JP6414895B2 - アスタキサンチンを含有する果汁含有飲料及びその製造方法 - Google Patents
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また、その市場は、近年やや頭打ちであるものの5兆円弱の規模を有し、例えば、果実・野菜飲料に限っても約5,000億円規模の市場を保持している。
昨今では、単なる止渇目的や嗜好目的ではなく、飲料が含有する原料素材が備えている生理活性機能に着目し、この生理活性機能によってもたらされる、身体等に対する好ましい作用を特徴とする商品も存在し、従来から、その機能に応じた特定保健用食品として提供されてきている。
更に、2015年4月から導入された機能性表示制度によって、飲料メーカの責任において、これら原料由来の生理活性機能を検証し、その作用を一定の基準で商品上に表示することが可能となった。
このため、これら機能性原料を使用した所謂機能性飲料の開発競争も今後盛んになってくると思われる。
例えば、抗酸化機能を有するものとして一般的である「ポリフェノール類」には、茶飲料に含まれるカテキン類、コーヒー飲料に含まれるクロロゲン酸のほか、果実・果汁含有飲料である巨峰やブルーベリー飲料に含まれるアントシアニン等が挙げられる。
ポリフェノール類が植物由来であるのに対して、カロテノイド類は植物由来のものと動物由来のものの両方があり、植物由来のカロテノイドとしてはトマトに含まれるリコピン、ニンジンに含まれるβカロテン、ブロッコリーに含まれるルテイン、唐辛子に含まれるカプサイシン等が挙げられる、また、動物由来のものの例としては例えば鮭類の身、真鯛の体表、海老やカニの甲殻等の赤色の基であるアスタキサンチン等がある。
中でも、アスタキサンチンは非常に強力な抗酸化力を持っており、脳や目にも作用して有効な効果を発揮すると言われており、近年、特に注目を集めている。
しかし、1994年からヘマトコッカス藻から天然アスタキサンチンを工業的に生産する方法が確立され、これを用いたアスタキサンチン製剤が既に流通している。
今後は、飲食物への添加事例も増大してくると考えられる。
また、上述の通り、植物由来のアスタキサンチンは、海藻由来であることから、一般的に流通しているアスタキサンチン製剤には独特の「藻臭」があり、また海藻由来の「塩味」を呈することから、添加によって果汁含有飲料の風味が損なわれる虞があるという別途の問題をも有していた。
更に、飲料液中のミネラル合計濃度(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)に対するカリウム濃度の値を一定の範囲に調整することで、塩味のマスクがより効果的になることをも併せて見出した。
(1)
アスタキサンチンと果汁を含有する果汁含有飲料であって、
飲料液中のアスタキサンチン濃度(mg/100g)が1.0〜12.0であって
飲料液中の環状オリゴ糖濃度(mg/100)に対するアスタキサンチン濃度の割合が
0.03〜0.15であることを特徴とする果汁含有飲料。
(2)
前記果汁がアントシアニンを含有することを特徴とする1の果汁含有飲料。
(3)
飲料液中の前記環状オリゴ糖の濃度(mg/100g)に対する前記アントシアニンの濃度の割合が0.2〜3であることを特徴とする2の果汁含有飲料。
(4)
前記アントシアニンがブルーベリー由来のものを含むことを特徴とする2又は3の果汁含有飲料。
(5)
飲料液中のミネラル合計濃度(mg/100mg)に対するカリウム濃度(mg/100mg)の割合が0.05〜0.7であることを特徴とする1〜4いずれか1の果汁含有飲料。
(6)
前記ミネラルがナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムであることを特徴とする5の果汁含有飲料。
(7)
アスタキサンチンと果汁を含有する果汁含有飲料の製造方法であって、
飲料液中のアスタキサンチン濃度(mg/100g)が1.0〜12.0であって
飲料液中の環状オリゴ糖濃度(mg/100)に対するアスタキサンチン濃度の割合を0.03〜0.15に調整することを特徴とする果汁含有飲料の製造方法。
(8)
アスタキサンチンと果汁を含有する果汁含有飲料の臭気抑制方法であって、
飲料液中のアスタキサンチン濃度(mg/100g)が1.0〜12.0であって
飲料液中の環状オリゴ糖濃度(mg/100)に対するアスタキサンチン濃度の割合を0.03〜0.15に調整することを特徴とする果汁含有飲料の臭気抑制方法。
に関する。
本発明において、果汁含有飲料とは、果実の搾汁液(果汁)、果実抽出物あるいはそれらを濃縮したエキス等の加工物のことをいうが、好ましくは果汁及び/又は濃縮果汁を含有する飲料である。果汁及び/又は濃縮果汁を配合することによって、より自然な甘味と酸味のバランス及び色調が得られるからである。製品の種類は特に限定されないが、非炭酸の清涼飲料では、果汁入り清涼飲料、果粒入り果実ジュースなど、果汁の使用割合が10%以上の「果実飲料」が代表的なものであり、日本農林規格(JAS)及び果実飲料等の表示に関する公正競争規約によって、濃縮果汁、果実ジュース、果実ミックスジュース、果粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュース、果汁入り飲料に区分されているが、本実施形態に係る果汁含有飲料はこれら全てを含む概念である。
一方、炭酸入りの清涼飲料としては、果汁入りのフレーバー系炭酸飲料などが挙げられる。更に、アスタキサンチンを含有する果汁入り酎ハイなどの果実酒類、リキュール類などのアルコール飲料も、本発明のアスタキサンチンを含有する果汁含有飲料として挙げられる。
また、希釈飲料(家庭飲用用の希釈飲料、自動販売機内の希釈飲料など)も本発明に係る飲料の一つとして挙げられる。
なお、本発明に係る果汁含有飲料は、好ましくは非アルコール性飲料であり、更に好ましくは非炭酸飲料である。
本実施形態において、飲料液中の果汁含有率は0.1wt%〜100wt%であることが望ましく、20wt%〜100wt%であることが更に望ましく、30wt%〜100wt%であることが特に望ましい。
アスタキサンチンは前述の通り、カロテノイドの一種に分類され、カロテノイド中のキサントフィル類に分類される。
正式名称は3,3−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4−ジオンと称する。
自然界に広く分布しており、上述の通り動物由来のものとしては甲殻類の殻やそれらを餌とするマダイの体表面、またサケ科魚類の筋肉の赤色部分などが存在場所として知られている。
生体内においては遊離型、モノエステル型、ジエステル型の3つの形態が存在可能であるが、多くは脂肪酸エステル型であり、血漿リポタンパク質と結合した形で存在する。
近年では、ヘマトコッカス藻を原料とした天然アスタキサンチン製剤が流通している。
アスタキサンチン製剤としては、例えば「アスタリール(登録商標)10WS液:株式会社アスタリール社製」を使用することができる。
ヘマトコッカス藻は、ボルボックス目ヘマトコッカス科に属する海藻であって、通常は緑色であるが、栄養欠乏や強紫外線等の過酷な環境下においては、芽胞を形成し、この際にアスタキサンチンを生成して赤色となる性質がある。
ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチン製剤は、粉末や液体の形態で提供されているが、海藻由来故の藻臭(海藻臭)を有し、また塩味を感じるという特徴がある。
アスタキサンチンは、強力な抗酸化機能を備えており、これによりアンチエイジングや美肌効果が良く知られており、既に化粧品等に応用されている。
この他にも、直接投与や経口摂取によって疲れ目など眼精疲労に対する効果も確認されていることから、飲料に添加することで、生理活性機能を発揮し得ることが期待できる。
本実施形態にあって、飲料液中に含有させるアスタキサンチンの濃度は、1.0〜12.0mg/100gが望ましく、1.5〜8.0mg/100gが更に望ましく、1.8〜6.0mg/100gが最も望ましい。
アスタキサンチンの測定方法は、一般的な手法を用いることができ、例えばHPLC法にて測定できる。
本実施形態において果汁含有飲料の原料となる果汁としては、アスタキサンチンの赤色に大きな影響を受けない色合いの物が望ましく、特に、同じく眼精疲労に対する効果が認められているポリフェノールであるアントシアニンを含有するものであることが望ましい。
具体的には、ブルーベリー、巨峰、赤ブドウ、クランベリー、カシス、ハスカップ、アサイー、プルーン、ビルベリー等が挙げられるが、呈味性や取り扱いの容易性を考慮すると特にブルーベリーが望ましい。
本実施形態において環状オリゴ糖とは、環状構造を有するオリゴ糖の総称であって、ブドウ糖 (グルコース) の重合体であるデンプンに合成酵素を作用させることにより作られるブドウ糖が環状に6〜8個連なった所謂シクロデキストリンと称される形態の多糖類である。
本実施形態にあっては、オリゴ糖としては、シクロデキストリン製剤である、セルデックス(登録商標)シリーズ(日本食化工株式会社製)等の市販品を使用することができる。
本実施形態においてアントシアニンとは、ポリフェノールの一種である一群の化合物群であって、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体の総称である。アントシアニンとしては、デルフィニジン−3−グルコシド、シアニジン−3−グルコシド、ペチュニジン−3−グルコシド、ペオニジン−3−グルコシド及びマルビジン−3−グルコシド等が挙げられる。アントシアニンは、ブドウ、カシス、ベリー類などの果実や野菜に豊富に含まれており、抗酸化作用等の生理活性を有するほか、光を吸収し呈色する性質を有するため色素としても用いられる。本実施形態に係る果汁含有飲料においては、アントシアニン化合物単体を配合しても良く、又はアントシアニンを含有する組成物(例えば、アントシアニン色素や、アントシアニンを含有する果汁及び/又は野菜汁等)を配合しても良いが、製品の性格上、天然物を用いることが望ましい。
本実施形態にあって、飲料液中に含有させるアントシアニンの濃度は、10〜200mg/100gが望ましく、15〜120mg/100gが更に望ましく、20〜70.0mg/100gが最も望ましい。
なお、アントシアニン量の測定は、一般的な手法を用いることができ、例えば果汁含有飲料の乾燥物を2%塩酸−メタノール溶液で抽出し、分光光度計を用いてアントシアニン量を測定できる。
また、飲料液中の環状オリゴ糖濃度(mg/100)に対するアスタキサンチン濃度(mg/100g)の割合は0.03〜0.15であって、0.04〜0.12が望ましく、0.05〜0.1がさらに望ましい。
また、飲料液中の環状オリゴ糖濃度(mg/100)に対するアントシアニン濃度(mg/100g)の割合(甘渋度)は0.2〜3であって、0.25〜2が望ましく、0.3〜1.8がさらに望ましい。
本実施形態に係る果汁含有飲料においてミネラル合計濃度とはナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの合計濃度をいう。
ミネラル分の合計濃度は、10〜130mg/100gであって、12〜115mg/100gが更に望ましく、12.5〜50mg/100gが最も望ましく、ミネラル量の合計濃度に対するカリウム濃度を0.05〜0.7に調整することが望ましく0.1〜0.6に調整することが更に望ましい。
上記範囲とすることによって、アスタキサンチンに起因する塩味を有効にマスクすることが可能となる。
なお、ナトリウム量、カリウム量の定量は一般的な手法を用いることができ、例えば果汁含有飲料を秤取し、1%塩酸で抽出し、ろ過して得たろ液を定容し、原子吸光法により測定できる。またカルシウム量、マグネシウム量の定量も一般的な手法を用いることができ、例えばICP発光分析法により定量できる。
(その他の甘味料)
本実施形態に係る果汁含有飲料には、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、任意の甘味料を添加することができる。
上述した環状オリゴ糖以外の甘味料としては、例えば砂糖、蔗糖、果糖ぶどう糖液糖、果糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、トレハロース、ラクトース、キシロース、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、キシリトール、D−ソルビトール、D−マンニトール等を挙げることができる。
本実施形態に係る果汁含有飲料には、消費者の嗜好などに合せて各種添加物などの添加を排除するものではない。特に、果汁含有飲料が通常含有し得る成分、例えば、食塩、香辛料、酸味料、調味料、着色料などを適宜加えることを排除するものではない。また、各種食物繊維、各種甘味料、その他の成分を添加することもできる。
食物繊維を添加する場合、上記食物繊維から選ばれる1種又は2種以上の食物繊維、特に添加型食物繊維は飲料全体に対して0.01〜4.0質量%、好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.03〜2.5質量%含有することができる。
この中で、機能性成分として選択可能なものは、原料由来として前述したものの他、モノグルコシルヘスペリジン、カテキン類、テアニン、リコピン等が挙げられるが、果汁含有飲料であるという性質上、果汁の呈味性に極力影響のない成分であることが望ましい。
また、本実施形態における果汁含有飲料は、炭酸飲料とすることもできる。
この際、ガスボリュームについては、通常流通している炭酸飲料のガスボリュームの範囲内であれば、任意に調整することが可能である。
本実施形態に係る果汁含有飲料は容器詰の形態で提供されることが望ましい。
容器形態は特に限定するものではなく、例えば金属缶(スチール缶、アルミニウム缶など)、PET容器、紙容器、瓶等を挙げることができる。
特にアントシアニンを含有する場合には、内容物の光劣化を防止しうるものが望ましい。
なお、本実施形態に係る果汁含有飲料は、購入後にそのまま飲用することができるRTD(Ready To Drink)であることが、ユーザーの簡便性の観点から優れている。
本実施形態に係る果汁含有飲料のpHは、良好な呈味を確保する為2.0〜4.0であることが望ましく、2.2〜3.8であることがより望ましく、2.3〜3.5の範囲であることが最も望ましい。
pHの調整は果汁量の他、アスコルビン酸類や重炭酸ナトリウムなどを用いる方法により調整することができる。pHの測定は、指示薬法、水素電極法、キンヒドロン電極法、アンチモン電極法、ガラス電極法、及び半導体センサを用いる方法等公知の方法若しくはこれら公知の方法を用いた市販装置を使用して行うことができる。
本実施形態に係る果汁含有飲料の糖度(Bx)は8.0〜18.0の範囲であることが望ましく、9.0〜16.5が更に望ましく、10.0〜14.0の範囲であることが最も望ましい。
また、酸度については、良好な呈味性を確保する上で0.20〜0.85が望ましく、0.30〜0.7が更にこのましく、0.35〜0.55であることが最も望ましい。
Brixの測定方法は、公知の方法を用いればよく、例えば光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α−Bev)を用いることができる。また、酸度の測定方法は、一般的な測定手法を用いることができ、例えば自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM−1750)を用い、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を使用した電位差滴定法に基づいて、クエン酸換算で算出した。なお、酸度は、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた電位差滴定法により算出される、クエン酸換算での濃度(%)を意味するものであり、主に果汁の種類と含有量、酸味料の種類と添加量等によって調整することができる。
本実施形態に係る果汁含有飲料は、酸化防止剤としてビタミンE、Cといったビタミン類を含むことができる。但し、飲料の呈味性に影響を与えないことが要件となる。
本発明の要件に従い、果汁量、環状オリゴ糖、アスタキサンチン、ミネラル量、アントシアニン量を調整し、表1の濃度となるように、アスタキサンチンを含有する果汁含有飲料を調製した。
官能評価は、アスタキサンチンに起因する藻臭の抑制や塩味の抑制の他、液色への影響の観点で行った。
なお、官能評価試験は、5℃で2週間保管後のサンプルについて、8人のパネラーが以下表2に示す評価条件に基づいて実施し、最も多かった評価を採用した。
表3に示すように、アスタキサンチン/環状オリゴ糖が0.04〜0.13であり、アントシアニン/環状オリゴ糖が0.38〜2.67である実施例試料1〜4では、アスタキサンチンに起因する藻臭がマスクされ、特に実施例試料2〜4では当該藻臭を感じない程度にマスクされる結果となった。また、実施例試料1〜4では、アスタキサンチンに起因する塩味がマスクされ、特に実施例試料2〜4では当該塩味を感じない結果になった。
これによりアスタキサンチンに起因する藻臭については、本願発明の要件範囲において、良好にマスクされると共に、塩味についても有効にマスクされ、非常に良好な呈味性を有するアスタキサンチン含有果汁飲料を得ることができることが判明した。
さらに色合いについては、実施例試料1〜4でアスタキサンチンに起因する赤色が不自然さを呈さず、特に実施例試料3、4ではアスタキサンチンを添加したことによる影響を感じなかった。これにより、本願発明の要件範囲において、アスタキサンチンの添加による飲料液の色彩への影響を低減し、非常に自然な色彩を呈するアスタキサンチン含有果汁飲料を得ることができることが判明した。
表5に示すように、カリウム/総ミネラル濃度が0.08である比較例試料3とカリウム/総ミネラル濃度が0.74である比較例試料4は、アスタキサンチンに起因する藻臭や塩味があり、品質に問題があった。しかし、アスタキサンチン/環状オリゴ糖が0.04〜0.13であり、カリウム/総ミネラル濃度が0.14〜0.7である実施例試料6〜9では、アスタキサンチンに起因する藻臭がマスクされ、さらに味わいも自然だった。特にカリウム/総ミネラル濃度が0.47〜0.7である実施例試料7〜9ではアスタキサンチンに起因する塩味を感じない結果になった。これにより、カリウム/総ミネラル濃度を本願発明の要件範囲にすることで、塩味が有効にマスクされ、非常に良好な呈味性を有するアスタキサンチン含有果汁飲料を得ることができることが判明した。
Claims (1)
- 海藻由来のアスタキサンチンと果汁を含有する果汁含有飲料の藻臭抑制方法及び塩味低減方法であって、飲料液中の前記アスタキサンチン濃度(mg/100g)が1.0〜12.0であって飲料液中の環状オリゴ糖であるシクロデキストリン濃度(mg/100g)に対する前記アスタキサンチン濃度の割合を0.04〜0.13に調整することを特徴とする果汁含有飲料の藻臭抑制及び塩味低減方法。
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