PC鋼材のシース内への挿通にはクレーンや専用の押し込み機械を必要とするが、上記のようにPC鋼材の梁部材内への挿通の時期が柱部材間への梁部材の架設後になる場合、PC鋼材の挿通距離が梁部材の全長分になるため、現場での挿通に時間を要し、各梁部材へのPC鋼材の挿通作業が長期化せざるを得ない。
柱部材間への梁部材の架設後にシース内へPC鋼材を挿通させ、その端部を柱部材に定着させる場合には、柱部材にPC鋼材の緊張に伴う不静定力を発生させる可能性がある。この方法ではまた、梁部材の架設毎にPC鋼材をシースに挿通させ、柱部材に定着させる作業手順になるため、柱部材の設置と梁部材の架設を各層単位で行わざるを得ず、柱・梁の架構を1層単位で上層に向けて構築していく積層工法に限られ、架構構築の自由度が制限される。
本発明は上記背景より、PC鋼材の梁部材への挿通時間を短縮すると共に、柱部材への不静定力の発生を回避できるプレキャストコンクリート製梁部材とそれへのプレストレスの導入方法を提案するものである。
請求項1に記載の発明のプレキャストコンクリート製梁部材は、隣接する柱部材間に架設され、内部に、周面の付着が切れた緊張材が配置されたプレキャストコンクリート製の梁部材であり、
前記緊張材の一方側の端部が前記梁部材の軸方向の一方側の端部寄りの内部に定着され、前記緊張材の他方側の端部が前記梁部材の軸方向の他方側の端面から突出しており、前記梁部材中の前記緊張材との干渉がない位置に、他の梁部材内に配置された緊張材が挿通可能なシースが埋設され、このシースは前記緊張材が定着された側の端面から前記梁部材の軸方向の中間部までの区間に配置され、この中間部側のシースの端部は前記梁部材の表面に連通していることを構成要件とする。
緊張材3の一方側の端部が梁部材2の軸方向の一方側の端部寄りの内部に予め定着され、緊張材3の他方側の端部が梁部材2の軸方向の他方側の端面から突出することで、図1、図4等に示すように緊張材3の梁部材2端面から突出する区間に、その側に位置する柱部材1を貫通し、その柱部材1を挟んで対向する梁部材2内のシース4の端部にまで到達する長さを持たせれば(請求項2)、緊張材3の他方側の端部をその側に位置する柱部材1を挟んで対向する(先行して架設されている)梁部材2にまで連続して挿通させ、その位置に定着させることが可能になる。「梁部材2の端部寄りの内部」はコンクリートの内部を言う。ここでの「柱部材1」は、後述のように「緊張材3の端部が定着された側」に柱部材1に連続する接合部21が一体化する場合(請求項3)には、接合部21になる。すなわち、請求項2で言う「柱部材1」には請求項3の「接合部21」が含まれる。
請求項2における「梁部材2内のシース4の端部」は請求項1における「梁部材2の表面に連通」する「梁部材2の軸方向の中間部側の端部」を指す。緊張材3の梁部材2端面から突出する区間がその側に位置する柱部材1を挟んで対向する梁部材2内のシース4の端部にまで到達する長さを有すれば(請求項2)、緊張材3をシース4から突出した部分において緊張し、梁部材2に定着させることができる。
請求項1における「緊張材3が定着された側の端面」とは、シース4が埋設された梁部材2における緊張材3の端部が定着された側の端面である。この端面は後述のように梁部材2の「緊張材3の端部が定着された側」に図1等に示すように柱部材1に連続し、柱部材1の一部になる接合部21が一体化した場合(請求項3)には、この接合部21の、緊張材3の端部が定着された側の端面になる。この場合、梁部材2の接合部21内に緊張材3の端部が定着される。
緊張材3の他方側(先行する梁部材2側)の端部はその側の柱部材1(接合部21)を貫通し、その先に位置する(先行する)梁部材2のシース4を挿通する。請求項1におけるシース4内を挿通する「他の梁部材2内に配置された緊張材3」はシース4が埋設された(先行して架設された)梁部材2内に予め配置された緊張材3ではなく、その梁部材2の、緊張材3が定着された側に隣接する(後から架設される)梁部材2に予め配置された緊張材3を指す。
請求項1では緊張材3の他方側の端部がその側の梁部材2内のシース4を挿通し、その位置に定着させられることで、緊張材3の一方側の端部と他方側の端部の双方を柱部材1に定着させる必要がなくなり、緊張材3の少なくとも一方側の端部を柱部材1に定着させる場合に伴う柱部材1への不静定力の発生が回避される。緊張材3には主にPC鋼材が使用されるが、繊維強化プラスチック等、張力の導入が可能な材料も使用される。
緊張材3は予め配置される梁部材2内での区間と、その梁部材2から突出し、その側に隣接する梁部材2のシース4内を挿通した区間の全長に亘り、シース4を挿通した先の梁部材2の表面において緊張力を付与されるため、予め配置される梁部材2内での区間の緊張材3の周面は周囲のコンクリートとの付着が切れた状態に保たれる。この関係で、緊張材3がPC鋼材の場合、アンボンドPC鋼材、プレグラウトPC鋼材が使用され、その他の材料の場合もこれに準ずる。緊張材3がシース4を挿通した先で緊張されるとき、緊張材3の一方側の端部は梁部材2内に定着されているため、端部以外の区間が伸長する。
シース4は梁部材2の材軸に直交する断面上、梁部材2中に挿通した緊張材3との干渉がない位置に埋設され、緊張材3が予め定着された側寄りの梁部材2の端面から梁部材2の軸方向の中間部までの区間に配置される。梁部材2の全長の内、緊張材3の端部が予め定着された側寄りのシース4の端部は梁部材2の端面に連通し、その反対側の端部は梁部材2の軸方向の中間部において梁部材2のいずれかの表面に連通し、この表面にシース4を挿通した緊張材3の端部が定着される。「緊張材3の端部が予め定着された側寄りのシース4の端部」は図1等に示すように「緊張材3の端部が定着された側」に柱部材1に連続する接合部21が一体化した梁部材2の接合部21が配置される場合(請求項3)には、接合部21の端面になる。
シース4は図1のe−e線断面図である図3−(d)に示すように梁部材2の縦断面上、それが埋設される梁部材2中に予め配置される緊張材3との干渉がない位置に配置されることから、梁部材2の軸方向の中間部に連通する「梁部材2の表面」は予め配置される緊張材3との干渉がない位置であればよいため、梁部材2の上面、もしくは下面、または側面を指す。図2は梁部材2の上面が表面の場合、図10は梁部材2の側面が表面の場合の例を示す。
シース4内には基本的に、そのシース4が埋設された梁部材2の端面に連通するシース4の端部から、その梁部材2の端面が対向する柱部材1(接合部21)を挟んで反対側に(後から)架設される梁部材2の柱部材1側への移動に伴い、その梁部材2の端面から突出している緊張材3が挿入させられる。
シース4内に挿入させられる緊張材3が予め配置された梁部材2の柱部材1側の端面からは緊張材3が突出しているため、この梁部材2の端面から突出している緊張材3が梁部材2の柱部材1側への移動に伴い、柱部材1(接合部21)を貫通し、その柱部材1の先に(先行して)架設されている梁部材2のシース4内に挿入させられる(請求項2、請求項5)。シース4内を挿通した緊張材3は図2、図10に示すようにその梁部材2中でのシース4の端部である梁部材2の軸方向の中間部から梁部材2の表面に突出し、その梁部材2に定着される。
請求項2では予め緊張材3が配置された梁部材2の柱部材1側への移動によりその緊張材3の、先行して架設されている梁部材2のシース4内への挿通が完了するよう、緊張材3の、梁部材2の端面から突出する区間はその側に位置する柱部材1(接合部21)を貫通し、その柱部材1を挟んで対向する梁部材2にまで到達する長さを有するが、請求項1では緊張材は少なくとも梁部材2の柱部材1側の端面から突出していればよい。
請求項1では予め緊張材3が配置された梁部材2の柱部材1側への移動のみにより柱部材1を挟んで対向する梁部材2のシース4中に緊張材3を挿通させる必要は必ずしもなく、緊張材3の、柱部材1を貫通し、梁部材2にまで到達する分を梁部材2内に予め配置される緊張材3の本体とは分離させておくこともできる。その場合、緊張材3の分離分を例えば先行して架設されている梁部材2の軸方向中間部側からシース4内に挿入し、後から架設される梁部材2から突出している緊張材3の、分離分以外の本体部分に連結した後に、先行する梁部材2の中間部において緊張し、定着させることも可能である。
少なくとも請求項2では梁部材2の他方側の端面から突出した緊張材3は、その緊張材3が配置された梁部材2の、緊張材3が突出した側に面する柱部材1側への移動により、その柱部材1を挟んだ架設済みの梁部材2のシース4内に挿入させられる(請求項5)。このことから、梁部材2の軸方向の同一線上に架設される複数本の梁部材2、2は図12に示すように緊張材3が突出する側に位置する梁部材2から順次、柱部材1、1間に架設されることになる。この梁部材2の軸方向の移動によりその移動側の端面から突出している緊張材3をその側に位置する柱部材1、または隣接する梁部材2のシース4内に挿通させることが可能になるよう、前記のように緊張材3には周面における付着が切れた材料が使用される。
緊張材3が配置された梁部材2の柱部材1側への移動により、梁部材2の端面から突出している緊張材3が柱部材1を貫通し、その先の架設済みの梁部材2の端面からシース4内に緊張材3を挿入させられれば、緊張材3の先端部はシース4の内周面に誘導されることと、緊張材3自身の剛性により自ずからシース4内を挿通し得る。このため、基本的には梁部材2が柱部材1側へ移動させられることにより緊張材3の突出区間の全長がシース4内に挿通し得る。緊張材3の一方側の端部は柱部材1側へ移動させられた梁部材2の、移動側とは反対側の端部に予め定着されているため、緊張材3の他方側の、シース4から突出した側の端部が、そのシース4が埋設された梁部材2の表面において緊張され、定着されることで、緊張材3が配置された梁部材2の全長とシース4が埋設された梁部材2のシース4の区間にプレストレスが導入される。
緊張材3の、梁部材2の端面から突出する区間がその側の架設済みの梁部材2に到達する長さを有する場合(請求項2)も、そうでない場合も、緊張材3がシース4を挿通した側の梁部材2の表面において緊張される時点では、緊張材3は後から架設される梁部材2と架設済みの梁部材2に跨るため、緊張材3の緊張の結果、各梁部材2に軸方向にプレストレスが導入されると同時に、軸方向に隣接する梁部材2、2同士が柱部材1を挟んで互いに接合され、同時に梁部材2が柱部材1に接合されることになる。
緊張材3は1本の梁部材2の軸方向の一方側の端部から他方側の端部(端面)まで配置されながら、その他方側の端面から突出する一方、同じ梁部材2内には、緊張材3が定着される側の端部(端面)から軸方向の中間部までの区間にシース4が埋設される。結果として梁部材2の一方側の端部から中間部までの区間には、予め配置される緊張材3と後からシース4内に挿通させられる緊張材3の、2種類の緊張材3、2が重複して配置される形になる。
上記のように予め緊張材3が配置された梁部材2の柱部材1側への移動により、後からシース4内に挿通させられる緊張材3の長さはシース4の埋設区間である梁部材2の一方側の端部から中間部までの区間であるため、梁部材2の全長に挿通させられる必要がない。従って緊張材3の現場での挿通距離は短縮され、挿通時間も短縮される。
梁部材2は柱部材1、1間に架設されるため、梁部材2の軸方向の両端部は柱部材1、1に接合されるが、梁部材2の軸方向両端部の内、一方側の端部には緊張材3の一方側の端部が定着されることから(請求項1)、その側の端部に、図1等に示すように柱部材1の頭部に配置され、柱部材1に連続する接合部21を一体化させれば(請求項3)、梁部材2の一方の端部の容積を増すことができ、梁部材2の一方の端部内に緊張材3の定着のための十分な空間を確保することが可能になる。
この接合部21は柱部材1の頭部と脚部に相当し、柱部材1の一部となる部分であり、梁部材2の、接合部21を除く本体部22の幅より大きい幅を持ち得るため、接合部21内で緊張材3の密集状態を緩和させることを可能にする。接合部21はその下方に設置、もしくは構築された柱部材1の天端上に載置され、柱部材1に接合されるため、柱部材1とは分離していながらも、柱部材1に軸方向に連続する。このため、接合部21内には少なくとも柱主筋1aを拘束する拘束筋1bが配置されるが、拘束筋1b、1b間の間隙を利用することで、少なくとも1方向の緊張材3を拘束筋1bとの干渉を回避しながら、配置することが可能になる。以下、梁部材2に接合部21が一体化した場合、接合部21以外の部分を本体部22と言う。
接合部21内には、例えば図1のb−b線断面図である図3−(a)、図12に示すように上下の接合部21、21間に設置される柱部材1内に配筋された柱主筋1aが接合部21を貫通することで、柱主筋1aが配筋される。柱部材1内の柱主筋1aが接合部21を貫通して接合部21内に配筋される場合、接合部21の柱主筋1aの位置には柱主筋1aが貫通するための挿通孔が形成される。その場合、柱主筋1aは主に接合部21以外の柱部材1内でスリーブ継手等によりその柱部材1内の柱主筋1aに連結されるが、接合部21内にも予め柱主筋1aと継手を埋設しておき、接合部21内で柱主筋1aを連結することもある。
請求項3ではまた、平面上、2方向に架設される梁部材2、2の内、いずれか一方向の梁部材2の軸方向の端部に接合部21が一体化することで、接合部21が梁部材2の一部になるため、接合部21を設置済みの柱部材1上に載置しながら、反対側の端面をその側に架設済みの梁部材2の端部である接合部21に突き合わせるように、梁部材2を設置済みの隣接する柱部材1、1間に架設すればよい。この場合、緊張材3が突出した梁部材2の本体部22の端面を架設済みの梁部材2の接合部21側へ接近させるように梁部材2を軸方向に水平移動させることで、同一線上に配列する梁部材2、2を架設することができる。柱部材1としては図12に示すように脚部と頭部がない形のプレキャストコンクリート製の柱部材を架設済みの梁部材2の接合部21上に落とし込むことにより梁部材2との接合が可能になる。但し、柱部材1は必ずしもプレキャストコンクリート製である必要はなく、現場打ちコンクリート造で構築されることもある。
柱部材1がスパン方向か桁行方向の側柱である場合と隅柱である場合には、図4、図6、図7に示すように接合部21内には2方向の緊張材3、3の端部を配置することもできる。これらの場合、梁部材2は上記のように本体部22の軸方向、図面では桁行方向(Y方向)に移動させられてその側に隣接する梁部材2(接合部21)に突き合わせられるため、直交方向のスパン方向(X方向)には接合部21のない、本体部22のみの形状の梁部材2が架設され、架設済みの接合部21付きの梁部材2に、その本体部22の幅方向に突き合わせられる。
緊張材3は梁部材2の高さ方向には1段、配置されればよいこともあるが、1本の緊張材3に付与すべき緊張力を低減する目的で、または断面内の高さ毎にプレストレスを調整する目的で複数段、配置されることもある(請求項4)。この場合、各緊張材3の梁部材2の端面から突出する側の柱部材1を挟んで対向する梁部材2側の端部はその梁部材2内のシース4を挿通し、その梁部材2の表面に突出する(請求項4)。梁部材2の表面は梁部材2の上面か下面、または側面である。梁部材2内のシース4を挿通して梁部材2の表面に突出した緊張材3の端部は緊張力を付与された後、梁部材2の表面に定着される。
請求項4では複数段の緊張材3を梁部材2の表面の内、同一面、例えば図2に示すように上面側、もしくは下面側に定着させる場合には、複数本の梁部材2の本体部22における定着位置を軸方向にずらすために複数段の緊張材3、3の長さは異なり、各緊張材3は梁部材2の軸方向の異なる位置から梁部材2の表面に連通する。複数段の緊張材3を梁部材2の表面の内、図10に示すように幅方向両側の側面側に定着させる場合には、複数本の緊張材3、3の定着位置を高さ方向に異ならせることができるため、複数段の緊張材3、3の長さを異ならせる必要はない。
図2に示す例の場合、緊張材3が高さ方向に複数段、配置されることで、梁部材2の材軸に直交する縦断面上、高さ方向の各部に導入すべきプレストレスの量を調整することができる。また梁部材2の表面における複数本の緊張材3、3の定着位置が軸方向に異なることで、軸方向の区間毎にも軸方向に導入すべきプレストレスの量を調整することも可能になる。
請求項1〜請求項4の梁部材2は上記のように軸方向に隣接する柱部材1、1間に架設され、梁部材2内の緊張材4が緊張されることにより梁部材2の軸方向にプレストレスが導入される。具体的には、梁部材2の端面から突出した緊張材3の突出区間が、その側の柱部材1とその柱部材1(接合部21)を挟んで対向する梁部材2のシース4内を挿通させられ、梁部材2の軸方向の中間部において緊張材3が緊張されることにより梁部材2にプレストレスが与えられる(請求項5)。
この方法によれば、梁部材2の軸方向に隣接する柱部材1、1間への梁部材2の架設毎に、緊張材3の緊張と定着が行われることで、緊張材3の端部を柱部材1に定着することを要せず、緊張材3の緊張時に、必ずしも梁部材2の軸方向両端部に柱部材1、1が設置されていることを必要としない。このため、架構の建て方としては、架構を1層単位で構築する積層工法に限られず、平面上の一方側から複数層の架構を構築する毎に、他方側へ向けて施工する建て逃げ工法での構築方法も可能になり、架構構築の自由度が高まる。
特に梁部材2の軸方向の一方側に接合部21が一体化している場合(請求項3)には、図12に示すように軸方向の同一線上に配列する梁部材2、2を、それぞれの本体部22の端面を架設方向前方側へ向けながら、本体部22の端面側に隣接する梁部材2を先行して架設した後、この架設済みの梁部材2の接合部21に隣接する梁部材2を、その本体部22の端面を突き合わせるように架設する、という要領で軸方向に順次、架設することができる。
この架設要領によれば、梁部材2の接合部21はその下方の設置済みの柱部材1に支持されるため、梁部材2の架設前にはその下方の柱部材1は設置、もしくは構築されている必要があるが、梁部材2の架設直後にそれに軸方向に隣接する梁部材2を架設するか、架設直後の梁部材2上に柱部材1を設置するかの手順を選択することができるため、同一階の架構を先行して構築すること(積層工法)も、一部の平面内の全階分の架構を先行して構築することも(建て逃げ工法)も可能である。
緊張材の一方側の端部を梁部材の軸方向の一方側の端部寄りの内部に定着させ、緊張材の他方側の端部を梁部材の軸方向の他方側の端面から突出させると共に、梁部材中の、緊張材が定着された側の端面から軸方向の中間部までの区間にシースを埋設することで、緊張材をそれが突出した側に隣接する梁部材の中間部に定着させることができるため、緊張材の両端部を共に柱部材に定着させる必要がなくなり、緊張材の少なくとも一方側の端部を柱部材に定着させる場合に伴う柱部材への不静定力の発生を回避することができる。
またシース内に挿通させられる緊張材は梁部材の一方側の端部から中間部までの区間であり、梁部材の全長に挿通させられる必要がないため、緊張材の現場での挿通距離を短縮し、挿通時間も短縮することができる。
図1は柱部材1と、隣接する柱部材1、1間に架設されるプレキャストコンクリート製の梁部材2、2からなる図9に示すような架構を構成し、内部に、周面の付着が切れた緊張材3が挿通した梁部材2の内部における緊張材3の配置例を示す。図1は図9のA部分の拡大図であり、2方向の両側に梁部材2、2が突き合わせられて接合される中柱としての柱部材1と2方向の梁部材2、2内に配置される緊張材3の関係を示している。
緊張材3の一方側の端部は梁部材2の軸方向の一方側の端部寄りの内部に定着され、緊張材3の他方側の端部は梁部材2の軸方向の他方側の端面から突出する。また梁部材2中の緊張材3との干渉がない位置には、他の梁部材2内に配置された緊張材3が挿通可能なシース4が埋設され、シース4は緊張材3が定着された側の梁部材2の端面から梁部材2の軸方向の中間部までの区間に配置され、シース4の中間部側の端部は梁部材2の表面に連通する。平面図である図1とそのa−a線の断面図である図2中、緊張材3を包囲する破線がシース4を示す。梁部材2内には緊張材3とシース4の他、梁主筋2aとこれを拘束する拘束筋2bが配筋されている。「他の梁部材2」はシース4が埋設された梁部材2の、緊張材3の端部が定着された側に隣接する梁部材2を指す。
「緊張材3が定着された側の梁部材2側の端面」は、梁部材2の軸方向の、緊張材3の端部が定着された側の端面であり、図1以下の例に示すように緊張材3の定着側に柱部材1に連続する接合部21が一体化した場合には、接合部21の、緊張材3の端部が定着された側の端面であり、図1等に示すように接合部21の、その側に隣接する梁部材2側の端面からシース4が埋設される。図面ではシース4が表れる断面か否かに関係なく、梁部材2中の緊張材3と区別するためにシース4を破線で示している。
図1以降では図9において桁行方向に架設される梁部材2の軸方向の一方側に柱部材1の頭部に配置され、柱部材1に連続し、柱の一部になる接合部21が一体化した場合の例を示しているが、必ずしもその必要はない。図面では桁行方向の梁部材2に接合部21を一体化させている関係で、スパン方向に架設される梁部材2には接合部21は一体化していない。
図1等、平面図における柱部材1は接合部21を示している。図面では図9における桁行方向(Y方向)を向く梁部材2の、緊張材3の端部が定着される側に接合部21が一体化している場合を示しているが、スパン方向(X方向)を向く梁部材2の、緊張材3の端部が定着される側に接合部21が一体化する場合もある。梁部材2の接合部21は柱部材1の一部になるため、図3−(a)に示すように接合部21内には架構の構築時には柱部材1内に配筋される柱主筋1aと拘束筋1bが配筋される。
図1は2方向両側に梁部材2が接合される中柱である柱部材1と2方向の梁部材2の関係を示す。図示する例では上記のように桁行方向を向く梁部材2の一方の柱部材1側の端部に柱部材1にその軸方向に連続する接合部21が一体化しているから、桁行方向の梁部材2の一方側の端部は接合部21になる。この場合の梁部材2は接合部21を除いた本体部22と、本体部22の軸方向の一方側の端部に一体化した接合部21の2部分からなる。スパン方向の梁部材2には接合部21はない。
梁部材2に接合部21が一体化した場合、梁部材2の軸方向のいずれかの側に、緊張材3の一方の端部が定着されるかは問われないが、柱部材1に連続する接合部21に本体部22の幅より大きい幅を持たせることができ、接合部21内に緊張材3の一方の端部を定着させるための空間を確保し易いため、図面では接合部21に緊張材3の一方側の端部を定着している。緊張材3の定着側の端部は後述の定着具31である。
梁部材2に接合部21が一体化した場合、図1に示すようにシース4は接合部21の、その側に隣接する梁部材2側の端面から本体部22中にまで軸方向に連続して埋設される。また柱部材1が中柱である場合、柱部材1にはスパン方向の梁部材2の緊張材3も貫通するため、接合部21内にはスパン方向の両端面間にもシース4が埋設される。スパン方向のシース4は接合部21内にのみ配置される。
接合部21は梁部材2の軸方向の一方側の端部に位置するから、梁部材2内に予め配置される緊張材3の定着側の端部を定着させる役目も持つ。その緊張材3は接合部21の反対側の本体部22の端面から突出し、その側に隣接する梁部材2のシース4内に挿通させられる。この関係で、接合部21付きの梁部材2は図12に示すように本体部22の端面を、先行して架設されている梁部材2の接合部21に突き合わせるように架設されることになる。従って桁行方向の同一線上に架設される複数本の梁部材2は本体部22の端面側に隣接する梁部材2が先行して架設され、その架設済みの梁部材2に対し、その梁部材2の接合部21側に隣接する梁部材2が、本体部22の端面が先行する梁部材2の接合部21に向けられた状態で、後から架設されることになる。
このように接合部21が一体化した梁部材2を例えば桁行方向に向けて架構を構築する場合、本体部22の端面を先行する梁部材2の接合部21に向けて梁部材2を桁行方向に架設した後、その架設直後の梁部材2内の緊張材3を先行する梁部材2のシース4内に挿通させて緊張し、定着させる毎に、順次、その梁部材の接合部21に隣接する梁部材2を架設することを繰り返すことにより同一線上に配列する梁部材2、2を連続させることができる。
この場合、スパン方向には接合部21のない梁部材2が架設されるが、その梁部材2内での緊張材3の定着側端部の反対側の端面からはその緊張材3が突出しているため、図1に示すようにその緊張材3はその突出側に位置する桁行方向の梁部材2の接合部21のシース4を貫通し、その接合部21を挟んで対向するスパン方向の梁部材2のシース4内に挿通させられる。この関係で、スパン方向にも桁行方向と同様、端面から緊張材3が突出している梁部材2を後から架設し、その梁部材2の緊張材3が挿通させられるシース4が埋設された梁部材2を先行して架設しておくことが合理的である。
桁行方向の梁部材2の接合部21は平面上は柱部材1の位置に配置されることから、柱部材1は前記のようにプレキャストコンクリート製の場合、脚部と頭部がない形で製作されるため、柱部材1は図12に示すように桁行方向の梁部材2の架設後にその接合部21上に落とし込まれることにより梁部材2上に設置される。柱部材1の柱主筋1aは例えば柱部材1の本体(コンクリート)の下端から突出しており、接合部21を貫通し、その下に設置済みの柱部材1内に挿入させられ、その設置済みの柱部材1内の柱主筋1aと互いに連結される。この場合、接合部21には柱主筋1aの貫通用の挿通孔が形成される。
桁行方向の梁部材2の接合部21はその下方に設置済み、もしくは構築済みの柱部材1の天端上に載置されるため、桁行方向の梁部材2の架設前にはその下の柱部材1の設置や構築が済んでいる必要がある。但し、桁行方向2の梁部材2の架設後はそれに軸方向(桁行方向)に隣接する梁部材2を架設するか、架設後の梁部材2上に柱部材1を設置するかは任意であるため、全架構の内、同一階の架構を先行して構築するか、架構の全平面内の桁行方向の片側の領域において全階分の架構を先行して構築するか、は自由である。この「桁行方向の片側」は桁行方向2に連続する梁部材2、2の内、先行して架設される梁部材2側を指す。
図1中、桁行方向を向く梁部材2の接合部21内には緊張材3の定着側の端部が定着されるが、この緊張材3の定着側の端部には支圧板32が一体化した定着具31が一体化し、この支圧板32付きの定着具31が接合部21のコンクリート中に埋設され、定着される。支圧板32の緊張材3側の、緊張材3の回りには支圧板32からの支圧応力に対するコンクリートの補強のための補強筋33が配置される。図面では梁部材2(本体部22)内の補強筋33として各緊張材3を包囲するスパイラル筋を使用し、接合部21内の補強筋33として並列する2本の緊張材3、3を包囲するスターラップ状の拘束筋を使用している。端部の定着具31が接合部21に定着された緊張材3は接合部21から本体部22の全長に亘り、軸方向に沿って配置され、定着具31の反対側の端部は本体部22の端面から突出する。
図面では桁行方向の梁部材2の一方側に接合部21を一体化させている関係で、上記のようにスパン方向を向く梁部材2には接合部21がないため、スパン方向の梁部材2の軸方向の一方側の端部に、その梁部材2内に予め配置される緊張材3の端部である支圧板32付きの定着具31が定着される。
緊張材3の、梁部材2(本体部22)の端面から突出する区間は原則的にはその側に位置する柱部材1を貫通し、その柱部材1を挟んで対向する梁部材2内のシース4の端部にまで到達する長さを有する。ここで言う「柱部材1」は梁部材2に接合部21が一体化した場合には、接合部21である。その場合、接合部21は梁部材2の一部であるため、梁部材2(本体部22)の端面から突出した緊張材3はその突出側に隣接する梁部材2の接合部21に直接、到達する。緊張材3の梁部材2端面から突出する区間がその側の柱部材1を挟んで対向する、または隣接する梁部材2内のシース4の端部にまで到達する長さを有することで、図2に鎖線で示すようにシース4から突出した緊張材3をジャッキ7で緊張し、梁部材2に定着させることができる。
「原則的に」とは、緊張材3の、本体部22の端面から突出する区間が対向する梁部材2内のシース4の端部にまで到達する長さを有しない場合もあることの意味である。その場合、シース4が梁部材2の軸方向中間部の表面に連通する部分から、本体部22の端面から突出している緊張材3に連結されるべき接続分の緊張材を挿入し、これを突出している緊張材3に突出部分かその付近において連結し、一本化させた状態で、シース4の端部において一本化した緊張材3を緊張し、定着させることができる。
緊張材3の、本体部22の端面から突出した区間はその側に隣接する梁部材2内に埋設されたシース4内を挿通し、その梁部材2の表面において緊張材3の全長が緊張されることから、緊張材3が予め配置される梁部材2内では緊張材3の周面は周囲のコンクリートとの付着が切れた状態に置かれる。このため、緊張材3には主にアンボンドPC鋼材、プレグラウトPC鋼材が使用されるが、周面の付着が切れていれば、繊維強化プラスチック等の使用も可能である。
図1に示すように接合部21が一体化した桁行方向の梁部材2中にも、接合部21がないスパン方向の梁部材2中にも、端部の定着具31が定着される緊張材3と、後からシース4内に挿通する緊張材3が配置されるため、シース4は平面上、及び縦断面上、図1のd−d線断面図である図3−(c)に示すように予め梁部材2中に配置される緊張材3との干渉がない位置に埋設される。図面では予め配置される緊張材3と後からシース4内に挿通させられる緊張材3を平面上、重ならない位置に配置しているが、縦断面上、重ならない位置に配置することもある。
図面ではまた、梁部材2の材軸に直交する断面内での高さ毎に導入されるプレストレス量を調整するために、緊張材3を梁部材2中に高さ方向に複数段、配置している。この場合に、図1、図2に示すように全緊張材3の緊張側の端部を梁部材2の同一面(上面、もしくは下面)に定着させる場合には、各段の緊張材3の長さが相違させられ、各段の緊張材3の緊張側での定着位置が梁部材2の軸方向に相違させられる。各緊張材3の緊張側の端部を梁部材2の異なる面(側面)に定着させる場合には、各段の緊張材3の長さが相違させられる必要はない。
図1ではスパン方向の梁部材2内に配置される複数段の緊張材3の緊張側の定着位置が梁部材2の軸方向に相違する様子を示しているが、桁行方向の梁部材2の本体部22はスパン方向の梁部材2における緊張材3の定着側の端部を除き、スパン方向の梁部材2と同様の構造をする。すなわち、桁行方向の梁部材2内のシース4の配置状態と、シース4の端部が梁部材2の軸方向中間部の複数箇所に露出する後述の収納部2aの形成状態はスパン方向の梁部材2と変わりがないため、桁行方向の梁部材2の本体部22を幅方向に見たときの断面は図2と同様の状態になっている。
図1、図2の例では緊張材3を高さ方向に3段、配置し、シース4から突出する緊張材3の突出部分(定着部)を梁部材2の上面に定着させている関係で、3段の緊張材3の長さを相違させ、下段側の緊張材3の長さを上段側の緊張材3の長さより大きくしているが、図10に示すように緊張材3のシース4から突出する部分を梁部材2の幅方向両側に定着させる場合には、3段の緊張材3の長さを相違させる必要はない。
図2に示すように複数段の緊張材3を梁部材2(本体部22)の上面に定着させる場合、梁部材3の上面側には、緊張材3の緊張側の端部を定着させる定着板34と定着板34に係止する定着具35を収納するための空間として、プレキャストコンクリートが上面側から切り欠かれた形状の収納部2aが形成され、収納部2aの緊張材3側の内周面に定着板34が係止する。また各段に配置されたシース4は緊張材3の配置位置から各緊張材3の定着位置の収納部2aまでにかけ、曲線状に湾曲しながら上向きに傾斜する。収納部2a内には、緊張材3の定着とスラブ筋6の配筋後のスラブ5のコンクリートの打設によりコンクリートが充填されるため、緊張材3の端部と定着板34、及び定着具35はコンクリート中に埋設される。
図10、図11に示すように図1の例における複数段の緊張材3を梁部材2(本体部22)の両側面側に定着させる場合には、梁部材2(本体部22)の断面を欠損させないために、梁部材2の幅方向両側に突起状の定着部2bが形成される。図10では梁部材2(本体部22)の幅方向両側に、シース4が露出する梁部材2の端面側から緊張材3の定着側へかけて次第に幅が拡大する三角柱状の突起を付加した形に梁部材2(本体部22)を形成し、この三角柱状の突起を定着部2bとして使用している。
図4は図9中、B部分で示す、桁行方向両側とスパン方向片側に梁部材2が接合される、スパン方向の側柱である柱部材1と2方向の梁部材2の関係を示す。
柱部材1がスパン方向の側柱である場合、その側柱(柱部材1(接合部21))には架構の外周側からはスパン方向の梁部材2は接合されないため、その側柱に架構の内周側から接合されるスパン方向の梁部材2内に挿通させられる緊張材3の定着側の端部(定着具31)は柱部材1(接合部21)に定着される。図示する例では柱部材1の位置に、桁行方向の梁部材2に一体化した接合部21が配置されるため、スパン方向の梁部材2のシース4内に挿通させられる緊張材3の端部は図4に示すように桁行方向の梁部材2の接合部21内に定着される。
この関係で、桁行方向の梁部材2の接合部21内には2方向の緊張材3、3の定着側の端部(定着具31)が定着されるため、2方向の緊張材3、3の定着具31、31は図4に示すように平面上、互いに干渉しない位置に配置される。縦断面上も2方向の定着具31、31が干渉しないよう、桁行方向の緊張材3とスパン方向の緊張材3は図4のa−a線断面図である図5に示すように例えば高さ方向に互い違いに、段差が付いた状態で接合部21内に配置される。
図4において桁行方向の梁部材2の接合部21に端部(定着具31)が定着され、接合部21から本体部22中にかけて予め配置される緊張材3の配置状態は図1の例と同じ、もしくは同様である。接合部21から本体部22中にまで埋設されたシース4内に挿通させられる、後から架設される梁部材2中に配置された緊張材3のシース4内への挿通状態も図1の例と同じ、もしくは同様である。
スパン方向の緊張材3の定着側の端部(定着具31)は上記のように接合部21中に定着されるため、その緊張材3の端部寄りの区間は接合部21中に配置され、その先の、接合部21から突出する区間は接合部21にスパン方向に突き合わせられる梁部材2のシース4内に挿通させられる。緊張材3が高さ方向に3段、配置された場合、スパン方向の梁部材2内での3本の緊張材3の配置状態は図2と同じ、もしくは同様であり、桁行方向の梁部材2内での3本の緊張材3の配置状態も図2と同じ、もしくは同様である。
図6は図9中、C部分で示す、スパン方向両側と桁行方向片側に梁部材2が接合される、桁行方向の側柱である柱部材1と2方向の梁部材2の関係を示す。
柱部材1が桁行方向の側柱である場合、その側柱(柱部材1(接合部21))にはスパン方向の両側に梁部材2、2が接合される。この関係で、その側柱の一方側に接合されるスパン方向の梁部材2内に挿通させられる緊張材3の定着側の端部(定着具31)は柱部材1(接合部21)には定着されず、図1の中柱の場合と同じく、桁行方向の梁部材2の接合部21に反対側から突き合わせられるスパン方向の梁部材2に定着されている。
図6において桁行方向の梁部材2の接合部21に端部(定着具31)が定着され、接合部21から本体部22中にかけて予め配置される桁行方向の緊張材3の配置状態は図1、図4の例と同じ、もしくは同様である。但し、桁行方向の側柱(接合部21)には架構の外周側からは桁行方向の梁部材2は接合されないため、接合部21から本体部22中にはシース4は埋設されていない。桁行方向の接合部21と本体部22には端部が本体部21中に定着された緊張材3が連続して配置されているだけになる。スパン方向には柱部材1(接合部21)の両側に梁部材2、2が接合されるため、スパン方向の梁部材2内における緊張材3とシース4の配置状態は図1の例と同じ、もしくは同様である。
図7は図9中、D部分で示す、スパン方向片側と桁行方向片側にのみ、梁部材2が接合される隅柱である柱部材1と2方向の梁部材2の関係を示す。
柱部材1が隅柱である場合、柱部材1(接合部21)には架構の外周側からはスパン方向の梁部材2と桁行方向の梁部材2は接合されないため、スパン方向に架設される梁部材はスパン方向の側柱(図9中のB部分)における、図4に示す梁部材2と同じ、もしくは同様の構造になる。また桁行方向に架設される梁部材2は桁行方向の側柱(図9中のC部分)における、図6に示す梁部材2と同じ、もしくは同様の構造になる。
具体的には隅柱(柱部材1(接合部21))に架構の内周側から接合されるスパン方向の梁部材2内に挿通させられる緊張材3の定着側の端部(定着具31)は柱部材1(接合部21)に定着される。柱部材1(接合部21)には桁行方向の緊張材3の定着側の端部(定着具31)も定着され、その緊張材3は接合部21から本体部22の反対側の端面まで連続して配置され、その端面から突出する。接合部21が隅柱の位置に配置される梁部材2中には図6の例と同様、シース4は埋設されない。スパン方向の梁部材2内における緊張材3とシース4の配置状態は図1、図4と同じ、もしくは同様である。
柱部材1(接合部21)内にスパン方向と桁行方向の2方向に架設される梁部材2、2内に挿通させられる緊張材3、3の端部(定着具31)が定着されることで、ここでもスパン方向の側柱の場合の図4と同様、2方向の緊張材3、3の定着具31、31は平面上、互いに干渉しない位置に配置される。縦断面上も、桁行方向の緊張材3とスパン方向の緊張材3は図7のa−a線断面図である図8に示すように例えば高さ方向に互い違いに、段差が付いた状態で接合部21内に配置される。