用位置に動作した状態で、前記偏差算出部11、速度制御部12、電圧指令値決定部15、及び磁極位置・速度推定部31の前記した処理が、所定の演算処理周期で逐次実行される。これにより、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組が逐次決定される。そして、この相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの電圧が、前記した如くPDU3から電動機1の各相の電機子巻線に印加され、電動機1の各相の電機子巻線の通電が制御される。
このセンサレス制御処理では、前記スイッチ13,14の動作位置がセンサレス制御用位置であるので、電圧指令値決定部15に入力される実使用γ軸電流指令値iγ_c及び実使用δ軸電流指令値iδ_cは、それぞれ、前記速度制御部12が決定する第1γ軸電流指令値iγ_c1、第1δ軸電流指令値iδ_c1である。このため、前記第1実施形態における通常モード制御処理の場合と同様に、電圧指令値決定部15のγ軸電流制御部15dおよびδ軸電流制御部15eがそれぞれ決定するγ軸電圧指令値vγ_cとδ軸電圧指令値vδ_cとの組、ひいては、前記相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cの組は、γ軸電流検出値iγおよびδ軸電流検出値iδを、それぞれ、第1γ軸電流指令値iγ_c1、第1δ軸電流指令値iδ_c1に収束させるように、決定される。従って、電動機1の各相の電機子巻線の通電は、回転速度推定値ωr_e1が速度指令値ωr_cになるようにフィードバック制御されることとなる。
なお、センサレス制御処理では、uvw/γδ座標変換部15及びγδ/uvw座標変換部位20の座標変換処理では、磁極位置・速度推定部31で算出された磁極位置推定値θe_e1が、座標変換用磁極位置θaとして使用される。
このように、制御装置30がセンサレス制御処理を実行している時に、磁極位置・速度推定部31の演算誤差等に起因して磁極位置推定値θeの異常が発生すると、それが磁極位置異常検知部22で検知される(STEP14の判断結果がYESになる)。この時、STEP15において、前記スイッチ13,14,21の動作位置が、それぞれセンサレス制御用位置から起動前/フェイル制御用位置に切り替わり、フェイル制御処理が開始される。
このフェイル制御処理は、前記第1実施形態のフェイルモード制御処理と同様に実行される。すなわち、前記スイッチ13,14,21を起動前/フェイル制御用位置に動作させた状態で、前記第1実施形態のフェイルモード制御処理に関して説明した如く、前記電圧指令値決定部15、簡易速度推定部23及び積分器24の処理が所定の演算処理周期で逐次実行される。従って、電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”になるように、PDU3から各相の電機子巻線への印加電圧が制御されつつ、電気角速度簡易推定値ωe_eと、これを積分してなる磁極位置簡易推定値θe_eとがそれぞれ簡易速度推定部23、積分器24で逐次算出される。なお、本実施形態におけるフェイル制御処理での積分器24の積分処理では、磁極位置異常検知部22により、磁極位置推定値θe_e1の異常の発生が検知される直前(フェール制御処理の開始直前)における磁極位置推定値θe_e1が、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値として設定される。この点を除いて、本実施形態のフェイル制御処理での電圧指令値決定部15、簡易速度推定部23及び積分器24の処理は、第1実施形態のフェイルモード制御処理と同じである。
上記のようにフェイル制御処理を実行しながら、簡易速度推定部23により算出される電気角速度簡易推定値ωe_eが回転速度判断部24で監視され、該電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”になったか否かが判断される(STEP16)。この時、電動機1のロータが回転している状態では、ωe_e≠0であるので、STEP16の判断結果は否定的となる。そして、この状態では、STEP16の判断処理が継続的に行われる。
その後、電動機1のロータの回転が停止すると、STEP16の判断結果が肯定的になる。この時、前記エラー処理部25が所定のエラー処理を実行する(STEP17)。このエラー処理では、第1実施形態と同じである。すなわち、エラー処理部25は、直流電源からPDU3への電源電力の供給を遮断し、さらに、電動機1の制御システムのリセット処理などを実行する。
以上が、制御装置30の全体的な制御処理である。
かかる本実施形態では、センサレス制御処理による電動機1の運転開始前に、制御装置30は、前記起動前制御処理によって、まず、電動機1の各相の電機子巻線の電流が“0”に保持されるように、PDU3から該電機子巻線への印加電圧を規定するγ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_cの組、ひいては、相電圧指令値vu_c,vv_c,vw_cを決定する。そして、このようにvγ_cおよびvδ_cを決定しながら、制御装置30は、前記簡易速度推定部23および積分器24の演算処理を実行する。
このとき、電動機1の各相の電機子巻線の電流を“0”に保持するように、電動機1の電機子巻線の印加電圧を制御しながら、簡易速度推定部23の演算処理を行うので、第1実施形態のフェイルモード制御処理の場合と同様に、電動機1のロータの実際の電気角速度の推定値として十分な信頼性を有する前記電気角速度簡易推定値ωe_eを算出することができる。従って、該電気角速度簡易推定値ωe_eによって、電動機1の運転開始前のロータの回転運動状態を把握することができる。
また、この場合、起動前制御処理において積分器24により算出される磁極位置簡易推定値θe_eは、ロータの回転周期に同期して変化する。このため、第1実施形態のフェイルモード制御処理の場合と同様に、PDU3から電動機1の各相の電機子巻線に印加される電圧は、比較的速やかに、該電機子巻線に発生する誘起電圧に同期するようになる。その結果、起動前制御処理において、電動機1の各相の電機子巻線の電流を、その頻繁な変動を抑制しつつ、速やかに“0”に収束させることができる。このため、電動機1の各相の電機子巻線の電流を“0”に収束させることを円滑且つ迅速に行うことができる。
そして、このように、電動機1の各相の電機子巻線の電流を速やかに“0”に収束させることができることから、電動機1の運転開始前にロータが回転していても、信頼性の高い前記電気角速度簡易推定値ωe_eを前記簡易速度推定部23により算出し得る状態を速やかに実現することができる。すなわち、電動機1の運転開始前に、速やかに、電動機1のロータの電気角速度を高い信頼性で推定することができる。
そして、制御装置30は、電気角速度簡易推定値ωe_eにより、電動機1のロータの回転が停止していることを確認した後に、センサレス制御処理による電動機1の運転制御を開始する。このため、磁極位置・速度推定部31によって算出される磁極位置推定値θe_e1および回転速度推定値ωr_e1の信頼性を高めることができる。ひいては、電動機1の所望の運転を安定して適切に行うことができる。
さらに、本実施形態では、センサレス制御処理による電動機1の運転中に、磁極位置異常検知部22により磁極位置推定値θe_e1の異常の発生が検知された場合に、制御装置30は、前記第1実施形態のフェイルモード制御処理と同様のフェイル制御処理を実行する。このため、第1実施形態と同様に、磁極位置推定値θe_e1の異常の発生後、速やかに、電動機1のロータの回転速度を表す指標として高い信頼性を有する電気角速度簡易推定値ωe_eを算出しながら、該ロータの回転が停止した状態(電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”になった状態)を認識することができる。そして、該電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”になった時に、前記エラー処理部25によりエラー処理を実行して、PDU3への電源電力の供給を遮断するので、電動機1で発生する誘起電圧によって、PDU3の駆動回路などが損傷を受けたりするのを回避することができる。
なお、本実施形態では、磁極位置推定値θe_e1の異常の発生が検知される直前(フェール制御処理の開始直前)における磁極位置推定値θe_e1を、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値として設定するようにしたが、該磁極位置簡易推定値θe_eの初期値を、“0”などの固定値に設定してもよい。ただし、電動機1の各相の電機子巻線の電流をできるだけ素早く“0”に収束させる上では、磁極位置簡易推定値θe_eの初期値を、磁極位置推定値θe_e1の異常の発生が検知される直前における磁極位置推定値θe_e1設定することが有利である。
また、以上説明した各実施形態では、電動機1のロータの回転速度を速度指令値ωr_cに制御するシステムを例に採って説明したが、電動機1の出力トルクを目標トルク(トルク指令値)に制御するシステムにしてもよい。
また、前記各実施形態では、電動機1の電機子巻線の電流を“0”に制御した状態での電圧指令値(γ軸電圧指令値vγ_cおよびδ軸電圧指令値vδ_c)から、前記式(4a)又は(4b)により算出した電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”であるか否かによって、ロータの回転が停止したか否かを判断したが、電圧指令値の大きさ(前記式(4c)により算出される|vγδ|)が“0”であるか否かによって、ロータの回転が停止したか否かを判断するようにしてもよい。
また、前記各実施形態では、電気角速度簡易推定値ωe_eが“0”になった場合に、ロータの回転が停止したと判断するようにしたが、電気角速度簡易推定値ωe_eが十分に“0”に近い値になった場合(ωe_eの絶対値が微小な所定値以下になった場合)、あるいは、γδ座標系での電圧指令値の大きさ|vγδ|)が十分に“0”に近い値になった場合(|vγδ|が微小な所定値以下になった場合)に、ロータの回転が停止したものと判断するようにしてもよい。
1…同期電動機、3…パワー・ドライブ・ユニット(電圧印加手段)、4,5…電流センサ(電流検出手段)、6…磁極位置センサ(磁極位置把握手段)、13…γ軸電流指令選択切替部(監視手段)、14…δ軸電流指令選択切替部(監視手段)、15…電圧指令値決定部(電圧指令値決定手段)、22…磁極位置異常検知部(磁極位置異常検知手段)、23…簡易速度推定部(速度推定手段、監視手段)、24…積分器(積分手段)、25…回転速度判断部(監視手段)、26…エラー処理部(エラー処理実行手段)、31…磁極位置・速度推定部(磁極位置把握手段)。
Claims (5)
- ロータに永久磁石を備えた同期電動機におけるロータの回転運動状態を監視する装置であって、
前記同期電動機の電機子巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電機子巻線の電流の目標値である電流指令値と前記電流検出手段の出力により示される前記電機子巻線の電流検出値とが入力され、該電流指令値と電流検出値との偏差を“0”に収束させるように前記電機子巻線に印加する電圧の目標値である電圧指令値を決定する電圧指令値決定手段と、
前記決定された電圧指令値に応じて前記電機子巻線に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況としてあらかじめ定められた状況下で、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に、その保持状態で該電圧指令値決定手段が決定する電圧指令値である監視用電圧指令値に基づき、前記ロータの回転運動状態を監視する監視手段とを備えたことを特徴とする同期電動機のロータ回転監視装置。 - 請求項1記載の同期電動機のロータ回転監視装置において、前記監視用電圧指令値から前記ロータの電気角速度を推定する速度推定手段と、該速度推定手段で推定された電気角速度の積分値を前記ロータの磁極位置推定値として求める積分手段とを備え、前記電圧指令値決定手段は、前記監視手段により前記電流指令値が“0”に保持された状態で、前記積分手段により求められた前記磁極位置推定値を使用するベクトル制御の演算処理を実行することにより、前記電圧指令値を決定することを特徴とする同期電動機のロータ回転監視装置。
- 請求項1記載のロータ回転監視装置と、前記ロータの磁極位置を検出又は推定する磁極位置把握手段と、該磁極位置把握手段に検出又は推定された磁極位置の異常の有無を検知する磁極位置異常検知手段とを備え、該磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知されていない状態での前記同期電動機の運転時に、前記磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置を使用するベクトル制御の演算処理を前記電圧指令値決定手段に実行させることにより、前記電圧指令値を決定するようにした同期電動機の制御システムであって、
前記監視手段は、前記磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知された場合に、前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況下であるとして、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に前記監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているか否かを判断する手段であり、
前記磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知された後、前記監視手段により前記ロータの回転が停止していると判断された場合に、前記電圧印加手段への電源電力の供給を遮断する処理を含む所定のエラー処理を実行するエラー処理実行手段を備えることを特徴とする同期電動機の制御システム。 - 請求項3記載の同期電動機の制御システムにおいて、
前記監視用電圧指令値から前記ロータの電気角速度を推定する速度推定手段と、該速度推定手段で推定された電気角速度の積分値を前記ロータの磁極位置推定値として求める積分手段とを備え、
前記電圧指令値決定手段は、前記監視手段により前記電流指令値が“0”に保持された状態で、前記積分手段により求められた前記磁極位置推定値を使用するベクトル制御の演算処理を実行することにより、前記電圧指令値を決定する手段であり、
前記積分手段は、前記磁極位置異常検知手段により前記異常の発生が検知される直前に、前記磁極位置把握手段により検出又は推定された磁極位置を前記積分値の初期値として前記磁極位置推定値を求める手段であることを特徴とする同期電動機の制御システム。 - 請求項1又は2記載のロータ回転監視装置を備え、前記同期電動機の運転時に、前記ロータの磁極位置の推定処理を含むセンサレス制御の演算処理を前記電圧指令値決定手段に実行させることにより、前記電圧指令値を決定するようにした同期電動機の制御システムにおいて、
前記監視手段は、前記同期電動機の運転開始の要求が発生した場合に、前記ロータの回転運動状態を監視すべき状況下であるとして、前記電圧指令値決定手段に入力する電流指令値を“0”に保持すると共に前記監視用電圧指令値に基づいて、前記ロータの回転が停止しているか否かを判断する手段であり、
該監視手段により前記ロータの回転が停止していると判断された場合に、前記同期電動機の運転を開始することを特徴とする同期電動機の制御システム。
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