JP6102613B2 - 刃先強度を向上させたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

刃先強度を向上させたダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、CFRPなどの難削材の高速切削加工において、すぐれた靭性および強度を備えることによって、刃先がすぐれた耐欠損性を発揮するダイヤモンド被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具に関する。
従来、炭化タングステン(WC)基超硬合金(以下、単に「超硬合金」という)からなる工具基体に、ダイヤモンド膜を被覆したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具が知られているが、従来のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具においては、工具基体とダイヤモンド膜の密着性が十分でないため、これを改善するために超硬合金製工具基体表面にダイヤモンドを成膜する際に、ダイヤモンドの形成を阻害するコバルトを除去させた工具基体上に成膜するなどの種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、工具基体の表面から100μmまでの間の結合相量を工具基体内部の結合相量に比較して減少させ、一方、工具基体表面から5〜100μmの間に存在する結合相量を工具基体内部の結合相量に対して1.2〜5倍に富化することが提案されており、これによって、ダイヤモンド膜と超硬合金製工具基体との密着性が改善されることが開示されている。
また、特許文献2には、ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、熱処理により、工具基体の表面からその内部に向って少なくとも1μm(好ましくは3〜100μm、特に好ましくは10〜50μm)の工具基体表面近傍における平均結合相量を、工具基体内部における平均結合相量よりも減少させ、工具基体表面近傍における結合相量を、工具基体表面で最小とするとともに、工具基体内部に向って漸増させて、工具基体内部の平均結合相量に達するように制御することによって、ダイヤモンド膜と工具基体との密着性改善を図ることが提案されている。
さらに、例えば、特許文献3には、WC基超硬合金製工具基体をダイヤモンドで被覆するにあたり、その表面を、ムラカミ(Murakami)試薬中でエッチングし、次いで、硫酸と過酸化水素の溶液中でエッチングすることにより、工具基体とダイヤモンド膜の密着性を改善することが提案されている。
特許第2539922号公報 特開平3−115571号公報 特許第3504675号公報
近年の切削加工の技術分野における省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削加工は益々高速化の傾向にあるが、前記従来ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(以下、単に「ダイヤモンド被覆工具」という)を、例えば、CFRPなどの難削材のドリル加工のような鋭利な刃先が要求される切削加工に供した場合には、超硬合金製工具基体の靭性が十分でないためチッピングを発生しやすく、早期に寿命に至る場合があった。また、CFRPなどの難削材を高速切削する場合には、特に高い刃先強度が要求されるが、従来ダイヤモンド被覆工具は、刃先強度が十分でなく、また、ダイヤモンド膜の剥離が生じやすいため、長期の使用に亘って、満足できる耐チッピング性および耐摩耗性を発揮することはできず、その結果、比較的短時間で使用寿命に至ることが多かった。
例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているような工具基体表面近傍の結合相量、すなわちCo量を少なくすることによってダイヤモンド膜と工具基体との密着性を向上させる処理を行った場合であっても、CFRPなどの切削加工においては、刃先近傍の強度が十分でなく、クラック発生により早期に切削工具としての寿命に至ることが多かった。また、特許文献3に示すような処理を行った場合、ドリル加工のような鋭利な刃先が要求される切削では刃先基体の強度が低いためにチッピングなどを生じやすく、早期に寿命に至る場合があった。
さらに、CFRPなどの被削材を高速切削する場合には、高い刃先強度が要求されるが、従来知られているダイヤモンド被覆工具においては、いずれも、早期にチッピングを生じ、工具寿命に至ることが多かった。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち本発明の目的は、ダイヤモンド被覆工具において、ダイヤモンド膜と工具基体との密着性を向上させるとともに刃先強度を向上させ、耐チッピング性および耐摩耗性を向上させたダイヤモンド被覆工具を提供することである。
前述のようなダイヤモンド被覆工具の課題について本発明者らが鋭意、研究と実験を繰り返した結果、従来のダイヤモンド被覆工具においては、前述のようにダイヤモンド膜と工具基体との密着性を上げるために工具基体の最表面に存在する金属結合相中のコバルトを除去する処理を行っているが、その結果、刃先における靭性の低下を招き、刃先強度低下の原因となっていることを突き止めた。
そこで、本発明者らは、例えば、CFRPなどの高速穴あけ加工や高速切削のように、切れ刃に高負荷が作用する切削条件に用いた場合でも、刃先近傍がすぐれた刃先強度を備えるとともに、長期の使用に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮するダイヤモンド被覆工具を提供すべく工具基体表面近傍に存在する金属結合相中のコバルトに焦点を当て鋭意研究を重ねたところ、次のような知見を得た。
すなわち、
(1)超硬合金基体の表面近傍のCoを化学的なエッチング(硫酸+過酸化水素)によって除去するが、その前に所定温度で高温保持した焼結後に所定の冷却速度、例えば100℃/minで急冷を行うと、高温保持時に高くなったCo中のW溶解量が急冷後にも維持されるため、焼結体の耐食性、強度を向上させることができる。
(2)前記工程で得られた焼結体は、結合相中のW固溶量を高くすることによりWC粒子同士の接着強度を向上させることができる。
(3)前記急冷工程においては、焼結体の内部は表面近傍に比べて冷却速度が遅くなるため、焼結体内部と表面近傍都でCo中のW固溶量に差が生じる。その結果、焼結体表面近傍が内部よりW固溶量が高くなるが、この差により工具基体の表面近傍の強度を選択的に向上させることができ、工具寿命を向上させることができる。
(4)前述のような方法で処理を行った工具基体表面は、ダイヤモンドの核生成密度が高く、工具基体表面における結晶粒が微粒となりダイヤモンド膜の付着強度にもすぐれ、結果として刃先強度の高いダイヤモンド被覆工具を得ることが出来る。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステンとコバルトを主成分とし、少なくとも3〜15質量%のコバルトを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、前記ダイヤモンド膜が、3〜30μmの平均膜厚を有し、前記工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域に、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が化学処理によって除去された金属結合相一部除去領域を有し、当該工具の刃先近傍の逃げ面に対して垂直断面における観察で、前記界面から工具基体の内部方向に8〜12μmの領域の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比が0.05以上0.15以下の範囲であるとともに前記工具基体の1mm以上内部における金属結合相における前記質量比に対して、1.05〜1.5倍であることを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
(2) 前記工具基体とダイヤモンド膜の界面におけるダイヤモンド膜の結晶の前記界面と平行方向の平均幅が20〜100nmであり、かつ、界面長50μmあたりに存在する結晶幅1μm以上の粗大な結晶粒が1個以下であることを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。」
を特徴とするものである。
ここで、本発明における「界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域」とは、「界面から工具基体の内部方向へ1μmまでの深さの領域」であっても構わないし「界面から工具基体の内部方向へ3μmまでの深さの領域」であっても構わないし、大きくとも(最大限)「界面から工具基体の内部方向へ5μmまでの深さの領域」ということを意味している。
以下、本発明について詳細に説明する。
コバルトを主成分とする金属結合相の一部が化学処理によって除去された金属結合相一部除去領域:
工具基体表面近傍の金属結合相(主としてコバルト/コバルト合金)を除去する目的は、工具基体とダイヤモンド膜との密着性を高めるためである。金属結合相一部除去領域の深さについては、特に限定しないが、1μm未満であると残留しているコバルト/コバルト合金の影響が依然として大きく、耐剥離性が十分でないため好ましくない。一方、5μmを超えると、工具基体の表面から多量の金属結合相が除去されることによって工具基体の靭性の低下が大きくなり、その結果、耐チッピング性が低下する。そのため、金属結合相一部除去領域の深さは、工具基体の内部方向へ大きくとも5μmと定めた。
本発明において、「コバルトを主成分とした金属結合相の一部が化学処理によって除去」されることの意義は、除去されるものとして主としてコバルトおよび/またはコバルト合金であることを意味しているが、超硬合金によっては、耐熱性を増すために炭化チタン(TiC)や炭化タンタルニオブ((TaNb)C)を混ぜたり、耐蝕性を増すためにコバルトの一部をニッケル(Ni)に置き換えたりすることがある。このような場合、「コバルトを主成分とした金属結合相の一部が化学処理によって除去」には、コバルトおよび/またはコバルト合金のみならず、炭化チタン(TiC)や炭化タンタルニオブ((TaNb)C)、Niなども包含される。
工具基体の表面近傍の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比:
工具基体の表面近傍、具体的には、工具基体の表面から内部方向に8〜12μmの領域の金属結合相において、タングステンのコバルトに対する質量比が、0.05未満では刃先の靱性確保の点およびダイヤモンドの核生成密度の点で不十分であり、一方、0.15を超えると、WCと金属結合相界面の強度が不十分となり、また、コバルトタングステン炭化物が析出し強度低下が起こる。そのため、工具基体の表面近傍の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比は、0.05以上0.15以下とした。
さらに、前記質量比は、工具基体の内部、具体的には、工具基体の1mm以上内部の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比に対して、1.05倍以上1.5倍以下であることが好ましい。その理由は、以下のように考えられる。タングステン濃度の高いコバルト合金は耐食性、強度にすぐれる。焼結時のような高温ではコバルト中のタングステン溶解量が高くなるが、焼結時の高温保持後に急冷することでコバルト中のタングステン固溶量を高く維持することができる。また、炭化タングステン粒子同士の接着強度は、金属結合相中のタングステン固溶量を高い状態に維持することで向上させることができる。一方で、焼結体内部は急冷させにくいため、コバルト中のタングステン固溶量は若干小さくなり、焼結体内部と表面近傍では、コバルト中のタングステン固溶量に差が生じる。すなわち、焼結時に高温保持後に急冷することで焼結体内部に比べて刃先となる焼結体表面近傍のコバルト中のタングステン固溶量を高くすることができ、工具基体に要求される耐食性、強度を向上させ、同時に内部のコバルト中のタングステン固溶量は小さいために、耐折損性を維持することができる。しかしながら、工具基体の表面近傍の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比が工具基体の内部の質量比と比べて1.05倍未満では、前述したような工具基体表面近傍の耐食性、強度を向上させるという効果が十分でなく、一方、1.5倍を超えると逆に焼結体内部と表面近傍との応力差から焼結体がチッピングしやすくなり刃先の強度低下を招く。したがって、工具基体の表面近傍の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比は、工具基体の内部と比べて1.05倍以上1.5倍以下とした。
工具基体とダイヤモンド膜との界面におけるダイヤモンド膜の結晶粒の大きさ:
工具基体とダイヤモンド膜との界面において観察されるダイヤモンド膜の結晶粒の界面と平行方向の最大幅の平均値、すなわち平均幅は、20nmより小さい場合、結晶形態が不安定であるため強度が低くなる。一方、100nmより大きくなると付着強度が低下する傾向が現れる。したがって、工具基体とダイヤモンド膜との界面におけるダイヤモンド膜の結晶の界面と平行方向の平均幅は、20〜100nmとすることが好ましい。
さらに界面長50μmあたりに存在する結晶幅1μm以上の粗大な結晶粒が2つ以上存在すると付着強度が低下する傾向があるため、前記粗大な結晶粒は1つ以下とした。
ここで、工具基体とダイヤモンド膜との界面におけるダイヤモンド膜の結晶粒の大きさの測定は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)(倍率は200000倍から1000000倍の範囲から適切な値に設定する)により界面近傍の断面観察を行い、得られた画像内に結晶粒内を横切る50μmの長さの界面に平行な試験線上に結晶粒の交点が幾つあるかを数える。そして、試験線の長さ、すなわち50μmを交点の数で割ることにより得られた長さを1結晶粒の平均線分長とした。この測定を4〜6本の試験線に対して行い、得られた平均線分長の平均値を算出し、平均幅と定義した。
また、前述の結晶粒の平均幅の測定において、界面における試験線と結晶粒との交点を計測し隣接する交点間の距離を結晶の幅とした。これが1μm以上となる場合をカウントし、このカウントを4〜6本の試験線に対して行い、得られた総カウント数の平均値を算出し、これを界面長50μmあたりに存在する結晶幅1μm以上の粗大な結晶粒の個数と定義した。
工具基体の組成:
本発明のダイヤモンド被覆工具の工具基体は、硬質相成分としての炭化タングステン(WCで示す)と金属結合相成分としてのコバルト(Coで示す)を主成分とし、かつ、Co含有量は3〜15質量%とする。
Co成分には、金属結合相を形成して基体の強度および靭性を向上させる作用があるが、WC基超硬合金中のCo含有量が3質量%未満では、特に靭性の確保が望めず、一方、Co含有量が15質量%を越えると、エッチングでCoを除去した層の強度が著しく低下し、切削時に欠損などが生じやすくなることから、WC基超硬合金中のCo含有量は3〜15質量%と定めた。
ダイヤモンド膜の平均膜厚:
工具基体表面に被覆するダイヤモンド膜は、その厚さが3μm未満では、長期の使用に亘って十分な耐摩耗性と耐剥離性を発揮することができず、一方、ダイヤモンド膜厚が30μmを超えると、チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなることから、ダイヤモンド膜の平均膜厚は、3〜30μmと定めた。
前述したような本発明のダイヤモンド被覆工具の工具基体は、次のような製法で製造することができる。(1)まず、所定のコバルトを含有する超硬合金を焼結する際、焼結保持温度(1380〜1500℃)からの冷却をアルゴンガスによって1200℃以下まで50〜100℃/minの範囲で急冷することで焼結体を得る。(2)次いで、前記焼結体を研磨加工して、超硬合金製工具基体を形成し、硫酸と過酸化水素と水を0.5:5:100に混合した溶液に数秒浸漬して表面近傍のCoをエッチングで除去後、エタノール中に0.1μm以下の一次粒子径を有するダイヤモンド粉末を分散させた溶液中で超音波処理したものを、熱フィラメントCVD装置に装入する。(3)さらに、フィラメント温度を2200℃、水素とメタンを100:1の流量比で流しながら、基板温度900℃にてダイヤモンド膜の成膜を平均膜厚が3〜30μmとなるまで行い製品とする。
こうしてできた本発明のダイヤモンド被覆工具の工具基体は、表面近傍がW濃度の高いコバルト合金であることからすぐれた耐食性、強度を発揮する。さらに、工具基体の表面近傍のタングステン濃度を内部に比べて高くしていることから、より負荷のかかる刃先の耐摩耗性、強度を選択的に向上させることができるため、工具基体の折損を防ぐとともに刃先強度の高いダイヤモンド被覆工具を得ることが出来る。
すなわち、工具基体とダイヤモンド膜の接合強度(密着性)を上げるために工具基体表面の金属結合相(主としてCoおよびCo合金)を除去すると、刃先強度が低下するというという、いわば、トレードオフの関係にあるダイヤモンド被覆工具の膜の密着性と刃先強度の問題を工具基体表層近傍の金属結合相におけるCoとWの質量比と工具基体内部のCoとWの質量比を制御することにより、耐摩耗性と強度の深さ方向におけるバランスを図るという新規な技術的思想により解決を図ったものである。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、炭化タングステンとコバルトを主成分とし、少なくとも3〜15質量%のコバルトを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、前記ダイヤモンド膜が、3〜30μmの平均膜厚を有し、前記工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域に、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が化学処理によって除去された金属結合相一部除去領域を有し、当該工具の刃先近傍の逃げ面に対して垂直断面における観察で、前記界面から工具基体の内部方向に8〜12μmの領域の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比が0.05以上0.15以下の範囲であるとともに前記工具基体の1mm以上内部における金属結合相における前記質量比に対して、1.05〜1.5倍であること、さらに、より好ましくは、工具基体とダイヤモンド膜の界面におけるダイヤモンド膜の結晶の前記界面と平行方向の平均幅が20〜100nmであり、かつ、界面長50μmあたりに存在する結晶幅1μm以上の粗大な結晶粒が1個以下であることによって、工具基体とダイヤモンド膜との密着性を向上させるとともに刃先強度を向上させたものであって、CFRPなどの切削加工において、すぐれた、刃先強度、耐摩耗性を発揮するものであって、その効果は絶大である。
本発明のダイヤモンド被覆膜の断面を模式的に表した膜構成模式図である。
つぎに、本発明のダイヤモンド被覆工具について、実施例により具体的に説明する。
なお、ここでは、ダイヤモンド被覆工具の具体例としてダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できるものである。
(a)原料粉末として、いずれも0.5〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、Cr粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末およびZrC粉末を、表1に示される割合に配合し、さらにバインダーと溶剤を加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、いずれも100MPaの圧力でプレス成形して、直径が10mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持後、アルゴンガスを用いて50〜100℃/minの冷却速度で1200℃以下まで急冷することで焼結体を得た後、該焼結体を研磨加工することにより、WC基超硬合金焼結体1〜6を製造した。
ついで、前記WC基超硬合金焼結体1〜6を、溝形成部の外径寸法が8mmとなるように研削加工することにより、WC基超硬合金製ドリル基体(以下、単に「ドリル基体」という)1〜6を製造した。ここで、ドリル基体6は、後述する比較例ドリルにのみ使用した。
(b)ついで、前記ドリル基体1〜5を、40℃の村上試薬で30分浸漬した後、硫酸と過酸化水素と水を0.5:5:100(容積比)で混合したエッチング液に3〜10秒浸漬して、ドリル基体1〜5の表面近傍のCoを主成分とする金属結合相の一部を数μmの深さまでエッチングで除去する。
(c)さらに、このドリル基体1〜5を、0.1μm以下の一次粒子径を有するダイヤモンド粉末を配合したエタノール中で超音波処理による傷つけ処理を行い、ついで、熱フィラメントCVD装置に装入し、フィラメント温度を2200℃、水素ガスとメタンガスを100:1の流量比で流しながら、工具基体温度を900℃に維持して3〜30μmの膜厚のダイヤモンド膜を成膜する。
前記製造工程により、表2に示す本発明のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製ドリル(以下、単に、「本発明ドリル」という)1〜5を製造した。
前記製造工程によれば、(a)の工程の急冷の際に、工具基体表面近傍におけるCo中のWの質量比が高い状態に維持され、WC粒子同士の接着強度を向上させることができる。この時、工具基体表面と内部における冷却速度の違いにより、工具基体の表面近傍におけるWとCoの質量比が工具基体内部のWとCoとの質量比に対して、1.05〜1.5倍に制御される。
比較のため、表1に示される割合に配合された原料粉末を用いて前記製造工程における工程(a)における急冷工程を行わず自然冷却する以外は、前述した本発明と同様の方法でドリル基体1〜5を製造し、ドリル基体6については、前記製造工程における工程(a)における急冷工程において、ヘリウムガスを使用した急冷を行い、表3に示す比較例のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製ドリル(以下、単に、「比較例ドリル」という)1〜6を製造した。
ついで、前述のようにして製造した本発明ドリル1〜5および比較例ドリル1〜6について、ダイヤモンド膜とドリル基体界面近傍をクロスセクションポリッシャーによって表面に対して垂直に断面研磨を行い、ダイヤモンド膜とドリル基体界面近傍、具体的には、ドリル基体表面から内部方向に8〜12μmの領域内で3箇所の金属結合相部分を無作為に選定し、オージェ電子分光による元素マッピングおよび定量分析により、タングステンとコバルトの質量比Aを測定した。
また、同様にドリル基体の表面から1mm以上内部の領域内で3箇所の金属結合相部分を無作為に選定し、オージェ電子分光による元素マッピングおよび定量分析により、タングステンとコバルトの質量比Bを測定した。そして、A/Bを計算した。なお、測定値はいずれも3箇所の平均とした。
また、金属結合相一部除去領域の平均厚み(μm)については、前記ドリル基体の表面に対して垂直な断面で基体表面の10μm以上が略直線とみなされる部位において、結合相の一部が除去された領域の幅を3点測定し、これを平均厚み(μm)とした。
本発明ドリル1〜5および比較例ドリル1〜6のダイヤモンド膜の膜厚を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均膜厚を測った。
表2、3にこれらの値を示す。

つぎに、前記本発明ドリル1〜5および比較例ドリル1〜6(いずれも、ドリル径はφ8mm)を用いて、以下の条件で、CFRPの高速ドリル穴開け試験を行った。
切削速度:240m/min,
送り:0.23mm/rev,
穴深さ:15mm(貫通穴),
前記切削試験において、正常摩耗の場合は被削材の穴の入り口側もしくは出口側に発生するバリが0.5mmを超えた時点で使用寿命とし、それまでの穴あけ加工数を測定した。
また、ドリル折損等が原因で使用寿命に至った場合には、それまでの穴あけ加工数を測定した。
表4にこれらの測定結果を示す。
表2〜4の結果からも明らかなように、本発明ドリル1〜5は、ダイヤモンド膜が、3〜30μmの平均膜厚を有し、工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域に、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が化学処理によって除去された金属結合相一部除去領域を有し、当該工具の刃先近傍の逃げ面に対して垂直断面における観察で、界面から工具基体の内部方向に8〜12μmの領域の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比が0.05以上0.15以下の範囲であるとともに工具基体の1mm以上内部における金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比に対して、1.05〜1.5倍であること、さらに工具基体とダイヤモンド膜の界面におけるダイヤモンド膜の結晶の前記界面と平行方向の平均幅が20〜100nmであり、かつ、界面長50μmあたりに存在する結晶幅1μm以上の粗大な結晶粒が1個以下であることによって、CFRP等の難削材の高速ドリル穴開け切削加工において、すぐれた刃先強度を示すとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮している。
これに対して、本発明ドリルのような工具基体表面近傍のWとCoの質量比が所定の範囲に入っていないか、基体内部のWとCoの質量比との関係が所定の関係を満たしていない比較ドリル1〜6は、刃先強度が劣り、短期に寿命に至ることが明らかである。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリルばかりでなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できるものであり、すぐれた刃先強度と耐摩耗性を発揮することから、切削加工の省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. 炭化タングステンとコバルトを主成分とし、少なくとも3〜15質量%のコバルトを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体にダイヤモンド膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具において、
    前記ダイヤモンド膜が、3〜30μmの平均膜厚を有し、
    前記工具基体とダイヤモンド膜の界面から工具基体の内部方向へ大きくとも5μmの深さ領域が、コバルトを主成分とする金属結合相の一部が化学処理によって除去された金属結合相一部除去領域を有し、
    当該工具の刃先近傍の逃げ面に対して垂直断面における観察で、前記界面から工具基体の内部方向に8〜12μmの領域の金属結合相におけるタングステンのコバルトに対する質量比が0.05以上0.15以下の範囲であるとともに前記工具基体の1mm以上内部における金属結合相における前記質量比に対して、1.05〜1.5倍であること
    を特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
  2. 前記工具基体とダイヤモンド膜の界面におけるダイヤモンド膜の結晶粒の前記界面と平行方向の平均幅が20〜100nmであり、かつ、界面長50μmあたりに存在する結晶幅1μm以上の粗大な結晶粒が1個以下であること
    を特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具。
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