JP6413494B2 - 導電性インクの焼成方法及びプリント配線板用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
気孔率(%)=(V1/V)×100
式中、上記見かけの体積(V)は、上記通気性スペーサシートの平面面積と平均厚みとの積によって算出される。上記平均厚みは、ダイヤルゲージによって測定される任意の10点の厚みの平均値によって求めることができる。また、上記気孔体積(V1)は、上記通気性スペーサシートの乾燥重量を真比重で除することによって算出される体積を、上記見かけの体積(V)から差し引くことによって算出することができる。
以下、本発明の実施形態に係る導電性インクの焼成方法、プリント配線板用基板の製造方法及び通気性スペーサシートを図面を参照しつつ説明する。
当該導電性インクの焼成方法は、絶縁性を有するベースフィルムの一方の面への金属粒子及び溶媒を含む導電性インクの塗布により導電性インク層を積層する工程(導電性インク層積層工程)と、上記ベースフィルム及び上記導電性インク層を有する積層体の片面に通気性スペーサシートを重畳しつつ巻き取る工程(巻取り工程)と、巻き取られた上記積層体を焼成する工程(焼成工程)とを備える。
上記導電性インク層積層工程は、図1Aに示すように、ベースフィルム1の一方の面に、金属粒子及び溶媒を含む導電性インクを塗布し、乾燥させることで行われる。
上記導電性インク積層工程で用いられるベースフィルム1は絶縁性を有する。ベースフィルム1の主成分としては、例えばポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材料とを複合したリジッドフレキシブル材等を挙げられる。中でも、金属酸化物等との結合力が大きいことから、ポリイミドが好ましい。
上記導電性インクは、金属粒子及び溶媒を含んでいる。上記導電性インクに含まれる金属粒子を構成する金属としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)等が挙げられる。中でも、導電性及びベースフィルム1との密着性に優れる銅が好ましい。
上記導電性インクは、上記金属粒子及び上記溶媒に加え、金属粒子を良好に分散させるための分散剤を含んでいる。上記分散剤の分子量としては、2,000以上100,000以下が好ましい。上記分散剤の分子量が上記範囲であることによって、金属粒子を溶媒中で良好に分散させることができ、導電層の膜質を緻密でかつ欠陥のないものにすることができる。上記分散剤の分子量が上記下限未満の場合、金属粒子の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがあり、その結果、ベースフィルム1に積層される導電層を緻密で欠陥の少ないものにできないおそれがある。逆に、上記分散剤の分子量が上記上限を超える場合、分散剤の嵩が大きすぎ、導電性インクの塗布後に行う焼成工程において、金属粒子同士の焼結を阻害してボイドを生じさせるおそれがある。また、分散剤の嵩が大きすぎると、導電層の膜質の緻密さが低下したり、分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
上記導電性インクをベースフィルム1の一方の面に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布法を用いることができる。またスクリーン印刷、ディスペンサ等によりベースフィルム1の一方の面の一部のみに導電性インクを塗布するようにしてもよい。
上記巻取り工程は、ベースフィルム1及び導電性インク層2を有する積層体3の片面に通気性スペーサシート4を重畳しつつ巻き取ることで行われる。上記巻取り工程は、図2の巻取り装置5を用いて行われる。
巻き取り装置5は、通気性スペーサシート供給ロール6と巻取りロール7とを主に有する。通気性スペーサシート供給ロール6は、通気性スペーサシート4を巻き取りロール7側に供給する。また、巻取りロール7は、上記導電性インク積層工程によって積層された積層体3の導電性インク層2の一方の面に通気性スペーサシート4を重畳しつつロール状に巻き取る。積層体3は、図1Bに示すように、巻取りロール7によって巻き取られることで、導電性インク層2の一方の面とベースフィルム1の他方の面との間に通気性スペーサシート4が介在された状態でロール状に保持される。なお、通気性スペーサシート4は、必ずしも導電性インク層2の一方の面の全面に重畳される必要はないが、導電性インク層2の一方の面の全面に重畳される方が好ましい。通気性スペーサシート4は、導電性インク層2の一方の面の全面に重畳されることによって、重畳されるベースフィルム1及び導電性インク層2の表面の傷付きを防止することができると共に、焼成の均一化を図ることができる。
通気性スペーサシート4は、ベースフィルム1と、ベースフィルム1の一方の面に積層され、金属粒子及び溶媒を含む導電性インク層2とを有する積層体3に重畳され、導電性インク層2の焼成に用いられる。通気性スペーサシート4は、通気性を有する長尺状のシート体として構成されている。通気性スペーサシート4は、導電性インク層2と接する側の面に複数の微細凹凸形状を有する。通気性スペーサシート4は、このような微細凹凸形状を有することにより、導電性インク層2に重畳される面側において一定の通気性を有する。通気性スペーサシート4としては、例えばステンレス(SUS)、ニッケル(Ni)等の金属や、ポリアラミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルロース樹脂等の合成樹脂や、ガラス等を主成分とするエンボスシートが挙げられる。また、通気性スペーサシート4としては、例えばステンレス(SUS)、ニッケル(Ni)等の金属繊維や、アラミド繊維、ポリイミド繊維、カーボン繊維、セルロース繊維等の合成樹脂繊維や、ガラス繊維等を主成分とする織物又は不織布も挙げられる。さらに、通気性スペーサシート4としては、金属等を主成分とするメッシュシートであってもよい。中でも、通気性スペーサシート4としては、ポリイミドを主成分とするエンボスシート又はアラミド繊維を主成分とする織物が好ましい。
上記焼成工程は、上記巻取り工程で巻き取られた積層体3を焼成することで行われる。上記焼成工程は、例えば焼成炉等の焼成装置を用いて行われる。上記焼成工程により、上記導電性インクに含まれる溶媒を揮発及び除去することで、上記金属粒子を焼結状態又は焼結に至る前段階において相互に密着させ固体接合したような状態とすると共に、上記金属粒子をベースフィルム1に固着させ、図1Cに示すように、ベースフィルム1の一方の面に第1導電層8を形成することができる。
当該導電性インクの焼成方法は、ベースフィルム1及び導電性インク層2を有する積層体3の片面に通気性スペーサシート4を重畳しつつ巻き取り、このように巻き取られた積層体3に対して焼成を行う。つまり、当該導電性インクの焼成方法は、導電性インク層2の一方の面とベースフィルム1の他方の面との間に通気性スペーサシート4を介在させた状態で積層体3に対して焼成を行うものである。それゆえ、当該導電性インクの焼成方法は、巻き取られた積層体3の導電性インク層2の一方の面とベースフィルム1の他方の面との密着を通気性スペーサシート4によって防止することができるため、上記導電性インクに含まれる溶媒を容易かつ確実に揮発及び除去することができる。その結果、導電層(導電性インク層2)とベースフィルム1との固着力に優れる基板が得られる。
次に、ベースフィルム1及び第1導電層8を有するプリント配線板用基板の製造方法について説明する。当該プリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルム1の一方の面への金属粒子及び溶媒を含む導電性インクの塗布により導電性インク層2を積層する工程(導電性インク層積層工程)と、ベースフィルム1及び導電性インク層2を有する積層体3の片面に通気性スペーサシート4を重畳しつつ巻き取る工程(巻取り工程)と、巻き取られた積層体3を焼成し、ベースフィルム1の一方の面に第1導電層8を形成する工程(第1導電層形成工程)と、第1導電層形8成後に通気性スペーサシート4を剥離する工程(剥離工程)とを備える。また、当該プリント配線板用基板の製造方法は、上記剥離工程後に、第1導電層8の一方の面にメッキにより第2導電層9を形成する工程(第2導電層形成工程)を備えていてもよい。当該プリント配線板用基板の製造方法における導電性インク層積層工程、巻取り工程は、当該導電性インクの焼結方法における導電性インク積層工程及び巻取り工程と同様であるため、説明を省略する。また、当該プリント配線板用基板の製造方法における第1導電層形成工程は、当該導電性インクの焼結方法における焼結工程と同様のため、説明を省略する。
上記剥離工程は、第1導電層8の形成後に通気性スペーサシート4を剥離することで行われる。また、上記剥離工程において剥離された通気性スペーサシート4は、当該導電性インクの焼結方法及び当該プリント配線板用基板の製造方法において再利用することができる。
上記第2導電層形成工程は、図3に示すように、通気性スペーサシート4の剥離後に第1導電層8の一方の面に、無電解メッキにより第2導電層9を形成することで行われる。このように、上記第2導電層積層工程が無電解メッキによって行われることで、第1導電層8を形成する金属粒子間の空隙に第2導電層9の金属を的確に充填することができる。第1導電層8に空隙が残存すると、この空隙部分が破壊起点となって第1導電層8がベースフィルム1から剥離され易くなるが、この空隙部分に第2導電層9が充填されることによって第1導電層8の剥離を防止することができる。
当該プリント配線板用基板の製造方法は、ベースフィルム1及び導電性インク層2を有する積層体3の片面に通気性スペーサシート4を重畳しつつ巻き取り、このように巻き取られた積層体3に対して焼成を行う当該導電性インクの焼成方法を含むので、上記導電性インクに含まれる溶媒を容易かつ確実に揮発及び除去することができる。その結果、第1導電層8とベースフィルム1との固着力に優れるプリント配線板用基板が得られる。
続いて、当該プリント配線板用基板の製造方法によって製造されたプリント配線板用基板を用いたプリント配線板の製造方法について説明する。当該プリント配線板の製造方法は、上記プリント配線板用基板に導電パターンを形成する工程(導電パターン形成工程)を備える。
上記導電パターン形成工程は、サブトラクティブ法又はセミアディティブ法を用いて行われる。ここでは、サブトラクティブ法により導電パターンを形成する方法について説明する。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
平均粒子径が60nmの銅粒子を水に分散させ、銅濃度が26質量%の導電性インクを作成した。次に、絶縁性を有するベースフィルムとして平均厚み12μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社の「カプトンEN−S」)を用い、この導電性インクをポリイミドフィルムの一方の面に塗布し、大気中で乾燥させてベースフィルムの一方の面に導電性インク層が積層された積層体を得た。
No.1〜6と同様の積層体の導電性インク層の表面に表1に示すNo.7の非通気性スペーサシートを重畳し、ロール状に巻き取った上、酸素濃度が100ppmの窒素雰囲気中で30分間、350℃で焼成した。
No.1〜7と同様の積層体の導電性インク層の表面にスペーサシートを重畳せず、ロール状に巻き取った上、酸素濃度が100ppmの窒素雰囲気中で30分間、350℃で焼成した。
スペーサシートの導電性インク層と接する面の算術平均粗さRa(μm)について、JIS−B−0601:2001に準拠して、カットオフ値(λc)2.5mm、評価長さ(l)12.5mmで測定した。
スペーサシートの気孔率(%)について、スペーサシートの見かけの体積(V)、気孔体積(V1)とし、下記式によって測定した。
気孔率(%)=(V1/V)×100
なお、上記見かけの体積(V)は、スペーサシートの平面面積と平均厚みとの積によって算出した。また、上記平均厚みは、ダイヤルゲージによって測定した任意の10点の厚みの平均値によって算出した。また、上記気孔体積(V1)は、スペーサシートの乾燥重量を真比重で除することによって算出される体積を、上記見かけの体積(V)から差し引くことで算出した。
No.1〜7のスペーサシートについて、焼成後のシートの収縮の有無について目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。この評価結果を表1に示す。
(評価基準)
A:シートの収縮は見られない。
B:シートの収縮がやや見られる。
C:シートの収縮が見られる。
No.1〜7のスペーサシートについて、焼成後のシート表面における脱落の有無について、以下の評価基準にて評価した。この評価結果を表1に示す。
(評価基準)
A:シート表面における脱落は見られない。
B:シート表面における脱落がやや見られる。
No.1〜8について、焼成後の導電性インク層(第1導電層)表面における損傷の有無について、以下の評価基準にて評価した。この評価結果を表1に示す。
(評価基準)
A:導電性インク層表面に損傷は見られない。
B:導電性インク層表面に部分的なしわが僅かに見られる。
C:導電性インク層表面にしわが見られる。
D:導電性インク層表面に部分的なインクの脱落が見られる。
No.1〜8について、焼成後におけるベースフィルム及び導電性インク層(第1導電層)の密着性について引っ張り試験機による剥離試験により、以下の評価基準にて評価した。この評価結果を表1に示す。
(評価基準)
A:全面的に剥離力が500g/cm以上。
B:部分によって剥離力500g/cm以上の箇所及び剥離力500g/cm未満の箇所のバラつきが見られる。
C:全面的に剥離力が500g/cm未満。
表1の結果より、No.1〜6のように通気性スペーサシートを用いて焼成することによってベースフィルム及び第1導電層間における優れた密着性が得られることが解った。また、No.1〜6の中でも、通気性スペーサシートとしてNo.2のポリイミドを主成分とするエンボスシートを用いた場合、耐熱性、脱落性、損傷性及び密着性の全てにおいて優れた結果が得られることが解った。さらに、通気性スペーサシートとして、No.4、5のアラミド繊維を主成とする織物を用いた場合にも、耐熱性、脱落性、損傷性及び密着性の全てにおいて良好な結果が得られることが解った。
2 導電性インク層
3 積層体
4 通気性スペーサシート
5 巻取り装置
6 通気性スペーサシート供給ロール
7 巻取りロール
8 第1導電層
9 第2導電層
10 レジスト
11 導電パターン
Claims (5)
- 絶縁性を有するベースフィルムの一方の面への金属粒子及び溶媒を含む導電性インクの塗布により導電性インク層を積層する工程と、
上記ベースフィルム及び上記導電性インク層を有する積層体の片面に、上記導電性インク層に接するように通気性スペーサシートを重畳しつつ巻き取る工程と、
巻き取られた上記積層体を焼成する工程と
を備え、
上記通気性スペーサシートが、上記導電性インク層と接する側の面に複数の微細凹凸形状を有し、
上記通気性スペーサシートの上記導電性インク層と接する側の面の算術平均粗さRaが0.5μm以上100μm以下であり、
上記通気性スペーサシートの気孔率が30%以上99%以下である導電性インクの焼成方法。 - 上記通気性スペーサシートが、ポリイミドを主成分とするエンボスシートである請求項1に記載の導電性インクの焼成方法。
- 上記通気性スペーサシートが、アラミド繊維を主成分とする織物である請求項1に記載の導電性インクの焼成方法。
- 上記焼成を酸素濃度が1ppm以上10,000ppm以下の雰囲気下での150℃以上500℃以下の加熱により行う請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電性インクの焼成方法。
- 絶縁性を有するベースフィルムの一方の面への金属粒子及び溶媒を含む導電性インクの塗布により導電性インク層を積層する工程と、
上記ベースフィルム及び上記導電性インク層を有する積層体の片面に、上記導電性インク層に接するように通気性スペーサシートを重畳しつつ巻き取る工程と、
巻き取られた上記積層体を焼成し、上記ベースフィルムの一方の面に第1導電層を形成する工程と、
上記第1導電層形成後に上記通気性スペーサシートを剥離する工程と
を備え、
上記通気性スペーサシートが、上記導電性インク層と接する側の面に複数の微細凹凸形状を有し、
上記通気性スペーサシートの上記導電性インク層と接する側の面の算術平均粗さRaが0.5μm以上100μm以下であり、
上記通気性スペーサシートの気孔率が30%以上99%以下であるプリント配線板用基板の製造方法。
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