JP6416072B2 - 同期フェーザ測定装置およびパルス生成装置 - Google Patents

同期フェーザ測定装置およびパルス生成装置 Download PDF

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Description

この発明は、同期フェーザ測定装置およびパルス生成装置に関する。
電力系統の電圧・電流フェーザを測定する装置は、一般に同期フェーザ測定装置(PMU:Phazor Measurement Unit)と呼ばれる(非特許文献1参照)。従来の同期フェーザ測定装置では、再帰的DFT(Discrete Fourier Transform)を用いて電力系統の電圧・電流の実効値および位相などを解析する手法が一般的であった(非特許文献2参照)。しかしながら、系統周波数がDFTの設計周波数(すなわち、定格周波数)からずれると、検出される実効値および位相が誤差を有するために検出精度が劣化するという問題がある。
本願の発明者は、特許文献1において、交流電圧電流の対称性を利用して、電圧・電流フェーザを高精度かつ実時間で検出する手法を提案した。具体的に、この特許文献は、ゲージ同期フェーザ群とゲージ差分同期フェーザ群(これらの用語の意味については後述する)とを用いた計算方法を開示している。
特開2014−139541号公報 特開2014−71108号公報 特許第5214074号公報
"IEEE Standard for Synchrophasor Measurements for Power Systems", IEEE Power & Energy Society, 28 December 2011, IEEE Std C37.118.1-2011 中野他4名、「同期フェーザ計測に基づく実時間電力系統周波数検出」、電気学会論文誌C、2002年、Vol.122-C、No.12、p.2076-2082
複数の同期フェーザ測定装置を用いて電力系統の安定度を監視するためには、複数地点のフェーザ量を連続的に測定する必要がある。ところが、上記特許文献1に記載された同期フェーザ測定装置では、電圧フリッカなどによって一時的に検出すべき電気量の波形が正弦波からずれた場合には、フェーザ量を算出できないという問題があった。
この発明は上記の問題点を考慮してなされたもので、その目的は、電圧フリッカなどに基づく一時的な系統異常があった場合でも連続的にフェーザ量を測定可能な同期フェーザ測定装置を提供することである。
この発明の同期フェーザ測定装置は、電力系統の電気量を第1周期ごとにサンプリングした瞬時値データが入力される入力部と、演算処理部とを備える。演算処理部は、瞬時値データの中から第1周期よりも大きい第2周期ごとに抽出した連続する4点のデータを用いて不変量としてのゲージ差分有効同期フェーザおよびゲージ差分無効同期フェーザを算出する。さらに、演算処理部は、ゲージ差分有効同期フェーザおよびゲージ差分無効同期フェーザを平均化することによってフェーザ量を算出する際に、対称性の破れが生じているサンプリング時刻のデータを含めないようにする。
この発明によれば、電圧フリッカなどに基づく一時的な系統異常があった場合でも連続的にフェーザ量を測定可能な同期フェーザ測定装置を提供することができる。
複素平面上の同期フェーザを示す図である。 複素平面上のケージ同期フェーザ群を示す図である。 複素平面上のケージ差分同期フェーザ群を示す図である。 直流成分を含む場合の、複素平面上のゲージ電圧群を示す図である。 複素平面上のゲージ差分同期フェーザ群の不変量の平均化処理の概念図である。 ゲージ対称群の不変量の平均化処理および停電判別を行うためのフローチャートである。 複素平面上の空間同期フェーザについて説明するための図である。 複素平面上の時間同期フェーザについて説明するための図である。 時間同期フェーザに対応するサイクル数NTPとゲージサンプリング点数Ngとの関係を示す図である。 同期フェーザ位相角と経過時間との関係を示す図である。 時間同期フェーザとゲージサンプリング点数との関係を示す図である。 複素平面上の同期フェーザと仮想基準フェーザとこれらの相差角とを示す図である。 同期フェーザ測定装置の構成を示すブロック図である。 同期フェーザの測定手順を示すフローチャートである。 パルス生成装置の構成を示すブロック図である。 図15のパルス生成装置の動作を示すフローチャートである。 正半波の生成方法について説明するための図である。 上記の出力指令時間計算の概念を説明するための図である。 ケース1における電圧瞬時値と交流振幅の測定結果とを示す図である。 ケース1における理論周波数と測定周波数波形とを示す図である。 ケース1における周波数変化率の測定結果を示す図である。 ケース2の実測例における実測電圧波形図である。 図22の0.1秒間の区間の拡大図である。 ケース2の実測例における実測電圧波形を、4000Hzのサンプリング周波数で3秒間検出したときのフーリエ変換スペクトルの測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証1として、同期フェーザ位相角の測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証1における同期フェーザ実数部の測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証1として、時間同期フェーザの測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証2として、電圧振幅の測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証2として、時間同期フェーザの測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証3として、平均周波数の測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証3として、周波数変化率の測定結果を示す図である。 ケース2の実測例の検証4として、相差角の測定結果を示す図である。 図32の拡大図である。 ケース2の実測例の検証5として、パルス生成結果を示す図である。 図34の拡大図である。 電気学会のEAST10電力系統モデルの構成図である。 図36の電力系統安定度監視システムによる演算手順を示すフローチャートである。 ケース3において、発電機G1の内部位相角のシミュレーション結果を示図である。 ケース3の検証1として、故障前の複数の空間同期フェーザの測定結果を示す三次元図である。 ケース3の検証1として、発電機G1の脱調直前において複数の空間同期フェーザの測定結果を示す三次元図である。 ケース3の検証1として、発電機G1の脱調直後において複数の空間同期フェーザの測定結果を示す三次元図である。 ケース3の検証2として、ノード(11)およびノード(21)の正相電圧の瞬時値波形を示す図である。 ケース3の検証2として、ノード(11)およびノード(21)における相差角の測定結果を示す図である。 ケース3検証2として、ノード(11)とノード(21)との間の空間同期フェーザの測定結果を示す図である。 三相不平衡電気量測定装置の構成を示すブロック図である。 三相不平衡電気量測定装置の演算処理手順を示すフローチャートである。 ケース4において、A相電圧瞬時値とA相電圧同期フェーザの実数部および振幅の測定結果とを示す図である。 ケース4において、A相電圧同期フェーザの測定結果を複素平面上に示した図である。 ケース4において、A相電圧同期フェーザの位相角の測定結果を示す図である。 ケース4において、正相電圧同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。 ケース4において、逆相電圧同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。 ケース4において、零相電圧同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。 ケース4において正相電流同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。 ケース4において、逆相電流同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。 ケース4において、零相電流同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。
以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。以下の実施の形態では、まず、各実施形態の基礎となる本開示の基本概念について説明する。基本概念の説明では、[1]用語の定義、[2]本開示と従来理論との比較、[3]ゲージ同期フェーザ群についての説明、[4]ゲージ同期フェーザ群の実数群表の構築、[5]周波数係数(ゲージ同期フェーザ群の対称性指標)[6]ゲージ有効同期フェーザの定義と計算式、[7]ゲージ無効同期フェーザの定義と計算式、[8]実数部、虚数部、位相角、および交流電圧振幅の計算式(ゲージ同期フェーザ群を用いる場合)、[9]ケージ差分同期フェーザ群についての説明、[10]ゲージ差分同期フェーザ群の実数群表の構築、[11]周波数係数(ゲージ差分同期フェーザ群の対称性指標)、[12]ゲージ差分有効同期フェーザの定義と計算式、[13]ゲージ差分無効同期フェーザの定義と計算式、[14]実数部、虚数部、位相角、および交流電圧振幅の計算式(ゲージ差分同期フェーザ群を用いる場合)、[15]入力波形の直流分の計算[16]ゲージ対称群の不変量の平均化処理および停電判別について、[17]電力およびインピーダンスの計算式、[18]空間同期フェーザの定義と計算式、[19]時間同期フェーザの定義と計算式、[20]周波数および周波数変化率の計算式、[21]仮想基準フェーザの設定と相差角の計算式の順に説明する。
次に、実施の形態1では、同期フェーザ測定装置の構成と演算のフローチャートについて説明する。実施の形態2では、およびパルス生成装置について説明する。実施の形態3では、ケース1として、周波数が一定の割合で変化していく場合において、周波数と周波数変化率のシミュレーション結果について説明する。
実施の形態4では、ケース2として、実測した電圧波形に基づく計算結果について説明する。具体的に、ケース2の検証1では、対称性破れが生じた場合の同期フェーザの計算結果について説明する。ケース2の検証2では、平均化処理の時間幅の長さを変更した例について説明する。ケース2の検証3では、時間同期フェーザのサイクル数を変更した例について説明する。ケース2の検証4では、仮想基準フェーザを用いて相差角を測定した例について説明する。ケース2の検証5では、電力系統の波形を利用して正半波パルスを生成した結果について説明する。
実施の形態5では、電気学会のEAST10と呼ばれる電力系統モデルを用いたシミュレーション結果について説明する。実施の形態6では、EAST10モデルにおいて、三相不平衡電気量を測定した結果について説明する。
以下の説明において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない場合がある。なお、以下では、主として電圧についての対称群について説明するが、電流および電力などの他の電気量についても同様である。
<本開示の基本概念>
[1.用語の定義]
まず、本開示で使用する用語について説明する。
(1) 同期フェーザ
複素平面上で反時計まわり回転する電圧あるいは電流ベクトルをいう。すなわち、この明細書で同期フェーザとは、回転電圧ベクトルまたは回転電流ベクトルの別名である。同期フェーザは、同期フェーザ実数部、同期フェーザ虚数部、および同期フェーザ位相角の3つの変数を有する複素数状態変数である。同期フェーザ位相角の取り得る値は−180度から+180度の間である。
(2) 群論(group theory)
対称性(symmetry)を研究する数学理論を包含する。
(3) 対称群(symmetry group)
複素平面上で回転している対称性(symmetry)を有している複数のベクトルにより構成した群(group)をいう。複素平面上で静止している対称性を有している複数のベクトルにより構成した群を包含するものとする。
(4) 不変量(invariant)
不変量は、対称群が有している、ある変換の下で変化しない系の性質である。本実施の形態が想定している不変量としては、これらには限られないが、ゲージ回転位相角、周波数係数、ゲージ有効同期フェーザ、ゲージ無効同期フェーザ、ゲージ差分有効同期フェーザ、ゲージ差分無効同期フェーザなどがある。なお、不変量が分かれば、対称群の特性も分かる。
(5) データ収集サンプリング周波数(data collecting rate)
データ収集時のサンプリング周波数であり、高い方が精度がよい。この明細書では、データ収集サンプリング周波数をf1で表し、データ収集サンプリング周期をT1で表す。T1=1/f1の関係がある。実際の装置への応用に際しては、ハードウェア(H/W)の制限と複数チャンネルでのデータ同期要求などを考慮して、適切なデータサンプリング周波数を選択することが必要である。
(6) ゲージサンプリング周波数(gauge sampling frequency)
ゲージ対称群の計算に使用されるサンプリング周波数であり、符号fgで表現し、その単位をヘルツ(Hz)とする。ゲージサンプリング周期をTgで表すと、Tg=1/fgの関係がある。以下では、添え字“g”を用いずに、ゲージサンプリング周波数f、ゲージサンプリング周期Tのように記載する場合もある。
(7) 定格周波数(system nominal frequency)
電力系統における定格周波数を意味し、符号f0で表現し、典型的には、50Hzまたは60Hzである。
(8) ゲージ回転位相角
複素平面上で回転している回転ベクトルが、ゲージサンプリング周期において実際に回転した角度(電気角)を意味し、符号αで表現する。
(9) 周波数係数
ゲージ回転位相角の余弦関数値を意味し、符号fCで表現する。
(10) ゲージ電圧群
隣同士で時間間隔Tを有して時系列に連続する3つの回転電圧ベクトル(同期フェーザ)により構成された、複素平面上で反時計まわりに回転している対称群を意味する。なお、電流についても同様の対称群の概念が定義可能である。
(11) ゲージ同期フェーザ単位群
隣同士で時間間隔T(ゲージサンプリング周期)を有して時系列に連続し、3つの単位振幅の電圧静止ベクトル(単位静止ベクトル)により構成された複素平面上静止している対称群を意味する。なお、電流についても同様の単位群の概念が定義可能である。
(12) ゲージ同期フェーザ群
複素平面上で回転しているゲージ電圧群と、ゲージ電圧群と同じ複素平面上で静止しているゲージ同期フェーザ単位群によって構成された対称群である。なお、電流についても同様の対称群の概念が定義可能である。
(13) ゲージ差分電圧群
隣同士で時間間隔Tを有して時系列に連続する3つの差分同期フェーザ(差分回転電圧ベクトル)により構成された、複素平面上で反時計まわりに回転している対称群を意味する。ここで、差分同期フェーザは、時間間隔Tで隣り合う2つの同期フェーザの差として定義される。したがって、ゲージ差分電圧群は、隣同士で時間間隔Tを有して時系列に連続する4つの同期フェーザ(回転電圧ベクトル)の隣接する2個ごとの差分をとることによって得られる。なお、電流についても同様の対称群の概念が定義可能である。
(14) ゲージ差分同期フェーザ単位群
隣同士で時間間隔T(ゲージサンプリング周期)を有して時系列に連続する3つの差分電圧静止ベクトルによって構成された複素平面上静止している対称群を意味する。ここで、差分電圧静止ベクトルは、時間間隔T(ゲージサンプリング周期)で隣り合う単位振幅の電圧静止ベクトルの差として定義される。したがって、ゲージ差分同期フェーザ群は、隣同士で時間間隔T(ゲージサンプリング周期)を有して時系列に連続する4つの単位振幅の電圧静止ベクトルについて、隣接する2個ごとの差分をとることによって得られる。なお、電流についても同様の単位群の概念が定義可能である。
(15) ゲージ差分同期フェーザ群
複素平面上で回転しているゲージ差分電圧群と、ゲージ差分電圧群と同じ複素平面上で静止しているゲージ差分同期フェーザ単位群よって構成された対称群である。なお、電流についても同様の対称群の概念が定義可能である。
(16) 空間同期フェーザ
同時刻における二つのノード間の同期フェーザ位相角の差分である。もしくは、同時刻における2つのノード間の同期フェーザの位相差として定義される。空間同期フェーザの取り得る値は−180度から+180度の間にある。
(17) 時間同期フェーザ
現時点より指定期間だけ前の時点から現時点までの間に同期フェーザが実際に回転した位相角の積算値を時間同期フェーザとして定義する。したがって、時間同期フェーザが取り得る値は0より大きい値(正数)である。時間同期フェーザを指定期間で割った値を位相速度(phase velocity)と定義する。さらに、位相速度から基本波周波数が算出される。
上記の定義は、特許文献1の定義と異なる。特許文献1の場合、時間同期フェーザは、現時点の同期フェーザ位相角と、現時点よりも指定期間だけ前の時点での同期フェーザ位相角との差分として定義されていた。この場合、時間同期フェーザの取り得る値は、−180度から+180度の間である。
(18)相差角
複素平面上の同期フェーザの位相角と仮想基準フェーザの位相角との差分である。相差角の取り得る値は、0度から+180度の間である。この相差角を利用することによって、電力系統の脱調を判別することができる。
(19) 同期フェーザ測定装置(PMU:phasor measurement unit)
同期フェーザを測定する装置である。
(20) 三相不平衡電気量測定装置
電力系統の三相電圧電流を測定し、対称座標法を用いて、測定した三相電圧電流を正相、逆相及び零相に変換する装置である。なお、逆相と零相成分が零である場合、三相平衡状態となる。
(21) パルス生成装置
パルス信号を生成する装置である。具体的に、本明細書で開示されるパルス生成装置は、入力信号の基本波成分の振幅および周波数を有するパルス信号を生成する。
(22) 離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)
離散化されたフーリエ変換であり、離散化されたデジタル信号の周波数解析などに使われる。
[2.本開示と従来理論との比較]
まず、IEEE規格による瞬時周波数の定義と本発明者が提案する瞬時周波数の定義との比較を行う。非特許文献1(IEEE Std C37.118.1-2011)の第8頁の式(7)によれば、基本波x(t)は位相角Ψ(t)と振幅Xmとを用いて次式(A1)のように定義される。
さらに、同文献の第8頁の式(8)によれば、周波数f(t)は位相角Ψ(t)の微分dΨ(t)/dtを用いて次式(A2)のように定義される。πは円周率を表す。
このように、周波数f(t)は、一次元状態変数Ψ(t)を用いて定義されている。すなわち、位相角Ψを時間tの連続的な関数と想定し、その関数Ψ(t)の微分を瞬時周波数f(t)として定義している。
なお、一般的な同期フェーザ測定装置(PMU)では、DFTで基本波を抽出することによって、位相差と周波数を測定している(非特許文献2を参照)。そのため、基本波成分のみの入力データ(純粋な正弦波)においても、純粋な正弦波の周波数測定の解析解が存在しない。
これに対して、本開示では、上記式(2)の周波数定義を用いずに、二次元状態変数に基づく瞬時周波数が導入されている。まず入力波形のデジタル化処理(量子化)をし、量子化された電流・電圧に対して群論の考え方に基づく対称性原理を導入することによって、次式(A3)のように瞬時周波数が定義される(特許文献3を参照)。
ここに、fgは任意のゲージサンプリング周波数、Tgはゲージサンプリング周期、αはゲージサンプリング周期Tgの間に同期フェーザが回転した角度(「ゲージ回転位相角」と称する)である。入力波形が純粋な正弦波であれば、異なるサイクル数で計算された基本波周波数は同じであり、設定したゲージ周波数fgにおいて、基本波周波数の解析解は存在する。
次にIEEE規格に基づく同期フェーザの計算方法と本開示によって提案されている同期フェーザの計算方法との比較について説明する。上記のように、非特許文献1に示されたIEEE規格では、DFTに基づいて先に位相差を計算し、次に周波数を計算する。したがって、一般的には、任意周波数の純粋な正弦波に対しては同期フェーザの解析解が存在しない。
一方、本開示による同期フェーザの計算方法では、特許文献1においても示したように、純粋な正弦波が入力された場合においても同期フェーザ位相角および同期フェーザの解析解が求められる。具体的には以下のとおりである。
図1は、複素平面上の同期フェーザを示す図である。同期フェーザv1(t)は、次式(A4)のように二次元の複素数で定義される。
ここに、Vは同期フェーザ振幅、ωは角速度、φは同期フェーザ位相角である。なお、同期フェーザv1(t)の実数部v1re(t)と虚数部v1im(t)とは次式(A5)のように表現できる。

上記の角速度ωは、瞬時周波数fを用いて次式(A6)のように表される。
このように、従来の同期フェーザの計算方法と、本開示によって提案している同期フェーザの計算方法とを比較すると、後者のほうが任意周波数の純粋な正弦波の入力信号に対して、解析解が存在していることが大きなメリットである。別の言い方をすれば、従来理論では、電力系統の定格周波数を有する正弦波に対して対称変換を求めることに対して、本開示によって提案された方法では任意周波数の純粋な正弦波(基本波)に対して対称変換を求める。
しかしながら、現実の電力系統では、色々な不確定要因により、様々な高調波成分が存在し、さらに基本波自体も常に変化している。そこで、対称性の原理を利用した同期フェーザの測定手法の真価を発揮するため、本開示では、対称性破れ指標の設定、測定対象となるサイクル数の拡大、および測定結果の移動平均処理などを行うことによって、高調波成分の影響を大幅に低減している。上記の一部は本願発明者が特許文献1におけて開示したものであるが、本開示では、上記の同期フェーザ測定に関する手法を進化させることによって、高調波成分の影響をさらに低減するとともに、基本波が変化している場合における基本波周波数の測定の時間分解能をさらに高めている。
具体的には、まず、ゲージ同期フェーザ群およびゲージ差分同期フェーザ群を用いて、交流電気量(電圧および電流)を求め、これによって高速に同期フェーザが決定される(詳しい数式および特許文献1との相違点については後述する)。その後、時間同期フェーザ(この定義は、特許文献1と異なる)を算出し、位相速度(phase velocity)の概念を用いて次式(A7)のように基本波周波数を算出する。
ここに、f0は、電力系統の定格周波数または現時点から所定時間前の時点から現時点までの周波数測定結果の移動平均値である。φTP(t)は本開示で新たに提案した時間同期フェーザ(同期フェーザが回転した位相角の積算値で、したがって、時間同期フェーザは常に零より大きい)、TTPは時間同期フェーザに対応する積算時間である。なお、この積算時間TTPは任意に設定することができる。たとえば、積算時間が基本波の1サイクルより大きい場合、定格周波数に基づいて積算時間TTPに対応するサイクル数NTPが定められる。積算時間TTP(したがって、サイクル数NTP)が大きいほうが、高調波の影響をより低減することができるが、検出時間が長くなるので、PMUの要求仕様などを考慮して適切な積算時間が選択される。
さらに、電力系統の任意の2個のノード間において同時刻に測定された同期フェーザ位相角の差分を、空間同期フェーザと定義する。空間同期フェーザは、電力系統の安定度の監視および制御に利用される。
本開示の方法は、電力系統の不平衡三相電気量の計測にも用いることができる。詳しくは後述するが、実効値はゲージ不変量を用いて計測し、瞬時値はスパイラルベクトル対称座標法を用いて計算することができる。これに対して、従来の一般的な方法では、瞬時値はαβ座標変換を用いて算出され、実効値はdq座標変換を用いて算出される。
このように、本開示の方法では、IEEEの規格(すなわち、基本波を実時間領域で定義する方法)と異なり、複素数状態変数(同期フェーザ実数部、同期フェーザ虚数部、同期フェーザ位相角)を用いて同期フェーザを定義する。さらに、対称性の原理を用いて、時々刻々変化するこれらの複素数状態変数をリアルタイムで算出する。この結果、高速高精度の同期フェーザ測定装置(PMU)を提供することができる。さらに、本開示では、上記の手法を利用した正弦波パルス生成装置を提案する。
以下の表1に、対称性の原理に基づく本開示による同期フェーザの測定方法と従来の同期フェーザの測定方法とを比較を示す。
[3.ゲージ同期フェーザ群について]
図2は、複素平面上のケージ同期フェーザ群を示す図である。図2を参照して、複素平面上の3個の同期フェーザとして次式(B1)で表されるフェーザ群を想定する。
ここに、tは時間、Vは交流電圧振幅、Tは対称群を計算するためのサンプリング時間の刻み幅(すなわち、ゲージサンプリング周期)、αはTに対応する回転位相角、φは同期フェーザ位相角である。上式(B1)で表される3個の同期フェーザによってゲージ電圧群が構成される。回転位相角αは未知数である。なお、この明細書では、回転位相角αは実際に回転した角度を表し、常に正数である。
複素平面上の3個の単位ベクトルとして次式(B2)で表される単位ベクトル群を想定する。次式(B2)で表される単位ベクトル群によって、ゲージ同期フェーザ単位群が構成される。

上式(B2)に用いられている回転位相角α0は次式(B3)のように求められる。
ここに、f0は比較的長いスパン(例えば、現時点までの数秒間)で測定した電力系統の平均周波数である。装置の起動時には電力系統の定格周波数(50Hzあるいは60Hz)に設定される。fgはゲージサンプリング周波数である。
図2の6個のベクトルによって構成される群(すなわち、上式(10)で表されるゲージ電圧群と上式(11)で表されるゲージ同期フェーザ単位群)を、ゲージ同期フェーザ群と定義する。このゲージ同期フェーザ群の定義は、本願発明者が以前に出願した特許文献1での定義と若干異なっている点に注意されたい。具体的には、特許文献1では、ゲージ電圧群とゲージ同期フェーザ単位群とは同じ回転位相角αを用いていた。これに対し、本開示の定義では、ゲージ電圧群の回転位相角αは未知数であり、ゲージ同期フェーザ単位群の回転位相角α0は事前に与えられており、たとえば、電力系統の定格周波数に対応する回転位相角、あるいは長いスパンで平均化した周波数に対応する回転位相角である。現実の電力系統の周波数は常に変動しているため、上記の定義の変更によって安定的な計算を行うことができる。
[4.ゲージ同期フェーザ群の実数群表の構築]
ゲージ同期フェーザ群の不変量の計算式を求めるために、以下の表2に示すようにゲージ同期フェーザ群の実数群表を生成する。
表2の各乗積を計算するにあたって、まず、各同期フェーザの実数部瞬時値は次式(B4)のようになる。次式において、Re[v1(t)]は、同期フェーザv1(t)の実数部を表す。

次に、各単位ベクトルの実数部瞬時値は次式(B5)のようになる。
上式(B4)の電圧フェーザの実数部瞬時値および上式(B5)の単位ベクトルの実数部瞬時値を代入することによって、表2の各乗積は次式(B6)のように求められる。
以下、上記の表2の実数群表の各乗積を利用することによって得られる、ゲージ同期フェーザ群の不変量の計算式を示す。
[5.周波数係数(ゲージ同期フェーザ群の対称性指標)]
上式(B6)から、ゲージ同期フェーザ群の不変量の1つである周波数係数cosα0を求めると次式(B7)のようになる。近似的にはα≒α0が成り立つので、次式(B7)の導出にあたってはα0をαで置換した。
上式(B7)を用いて、次式(B8)で表されるゲージ同期フェーザ群の対称性指標を定義する。次式(B8)において|…|は絶対値を表す。
上式(B8)が成立するとき、入力波形が純粋な正弦波から大きくずれたこと、すなわち、振幅急変、位相急変、または周波数急変により、入力波形の対称性が破れたことを意味する。この対称性の破れを判定するための指標が対称性指標である。ゲージ同期フェーザ群の対称性の破れが検出されたときは、その時刻での不変量計算結果は、振幅、位相、および周波数の計算には用いられない。
[6.ゲージ有効同期フェーザの定義と計算式]
不変量の1つとして、ゲージ有効同期フェーザSApを次式(B9)のように定義する。式(B9)の第1式に実数群表の関連乗積を代入し、さらにαをα0と近似することによって、第2式が得られる。ゲージ有効同期フェーザSApは、ゲージ電圧群とゲージ電流群とから不変量の1つであるゲージ有効電力を計算する計算式に類似した表式を有している(たとえば、特許文献1を参照)。
[7.ゲージ無効同期フェーザの定義と計算式]
不変量の1つとして、ゲージ無効同期フェーザSAQを次式(B10)のように定義する。式(B10)の第1式に実数群表の関連乗積を代入し、さらにαをα0と近似することによって、第2式が得られる。ゲージ無効同期フェーザSAQは、ゲージ電圧群とゲージ電流群とから不変量の1つであるゲージ無効電力を計算する計算式に類似した表式を有している(たとえば、特許文献1を参照)。
[8.実数部、虚数部、位相角、および交流電圧振幅の計算式]
上記のゲージ有効同期フェーザSApおよびゲージ無効同期フェーザSAQと、同期フェーザの定義とを用いることによって、同期フェーザ実数部vre、同期フェーザ虚数部vim、同期フェーザ位相角φ、および交流電圧振幅Vは、次式(B11)〜(B14)のように計算される。
上記の式(B11)〜(B14)において、fcは周波数係数(=cosα)である。式(B13)の同期フェーザ位相角φの範囲は−180度から+180度の間にある。
入力電圧に直流電圧成分を含んでいる場合には、上記の実数部vre、虚数部vim、位相角φ、および交流電圧振幅Vには誤差が含まれていることになる。その場合には、後述するゲージ差分同期フェーザ群を用いて、実数部vre、虚数部vim、位相角φ、および交流電圧振幅Vの演算を行う。
[9.複素平面上のケージ差分同期フェーザ群について]
図3は、複素平面上のケージ差分同期フェーザ群を示す図である。図3を参照して、複素平面上の3個の差分同期フェーザとして次式(C1)で表されるフェーザ群を想定する。
ここに、Vは交流電圧振幅、ωは回転角速度、Tは対称群計算サンプリング時間刻み幅(すなわち、ゲージサンプリング周期)、αはTに対応する回転位相角、φは同期フェーザ位相角である。上式(C1)で表される3個の差分同期フェーザによってゲージ差分電圧群が構成される。回転位相角αは未知数である。
複素平面上の3個の差分単位ベクトルとして、次式(C2)で表される差分単位ベクトル群を想定する。次式(C2)で表される3個の差分単位ベクトルによって、ゲージ差分同期フェーザ単位群が構成される。
図3の6個の差分ベクトルによって構成される群(すなわち、上式(C1)で表されるゲージ差分電圧群と上式(C2)で表されるゲージ差分同期フェーザ単位群)を、ゲージ差分同期フェーザ群と定義する。ゲージ同期フェーザ群の場合と同様に、上記のゲージ差分同期フェーザ群の定義は、本願発明者が以前に出願した特許文献1での定義と若干異なっている。特許文献1では、ゲージ電圧群とゲージ同期フェーザ単位群とは同じ回転位相角αを用いていたのに対し、本開示の定義では、ゲージ電圧群の回転位相角αは未知数であり、ゲージ同期フェーザ単位群の回転位相角α0は事前に与えられている。後者の回転位相角α0は、たとえば、電力系統の定格周波数に対応する回転位相角、あるいは長いスパンで平均化した周波数に対応する回転位相角である。
[10.ゲージ差分同期フェーザ群の実数群表の構築]
ゲージ差分同期フェーザ群の不変量の計算式を求めるために、以下のようにゲージ差分同期フェーザ群の実数群表を生成する。
表3の各乗積を計算するにあたって、各差分同期フェーザの実数部瞬時値v21,v22,v23は次式(C3)のように表され、各差分単位ベクトルの実数部瞬時値v201,v202,v203は次式(C4)のように表される。
上記の表3の実数群表の各乗積には、上式(C3)の差分同期フェーザの実数部瞬時値および上式(C4)の差分単位ベクトルの実数部瞬時値が代入される。以下、表3の実数群表の各乗積を利用することによって得られる、ゲージ差分同期フェーザ群の不変量の計算式を示す。
[11.周波数係数(ゲージ差分同期フェーザ群の対称性指標)]
表3の実数群表の各乗積の計算結果から、ゲージ差分同期フェーザ群の不変量の1つである周波数係数cosαがは次式(C5)で求められる。近似的にはα≒α0が成り立つので、次式(C5)の導出にあたってはα0をαで置換した。
上式(C5)を用いて、次式(C6)で表されるゲージ差分同期フェーザ群の対称性指標を定義する。次式において|…|は絶対値を表す。
上式(17)が成立するとき、ゲージ差分同期フェーザ群の対称性の破れたことを意味するので、その時刻での不変量の計算結果は以降の計算には用いられない。
[12.ゲージ差分有効同期フェーザの定義と計算式]
不変量の1つとして、ゲージ差分有効同期フェーザSDpを次式(C7)のように定義する。式(C7)の第1式に表3の実数群表の関連乗積を代入し、さらにαをα0と近似することによって、第2式が得られる。
[13.ゲージ差分無効同期フェーザの定義と計算式]
不変量の1つとして、ゲージ差分無効同期フェーザSDQを次式(C8)のように定義する。式(C8)の第1式に表3の実数群表の関連乗積を代入し、さらにαをα0と近似することによって、第2式が得られる。
[14.実数部、虚数部、位相角、および交流電圧振幅の計算式]
上記のゲージ差分有効同期フェーザSDpおよびゲージ差分無効同期フェーザSDQと、同期フェーザの定義とを用いることによって、同期フェーザ実数部vre、同期フェーザ虚数部vim、同期フェーザ位相角φ、および交流電圧振幅Vは、以下の式(C9)〜(C12)のように計算される。
ここで、上記の式(C9)〜(C12)において、fcは周波数係数(=cosα)である。式(C11)の同期フェーザ位相角φの範囲は−180度から+180度の間にある。
[15.入力波形の直流成分の算出]
ゲージ差分同期フェーザ群によって計算された上記の所量は、入力波形の直流成分を除いた交流量のみによって計算された値である。一方、入力電圧に含まれる直流成分は、ゲージ同期フェーザ群の中のゲージ電圧群を用いて計算することができる。
図4は、直流成分を含む場合の、複素平面上のゲージ電圧群を示す図である。図4を参照して、ゲージ電圧群を構成するの3個の電圧瞬時値を次式(C13)で表すことを仮定する。
ここに、vDCは直流成分、Vは交流電圧振幅、αは回転位相角、tは時間である。交流電圧振幅Vは、ゲージ差分同期フェーザ群を用いて上式(C12)に従って計算されたものである。上式(C13)を用いることによって、ゲージ電圧群の周波数係数fC(=cosα)の計算式として、次式(C14)が成立する。

上式(C14)により、直流電圧vDCは次式(C15)のように求められる。
[16.ゲージ対称群の不変量の平均化処理および停電判別について]
同期フェーザ位相角φは常に変化しているため、ゲージ差分有効同期フェーザおよびゲージ差分無効同期フェーザなど、位相角φを含む数式で表される同期フェーザ対称群の不変量も時間経過とともに常に変化している。したがって、これらの不変量については、単純な移動平均によって平均化の計算を行うことはできない。このため、不変量の平均化処理を行うための計算上の工夫が必要になる。以下、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の説明はゲージ有効同期フェーザおよびゲージ無効同期フェーザについても同様である。
図5は、複素平面上のゲージ差分同期フェーザ群の不変量の平均化処理の概念図である。図5を参照して、現時点のゲージ差分電圧群v2(t),v2(t−T),v2(t−2T)について計算した不変量と、現時点よりも1データ収集サンプリング周期(T1)だけ前のゲージ差分同期フェーザ群v2(t−T1),v2(t−T−T1),v2(t−2T−T1)について計算した不変量との平均化処理について説明する。
現時点の不変量を計算する際には、これまでの説明と同様に、図5において実線で表された6個の差分ベクトルから構成されるゲージ差分同期フェーザ群v2(t),v2(t−T),v2(t−2T),v20(t),v20(t−T),v20(t−2T)を用いて不変量(ゲージ差分有効同期フェーザおよびゲージ差分無効同期フェーザなど)を計算する。一方、現時点よりも1データ収集サンプリング周期(T1)だけ前の不変量を計算する際には、まず、ゲージ差分同期フェーザ単位群が1データ収集サンプリング周期(T1)だけ前のものv20(t−T1),v20(t−T−T1),v20(t−2T−T1)に変更される。このゲージ差分同期フェーザ単位群を用いて、すなわち、図5において破線で表されたゲージ差分同期フェーザ群v2(t−T1),v2(t−T−T1),v2(t−2T−T1),v20(t−T1),v20(t−T−T1),v20(t−2T−T1)を用いて不変量が計算される。
実線で表されたゲージ差分同期フェーザ群v2(t),v2(t−T),v2(t−2T),v20(t),v20(t−T),v20(t−2T)を、データ収集サンプリング周期T1に対応する位相角α1だけ反時計方向に回転すれば、破線で表されたゲージ差分同期フェーザ群v2(t−T1),v2(t−T−T1),v2(t−2T−T1),v20(t−T1),v20(t−T−T1),v20(t−2T−T1)に重なるので、各々の不変量がほぼ等しくなることは直感的に明らかと思われる。この結果、現時点の不変量と、現時点から1データサンプリング周期前の不変量との平均化処理が可能になる。
以上の方法を適用すれば、現時点までのN個の不変量(ゲージ差分有効同期フェーザおよびゲージ差分無効同期フェーザなど)の平均化処理も可能になる。ここで、電力系統の擾乱(定常状態からの乱れ)には、対称性の破れが生じているような比較的大きな擾乱と、対称性の破れが生じていないノイズのような比較的小さな擾乱との2種類があると考えられる。現時点までのN個の不変量の平均化処理においては、データ精度を確保するために、対称性の破れが生じている時点のデータは用いないようにし、対称性の破れが生じていないデータについてのみ平均化処理を行う。これによって、高調波ノイズの影響を低減させることができる。
このような平均化処理方法の大きなメリットは、電圧フリッカなどの影響で対称性の破れが生じたために、現時点の計算結果が利用できなくても、現時点よりも1データ収集サンプリング周期前までのデータを用いて平均化処理を行うことによって、現時点のデータを推定できる点にある。たとえば、現時点までのN個の不変量の平均化処理を行うために、ゲージ差分同期フェーザ群v2(t−k・T1),v2(t−T−k・T1),v2(t−2T−k・T1),v20(t−k・T1),v20(t−T−k・T1),v20(t−2T−k・T1)(ただし、k=0,1,2,…,N−1)について、不変量の計算を行ったとする。この場合、対称性の破れが生じたために、現時点(k=0)のデータを用いることができなくても、k=1,2,…,N−1のN−1個の不変量の計算結果を平均化することによって、現時点の不変量として用いることができる。
上記のように、対称性の破れが生じたために現時点のデータが使えない場合、同期フェーザ振幅、同期フェーザ周波数については、1データ収集サンプリング周期前のデータ(移動平均処理後のものでもよい)をそのまま使用すること(データをラッチするとも称する)が可能である。常時変化する同期フェーザ位相角については、上記の平均化処理を用いて推定されたゲージ差分有効同期フェーザおよびゲージ差分無効同期フェーザから算出する。これによって、同期フェーザ計算の連続性を保証することができるので、たとえば、電力系統のリアルタイム保護を安定的に行うことができる。
なお、上記で説明したの現時点までのN個の時点の平均化処理を行う場合において、全ての時点において対称性の破れが生じている場合には、停電と判別することができる。
以下、上記の平均化処理を、フローチャートを用いて総括的に説明する。下記の各ステップは、同期フェーザ測定装置を構成するコンピュータ(プロセッサ)が、メモリに格納されたソフトウェアを実行することによって実現される。
図6は、ゲージ対称群の不変量の平均化処理および停電判別を行うためのフローチャートである。図6を参照して、まず、平均化処理に用いる現時点までのN時点でのN個のゲージ差分同期フェーザ群を選択する(ステップS121)。連続する時点間の間隔はデータ収集サンプリング周期T1である。たとえば、N=3の場合、すなわち、現時点(k=0)の対称群、T1だけ前の時点(k=1)の対称群、および2×T1だけ前の時点(k=3)の対称群を含む3つの対称群は次式(D1)のように表される。
次に、コンピュータは、カウント数kおよび平均化処理総数NAVGを初期設定することによって計算を開始する(ステップS122)。具体的には、次式(D2)のように初期設定される。k=0のときが現時点に対応し、k=pは現時点よりp時点前を意味する。
次に、コンピュータは、第k番目(k=0,1,…,N−1;初期値はk=0)のゲージ差分同期フェーザ群の対称性指標を計算する(ステップS123)。具体的には、コンピュータは、前述の式(35)に従って、その第k番目のゲージ差分同期フェーザ群を構成する複数の要素の瞬時値から、対称性指標fCBRKを計算する。次に、コンピュータは、対称性が破れたか否か、すなわち、対称性指標fCBRKが1より大きいか否かを判定する(ステップS124)。
対称性が破れた場合(ステップS124でYES)、コンピュータは、その第k番目のゲージ差分同期フェーザ群を構成する複数の要素の瞬時値を用いた不変量計算を行わないこととし、平均化処理総数NAVGを1つ減らす(ステップS125)。すなわち、次式(D2)に示すように、NAVGにNAVG−1が代入される。
一方、対称性が破れていない場合(ステップS124でNO)、コンピュータは、その第k番目のゲージ差分同期フェーザ群を構成する複数の要素の瞬時値を用いて、前述の式(C7)および(C8)に従って、ゲージ差分有効同期フェーザ(ステップS126)およびゲージ差分無効同期フェーザ(ステップS127)を算出する。さらに、コンピュータは、その第k番目のゲージ差分同期フェーザ群に対応するゲージ電圧群を構成する複数の要素の瞬時値を用いて、前述の式(C15)に従って、直流成分vDCを算出する。
以上の計算は、カウント数kがN−1に達するまで(ステップS129でYES)、すなわち、最初に選択したN個のゲージ差分同期フェーザ群の全てについて、順次カウント数kをカウントアップしながら(ステップS130)繰り返される。
カウント数kがN−1に達したら、すなわち、選択した全てのゲージ差分同期フェーザ群について上記の計算が終了した結果(ステップS129でYES)、平均化処理総数NAVGが0の場合には(ステップS131でYES)、コンピュータは、電力系統は停電が発生したと判定して(ステップS132)処理を終了する。この場合は、全てのゲージ同期フェーザ群について対称性が破れていたことになる。停電は、少なくともN×T1前に発生していたことになる。
一方、平均化処理総数NAVGが0でない場合には(ステップS131でNO)、コンピュータは、算出したNAVG個のゲージ差分有効同期フェーザSDPの平均値SDPAVGを計算する(ステップS133)。計算式は次式(D4)による。式(D4)において、SDp(K)は、対称性の破れが生じていないNAVG個のゲージ差分同期フェーザ群のうち、第K番目(K=1,2,…,NAVG)の対称群を用いて計算されたゲージ差分有効同期フェーザSDPを意味する。
続いて、コンピュータは、算出したNAVG個のゲージ差分無効同期フェーザSDQの平均値SDQAVGを計算する(ステップS134)。計算式は次式(D5)による。式(D5)において、SDQ(K)は、対称性の破れが生じていないNAVG個のゲージ差分同期フェーザ群のうち、第K番目(K=1,2,…,NAVG)の対称群を用いて計算されたゲージ差分無効同期フェーザSDQを意味する。
続いて、コンピュータは、算出したNAVG個の直流成分vDCの平均値vDCAVGを計算する(ステップS135)。直流成分の平均値の計算式は次式(D6)による。式(D6)において、vDC(K)は、対称性の破れが生じていないNAVG個のゲージ差分同期フェーザ群のうち、第K番目(K=1,2,…,NAVG)の対称群を用いて計算された直流成分vDCを意味する。

以上によって、不変量の計算手順が終了する。
[17.電力およびインピーダンスの計算式]
上記の計算で得られた電圧の同期フェーザ実数部vre(式(C9)参照)および同期フェーザ虚数部vim(式(C10)参照)と、同様の計算によって得られる電流の同期フェーザ実数部ireおよび同期フェーザ虚数部iimとを用いて、電力とインピーダンスを計算する方法について説明する。以下の説明において、電圧同期フェーザおよび電流電気フェーザを次式(E1)のように定義する。
有効電力Pおよび無効電力Qは、定義により次式(E2)のように求められる。以下の式において、上付きの「*」は複素共役を表し、Re{…}は実数部を表し、Im{…}は虚数部を表す。
上式(E1)の電圧同期フェーザv(t)および電流同期フェーザi(t)の定義式から、インピーダンスZは次式(E3)によって計算することができ、抵抗分Rおよびリアクタンス分Xは次式(E4)によって計算することができる。
[18.空間同期フェーザの定義と計算式]
この明細書において空間同期フェーザとは、同時刻における二つのノード間の同期フェーザ位相角、もしくは、同時刻における2つのノード間の同期フェーザの位相差として定義される。空間同期フェーザの取り得る値は−180度から+180度の間にある。以下、図面を参照して空間同期フェーザの計算方法について説明する。
図7は、複素平面上の空間同期フェーザについて説明するための図である。同時刻における、ノード1の電圧同期フェーザv1(t)およびノード2の電圧同期フェーザv2(t)が次式(F1)のように与えられるものとする。次式(F1)において、V1、V2は同期フェーザ振幅である。一般に、電力系統の負荷と発電量は常に変動しているために、同時刻におけるノード1の角周波数ω1とノード2の角周波数ω2とは微妙に異なるものとなっている。
余弦定理によれば、ノード1とノード2との間の位相差である空間同期フェーザφSP(t)は次式(F2)で与えられる。次式(F2)において、V12はノード1とノード2との間の差分同期フェーザ振幅であり、ピタゴラスの定理によりその2乗は次式(F3)で与えられる。すなわち、空間同期フェーザφSP(t)は、電力系統の第1ノードおよび第2ノードの各々において同一サンプリング時刻に測定した電気量(電圧または電流)のフェーザ表示の実数部および虚数部の値と、余弦定理とを用いることによって計算される。次式(F2)および(F3)の定義によれば、空間同期フェーザφSP(t)の取り得る値は、0度から+180度である。
上記の計算方法と異なり、ノード1の同期フェーザ位相角φ1とノード2の同期フェーザ位相角φ2との差によって、空間同期フェーザを定義することも可能である(実際、本願発明者による特許文献1ではそのような定義が用いられている)。しかしながら、φ1とφ2との位相差として定義するよれも上式(F2)によって空間同期フェーザを計算した方が、誤差が少なく安定的に空間同期フェーザを求めることができる。
空間同期フェーザと各ノードのリアルタイム周波数とを利用して、電力系統安定度監視システムを構築することができる。具体的なシミュレーション例については、図36〜図44を用いて後述する。
[19.時間同期フェーザの定義と計算式]
この明細書において、時間同期フェーザは、現時点より指定期間TTPだけ前の時点から現時点までの間に同期フェーザが実際に回転した位相角の積算値として定義される。したがって、時間同期フェーザが取り得る値は0より大きい値(正数)である。本願発明者による特許文献1での定義と異なるので、注意が必要である。特許文献1では、時間同期フェーザは、現時点の同期フェーザ位相角と、現時点よりも指定期間だけ前の時点での同期フェーザ位相角との差分として定義されていた。この場合、時間同期フェーザの取り得る値は、−180度から+180度の間である。
図8は、複素平面上の時間同期フェーザについて説明するための図である。図8を参照して、時間同期フェーザφTP(t)は、次式(F4)によって定義される。次式(F4)において、φ(t)は現時点の同期フェーザ位相角、φ(t−TTP)は現時点よりも指定期間TTPだけ前の時点の同期フェーザ位相角、NTPは、指定期間TTP内に同期フェーザが回転するサイクル数である。
指定期間TTPは、次式(F5)に示すように、データ収集サンプリング周期T1の正の整数倍で表される。この正の整数をゲージサンプリング点数Ngと称する。
図9は、時間同期フェーザに対応するサイクル数NTPとゲージサンプリング点数Ngとの関係を示す図である。図9を参照して、データ収集サンプリング周波数を4000Hzとし、系統周波数を60Hzとしている。理論上は、図9の全てのゲージサンプリング点数Ngについて、実測された同期フェーザ位相角の差分(すなわち、φ(t)−φ(t−TTP))とサイクル数NTPとによって、時間同期フェーザφTPを計算することができるはずである。しかしながら、周波数が変動しているとき測定点も変動するために、サイクル数NTPにずれが生じる場合がある。そこで、電力系統の定格周波数に対応して、図9の階段状のステップの中間点(図9の点A,B,C)近傍でサイクル数を決定することが望ましい。表4は、時間同期フェーザのゲージサンプリング点数Ngとサイクル数NTPとの関係を示す表である。
図10は、同期フェーザ位相角と経過時間との関係を示す図である。図10を参照して、同期フェーザ位相角は、−180度から+180度の間で変化する。一方、時間同期フェーザは正の実数であり、時間経過とともに増加する。サイクル数NTPが異なれば、同じ同期フェーザ位相角φ(t),φ(t−TTP)に対して異なる時間同期フェーザφTPが得られる。図10の場合、サイクル数NTPは2であり、時間同期フェーザφTPは、φ(t)−φ(t−TTP)+4πで与えられる。
図11は、時間同期フェーザとゲージサンプリング点数との関係を示す図である。図11を参照して、データ収集サンプリング周波数を4000Hzとしている。同じゲージサンプリング点数Ngであっても、系統周波数が異なると時間同期フェーザφTP[deg]は異なる。図11では、系統周波数が65Hz、60Hz、および55Hzである場合の各々について、時間同期フェーザφTP[deg]とゲージサンプリング点数Ngでとの関係を示している。系統周波数が高いほど時間同期フェーザφTPは大きくなる。
[20.周波数および周波数変化率の計算式]
上記に従って算出された時間同期フェーザφTP(t)を用いて、周波数f(t)および周波数変化率ROCOF(rate of change of frequency)をそれぞれ次式(F6)および(F7)のように計算することができる。以下の式において、f(t)は現時点の周波数、f(t−TTP)は現時点よりも指定期間TTPだけ前の周波数である。f0は、電力系統の定格周波数または現時点から所定時間前の時点から現時点までの周波数測定結果の移動平均値である。
[21.仮想基準フェーザの設定と相差角の計算式]
以下に、一定の初期速度で回転している仮想基準フェーザを仮定し、現時点に測定した同期フェーザと仮想基準同期フェーザとの相差角を計算し、その相差角を用いて周波数および周波数変化率を計算する手法を提示する。相差角を用いることによって、図32、図33で後述するように高調波成分を確認することができ、また、図43で後述するように脱調を判定することができる。
図12は、複素平面上の同期フェーザと仮想基準フェーザとこれらの相差角とを示す図である。図12を参照して、現時点の同期フェーザv1(t)を次式(G1)で表す。次式(G1)において、v1、ω1、φ1は、それぞれ現時点の同期フェーザの振幅、角周波数、および初期位相角である。
現時点の仮想基準フェーザv0(t)を次式(G2)で表す。仮想基準フェーザは、ある時点の同期フェーザの振幅、角周波数、初期位相がその値で固定されたものとして定義される。次式(G2)において、v0、ω0、φ0は、それぞれ仮想基準フェーザの設定時に測定されてその測定値に固定された仮想基準フェーザの振幅、角周波数、初期位相角である。
相差角φd(t)は、現時点の同期フェーザv1(t)と仮想基準フェーザv0(t)との位相差であり、余弦定理を用いて次式(G3)のように定義することができる。式(G3)において、V10は、同期フェーザv1(t)と仮想基準フェーザv0(t)との差分によって得られる差分同期フェーザの振幅であり、その2乗は次式(G4)で表される。すなわち、相差角φd(t)は、複素平面内で一定の初期速度で回転している仮想基準フェーザの実数部および虚数部の値と、現サンプリング時刻における同期フェーザの実数部および虚数部の値と、余弦定理とを用いることによって計算される。次式(G3)および(G4)の定義式から、相差角φd(t)の取り得る値は、0度から+180度の間である。
仮想基準フェーザの定義によれば、入力信号の周波数が変化しない場合、相差角φdは零であることがわかる。入力信号の周波数が変化すると、相差角も変化する。周波数の変化率が大きいほど、相差角の大きさの変化率も大きくなる。周波数の変化分Δfは、相差角φd(t)を用いて、次式(G5)のように表すことができる。
式(G5)において、Tdは仮想基準フェーザの設定時から現時点までの経過時間である。sgnは+1か−1を表す符号であり、次式(G6)のように、時間同期フェーザφTP(t)が増加している場合に+1(加速)と定義され、時間同期フェーザφTP(t)が減少している場合に−1(減速)と定義される。
上式(G5)の周波数変化分Δfを用いることによって、現時点の周波数fは、仮想基準フェーザの周波数(回転速度)f0に周波数変化分Δfを加算することによって計算される(f=f0+Δf)。さらに、周波数変化率ROCOF(t)を次式(G7)のように求めることができる。
<実施の形態1>
実施の形態1では、電力系統に接続される、同期フェーザ測定装置100の構成および動作について説明する。上記で説明したように、同期フェーザの実数部、虚数部、位相角、振幅の算出に関して、ゲージ同期フェーザ群とゲージ差分同期フェーザ群とでは、同じ計算結果を得ることができる。しかしながら、後者のほうが、対称群を構成する全ての要素が差分ベクトルであるため、入力信号の直流成分の測定結果に対する影響を大幅に低減することができる。このため、以下の同期フェーザ測定装置100は、ゲージ差分同期フェーザ群を利用している。
図13は、同期フェーザ測定装置の構成を示すブロック図である。以下では、電圧同期フェーザの測定を主に説明するが、電流同期フェーザの測定についても同様に行うことができる。図13を参照して、同期フェーザ測定装置100は、電圧瞬時値データ入力部101と、演算処理部120と、演算情報送信部(および演算情報受信部)113と、インターフェース部114と、記憶部115と、GPS受信部116とを含む。
電圧瞬時値データ入力部101は、電圧変成器PTと接続され、電力系統から電圧情報を連続的に取得する。取得された電圧情報は、内蔵のA/D変換器によってデジタル信号変換され、最終的にデータ収集サンプリング周期T1ごとの時系列の電圧データが得られる。
演算処理部120は、CPU(Central Processing Unit)によって構成され、記憶部115に格納されたプログラムに従って動作することによって、各種の演算処理を行う。機能的にみると、演算処理部120は、不変量平均化処理部102と、同期フェーザの実数部計算部103と、同期フェーザの虚数部計算部104と、同期フェーザの位相角計算部105と、同期フェーザの振幅計算部と、空間同期フェーザ計算部107と、時間同期フェーザ計算部108と、周波数計算部109と、周波数変化率計算部110と、相差角計算部111と、ゲージ差分同期フェーザ単位群の回転位相角補正部112とを含む。これらの各機能部の動作については、次図14のフローチャートとともに説明する。
演算情報送信部(および演算情報受信部)113は、通信回線(不図示)を介して他の同期フェーザ測定装置(不図示)または中央監視システム(たとえば、図36の電力系統安定度監視システム201)との間で、たとえば、演算処理部120での計算結果の送受信を行う。
インターフェース部114は、ユーザインターフェースまたは外部装置との間の接続のために設けられている。記憶部115は、入力された電圧瞬時値データおよび上記の計算結果などを格納する。GPS受信部は、時刻同期のためにGPS衛星から時刻同期信号を受信する。なお、時刻同期の方法はGPSに限らず、たとえば、中央監視システムから通信回線を介して時刻同期信号が各同期フェーザ測定装置に送信されるようにしてもよい。
図14は、同期フェーザの測定手順を示すフローチャートである。図13および図14を参照して、まず、電圧瞬時値データ入力部101は、電力系統から電圧瞬時値を取得する(ステップS101)。取得された電圧瞬時値は、時系列のデジタルデータに変換される。
次に、不変量平均化処理部102は、図6で説明したフローチャートに従って、ゲージ差分有効同期フェーザの平均値、ゲージ差分無効同期フェーザの平均値、および直流成分の平均値を算出する(ステップS102)。
次に、同期フェーザの実数部計算部103は、前述の式(38)に従って、同期フェーザの実数部を計算する(ステップS103)。虚数部計算部104は、前述の式(39)に従って、同期フェーザの虚数部を計算する(ステップS104)。位相角計算部は、前述の式(39)に従って、同期フェーザの位相角を計算する(ステップS105)。なお、同期フェーザは反時計まわり複素平面上で回転し、同期フェーザの位相角の変化範囲は−180度から+180度である。さらに、振幅計算部106は、前述の式(41)に従って、同期フェーザ振幅を計算する(ステップS106)。こられのステップS103からS106の演算はどのような順序で行っても構わない。
次に、時間同期フェーザ計算部108は、前述の式(83)に従って、時間同期フェーザを計算する(ステップS107)。周波数計算部109は、上記の式(85)に従って、基本波周波数を計算する(ステップS108)。周波数変化率計算部110は、前述の式(86)に従って、周波数変化率を計算する(ステップS109)。
次に、相差角計算部111は、前述の式(92)に従って相差角を計算し、前述の式(94)に従って周波数の変化分を計算し、前述の式(96)に従って周波数変化率を計算する(ステップS110)。
次に、回転位相角補正部112は、ゲージ差分同期フェーザ単位群の回転位相角α0を補正する(ステップS111)。具体的には、以下の手順に従う。まず、回転位相角補正部112は、次式(H1)に従って、現時点までのM時点で計算されたM個の周波数の移動平均を行う。次式(H1)において、Mは指定された移動平均個数、T1はデータ収集サンプリング周期である。
回転位相角α0は、上記の周波数の平均値f0(t)とゲージサンプリング周波数fgを用いて、以下の式(H2)によって求められる。
次に、演算情報送信部113は、算出された同期フェーザに関する情報を送信し、広域保護制御システムに利用する(ステップS112)。なお、空間同期フェーザを計算する場合には、演算情報受信部113は、他の同期フェーザ測定装置から算出された同期フェーザに関する情報を受信する。次のステップS113において、空間同期フェーザ計算部107は、前述の式(F2)に従って空間同期フェーザを算出する。
同期フェーザの計算を終了しない場合は(ステップS114でNO)、ステップS101に戻り、上記の計算がデータ収集サンプリング周期T1ごとに繰り返される。
<実施の形態2>
実施の形態2では、パルス生成装置について説明する。電子回路の分野では一定の幅を持った矩形波のことをパルスといい、クロック信号や同期信号に使われる。矩形波は数学的には複数の周波数の正弦波の重ね合わせとして表現される(いわゆるフーリエ解析)。ここで、提案するパルス生成装置は、入力された信号波形(基本波が主体であるが、高調波成分および直流成分を含んでいる)のうち、基本波の半波を生成する(入力された基本波の周波数および振幅を高精度に再生する)ものである。
図15は、パルス生成装置の構成を示すブロック図である。図15を参照して、パルス生成装置400は、正弦波入力部401と、パルス生成部としての正半波生成部402と、指定出力指令部403と、パルス出力部404とを含む。各構成要素の動作は、次図16のフローチャートとともに説明する。
図16は、図15のパルス生成装置の動作を示すフローチャートである。図15および図16を参照して、正弦波入力部401は、たとえば、電力系統から交流電圧または交流電流の入力を受ける(ステップS401)。入力された交流電圧および交流電流は、基本波が主体であるが、高調波成分および直流成分を含んでいる。
次に、正半波生成部402は、入力された交流電圧および交流電流の基本波と同じ周波数および同じ振幅を有する正半波(正弦波のプラス側の半波という意味で、正半波と称する)を生成する(ステップS402)。具体的には以下の方法による。以下では、交流電流が入力された場合について説明しているが、交流電圧の場合も同様である。
図17は、正半波の生成方法について説明するための図である。図17には、複素平面上で直流成分iDCがある場合の電流フェーザi1(t)およびi1(t−T)が示されている。図17において、Iは電流振幅、αはゲージ回転位相角、iDCは正半波出力電流である。電流フェーザi1(t)およびi1(t−T)の瞬時値i11およびi12は以下の式(I1)で表される。
上式(I1)の時間変数tを消去するように変形することによって、次の正半波出力式(I2)が得られる。次式(I2)において、fCは周波数係数である。周波数係数fCおよび電流振幅Iは、ゲージ差分同期フェーザ群を用いて、すなわち、前述の(C5)および(C12)に従って(ただし、電圧を電流に置き換えることによって)計算される。
別法として、入力された交流電圧または交流電流がほとんど基本波のみによって生成されている場合には、入力された正弦波の正半波をそのまま出力してもよい。出力条件は、入力信号の同期フェーザ位相角φ(t)を用いて以下の式(I3)で与えられる。
再び、図15および図16を参照して、指定出力指令部403は、次式(I4)に従って、パルス出力の指定出力指令時間を計算する(ステップS403)。
ここに、Tpulseは指定のパルス出力間隔時間、T0は入力信号周期、Toutputは指定出力指令時間である。図18は、上記の出力指令時間計算の概念を説明するための図である。パルス出力間隔時間Tpulseを指定することによって、指定出力指令部403は、前回のパルス出力から指定出力指令時間Toutputの経過後に次のパルスの出力を指令する。
次に、パルス出力部404は、指定出力指令部403からのパルスの出力指令を受けると、正半波生成部402で生成されたパルス信号を出力する(ステップS404)。パルス出力の終了指令を受けていない場合には(ステップS405でNO)、上記のステップS401からS404が繰り返される。
<実施の形態3>
実施の形態3では、上記の手法による周波数及び周波数変化率の計算をシミュレーションによって検証した事例(ケース1)について説明する。具体的に、ケース1では、入力信号が正弦波で、指定の時間から、一定の比率で周波数を変化していくシミュレーションを行った。ケース1のパラメータを表5に示す。

ケース1の入力信号は次式で表される。

以下シミュレーション結果について説明する。
図19は、ケース1における電圧瞬時値と交流振幅の測定結果とを示す図である。図19に示すように、0.1秒までは、周波数が60Hzの定常値である。その後、毎秒0.5Hzの速度で周波数が増加していく。提案した同期フェーザ測定手法で計算された同期フェーザ振幅が理論値と一致していることがわかる。
図20は、ケース1における理論周波数と測定周波数波形とを示す図である。時間同期フェーザ法と仮想基準フェーザ法により計算され周波数は、ともに高速に理論周波数の変動に追随し、高い精度で周波数が測定されていることが実証されている。
図21は、ケース1における周波数変化率の測定結果を示す図である。時間同期フェーザ法と仮想基準フェーザ法により計算され周波数変化率は、ともに高速に理論周波数変化率の変動に追随し、高い精度の周波数が測定されていることが実証されている。なお、時間同期フェーザ法により計測結果は、周波数が急激に変化する前後において、過渡的ではあるが、比較的な大きな測定誤差がある。
<実施の形態4>
実施の形態4では、実測された入力データを用いて、各種の提案手法を検証した5個の事例(ケース2)を説明する。ケース2の実測例のパラメータを表6に示す。
図22は、ケース2の実測例における実測電圧波形図である。図22には、データ収集サンプリング周波数4000Hzで3秒間の検出した実測電圧波形が示されている。電圧波形の振幅の高さが揃っていないため、このデータは豊富な高調波成分を含んでいることがわかる。
図23は、図22の0.1秒間の区間の拡大図である。図23に示す0.1秒の区間の拡大図を観察するときれいな正弦波に見えるが、振幅の高さが微妙に異なっていることがわかる。
図24は、ケース2の実測例における実測電圧波形を、4000Hzのサンプリング周波数で3秒間検出したときのフーリエ変換スペクトルの測定結果を示す図である。図24には、420Hzまでの拡大図が示されている。このフーリエ変換結果から、実測データは、豊富な高調波成分を有していることがわかる。
[ケース2の実測例の検証1]
以下、対称性破れにより時間同期フェーザに不連続が生じた場合の測定結果について説明する。
図25は、ケース2の実測例の検証1として、同期フェーザ位相角の測定結果を示す図である。図25を参照して、対称群1個のみを用いて不変量の平均化処理を行わない場合の位相角の測定結果を三角印で示す。0.0245秒付近で対称性が破れたため、同期フェーザ位相角の値が急変したことがわかる。このため、計算結果の連続性が維持できなくなっている。
一方、対称群10個を用いて不変量の平均化処理を行った場合の位相角の計算結果を四角印で示す。0.0245秒付近で対称性が破れた場合でも、同期フェーザ位相角に急変がなく、計算結果の連続性が維持できていることがわかる。
図26は、ケース2の実測例の検証1における同期フェーザ実数部の測定結果を示す図である。図26を参照して、対称群1個のみを用いて不変量の平均化処理を行わない場合の同期フェーザ実数部の測定結果を三角印で示す。0.0245秒付近で対称性が破れたため、同期フェーザ実数部の値が急変したことがわかる。このため、計算結果の連続性が維持できなくなっている。
一方、対称群10個を用いて不変量の平均化処理を行った場合の同期フェーザ実数部の計算結果を四角印で示す。0.0245秒付近で対称性が破れた場合でも、同期フェーザ実数部に急変がなく、計算結果の連続性が維持できていることがわかる。
なお、比較のため、実測電圧瞬時値を丸印で表示する。高調波成分の影響で、純粋な正弦波である四角印の同期フェーザ実数部の曲線から離れていることがわかる。
図27は、ケース2の実測例の検証1として、時間同期フェーザの測定結果を示す図である。図27を参照して、対称群1個のみを用いて不変量の平均化処理を行わない場合の時間同期フェーザの測定結果を三角印で示す。0.0245秒付近および0.041秒付近で対称性が破れたため、時間同期フェーザの値が急変したことがわかる。このため、計算結果の連続性が維持できなくなっている。
一方、対称群10個を用いて不変量の平均化処理を行った場合の時間同期フェーザの計算結果を四角印で示す。0.0245秒付近および0.041秒付近で対称性が破れた場合でも、同期フェーザ実数部に急変がなく、計算結果の連続性が維持できていることがわかる。さらに、不変量の平均化処理を行うことによって、時間同期フェーザの変動幅が小さくなっていることがわかる。
[ケース2の実測例の検証2]
以下、ケース2の実測例において、平均化処理の時間幅の長さを変更した例について説明する。
図28は、ケース2の実測例の検証2として、電圧振幅の測定結果を示す図である。図28を参照して、60個の対称群を用いて不変量の平均化処理を行った場合は、12個の対称群を用いて不変量の平均化処理を行った場合に比べて、電圧振幅の変動幅が小さくなっていることがわかる。
図29は、ケース2の実測例の検証2として、時間同期フェーザの測定結果を示す図である。図29を参照して、60個の対称群を用いて不変量の平均化処理を行った場合は、12個の対称群を用いて不変量の平均化処理を行った場合に比べて、時間同期フェーザの変動幅が小さくなっていることがわかる。
[ケース2の実測例の検証3]
以下、ケース2の実測例において、時間同期フェーザの指定期間(すなわち、サイクル数)を変更した例について説明する。
図30は、ケース2の実測例の検証3として、平均周波数の測定結果を示す図である。図30を参照して、時間同期フェーザの指定期間が3サイクルの場合の平均周波数の測定結果は、時間同期フェーザの指定期間が1サイクルの場合の平均周波数の測定結果よりも変動幅が小さくなっていることが確認できる。
図31は、ケース2の実測例の検証3として、周波数変化率の測定結果を示す図である。図31を参照して、時間同期フェーザの指定期間が10サイクルの場合の周波数変化率の測定結果は、時間同期フェーザの指定期間が3サイクルの場合の周波数変化率の測定結果よりも変動幅が小さくなっていることが確認できる。
[ケース2の実測例の検証4]
以下、ケース2の実測例において、仮想基準フェーザを用いて相差角を測定した例について説明する。
図32は、ケース2の実測例の検証4として、相差角の測定結果を示す図である。図33は、図32の拡大図である。図32および図33を参照して、実測データのデータ収集サンプリング周波数は4000Hzである。電力系統の中に2000Hz以上の高調波成分が含まれているため、相差角を確定できなくなった結果、相差角が振動していることがわかる。電圧フリッカが発生する原因は高い周波数高調波成分によるものであることがわかる。
[ケース2の実測例の検証5]
以下、ケース2の実測例において、電力系統の波形を利用して正半波パルスを生成した結果について説明する。
図34は、ケース2の実測例の検証5として、パルス生成結果を示す図である。図35は、図34の拡大図である。図34および図35において、定格周波数を60Hzとし、データ収集サンプリング周波数を4000Hzとした。図22から図24で説明した電力系統で実測した交流信号を用いて、パルス間隔0.5秒の正弦波の正半波パルスを生成した。上記の計測結果からわかるように、使用した電力系統の入力データが豊富な高調波成分を含まれているにもかかわらず、フィルタなどを一切用いずに、基本波のみのパルス出力を実現できていることがわかる。
<実施の形態5>
実施の形態5では、電気学会のEAST10と呼ばれる電力系統の標準モデルを用いたシミュレーション結果について説明する。
図36は、電気学会のEAST10電力系統モデルの構成図である。図36に示すようにモデル電力系統には、発電機G1〜G10、同期フェーザ測定装置PMU、および電力系統安定度監視システム201が設けられている。電力系統安定度監視システム201は、コンピュータをベースに構成され、各同期フェーザ測定装置PMUと通信を行うことによって同期フェーザの測定結果を取得し、取得した測定結果に基づいて電力系統の安定度を判定する。さらに、ノード(21)には、実施の形態6で説明する三相不平衡電気量測定装置が接続されれている。
図37は、図36の電力系統安定度監視システムによる演算手順を示すフローチャートである。
図36および図37を参照して、まず、電力系統安定度監視システム201は、各PMUの同期フェーザ情報を受信する(ステップS201)。次に、電力系統安定度監視システム201は、全電力系統の空間同期フェーザを計算する(ステップS202)。次に、電力系統安定度監視システム201は、計算した空間同期フェーザの結果を三次元図で表示する(ステップS203)。次に、電力系統安定度監視システム201は、整定値と比較することによって脱調が生じていないか判定し、脱調が生じていると判定した場合には警報を出す(ステップS204)。終了指令を受けていない場合には(ステップS205でNO)、上記のステップS201〜S204が繰り返される。
[ケース3:系統事故のシミュレーション結果]
ケース3として、EAST10電力系統モデルについてのシミュレーションの結果を示す。表3にシミュレーションのパラメータを示す。以下では、発電機G1〜G10の複数の空間同期フェーザの測定結果が三次元図により示される。
図38は、ケース3において、発電機G1の内部位相角のシミュレーション結果を示すずである。図38を参照して、位相角が初期値から増加し、発電機G1が次第に脱調していくことが確認できる。
図39は、ケース3の検証1として、故障前の複数の空間同期フェーザの測定結果を示す三次元図である。図39を参照して、故障前には、電力系統内の全ての空間同期フェーザが一定の範囲内で変動していることが確認できる。
図40は、ケース3の検証1として、発電機G1の脱調直前において複数の空間同期フェーザの測定結果を示す三次元図である。図40を参照して、発電機G1が脱調する直前には、発電機G1の出力ノードと他の発電機の出力ノードとの間の空間同期フェーザが大きくなっていることがわかる。
図41は、ケース3の検証1として、発電機G1の脱調直後において複数の空間同期フェーザの測定結果を示す三次元図である。図41を参照して、発電機G1が脱調した直後に、発電機G1の出力ノードと他の発電機の出力ノード間の空間同期フェーザが反転し、脱調したことがわかる。
図42は、ケース3の検証2として、ノード(11)およびノード(21)の正相電圧の瞬時値波形を示す図である。図42を参照して、時刻1秒の時点から故障が発生していることがわかる。
図43は、ケース3の検証2として、ノード(11)およびノード(21)における相差角の測定結果を示す図である。図43を参照して、ノード(11)はA点(時刻1.65秒付近)において相差角が180度になって脱調に至り、ノード(21)はC点(時刻2.05秒付近)において相差角が180度になって脱調に至ったことがわかる。ノード(11)はD点において2回目の脱調になっている。
図44は、ケース3検証2として、ノード(11)とノード(21)との間の空間同期フェーザの測定結果を示す図である。図44を参照して、時刻1.8秒付近で、ノード(11)とノード(21)との間の位相差が180度に達したことがわかる。
<実施の形態6>
実施の形態6では、図36の三相不平衡電気量測定装置301を用いた測定結果について説明する。三相不平衡電気量測定装置301は、これまで説明した同期フェーザ測定装置の機能を拡張したものである。
[三相不平衡電気量測定装置の構成と動作]
図45は、三相不平衡電気量測定装置の構成を示すブロック図である。図45を参照して、三相不平衡電気量測定装置301は、瞬時値データ入力部302と、演算処理部313と、演算情報送信部310と、インターフェース部311と、記憶部312とを含む。
瞬時値データ入力部302は、電力系統の三相送電線に接続された電圧変成器PTおよび電流変成器CTから、A相/B相/C相の電圧電流瞬時値データの入力を受ける。
演算処理部313は、CPUによって構成され、記憶部312に格納されたプログラムに従って動作することによって、各種の演算処理を行う。機能的にみると、演算処理部313は、A相/B相/C相の電圧同期フェーザ計算部303と、正相/逆相/零相の電圧同期フェーザ計算部304と、A相/B相/C相の電流同期フェーザ計算部305と、正相/逆相/零相の電流同期フェーザ計算部306と、正相/逆相/零相の有効電力計算部307と、正相/逆相/零相の無効電力計算部308と、正相/逆相/零相の力率計算部309とを含む。これらの各機能部の動作については、次図46のフローチャートとともに説明する。
演算情報送信部(および演算情報受信部)310は、通信回線(不図示)を介して他の同期フェーザ測定装置(不図示)または図36の電力系統安定度監視システム201との間で、たとえば、演算処理部313での計算結果の送受信を行う。
インターフェース部311は、ユーザインターフェースまたは外部装置との間の接続のために設けられている。記憶部312は、入力された電圧瞬時値データおよび上記の計算結果などを格納する。
図46は、三相不平衡電気量測定装置の演算処理手順を示すフローチャートである。まず、瞬時値データ入力部302には、次式(K1)で示されるA相/B相/C相の電圧の瞬時値データ(A相瞬時値電圧:vAre、B相瞬時値電圧:vBre、C相瞬時値電圧vCre)が入力される(ステップS301)。次式(K1)において、VA,VB,VCはそれぞれA相、B相、C相の電圧振幅であり、φVA,φVB,φVCはそれぞれA相、B相、C相電圧初期位相角である。
同様に、瞬時値データ入力部302には、次式(K2)で示されるA相/B相/C相の電流の瞬時値データ(A相瞬時値電流:iAre、B相瞬時値電流:iBre、C相瞬時値電流iCre)が入力される(ステップS301)。次式(K2)において、IA,IB,ICはそれぞれA相、B相、C相の電流振幅であり、φIA,φIB,φICはそれぞれA相、B相、C相電流初期位相角である。
次に、電圧同期フェーザ計算部303は、A相/B相/C相の電圧同期フェーザを計算する(ステップS302)。A相/B相/C相の電圧同期フェーザvA,vB,vCは次式(K3)に従って計算される。
なお、上式(K3)で用いられるA相電圧同期フェーザの実数部vAre、虚数部vAim、振幅VAおよび位相角φVAは、既に説明したように次式(K4)に従って計算される。式(K4)において、SDVAP、SDVAQ、およびfCは、A相電圧のゲージ差分有効同期フェーザ、A相電圧のゲージ差分無効同期フェーザ、および周波数係数である。
B相電圧同期フェーザの実数部vBre、虚数部vBim、振幅VB、および位相角φVB、ならびにC相電圧同期フェーザの実数部vCre、虚数部vCim、振幅VC、および位相角φVCは、上記と同様の公式を利用して計算することができる。具体的に、A相電圧のゲージ差分有効同期フェーザSDVAPおよびゲージ差分無効同期フェーザSDVAQに代えて、B相の場合にはB相電圧のゲージ差分有効同期フェーザSDVBPおよびゲージ差分無効同期フェーザSDVBQを用い、C相電圧の場合にはC相電圧のゲージ差分有効同期フェーザSDVCPおよびゲージ差分無効同期フェーザSDVCQを用いる。
次に、電圧同期フェーザ計算部304は、正相/逆相/零相の電圧同期フェーザを計算する(ステップS303)。正相/逆相/零相の電圧同期フェーザv0,v1,v2は次式(K5)のようにA相/B相/C相の電圧同期フェーザvA,vB,vCを座標変換することによって計算される。式(K5)における対称座標変換係数は次式(K6)で表される。
次に、電流同期フェーザ計算部305は、A相/B相/C相の電流同期フェーザを計算する(ステップS304)。A相/B相/C相の電流同期フェーザiA,iB,iCは次式(K7)に従って計算される。
なお、上式(K7)で用いられるA相電流同期フェーザの実数部iAre、虚数部iAim、振幅IAおよび位相角φIAは、既に説明したように次式(K8)に従って計算される。式(K8)において、SDIAP、SDIAQ、およびfCは、A相電流のゲージ差分有効同期フェーザ、A相電流のゲージ差分無効同期フェーザ、および周波数係数である。
B相電流同期フェーザの実数部iBre、虚数部iBim、振幅IB、および位相角φIB、ならびにC相電流同期フェーザの実数部iCre、虚数部iCim、振幅IC、および位相角φICは、上記と同様の公式を利用して計算することができる。具体的にB相の場合は、B相電流のゲージ差分有効同期フェーザSDIBPおよびゲージ差分無効同期フェーザSDIBQを用い、C相電流の場合は、C相電流のゲージ差分有効同期フェーザSDICPおよびゲージ差分無効同期フェーザSDICQを用いる。
次に、電流同期フェーザ計算部306は、正相/逆相/零相の電流同期フェーザを計算する(ステップS305)。正相/逆相/零相の電流同期フェーザi0,i1,i2は次式(K9)のようにA相/B相/C相の電流同期フェーザiA,iB,iCを座標変換することによって計算される。式(K9)における対称座標変換係数は前述の式(K6)で表される。
次に、有効電力計算部307は正相/逆相/零相の有効電力P0,P1,P2を計算し(ステップS306)、無効電力計算部308は正相/逆相/零相の無効電力Q0,Q1,Q2を計算する(ステップS308)。正相/逆相/零相の有効電力P0,P1,P2は次式(K10)に従って計算され、正相/逆相/零相の無効電力Q0,Q1,Q2は次式(K11)に従って計算される。
次に、力率計算部309は、算出した有効電力P0,P1,P2および無効電力Q0,Q1,Q2に基づいて、正相/逆相/零相の力率PF0,PF1,PF2を計算する(ステップS308)。正相/逆相/零相の力率PF0,PF1,PF2は、次式(K12)に従って計算される。
その後、終了指令が無ければ(ステップS309でNO)、上記のステップS301〜S308が繰り返される。
[ケース4:三相不平衡電気量測定のシミュレーション例]
ケース4として、図36のEAST10電力系統モデルについて三相不平衡電気量の測定を行った結果について説明する。表8にケース4のシミュレーションで用いたパラメータを示す。三相不平衡電気量の測定は、図36、図45、および図46で説明した三相不平衡電気量測定装置301によって行われる。従来の一般的な方法では、基本波を計算するためにαβ変更およびdq変換等の座標変換が必要であったが、本開示の対称群を用いた方法ではそのようなぜひょう変換を必要としない。
図47は、ケース4において、A相電圧瞬時値とA相電圧同期フェーザの実数部および振幅の測定結果とを示す図である。図47を参照して、A相電圧瞬時値のグラフを三角印で示し、A相電圧同期フェーザの実数部のグラフを四角印で示し、A相電圧同期フェーザの振幅のグラフを実線(印無し)で示している。図の時間が0.1秒のときに電力系統に故障が発生し、0.2秒のとき定常状態に復帰(故障がクリア)している。
図47に示すように、A相電圧瞬時値は、故障発生の前後および故障がクリアする前後において、大きな急変があることが確認できる。A相電圧同期フェーザの実数部は、定常状態においてA相電圧瞬時値と重なっているが、故障発生直後および故障クリア直後において緩やかな変化をしており、A相電圧瞬時値のように急変していない。この理由は、同期フェーザの測定結果に平均化処理を施しているためであり、平均化処理においては、電圧急変によって対称群の対称性が破れた場合には、その対称性の破れた時刻の計測値は平均化処理に用いられないからである。A相電圧同期フェーザの振幅はA相電圧同期フェーザの実数部の包絡線であることが確認できる。
図48は、ケース4において、A相電圧同期フェーザの測定結果を複素平面上に示した図である。図48に示すように、A相電圧同期フェーザは、安定状態において円ベクトルとして円周上を回転し、過渡状態において、スパイラルベクトル状に変化していることがわかる。
図49は、ケース4において、A相電圧同期フェーザの位相角の測定結果を示す図である。A相電圧同期フェーザの位相角は、−180度から+180度の範囲で周期的に一様に変化していることがわかる。
図50は、ケース4において、正相電圧同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。図50において、正相電圧同期フェーザの実数部のグラフは三角印で示し、正相電圧同期フェーザの振幅は細い実線で示し、正相電圧の振幅の理論値を太い実線で示している。
図50に示すように、正相電圧同期フェーザの振幅は、定常状態において、正相電圧の振幅の理論値と一致し一定の値を有する。一方、正相電圧同期フェーザの振幅は、故障発生直後および故障クリア直後の過渡状態において緩やかに変化し、正相電圧振幅の理論値のように急変せず、理論値に対して一定の遅れがあることがわかる。
図51は、ケース4において、逆相電圧同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。図51において、逆相電圧同期フェーザの実数部のグラフは三角印で示し、逆相電圧同期フェーザの振幅は細い実線で示し、逆相電圧の振幅の理論値は太い実線で示している。
図51に示すように、逆相電圧同期フェーザの振幅は、定常状態において零であり、逆相電圧の振幅の理論値と一致する。一方、逆相電圧同期フェーザの振幅は、故障発生直後および故障クリア直後の過渡状態において緩やかに変化し、逆相電圧振幅の理論値のように急変せず、理論値に対して一定の遅れがあることがわかる。
図52は、ケース4において、零相電圧同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。図52において、零相電圧同期フェーザの実数部のグラフは三角印で示し、零相電圧同期フェーザの振幅は細い実線で示し、零相電圧の振幅の理論値は太い実線で示している。
図52に示すように、零相電圧同期フェーザの振幅は、定常状態において零であり、零相電圧の振幅の理論値と一致する。一方、零相電圧同期フェーザの振幅は、故障発生直後および故障クリア直後の過渡状態において緩やかに変化し、零相電圧振幅の理論値のように急変せず、理論値に対して一定の遅れがあることがわかる。
図53は、ケース4において正相電流同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。正相電流同期フェーザの実数部のグラフは三角印で示し、正相電流同期フェーザの振幅は細い実線で示し、正相電流の振幅の理論値を太い実線で示している。
図53に示すように、正相電流同期フェーザの振幅は、定常状態において、正相電流の振幅の理論値と一致し一定の値を有する。一方、正相電流同期フェーザの振幅は、故障発生直後および故障クリア直後の過渡状態において緩やかに変化し、正相電流振幅の理論値のように急変せず、理論値に対して一定の遅れがあることがわかる。
図54は、ケース4において、逆相電流同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。図54において、逆相電流同期フェーザの実数部のグラフは三角印で示し、逆相電流同期フェーザの振幅は細い実線で示し、逆相電流の振幅の理論値は太い実線で示している。
図54に示すように、逆相電流同期フェーザの振幅は、定常状態において零であり、逆相電流の振幅の理論値と一致する。一方、逆相電流同期フェーザの振幅は、故障発生直後および故障クリア直後の過渡状態において緩やかに変化し、逆相電流振幅の理論値のように急変せず、理論値に対して一定の遅れがあることがわかる。
図55は、ケース4において、零相電流同期フェーザの実数部と振幅の測定結果を示す図である。図55において、零相電流同期フェーザの実数部のグラフは三角印で示し、零相電流同期フェーザの振幅は細い実線で示し、零相電流の振幅の理論値は太い実線で示している。
図55に示すように、零相電流同期フェーザの振幅は、定常状態において零であり、零相電流の振幅の理論値と一致する。一方、零相電流同期フェーザの振幅は、故障発生直後および故障クリア直後の過渡状態において緩やかに変化し、零相電流振幅の理論値のように急変せず、理論値に対して一定の遅れがあることがわかる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 同期フェーザ測定装置、101 電圧瞬時値データ入力部、102 不変量平均化処理部、103 実数部計算部、104 虚数部計算部、105 位相角計算部、106 振幅計算部、107 空間同期フェーザ計算部、108 時間同期フェーザ計算部、109 周波数計算部、110 周波数変化率計算部、111 相差角計算部、112 回転位相角補正部、113,310 演算情報送信部(演算情報受信部)、114,311 インターフェース部、115,312 記憶部、120,313 演算処理部、201 電力系統安定度監視システム、301 三相不平衡電気量測定装置、302 瞬時値データ入力部、303,304 電圧同期フェーザ計算部、305,306 電流同期フェーザ計算部、307 有効電力計算部、308 無効電力計算部、309 力率計算部、400 パルス生成装置、401 正弦波入力部、402 正半波生成部、403 指定出力指令部、404 パルス出力部、SAQ ゲージ無効同期フェーザ、SAp ゲージ有効同期フェーザ、SDP ゲージ差分有効同期フェーザ、SDQ ゲージ差分無効同期フェーザ、T,Tg ゲージサンプリング周期、T1 データ収集サンプリング周期、f,fg ゲージサンプリング周波数、iim,vim 同期フェーザ虚数部、ire,vre 同期フェーザ実数部。

Claims (10)

  1. 電力系統の電気量を第1周期T1ごとにサンプリングした瞬時値データが入力される入力部と、
    演算処理部とを備え、
    前記演算処理部は、前記瞬時値データの中から前記第1周期T1よりも大きい第2周期Tごとに抽出した、現サンプリング時刻tから連続する3点の第1データv11(t),v12(t−T),v13(t−2T)と、前記電気量をフェーザ表示したときの複素平面上で前記第2周期ずつ隔てて並ぶ3個の固定された単位ベクトル群の実数部v101,v102,v103とから、次式(L1)に従って周波数係数fCを算出し、

    前記演算処理部は、周波数係数fCの絶対値が1未満の場合に、次式(L2)で表されるゲージ有効同期フェーザSApおよび次式(L3)で表されるゲージ無効同期フェーザSAqを算出し、

    前記演算処理部は、ゲージ有効同期フェーザSApおよびゲージ無効同期フェーザSAqの平均化処理を行うために、k=1からk=N−1(Nは2以上の整数)までの各kに対して、現サンプリング時刻tから第1周期T1のk倍前のサンプリング時刻における前記第1データv11(t−k・T1),v12(t−T−k・T1),v13(t−2T−k・T1)と、前記単位ベクトル群を前記複素平面上で時計方向に時間k・T1に対応する角度だけ回転させたときの実数部v101,v102,v103とから、上式(L1)に従って周波数係数fCを算出し、算出された周波数係数fCの絶対値が1未満の場合に、上式(L2)で表されるゲージ有効同期フェーザSApおよび上式(L3)で表されるゲージ無効同期フェーザSAqを算出し、
    前記演算処理部は、現サンプリング時刻までで算出したゲージ有効同期フェーザSApおよびゲージ無効同期フェーザSAqを平均し、平均化されたゲージ有効同期フェーザSApおよびゲージ無効同期フェーザSAqを用いて、現サンプリング時刻での前記電気量のフェーザ量を決定する、同期フェーザ測定装置。
  2. 前記電気量のフェーザ表示での実数部vre、虚数部vim、および位相角φは、平均化されたゲージ有効同期フェーザSAp、ゲージ無効同期フェーザSAq、および周波数係数fCとを用いて、次式(L4)〜(L6)に従って算出される、

    請求項1に記載の同期フェーザ測定装置。
  3. 電力系統の電気量を第1周期T1ごとにサンプリングした瞬時値データが入力される入力部と、
    演算処理部とを備え、
    前記演算処理部は、前記瞬時値データの中から前記第1周期T1よりも大きい第2周期Tごとに抽出した、現サンプリング時刻tから連続する4点の第1データを用いて、前記第1データの隣接する2点間の差分によって得られる連続する3点の第2データv21(t),v22(t−T),v23(t−2T)を求め、
    前記演算処理部は、前記電気量をフェーザ表示したときの複素平面上で前記第2周期Tずつ隔てて並ぶ4個の固定された単位ベクトル群を用いて、前記単位ベクトル群の隣接する2ベクトル間の差分によって得られる3個の差分ベクトルの実数部v201,v202,v203を求め、
    前記演算処理部は、前記3点の第2データv21(t),v22(t−T),v23(t−2T)と、前記3個の差分ベクトルの実数部v201,v202,v203とから、次式(L7)に従って周波数係数fCを算出し、

    前記演算処理部は、周波数係数fCの絶対値が1未満の場合に、次式(L8)で表されるゲージ差分有効同期フェーザSDpおよび次式(L9)で表されるゲージ差分無効同期フェーザSDqを算出し、

    前記演算処理部は、ゲージ差分有効同期フェーザSDpおよびゲージ差分無効同期フェーザSDqの平均化処理を行うために、k=1からk=N−1(Nは2以上の整数)までの各kに対して、現サンプリング時刻tから第1周期T1のk倍前のサンプリング時刻における第2データv21(t−k・T1),v22(t−T−k・T1),v23(t−2T−k・T1)と、前記単位ベクトル群を前記複素平面上で時計方向に時間k・T1に対応する角度だけ回転させたときの隣接するベクトル間の差分ベクトルの実数部v201,v202,v203とから、上式(L7)に従って周波数係数fCを算出し、算出された周波数係数fCの絶対値が1未満の場合に、上式(L8)で表されるゲージ差分有効同期フェーザSDpおよび上式(L9)で表されるゲージ差分無効同期フェーザSDqを算出し、
    前記演算処理部は、現サンプリング時刻までで算出されたゲージ差分有効同期フェーザSDpおよびゲージ差分無効同期フェーザSDqを平均し、平均化されたゲージ差分有効同期フェーザSDpおよびゲージ差分無効同期フェーザSDqを用いて、現時刻での前記電気量のフェーザ量を決定する、同期フェーザ測定装置。
  4. 前記電気量のフェーザ表示での実数部vre、虚数部vim、および位相角φは、平均化されたゲージ差分有効同期フェーザSDp、ゲージ差分無効同期フェーザSDq、および周波数係数fCとを用いて、次式(L10)〜(L12)に従って算出される、

    請求項3に記載の同期フェーザ測定装置。
  5. 前記演算処理部は、現サンプリング時刻での前記電気量のフェーザ表示での位相角から指定されたサンプリング時刻での前記電気量のフェーザ表示での位相角を減算した値と、前記指定されたサンプリング時刻から現サンプリング時刻までのサイクル数とに基づいて、指定されたサンプリング時刻から現サンプリング時刻まで位相変化量の積算値である時間同期フェーザを算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の同期フェーザ測定装置。
  6. 前記演算処理部は、前記複素平面内で一定の初期速度で回転している仮想基準フェーザの実数部および虚数部の値と、現サンプリング時刻において算出された前記電気量のフェーザ表示での実数部および虚数部の値と、余弦定理とを用いることによって、現サンプリング時刻における前記仮想基準フェーザと前記電気量のフェーザ量との位相差である相差角を算出する、請求項2または4に記載の同期フェーザ測定装置。
  7. 前記演算処理部は、前記相差角に基づいて、前記電気量の周波数および周波数変化率の少なくとも一方を計算する、請求項6に記載の同期フェーザ測定装置。
  8. 前記演算処理部は、前記電力系統の第1ノードおよび第2ノードの各々において同一サンプリング時刻に測定した前記電気量のフェーザ表示の実数部および虚数部の値と、余弦定理とを用いることによって、前記第1ノードと前記第2ノードとの位相差である空間同期フェーザを算出する、請求項2または4に記載の同期フェーザ測定装置。
  9. 前記電気量は、前記電力系統の正相電圧、逆相電圧、零相電圧、正相電流、逆相電流、および零相電流の各々を含み、
    前記演算処理部は、前記正相電圧、逆相電圧、零相電圧、正相電流、逆相電流、および零相電流の各々についてフェーザ量を算出し、
    前記演算処理部は、算出した各前記フェーザ量に基づいて、正相、逆相、および零相の各々の有効電力、無効電力を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の同期フェーザ測定装置。
  10. 電力系統の電気量を第1周期T1ごとにサンプリングした瞬時値データが入力される入力部と、
    パルス生成部とを備え、
    前記パルス生成部は、前記瞬時値データの中から前記第1周期T1よりも大きい第2周期Tごとに抽出した、現サンプリング時刻tから連続する4点の第1データを用いて、前記第1データの隣接する2点間の差分によって得られる連続する3点の第2データv21(t),v22(t−T),v23(t−2T)を求め、
    前記パルス生成部は、前記電気量をフェーザ表示したときの複素平面上で前記第2周期Tずつ隔てて並ぶ4個の固定された単位ベクトル群を用いて、前記単位ベクトル群の隣接する2ベクトル間の差分によって得られる3個の差分ベクトルの実数部v201,v202,v203を求め、
    前記パルス生成部は、前記3点の第2データv21(t),v22(t−T),v23(t−2T)と、前記3個の差分ベクトルの実数部v201,v202,v203とから、次式(L7)に従って周波数係数fCを算出し、

    前記パルス生成部は、次式(L8)で表されるゲージ差分有効同期フェーザSDpおよび次式(L9)で表されるゲージ差分無効同期フェーザSDqを算出し、

    前記パルス生成部は、算出したゲージ差分有効同期フェーザSDpおよびゲージ差分無効同期フェーザSDqを用いて、前記電気量の振幅Vを次式(L13)に従って算出し、

    前記パルス生成部は、第1データv11(t),v12(t−T)と、周波数係数fCと、振幅Vとを用いて、次式(L14)に従って出力パルスvOUTを生成する、

    パルス生成装置。
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