JP6414165B2 - 酸化物スパッタリングターゲット、及び酸化物スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、光記録媒体保護膜形成用スパッタリングターゲットとして、モル%で、酸化ジルコニウム:10〜70%、二酸化ケイ素:50%以下(0%を含まず)を含有し、残部:酸化インジウムおよび不可避不純物からなる組成を有する酸化物スパッタリングターゲットが開示されている。この特許文献2には、この酸化物スパッタリングターゲットの製造方法として、ZrO2粉末、非晶質SiO2粉末およびIn2O3粉末を所定量秤量しヘンシェルミキサーで均一に混合した後、この混合粉末をプレス成形し、得られた成形体を酸素雰囲気中で焼成して焼結させる方法が記載されている。
本実施形態に係る酸化物スパッタリングターゲットは、例えば、DVDやBDなどの相変化形光ディスクの誘電体層および保護層として用いられる酸化物膜をスパッタリング法によって成膜する際に用いることができる。また、本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットは、HDD(ハードディスクドライブ)のような磁気記録媒体の下地層および保護層として用いられる酸化物膜をスパッタリング法によって成膜する際に用いることもできる。
酸素濃度のばらつき(%)=[(酸素濃度の最大値)−(酸素濃度の最小値)]/[(酸素濃度の最大値)+(酸素濃度の最小値)]×100
比抵抗のばらつき=[(比抵抗の最大値)−(比抵抗の最小値)]/[(比抵抗の最大値)+(比抵抗の最小値)]×100
酸化物スパッタリングターゲットの酸素濃度のばらつきが大きくなると、スパッタリング中に異常放電、及びパーティクルが発生し易くなる。このため、本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットでは、上記の式(1)で表されるターゲット面内の酸素濃度のばらつきを15%以下と設定している。酸素濃度のばらつきが15%を超えると、異常放電及びパーティクルが発生して、成膜された酸化物膜の表面に異物が付着すると共に、膜組成の面内ばらつきが大きくなるおそれがある。なお、酸化物スパッタリングターゲットの酸素濃度は、ジルコニウム、ケイ素およびインジウムの含有量によって異なるが、15質量%以上35質量%以下の範囲にあることが好ましい。なお、酸化濃度は、EPMAによって測定された値である。
酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗のばらつきが大きくなると、スパッタリング中に異常放電、及びパーティクルが発生し易くなる。このため、本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットでは、上記の式(2)で表されるターゲット面内の比抵抗のばらつきを15%以下と設定している。比抵抗のばらつきが15%を超えると、異常放電及びパーティクルが発生して、成膜された酸化物膜の表面に異物が付着すると共に、膜組成の面内ばらつきが大きくなるおそれがある。なお、酸化物スパッタリングターゲットの比抵抗は、0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
本実施形態に係る酸化物スパッタリングターゲットの製造方法は、図2に示すように、原料粉末を粉砕混合する粉砕混合工程S01と、粉砕混合された混合粉末を所定の形状に成形する成形工程S02、成形された成形体を焼結させる焼結工程S03と、得られた焼結体を冷却する冷却工程S04と、冷却した焼結体を加工する加工工程S05と、を備えている。
上記の原料粉末を、得られる混合粉末中の金属成分の合計含有量を100質量%とした場合、ジルコニウムの含有量が10質量%以上75%質量以下の範囲、ケイ素の含有量が35質量%以下(但し、0質量%を含まず)、インジウムの含有量が残部となるように秤量して、粉砕混合する。本実施形態においては、粉砕混合は、直径0.5mmのジルコニアボールを粉砕媒体としたビーズミル装置を用いて湿式粉砕混合する。
この粉砕混合工程S01では、得られる混合粉末の比表面積(BET比表面積)が11.5m2/g以上13.5m2/g以下になるように粉砕混合する。比表面積が上記の範囲にある混合粉末を用いることにより、後述の焼結工程において、雰囲気酸素との反応性および焼結性が高まり、均一な酸素濃度と比抵抗、そして高い焼結密度を有するスパッタリングターゲットが得られ易くなる。一方、比表面積が11.5m2/g未満の混合粉末を用いると、焼成時に均一な反応が起こらず、スパッタリングターゲットの酸素濃度のばらつきが大きくなるおそれがある。また、混合粉末の比表面積を13.5m2/gを超えるように粉砕することは、粉砕混合時間が長くなり経済的に不利になるおそれがある。
次に、粉砕混合工程S01にて得られた混合粉末を所定の形状に成形して、成形体を得る。本実施形態においては、プレス成形を用いて成形する。
次に、成形工程S02にて成形した成形体を焼結させる。この焼結工程S03では、酸素導入口を備えた焼成装置を用い、内に酸素を導入しながら、成形体を焼成して焼結させる。成形体の焼成を焼成装置内に酸素を導入しながら行うことによって、混合粉末中のIn2O3粉末の昇華が抑制されるので、均一な酸素濃度と比抵抗、そして高い焼結密度を有するスパッタリングターゲットが得られ易くなる。焼成装置内に導入する酸素の最適な流量は、焼成装置の内容積や焼結させる成形体の大きさや数量などの条件により変動するため、適切に選択する必要がある。例えば目安として直径100〜300mm、厚さ15mm以下の成形体を内容積15000〜30000cm3の焼成装置で同時に6枚以下焼成するのに必要な流量は3L/分以上10L/分以下の範囲である。10L/分を超える流量は一般に経済的に好ましくない。なお焼成装置内に流通させる気体は酸素の体積率が100%、すなわち純酸素が好ましいが、酸素の体積率が80%以上であれば窒素やアルゴン等他の気体と混合された気体を用いても良い。
次に、焼結工程S03にて得られた焼結体を冷却する。この冷却工程S04では、少なくとも600℃以下の温度になるまでは焼成装置内に酸素を導入しながら、焼結体を冷却する。焼結体の冷却を、焼成装置内に酸素を導入しながら行うことによって、冷却中での焼結体中の酸素の離脱が抑制され、均一な酸素濃度と比抵抗を有するスパッタリングターゲットが得られ易くなる。焼成装置内に導入する酸素の流量は、焼結工程S03にて焼成装置内に導入する流量と同じとすることが好ましい。冷却工程S03での酸素の流通は、焼結体の取り出し時まで実施することが好ましいが、経済性を考慮して600℃以下の温度になった時点で適宜停止してもよい。
加工工程S05では、冷却工程S05で冷却された焼結体に対して切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状のスパッタリングターゲットに加工する。
例えば、本実施形態では、酸化物スパッタリングターゲットの形状が円板状である場合を説明したが、酸化物スパッタリングターゲットの形状には特に制限はない。酸化物スパッタリングターゲットは四角板状であってもよい。酸化物スパッタリングターゲットの形状が四角板状である場合は、酸素濃度および比抵抗の測定箇所は、対角線が交差する交点と、各対角線上の角部近傍の4点の合計5点とすることができる。
原料粉末として、純度が99.9質量%以上で、平均粒径が2μmのZrO2粉末と、純度が99.8質量%以上で、平均粒径が2μmのSiO2粉末と、純度が99.9質量%以上で、平均粒径が1μmのIn2O3粉末とを準備した。用意した各原料粉末を、それぞれ表1に示すモル比となるように秤量した。
得られた2枚の成形体を、電気炉(炉内容積27000cm3)に投入し、毎分4Lの流量で酸素を電気炉内に流通させながら表1に示す焼成温度で7時間保持することにより焼成して焼結体を生成させた。次いで、焼結体を、継続して酸素を電気炉内に流通させながら表1に示す冷却速度で600℃まで冷却し、その後、酸素の流通を停止し、室温まで炉内放冷により冷却した後、焼結体を電気炉から取り出した。
秤量した原料粉末を、ヘンシェルミキサーで混合したこと以外は、本発明例1と同様にして、2枚のスパッタリングターゲットを製造した。
600℃までの焼結体の冷却速度を、250℃/時間としたこと以外は、本発明例1と同様にして、2枚のスパッタリングターゲットを製造した。
成形体の焼成時に、酸素を電気炉内に流通させなかったこと以外は、本発明例1と同様にして、2枚のスパッタリングターゲットを製造した。
焼結体の焼成温度を1250℃としたこと以外は、本発明例1と同様にして、2枚のスパッタリングターゲットを製造した。
スパッタリングターゲットの金属成分組成、相対密度、酸素含有量および比抵抗を測定した。また、スパッタリングターゲットのスパッタ試験を行なった。
製造した2枚のスパッタリングターゲットのうちの1枚を相対密度、比抵抗、酸素含有量の測定に用い、残りの1枚をスパッタ試験に用いた。スパッタ試験では、まずスパッタリング中の異常放電の発生数を測定した。次いで、酸化物膜をスパッタにより成膜した後、ターゲットの割れの有無を確認した。さらに、成膜した酸化物膜中のインジウム濃度を測定した。
各評価の方法は、以下の通りである。
スパッタリングターゲットに機械加工する前の焼結体の端部の一部を、試料として採取した。採取した試料を酸に溶解し、得られた溶液の組成を、アジレントテクノロジー社製誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)装置(Agilent 5100)により分析して、Zr、Si、Inの金属成分組成を分析した。その測定結果を、表2に示す。
相対密度は、理論密度に対する実測密度の比率(実測密度/理論密度×100)として算出した。実測密度は、スパッタリングターゲットの重量と寸法を実測することにより求めた。理論密度は、スパッタリングターゲットに含まれている各酸化物の濃度と密度から算出した。具体的には、ZrO2の質量%濃度をC1、密度をρ1とし、SiO2の質量%濃度をC2、密度をρ2とし、In2O3の質量%濃度をC3、密度をρ3として、理論密度ρを以下の式により計算した。
ρ=1/[C1/100ρ1+C2/100ρ2+C3/100ρ3]
ここで、ρ1=5.60g/cm3、ρ2=2.20g/cm3、ρ3=7.18g/cm3の値を用いた。なお、C1、C2、C3は、原料粉末の配合量から算出した。
比抵抗は、四探針法により測定した。比抵抗のばらつきを測定するために、図1に示すように、ターゲット面(円)の中心点(1)と、ターゲット面の中心点にて互いに直交する2つの直線上であって、かつ外縁から20mmの位置にある4点(2)〜(5)の合計5点で測定した。測定された比抵抗のうちの最大値と最小値を抽出し、前記の式(2)により、比抵抗のばらつきを算出した。表2に、各測定点での比抵抗の測定値とばらつきを示す。
図1に示すように、ターゲット面(円)の中心点(1)と、ターゲット面の中心点にて互いに直交する2つの直線上であって、かつ外縁から20mmの位置にある4点(2)〜(5)の合計5点から10mm角の小片を酸素濃度測定用試料片として切り出し、その酸素濃度測定用試料片の表面(ターゲット面)の酸素濃度を、次のようにして測定した。
先ず、酸素濃度測定用試料を樹脂に埋め、樹脂埋めした酸素濃度測定用試料片の表面(ターゲット面)を、研磨装置にて鏡面研磨した。そして研磨の後、研磨面の酸素濃度を、EPMA(日本電子製、JXA−8500F)により定量分析した。EPMAによる酸素の定量分析の条件は、次のとおりとした。
加速電圧:15kV
照射電流:5×10−8A
ビーム径:100μm
なお、酸素の定量分析にあたり使用した分光結晶はLDE1である。
測定は10mm角の試料片内から無作為に10箇所について行ない、その平均値を図1に示される一つの箇所の酸素濃度の測定値とした。
測定された図1に示す5箇所の酸素濃度のうちの最大値と最小値を抽出し、前記の式(1)により、酸素濃度のばらつきを算出した。表2に、各酸素濃度測定用試料の酸素濃度の測定値とばらつきを示す。
スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートに半田付けし、これをマグネトロン式のスパッタ装置(ULVAC社製、SIH−450H)内に装着した。次いで、真空排気装置にてスパッタ装置内を5×10−5Pa以下まで排気した後、ArガスとO2ガスを導入して、スパッタガス圧を0.67Paに調整し、1時間のプレスパッタリングを実施し、これによりターゲット表面の加工層を除去した。この時のArガスとO2ガスの流量比は47対3、電力はパルスDC1000W、パルス条件は周波数50kHz、duty比0.08とした。
上記のプレスパッタリングと同条件にて、1時間の連続スパッタリングを行った。この1時間の間に発生した異常放電回数を、使用したスパッタ装置の直流電源に備えられたアーキングカウント機能を用いて計測した。その結果を表3に示す。
上記の異常放電回数の測定後、直径6インチのSi基板上に20mm角サイズのポリカーボネート基板を図3に示す5点(Si基板中心1点と中心から半径60mmの部分4点)に貼り付けしたものを準備し、これをスパッタ装置に装填してターゲット直上で静止させ、真空排気装置にてスパッタ装置内を5×10−5Pa以下まで排気した後、上記のプレスパッタと同条件にてスパッタリングを行い、基板上に厚さ200nmの酸化物膜を形成した。この時の基板とターゲットの距離は70mmとした。得られた各酸化物膜を酸で溶解した溶液の組成を、アジレントテクノロジー社製誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)装置(Agilent 5100)により分析して、各酸化物膜中のIn濃度を測定し、そのばらつきを下記の式(3)より算出した。表3に、酸化物膜中のIn濃度(金属元素の合計含有量を100とした時の質量%)の測定値とばらつきを示す。
酸化物膜のIn濃度のばらつき(%)=[(In濃度の最大値)−(In濃度の最小値)]/[(In濃度の最大値)+(In濃度の最小値)]×100
酸化物膜の成膜後、スパッタ装置を大気開放した。そして、スパッタ装置からスパッタリングターゲットを取り出して、その外観を目視にて観察して、割れの発生の有無を確認した。その結果を表3に示す。
Claims (3)
- 金属成分として、ジルコニウム、ケイ素およびインジウムを含有した酸化物からなる酸化物スパッタリングターゲットであって、ターゲット面内の酸素濃度の最大値と最小値の合計に対する前記酸素濃度の最大値と最小値の差の比率が15%以下であることを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。
- ターゲット面内の比抵抗の最大値と最小値の合計に対する前記比抵抗の最大値と最小値の差の比率が15%以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物スパッタリングターゲット。
- 請求項1または2に記載の酸化物スパッタリングターゲットを製造する方法であって、
酸化ジルコニウム粉末と、二酸化ケイ素粉末と、酸化インジウム粉末とを混合して、比表面積が11.5m2/g以上13.5m2/g以下の混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末を成形して成形体を得る工程と、
前記成形体を、焼成装置内に酸素を流通させながら、1300℃以上1600℃以下の温度にて焼成して焼結体を生成させる工程と、
前記焼結体を、前記焼成装置内に酸素を流通させながら、200℃/時間以下の冷却速度で少なくとも600℃以下の温度になるまで冷却する工程と、
を備えていることを特徴とする酸化物スパッタリングターゲットの製造方法。
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