JP6330999B2 - ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、刃先に高負荷が作用するCFRPなどの難削材の高速高送り切削加工において、クラックの伝播を抑制することによって、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮するダイヤモンド被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具に関する。
従来、炭化タングステン(WC)基超硬合金(以下、「超硬合金」という)からなる工具基体に、ダイヤモンド膜を被覆したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(以下、「ダイヤモンド被覆工具」という)が知られているが、従来のダイヤモンド被覆工具においては、工具基体とダイヤモンド膜の密着性が十分でないため、これを改善するためにダイヤモンド膜を成膜する前に超硬合金製工具基体表面よりダイヤモンドの形成を阻害するコバルト(Co)を除去し、工具基体上にダイヤモンド膜を成膜するなどの種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、ダイヤモンド被覆工具において、超硬合金基体を段階的にエッチング処理することで基体表面のCoを除去し、超硬合金基体上にWC粒子程度の凹凸を形成させ、ダイヤモンド膜を被覆することによって、ダイヤモンド膜と超硬合金製工具基体との密着性が改善されることが開示されている。
また、特許文献2には、ダイヤモンド被覆工具において、電解エッチング処理により凹凸が形成された超硬合金基体上にW等の中間層を被覆し、中間層上にダイヤモンド膜を被覆することによって、ダイヤモンド膜と工具基体との密着性改善を図ることが開示されている。
さらに、例えば、特許文献3には、超硬合金製工具基体をダイヤモンドで被覆するにあたり、超硬合金工具基体表面に元素周期律表IVa族、Va族、VIa族の金属炭化物、炭化ケイ素またはアルミナ等のセラミック粒子を埋め込み、電解エッチング処理を施すことにより基体表面に凹凸を形成することにより、工具基体とダイヤモンド膜の密着性を改善することが開示されている。
特許第4588453号公報 特開2000−144451号公報 特許平8−92741号公報
近年の切削加工の技術分野における省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削加工は益々高速化の傾向にあるが、従来ダイヤモンド被覆工具を、例えば、CFRPなどの難削材を高い加工精度で高速高送り切削に供した場合には、クラックの発生・伝播により、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生し易く、その結果、比較的短時間で使用寿命に至ることが多かった。
例えば、特許文献1に開示されているような工具基体表面近傍の結合相量、すなわちCo量を少なくすることによってダイヤモンド膜と工具基体との密着性を向上させる処理を行った場合であっても、CFRPなどの高速重切削加工のように、刃先に短時間に繰り返し衝撃が作用する切削条件では、ダイヤモンド膜と超硬合金との界面のCo量が減少した領域に発生したクラックが伝播することによって、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生させ、早期に切削工具としての寿命に至るという問題があった。
また、特許文献2に示すような前処理を行う場合、電解エッチングによりWCとCoが同時に溶出してしまうため、凸部の強度維持が困難であり、W等の中間層と超硬合金基体間の密着性にも問題があった。
また、特許文献3ではSiC粒子を超硬合金基体に埋め込み、SiC粒子がエッチングを阻害するマスキングとして機能し、凸形状を超硬合金基体上に形成させているが、WC粒子間に隙間なくSiC粒子を埋め込むことは困難であり、硬い超硬合金基体に硬質セラミックスであるSiC粒子を埋め込むことは実用的であるとはいえない。
そこで、本発明は、刃先に高負荷が作用するCFRPなどの難削材の高速高送り切削加工において、ダイヤモンド膜と工具基体との界面に発生したクラックの伝播を抑制することによって、チッピング、欠損、剥離等の耐異常損傷性を向上させ、すぐれた耐摩耗性を長期の使用に亘って発揮することができるダイヤモンド被覆工具を提供することを目的とする。
前述のようなダイヤモンド被覆工具の課題について本発明者らが鋭意、研究と実験を繰り返した結果、従来のダイヤモンド被覆工具においては、前述のようにダイヤモンド膜と工具基体との密着性を上げるために工具基体の最表面に存在する金属結合相中のCoを除去する処理を行っているが、その結果、刃先における靭性の低下を招き、刃先強度低下が生じている。
そこで、本発明者らは、例えば、CFRPなどの難削材の高速高送り加工のように、切れ刃に高負荷が作用する切削条件に供した場合でも、すぐれた耐異常損傷性、耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具を提供すべく、工具基体表面近傍に存在する金属結合相中のCoに焦点を当て鋭意研究を重ねたところ、次のような知見を得た。
すなわち、
(1)超硬合金からなる工具基体が、その構成成分としてTaC、NbCを含有する場合、焼結条件によって、TaC、NbCのWC粒子間での粒成長が促進され、WC粒子間にTaC、NbCが隙間なく充填されたTaC、NbC濃化領域が形成される。
(2)そのため、TaC、NbCが存在する箇所のWC粒子間のCo結合相は焼結時にWC粒子間の外側に押し出される。
(3)前記の基体に酸溶液による化学的なエッチング(希硫酸+過酸化水素水)を行うとTaC、NbCが存在している箇所、例えば、前記TaC、NbC濃化領域は残存するCoが少ないため、Coエッチングが進行しない。このためTaC、NbC濃化領域は酸に対してマスキングの効果を持ち、TaC、NbC濃化領域より工具基体側はCoエッチングが進行せず、結合相を残存させることができる。一方、TaC、NbC濃化領域の周囲の領域は酸エッチングによりCoが除去され、Co貧化領域が形成される。
(4)上記TaC、NbC濃化領域及びCo貧化領域がその表面近傍に形成された超硬合金からなる工具基体の上に、ダイヤモンド膜を形成すると、このダイヤモンド被覆工具は、切削加工時にCo貧化領域にクラックが発生したとしても、クラックの伝播が、前記TaC、NbC濃化領域より基体側の金属結合相が残存する領域でその進展を抑制され、その結果、チッピング、欠損、剥離等の発生が低減され、耐異常損傷性が向上する。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「Coの平均含有量が3〜15質量%、TaC及びNbCの平均合計含有量が0.1〜3.0質量%、残部がWCからなる平均組成を有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体表面に、平均膜厚3〜30μmのダイヤモンド膜が被覆形成されたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
(a)前記工具基体表面から6μmまでの深さ領域に、WC粒子で囲まれたTaC、NbC濃化領域が形成され、該TaC、NbC濃化領域の内部は、Ta及びNbの平均合計含有量が全金属組成に対し50質量%以上、及び平均含有量が1.0質量%以下のCoで構成され、
(b)前記TaC、NbC濃化領域の、深さ方向の平均長さは2〜6μmであり、前記工具基体と平行な方向の平均幅は2〜6μmであり、
(c)前記TaC、NbC濃化領域の、工具基体の縦断面について測定した前記TaC、NbC濃化領域の単位面積当たりの生成密度は3000〜15000個/mmであり、
(d)前記TaC、NbC濃化領域に隣接し、工具基体表面からの最大深さが2〜6μmの範囲には、エッチングによりCoが除去され、Co量が1.0質量%以下であるCo貧化領域が形成されていることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。」
を特徴とするものである。
以下、本発明について、図面と共に詳細に説明する。
工具基体を構成する超硬合金中のCoの平均含有量:
工具基体を構成する超硬合金のCoの平均含有量が3質量%未満の場合、工具基体の靭性が低くなり切削時に欠損が生じやすくなるため好ましくない。一方、15質量%を超えると、エッチング処理後、Co貧化領域において空隙が占める体積割合が多くなり、Coが除去された領域が脆弱になるためダイヤモンド膜と工具表面との界面強度が低下し好ましくない。
したがって、工具基体を構成する超硬合金中のCoの平均含有量は、3〜15質量%と定めた。
工具基体を構成する超硬合金中のTaC及びNbCの合計含有量:
工具基体を構成する超硬合金中のTaC及びNbCの平均合計含有量が、0.1質量%未満の場合、図1に示すTaC、NbC濃化領域(以下、単に「濃化領域」という場合もある)、即ち、WC粒子で囲まれた領域であって、該領域の内部は、TaC及びNbC、及び1.0質量%以下のCoで構成されている濃化領域の形成が少なくなるため、クラックの伝播・進展抑制効果を期待することができず、一方、TaC及びNbCの合計平均含有量が、3.0質量%を超える場合には、工具基体の靭性が低下し、欠損を生じる恐れがある。
したがって、工具基体を構成する超硬合金中のTaC及びNbCの平均合計含有量は、0.1〜3.0質量%と定めた。
工具基体表面から深さ6μmまでの工具基体内部側の領域(以下、「工具基体表面近傍」という)に形成されるTaC、NbC濃化領域:
工具基体表面近傍に形成される図1に示す濃化領域、即ち、WC粒子で囲まれた領域であって、該領域の内部は、TaC、NbC、及び1.0質量%以下のCoで構成されているTaC、NbC濃化領域、の工具基体表面からの平均深さが2μm未満の場合、あるいは、平均深さが6μmを超えるような場合には、該領域を囲むWC粒子間に隙間を生じ、1.0質量%を超えるCoが該領域内に残存するため、エッチングによってCoの除去が進行し、クラックの伝播・進展を抑制する機能を有するTaC、NbC濃化領域を形成することができない。
したがって、工具基体表面近傍に形成されるTaC、NbC濃化領域は、その深さ方向の平均長さを2〜6μmと定めた。
該TaC、NbC濃化領域の内部のTa、Nbの平均合計含有量が全金属組成に対し50質量%未満の場合、該TaC、NbC濃化領域に残存するCoが多くなるため、酸エッチングにおけるマスキングの効果が得られにくい。
なお、濃化領域の内部にはCoが残存しないことが望ましいが、Co残存量が1.0質量%以下であるような場合には、エッチングの進行が実質的に抑えられることから、濃化領域の内部には、1.0質量%以下の範囲において、Coの残存も許容される。
なお、工具基体表面近傍に濃化領域を形成する方法については、後記する。
工具基体表面近傍に形成される図1に示す濃化領域の平均幅が、工具基体と平行な面(断面)で測定して2μm未満の場合、あるいは、平均幅が6μmを超えるような場合には、該領域を囲むWC粒子間に隙間を生じ、1.0質量%を超えるCoが該領域内に残存するため、エッチングが進行し、クラックの伝播・進展を抑制する機能を有する濃化領域を形成することができない。
したがって、工具基体と平行な面(断面)で測定した工具基体表面近傍に形成される濃化領域の平均幅は、2〜6μmと定めた。
工具基体表面近傍に形成される図1に示す濃化領域の生成密度が、工具基体の表面について測定した場合に3000個/mm未満である場合は、クラックの伝播・進展を抑制する作用を有する濃化領域の数が少ないため、クラックの伝播・進展を抑制する効果が十分でなく、一方、工具基体の表面について測定した濃化領域の生成密度が15000個/mmを超える場合は、工具基体表面近傍に過度にTaC、NbCが集中するため、工具基体表面の靭性が低下し、欠損を生じやすくなる。
したがって、工具基体の表面で測定した工具基体表面近傍に形成される濃化領域の生成密度は、3000〜15000個/mmと定めた。
TaC、NbC濃化領域に隣接し、かつ、工具基体表面から最大深さが2〜6μmの範囲に形成されるCo貧化領域:
TaC、NbC濃化領域に隣接し、かつ、工具基体表面から最大深さが2〜6μmの範囲には、図1に示すように、平均組成よりCo含有量が少ないCo貧化領域(以下、単に「貧化領域」という場合もある)を形成する。該貧化領域は、例えば、工具基体を酸エッチングし、基体表面からCoを除去することによって形成する。
Co貧化領域は、工具基体表面から最大深さが2μm未満である場合には、ダイヤモンド膜と工具基体との密着性が十分でなく、剥離を生じやすく、一方、その最大深さが6μmを超える場合には、該貧化領域にクラックが生じやすくなり耐チッピング性、耐欠損性が低下する。
したがって、Co貧化領域は、工具基体表面から最大深さが2〜6μmの範囲に形成する。
なお、貧化領域は、エッチングによってCoが除去された領域であるが、Coの残存量が1.0質量%以下であれば、ダイヤモンド膜との密着性に影響はないことから、Co貧化領域におけるCo残存量は1.0質量%以下とする。
ここで、工具基体表面近傍におけるTaC、NbC濃化領域の深さ方向の平均長さ、工具基体と平行な面で測定した平均幅および工具基体の縦断面で測定したTaC、NbC濃化領域の生成密度、また、Co貧化領域が形成された工具基体表面から最大深さは、次のような方法で求めた。
走査型電子顕微鏡により工具基体表面近傍の断面観察を行い、ダイヤモンド膜と工具基体との界面より工具基体の内部側に深さ10μm、基体表面と平行方向に100μmの観察領域で得られた画像内に観察された複数のTaC、NbC濃化領域およびCo貧化領域について、それぞれの工具基体表面からの深さと幅を測定する。そして、測定した複数のTaC、NbC濃化領域およびCo貧化領域の深さを平均し、これをTaC、NbC濃化領域の深さ方向の平均長さとし、また、Co貧化領域の最大深さとした。また、測定した複数のTaC、NbC濃化領域において工具基体の表面と平行方向の幅を平均し、これをTaC、NbC濃化領域の平均幅とした。また、TaC、NbC濃化領域の生成密度については、脱膜処理によってダイヤモンド膜が除去された試料の表面の任意の100μm四方の3視野をエネルギー分散型X線分光法よって面分析を行い、カウントされた個数の平均値を、単位面積当たり(個/mm)に換算することによって求めた。
また、TaC、NbC濃化領域及びCo貧化領域におけるTaC、NbC、Co含有量については、試料の断面をオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)により測定することにより求めた。
ダイヤモンド膜の平均膜厚:
本発明の工具基体表面に被覆するダイヤモンド膜の平均膜厚が3μm未満では、長期の使用に亘って十分な耐摩耗性を発揮することができない。一方、ダイヤモンド膜厚が30μmを超えると、チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなり、かつ加工精度も低下する。したがって、ダイヤモンド膜の平均膜厚は、3〜30μmと定めた。
本発明のダイヤモンド被覆工具は、次のような製法で製造することができる。
(1)まず、所定の含有割合のCo、TaC、NbCを含有するWC基超硬合金を焼結する際、TaC、NbCの粒成長を施すため、TaC、NbCの粒径は1μm程度が好ましく、より好ましくは1μm以下の微粒が好ましい。そして、2段階の焼結条件で焼結することにより、TaC、NbCが粒成長し、WC粒子間にTaC、NbCが隙間なく充填されるTaC、NbC濃化領域を形成する。
(2)次いで、前記焼結体を研磨加工して、工具基体を形成する。
(3)前処理として、前記工具基体を酸でエッチングした後、希硫酸(1%)と過酸化水素(5%)とからなる酸混合溶液1Lに8〜15秒間、室温(23℃)で浸漬し、工具基体表面近傍のCoをエッチングで除去し、工具基体表面近傍にCo貧化領域を形成する。
(4)次いで、熱フィラメントCVDプロセスにより、平均膜厚3〜30μmのダイヤモンド膜を基体に被覆する。
上記の工程(1)〜(4)によって、本発明のダイヤモンド被覆工具を作製することができる。
図1には、上記で作製した本発明のダイヤモンド被覆工具のダイヤモンド膜と基体の界面の断面の模式図を示す。
また、図2には、上記で作製した本発明ダイヤモンド被覆工具の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した反射電子像を示す。
図2には、工具基体表面近傍に、WC粒子で囲まれた領域であって、かつ、該領域の内部は、TaC、NbC、及び1.0質量%以下のCoで構成されている濃化領域(TaC、NbC濃化領域)が示されており、TaC、NbCの内の1種または2種が存在する領域の末端を境界として、濃化領域の工具基体の表面と平行方向の直線距離の幅は約2μm、深さ方向の直線距離の長さは約3μmであることが分かる。
図3には、走査型電子顕微鏡により観察した広視野の電子像を示しており、(a)は、二次電子像、(b)は、反射電子像を示す。反射電子像において、結合相の濃淡が濃い領域にTaC、NbC濃化領域を確認した。
また、AESによりTaC、NbC濃化領域の組成分析を行ったところ、TaC、NbC濃化領域は、WC粒子で囲まれた領域であって、かつ、該領域の内部は、TaC、NbC、及び1.0質量%以下のCoで構成されていることを確認した。
また、Co貧化領域については、同じくAESにより組成分析を行ったところ、WC粒子間に存在するCo残存量は1.0質量%以下であって、TaC、NbCはAESによる検出限界以下であり、WC粒子間にはエッチングによってCoが除去された空孔が形成されていた。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、Coが3〜15質量%、TaC、NbCの合計量が0.1〜3.0質量%、残部がWCで構成される炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したものであって、工具基体表面から6μmまでの深さ領域に、WC粒子で囲まれ、かつ、その内部は、TaC、NbC、及び1.0質量%以下のCoで構成されたTaC、NbC濃化領域を形成し、TaC、NbC濃化領域の深さ方向の平均長さ、平均幅および生成密度を適正数値範囲に定めるとともに、TaC、NbC濃化領域に隣接してCo貧化領域を形成したことによって、CFRPなどの難削材の高速高送り切削加工においても、ダイヤモンド膜の密着性を低下させることなく、クラックの伝播・進展を抑制して、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性を発揮し、異常損傷の発生を招くことなく長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
本発明のダイヤモンド被覆工具のダイヤモンド膜と基体の界面の断面の模式図を示す。 本発明のダイヤモンド被覆工具の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した反射電子像を示す。 図3には、走査型電子顕微鏡により観察した広視野の電子像を示し、(a)は二次電子像、(b)は反射電子像を示す。
つぎに、本発明のダイヤモンド被覆工具について、実施例に基づき具体的に説明する。
なお、ここでは、ダイヤモンド被覆工具の具体例としてダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できることは言うまでもない。
(a)原料粉末として、いずれも0.5〜1.0μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、TaC粉末、NbC粉末を、表1に示される割合に配合し、さらにバインダーと溶剤を加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、いずれも押し出しプレス成形し、直径が10mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、表3に示す2段階の1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持するという条件で焼結することにより焼結体を作製し、該焼結体を研磨加工することにより、TaC、NbC濃化領域が形成されたWC基超硬合金焼結体を製造した。
ついで、前記WC基超硬合金焼結体を、溝形成部の外径寸法がφ6mm、長さ80mmとなるように研削加工することにより、本発明のWC基超硬合金製ドリル基体(以下、単に「本発明ドリル基体」という)を製造した。
(b)ついで、前記本発明ドリル基体を、希硫酸(1.0%)と過酸化水素(5%)とからなる酸混合溶液1Lに6〜15秒間、室温(23℃)で浸漬し、ドリル基体表面近傍のCoをエッチングで除去し、本発明ドリル基体表面近傍にCo貧化領域を形成した。
(c)次いで、前記本発明ドリル基体を、0.1μm以下の一次粒子径を有するダイヤモンド粉末を配合したエタノール中で超音波処理による傷つけ処理を行い、ついで、熱フィラメントCVD装置に装入し、フィラメント温度を2200℃、水素ガスとメタンガスを100:1の流量比で流しながら、工具基体温度を900℃に維持し、3〜30μmの膜厚のダイヤモンド膜を成膜することにより、表5に示す本発明のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製ドリル(以下、単に、「本発明ドリル」という)1〜9を製造した。
比較のため、表2に示される割合に配合された原料粉末を用いて、表4に示す条件で焼結することにより焼結体を作製し、該焼結体を研磨加工することによりWC基超硬合金焼結体を製造し、ついで、このWC基超硬合金焼結体を、溝形成部の外径寸法がφ6mm、長さ80mmとなるように研削加工することにより、比較例のWC基超硬合金製ドリル基体(以下、単に「比較例ドリル基体」という)を製造した。
ついで、前記比較例ドリル基体を、希硫酸(1.0%)と過酸化水素(5%)とからなる酸混合溶液1Lに6〜15秒間、室温(23℃)で浸漬し、ドリル基体表面近傍のCoをエッチングで除去し、比較例ドリル基体表面近傍にCo貧化領域を形成した。
次いで、前記比較例ドリル基体を、0.1μm以下の一次粒子径を有するダイヤモンド粉末を配合したエタノール中で超音波処理による傷つけ処理を行い、ついで、熱フィラメントCVD装置に装入し、フィラメント温度を2200℃、水素ガスとメタンガスを100:1の流量比で流しながら、工具基体温度を900℃に維持し、3〜30μmの膜厚のダイヤモンド膜を成膜することにより、表6に示す比較例のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製ドリル(以下、単に、「比較例ドリル」という)1〜12を製造した。








本発明ドリル1〜9、比較例ドリル1〜12のダイヤモンド膜の膜厚を、走査型電子顕微鏡を用いて断面観察により、観察視野内の5点の膜厚を測定し、平均膜厚を算出した。
表5、6にこれらの値を示す。
また、本発明ドリル1〜9、比較例ドリル1〜12について走査型電子顕微鏡による断面観察により、工具基体表面近傍に形成されたTaC、NbC濃化領域(即ち、WC粒子で囲まれた、その内部は、TaC、NbC、及び1.0質量%以下のCoで構成された領域)の、深さ方向の平均長さ、平均幅を測定した。
その結果、本発明ドリル1〜9において観察されたTaC、NbC濃化領域は、いずれも、深さ方向の平均長さは2〜6μm、平均幅は2〜6μmであることが確認された。
また、本発明ドリル1〜9、比較例ドリル1〜12についてArガス雰囲気下で工具基体を高周波発生装置による誘導加熱処理により、20秒間1200℃に保持する脱膜処理を実施することにより、ダイヤモンド膜が除去された試料の表面をエネルギー分散型X線分光法にて面分析を実施し、工具基体表面近傍に形成されたTaC、NbC濃化領域の単位面積当たりの生成密度は3000〜15000個/mmであることが確認された。
また、本発明ドリル1〜9について、工具基体表面からの最大深さが2〜6μmの範囲に形成されたCo貧化領域の最大深さを測定した。
さらに、TaC、NbC濃化領域及びCo貧化領域について、AESにより組成分析を行い、それぞれの領域における全金属成分に対するTa,Nb,W, Coの平均含有量を測定した。
表5、表6に、これらの測定結果を示す。
つぎに、前記本発明ドリル1〜9および比較例ドリル1〜12(いずれも、ドリル径はφ6mm)を用いて、以下の条件で、CFRPの高速高送りドリル穴開け試験を行った。
被削材:厚さ15mmのCFRP,
切削速度:220m/min(通常の切削速度は、100m/min),
送り:0.32mm/rev(通常の送りは、0.1mm/rev),
穴深さ:20mm(貫通穴),
前記切削試験において、切削の異常音および切削時の荷重が異常を示した際に、試験を中断し、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の有無を確認した。チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生が確認された場合、それまでの穴あけ加工数を加工寿命とした。
また、本発明ドリルの合格条件として、100穴迄欠損せず、切れ刃の中央の逃げ面の摩耗形態が正常であることとした。
表7,8にこれらの評価結果を示す。


表5〜8の結果からも明らかなように、本発明ドリル1〜9は、工具基体表面近傍に、所定の深さ方向平均長さ、平均幅、所定生成密度のTaC、NbC濃化領域(即ち、WC粒子で囲まれ、その内部は、TaC、NbC、及び1.0質量%以下のCoで構成されたTaC、NbC濃化領域)が形成され、TaC、NbC濃化領域に隣接して、工具基体表面から最大深さ2〜6μmの範囲にCo貧化領域が形成されていることによって、CFRP等の難削材の高速高送りドリル穴開け切削加工において、すぐれた耐異常損傷性を示すとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮している。
これに対して、本発明ドリルのようなTaC、NbC濃化領域が形成されていない比較ドリル1〜12は、チッピング、欠損、剥離等の耐異常損傷性に劣り、短期に寿命に至ることが明らかである。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルばかりでなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できるものであり、すぐれた刃先強度と耐摩耗性を発揮することから、切削加工の省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものであり、その産業上の利用可能性はきわめて大きい。
1 TaC、NbCの内の1種または2種
2 ダイヤモンド膜
3 WC粒子
4 Co貧化領域
5 金属結合相
6 TaC、NbC濃化領域
7 ダイヤモンド膜と工具基体都の界面近傍
8 TaC、NbC濃化領域の基体表面と平行方向の幅
9 TaC、NbC濃化領域の深さ方向の長さ


















Claims (1)

  1. Coの平均含有量が3〜15質量%、TaC及びNbCの平均合計含有量が0.1〜3.0質量%、残部がWCからなる平均組成を有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体表面に、平均膜厚3〜30μmのダイヤモンド膜が被覆形成されたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
    (a)前記工具基体表面から6μmまでの深さ領域に、WC粒子で囲まれたTaC、NbC濃化領域が形成され、該TaC、NbC濃化領域の内部は、Ta及びbの平均合計含有量が全金属組成に対し50質量%以上、及び平均含有量が1.0質量%以下のCoで構成され、
    (b)前記TaC、NbC濃化領域の、深さ方向の平均長さは2〜6μmであり、前記工具基体と平行な方向の平均幅は2〜6μmであり、
    (c)前記TaC、NbC濃化領域の、工具基体の縦断面について測定した前記TaC、NbC濃化領域の単位面積当たりの生成密度は3000〜15000個/mmであり、
    (d)前記TaC、NbC濃化領域に隣接し、工具基体表面からの最大深さが2〜6μmの範囲には、エッチングによりCoが除去された、Co量の平均合計含有量が1.0質量%以下であるCo貧化領域が形成されていることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
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