JP6430753B2 - 油脂組成物、該油脂組成物が配合された製菓製パン類 - Google Patents
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Description
従来からパンやケーキをソフトで口どけの良い食感にするために、生地中にアミラーゼを添加することが行われてきたが、アミラーゼの使用は、“ソフトになりすぎて、くちゃついた好ましくない食感になる”、“保形性が弱くなり、腰折れが起きる(ケービング)”等の問題があった。
(2)前記油脂組成物は、乳化油脂組成物である(1)に記載の油脂組成物。
(3)(1)又は(2)に記載の油脂組成物、穀粉、及び水を含有することを特徴とする製菓製パン用生地であって、穀粉100gに対する酵素活性が、αアミラーゼで1.5〜15U、マルトース生成αアミラーゼで10〜100U、穀粉100gに対するアルギン酸エステルの配合量が0.01〜1gである製菓製パン用生地。
(4)(1)又は(2)に記載の油脂組成物が配合された製菓製パン類。
(5)(3)に記載の製菓製パン用生地を焼成してなる製菓製パン類。
本発明の油脂組成物は、αアミラーゼ、マルトース生成αアミラーゼ、エステル化度が23%以上75%未満であるアルギン酸エステル、及び油脂を少なくとも含む。以下、各成分について説明する。
本発明に使用するαアミラーゼは、澱粉に作用し、多糖およびオリゴ糖を生成する能力を有する酵素をいう。これら酵素の由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌などから得られた市販の酵素を用いることができる。加熱調理後に酵素が完全に失活するよう、至適温度が60〜80℃の中温域活性型αアミラーゼや60℃未満の常温域活性のαアミラーゼを使用することがのぞましい。
本発明に使用するαアミラーゼとしては、酵素製剤を使用することもできる。αアミラーゼ酵素製剤1g中のαアミラーゼの酵素活性(U)は、好ましくは200〜3000U、より好ましくは500〜1500U、さらに好ましくは700〜900Uである。市販のαアミラーゼ酵素製剤としては、例えば、ナガセケムテックスジャパン(株)のスピターゼCP3及びスピターゼL、ノボザイムジャパン(株)のFungamyl800L、天野エンザイム(株)のクライスターゼL1等を使用することができる。
本発明に使用するマルトース生成αアミラーゼは、澱粉に作用し、主としてマルトースを生成する能力を有する酵素をいう。これら酵素の由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌、遺伝子組み換えなどから得られた市販の酵素を用いることができる。
本発明に使用するマルトース生成αアミラーゼとしては、酵素製剤を使用することもできる。マルトース生成αアミラーゼ酵素製剤1g中のマルトース生成αアミラーゼの酵素活性(U)は、好ましくは2000〜12000U、より好ましくは3000〜7500U、さらに好ましくは3500〜5000Uである。市販のマルトース生成αアミラーゼ酵素製剤としては、例えば、ノボザイムジャパン(株)の商品名:NovamylL等を使用することができる。
本発明に使用するアルギン酸エステルは、アルギン酸を構成するカルボキシル基の少なくとも一部がエステルに変換されている構造を有する化合物である。アルギン酸とは、2種類のウロン酸(マンヌロン酸及びグルロン酸)がランダムに直鎖重合した構造を有する多糖類であり、コンブ、ワカメ等の天然の褐藻類に豊富に含まれる。
本発明に使用する油脂としては、特に限定されるものではないが、通常食用に供されるものを使用できる。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、ハイエルシン酸菜種油、キャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油等の各種動植物性油脂が挙げられる。また、上記の各種動植物性油脂から選択された1種又は2種以上の動植物性油脂を必要に応じて加工(水素添加、エステル交換、分別等)をして得られる各種加工油脂を本発明における油脂として使用してもよい。上記の任意の油脂は、単独で使用してもよく、2種以上の油脂を適宜配合して混合油として使用してもよい。本発明における油脂は、乳化油脂であってもよい。
本発明の油脂組成物の製造方法は、特に制限されず、公知の油脂組成物の製造条件及び製造方法に基づいて製造できるが、アミラーゼを失活させない(酵素活性を下げない)ために、アミラーゼを添加する工程以降は、55℃以下の品温で製造することが好ましい。
例えば、公知の方法に従い、本発明におけるαアミラーゼ、マルトース生成αアミラーゼ、アルギン酸エステル、及び油脂を混合し、適宜撹拌することで本発明の油脂組成物を製造できる。
本発明の製菓製パン用生地は、本発明の油脂組成物、穀粉、及び水を含有し、必要に応じて、食塩、糖類、乳製品、イースト、卵類、添加物等を加えて捏ね上げた生地である。本発明の製菓製パン製品用生地は、具体的には、パン生地、イースト菓子生地、ケーキ生地等が挙げられる。また、本発明において、穀粉とは、穀物を挽いて粉状にしたものであり、具体的には、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられるが、好ましくは小麦粉を使用する。
本発明において「製菓製パン類」とは、製菓であれば本発明の油脂組成物、穀粉(典型的には小麦粉)、卵、糖類、乳製品を主原料として生地形成を行い、これを成形及び焼成して製造される食品(菓子類)であり、製パンであれば本発明の油脂組成物、穀粉(典型的には小麦粉等)、イースト、水、食塩を主原料とし、必要に応じて、糖類、乳製品、卵類等を加えて生地形成を行い、これを成形及び焼成して製造される食品(パン類)である。本発明の油脂組成物が配合された製菓製パン類は、生地の成分として本発明の油脂組成物を加える点以外は、公知の製造方法に基づいて製造できる。なお、本発明において「配合」とは、製菓製パン類に、該食品の原料として本発明の油脂組成物が含まれることを意味し、製菓製パン類の製造時に、油脂組成物中の成分の一部(水分等)が失われたとしても、得られた製菓製パン類は「本発明の油脂組成物が配合された製菓製パン類」と称される。
表1の配合に基づき、油脂(パーム油、大豆白絞油及び大豆硬化油)及び乳化剤(飽和脂肪酸モノグリセリド及びレシチン)を融解混合して油相を調製した。次いで、水にアミラーゼ(αアミラーゼ及びマルトース生成αアミラーゼ)を分散させた後、食塩を溶解して水相を調製した。得られた油相と水相とを混合し、予備乳化を行い、予備乳化物を得た。得られた予備乳化物を、常法に従い、コンビネーターを使用して急冷可塑化し、αアミラーゼ及びマルトース生成αアミラーゼを含む原料油脂Aを得た。なお、前記調製において、αアミラーゼ及びマルトース生成αアミラーゼを添加する工程以降は、55℃以下の品温で原料油脂Aを調製した。
パーム油:日清オイリオグループ(株)製造品
大豆白絞油:日清オイリオグループ(株)製、商品名「日清大豆白絞油(S)」
大豆硬化油:日清オイリオグループ(株)製、商品名「大豆硬化油34」
飽和脂肪酸モノグリセリド:理研ビタミン(株)製、商品名「エマルジーP−100」
レシチン:日清オイリオグループ(株)製、商品名「レシチンDX」
αアミラーゼ:ノボザイムズジャパン(株)製、商品名「Fungamyl800L」(酵素活性:880U/酵素製剤g)
マルトース生成αアミラーゼ:ノボザイムズジャパン(株)製、商品名「NovamylL」(酵素活性:4108U/酵素製剤g)
褐藻類より精製したアルギン酸原料を、公知方法に従い、酸によって加水分解し、アルギン酸を得た。得られたアルギン酸を、公知方法に従い、オートクレーブ中で50〜70℃で、2〜12時間、プロピレンオキサイドとエステル化反応させ、エステル化度の異なる2種類のアルギン酸プロピレングリコールエステルを得た。
食品添加物公定書第8版の「アルギン酸プロピレングリコールエステル 純度試験(1)」に準拠して、各アルギン酸プロピレングリコールエステルのエステル化度を測定した。
粘度計(東京計器(株)製、型番:TVB−10M VISCOMETER(MODEL:BM))のローターNo.1(回転数30rpm)を用いて、各アルギン酸プロピレングリコールエステルの1質量%水溶液について、20℃における粘度を測定した。
表2中のアルギン酸プロピレングリコールエステルのうちのいずれかを使用し、表3の配合に基づき、油脂(菜種油及びパーム油)及び乳化剤(レシチン及び飽和脂肪酸モノグリセリド)を融解混合し、アルギン酸プロピレングリコールエステルを分散させて油相を調製した。次いで、食塩を水に溶かして水相を調製した。得られた油相と水相とを混合し、予備乳化を行い、予備乳化物を得た。得られた予備乳化物を、常法に従い、コンビネーターを使用して急冷可塑化し、1質量%アルギン酸エステルを含む原料油脂Bを得た。
なお、エステル化度49.0%のアルギン酸エステルを含む原料油脂Bを「B−1」、エステル化度87.5%のアルギン酸エステルを含む原料油脂Bを「B−2」とした。
菜種油:日清オイリオグループ(株)製、商品名「日清キャノーラ油」
上記調製例1及び3で調製した各種の原料油脂と、市販のマーガリン(商品名:日清ロイヤルシャープ180、日清オイリオグループ(株)製、油脂含有量83質量%)を表4の配合に基づき、混捏処理して、アミラーゼ(αアミラーゼ及びマルトース生成αアミラーゼ)とアルギン酸エステルを含む油脂組成物(実施例1〜3、比較例1〜3)を得た。なお、得られた油脂組成物は、全て乳化油脂組成物であり、油脂含量は74〜83質量%であった。
上記調製例4で調製した、油脂組成物(実施例1〜3、比較例1〜3)を使用し、表5の生地配合及び表6の工程に基づき、プルマン型食パン(実施例4〜6、比較例4〜6)を製造した。
強力粉:日清製粉(株)製、商品名「カメリヤ」
イースト:オリエンタル酵母工業(株)製、商品名「レギュラーイースト」
生地改良剤:オリエンタル酵母工業(株)製、商品名「Cオリエンタルフード」
脱脂粉乳:森永乳業(株)製、商品名「脱脂粉乳」
油脂組成物:上記調製例4で調製した油脂組成物
下記の方法で、上記で製造した食パンのそれぞれについて、ソフト感、口どけ感、及びケービング抑制を評価した。
上記で製造したプルマン型食パンのそれぞれについて、焼成から1日後に官能評価を行い、各食パンのソフト感を、下記の基準に基づいて評価した。その結果を表7に示す。
◎:極めてソフトである
○:ソフトである
△:やや硬い、または、ややくちゃつく
×:硬い、または、くちゃつく
ソフト感の評価と同様に、各食パンの口どけ感を、下記の基準に基づいて評価した。その結果を表7に示す。
◎:口どけ良く非常に良好であった。
○:口どけ良く良好であった。
△:やや口どけが悪かった。
×:口どけが悪かった。
上記で製造したプルマン型食パンについて、焼成から1日後に2cm厚でスライスし、均等な間隔で5枚サンプリングした。前記の作業をプルマン型食パン2本分で行い、得られた合計10枚の食パンを用いて、それぞれのケービング面積を算出した。
1.食パンの断面をオーバーヘッド・スキャナーでスキャンし、スキャンした画像の食パン断面におけるクラスト部分の一辺の両端の頂点を直線で結び、その際に凹んでいる部分(ケービング部分)の面積を、画像解析ソフト(Image J)を用いて算出した。
2.ケービング部分は、通常、天面と左右の側面の3ケ所に生じているので、それぞれについて上記作業を実施して、ケービング面積を算出し、合算することで全体のケービング面積を得た。得られた各10枚の食パンのケービング面積について平均値を求めた。
3.それぞれの食パンのケービング面積の平均値を“P”とし、アルギン酸エステルを含有しない食パン(比較例6)のケービング面積の平均値を“Q”として、以下の計算式でケービング抑制率(%)を算出した。
ケービング抑制率(%)=(Q−P)/Q×100
◎:ケービング抑制率が15%以上
○:ケービング抑制率が10%以上15%未満
△:ケービング抑制率が5%以上10%未満
×:ケービング抑制率が0%以上5%未満
上記の3種類の評価結果(ソフト感、口どけ感、及び、ケービング抑制)に基づき、各食パンについて総合評価を行った。
◎:全ての評価結果が○以上である
○:全ての評価結果が×を含まず、且つ△が1つある
×:評価結果のいずれかが×である、又は、△が2つ以上ある
上記製造例1と同様にして、上記調製例4で調製した比較例3の油脂組成物を使用したパンを製造した(比較例7)。ただし、表6中の「本捏工程」の「ミキシング」工程において、上記で調製したエステル化度49.0%のアルギン酸プロピレングリコールエステルを、生地中の穀粉(強力粉)100gに対して0.04gとなるように添加した。
Claims (5)
- αアミラーゼ、マルトース生成αアミラーゼ、及びエステル化度が23%〜65%であるアルギン酸エステルを含む油脂組成物。
- 前記油脂組成物は、乳化油脂組成物である請求項1に記載の油脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の油脂組成物、穀粉、及び水を含有することを特徴とする製菓製パン用生地であって、穀粉100gに対する酵素活性が、αアミラーゼで1.5〜15U、マルトース生成αアミラーゼで10〜100U、穀粉100gに対するアルギン酸エステルの配合量が0.01〜1gである製菓製パン用生地。
- 請求項1又は2に記載の油脂組成物が配合された製菓製パン類。
- 請求項3に記載の製菓製パン用生地を焼成してなる製菓製パン類。
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