本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料デブリ取り出し装置を、図2を用いて説明する。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置を用いた燃料デブリの取り出しが行われる沸騰水型原子力プラントの概略の構成を、図1を用いて説明する。
沸騰水型原子力プラント1は、原子炉2及び原子炉格納容器17を備えている。原子炉格納容器17は、原子炉建屋22内に設置されて、上端部に上蓋であるヘッド18が取り付けられて密封されている。原子炉格納容器17は、内部に形成されたドライウェル19、及び冷却水が充填された圧力抑制プールが内部に形成された圧力抑制室20を有する。ドライウェル19に連絡されるベント通路の一端が、圧力抑制室20内の圧力抑制プールの冷却水中に浸漬されている。
ヘッド18の真上に複数に分割された放射線遮へい体であるシールドプラグ28が配置され、これらのシールドプラグ28が、原子炉ウェル24内に配置され、原子炉建屋22の運転床23に設置されている。機器仮置きプール(ドライヤセパレータプール)25及び燃料貯蔵プール26が、原子炉ウェル24に隣接して配置され、運転床23に取り囲まれている。機器仮置きプール25と原子炉ウェル24の間、及び燃料貯蔵プール26と原子炉ウェル24の間は、それぞれ、取り外し可能なゲート部材(図示せず)により仕切られている。
原子炉2は、上蓋4が取り付けられて構成される原子炉圧力容器3、核燃料物質を含む複数の燃料集合体8が装荷された炉心7、気水分離器11及び蒸気乾燥器12等を備えている。炉心7、気水分離器11及び蒸気乾燥器12は原子炉圧力容器3内に配置される。原子炉圧力容器3内に設置された炉心シュラウド6が、炉心7を取り囲んでいる。炉心7内に装荷された各燃料集合体8は、下端部が炉心支持板9によって支持され、上端部が上部格子板10によって保持される。気水分離器11は炉心7の上端部に位置する上部格子板10よりも上方に配置され、蒸気乾燥器12が気水分離器11の上方に配置される。
複数の制御棒案内管13が、原子炉圧力容器3内で炉心支持板9の下方に配置される。炉心7内の燃料集合体8間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒(図示せず)が、各制御棒案内管13内に配置されている。複数の制御棒駆動機構ハウジング14が、原子炉圧力容器3の下鏡部5に取り付けられている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング14内に設置され、制御棒案内管13内の制御棒と連結されている。
原子炉圧力容器3内に設置された炉心シュラウド6、炉心支持板9、上部格子板10、気水分離器11、蒸気乾燥器12及び制御棒案内管13は、炉内構造物である。
原子炉圧力容器3は、原子炉格納容器17内の底部に設けられたコンクリートマット16上に設けられた円筒状のペデスタル15上に据え付けられている。筒状のγ線遮蔽体21が、ペデスタル15の上端に設置され、原子炉圧力容器3を取り囲んでいる。
このような沸騰水型原子力プラント1において、原子炉がスクラムされて原子炉出力が低下した状態において、一時的に、沸騰水型原子力プラント1の電流を供給する全部の電源が消失して非常用炉心冷却系が作動しなかった状態が生じたことを想定する。全部の電源が消失して非常用炉心冷却系のポンプ等が作動しなくなり、炉心7内の各燃料集合体8に含まれる各燃料棒の冷却が損なわれた場合には、これらの燃料棒に含まれる核燃料物質が溶融し、核燃料物質の溶融によって燃料集合体8の構造部材、例えば、燃料棒の被覆管、燃料集合体8のチャンネルボックス及び上部タイプレート及び下部タイプレートも溶融する。核燃料物質、及び燃料集合体8の構造部材等の溶融物である燃料デブリ35は、原子炉圧力容器3の底部である下鏡部5の内面上に落下する可能性がある。燃料デブリ35には、炉心支持板9等の炉内構造物の溶融物が含まれる場合もある。溶融した燃料デブリ35は、冷却されて固まる。
万が一、このような燃料デブリ35の原子炉圧力容器3の底部への落下が生じた場合には、固まった燃料デブリ35の原子炉圧力容器3外への搬出が実施され、さらに燃料デブリ35の落下が生じている沸騰水型原子力プラント1については、廃炉処理が実施される。
次に、本実施例の燃料デブリ取り出し装置40の構成を、図2を用いて説明する。燃料デブリ取り出し装置40は、ベース部41、旋回テーブル42、伸縮シール部材44、複数のクランプ装置45、作業アーム48A,48B、一対の作業アーム駆動装置49及びリング状の固定部材57を備えている。ベース部41及び旋回テーブル42は放射線遮へい材で構成される。作業アーム48A,48Bは、共に、例えば、特許第5249176号公報の図37に記載された2つのアクチュエータユニット200‘を有するロボットアームの構造を有している。作業アーム48Aはこのロボットアームの先端部に切断具36を取り付けている。作業アーム48Bはこのロボットアームの先端部に掴み具37を取り付けている。
旋回テーブル42は、ベアリング50を用いてリング状のベース部41に旋回可能に取り付けられる。ベアリング50の上方で旋回テーブル42の外面とベース部41の内面の間には環状のシール部材51Aが設置され、ベアリング50によって旋回テーブル42とベース部41の間がシールされる。また、ベース部41及びベアリング50のそれぞれの内面と旋回テーブル42の内面の間にも、シール部材51Bが設置されている。複数(例えば、8個)のクランプ装置45が旋回テーブル42の下面に取り付けられる。クランプ装置45はシリンダ46及びピストンロッド47等を有する。シリンダ46がベース部41の下面に取り付けられ、ピストンロッド47がシリンダ46内に配置されたピストン(図示せず)に取り付けられる。シリンダ46及びピストンロッド47はベース部41の半径方向に配置される。ピストンロッド47の先端には押し付け部材が取り付けられる。
円筒支持部65がベース部41の上面に設置される。板状のリング部材43が円筒支持部65の上端に取り付けられる。リング部材43の内径は、後述の固定部材57の内径よりも小さくなっている。蛇腹状で円筒状の伸縮シール部材44の下端部がリング部材43の上面に取り付けられ、伸縮シール部材44の上端部がリング状の固定部材57の下面に取り付けられる。伸縮シール部材44は、アラミド繊維をポリウレタンシートで挟んでアラミド繊維及びポリウレタンシートを一体化して構成されている。円筒状の伸縮シール部材44は、伸縮シール部材44の軸方向において蛇腹状になっており、その軸方向で伸縮することができる。
作業アーム48A,48Bが、旋回テーブル42に形成された2つの貫通孔に別々に挿入されて旋回テーブル42に設置される。切断具36が作業アーム48Aの先端部に設けられる。掴み具37が作業アーム48Bの先端部に設けられる。作業アーム48A,48Bのそれぞれの上端部に、作業アーム駆動装置49が別々に取り付けられる。作業アーム48A,48Bのそれぞれと旋回テーブル42の間の環状の隙間は、それぞれ、シール部材(図示せず)でシールされている。旋回テーブル42には、作業アーム48A,48B以外に収納容器保持部材54が設けられている。収納容器保持部材54は、収納容器55を置く底板部を有し、旋回テーブル42を貫通している。この収納容器保持部材54は、旋回テーブル42の側壁には、貫通孔に面する部分で、底板部と旋回テーブル42の下面の間に、作業アーム48Bが挿入される開口部が形成されている。収納容器保持部材54には、その開口部から旋回テーブル42の上面に達する通路が形成されている。収納容器保持部材54の側壁の横断面の形状は、その開口部が形成される位置で、その開口部を除いて円弧状をしている。搬出容器56が、収納容器保持部材54の真上に配置され、旋回テーブル42の上面に取り外し可能に取り付けられる。搬出容器56の下端部が収納容器保持部材54内の通路に開放されている。ホイスト(収納容器移送装置)66が搬出容器56内に配置されて搬出容器56の天井部に取り付けられる。収納容器保持部材54内の通路は、搬出容器56によって覆われてシールされる。
放射線遮へい材で構成されたシャッター部材53が、旋回テーブル42の下面に水平方向に移動可能に取り付けられている。シャッター部材53は収納容器保持部材54内の通路の開閉を行う。放射線遮へい材で構成された一対のシャッター部材52が、旋回テーブル42の下面に水平方向に移動可能に取り付けられている。これらのシャッター部材53は、作業アーム48A,48Bを旋回テーブル42から取り外したとき、作業アーム48A,48Bのそれぞれが挿入されていた、旋回テーブル42に形成された各貫通孔を封鎖するために使用される。
沸騰水型原子力プラント1において、上記したように、炉心7に装荷した燃料集合体8の燃料棒内の核燃料物質が溶融し、発生した燃料デブリ35が原子炉圧力容器3の下鏡部5上に落下していることを想定する。燃料デブリ取り出し装置40を用いた本実施例の燃料デブリ取り出し方法を、図1〜図6を用いて以下に詳細に説明する。本実施例における燃料デブリの取り出し方法では、燃料デブリ取り出し装置40を用いて、原子炉圧力容器3の下鏡部5上に落下している燃料デブリ35が取り出される。
燃料デブリ35の取り出し作業を開始する前に、作業ハウス29を、原子炉ウェル24を覆うように、原子炉建屋22の運転床23上に設置する(図1参照)。天井クレーン32が、作業ハウス29内で作業ハウス29の天井付近に設けられた走行レール上に設置される。天井クレーン32は、その走行レールに沿って移動する走行台車33及び走行台車33上に移動可能に設置された2台の横行台車34を有する。各横行台車34にはフック(図示せず)が吊り下げられる。作業ハウス29の一つの側面(例えば、機器仮置きプール25側の側面)に、開閉するシャッター30が設置されている。
作業ハウス29内の天井クレーン32を用いて、原子炉ウェル24を覆っているシールドプラグ28、原子炉格納容器17のヘッド18、原子炉圧力容器3の上蓋4、及び原子炉圧力容器3内に設置された蒸気乾燥器12及び気水分離器11を、例えば、特開2013−19875号公報に記載された方法により、順次取り除き、作業ハウス29内の空間31を通して外部に搬出する。
その後、燃料デブリ取り出し装置40が天井クレーン32を用いて原子炉圧力容器3内に吊り降ろされる。燃料デブリ取り出し装置40の吊り降ろし作業について説明する。
燃料デブリ取り出し装置40及び昇降装置59が、シャッター30を開けて作業ハウス29内の空間31に搬入され、作業ハウス29内で運転床23上に置かれる。
昇降装置59は、ベース部60及び回転ドラム61,62を有する。回転ドラム61,62はベース部60上に設置される。図2において、回転ドラムは、回転ドラム61,62の2基しか記載されていないが、実際にはベース部60に3基設けられている。回転ドラム61,62に巻き付けられたワイヤ63,64が燃料デブリ取り出し装置40のリング部材43に取り付けられている。図示されていないもう1基の回転ドラム(図示せず)に巻き付けられたワイヤ(図示せず)も、リング部材43に取り付けられている。ワイヤ63,64等の3本のワイヤの、リング部材43への取り付け位置は、リング部材43の周方向において等間隔に配置されている。この結果、燃料デブリ取り出し装置40は3本のワイヤによって昇降装置59に保持される。
燃料デブリ取り出し装置40が昇降装置59の回転ドラム61,62等の3基の回転ドラムに巻き付けられた各ワイヤに取り付けられた状態で、昇降装置59を作業ハウス29内の天井クレーン32で吊って、昇降装置59のベース部60が、原子炉ウェル24の内面に形成されてシールドプラグ28を支持していた段差部のうち最も低い位置に存在する段差部27の上面の位置まで下降される。昇降装置59のベース部60が段差部27によって保持される。このとき、燃料デブリ取り出し装置40は、ワイヤ63,64等の3本のワイヤによって昇降装置59に保持され、原子炉圧力容器3よりも上方で原子炉ウェル24内に存在する。回転ドラム61,62等の3基の回転ドラムを回転させて各回転ドラムに巻き付けられたワイヤ63,64等の3本のワイヤを巻き戻す。これらのワイヤの巻き戻しにより、燃料デブリ取り出し装置40が原子炉ウェル24内を徐々に下降し、やがて、燃料デブリ取り出し装置40のリング状の固定部材57が、原子炉圧力容器3の上端部に存在するフランジの上面の位置まで下降される。固定部材57が、シール部材58を固定部材57と原子炉圧力容器3のそのフランジの間に配置した状態で原子炉圧力容器3のそのフランジに複数のボルトにより固定される。
このとき、燃料デブリ取り出し装置40は原子炉圧力容器3内に位置している。リング部材43に取り付けられたワイヤ63,64等の3本のワイヤは、燃料デブリ取り出し装置40の円筒状の伸縮シール部材44の内側に存在する。回転ドラム61,62等の3基の回転ドラムを回転させて各回転ドラムに巻き付けられたワイヤ63,64等の3本のワイヤを巻き戻すことによって、燃料デブリ取り出し装置40を原子炉圧力容器3内でさらに下降させる。燃料デブリ取り出し装置40の収納容器保持部材54の下端部が、原子炉圧力容器3内の上部格子板10付近まで下降したとき、回転ドラム61,62等の駆動を停止する(図2参照)。
その後、ベース部41に設けられた8個のクランプ装置45の各シリンダ46内に液圧(例えば、水圧)を加えて各シリンダ46内のピストンを原子炉圧力容器3の内面に向かって移動させる。これにより、ピストンロッド47がシリンダ46から押し出され、ピストンロッド47の先端に取り付けられた押し付け部が原子炉圧力容器3の内面に押し付けられる。ベース部41が各クランプ装置45によっても原子炉圧力容器3の内面に保持され、旋回テーブル42がベース部41によって保持される。
作業アーム48Bを操作する1つの作業アーム駆動装置49が駆動され、作業アーム48Bの掴み具37が上部格子板10を把持する。作業アーム48Aを操作する他の作業アーム駆動装置49が駆動され、作業アーム48Aの切断具36が、掴み具37で掴んでいる上部格子板10の部分を切断する。作業アーム48A,48Bの動きは、旋回テーブル42の下面に設けられた監視カメラ(図示せず)で撮影され、原子炉建屋22の外部に置かれた表示装置(図示せず)に表示される。オペレータは、表示装置に表示された映像を見ることによって作業ハウス29の外側で作業アーム48A,48Bの動き及び切断作業を監視することができる。また、オペレータは、表示装置に表示された映像を見ながら操作盤(図示せず)を操作して作業アーム48A,48Bのそれぞれの作業アーム駆動装置49を制御し、作業アーム48A,48B、切断具36及び掴み具37を用いた上部格子板10の切断作業が円滑に行われるようにする。
上部格子板10の、掴み具37で掴んだ部分の周囲が切断具36で切断された後、作業アーム駆動装置49を制御して作業アーム48Bを曲げ、上部格子板10の切断片を掴んでいる掴み具37を、収納容器保持部材54の側壁の開口部を通して、収納容器保持部材54内で底板部上に置かれている収納容器55の真上に移動させる(図2参照)。掴み具37を開くことによって上部格子板10の切断片が収納容器55内に落下して収納容器55内に収納される。収納容器55内に上部格子板10の切断片が所定量収納されるまで、作業アーム48A,48B、切断具36及び掴み具37を用いた上部格子板10の切断作業及び上部格子板10の切断片の収納容器55内への移動作業が継続して行われる。収納容器55内に上部格子板10の切断片が所定量収納されたことは、収納容器保持部材54の側壁に設置した他の監視カメラで撮影した映像を、原子炉建屋22の外部に置かれた他の表示装置(図示せず)に表示することによって知ることができる。
収納容器55内に上部格子板10の切断片が所定量収納されたとき、掴み具37を収納容器保持部材54の外側に移動させ、収納容器保持部材54内の収納容器55を、ホイスト66を駆動して収納容器保持部材54内から搬出容器56内まで吊り上げる(図3参照)。収納容器55が搬出容器56内に到達した後、シャッター部材53を水平方向に移動させ、収納容器保持部材54内の通路をシャッター部材53で封鎖する(図4参照)。閉じられたシャッター部材53によって、搬出容器56内の空間は、旋回テーブル42より下方の空間と連通しなくなる。
ホイスト66に吊り下げられた収納容器55を収納している搬出容器56は、旋回テーブル42から取り外され、作業ハウス29内の天井クレーン32によって作業ハウス29内の空間31まで吊り上げられる(図5参照)。搬出容器56は天井クレーン32に取り付けられたワイヤ67に吊り下げられている。作業ハウス29の空間31内に吊り上げられた搬出容器56は、天井クレーン32により運転床23よりも上方に引き上げられ、天井クレーン32に吊り下げられて保持される。搬出容器56内のホイスト66を駆動して、搬出容器56内の、上部格子板10の切断片が収納された収納容器55を、運転床23上まで下降させ、運転床23の上に置く。この収納容器55は、ホイスト66から外されて蓋をして密封され、作業ハウス29外の所定の保管場所に移送される。
搬出容器56は、内部のホイスト66に空の収納容器55を吊り下げた状態で、天井クレーン32に吊り下げられて旋回テーブル42の上面まで下降され、収納容器保持部材54内の通路を覆うようにして旋回テーブル42の上面に取り外し可能に取り付けられる。シャッター部材53を水平方向に移動させて収納容器保持部材54内の通路と搬出容器56内の空間を連通させる。ホイスト66を駆動して空の収納容器55を下降させ、この収納容器55を収納容器保持部材54の底板部の上に置く。
その後、前述したように、作業アーム48A,48B、切断具36及び掴み具37を用いて、上部格子板10の切断、及び上部格子板10の切断片の、収納容器保持部材54内の収納容器55内への移送を行い、上部格子板10を除去する。上部格子板10の切断片を収納した収納容器55は、前述したように、収納容器保持部材54内から所定の保管場所に移送される。上部格子板10の除去の終了後には、炉心シュラウド6が同様に切断され、炉心シュラウド6の切断片を収納した収納容器55も、所定の保管場所まで移送される。
炉心シュラウド6の切断作業が進み、作業アーム48Aの切断具36による炉心シュラウド6の切断ができなくなったときには、クランプ装置45の各シリンダ46内に液圧を加えて各シリンダ46内のピストンを原子炉圧力容器3の中心に向かって移動させ、ピストンロッド47の先端に取り付けられた押し付け部を原子炉圧力容器3の内面から離す。昇降装置59の回転ドラム61等の各回転ドラムを駆動して各回転ドラムからワイヤを巻き戻し、燃料デブリ取り出し装置40のベース部41を原子炉圧力容器3内で下降させる。ベース部41の下降と共に旋回テーブル42も下降する。固定部材57が原子炉圧力容器3のフランジに固定されているため、ベース部41が下降すると、蛇腹状で筒状の伸縮シール部材44が原子炉圧力容器3の軸方向に伸ばされる。伸縮シール部材44がある程度下降された後、各回転ドラムの回転を停止してワイヤの巻き戻しを停止する。このため、ベース部41の下降が停止する。その後、ベース部41に設けられた8個のクランプ装置45の各シリンダ46内に液圧が加えて各シリンダ46内のピストンを原子炉圧力容器3の内面に向かって移動させる。これにより、ピストンロッド47の先端に取り付けられた押し付け部が原子炉圧力容器3の内面に押し付けられ、ベース部41が各クランプ装置45によっても原子炉圧力容器3の内面に保持される。
作業アーム48A,48B、切断具36及び掴み具37を使用し、炉心シュラウド6の切断、及び炉心シュラウド6の切断片の、収納容器保持部材54に保持されている収納容器55内への移送を行う。また、炉心支持板9及び制御棒案内管13等も、作業アーム48A,48B、切断具36及び掴み具37を用いて同様に切断して除去する。これらの切断、除去において必要であれば、前述したように、各回転ドラムの回転をしてベース部41を下降させながら行われる。
原子炉圧力容器3内で下鏡部5の内面上に燃料デブリ35が存在する。原子炉圧力容器3内のこれらの炉内構造物が除去された後、昇降装置59の各回転ドラムを駆動させて収納容器保持部材54の下面が燃料デブリ35の表面近くに位置するように、ベース部41を下降させる(図6参照)。そして、各クランプ装置45を用いてベース部41が原子炉圧力容器3に保持される。
作業アーム48Aの切断具36が、まず、燃料デブリ35の表面部分を切断する。作業アーム48Bの掴み具37が、燃料デブリ35の切断片を掴む。この燃料デブリ35の切断片が、作業アーム48Bの操作によって、収納容器保持部材54に保持されている収納容器55内に移送される。このように、作業アーム48Aの切断具36による下鏡部5の内面上に存在する燃料デブリ35の切断が継続して行われ、燃料デブリ35の切断片が作業アーム48Bの掴み具37により収納容器保持部材54に保持されている収納容器55内に移送される。燃料デブリ35の切断片が収納された収納容器55が、図3、図4及び図5に示されるように、収納容器保持部材54から作業ハウス29内に移送され、さらに、所定の保管場所まで移送される。やがて、下鏡部5の内面上に存在する燃料デブリ35の全てが切断され、除去される。
本実施例では、上端部に固定部材57が取り付けられた伸縮シール部材44の下端部がベース部41の上面に取り付けられているため、固定部材57が原子炉圧力容器3の上端部に設けられたフランジの上面に取り付けられて、且つ燃料デブリ取り出し装置40のベース部41が原子炉圧力容器3の上端よりも下方で原子炉圧力容器3内に配置されているとき、伸縮シール部材44が原子炉圧力容器3とベース部41の間をシールしている。このため、原子炉圧力容器3内の、ベース部41よりも下方の空間において、切断具36による上部格子板10及び炉心シュラウド6等の炉内構造物の切断、及び燃料デブリ35の切断の際に発生する放射性ダストが、原子炉圧力容器3の内面とベース部41の外面の間に形成される環状の隙間を通して運転床23より上方の空間、例えば、作業ハウス29内の空間31に到達することを防止することができる。原子炉圧力容器3の内面の状態に影響を受けず、伸縮シール部材44は、原子炉圧力容器3とベース部41の間を通して運転床23の上方に達する放射性ダクトを確実になくすことができる。
作業アーム48Aの切断具36による、切断対象物(炉内構造物及び燃料デブリ35等)の切断箇所がより下方に位置するようになり、ベース部41が原子炉圧力容器3内で下降されても伸縮シール部材44が原子炉圧力容器3の軸方向に伸ばされるだけであり、伸縮シール部材44による放射性ダストのシール性は損なわれることはない。
伸縮シール部材44の上端部を保持する固定部材57が原子炉圧力容器3の上端部に設けられたフランジに取り付けられるため、伸縮シール部材44の上端部の原子炉圧力容器3への固定を容易に行うことができる。原子炉圧力容器3のそのフランジには上蓋4をそのフランジに取り付けるボルト用のネジ孔が複数形成されており、固定部材57を固定する複数のボルトをこれらのネジ孔に噛み合わせることによって固定部材57の原子炉圧力容器3への取り付けを容易に行うことができる。
燃料デブリ取り出し装置40は、シール部材51A,51Bを有し、さらに、作業アーム48A,48Bのそれぞれと旋回テーブル42の間にもシール部材を配置しているが、伸縮シール部材44の設置により、作業アーム48Aの切断具36による切断作業で発生する放射性ダストのうち、運転床23よりも上方の空間に達する放射性ダストの量を著しく抑制することができる。
作業アーム48A,48Bが旋回できる旋回テーブル42に取り付けられているため、原子炉圧力容器3内の、原子炉圧力容器3の半径方向及び円周方向の異なる位置での切断作業を容易に行うことができる。
本実施例では、側壁に開口部を有して下端部に底板部を有する収納容器保持部材54を、旋回テーブル42に取り付けて旋回テーブル42の下方に配置しているため、収納容器55を収納容器保持部材54内に配置してその底板部の上に置くことができ、作業アーム48Aの切断具36によって切断された切断対象物の切断片を、作業アーム48Bを用いて容易にその収納容器55内に収納することができる。
収納容器保持部材54内の通路、すなわち、収納容器保持部材54内に形成された空間を覆う搬出容器56を、旋回テーブル42の上面に取り付けるので、切断具36で旋回テーブル42の下方に存在する切断対象物を切断しているときに、この切断によって生じる放射性ダストが、収納容器保持部材54内に形成された空間を通して旋回テーブル42の上方に達し、さらに、運転床23の上方に空間に到達することを防止することができる。搬出容器56が旋回テーブル42に取り付けられて収納容器保持部材54内の空間を覆っているときには、搬出容器56は収納容器保持部材54内の空間のシール部材として機能する。
搬出容器56は切断対象物の切断片を収納した収納容器55の搬送容器としても使用されるため、その収納容器55を原子炉圧力容器3内及び原子炉ウェル24内を通して運転床23上まで移送することを容易に行うことができる。切断対象物の切断片を収納した収納容器55が搬出容器56内に設置した昇降機構(例えば、ホイスト66)に吊り下げられて搬出容器56内に収納することができるため、搬出容器56を作業ハウス29内の天井クレーン32で吊り上げることによって収納容器55を容易に運転床23上まで移送することができる。空の収納容器55をホイスト66に吊り下げた状態で搬出容器56を天井クレーン32によって下降させることにより、空の収納容器55を、収納容器保持部材54内でその底板部の上に置くことが容易に行うことができる。
旋回テーブル42の上面に取り外し可能に取り付けられた搬出容器56内で収納容器55が搬出容器56に設置されたホイスト66に吊り下げられているため、収納容器保持部材54内でその底板部の上に置かれて切断対象物の切断片で満たされている収納容器55を、ホイスト66を駆動させることにより容易に搬出容器56内に引き上げることができ、また、搬出容器56内の空の収納容器55をホイスト66の駆動によって収納容器保持部材54内でその底板部の上まで容易に下降させることができる。収納容器55が搬出容器56に設置されたホイスト66に吊り下げられていることは、運転床23と収納容器保持部材54の底板部の間での、収納容器55の容易な移送を実現した一つの要因である。
切断対象物の切断片を収納した収納容器55をホイスト66により収納容器保持部材54から搬出容器56内に移送した後で、搬出容器56を引き上げるために搬出容器56が旋回テーブル42から取り外される前に、シャッター部材53が、収納容器保持部材54の側壁の開口部から収納容器保持部材54内に挿入されて、搬出容器56に連通する収納容器保持部材54内の通路を封鎖する。このため、切断対象物の切断片を収納した収納容器55が内部に配置された搬出容器56が、旋回テーブル42から取り外されて引き上げられるとき、旋回テーブル42よりも下方で原子炉圧力容器3内に存在する放射性ダストが、収納容器保持部材54内の通路を通して上方に達することが、収納容器保持部材54内の通路を封鎖したシャッター部材53によって防止される。
本発明の他の好適な実施例である実施例2の燃料デブリ取り出し方法を、図7を用いて説明する。
本実施例の燃料デブリ取り出し方法では、実施例1の燃料デブリ取り出し方法で用いられる燃料デブリ取り出し装置40、及び放射線遮へい体68が用いられる。放射線遮へい体68は、水69が袋内に充填された放射線遮へい体である。
本実施例の燃料デブリ取り出し方法では、実施例1と同様に、昇降装置59のベース部60が、原子炉ウェル24の側壁に形成された段差部27上に設置される。ベース部60に取り付けられた回転ドラム61,62等の3基の回転ドラムに巻き付けられたワイヤ63,64等の3本のワイヤに、燃料デブリ取り出し装置40のリング部材43が取り付けられ、燃料デブリ取り出し装置40のベース部41及び旋回テーブル42が原子炉圧力容器3内に配置される。固定部材57が原子炉圧力容器3の上端部のフランジの上面に取り付けられており、上端部が固定部材57に取り付けられた伸縮シール部材44の下端部がリング部材43に取り付けられている。旋回テーブル42に取り付けられた作業アーム48A,48B、切断具36及び掴み具37を用いて、実施例1と同様に、原子炉圧力容器3内の上部格子板10及び炉心シュラウド6等の炉内構造物が切断されて除去される。図7は、そのような炉内構造物が除去されて、ベース部41が原子炉圧力容器3内で下鏡部5の内面上に存在する燃料デブリ35付近まで下降した状態を示している。ベース部41に取り付けられた各クランプ装置45の押し付け部材が原子炉圧力容器3の内面に接触し、各クランプ装置45によりベース部41が原子炉圧力容器3の内面に保持されている。
本実施例では、放射線遮へい体68が、袋内に水69を充填した状態で、原子炉圧力容器3内において伸縮シール部材44の内側に配置される。この放射線遮へい体68は、ワイヤ71,72によって、作業ハウス29内の天井クレーン32の2台の横行台車34に吊り下げられている。放射線遮へい体68はベース部41及び旋回テーブル42の真上に位置している。放射線遮へい体68の袋は、伸縮シール部材44と同じく、アラミド繊維をポリウレタンシートで挟んでアラミド繊維及びポリウレタンシートを一体化して得られた素材で構成されている。
放射線遮へい体68の袋内への水69の供給について説明する。2台の横行台車34のフックに取り付けられた2本のワイヤ71,72にその袋の上面を取り付け、空のこの袋を、2台の横行台車34によって伸縮シール部材44の内側で原子炉圧力容器3内の上端部の位置(図7に示される位置)まで下降させる。所定位置に到達したとき袋の下降を停止し、運転床23に設置した給水ポンプ(図示せず)を駆動して水給水ホース70を通して袋内に水69を供給する。水69の供給により袋が膨張して袋の側面が伸縮シール部材44の内面に接触する(図7参照)。このとき、袋内への水69の供給を停止する。水が充填された袋は、放射線遮へい体68として機能する。
ベース部60に取り付けられた回転ドラム61,62等の3基の回転ドラムに巻き付けられてリング部材43に取り付けられたワイヤ63,64等の3本のワイヤは、放射線遮へい体68を上下方向に貫通している。放射線遮へい体68の袋内の水69の外部への漏えいを防止し、ベース部41の上下方向の移動の際にそれら3本のワイヤの移動を容易にするために、放射線遮へい体68の3本のワイヤが通る3個所に、袋の内側に原子炉圧力容器3の軸方向に伸びる第1中空管(図示せず)が配置され、各第1中空管の両端部が袋の上面及び下面にそれぞれ気密性を保って取り付けられる。各第1中空管の両端部は袋の外部に開放されている。3本の各ワイヤはそのような各第1中空管内を別々に通過している。
本実施例でも、実施例1と同様に、切断対象物の切断片で満たされた収納容器55を内部のホイスト66に吊るした搬出容器56を、作業ハウス29まで吊り上げる必要がある。このため、搬出容器56が通過できる内径を有する太い第2中空管が、第1中空管と同様に、袋内に配置され、両端部がその袋の上面及び下面に気密性を保つように取り付けられる。第2中空管を放射線遮へい体68の袋内に設置することにより、収納容器55を内部に収納した搬出容器56を、作業ハウス29内に設置された別の天井クレーンにより、作業ハウス29まで容易に吊り上げることができ、放射線遮へい体68内の水69の漏えいを防止することができる。
切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48B等を用いて、実施例1と同様に、炉内構造物等の切断対象物の切断、この切断片の収納容器55内への収納、及び収納容器55を収納した搬出容器56の移送が行われる。特に、図7に示された状態では、旋回テーブル42に設けられた、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bを用いて、燃料デブリ35が切断され、燃料デブリ35の切断片が収納容器保持部材54内に配置された収納容器55内に収納される。このようにして、原子炉圧力容器3内の燃料デブリ35が除去される。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、水69を充填した放射線遮へい体68を原子炉圧力容器3内でベース部41及び旋回テーブル42の上方に配置するので、ベース部41及び旋回テーブル42の下方から上方に向かう放射線を放射線遮へい体68によって遮へいすることができる。このため、運転床23上にいる作業員の被ばくを低減することができる。なお、放射線遮へい体68には、搬出容器56が移動する通路を形成する第2中空管が設けられてこの第2中空管内を放射線が通過する可能性があるが、水69を充填した放射線遮へい体68の設置により、運転床23に到達する放射線の量を著しく低減できる。
また、内部に水69を充填する放射線遮へい体68を原子炉圧力容器3内に設置するため、原子炉圧力容器3内への放射線遮へい体の設置が容易である。
本発明の他の好適な実施例である実施例3の燃料デブリ取り出し装置を、図8を用いて説明する。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Aは、実施例1の燃料デブリ取り出し装置40に放射線遮へい体74を追加した構成を有する。環状の放射線遮へい体74は、アラミド繊維をポリウレタンシートで挟んでアラミド繊維及びポリウレタンシートを一体化して得られた素材で構成された袋を有している。放射線遮へい体74は、円筒支持部65の周囲を取り囲み、円筒支持部65及びベース部41に取り付けられる。複数の水供給ホース75が、伸縮シール部材44の内側に配置されて円筒支持部65に取り付けられ、放射線遮へい体74の袋内に連絡される。燃料デブリ取り出し装置40Aの他の構成は燃料デブリ取り出し装置40と同じである。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Aを用いた燃料デブリ取り出し方法では、放射線遮へい体74の環状の袋が取り付けられたベース部41が、原子炉圧力容器3内に挿入される。昇降装置59のベース部60が、原子炉ウェル24の側壁に形成された段差部27上に設置される。ベース部60に設置された3基の回転ドラムに巻き付けられた各ワイヤが燃料デブリ取り出し装置40Aのリング部材43に取り付けられ、ベース部41が昇降装置59に保持される。この結果、旋回テーブル42、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bも昇降装置59に保持される。さらに、ベース部41は、実施例1と同様に、各クランプ装置45によって原子炉圧力容器3の内面に保持される。このとき、固定部材57が原子炉圧力容器3の上端部のフランジの上面に取り付けられており、上端部が固定部材57に取り付けられた伸縮シール部材44の下端部がリング部材43に取り付けられている。複数の水供給ホース75は、伸縮シール部材44の内側に配置され、運転床23に設置された水供給ポンプ(図示せず)に接続される。
ベース部41が昇降装置59に保持され且つクランプ装置45によって原子炉圧力容器3の内面に保持されているとき、水供給ポンプが駆動されて各水供給ホース75を通して放射線遮へい体74の袋内に水を供給する。この袋は、円筒支持部65の周囲で、水の供給によりドーナツ状に膨張する。このため、水が充填された環状の放射線遮へい体74が円筒支持部65と原子炉圧力容器3の間の環状空間に配置され、原子炉圧力容器3内のベース部41及び旋回テーブル42よりも下方からベース部41と原子炉圧力容器3の間の環状空間を通って上方に向かう放射線が、放射線遮へい体74により遮蔽される。
切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48B等を用いて、実施例1と同様に、炉内構造物等の切断対象物の切断、この切断片の収納容器55内への収納、及び収納容器55を収納した搬出容器56の移送が行われる。特に、図8に示された状態では、旋回テーブル42に設けられた、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bを用いて、燃料デブリ35が切断され、燃料デブリ35の切断片が収納容器保持部材54内に配置された収納容器55内に収納される。このようにして、原子炉圧力容器3内の燃料デブリ35が除去される。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、水を充填した放射線遮へい体74がベース部41と原子炉圧力容器3の間に形成される環状空間を覆うように配置されるため、ベース部41及び旋回テーブル42よりも下方に存在する放射性物質から放出されてベース部41と原子炉圧力容器3の間を通って上方に向かう放射線を、放射線遮へい体74によって遮へいすることができる。
本発明の他の好適な実施例である実施例4の燃料デブリ取り出し装置を、図9を用いて説明する。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Bは、前述の燃料デブリ取り出し装置40においてベース部41及び旋回テーブル42をベース部76に変えた構成を有する。実質的には、ベース部76はベース部41及び旋回テーブル42を一体化した構成である。ベース部76は放射線遮へい材で構成される。切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bは、ベース部76に形成された2つの貫通孔に別々に挿入されてベース部76に設置される。作業アーム48A,48Bのそれぞれとベース部76の間の環状の隙間は、それぞれ、シール部材(図示せず)でシールされている。本実施例で用いられる作業アーム48A,48Bのそれぞれの長さは、燃料デブリ取り出し装置40Bが旋回テーブル42を有していない関係上、燃料デブリ取り出し装置40で用いられる作業アーム48A,48Bのそれぞれの長さよりも長くなっている。燃料デブリ取り出し装置40Bの他の構成は燃料デブリ取り出し装置40と同じである。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Bを用いた燃料デブリ取り出し方法では、燃料デブリ取り出し装置40Bを用いているが、実施例1における燃料デブリ取り出し装置40を用いた燃料デブリ取り出し方法と同様に、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bを用いて、炉内構造物等の切断対象物の切断、及びこの切断片の収納容器55内への収納が行われる。特に、図10に示された状態では、ベース部76に設けられた、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bを用いて、燃料デブリ35が切断され、燃料デブリ35の切断片が収納容器保持部材54内に配置された収納容器55内に収納される。このようにして、原子炉圧力容器3内の燃料デブリ35が除去される。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、旋回テーブル42、シール部材51A,51Bが不要になるため、燃料デブリ取り出し装置40Bの構造を簡素化することができる。
本発明の他の好適な実施例である実施例5の燃料デブリ取り出し装置を、図11を用いて説明する。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Cは、実施例4の燃料デブリ取り出し装置40Bにおいてシャッター部材52の替りに封鎖装置103を設けた構成を有する。燃料デブリ取り出し装置40Cでは、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bのそれぞれがベース部76を貫通する位置に、円筒部77がそれぞれ設置される。各円筒部77はベース部76を貫通している。切断具36を有する作業アーム48Aが、1つの円筒部77内に挿入されてこの円筒部77に取り外し可能に取り付けられる。掴み具37を有する作業アーム48Bが、他の1つの円筒部77内に挿入されてこの円筒部77に取り外し可能に取り付けられる。
封鎖装置103は各円筒部77の下端面に取り付けられる。封鎖装置103の構成を、図13、図14、図15及び図16を用いて説明する。図14に示された封鎖装置103は、作業アーム48Bが円筒部77から引き抜かれて円筒部77内に挿入されていない状態で、円筒部77の下端面に取り付けられた封鎖装置103を下方より見たときの構成を示している。封鎖装置103は二等辺三角形の形状を有する8枚の封鎖板80を有しており、各封鎖板80は円筒部77の下端面に取り付けられた支持部材83に取り付けられた回転軸84に取り付けられる。各封鎖板80は放射線遮へい体で構成されている。封鎖板80の、円筒部77の下端面に取り付け構造を図15及び図16を用いて説明する。回転軸84が円筒部77の下端面に取り付けられた支持部材83に回転可能に取り付けられる(図15参照)。支持部材83が封鎖板80に形成された切欠き部81内に配置される。支持部材83に回転可能に取り付けられた回転軸84の両端部が、封鎖板80の端部で切欠き部81の両側に形成されたボス部82に形成された貫通孔内に挿入される(図16参照)。回転軸84の両端部は、切欠き部81の両側に形成されたボス部82に固定される。このため、封鎖板80に固定された回転軸84が支持部材83に形成された貫通孔内で回転し、封鎖板80も回転する。他の7個の封鎖板80も同様な構成を有しており、封鎖板80のボス部82に取り付けられた回転軸84が円筒部77の下端面に取り付けられた各支持部材83に形成された貫通孔内で回転する。
円筒部77の下端面において開放されている孔部78が、8個、円筒部77の周方向に等間隔に配置される。圧縮ばね85が各孔部78内にそれぞれ配置される。圧縮ばね85の一端が孔部78の底部に固定され、圧縮ばね85の他端が、封鎖板80の、円筒部77の下端面に対向する面に取り付けられる。作業アーム48Bの掴み具37の先端が円筒部77の下端よりも上方に位置するとき、各圧縮ばね85の作用により各封鎖板80が円筒部77の下端面側に引っ張られ、円筒部77の、作業アーム48Bが挿入される貫通孔は8個の封鎖板80によって封鎖される(図13参照)。
作業アーム48Bが円筒部77の貫通孔内に挿入されて作業アーム48Bが円筒部77の下端面よりも下方に突出するときは、各封鎖板80が作業アーム48Bの掴み具37によって押し下げられ、作業アーム48Bが円筒部77の下端面よりも下方に移動することができる(図12参照)。
切断具36を有する作業アーム48A用の、下端面に封鎖装置103が取り付けられた円筒部77も、切断具36を有する作業アーム48B用の、下端面に封鎖装置103が取り付けられた円筒部77と同様に、ベース部76を貫通してベース部76に取り付けられる。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Cを用いた燃料デブリ取り出し方法では、燃料デブリ取り出し装置40Cを用いているが、実施例4における燃料デブリ取り出し装置40Bを用いた燃料デブリ取り出し方法と同様に、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bを用いて、炉内構造物及び燃料デブリ35等の切断対象物の切断、及びこれらの切断片の収納容器55内への収納が行われる。
本実施例は実施例4で生じる各効果を得ることができる。
前述の燃料デブリ取り出し装置40,40A及び40Bにおいて、シャッター部材52を除去し、シャッター部材52の替りに、燃料デブリ取り出し装置40Cに設けられ円筒部77及び封鎖装置103を旋回テーブル42に取り付けてもよい。下端面に封鎖装置103が取り付けられた一対の円筒部77は、旋回テーブル42を上下方向に貫通し、旋回テーブル42に取り付けられる。作業アーム48Aが1つの円筒部77に挿入されており、作業アーム48Bが他の1つの円筒部77に挿入されている。
本発明の他の好適な実施例である実施例6の燃料デブリ取り出し装置を、図17を用いて説明する。
本実施例の燃料デブリ取り出し装置40Dは、実施例4の燃料デブリ取り出し装置40Bにおいて伸縮シール部材44の替りに円筒シール装置86を設けた構成を有する。円筒シール装置86は、複数の円筒シール部材87、シール昇降装置93及び昇降装置旋回機構98を備えている。燃料デブリ取り出し装置40Dの他の構成は燃料デブリ取り出し装置40Bと同じである。
円筒シール部材87の詳細な構成を、図18を用いて説明する。円筒シール部材87は、円筒部88、上部フランジ89、下部フランジ90、リング部材91及びリング状のシール部材104を有する。上部フランジ89は円筒部88の上端に溶接で取り付けられ、下部フランジ90は円筒部88の下端部に溶接で取り付けられる。リング部材91は上部フランジ89と下部フランジの間で円筒部88に溶接で取り付けられる。リング部材91は上部フランジ89の近くに配置される。上部フランジ89には、側面の前面に亘って開口している環状の溝が形成されており、この溝内にリング状のシール部材104が装着されている。
円筒部88は、詳細には、第1円筒部88A,第2円筒部88Bを有する。第1円筒部88Aの軸方向の長さは第2円筒部88Bの軸方向の長さよりも短くなっている。上記の上部フランジ89、下部フランジ90及びリング部材91の円筒部88への接合を詳述すると、上部フランジ89が第1円筒部88Aの上端に、リング部材91が第1円筒部88Aの下端及び第2円筒部88Bの上端、及び下部フランジ90が第2円筒部88Bの下端に、それぞれ溶接にて取り付けられている。円筒部88,88A及び88B、上部フランジ89、下部フランジ90及びリング部材91は金属製(例えば、ステンレス鋼製または炭素鋼製)である。
円筒シール装置86において最も下方に位置する円筒シール部材87はベース部76の上面に取り付けられる。この円筒シール部材87の円筒部88の下端、すなわち、第2円筒部88Bの下端が、ベース部76の上面に溶接で取り付けられる。この円筒シール部材87の上部フランジ89には、前述したように、シール部材104が取り付けられている。
シール昇降装置93は、シリンダ94、ピストン95、ピストンロッド96及び保持部材97を有する。シリンダ94の下端部の外面に、シリンダ94を取り囲んで歯車(図示せず)が取り付けられている。8個のシール昇降装置93が、リング状の固定部材57の周方向において等間隔に配置され、固定部材57の上面に取り付けられた支持部材101上に回転可能に設置される。シリンダ94が支持部材101上に設置され、ピストン95がシリンダ94内に配置される。ピストン95の下面に取り付けられたピストンロッド96が下方に伸びて支持部材101及び固定部材57を貫通している。保持部材97は、固定部材57の下面よりも下方に配置され、ピストンロッド96の下端に取り付けられている。
昇降装置旋回機構98は、各シール昇降装置93に対応して配置され、モータ99及び減速装置100を有する。モータ99及び減速装置100のそれぞれは支持部材101の上面に設置される。モータ99の回転軸が減速装置100に連結される。減速装置100の最終段の歯車が、シリンダ94の外面を取り囲む前述の歯車と噛み合っている。
8個のシール昇降装置93の内側に配置された金属製の円筒状の外筒部102が、ベース部76に取り付けられている。外筒部102は内面を含めて機械加工が施されている。
燃料デブリ取り出し装置40Dを用いた本実施例の燃料デブリ取り出し方法を以下に説明する。実施例1と同様に、シールドプラグ28、ヘッド18、上蓋4、蒸気乾燥器12及び気水分離器11が除去される。
作業ハウス29内で、燃料デブリ取り出し装置40Dの固定部材57が昇降装置59の回転ドラム61,62等の3基の回転ドラムに巻き付けられた各ワイヤに取り付けられた状態で、昇降装置59を作業ハウス29内の天井クレーン32で吊って、昇降装置59のベース部60が、原子炉ウェル24の側壁に形成された段差部27の上面の位置まで下降され、この段差部27の上に置かれる。燃料デブリ取り出し装置40Dのベース部76に取り付けられた1つの円筒シール部材87が、ベース部76に設けられた8個のシール昇降装置93のうち4個のシール昇降装置93によって保持される。これらの4個のシール昇降装置93の相互間に1個ずつ配置される。円筒シール部材87を保持しているこれらの保持部材97を有する4個のシール昇降装置93を、便宜的に第1グループのシール昇降装置93という。残りのシール昇降装置93は、この円筒シール部材87を保持していない。残りのこれら4個のシール昇降装置93を、便宜的に第2グループのシール昇降装置93という。
第1グループの4個のシール昇降装置93によるその1つの円筒シール部材87の保持について説明する。第1グループの4個のシール昇降装置93のピストンロッド96の下端に設けられたそれぞれの保持部材97が、円筒シール部材87の中心に向かって配置されている。円筒シール部材87のリング部材91の下面がこれらの保持部材97の上に載ることによって、円筒シール部材87がそれらの保持部材97で保持される。結果的に、収納容器保持部材54、搬出容器56及び作業アーム48A,48Bが取り付けられた、燃料デブリ取り出し装置40Dのベース部76が、シール昇降装置93によって固定部材57に保持される。
段差部27の上に置かれている昇降装置59の3基の回転ドラムを回転させてこれらの回転ドラムに巻き付かれた3本のワイヤ(例えば、ワイヤ63等)を巻き戻し、固定部材57及びベース部76を下降させる。やがて、固定部材57及びベース部76が原子炉圧力容器3内に挿入され、固定部材57が原子炉圧力容器3のフランジの上面に着座する。固定部材57が原子炉圧力容器3のフランジに取り外し可能に複数のボルトにより固定される。その後、ベース部76が原子炉圧力容器3内で所定の位置まで下降されるまで、保持部材97で保持されている円筒シール部材87の上に他の複数の円筒シール部材87を連結する。
連結する他の円筒シール部材87を、作業ハウス29内に設置された他の天井クレーンに吊り下げられて保持部材97で保持されている円筒シール部材87の上まで下降する。前者の円筒シール部材87の下部フランジ90の下面が後者の円筒シール部材87の上部フランジ89の上面に接触したとき、前者の円筒シール部材87の下部フランジ90に取り付けられている複数のボルト92を用いて、前者の円筒シール部材87の下部フランジ90を後者の円筒シール部材87の上部フランジ89に取り付ける。この結果、それらの円筒シール部材87が連結される(図19の右側の「連結時の状態」を参照)。それらの円筒シール部材87は、外筒部102の内側に配置される。
後者の円筒シール部材87のリング部材91を保持している第1グループの4個のシール昇降装置93のそれぞれのシリンダ94内のピストン95より下方の領域の液圧を減少させながらシリンダ94内のピストン95より上方の領域に液圧を加える。各シール昇降装置93のそれぞれのピストン95が下降し、ピストン95にピストンロッド96で連結された各保持部材97が下降する(図19の左側の「下降時の状態」を参照)。それらのピストン95が最も低い位置まで下降したとき、第1グループの各シール昇降装置93のシリンダ94への液圧の供給を停止する。このとき、第2グループの4個のシール昇降装置93の各シリンダ94内のピストン95よりも下方の領域に液圧を供給してピストン95を、第2グループの4個のシール昇降装置93の各保持部材97の上面が前者の円筒シール部材87のリング部材91の下面に接触するまで、上昇させる。各保持部材97がリング部材91の下面に接触したとき、第2グループの4個のシール昇降装置93のシリンダ94への液圧の供給を停止する。
その後、第1グループの4個のシール昇降装置93に対応して設けられた昇降装置旋回機構98のモータ99を駆動する。モータ99の回転速度は、減速装置100で減速された後、歯車によりシリンダ94に伝えられ、シリンダ94が90°だけ回転する。この結果、第1グループの4個のシール昇降装置93の、円筒シール部材87の中心を向いている各保持部材97が、90°回転し、これらの保持部材97が後者の円筒シール部材87のリング部材91を保持しなくなる。上方に位置する円筒シール部材87のリング部材91が第2グループの4個のシール昇降装置93の各保持部材97で保持されることにより、ベース部76及び2つの円筒シール部材87は、第2グループの4個のシール昇降装置93によって保持される。
ベース部76が原子炉圧力容器3内の所定の位置に下降するまで、上記の操作が繰り返され、円筒シール部材87が順次連結される。ベース部76が原子炉圧力容器3内の所定の位置まで下降したとき、ベース部76に設けられた、切断具36を有する作業アーム48A及び掴み具37を有する作業アーム48Bを用いて、実施例4と同様に、原子炉圧力容器3内の上部格子板10及び炉心シュラウド6等の炉内構造物、及び燃料デブリ35が切断され、これらの切断片が収納容器55内に収納される。その後、切断片で満たされた収納容器55を内蔵している搬出容器56を、作業ハウス29まで吊り上げ、所定の保管場所まで移送する。ベース部76が所定位置に下降したとき、ベース部76に設けられた各クランプ装置45によってベース部76が原子炉圧力容器3の内面に保持される。これにより、切断対象物の切断時におけるベース部76の横揺れを防止することができる。最も上方に位置している円筒シール部材87の上部フランジ89に取り付けられたシール部材104の外面は、外筒部102に内面に接触しており、連結された円筒シール部材87と原子炉圧力容器3の間の環状空間に存在する放射性ダストが、運転床23の上方まで達することを防止している。
本実施例は実施例4で生じる各効果を得ることができる。外筒部102の機械加工が施された内面に上部フランジ89に取り付けられたシール部材104に接触するため、原子炉圧力容器3の内面にシール部材が接触した場合よりも、放射性ダストが運転床23の上方に到達するのを抑制することができる。
本実施例における円筒シール装置86は、旋回テーブル42を有する燃料デブリ取り出し装置40及び40Aに適用することができる。