JP6386852B2 - 蓄熱材組成物および蓄熱材組成物を用いる方法 - Google Patents

蓄熱材組成物および蓄熱材組成物を用いる方法 Download PDF

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Description

本開示は、蓄熱材組成物および蓄熱材組成物を用いる方法に関する。
熱エネルギーを産業用、または家庭用に用いる場合、熱エネルギーの発生量、熱エネルギーの発生時期に対して用いる量、または熱エネルギーに対する発生時期が異なることが多い。そこで、発生した熱全てを有効に利用するために、一時的に熱エネルギーを貯蔵する媒体、いわゆる蓄熱材を用いることが提案されている。
蓄熱材は、大きく分けて、顕熱蓄熱材と潜熱蓄熱材とがある。潜熱蓄熱材は、物質の融解等の相変化を利用したものである。潜熱蓄熱材は、顕熱蓄熱材に比べて、蓄熱密度が高く、相変化温度が一定であるために熱の取り出し温度が安定であるという利点を有している。このため、潜熱蓄熱材の実用化が進んでいる。潜熱蓄熱材を用いて蓄熱を行う場合、蓄熱時には、潜熱蓄熱材を加熱して液体状態とする。この後、液体状態が維持されるように、潜熱蓄熱材を保温した状態で保持する。保持された潜熱蓄熱材に蓄えられた熱は、必要なときに、潜熱蓄熱材を結晶化(凝固)させることによって取り出すことができる。
潜熱蓄熱材のなかでも、酢酸ナトリウム三水和物は、比較的大きい融解潜熱量を有することから、少ない容量で効率的に熱を蓄えることができる物質として知られている。酢酸ナトリウム三水和物は、毒性を示さず、安全な物質である。例えば特許文献1には、酢酸ナトリウム三水和物を蓄熱材として用いたシステムが開示されている。また、特許文献2には、熱機器などで使用する潜熱輸送用スラリーに酢酸ナトリウム三水和物を用いることが開示されている。
酢酸ナトリウム三水和物は、融解時には、物質固有の温度(融点)で融解するものの、凝固時には、融点を下回っても凝固しない、いわゆる過冷却状態(過冷却液体状態)となることが知られている。
そこで、酢酸ナトリウム三水和物を蓄熱材に用い、加熱されて液体状態となった蓄熱材を過冷却状態で保持することが提案されている。放熱時には、過冷却状態を破壊することにより、蓄熱材に蓄えられた熱を取り出すことができる。
上記のような、過冷却状態を利用した蓄熱方法に適用するための、過冷却状態の安定性を高めることが可能な蓄熱材組成物が提案されている。例えば、特許文献3は、酢酸ナトリウム三水和物に耐塩性カルボキシルメチルセルロースを添加し蓄熱材組成物を提案している。これにより、室温環境下において、過冷却状態の蓄熱材組成物を安定して保持できることが記載されている。また、特許文献4は、酢酸ナトリウム三水和物に10〜30wt%の純水を添加した蓄熱材組成物を提案している。これにより、−13℃以下の低温環境下において、蓄熱材組成物の過冷却状態を安定化できることが記載されている。
特開2008−20177号公報 特許第5013499号明細書 特開昭61−9484号公報 特開平4−324092号公報
蓄熱材組成物を使用するシステムの用途、または環境によっては、室温よりも低い氷点以下の温度環境下(低温環境下)においても過冷却状態で安定して保持できる蓄熱材組成物が求められている。
しかしながら、特許文献3および特許文献4に提案された従来の蓄熱材組成物では、十分な蓄熱密度を確保しつつ、低温環境下における過冷却安定性を高めることは困難であった。
上記の事情を鑑み、限定的ではない例示的なある実施形態は、高い蓄熱密度を有し、且つ、低温環境下においても過冷却状態で安定的に保持し得る新規な蓄熱材組成物を提供する。
本発明による一態様は、酢酸ナトリウムと、水と、疎水基と親水基とを含む有機化合物とを必須構成成分として含有し、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記疎水基と親水基とを含む有機化合物からなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、前記3成分に占める前記疎水基と親水基とを含む有機化合物の重量パーセント濃度Waは1wt%以上である蓄熱材組成物を含む。
本開示によれば、高い蓄熱密度を有し、且つ、低温環境下においても過冷却状態で安定的に保持し得る新規な蓄熱材組成物を提供できる。
酢酸ナトリウム−水−メタノールからなる蓄熱材組成物における過冷却状態安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−エタノールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−グリセリンからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジからなる蓄熱材組成物における過冷却安定な組成範囲を示す図 各種アルコールと酢酸ナトリウムとを含む試料についての、13C−NMRスペクトルのC=Oピーク付近の拡大図 各種アルコールと酢酸ナトリウムとを含み、純水で6倍に希釈した試料についての、13C−NMRスペクトルのC=Oピーク付近の拡大図 実施形態の蓄熱方法の一例を示す図 実施形態の蓄熱システムの構成を例示する図
上述したように、酢酸ナトリウム三水和物を含む蓄熱材組成物を用いた蓄熱システムでは、熱が蓄えられた過冷却状態の蓄熱材組成物を、熱が必要となるタイミングまで保持することがある。しかしながら、例えば自動車の内燃機関、またはボイラーの廃熱を熱源とするシステムに適用する場合には、蓄熱材組成物を保持している間に、蓄熱材組成物の温度低下により、不用意に酢酸ナトリウム三水和物が結晶化(凝固)してしまう可能性がある。このため、過冷却状態の蓄熱材組成物を低温環境下でより安定的に保持することが求められている。特に、蓄熱材組成物が使用される環境によっては、寒冷地の温度環境下(例えば−20℃の低温環境下)で十分な過冷却安定性を有することが求められる。
本発明者が検討したところ、特許文献3に提案された蓄熱材組成物によると、室温環境下での過冷却安定性を向上できるが、低温環境下で十分な過冷却安定性を得ることは困難である。
一方、特許文献4では、酢酸ナトリウム三水和物に水を添加することにより、過冷却安定性を高めることが開示されている。例えば、酢酸ナトリウム三水和物に対して20重量%の水を添加すると、固化温度を−23〜―31℃まで低くできること等が記載されている。特許文献4の記載に基づくと、特許文献4の蓄熱材組成物では、水の添加により酢酸ナトリウム濃度を50.2重量%以下に抑えることにより、−20℃の低温環境下での過冷却安定性を高めることができると考えられる。しかしながら、純水の添加により、酢酸ナトリウム濃度が低くなるので、融解潜熱量が低下し、十分な蓄熱密度が得られないおそれがある。
そこで、本発明者は、高い蓄熱密度を確保しつつ、低温環境下において酢酸ナトリウム三水和物を過冷却状態でより安定に保持し得る手段を検討した。この結果、酢酸ナトリウム、水、及び疎水基と親水基を含む有機化合物間の相互作用を利用することにより、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化(凝固)が抑制され、過冷却が促進されることを見出した。本発明者は、上記知見に基づいてさらに鋭意検討を重ね、本願発明に想到した。
なお、上述した特許文献2には、酢酸ナトリウム、水および疎水基と親水基を含む有機化合物(アルコール)を含む組成物(潜熱輸送用スラリー)が開示されている(特許文献2の実施例1〜5等)。特許文献2に開示された技術は、蓄熱材自体をスラリーとして流通させることによって蓄熱および放熱を行うことを前提としている。このため、高い流動性を有するように、酢酸ナトリウム、水およびアルコールの含有量が調整されている。具体的には、低温域においても流動性を確保するため、スラリー全体に対する固体分の割合を30%以下に抑えることが開示されている。本発明者が算出したところ、蓄熱材として酢酸ナトリウム三水和物を用いる場合、固体分の割合を30%以下に抑えるには、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度は36.5%以下となる。このように、酢酸ナトリウムの濃度が極めて低く、十分な蓄熱密度を得ることは困難である。
以下、本発明による実施形態の概要を説明する。
本発明の一態様の蓄熱材組成物は、酢酸ナトリウムと、水と、疎水基と親水基を含む有機化合物とを必須構成成分として含有し、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記疎水基と親水基を含む有機化合物からなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、前記3成分に占める前記有機化合物の重量パーセント濃度Waは1wt%以上である。かかる構成により、上記蓄熱材組成物では、酢酸ナトリウム、水、及び疎水基と親水基を含む有機化合物間の相互作用により、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化(凝固)が抑制されるので、過冷却が促進される。このため、この蓄熱材組成物を、低温環境下(例えば−20℃)においても過冷却状態で安定して保持することが可能になる。また、極性の大きい酢酸ナトリウムは、一般的に水よりも極性の小さい有機化合物に対して水よりも高い溶解度を示すことはない。従って、上記有機化合物の添加により、酢酸ナトリウム三水和物の融点以下で固相の酢酸ナトリウム三水和物の量が低下することもない。このようなことから、疎水基と親水基を含む有機化合物を添加された酢酸ナトリウム水溶液中の酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが52%以上であるとき、疎水基と親水基を含む有機化合物の添加により、蓄熱密度の低下を抑えながら過冷却安定性を向上する効果が得られる。
前記有機化合物に含まれる、前記疎水基は、特に限定されず、例えば炭化水素基である。前記親水基も、特に限定されず、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基である。前記炭化水素基は、特に限定されず、例えば、アルキル基である。アルキル基も、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
前記有機化合物は、特に限定されず、例えばアルコール、アミンである。
前記アルコールは、例えば一価アルコールである。
前記アルコールは、例えば直鎖アルコールである。
前記アルコールは、例えば多価アルコールである。
前記一価アルコールは、例えば、メタノールであり、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率Rは55/45以上である。
前記一価アルコールは、例えば、エタノールであり、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である。
A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:46wt%、アルコール:2wt%)
B(酢酸ナトリウム:54wt%、水:45wt%、アルコール:1wt%)
前記一価アルコールは、例えば1−プロパノールである。
前記一価アルコールは、例えば、2−プロパノールであり、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率Rは55/45以下であり、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは2wt%以上である。
前記一価アルコールは、例えば、n−ブチルアルコールであり、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である。
A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:47wt%、アルコール:1wt%)
B(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、アルコール:2wt%)
前記一価アルコールは、例えば、tert−ブチルアルコールであり、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率Rは55/45以上であり、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは2wt%以上である。
前記多価アルコールは、例えば、エチレングリコールであり、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である。A(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、アルコール:2wt%)
B(酢酸ナトリウム:52wt%、水:47wt%、アルコール:1wt%)
前記多価アルコールは、例えば、プロピレングリコールであり、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率Rは55/45以上であり、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは2wt%以上であり、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である。
A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:39wt%、アルコール:9wt%)
B(酢酸ナトリウム:53wt%、水:43wt%、アルコール:4wt%)
前記多価アルコールは、例えば、グリセリンであり、前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率Rは55/45以上であり、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記アルコールの重量パーセント濃度Waは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である。
A(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、アルコール:2wt%)
B(酢酸ナトリウム:54wt%、水:45wt%、アルコール:1wt%)
本発明の一態様の蓄熱方法は、上記のいずれかに記載の蓄熱材組成物を用いる方法であって、(a)固相である酢酸ナトリウム三水和物を含む第1状態の蓄熱材組成物が収容された前記蓄熱材容器と熱交換するように熱媒体を流通させることにより、前記蓄熱材容器内の前記第1状態の前記蓄熱材組成物を、前記酢酸ナトリウム三水和物の相変化温度以上の第1温度まで加熱する工程であって、これにより、前記酢酸ナトリウム三水和物を融解し、前記蓄熱材組成物を第2状態とする工程と、(b)前記蓄熱材容器内において、前記酢酸ナトリウム三水和物の相変化温度未満の第2温度で、前記第2状態の前記蓄熱材組成物を保持する工程と、(c)前記蓄熱材容器内において、前記酢酸ナトリウム三水和物を凝固させることにより、保持されていた前記第2状態の前記蓄熱材組成物を前記第1状態とする工程と、(d)前記蓄熱材容器と熱交換するように熱媒体を流通させることにより、前記酢酸ナトリウム三水和物の凝固によって前記蓄熱材組成物から放出された熱の少なくとも一部を回収する工程とを包含する。
本明細書では、「酢酸ナトリウムと水との重量比率R」は、水の重量に対する酢酸ナトリウムの重量の割合(酢酸ナトリウム/水)を指す。また、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは、酢酸ナトリウム、水および疎水基と親水基を含む有機化合物からなる3成分の合計重量に対する酢酸ナトリウムの重量の割合(wt%)を指す。同様に、水の重量パーセント濃度Ww、疎水基と親水基を含む有機化合物の重量パーセント濃度Waは、上記3成分の合計重量に対する水、疎水基と親水基を含む有機化合物の重量の割合(wt%)を指す。
アルコールとしては、特に限定されず、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの一価アルコールを用いてもよい。あるいは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを用いてもよい。また、直鎖型のアルコールを用いてもよい。例えば、直鎖型の一価アルコールである、n−ブチルアルコールが用いられる。アミンとしては、特に限定されず、例えば、メチルオレンジ(4’−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン−4−スルホン酸ナトリウム)を用いてもよい。
(実施の形態)
以下、実施例としてアルコールの種類及び組成比の異なる蓄熱材組成物を作製し、アルコール、水および酢酸ナトリウムの組成(重量パーセント濃度)と、蓄熱材組成物の過冷却安定性との関係を検討した。また、実施例としてアミン及び組成比の異なる蓄熱材組成物を作製し、アミン、水および酢酸ナトリウムの組成(重量パーセント濃度)と、蓄熱材組成物の過冷却安定性との関係を検討した。以下に、その方法および結果を説明する。なお、以下の実験において、酢酸ナトリウムへのアルコール添加により酢酸ナトリウム三水和物の融点以下で固相の酢酸ナトリウム三水和物の量が低下することはない。これは、以下の理由による。極性の大きい物質は、極性の大きい溶媒に溶ける。酢酸ナトリウムは極性の大きい物質であり、水はアルコールよりも極性が大きい溶媒であることから、酢酸ナトリウムのアルコールに対する溶解度は、水に対する溶解度よりも低くなる傾向がある。例えば、酢酸ナトリウムの水に対する溶解度は、25℃で、33.5%であるのに対して、エタノールに対する溶解度は微溶である。なお、酢酸ナトリウムへアミンを添加する場合も、同様に、酢酸ナトリウム三水和物の融点以下で固相の酢酸ナトリウム三水和物の量が低下することはない。これも、アミンよりも水の方が極性が高いからである。
(A)酢酸ナトリウム水溶液の過冷却安定性
まず、酢酸ナトリウム水溶液の過冷却安定性に対する、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度wの影響を検討した。なお、本明細書では、酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度(wt%)、すなわち、酢酸ナトリウムおよび水の合計重量に対する酢酸ナトリウムの重量の割合を、「酢酸ナトリウムの濃度w」と略し、3成分に占める酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsと区別する。
比較例A1〜A9では、酢酸ナトリウムの濃度w(wt%)の異なる酢酸ナトリウム水溶液をそれぞれ作製し、各酢酸ナトリウム水溶液を−20℃の低温環境で冷却して、酢酸ナトリウム三水和物(固相)が生成されるまでの時間(過冷却保持時間)を求めた。
各比較例における酢酸ナトリウム水溶液の作製方法、過冷却保持時間の測定方法および結果を以下に説明する。また、過冷却保持時間の測定結果を表
1に示す。
<比較例A1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが59wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
この後、酢酸ナトリウム水溶液の入ったサンプル瓶を−20℃に設定した冷凍庫に設置して、酢酸ナトリウム水溶液を冷却した。この結果、酢酸ナトリウムの無水物の生成が確認された。本比較例では過冷却状態の酢酸ナトリウム水溶液を得ることができなかった。
<比較例A2>
酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.1gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で、−20℃の低温環境下で酢酸ナトリウム水溶液を冷却し、酢酸ナトリウム水溶液中に酢酸ナトリウム三水和物(固相)が生成されるまでの時間(過冷却保持時間)を求めた。この結果、−20℃における過冷却保持時間は5分未満であることが確認された。
<比較例A3>
酢酸ナトリウムの濃度wが56wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は15分未満であることが確認された。
<比較例A4>
酢酸ナトリウムの濃度wが55wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.3gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は15分未満であることが確認された。
<比較例A5>
酢酸ナトリウムの濃度wが54wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は10分未満であることが確認された。
<比較例A6>
酢酸ナトリウムの濃度wが53wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は15分未満であることが確認された。
<比較例A7>
酢酸ナトリウムの濃度wが52wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は30分未満であることが確認された。
<比較例A8>
酢酸ナトリウムの濃度wが51wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.1gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は12時間以上であった。従って、高い過冷却安定性を有することが確認された。しかし、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度が低いため、組成物の重量あたりの潜熱量が小さい。これは、蓄熱密度を低下させる要因となり得る。
<比較例A9>
酢酸ナトリウムの濃度wが49wt%となるように、酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.2gとした点以外は、比較例A1と同様の方法で酢酸ナトリウム水溶液を作製した。
次いで、比較例A1と同様の方法で過冷却保持時間を求めたところ、−20℃における過冷却保持時間は12時間以上であった。従って、高い過冷却安定性を有することが確認された。しかし、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度が低いため、組成物の重量あたりの潜熱量は小さい。
Figure 0006386852
以上より、酢酸ナトリウム三水和物に添加する水の量を増加させると、−20℃の低温環境下における酢酸ナトリウ水溶液の過冷却安定性を向上できることが分かる。一方、添加する水の量が増加すると、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度が低くなるので、酢酸ナトリウム水溶液の重量あたりの潜熱量が低下する。このため、酢酸ナトリウム三水和物に水を添加することによって、高い過冷却安定性と高い潜熱量とを両立することは困難である。
(B)メタノール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、1価アルコールであるメタノールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例B1〜B11では、酢酸ナトリウム、水およびメタノールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。
また、各実施例の蓄熱材組成物における、酢酸ナトリウム、水およびメタノールからなる3成分に対する酢酸ナトリウム、水およびメタノールの重量パーセント濃度Ws、Ww、Wa、および、過冷却保持時間の測定結果を表2に示す。なお、酢酸ナトリウム、水およびメタノールの重量パーセント濃度Ws、Ww、Waを加算しても100%にならない実施例も存在するが、これは、重量パーセント濃度の値を四捨五入で求めたからである。
<実施例B1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.1gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にメタノールを0.3g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−メタノール1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例B2>
メタノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−メタノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、3時間以上5時間以下であった。
<実施例B3>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、メタノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−メタノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例B4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、メタノールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−メタノール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例B5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、メタノールの添加量を2.0gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−メタノール7wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例B6>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、メタノールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−メタノール9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例B7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メタノールの添加量を0.2gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−メタノール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例B8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、メタノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−メタノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃におる過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例B9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、メタノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−メタノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例B10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メタノールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−メタノール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例B11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メタノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例B1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−メタノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、メタノール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例B1〜B11および比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にメタノールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例B1〜B11と比較例A1〜A9の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−メタノールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、以下に説明する。
図1は、酢酸ナトリウム、水およびメタノールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図1に示す破線aは、酢酸ナトリウム、水、およびメタノールからなる3成分に占める酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが52wt%であることを示す。破線bは、上記3成分に占めるメタノールの重量パーセント濃度Waが1wt%であることを示す。また、破線cは、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが57/43であることを示す。上記の実施例B1〜B11は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を高めることができる。具体的には、上記3成分に占める酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが52wt%以上であれば、重量あたりの潜熱量の低下を抑制できる。上記3成分に占めるメタノールの重量パーセント濃度Waが1wt%以上であれば、メタノールの添加により、過冷却安定性を高めることができる。さらに、比較例A1〜A9の結果から分かるように、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rを57/43以下に設定することにより、蓄熱材組成物の溶液を低温で安定して保持することが可能である。
また、破線a、b、cに囲まれた領域のうち、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45以上となる領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。図1において、破線gはR=55/45を示している。従って、領域dは、破線a、b、c、gで囲まれた領域となる。上記実施例のうち実施例B1〜B10は、領域d内の組成を有している。
さらに、図1において、実施例B5、B6およびB10の各成分の重量パーセント濃度Ws、Ww、Waを示す3点を結ぶ線で囲まれた領域e(ハッチングで示す)では、−20℃の低温環境下で過冷却保持時間が12時間以上であり、さらに安定して過冷却状態を保持できる。
(C)エタノール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、1価アルコールであるエタノールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例C1〜C12では、酢酸ナトリウム、水およびエタノールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例における過冷却保持時間の測定結果を表3に示す。
<実施例C1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にエタノールを0.3g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−エタノール1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例C2>
エタノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−エタノール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例C3>
エタノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−エタノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例C4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、エタノールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−エタノール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、3時間以上5時間以下であった。
<実施例C5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.5g、エタノールの添加量を2.0gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−エタノール7wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例C6>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、エタノールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−エタノール9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例C7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エタノールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−エタノール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例C8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エタノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−エタノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例C9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エタノールの添加量を1.1gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−エタノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、5時間以上6時間以下であった。
<実施例C10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エタノールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−エタノール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例C11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エタノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−エタノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例C12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エタノールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例C1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エタノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−エタノール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、エタノール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例C1〜12と比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にエタノールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例C1〜12と比較例A1〜A9の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−エタノールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、説明する。
図2は、酢酸ナトリウム、水およびエタノールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図2に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例C1〜C12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、有機化合物としてエタノールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認される。
また、有機化合物としてエタノールを用いた蓄熱材組成物では、破線a、b、cに囲まれた範囲のうち、エタノールの重量パーセント濃度Waが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:46wt%、アルコール:2wt%)
B(酢酸ナトリウム:54wt%、水:45wt%、アルコール:1wt%)
図2において、点A、Bを結ぶ直線を破線fで示している。上記実施例のうちC1〜C11は、領域dに含まれる組成を有している。
さらに、図2において、実施例C5、C6およびC10の各成分の重量パーセント濃度Ws、Ww、Waを示す3点を結ぶ線で囲まれた領域e(ハッチングで示す)では、−20℃の低温環境下で過冷却保持時間が12時間以上であり、さらに安定して過冷却状態を保持できる。
(D)1−プロパノール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、1価アルコールである1−プロパノールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例D1〜D12および比較例DC1では、酢酸ナトリウム、水および1−プロパノールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例および比較例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例および比較例における過冷却保持時間の測定結果を表4に示す。
<実施例D1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.2gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液に1−プロパノールを0.3g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−1−プロパノール1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例D2>
1−プロパノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行い、酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−1−プロパノール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、3時間以上5時間以下であった。
<実施例D3>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.3g、1−プロパノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−1−プロパノール4wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例D4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を1.6gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水40wt%−1−プロパノール6wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例D5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を2.0gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−1−プロパノール8wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例D6>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.3g、1−プロパノールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−1−プロパノール9wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例D7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を0.2gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水45wt%−1−プロパノール1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例D8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−1−プロパノール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、6.5時間以上7.5時間以下であった。
<実施例D9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−1−プロパノール4wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例D10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を1.6gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−1−プロパノール6wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、3時間以上4時間以下であった。
<実施例D11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、1−プロパノールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−1−プロパノール1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例D12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、1−プロパノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−1−プロパノール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<比較例DC1>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、1−プロパノールの添加量を1.1gとした点以外は、実施例D1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム51wt%−水45wt%−1−プロパノール4wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は30分以上1時間未満であり、アルコールを添加しない比較例A8よりも過冷却保持時間は短くなった。また、この比較例では、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが低いので潜熱量は小さい。
Figure 0006386852
実施例D1〜12と比較例A1〜A9、DC1の結果から、酢酸ナトリウム水溶液に1−プロパノールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例D1〜12と比較例A1〜A9、DC1の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−1−プロパノールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、説明する。
図3は、酢酸ナトリウム、水および1−プロパノールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図3に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例D1〜D12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとして1−プロパノールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、図3において、実施例D4、D6およびD11の各成分の重量パーセント濃度Ws、Ww、Waを示す3点を結ぶ線で囲まれた領域e(ハッチングで示す)では、−20℃の低温環境下で過冷却保持時間が12時間以上であり、さらに安定して過冷却状態を保持できる。
(E)2−プロパノール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、1価アルコールである2−プロパノールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例E1〜E12および比較例EC1〜EC3では、酢酸ナトリウム、水および2−プロパノールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例および比較例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例および比較例における過冷却保持時間の測定結果を表5に示す。
<実施例E1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが53wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.1gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液に2−プロパノールを0.5g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−2−プロパノール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例E2>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−2−プロパノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例E3>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−2−プロパノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例E4>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−2−プロパノール6wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例E5>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、2−プロパノールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(56wt%−水43wt%−2−プロパノール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例E6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−2−プロパノール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例E7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−2−プロパノール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例E8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−2−プロパノール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例E9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−2−プロパノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例 A4よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例E10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−2−プロパノール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例E11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を2.0gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(53wt%−水40wt%−2−プロパノール7wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例 A6よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例E12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−2−プロパノール9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<比較例EC1>
2−プロパノールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行い、酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム51wt%−水45wt%−2−プロパノール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A8よりも短く、2時間以上3時間以下であった。また、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが低いため、組成物の重量あたりの潜熱量が小さい。
<比較例EC2>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、2−プロパノールの添加量を2.1gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム51wt%−水42wt%−2−プロパノール8wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A8よりも短く、1時間以上2時間以下であった。また、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが低いため、組成物の重量あたりの潜熱量が小さい。
<比較例EC3>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、2−プロパノールの添加量を3.0gとした点以外は、実施例E1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールを含む溶液(酢酸ナトリウム51wt%−水38wt%−2−プロパノール11wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A8よりも短く、30分以上1時間未満であった。また、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが低いため、組成物の重量あたりの潜熱量が小さい。
Figure 0006386852
実施例E1〜E12と比較例A1〜A9、EC1〜EC3の結果から、酢酸ナトリウム水溶液に2−プロパノールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例E1〜12と比較例A1〜A9、EC1〜EC3の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−2−プロパノールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、説明する。
図4は、酢酸ナトリウム、水および2−プロパノールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図4に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例E1〜E12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとして2−プロパノールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、図4において、破線a、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45となる破線g、および、2−プロパノールの重量パーセント濃度Waが2wt%となる破線hで囲まれた領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。すなわち、アルコールとして2−プロパノールを用いる場合、蓄熱材組成物のより有用な組成の範囲は、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45以下、2−プロパノールの重量パーセント濃度Waが0.2wt%以上、および酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが52wt%以上となる。上記実施例のうち実施例E1〜E4は、領域d内に含まれる組成を有している。
(F)n−ブチルアルコール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、1価アルコールであるn−ブチルアルコールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例F1〜F12では、酢酸ナトリウム、水およびn−ブチルアルコールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例における過冷却保持時間の測定結果を表6に示す。
<実施例F1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.2gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にn−ブチルアルコールを0.5g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−n−ブチルアルコール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例F2>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、n−ブチルアルコールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−n−ブチルアルコール4wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F3>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、n−ブチルアルコールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−n−ブチルアルコール6wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、n−ブチルアルコールの添加量を2.0gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−n−ブチルアルコール8wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、n−ブチルアルコールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−n−ブチルアルコール9wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、n−ブチルアルコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−n−ブチルアルコール2wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例F7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、n−ブチルアルコールの添加量を1.1gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−n−ブチルアルコール4wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、n−ブチルアルコールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコール(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−n−ブチルアルコール6wt%)を含む溶液を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、n−ブチルアルコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−n−ブチルアルコール1wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例F10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、n−ブチルアルコールの添加量を0.6gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−n−ブチルアルコール2wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例F11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、n−ブチルアルコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−n−ブチルアルコール1wt%)を作製した。
こ溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例F12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、n−ブチルアルコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例F1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−n−ブチルアルコール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例F1〜12及び比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にn−ブチルアルコールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
実施例F1〜12と比較例A1〜A9結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−n−ブチルアルコールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、以下に説明する。
図5は、酢酸ナトリウム、水およびn−ブチルアルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図5に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例F1〜F12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとしてn−ブチルアルコールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認される。
また、アルコールとしてn−ブチルアルコールを用いた蓄熱材組成物では、破線a、b、cに囲まれた範囲のうち、n−ブチルアルコールの重量パーセント濃度Waが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:47wt%、アルコール:1wt%)
B(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、アルコール:2wt%)
なお、図5において、上記の点A、Bを結ぶ直線を破線kで示す。上記実施例のうち実施例F1〜F10は、線dで示す領域内の組成を有している。
さらに、図5において、実施例F2、F5およびF10の各成分の重量パーセント濃度Ws、Ww、Waを示す3点を結ぶ線で囲まれた領域e(ハッチングで示す)では、−20℃の低温環境下で過冷却保持時間が12時間以上であり、さらに安定して過冷却状態を保持できる。
(G)tert−ブチルアルコール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、1価アルコールであるtert−ブチルアルコールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例G1〜G11では、酢酸ナトリウム、水およびtert−ブチルアルコールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例における過冷却保持時間の測定結果を表7に示す。
<実施例G1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.1gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にtert−ブチルアルコールを0.5g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−tert−ブチルアルコール2wt)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例G2>
tert−ブチルアルコールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−tert−ブチルアルコール4wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における、上述の比較例A4よりも長く、過冷却保持時間は1時間以上2時間以下であった。
<実施例G3>
tert−ブチルアルコールの添加量を1.6gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水40wt%−tert−ブチルアルコール6wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例G4>
tert−ブチルアルコールの添加量を2.1gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−tert−ブチルアルコール8wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例G5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.5g、tert−ブチルアルコールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−tert−ブチルアルコール9wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例G6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、tert−ブチルアルコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−tert−ブチルアルコール2wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例G7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、tert−ブチルアルコールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−tert−ブチルアルコール4wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例G8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、tert−ブチルアルコールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−tert−ブチルアルコール6wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例G9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、tert−ブチルアルコールの添加量を0.2gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−tert−ブチルアルコール1wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例G10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、tert−ブチルアルコールの添加量を0.2gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−tert−ブチルアルコール1wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例G11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、tert−ブチルアルコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例G1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−tert−ブチルアルコール2wt%)を作製した。
上記溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例G1〜11及び比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にtert−ブチルアルコールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
実施例G1〜11と比較例A1〜A6の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−tert−ブチルアルコールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、以下に説明する。
図6は、酢酸ナトリウム、水およびtert−ブチルアルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図6に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例G1〜G11は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとしてtert−ブチルアルコールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域内にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認される。
また、図6において、破線a、破線c、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45となる破線g、および、tert−ブチルアルコールの重量パーセント濃度Waが0.2wt%となる破線hで囲まれた領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。すなわち、アルコールとしてtert−ブチルアルコールを用いる場合、蓄熱材組成物のより有用な組成は、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45以上57/43以下、tert−ブチルアルコールの重量パーセント濃度Waが2wt%以上、および酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが52wt%以上の範囲内となる。上記実施例のうち実施例G1〜G8は、この範囲内の組成を有している。
(H)エチレングリコール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、2価アルコールであるエチレングリコールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例H1〜H12では、酢酸ナトリウム、水およびエチレングリコールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例における過冷却保持時間の測定結果を表8に示す。
<実施例H1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.1gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にエチレングリコールを0.5g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−エチレングリコール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例H2>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エチレングリコールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−エチレングリコール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例H3>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.3g、エチレングリコールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−エチレングリコール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、2時間以3時間以下であった。
<実施例H4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エチレングリコールの添加量を2.1gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−エチレングリコール8wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例H5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エチレングリコールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−エチレングリコール9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例H6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エチレングリコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−エチレングリコール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、3時間以上5時間以下であった。
<実施例H7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エチレングリコールの添加量を1.0gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−エチレングリコール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例H8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エチレングリコールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−エチレングリコール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、12時間以上であった。従って、特に過冷却安定性が高いことが確認された。
<実施例H9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、エチレングリコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−エチレングリコール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例H10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、エチレングリコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−エチレングリコール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例H11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エチレングリコールの添加量を0.2gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−エチレングリコール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例H12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、エチレングリコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例H1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−エチレングリコール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例H1〜12と比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にエチレングリコールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例H1〜H12と比較例A1〜A9の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−エチレングリコールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、以下に説明する。
図7は、酢酸ナトリウム、水およびエチレングリコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図7に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例H1〜H12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとしてエチレングリコールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認される。
また、アルコールとしてエチレングリコールを用いた蓄熱材組成物では、破線a、b、cに囲まれた範囲のうち、エチレングリコールの重量パーセント濃度Waが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、アルコール:2wt%)
B(酢酸ナトリウム:52wt%、水:47wt%、アルコール:1wt%)
図7において、点Aと点Bとを結ぶ直線を破線lで示す。上記実施例のうち実施例H1〜H10は、上記領域dに含まれる組成を有している。
さらに、図7において、実施例H8、H4およびH5の各成分の重量パーセント濃度Ws、Ww、Waを示す3点を結ぶ線で囲まれた領域e(ハッチングで示す)では、−20℃の低温環境下で過冷却保持時間が12時間以上であり、さらに安定して過冷却状態を保持できる。
(I)プロピレングリコール添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、2価アルコールであるプロピレングリコールを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例I1〜I11では、酢酸ナトリウム、水およびプロピレングリコールを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例における過冷却保持時間の測定結果を表9に示す。
<実施例I1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にプロピレングリコールを0.6g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−プロピレングリコール2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例I2>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、プロピレングリコールの添加量を1.1gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−プロピレングリコール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、5時間以上6.5時間以下であった。
<実施例I3>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、プロピレングリコールの添加量を1.6gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行い、酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水40wt%−プロピレングリコール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例I4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、プロピレングリコールの添加量を2.1gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−プロピレングリコール8wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例I5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.7g、プロピレングリコールの添加量を2.5gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−プロピレングリコール9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例I6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、プロピレングリコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−プロピレングリコール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、7.5時間以上8.5時間以下であった。
<実施例I7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、プロピレングリコールの添加量を1.1gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−プロピレングリコール4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例I8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、プロピレングリコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−プロピレングリコール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例I9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、プロピレングリコールの添加量を0.3gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−プロピレングリコール1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例I10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、プロピレングリコールの添加量を1.5gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−プロピレングリコール6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例I11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、プロピレングリコールの添加量を0.5gとした点以外は、実施例I1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−プロピレングリコール2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例 A7よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例I1〜I11と比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にプロピレングリコールを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例I1〜I11と比較例A1〜A9の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−プロピレングリコールからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、以下に説明する。
図8は、酢酸ナトリウム、水およびプロピレングリコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図8に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例I1〜I11は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとしてプロピレングリコールを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認される。
また、アルコールとしてプロピレングリコールを用いた蓄熱材組成物では、破線a、b、cに囲まれた範囲のうち、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45以上、プロピレングリコールの重量パーセント濃度Waが2wt%以上、かつ、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線(破線iで示す)以上である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:39wt%、アルコール:9wt%)
B(酢酸ナトリウム:53wt%、水:43wt%、アルコール:4wt%)
図8において、領域dは、破線i、R=57/43である破線c、R=55/45である破線g、Wa=2wt%である破線hで囲まれた領域である。上記実施例のうち実施例I1〜I7は、領域d内の組成を有している。
(J)グリセリン添加による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、3価アルコールであるグリセリンを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例J1〜J11では、酢酸ナトリウム、水およびグリセリンを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例における過冷却保持時間の測定結果を表10に示す。
<実施例J1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にグリセリンを0.6g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−グリセリン2wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A3よりも長く、3時間以上5時間以下であった。
<実施例J2>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を1.0gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−グリセリン4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例J3>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を1.5gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−グリセリン6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例J4>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を2.0gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−グリセリン7wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例J5>
酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、グリセリンの添加量を2.6gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−グリセリン9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例J6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を0.3gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−グリセリン1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例J7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を0.6gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−グリセリン2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例J8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を1.2gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−グリセリン4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例J9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、グリセリンの添加量を1.6gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−グリセリン6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例J10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.1g、グリセリンの添加量を0.3gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−グリセリン1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例J11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.2g、グリセリンの添加量を0.3gとした点以外は、実施例J1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−グリセリンを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−グリセリン2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、アルコール添加による効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
Figure 0006386852
実施例J1〜J11と比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にグリセリンを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例J1〜J11と比較例A1〜A9の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−グリセリンからなる蓄熱材組成物において、高い潜熱量と、高い過冷却安定性とを両立し得る組成範囲を見出したので、以下に説明する。
図9は、酢酸ナトリウム、水およびグリセリンの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図9に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例J1〜J11は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、アルコールとしてグリセリンを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が、破線a、b、cに囲まれた領域内にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認される。
また、アルコールとしてグリセリンを用いた蓄熱材組成物では、破線a、b、cに囲まれた範囲のうち、酢酸ナトリウムと水との重量比率Rが55/45以上であり、かつ、アルコール(グリセリン)の重量パーセント濃度Waが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線(破線jで示す)以上である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、アルコール:2wt%)
B(酢酸ナトリウム:54wt%、水:45wt%、アルコール:1wt%)
図9において、領域dは、破線j、R=55/45である破線g、Ws=52(wt%)である破線a、R=57/43である破線cで囲まれた領域となる。上記実施例のうち実施例J1〜J9は、領域d内の組成を有している。
(A)〜(J)の検討結果から分かるように、酢酸ナトリウム水溶液にアルコールを添加し、各成分の組成を制御することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、低温環境下における過冷却安定性を向上できる。また、アルコールのなかでも、一価アルコールを用いるとより高い効果が得られる。一価アルコールのなかでは、特にn−ブチルアルコールを用いると、より顕著な効果が得られる。
(K)両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルによる過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、アルコールと同様に、疎水基と親水基を含む両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例K1〜K12および比較例KC1では、酢酸ナトリウム、水および両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。
各実施例および比較例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例および比較例における過冷却保持時間の測定結果を表10に示す。なお、表11では、添加したアルコールである両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを変性シリコーンオイルと略して表記している。
<実施例K1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液に両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル(信越シリコーン製KF6002)を0.25g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例K2>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を0.5gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例K3>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を1.0gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A4よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例K4>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を1.5gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例K5>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を2.0gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル7wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A6よりも長くなっており、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例K6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を2.5gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例K7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を0.25gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例K8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を0.5gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A5よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例K9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を1gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例K10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を1.5gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例K11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を0.25gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、2時間以上3時間以下であった。
<実施例K12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を0.5gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<比較例KC1>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの添加量を1.0gとした点以外は、実施例K1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを含む溶液(酢酸ナトリウム51wt%−水45wt%−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A8よりも短く、1時間以上2時間以下であった。また、酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsが低いため、組成物の重量あたりの潜熱量が小さい。
Figure 0006386852
実施例K1〜K12と比較例A1〜A9、KC1の結果から、酢酸ナトリウム水溶液に親水基として、ヒドロキシ基を備える有機化合物の一種である、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。なお、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルにおいて、疎水基は、−(Si(CH32−O)n−に相当する。
また、実施例K1〜12と比較例A1〜A9、KC1の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルからなる蓄熱材組成物において、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を両立し得る組成範囲を見出したので、説明する。
図10は、酢酸ナトリウム、水および両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図10に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例K1〜K12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、図において、破線a、破線b、酢酸ナトリウム重量パーセント濃度Wsが55wt%以下となる破線k、かつ、水の重量パーセント濃度Wが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線(破線lで示す)以上である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:55wt%、水:41wt%、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル:4wt%)
B(酢酸ナトリウム:52wt%、水:42wt%、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイル:6wt%)
上記実施例のうち実施例K3、K7〜K12は、領域d内に含まれる組成を有している。
(L)メチルオレンジ(4’−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン−4−スルホン酸ナトリウム)による過冷却安定性
次に、酢酸ナトリウムを主成分とする酢酸ナトリウム溶液に、アルコールと同様に、疎水基と親水基を含むメチルオレンジを添加することによる過冷却安定性への影響を検討した。
実施例L1〜L12では、酢酸ナトリウム、水およびメチルオレンジを含む蓄熱材組成物を作製し、これらの過冷却保持時間を求めた。メチルオレンジは、アミンの一例である。
各実施例における蓄熱材組成物の作製方法、および過冷却保持時間の測定結果を以下に説明する。なお、過冷却保持時間の測定方法は、上述した比較例A1〜A9と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例および比較例における過冷却保持時間の測定結果を表12に示す。
<実施例L1>
ガラス製サンプル瓶に、酢酸ナトリウムの濃度wが57wt%となるように、関東化学製の酢酸ナトリウム三水和物(特級)および純水からなる組成物を調整した。酢酸ナトリウムと水との合計重量を25.0gとした。次いで、上記組成物の入ったサンプル瓶を、70℃に設定した乾燥炉に設置して、上記組成物を加熱し、酢酸ナトリウム水溶液を作製した。この酢酸ナトリウム水溶液にメチルオレンジを0.25g添加し、本実施例の蓄熱材組成物を得た。
得られた蓄熱材組成物を、70℃に設定した乾燥炉内で加熱することにより、酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水43wt%−メチルオレンジ1wt%)を作製した。
この後、上記溶液を、上述した比較例A1〜A9と同様の方法で冷却し、−20℃における過冷却保持時間を求めた。この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L2>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を0.5gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム56wt%−水42wt%−メチルオレンジ2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A3よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L3>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を1.0gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム55wt%−水41wt%−メチルオレンジ4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A4よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L4>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を1.5gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水41wt%−メチルオレンジ6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L5>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を2.0gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水40wt%−メチルオレンジ7wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A6よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L6>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを57wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を2.5gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水39wt%−メチルオレンジ9wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L7>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を0.25gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水45wt%−メチルオレンジ1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L8>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を0.5gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム54wt%−水44wt%−メチルオレンジ2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A5よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L9>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を1gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム53wt%−水43wt%−メチルオレンジ4wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A6よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
<実施例L10>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを55wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を1.5gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水42wt%−メチルオレンジ6wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L11>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を0.25gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水47wt%−メチルオレンジ1wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述した比較例A7よりも長くなっており、メチルオレンジによる効果はみられたものの、30分以上1時間未満であった。
<実施例L12>
酢酸ナトリウム水溶液における酢酸ナトリウムの濃度wを53wt%、酢酸ナトリウム三水和物(特級)と純水との合計重量を25.0g、メチルオレンジの添加量を0.5gとした点以外は、実施例L1と同様の方法で、蓄熱材組成物の作製および加熱を行った。酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジを含む溶液(酢酸ナトリウム52wt%−水46wt%−メチルオレンジ2wt%)を作製した。
この溶液の−20℃における過冷却保持時間は、上述の比較例A7よりも長く、1時間以上2時間以下であった。
Figure 0006386852
実施例L1〜L12と比較例A1〜A9の結果から、酢酸ナトリウム水溶液にアミンの一種であるメチルオレンジを添加することにより、蓄熱密度の低下を抑制しつつ、過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、実施例L1〜12と比較例A1〜A9の結果に基づいて、酢酸ナトリウム−水−メチルオレンジからなる蓄熱材組成物において、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上し得る組成範囲を見出したので、説明する。
図11は、酢酸ナトリウム、水およびメチルオレンジの組成を重量パーセント濃度で示す三角図である。図11に示す破線a、b、cは、図1を参照しながら説明したように、それぞれ、Ws=52(wt%)、Wa=1(wt%)、およびR=57/43を示す。
上記の実施例L1〜L12は、何れも、これらの破線a、b、cに囲まれた領域内の組成を有している。従って、メチルオレンジを用いても、蓄熱材組成物の各構成要素の組成が破線a、b、cに囲まれた領域にあれば、潜熱量の低下を抑えつつ、従来よりも過冷却安定性を向上できることが確認された。
また、図において、破線a、酢酸ナトリウム重量パーセント濃度Wsが53wt%以下となる破線m、水の重量パーセント濃度Wが、下記第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線(破線nで示す)以下、かつ、水の重量パーセント濃度Wが、下記第1の点Cと第2の点Dとを結ぶ直線(破線oで示す)以下である領域(線dで示す)であれば、過冷却安定性をより向上できる。
A(酢酸ナトリウム:53.5wt%、水:43.5wt%、メチルオレンジ:3wt%)
B(酢酸ナトリウム:52.5wt%、水:46wt%、メチルオレンジ:1.5wt%)
C(酢酸ナトリウム:52.5wt%、水:42.5wt%、メチルオレンジ:5wt%)
D(酢酸ナトリウム:52wt%、水:44wt%、メチルオレンジ:4wt%)
上記実施例のうち実施例L9、L12は、領域d内に含まれる組成を有している。
(M)過冷却安定性を向上させるメカニズムの検討
次に、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を用いて、過冷却安定性を向上させるメカニズムの検討を行った。
ここでは、以下の手順で、酢酸ナトリウムに種類の異なるアルコールを添加した測定用の試料を調製した。
まず、酢酸ナトリウムおよびアルコールを、アルコールのOH基モル数と、酢酸ナトリウムモル数とが同じとなるように配合することにより、測定用の試料を作製した。試料の濃度は0.0055mol/gとした。具体的には、酢酸ナトリウムに対して、1価アルコールは同モル、2価アルコールは1/2モル、3価アルコールは、1/3モルを配合した。比較のため、酢酸ナトリウムのみ(ブランク)の試料も作製した。
また、アルコールのうちブタノールは溶解しにくいことから、上記と同様にブタノールおよび酢酸ナトリウムを配合した後、純水で6倍に希釈することにより、試料を作製した。さらに、ブタノールを添加した試料と条件を合わせて比較するため、酢酸ナトリウムのみ(ブランク)を6倍希釈した試料、1−プロパノールを酢酸ナトリウムに添加し、6倍希釈した試料も作製した。
13C−NMR分析では、装置としてAVANCE500(Bruker社製)を使用し、ロック溶媒として重クロロホルム(CDCl3)二重管を用いた。ここでは、測定温度35℃、積算回数512回の条件で上記試料の測定を実施した。
測定結果を図12、13に示す。図12は、13C−NMRスペクトルのC=Oピーク付近の拡大図であり、図13は、6倍希釈を行った試料の13C−NMRスペクトルのC=Oピーク付近の拡大図である。
図12では、酢酸ナトリウムのみ(ブランク)の試料のピークの位置を基準とする。図12からわかるように、1価アルコールを添加した試料(0.0055mol/g)では、メタノールから1−プロパノールまで、炭素数が増えるほど、ピークの位置は、基準となる位置から右側(高磁場側)にシフトしている。また、図13に示す結果からわかるように、プロパノールを添加した試料よりも、ブタノールを添加した試料の方が、ピークの位置がより右側(高磁場側)シフトしている。このことから、炭素数が多いアルコールほど、カルボニルのピークが高磁場側にシフトすることがわかる。さらに、直鎖型アルコールよりも分岐型アルコールの方が右側(高磁場側)にシフトしている。高磁場側へのシフト量が大きいほど、アルコールと酢酸ナトリウムとの相互作用が大きいと考えられる。高磁場側へのシフトは、アルコールの炭化水素基(疎水基)の電子供与性に依存していると考えられる。また、アルコールの炭素数が多いほど、アルコールの炭化水素基(疎水基)が酢酸ナトリウムイオンの周囲に存在しやすくなり、酢酸ナトリウムの電子吸引性のカルボキシル基とアルコールの電子供与性の炭化水素基(疎水基)との相互作用が大きくなると考えられる。
また、酢酸ナトリウムのみ(ブランク)の試料、およびプロパノールを添加した試料について、図12に示すピーク位置と、6倍希釈した場合のピーク位置(図13)とを比較すると、希釈する(溶質濃度を低くする)ことによって、ピークが低磁場側にシフトしている。
一方、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを添加した試料では、一価アルコールを添加した試料よりも、高磁場側へのシフト量は小さい。これは、アルコールの電子供与性は、炭化水素基のOH基から離れた部分の鎖長が長いほど大きくなるが、多価アルコールは、一価アルコールに比べ、炭化水素基のOH基から離れた部分の鎖長が短く、電子供与性が小さくなるからと考えられる。
NMRの分析結果および(A)〜(J)に示す結果から、高磁場側へのシフト量の大きさ(相互作用の大きさ)と、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化を抑制する効果とが関連していることが確認できる。すなわち、酢酸ナトリウム、水、アルコール間の相互作用が大きくなるほど、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化(凝固)が抑制され、過冷却を促進するものと考えられる。具体的には、酢酸ナトリウムのカルボニル基とアルコールの炭化水素基(疎水基)との相互作用、および酢酸ナトリウム三水和物中の水分子とアルコールのOH基(親水基)との相互作用により、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化(凝固)が抑制される。このため、アルコールとして、炭素鎖の長いn−ブチルアルコールを用いると、上記の相互作用を大きくできるので、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化がより抑制され、過冷却安定性を向上できる。
なお、本例においては、酢酸ナトリウム水溶液にアルコールを添加する場合について検討したが、アルコールと異なる、疎水基及び親水基を備える他の有機化合物を酢酸ナトリウム水溶液に添加する場合についても、同様の結果が得られると推測される。つまり、酢酸ナトリウムのカルボニル基と有機化合物の疎水基との間の相互作用、及び水と有機化合物の親水基との間の相互作用により、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化(凝固)が抑制される。また、疎水基が炭化水素基であるとき、炭素数が多いほど上記相互作用が大きくなるので、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化がより抑制され、過冷却安定性を向上できる。
(N)蓄熱方法
次いで、図14を参照しながら、本実施形態の蓄熱材組成物を用いた蓄熱方法の一例を説明する。
まず、蓄熱材容器に収容された第1状態の蓄熱材組成物を用意する。「第1状態」は、蓄熱前の蓄熱材組成物の状態であり、例えば、固相である酢酸ナトリウム三水和物を含む固液共存状態である。
次いで、蓄熱材容器と熱交換するように熱媒体を流通させることにより、蓄熱材容器内の第1状態の蓄熱材組成物を、酢酸ナトリウム三水和物の相変化温度以上の第1温度(例えば70℃)まで加熱する(蓄熱工程)。これにより、酢酸ナトリウム三水和物が融解し、蓄熱材組成物は第2状態になる。「第2状態」は、酢酸ナトリウム三水和物の融解により熱が蓄えられた蓄熱材組成物の状態であり、例えば液体状態(酢酸ナトリウム−水−アルコール溶液)である。
続いて、蓄熱材容器内において、酢酸ナトリウム三水和物の相変化温度未満の第2温度(−20℃以上25℃以下、例えば−20℃)で、第2状態の蓄熱材組成物を保持する(過冷却保持工程)。蓄熱材組成物の温度は、例えば熱媒体による加熱を停止することによって、第2温度まで低下させてもよい。蓄熱材組成物は、第2状態(液体状態)のままで保持される。従って、保持されている蓄熱材組成物は過冷却状態である。
この後、必要に応じて、蓄熱材容器内で保持されていた第2状態の蓄熱材組成物の酢酸ナトリウム三水和物を凝固させる(過冷却解除工程)。これにより、蓄熱材組成物は第1状態となる。酢酸ナトリウム三水和物を凝固させる手段(過冷却解除手段)は、特に限定しないが、公知の方法を用いることができる。例えば特許文献1には、金属棒などで刺激を与えて、酢酸ナトリウム三水和物の結晶化を誘発することが開示されている。
酢酸ナトリウム三水和物を凝固させると、蓄熱材組成物から潜熱が放出される。放出された熱の少なくとも一部を回収する(熱回収工程)。熱の回収は、例えば蓄熱材容器と熱交換するように熱媒体を流通させることによって行ってもよい。
次に、図15を参照しながら、上記の蓄熱方法を行うための蓄熱システムの一例を説明する。
蓄熱システム100は、蓄熱装置10と、熱源装置20と、熱出力装置22と、これらの間で熱媒体を流通させる熱媒体流路14とを備えている。蓄熱装置10は、蓄熱材組成物を収容する容器12と、蓄熱材組成物の過冷却状態を解除するための過冷却解除手段24とを有している。熱媒体流路14には、ポンプ16および三方弁18が設けられている。熱媒体流路14は、熱媒体が容器12を介して蓄熱材組成物と熱交換し得るように構成されている。
蓄熱工程では、熱媒体(例えば水)を矢印26の方向に流通させる。熱媒体は、蓄熱装置10と熱源装置20との間で循環し、蓄熱装置10内の蓄熱材組成物を加熱する。これにより、蓄熱材組成物内の酢酸ナトリウム三水和物が融解し、第2状態となる。
過冷却保持工程では、例えば熱媒体の流通を停止する。この結果、蓄熱材組成物の温度は低下し、過冷却状態となる。なお、外部の温度変化により、必要に応じて、熱媒体を流通させ、蓄熱材組成物を所定の温度まで加温してもよい。
過冷却解除工程および熱回収工程では、過冷却解除手段24を用いて、容器12内で、蓄熱材組成物内の酢酸ナトリウム三水和物を凝固させ、蓄熱材組成物から熱を放出させる。このとき、熱媒体(例えば水)を矢印28の方向に流通させる。熱媒体は、蓄熱装置10と熱出力装置22との間で循環し、これにより、蓄熱材組成物から放出した熱を熱出力装置22に回収することができる。回収された熱は、熱出力装置22から、暖房、または給湯などの用途に応じて利用される。
なお、本実施形態の蓄熱方法は上記の方法に限定されない。ただし、酢酸ナトリウムの含有量を考慮すると、第1状態の蓄熱材組成物の流動性は高くないと考えられるため、上述したように、蓄熱材組成物を蓄熱材容器内に収容した状態で、蓄熱工程から熱回収工程まで行うことが有用である。また、本実施形態の蓄熱材組成物は、図15に示す蓄熱システムに限定されず、種々の構成を有するシステムにおいて利用される。例えば特許文献1に開示された蓄熱システムに使用してもよい。参考のために、特許文献1の開示内容の全てを本明細書に援用する。また、本実施形態の蓄熱方法で使用する蓄熱材組成物は、酢酸ナトリウムと、水と、アルコールとを必須構成成分として含有する上記例に限定されるものではない。蓄熱材組成物は、酢酸ナトリウムと、水と、疎水基及び親水基を含む有機化合物を必須構成成分として含有すれば、いずれの形態であっても構わない。実施形態の蓄熱方法で使用する蓄熱材組成物は、例えば、酢酸ナトリウムと、水と、アミンとを必須構成成分として含有しても構わない。
本発明の一態様の蓄熱材組成物は、種々の蓄熱装置、またはシステムに使用され得る。特に、寒冷地等の氷点以下の低温環境下(例えば、−20℃)においても、過冷却状態の蓄熱材組成物を安定して保持できることから、例えば、自動車の内燃機関、ボイラーの廃熱等を熱源とする蓄熱装置に利用してもよい。
10 蓄熱装置
12 容器
14 熱媒体流路
16 ポンプ
18 三方弁
20 熱源装置
22 熱出力装置
24 過冷却解除手段
100 蓄熱システム

Claims (15)

  1. 酢酸ナトリウムと、水と、1−プロパノールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記1−プロパノールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記1−プロパノールの重量パーセント濃度Waは1wt%以上である蓄熱材組成物。
  2. 酢酸ナトリウムと、水と、n−ブチルアルコールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記n−ブチルアルコールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記n−ブチルアルコールの重量パーセント濃度Waは1wt%以上であり
    前記酢酸ナトリウム、前記水および前記n−ブチルアルコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記n−ブチルアルコールの重量パーセント濃度Waは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である蓄熱材組成物。
    A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:47wt%、n−ブチルアルコール:1wt%)
    B(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、n−ブチルアルコール:2wt%)
  3. 酢酸ナトリウムと、水と、メタノールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は55/45以上であり、かつ、57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記メタノールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記メタノールの重量パーセント濃度Waは1wt%以上である蓄熱材組成物。
  4. 酢酸ナトリウムと、水と、エタノールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記エタノールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記エタノールの重量パーセント濃度Waは1wt%以上であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水および前記エタノールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記エタノールの重量パーセント濃度Ws、Ww、Waは、3つの点X、Y、Zを結ぶ線で囲まれた領域に含まれる蓄熱材組成物。
    X(酢酸ナトリウム:53wt%、水:40wt%、エタノール:7wt%)
    Y(酢酸ナトリウム:52wt%、水:39wt%、エタノール:9wt%)
    Z(酢酸ナトリウム:52wt%、水:42wt%、エタノール:6wt%)
  5. 酢酸ナトリウムと、水と、2−プロパノールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は55/45以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記2−プロパノールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記2−プロパノールの重量パーセント濃度Waは2wt%以上である蓄熱材組成物。
  6. 酢酸ナトリウムと、水と、tert−ブチルアルコールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は55/45以上57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記tert−ブチルアルコールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記tert−ブチルアルコールの重量パーセント濃度Waは2wt%以上である蓄熱材組成物。
  7. 酢酸ナトリウムと、水と、エチレングリコールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記エチレングリコールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記エチレングリコールの重量パーセント濃度Waは1wt%以上であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水および前記エチレングリコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記エチレングリコールの重量パーセント濃度Ws、Ww、Waは、3つの点X、Y、Zを結ぶ線で囲まれた領域に含まれる蓄熱材組成物。
    X(酢酸ナトリウム:53wt%、水:40wt%、エチレングリコール:8wt%)
    Y(酢酸ナトリウム:52wt%、水:39wt%、エチレングリコール:9wt%)
    Z(酢酸ナトリウム:52wt%、水:42wt%、エチレングリコール:6wt%)
  8. 酢酸ナトリウムと、水と、プロピレングリコールとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は55/45以上57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記プロピレングリコールからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記プロピレングリコールの重量パーセント濃度Waは2wt%以上であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水および前記プロピレングリコールの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である蓄熱材組成物。
    A(酢酸ナトリウム:52wt%、水:39wt%、プロピレングリコール:9wt%)
    B(酢酸ナトリウム:53wt%、水:43wt%、プロピレングリコール:4wt%)
  9. 酢酸ナトリウムと、水と、グリセリンとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は55/45以上57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記グリセリンからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記グリセリンの重量パーセント濃度Waは1wt%以上であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水および前記グリセリンの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記グリセリンの重量パーセント濃度Waは、第1の点Aと第2の点Bとを結ぶ直線以上である蓄熱材組成物。
    A(酢酸ナトリウム:56wt%、水:42wt%、グリセリン:2wt%)
    B(酢酸ナトリウム:54wt%、水:45wt%、グリセリン:1wt%)
  10. 酢酸ナトリウムと、水と、両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記両末端型/カルビノール変性シリコーンオイルの重量パーセント濃度Waは1wt%以上である、蓄熱材組成物。
  11. 酢酸ナトリウムと、水と、疎水基と親水基を含むアミンとを必須構成成分として含有し、
    前記酢酸ナトリウムと前記水との重量比率R(酢酸ナトリウム/水)は57/43以下であり、
    前記酢酸ナトリウム、前記水、および前記アミンからなる3成分に占める前記酢酸ナトリウムの重量パーセント濃度Wsは52wt%以上であり、
    前記3成分に占める前記アミンの重量パーセント濃度Waは1wt%以上である、蓄熱材組成物。
  12. 前記アミンは4’−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン−4−スルホン酸ナトリウムである、請求項11に記載の蓄熱材組成物。
  13. 前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アミンの組成を重量パーセント濃度で示す三角図において、前記酢酸ナトリウム、前記水および前記アミンの重量パーセント濃度Ws、Ww、Waは、点A、Bを結ぶ直線、点C、Dを結ぶ直線、点E、Fを結ぶ直線、およびWs=52wt%である直線で囲まれた領域に含まれる、請求項12に記載の蓄熱材組成物。
    A(酢酸ナトリウム:53.5wt%、水:43.5wt%、アミン:3wt%)
    B(酢酸ナトリウム:52.5wt%、水:46wt%、アミン:1.5wt%)
    C(酢酸ナトリウム:52.5wt%、水:42.5wt%、アミン:5wt%)
    D(酢酸ナトリウム:52wt%、水:44wt%、アミン:4wt%)
    E(酢酸ナトリウム:54wt%、水:44wt%、アミン:2wt%)
    F(酢酸ナトリウム:52wt%、水:42wt%、アミン:6wt%)
  14. 請求項1から13のいずれか1項に記載の蓄熱材組成物を用いる方法であって、
    (a)固相である酢酸ナトリウム三水和物を含む第1状態の蓄熱材組成物が収容された蓄熱材容器と熱交換するように熱媒体を流通させることにより、前記蓄熱材容器内の前記第1状態の前記蓄熱材組成物を、前記酢酸ナトリウム三水和物の相変化温度以上の第1温度まで加熱する工程であって、これにより、前記酢酸ナトリウム三水和物を融解し、前記蓄熱材組成物を第2状態とする工程と、
    (b)前記蓄熱材容器内において、前記酢酸ナトリウム三水和物の相変化温度未満の第2温度で、前記第2状態の前記蓄熱材組成物を保持する工程と、
    (c)前記蓄熱材容器内において、前記酢酸ナトリウム三水和物を凝固させることにより、保持されていた前記第2状態の前記蓄熱材組成物を前記第1状態とする工程と、
    (d)前記蓄熱材容器と熱交換するように熱媒体を流通させることにより、前記酢酸ナトリウム三水和物の凝固によって前記蓄熱材組成物から放出された熱の少なくとも一部を回収する工程と
    を包含する方法。
  15. 前記工程(c)では、前記第2状態の前記蓄熱材組成物に金属棒で刺激を与えることにより、酢酸ナトリウム三水和物を凝固させる、請求項14に記載の方法。
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