JP6342733B2 - 電鋳部品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気めっき法による電鋳部品とその製造方法に関する。
一般に、嵌合による一体化と耐磨耗性等の耐久性を要求される部品の作製は、延性展性および切削性が高い金属材料を機械加工し、その表面に高硬度、耐磨耗性を有するめっき等の表面処理を施すことにより嵌合性と耐久性を高めている。
しかしながら、腕時計等に使用される微細部品では、寸法精度、表面形態の変化等により、めっき等の表面処理では、厚みに限定があり、長期間に渡り高精度、高信頼性を維持することが困難であった。
特に歯車等の摺動部品では、耐磨耗性、硬さ等に優れた材料を使用することが望まれており、高硬度な材料の使用も試みられているが、一般的にこのような物質は脆く、歯車に設けられている軸穴に軸部品を打ち込み等により嵌合、一体化する際、破壊、破損等を起こすという問題がある。
これに対して、機械加工が容易な結晶性金属で一体成型された歯車において、歯先摺動部付近の応力が掛かる部分を金属ガラス化することにより耐磨耗性、耐久性を向上する手段等が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
一方、古くから微細金属部品を形成する方法として、電気めっきを利用した電鋳法が用いられているが、近年、電鋳精度を向上するために感光性材料を用いて電鋳型形状に加工するLIGA(Lithographie Galvanofomung Abformung)法によって電鋳型を製造し、合わせて微小な形状を有する金属部品や金型を製造することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
LIGA法による電鋳型の製造では、X線による露光方法と紫外線による露光方法が行われていが、生産性等から後者の紫外線による露光方法が一般的に用いられている。紫外線露光によるLIGA法による電鋳体の作製では導電性を有する基板に数μm〜数百μmの膜厚のフォトレジストをコートし、露光現像により電鋳物を析出させるための開口部を形成し、電鋳液内に浸漬された基板に通電することにより、開口部より電鋳物を析出する。この方法を用いて腕時計用微細部品等の製造への提案がなされており、その性能を高めるために電鋳体の厚み方向に対して、異種の金属を積層したり、歯車の摺動面に凹凸形状を形成することも提案されている(例えば、特許文献3および4参照)。
さらに、LIGA法により作製された腕時計等の微細歯車において局部的に熱処理を施し熱処理部のみに相変態を起こすことにより該当する部分のみの硬さを高めることにより部品の性能を向上する手段が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、LIGA法により作製される電鋳体では、電鋳体と他の部品を一体化する軸穴部等の嵌合部と歯先等の摺動部、磨耗部を構成する物質組成や組織は、ほぼ同一であり、積層や凹凸形状ではこれらの基本的物性を変えることは難しい。
また、相変態を起こすことによる方法では、局部的な熱処理を行う必要があり、特殊かつ高価な設備を使用することに加え、微細な部品では、熱処理部と非熱処理部における熱履歴の制御が困難であり、大量生産、低コスト化という点では不利な場合があった。
特開2009−180709号公報 特開平11−15126号公報 特開2009−228893号公報 特開2010−91544号公報 特開2013−96009号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、LIGA法により作製される微細電鋳部品のうち、歯車、バネ部品のように耐磨耗性、バネ性等が要求されるとともに、他部品との嵌合等の機械的接続・接合により一体化される部品において、嵌合・一体化性に優れ、耐磨耗性やバネ耐久に優れた電鋳部品とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係わる電鋳部品は、他部品が嵌合可能な篏合部と前記他部品とは異なるもう一つの他部品と摺動可能な摺動部とを少なくとも有する電鋳部品であって、前記嵌合部は第一の金属により構成され、前記摺動部は、前記第一の金属と組織または組成が異なる第二の金属により構成されることを特徴とする。
かかる特徴により、この電鋳部品は、機械的嵌合、締結部を有する歯車やバネ等の電鋳部品であって、嵌合部、締結部に、この嵌合、締結加工に優れた電鋳金属材料を用い、摺動、バネ変形等の機械的駆動、変形を伴う部分に、高硬度、高耐久バネ性を有する電鋳金属材料を用いていることから、嵌合、締結を行うべき軸部品等との嵌合、締結を容易且つ信頼性高く行うことが出来ると同時に摺動時における耐磨耗性やバネ動作における高信頼性、耐久性を確保することが出来る。
本発明に係わる電鋳部品は、電鋳材料である第一の金属の結晶粒の大きさが第二の金属の結晶粒より大きいことを特徴とする。
かかる特徴により、この電鋳部品は、嵌合、締結部を構成する第一の金属の結晶粒が大きいので、延性、展性に優れており、軸部品等との嵌合性、締結性を高め容易にすると同時に、第二の金の結晶粒が小さいので、硬度、バネ性等の特性に優れたものとすることができる。
本発明に係わる電鋳部品は、電鋳材料である第一の金属の結晶粗大化開始温度が前記電鋳材料である第二の金属の結晶化開始温度より低いことを特徴とする。
かかる特徴により、この電鋳部品は、第一の金属の結晶粗大化開始温度と第二の金属の結晶粗大化温度との間で熱処理を施すことにより、第二の金属の硬度、バネ性等の物性を変化させずに、嵌合、締結部を構成する第一の金属の延性、展性を大きくすることができるので、軸部品等との嵌合性、締結性を高め、容易にすることができる。
本発明に係わる電鋳部品は、機械的に嵌合される部分を構成する電鋳材料である第一の金属がニッケルであり、前記摺動部、バネ部等を構成する電鋳材料である第二の金属がニッケルまたはニッケル合金であることを特徴とする。
かかる特徴により、この電鋳部品は、第一の金属が延性、展性に優れた面心立方構造を有するニッケル電鋳材料で構成されていることから、軸部品等との嵌合、締結性に優れ、第二の金属として、硬度が高い微細結晶を有するニッケル電鋳材料または硬度、バネ性等に優れたニッケル合金電鋳材料から構成されているので、耐磨耗性、バネ耐久性等の耐久性に優れたものとなる。
本発明に係わる電鋳部品は、電鋳材料である第二の金属であるニッケル合金がニッケル−鉄合金、ニッケル−マンガン合金、ニッケル−タングステン合金、ニッケル−ホウ素合金から選ばれる合金からなる。
かかる特徴により、この電鋳部品は、第二の金属であるニッケル合金がニッケル−鉄合金、ニッケル−マンガン合金、ニッケル−タングステン合金、ニッケル−ホウ素合金から選ばれる合金であることから、耐磨耗性、バネ耐久性等の耐久性に優れ、かつ、第一の金属であるニッケルとの整合性に優れたものとなる。
本発明に係わる電鋳部品は、一方の表面と他方の表面を更に有し、前記一方の表面における前記第一の金属と前記第二の金属との境界部が、前記篏合部から第一の距離を有するように形成され、前記他方の表面における前記境界部が、前記篏合部から前記第一の距離よりも大きい第二の距離を有するように形成されることを特徴とする。
かかる特徴により、この電鋳部品は、電鋳部品を構成する第一の金属と第二の金属がその境界部で、接続面積を広くとっているのと同時に外力が掛かった場合、この外力を分散し、境界部での破壊を防ぐことができるので強度、耐久性に優れたものとなる。
本発明に係わる電鋳部品の製造方法は、少なくとも一面に導電性を有する基板の導電性表面の一部に絶縁層からなるパターンを形成する工程と、電鋳部品外形形状パターンを形成する電鋳型外形枠部形成工程と、第一の金属または第二の金属のうち一方を前記絶縁層の表面の一部または全体まで張り出す第一の電鋳体形成工程と、他方の金属を前記電鋳部品外形となる枠部に充填する第二の電鋳体形成工程を含むことを特徴とする。
この電鋳部品の製造方法によれば、少なくとも一面に導電性を有する基板の一部に絶縁層を形成することにより、まず、絶縁層以外の導電性を有する表面から、まず、第一の金属または第二の金属を電鋳により形成する際、絶縁層と導電層境界部から始まる等方的電鋳成長により基板垂直方向と絶縁層平行方向への電鋳体の成長がなされることにより第一の電鋳体を形成し、適宜、電鋳液を変更し、電鋳を継続することにより、異種の金属からなる第二の電鋳体を電鋳部品の外形形状となるまで形成することにより、第一の電鋳体と第二の電鋳体が1/4円断面形状の境界を有し、基板平行方向に対して、この二種類の電鋳体が接続・一体化された電鋳体とすることができることになり、嵌合部、締結部が延性・展性に優れた第一の金属とし、摺動部、バネ部等となる部分を硬度やバネ性に優れた第二の金属とすることができるので、嵌合性、締結性に優れ、かつ、耐磨耗性やバネ特性等に優れた電鋳部品を提供することができる。
本発明に係わる電鋳部品の製造方法は、少なくとも一面に導電性を有する基板の導電性表面の一部に絶縁層からなるパターンを形成する工程と、前記絶縁層の表面の一部に導電性層を形成する工程と、電鋳部品外形形状パターンを形成する電鋳型外形枠部形成工程と、第一の金属または第二の金属のうち一方を前記絶縁層または導電層の表面の一部または全体まで張り出す第一の電鋳体形成工程と、他方の金属を前記電鋳部品外形となる枠部に充填する第二の電鋳体形成工程を含むことを特徴とする。
この電鋳部品の製造方法によれば、少なくとも一面に導電性を有する基板の一部に絶縁層を形成することにより、まず、絶縁層以外の導電性を有する表面から、まず、第一の金属または第二の金属を電鋳により形成する際、絶縁層と導電層境界部から始まる等方的電鋳成長により基板垂直方向と絶縁層平行方向への電鋳体の成長がなされることにより第一の電鋳体を形成するが、このとき、第一の電鋳体が絶縁層の表面の一部に形成された導電層に至る前に、電鋳液を変更し、電鋳を継続し、異種の金属からなる第二の電鋳体を電鋳部品の外形形状となるまで形成するが、第二の電鋳体の成長の過程で、絶縁層上に形成された導電層にいたったところから、この導電層上からも第二の電鋳体の成長が起こるので、効率よく、短時間で、この二種類の電鋳体が接続・一体化された電鋳体とすることができることになる。更に、第一の電鋳体の成長を絶縁層上に形成された導電層まで至らせ、この導電層上で第一の電鋳体を所望とする厚みまで成長させ、次いで、第二の電鋳体を形成する場合には、第一の電鋳体と第二の電鋳体の接続面積を大きくすることができるので、第一の電鋳体と第二の電鋳体の接続強度が高められた電鋳体とすることができる。
本発明に係わる電鋳部品の製造方法は、少なくとも一面に導電性を有する基板の導電性表面の一部に絶縁層からなるパターンを形成する工程と、電鋳部品外形形状パターンを形成する電鋳型外形枠部形成工程と、第一の金属または第二の金属のうち一方を前記絶縁層の表面の一部まで電鋳層を張り出す第一の電鋳体形成工程と、他方の金属を前記部品外形となる枠部に充填する第二の電鋳体形成工程と、前記嵌合部、を電鋳厚み方向に対して、第一の金属のみとする表面加工工程を含むことを特徴とする。
この電鋳部品の製造方法によれば、少なくとも一面に導電性を有する基板の一部に絶縁層を形成することにより、まず、絶縁層以外の導電性を有する表面から、まず、第一の金属または第二の金属を電鋳により形成する際、絶縁層と導電層境界部から始まる等方的電鋳成長により基板垂直方向と絶縁層平行方向への電鋳体の成長がなされることにより第一の電鋳体を形成し、適宜、電鋳液を変更し、電鋳を継続することにより、異種の金属からなる第二の電鋳体を電鋳部品の外形形状となるまで形成することにより、基板平行方向に対して、この二種類の電鋳体が接続・一体化された電鋳体とすることができることになり、更に、所望とする厚みまで、研削加工や研磨加工等の機械加工により、嵌合部、締結部となる部分が基板面から機械加工面までの厚み方向で第一の金属となるので、嵌合部、締結部が延性・展性に優れた第一の金属とすることができ、摺動部、バネ部等となる部分を硬度やバネ性に優れた第二の金属とすることができるので、嵌合性、締結性に優れ、かつ、耐磨耗性やバネ特性等に優れた電鋳部品を提供することができる。
本発明に係わる電鋳部品の製造方法は、電鋳部品を構成する嵌合部となる部分の厚さが、第一の電鋳体の絶縁層の表面への張り出し長さより小さいことを特徴とする。
この電鋳部品の製造方法によれば、厚さに対して、第二の電鋳体の実質的に横方向への成長となる絶縁層のこの表面における張り出し長さが小さくすることにより、第一の電鋳体を第一の金属とすることにより、第一の電鋳体が電鋳体の外形形状となる枠まで至る前に所望とする電鋳部品の厚さまで至るので、この厚さまで第一の電鋳体を形成し、その後、摺動特性やバネ特性に優れる第二の金属を第二の電鋳体として電鋳することにより、嵌合部、締結部を第一の金属とし、摺動部やバネ部を第二の金属とした嵌合性、締結性に優れ、かつ、耐磨耗性やバネ特性等に優れた電鋳部品を提供することができる。
本発明に係わる電鋳部品の製造方法は、電鋳部品を構成する第一の金属の結晶粗大化開始温度と第二の金属結晶粗大化開始温度の間の温度で熱処理を行う工程を含むことを特徴とする。
この電鋳部品の製造方法によれば、嵌合部、締結部を構成する第一の金属の結晶粒は粗大化するので、硬度の低下と同時に延性、展性が上がり、嵌合性、締結性が向上する一方、摺動部、バネ部を構成する第二の金属の結晶粒の粗大化は抑えられ、変化が小さいので、硬度の低下がないので耐磨耗性の低下がなく、バネ性、弾性率等の物性値に大きな変化を与えることがないので、嵌合性、締結性に優れ、かつ、耐磨耗性やバネ特性等に優れた電鋳部品を提供することができる。
この発明によれば、微細性および精度に優れ、嵌合性、締結性に優れ、且つ、耐磨耗性、バネ性等に優れた電鋳部品を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係わる電鋳部品であって機械式腕時計に用いられるガンギ歯車の概略を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、絶縁層形成工程を含む電鋳型外形形状パターン形成工程を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係わる電鋳部品の製造方法のうち、第一の電鋳工程と第二の電鋳工程と表面加工工程と電鋳体分離工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳部品であるバネの概略を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、絶縁層形成工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、導電層形成工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、電鋳型外形形状パターン形成工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、第一の電鋳工程と第二の電鋳工程と表面加工工程を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る電鋳部品である歯車の概略を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、絶縁層形成工程と電鋳型外形形状パターン形成工程を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る電鋳部品の製造方法のうち、第一の電鋳工程と第二の電鋳工程と表面加工工程を示す図である。
機械式腕時計のムーブメントを構成する主要部品にガンギ歯車と呼ばれる特殊な歯車がある。この歯車は、精度向上のため、UVLIGA法を用いニッケル電鋳により作製されるようになっている。一般に、ニッケル電鋳体は、電鋳体を構成する結晶粒の大きさ、形態、不純物の種類、量等により、その延性、展性といった加工性や硬度、耐磨耗性といった機械的強度が大きく変わり、このうち、硬度に関しては、ビッカース硬度200程度から700程度の範囲ものを作製することができることが知られているが、歯車等の摺動部品では、できる限り高硬度のものの使用が望まれている。
ガンギ歯車においても、他部品であるアンクル爪石等に対して摺動する歯先の摺動部の耐磨耗性を要求されるため、高硬度を有するニッケル電鋳体で作製されることが望まれているが、歯車形成後、軸穴部にカナと呼ばれる回転軸となる他部品が打ち込み・嵌合により取り付けられるため、高硬度のニッケル電鋳体からなるガンギ歯車の場合、打ち込み時に軸穴部にクラック等の破壊現象が発生する。このため、使用できるニッケル電鋳体は、ビッカース硬度Hv500程度以下のものまでにとどまっていた。
本発明に係わる第1の実施形態は、掛かる課題を解消するためになされたものであり、以下に図を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る電鋳部品であって機械式腕時計で用いられる電鋳体からなるガンギ歯車101の平面図であり、図1(b)は、A−A’における概略断面図である。
このガンギ歯車101は、硬度約Hv500のニッケル電鋳体からなる第一の金属部103と硬度約Hv700のニッケル電鋳体からなる第二の金属部102が概略1/4円弧状断面形状を有する境界部104で一体化された形で構成されており、第一の金属部103には、軸部と歯車からなるカナと呼ばれる部品の軸部で打ち込まれ嵌合されるべき篏合部である軸穴105が開口されている。さらに、ガンギ歯車の歯先部の厚みは50μmであり、打ち込み部・締結部の厚みである110μmとは異なり薄くなっている。これら歯先部と打ち込み部・締結部との間には、60μmの段差部106が形成されている。
また、当該境界部104は、当該歯車101の厚み方向の両端に露出しており、その露出部は、歯車101の両表面で異なる位置に形成されている。すなわち、境界部104の表面での露出部は、一方の表面において軸穴105からの距離が第一の距離(R1)となっており、他方の表面では軸穴105からの距離が第一の距離(R1)よりも大きい第二の距離(R2)となっている。これにより、境界部104が、上述のような略円弧状の断面を有することになり、第一の金属部103と第二の金属部102との接合強度や耐久性が優れたものとなる。
このような構造を有する電鋳体からなるガンギ歯車101は、図2に示した絶縁層形成工程を含む電鋳型外形形状パターン形成工程と、図3(a)および(b)に示した第一および第二の電鋳工程と、図3(c)に示した表面加工工程と、図3(d)に示した電鋳体分離工程から構成されている。なお、図2および図3は、便宜的にガンギ歯車1個分の概略断面を示したが、フォトリソグラフィー法を使用することから、複数個を同時に作製できることは言うまでもない。
図2に示した電鋳型外形形状パターン形成工程では、シリコンウエハ201の一面上にシリコンウエハ201側から、クロム層30nm、金層100nmからなる導電層202を真空蒸着法により形成する(図2(a))。
次に、ネガ型フォトレジストにより第一のフォトレジスト層203を形成するが、この厚みは、段差106となるように60μmに設定する(図2(b))。
次に、段差部106となる部分において、これより一回り大きい面積を有するフォトマスクにより、第一の露光部204を形成する(図2(c))。
次に、第一のフォトレジスト層203と同じ材質からなるネガ型フォトレジストにより、第二のフォトレジスト層205を形成し(図2(d))、加熱することにより第一のフォトレジスト層203の未露光部と一体化することにより、フォトレジスト層206を形成する(図2(e))。
次に、ガンギ歯車101の形状を有するフォトマスクを第一の露光部204と位置合わせしたのち露光することにより第二の露光部207を形成する(図3(f))。
次に、現像処理を行うことにより、第一の露光部204と第二の露光部207が一体化した電鋳型外形枠部208を形成することにより電鋳型209を作製する(図3(g))。
この電鋳型外形枠部208は、ガンギ歯車101の外形形状となる開口部210と段差部106となる絶縁部211から構成されており、絶縁部211の平面方向における距離L1は150μmであり、ガンギ歯車101の厚みである110μmより大きく設定されている。また、底部212では、導電層202が現れている。
電鋳工程のうち第一の電鋳体302の形成では、図3(a)に示した如く、電鋳型209に軸の打ち込みに耐える延性・展性を十分有する平均結晶粒径100nmオーダーからなるビッカース硬度Hv500のニッケルからなる第一の電鋳体302を厚み120μmとなるように形成する。これにより、軸穴となる軸穴部レジスト部304では、ガンギ歯車101の厚みである110μmを超えた状態となっている一方、周囲に形成されている絶縁部211では、第一の電鋳体302は、縦方向(軸方向)に加え、横方向(平面方向)に対して等方的に成長するので、絶縁部211平面上における第一の電鋳体302の先端部は、1/4円弧状の断面形状を有している。また、絶縁部211の端面から約120μmの位置(第一の電鋳体302の厚み120μmと同一)となり、端面からの距離が150μmある電鋳型外形壁305には至ってない。
次に、図3(b)で示す、電鋳工程のうち第二の電鋳体306の形成では、平均結晶粒径10nmオーダー、ビッカース硬度Hv700を有する高硬度ニッケルからなる第二の電鋳体306を絶縁部211から150μmの厚さに形成することにより、軸穴への軸打ち込みに耐えうるビッカース硬度Hv500を有するニッケルからなる第一の電鋳体302と高硬度、耐磨耗性を有するビッカース硬度Hv700を有する第二の電鋳体306からなる電鋳体307を得ることができる。
図3(c)は、表面加工工程を示した図であり、電鋳体307の電鋳表面を砥石を用いた研削加工と表面状態を鏡面とする研磨加工により、所望とする厚みである110μmまで電鋳体307を加工することによりガンギ歯車形状とする。
次に、基板201、導電層202および電鋳型外形枠部311を除去することにより、歯先部312がビッカース硬度Hv700、軸穴部313がビッカース硬度Hv500からなるガンギ歯車101を作製することができる(図3(d))。
このガンギ歯車101にビッカース硬度Hv650(第一の電鋳体302より固く第二の電鋳体306より柔らかい硬度)からなる鉄製軸を打ち込んだところ、クラック等の欠陥の発生はなく、非常に良好な嵌合状態を得ることができた。
次に本発明の嵌合部を有するバネ部品に適用した例について説明する。
機械式腕時計等の精密機械では、多くのバネ部品が使用されており、通常は、鉄系材料により作製される部品が用いられているが、精度向上や複雑形状に対応するため、UVLIGA法による電鋳部品の適用が望まれている。しかしながら、UVLIGA法により最も多用されているニッケル電鋳部品は、その結晶構造である面心立方格子構造に由来する結晶面におけるスベリ現象による弾性材料としてヘタリを生じるため、バネ材料としての適応性が困難であった。一方、ニッケルと鉄合金からなる電鋳体では、結晶構造は、その組成により体心立方格子構造と面心立方格子構造をとる。前者の場合、通常のバルク材としての弾性材料として、より優れているが、電鋳法により作製した場合、析出時における鉄への水素等の吸蔵により脆くなりため使用が困難である。後者の場合、結晶構造的には前者に劣るがニッケルの結晶構造である面心立方格子構造において、ニッケル原子の25at%程度まで原子半径が異なる鉄と置換することができ、格子面におけるスベリを大幅に抑制することができると同時に、電鋳法により作製した場合、水素吸蔵による脆性を起こさないという利点がある。
本発明に係わる第1の実施形態で用いたビッカース硬度Hv700のニッケル電鋳体(上述の第二の電鋳体)は、200℃以上の温度で加熱することにより結晶粒子の粗大化により硬度は低下するが、250℃、3時間程度の処理でビッカース硬度はHv500程度まで低下し、嵌合性に適した物性となる。
一方、ビッカース硬度Hv700のニッケル電鋳液をベース液とし鉄成分を添加することにより作製されたニッケル−鉄合金電鋳液を用いて作製される鉄20at%含有するニッケル−鉄電鋳体は、析出直後のビッカース硬度がHv=620であるが、230℃から300℃の範囲での熱処理により、殆ど結晶粒の粗大化を起こさずにクリープ変形の起点となる結晶粒内の欠陥が少なくなるという特性を有しており、さらに、その硬度はビッカース硬度Hv650程度に上昇する。このため、ニッケル−鉄電鋳体は、この範囲での熱処理により、バネとして長期使用時に生じるクリープ変形を起こしにくくなり、電鋳体のバネ部品としての使用が可能となる。
本発明に係わる第2の実施形態は、このような事情によりバネ部品の固定部をニッケル電鋳体、バネ部をニッケル−鉄合金電鋳体により作製することにより、ニッケル電鋳体とニッケル−鉄合金電鋳体が有する特性を利用した例である。以下に図を参照して説明する。
図4(a)は、本発明のバネ部品401の概略を表す平面図であり、このバネ部品401は、ピン打ち込みにより固定するための打ち込み穴402を備える。また、かかる固定される部位から一方向に延びる長さL2の腕部を備え、当該腕部の先端が変形可能となっている。具体的には、打ち込み穴402付近から腕部に沿って延びる直線を中心軸BB’とし、腕部の付け根付近を部位Cとすると中心軸BB’を中心に、部位C付近から平面方向(図4中のDおよびD’矢印方向)に変形する構造を有している。
図4(b)は、厚みHのバネ401のBB’における縦断面図を表す図であり、長さL2を有する鉄含有率20at%のニッケル−鉄合金電鋳体からなるバネ部403と、これに、概略1/4円弧形状の境界部404として一体化されたビッカース硬度Hv500を有する厚みH1(=150μm)のニッケル電鋳体からなる固定部405と固定部405に開口している直径D1の打ち込み穴406を示している。
この構造を有するバネ部品401は、図5に示した絶縁層形成工程と、図6に示した導電層形成工程と、図7に示した電鋳部品外形形状パターン形成工程と、図8(a)に示した固定部の電鋳体を形成するための第一の電鋳体形成工程と、図8(b)に示したバネ部の電鋳体を形成するための第二の電鋳体形成工程と、図8(c)に示した固定部を第一の金属のみとする表面加工工程と、図8(d)に示した電鋳型から電鋳体を分離する工程と、図示しない熱処理工程により作製される。なお、各図では、便宜的にバネ部品1個分の概略断面を示したが、フォトリソグラフィー法を使用することから、複数個を同時に作製できることは言うまでもない。
図5に示した絶縁層形成工程では、シリコンウエハ501の一面上にシリコン側から、クロム層30nm、金層100nmからなる導電層502を真空蒸着法により形成し(図5(a))、感光後、加熱することにより、感光部が硬化する紫外線領域にのみ感光領域を有し、加熱により感光部が硬化する化学増幅型エポキシ系ネガ型フォトレジスト層により第一のフォトレジスト層503を1μm形成し(図5(b))、図示しない所望とする遮光部と露光部のパターンを有するフォトマスクと露光装置により、露光を行い、その後の加熱により絶縁部となるべき第1のレジスト硬化層504を形成する。
図6に示した導電層形成工程では、まず、絶縁層形成工程で作製した基板のうちフォトレジスト層502側に、黒体放射による光の放出のみで紫外線の発生がない抵抗加熱方式による真空蒸着により、基板表面側よりクロム層5nm、金層10nmからなる導電層601を形成する(図6(a))。
次に、可視光から紫外線の範囲に感光性を有するドライフィルムフォトレジストを室温付近で貼付することによりフォトレジスト層602を形成し(図6(b))、図示しない所望とする遮光部と露光部のパターンを有するフォトマスクと露光装置による露光後(図6(c))、弱アルカリ性水溶液を用いて現像を行うことにより、エッチング用レジスト層603を形成し(図6(d))、このエッチング用レジスト層603に覆われていない部分の金およびクロム層をエッチングにより除去し(図6(e))、さらに、エッチング用レジスト層603をアルカリ性水溶液で剥離することにより、第一のレジスト硬化層604上に第二の導電層605を形成する(図6(f))。
図7に示した電鋳型外形形状パターン形成工程では、レジスト層が形成されている面に絶縁層形成工程で使用した化学増幅型エポキシ系ネガ型フォトレジストを用いてフォトレジスト層701を180μmコートし(図7(a))、ソフトベークにより第一のフォトレジスト層503のうち未硬化部と一体化し、第二のフォトレジスト層703を形成し(図7(b))、図示しない電鋳型外形形状パターンを有するフォトマスクと露光装置により露光を行い、露光部の硬化を行うため、基板を加熱し、硬化部704を形成後(図7(c))、現像を行い電鋳型外形枠部705を形成することにより電鋳型706を得る。 この電鋳型706は、電鋳型外形部枠部705の開口部707に絶縁部708とその上の一部に形成された導電層709が形成されている。
図8(a)に示した第一の電鋳工程では、図示しないビッカース硬度Hv700の硬度を有するニッケル電鋳体を形成することができる電鋳液中で、厚み160μmまで電鋳を行うことによりビッカース硬度Hv700を有する第一の電鋳体802を導電層803からの通電により、電鋳型801を形成するが、このとき絶縁部804上に形成されている導電層805の形成位置である絶縁部804の縁部からの距離L3が160μmより大きければ、第一の電鋳体802は、導電層805まで至ることがなく、その先端部は絶縁部804上で概略1/4円弧状の断面形状となっている。
図8(b)に示した第二の電鋳工程では、第一の電鋳工程を終了した電鋳型801を図示しない電鋳体として20at%鉄を含有しビッカース硬度Hv620を有するニッケル−鉄合金電鋳体を形成することができるビッカース硬度Hv700のニッケル電鋳液をベース液とし鉄成分を添加することにより作製されたニッケル−鉄合金電鋳液中で、厚み160μmとなるようにニッケル−鉄合金電鋳体からなる第二の電鋳体806を形成する。
図8(c)に示した表面加工工程では、電鋳型801の電鋳面を研削装置にて研削後、鏡面状態を得るために研磨装置にて研磨を行うことにより、厚み150μmのバネ部品807が電鋳型801に埋め込まれたものを作製し、基板、2つの導電層およびフォトレジスト層を除去することにより、ビッカース硬度Hv700のニッケル電鋳体からなる嵌合部808と鉄20at%含有しビッカース硬度650を有するニッケル−鉄合金電鋳体からなるバネ部809からなるバネ部品810を得る。
このようにして作製されたバネ部品810を真空中或いは窒素雰囲気等の不活性雰囲気下250℃にて3時間の熱処理を行うことにより、嵌合部808がビッカース硬度Hv500のニッケル電鋳体、バネ部809がビッカース硬度Hv650のニッケル−鉄電鋳体からなる嵌合性およびバネ耐久に優れたものとすることができる。
なお、本実施形態では、研削研磨により一面の平坦化を行ったが、必要に応じて絶縁部804や導電層805によりできる段差を研磨等で取り除き平坦化を図ることができる。
また、嵌合部808が第一の電鋳体802のみの構造にするためには、第一の電鋳体802の縦横成長の比率が1:1であれば、理論的にはL3>H1とすればよいが、この関係をあえてずらし、バネ部809の一部を第一の電鋳体802としても、バネ特性として大きな影響を与えない厚み、あるいは、影響を考慮したものであれば、本実施形態の意図に反するものではないことは言うまでもない。
本発明に係わる第3の実施形態について図に基づいて説明する。
図9(a)は機械式腕時計に用いられる歯車の概略平面図であり、図9(b)は、図9(a)のGG’における概略縦断面図を示したものである。
この歯車901は、厚みH2が100μmであり、中心部に軸を取り付ける穴径D2が300μmからなる軸穴902の近傍がビッカース硬度Hv500を有するニッケル電鋳体903、それ以外がビッカース硬度Hv650を有する20at%の鉄を含有するニッケル−鉄合金電鋳体904から構成されており、各々の電鋳体の境界部905は概略1/4円弧の断面形状をなしている。
このような歯車901の作製工程は、図10に示した絶縁層形成工程と電鋳型外形形状パターン形成工程と、図11(a)に示した第一の電鋳工程と、図11(b)に示した第二の電鋳工程と、図11(c)および(d)に示した表面加工工程から構成されている。なお、図中では便宜的に歯車1個分の概略断面を示したが、フォトリソグラフィー法を使用することから、複数個を同時に作製できることは言うまでもない。
図10(a)から図10(d)に示した絶縁層形成工程では、シリコンウエハ1001の一面上にシリコンウエハ1001側からクロム層30nm、金層100nmからなる導電層1002を真空蒸着法により形成し(図10(a))、感光部が硬化する紫外線領域にのみ感光領域を有し、加熱により感光部が硬化する化学増幅型エポキシ系ネガ型フォトレジストにより厚み1μmの第一のフォトレジスト層1003を形成し(図10(b))、図示しない軸穴半径(=D2/2=150μm)に対して、120μm外形寸法が大きい感光部パターンを有するフォトマスクと露光装置を用いて紫外線を照射した後、適宜加熱することによりレジスト硬化部1004を形成し(図10(c))、現像を行い直径D3(=540μm)からなる絶縁部1005を形成する(図10(d))。
図10(e)から図10(g)に示した電鋳型外形形状パターン形成工程では、絶縁層形成工程で使用したものと同じ化学増幅型エポキシ系ネガ型フォトレジスト層1006を120μm形成し、図示しない電鋳型外形形状パターンを有するフォトマスクと露光装置により露光を行い、露光部の硬化を行うため、基板を加熱し、レジスト硬化部1007を形成後(図10(f))、現像を行い電鋳型外形枠部1008を形成することにより電鋳型1009を得る(図10(g))。
この電鋳型1009は、電鋳型外形枠部1008の開口部1010に絶縁部1011が形成されている。
図11(a)に示した第一の電鋳工程では、電鋳型1101を図示しない電鋳体として20at%鉄を含有しビッカース硬度Hv620を有するニッケル−鉄合金電鋳体を形成することができるニッケル−鉄合金電鋳液中で、厚み110μmまで電鋳を行うことによりビッカース硬度Hv620を有するニッケル−鉄合金からなる第一の電鋳体1102を形成するが、このとき、第一の電鋳体1102は絶縁部1103上では、等方的な成長を行うので、概略1/4円弧を有する断面形状の成長面を有しながら成長する。したがって、第一の電鋳体1102の電鋳厚みをこの歯車の最終厚みである100μmより厚く、かつ、絶縁部1103の半径(=D3/2)と軸穴部の半径(=D2/2)の差より薄く設定すれば、軸穴レジスト部1104まで第一の電鋳体1102の成長は至ることはなく軸穴近傍をこの第一の電鋳体1102とすることはない。
図11(b)に示した第二の電鋳工程では、第一の電鋳工程を終了した電鋳型1101を図示しない電鋳体としてビッカース硬度Hv500のニッケル電鋳体を形成することができる電鋳液中で、厚み120μmを有するニッケル電鋳体からなる第二の電鋳体1105を形成する。
図11(c)から(e)に示した表面加工工程では、電鋳型1101の電鋳面を研削装置にて研削後、鏡面状態を得るために研磨装置にて研磨を行うことにより、電鋳型に埋め込まれた厚み100μmの歯車1106を作製し(図11(c))、シリコンウエハ1107、導電層1108およびフォトレジスト層1109を除去することにより、嵌合部となる軸穴部1110の周囲近傍がニッケル電鋳体1111、それ以外の部分が鉄を20at%含有するニッケル−鉄合金電鋳体1112からなる歯車1113を作製し(図11(d))、さらに、基板面における凹凸を研磨により除去し、窒素雰囲気中において250℃、3時間の熱処理を行うことにより、所望とする歯車1114を作製する(図11(e))。
このように作製された歯車1114を構成する各部のうち、軸穴近傍のニッケル電鋳体1115では、熱処理により、その硬度がビッカース硬度Hv400となり、主体をなすニッケル−鉄電鋳体1116では、硬度がビッカース硬度Hv650を有することとなる。
この歯車1114にビッカース硬度Hv650からなる鉄製軸を打ち込んだところ、クラック等の欠陥の発生はなく、非常に良好な嵌合状態を得ることができた。
さらに、歯車1114の主体をなすニッケル−鉄電鋳体1116は、ニッケル原子の一部が鉄原子で置換するため、スベリや変形が小さくなり、しかも、適切なる熱処理により結晶粒の粗大化を起こさずに結晶粒内の欠陥を除去行っているので、クリープ変形に対する耐力や耐衝撃性が格段に向上し、歯車間の回転による変形に対する耐力や耐磨耗性に優れた特性を発揮するので、長期信頼性に優れた歯車となった。
軸穴部1110近傍、すなわち、嵌合時に衝撃を受ける部分をニッケル電鋳体1111のみとするためには、第一の電鋳体1102が等方的成長を行う場合においては、絶縁部1103の半径(=D3/2)と軸穴部レジスト部1104の半径(=D2/2)の差が歯車901の厚みであるH2より大きければよいが、第一の電鋳体1102の成長速度が厚み方向と水平方向で異なる場合は、その比率に応じて、絶縁部1103の寸法を決定すればよい。
更に、嵌合時に問題を生じない範囲で、軸穴部レジスト部1104の壁面まで第一の電鋳体1102を析出させ、嵌合部を第一の電鋳体1102と第二の電鋳体1105の積層構造としても本実施形態の意図に反するものではないことは言うまでもない。
また、本実施形態では、歯車の摺動部となる部分にニッケル−鉄合金電鋳体を用いたが、高硬度を有する、例えば、ビッカース硬度Hv700を有するニッケル電鋳体を用いても良く、更に、目的に応じて、他のニッケル合金電鋳体、たとえば、ニッケル−マンガン合金、ニッケル−タングステン合金、ニッケル−ホウ素合金等の電鋳体を用いることができることはいうまでもない。
101 ガンギ歯車
102 第二の金属部
103 第一の金属部
104、404、905 境界部
105、902 軸穴(篏合部)
106 段差部
201、501 シリコンウエハ
202、502、601 導電層
203、503 第一のフォトレジスト層
204 第一の露光部
205、703 第二のフォトレジスト層
206、602、701 フォトレジスト層
207 第二の露光部
208、311、705 電鋳型外形枠部
209、、706、801 電鋳型
210、707、1010 開口部
211、、708、804 絶縁部
212 底部
302、802、1102 第一の電鋳体
304、1104 軸穴部レジスト部
305 電鋳型外形壁
306、806、1105 第二の電鋳体
307 電鋳体
312 歯先部
313、1110 軸穴部
401、807、810 バネ部品
402、406 打ち込み穴
403、809 バネ部
405 固定部
504、604 第一のレジスト硬化層
603 エッチング用レジスト層
605 第二の導電層
704 硬化部
808 嵌合部
901、1106、1114 歯車
903、1111、1115 ニッケル電鋳体
904、1112、1116 ニッケル−鉄合金電鋳体
1004、1007 レジスト硬化部
R1 第一の距離
R2 第二の距離

Claims (10)

  1. 他部品が嵌合可能な篏合部と前記他部品とは異なるもう一つの他部品と摺動可能な摺動部とを少なくとも有する電鋳部品であって、
    前記嵌合部は第一の金属により構成され、
    前記摺動部は、前記第一の金属と組織または組成が異なる第二の金属により構成され、一 方の表面と他方の表面を更に有し、
    前記一方の表面における前記第一の金属と前記第二の金属との境界部が、前記篏合部から第一の距離を有するように形成され、
    前記他方の表面における前記境界部が、前記篏合部から前記第一の距離よりも大きい第二の距離を有するように形成されることを特徴とする電鋳部品。
  2. 前記第一の金属の結晶粒の大きさが前記第二の金属の結晶粒より大きいことを特徴とする請求項1に記載の電鋳部品。
  3. 前記第一の金属の結晶粗大化開始温度が前記第二の金属の結晶粗大化開始温度より低いことを特徴とする請求項1に記載の電鋳部品。
  4. 前記第一の金属がニッケルであり、前記第二の金属がニッケルまたはニッケル合金であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電鋳部品。
  5. 前記第二の金属はニッケル合金からなり、前記ニッケル合金がニッケル−鉄合金、ニッケル−マンガン合金、ニッケル−タングステン合金、ニッケル−ホウ素合金の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項4に記載の電鋳部品。
  6. 少なくとも一面に導電性を有する基板の導電性表面の一部に絶縁層からなるパターンを形成する絶縁層形成工程と、前記摺動部および前記篏合部の外形形状パターンを形成する電鋳型外形枠部形成工程と、前記第一の金属または前記第二の金属のうち一方を前記絶縁層の表面の一部または全体まで張り出す第一の電鋳体形成工程と、前記第一の金属または前記第二の金属のうち他方の金属を前記電鋳部品外形となる枠部に充填する第二の電鋳体形成工程を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電鋳部品の製造方法。
  7. 少なくとも一面に導電性を有する基板の導電性表面の一部に絶縁層からなるパターンを形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層の表面の一部に導電性層を形成する工程と、電鋳部品外形形状パターンを形成する電鋳型外形枠部形成工程と、前記第一の金属または前記第二の金属のうち一方を前記絶縁層または導電層の表面の一部または全体まで張り出す第一の電鋳体形成工程と、前記第一の金属または前記第二の金属のうち他方の金属を前記電鋳部品外形となる枠部に充填する第二の電鋳体形成工程を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電鋳部品の製造方法。
  8. 少なくとも一面に導電性を有する基板の導電性表面の一部に絶縁層からなるパターンを形成する絶縁層形成工程と、電鋳部品外形形状パターンを形成する電鋳型外形枠部形成工程と、前記第一の金属または前記第二の金属のうち一方を前記絶縁層の表面の一部まで電鋳層を張り出す第一の電鋳体形成工程と、前記第一の金属または前記第二の金属のうち他方の金属を前記部品外形となる枠部に充填する第二の電鋳体形成工程と、前記嵌合部を電鋳厚み方向に対して、前記第一の金属のみとする表面加工工程を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電鋳部品の製造方法。
  9. 前記嵌合部となる部分の厚さが、前記第一の電鋳体の前記絶縁層の表面への張り出し長さより小さいことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の電鋳部品の製造方法。
  10. 前記第一の金属の結晶粗大化開始温度と前記第二の金属の結晶粗大化開始温度の間の温度で熱処理を行う工程を含む請求項からのいずれか1項に記載の電鋳部品の製造方法。
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