JP2017159409A - すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐チッピング性、耐欠損性にすぐれるとともに、耐摩耗性にもすぐれた表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】WC基超硬合金又はTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層として、TiCN層が少なくとも形成されている表面被覆切削工具において、前記TiCN層は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織を有し、前記柱状組織を、TiCN層の垂直縦断面で観察し、各TiCN結晶粒の粒界の長さLと、該結晶粒の外接円の直径Dの比の値L/2Dを求めた場合、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が存在し、かつ、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が、TiCN層の垂直縦断面に占める面積割合は40〜70面積%であり、工具基体表面と平行な方向に測定した前記TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmであり、前記TiCN層は、45〜60GPaのナノインデンテーション硬さを有する表面被覆切削工具。【選択図】図1
Description
本発明は、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具に関し、さらに詳しくは、低炭素鋼や電磁軟鉄などの高速切削加工に供した場合、長期にわたりすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサート、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またインサートを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミルなどが知られている。
従来、被覆工具としては、例えば、WC基超硬合金、TiCN基サーメット等を工具基体とし、これに硬質被覆層を形成した被覆工具が知られており、切削性能の改善を目的として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、工具基体表面に最外層と内層とからなる被覆層を形成した被覆工具において、内層として、アスペクト比3以上の柱状組織を有し、結晶の(220)面、(311)面、(422)面の各配向性指数TC(220)、TC(311)、TC(422)のいずれかが配向性指数の最大値をとるTiCN層とし、最外層は、窒化アルミニウム、又は炭窒化アルミニウムからなり、最外層中に塩素を0超0.5原子%以下含有するアルミニウム化合物層とすることにより、刃先が高温状態にさらされる高速・高能率加工において、優れた潤滑性と耐摩耗性を示し、かつ、長寿命である被覆工具が提案されている。
例えば、特許文献1には、工具基体表面に最外層と内層とからなる被覆層を形成した被覆工具において、内層として、アスペクト比3以上の柱状組織を有し、結晶の(220)面、(311)面、(422)面の各配向性指数TC(220)、TC(311)、TC(422)のいずれかが配向性指数の最大値をとるTiCN層とし、最外層は、窒化アルミニウム、又は炭窒化アルミニウムからなり、最外層中に塩素を0超0.5原子%以下含有するアルミニウム化合物層とすることにより、刃先が高温状態にさらされる高速・高能率加工において、優れた潤滑性と耐摩耗性を示し、かつ、長寿命である被覆工具が提案されている。
また、特許文献2には、工具基体表面に、改質TiCN層と改質Al2O3層を被覆形成した被覆工具において、工具基体表面からの層厚方向高さ(3×N)μm〜 [(3×N)+1]μmの範囲(但し、N=1,2,3,・・・。)、かつ、幅10μmの領域について求めた改質TiCN層における結晶粒界長さをGBLaN(μm)としたとき、280(μm)≦GBLnaN(μm)≦600(μm)かつ、0.8≦(GBLaN+1)/(GBLaN)≦1.2を満足し、また、改質Al2O3層について測定した結晶粒界長さをGBLb(μm)とし、測定した改質Al2O3層の層厚をTb(μm)とした場合、GBLb/Tbは350〜450の範囲内とすることにより、極めて短い周期で比較的弱い衝撃力が繰り返し作用するダクタ
イル鋳鉄の高速連続切削加工において、硬質被覆層の下部層が、微細な縦長成長結晶組織を備え、応力の緩和・吸収作用、クラックの伝播・進展抑制作用を有し、高温強度とともに一段とすぐれた耐チッピング性を示し、また、硬質被覆層の上部層が、すぐれた硬度と耐熱性に加え、すぐれた耐溶着性を示し、長期の使用に亘って、チッピング、欠損、剥離、溶着、偏摩耗等の発生もなく、すぐれた耐摩耗性を示す被覆工具が提案されている。
イル鋳鉄の高速連続切削加工において、硬質被覆層の下部層が、微細な縦長成長結晶組織を備え、応力の緩和・吸収作用、クラックの伝播・進展抑制作用を有し、高温強度とともに一段とすぐれた耐チッピング性を示し、また、硬質被覆層の上部層が、すぐれた硬度と耐熱性に加え、すぐれた耐溶着性を示し、長期の使用に亘って、チッピング、欠損、剥離、溶着、偏摩耗等の発生もなく、すぐれた耐摩耗性を示す被覆工具が提案されている。
さらに、特許文献3には、工具基体の表面に下部層、上部層を形成し、下部層の少なくとも1層はTiCN層からなり、上部層は、α−Al2O3層からなり、さらに、対応粒界分布グラフにおいて、Σ3からΣ29の範囲でΣ3に最高ピークが存在し、かつ、Σ3の分布割合はΣ3以上の全対応粒界長の35〜70%を占め、しかも、Σ31以上の対応粒界は、Σ3以上の全対応粒界長の25〜60%を占めるような対応粒界を形成することにより、高速重切削、高速断続切削における耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性および耐摩耗性を改善した被覆工具が提案されている。
近年、切削加工の技術分野における省力化および省エネ化、さらには低コスト化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は耐摩耗性の向上による寿命延長が求められている。
前記特許文献1〜3で提案されている被覆工具においても、例えば、硬質被覆層として、柱状組織の組織構造を形成することにより、耐摩耗性の向上を図っている。
しかし、被覆工具の耐摩耗性の向上と耐チッピング性、耐欠損性の向上は、一般的に相反する特性であるため、被覆工具の長寿命化を図るためには、耐チッピング性、耐欠損性にもすぐれ、しかも、耐摩耗性にすぐれることが必要である。
このような点で、前記特許文献1〜3で提案されている被覆工具ばかりか、従来の被覆工具においては、耐摩耗性と耐チッピング性、耐欠損性の両立は未だ十分であるとはいえない。
したがって、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具が求められている。
前記特許文献1〜3で提案されている被覆工具においても、例えば、硬質被覆層として、柱状組織の組織構造を形成することにより、耐摩耗性の向上を図っている。
しかし、被覆工具の耐摩耗性の向上と耐チッピング性、耐欠損性の向上は、一般的に相反する特性であるため、被覆工具の長寿命化を図るためには、耐チッピング性、耐欠損性にもすぐれ、しかも、耐摩耗性にすぐれることが必要である。
このような点で、前記特許文献1〜3で提案されている被覆工具ばかりか、従来の被覆工具においては、耐摩耗性と耐チッピング性、耐欠損性の両立は未だ十分であるとはいえない。
したがって、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具が求められている。
そこで、本発明者らは、前記課題を解決すべく硬質被覆層の構造について鋭意検討したところ、次のような知見を得たのである。
硬質被覆層を構成する従来のTiCN層については、耐摩耗性の向上を図るためには、柱状組織のTiCN結晶粒で構成することが望ましいとされている。
本発明者は、TiCN結晶粒を、単に層厚方向にほぼ平行な方向に成長する柱状組織として形成するのではなく、少なくとも、その一部に、柱状結晶粒同士が絡み合って成長する柱状組織を形成することにより、TiCN層の硬さを向上させることができ、その結果、硬質被覆層の耐摩耗性を向上させることができるとともに、被覆工具のより一層の長寿命化を図り得ることを見出したのである。
さらに、本発明者は、前記柱状結晶粒同士が絡み合って成長する柱状組織において、該組織を構成する結晶粒の径、粒界長さ、占有面積率等を特定の範囲内の定めることによって、チッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制することができることも見出したのである。
そして、前記柱状結晶粒同士が絡み合って成長する柱状組織が存在するTiCN層を硬質被覆層として備える本発明の被覆工具は、溶着しやすい低炭素鋼や電磁軟鉄の高速切削加工において、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することもなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性と寸法精度を発揮するのである。
本発明者は、TiCN結晶粒を、単に層厚方向にほぼ平行な方向に成長する柱状組織として形成するのではなく、少なくとも、その一部に、柱状結晶粒同士が絡み合って成長する柱状組織を形成することにより、TiCN層の硬さを向上させることができ、その結果、硬質被覆層の耐摩耗性を向上させることができるとともに、被覆工具のより一層の長寿命化を図り得ることを見出したのである。
さらに、本発明者は、前記柱状結晶粒同士が絡み合って成長する柱状組織において、該組織を構成する結晶粒の径、粒界長さ、占有面積率等を特定の範囲内の定めることによって、チッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制することができることも見出したのである。
そして、前記柱状結晶粒同士が絡み合って成長する柱状組織が存在するTiCN層を硬質被覆層として備える本発明の被覆工具は、溶着しやすい低炭素鋼や電磁軟鉄の高速切削加工において、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することもなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性と寸法精度を発揮するのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層として、0.3〜5.0μmの平均層厚を有する柱状組織TiCN層が少なくとも形成されている表面被覆切削工具において、
(a)前記柱状組織を、TiCN層の垂直縦断面で観察し、各TiCN結晶粒の粒界の長さLと、該結晶粒の外接円の直径Dの比の値L/2Dを求めた場合、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が存在し、かつ、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が、TiCN層の垂直縦断面に占める面積割合は40〜70面積%であり、
(b)前記工具基体表面と平行な方向に測定した前記TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmであり、
(c)前記TiCN層は、45〜60GPaのナノインデンテーション硬さを有することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiCN層は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織を有することを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記工具基体表面と前記TiCN層の間に、0.1〜0.5μmの平均層厚のTiN層が設けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記TiCN層を、
組成式:TiCXN1−X(但し、Xは原子比)
で表した場合、0.05≦X≦0.20を満足することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5)前記硬質被覆層の圧縮残留応力が0.5〜5.0GPaであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
「(1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層として、0.3〜5.0μmの平均層厚を有する柱状組織TiCN層が少なくとも形成されている表面被覆切削工具において、
(a)前記柱状組織を、TiCN層の垂直縦断面で観察し、各TiCN結晶粒の粒界の長さLと、該結晶粒の外接円の直径Dの比の値L/2Dを求めた場合、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が存在し、かつ、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が、TiCN層の垂直縦断面に占める面積割合は40〜70面積%であり、
(b)前記工具基体表面と平行な方向に測定した前記TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmであり、
(c)前記TiCN層は、45〜60GPaのナノインデンテーション硬さを有することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiCN層は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織を有することを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記工具基体表面と前記TiCN層の間に、0.1〜0.5μmの平均層厚のTiN層が設けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記TiCN層を、
組成式:TiCXN1−X(但し、Xは原子比)
で表した場合、0.05≦X≦0.20を満足することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5)前記硬質被覆層の圧縮残留応力が0.5〜5.0GPaであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明の被覆工具について、以下に詳細に説明する。
図1に、本発明被覆工具の硬質被覆層の縦断面模式図を示す。
図1に示すように、本発明被覆工具の硬質被覆層は、例えば、工具基体表面に、アークイオンプレーティング(以下、「AIP」という)法により下地層としてのTiN層が被覆形成され、その上に、同じくAIP法によりTiCN層が被覆形成される。
下地層としてのTiN層は、工具基体とTiCN層の密着強度を高めるためには、その平均層厚が0.1μm以上であることが望ましい。しかし、平均層厚が0.5μmを超えると、TiN結晶粒の粗大化により、その上に形成されるTiCN結晶粒の粗大化を招きチッピング、欠損等の異常損傷を発生しやすくなる。
したがって、下地層としてのTiN層の平均層厚は、0.1〜0.5μmとすることが望ましい。
また、本発明のTiCN層は、その平均層厚が0.3μm未満では、長期にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、平均層厚が5.0μmを超えると、結晶粒の粗大化による異常損層を発生しやすくなる。
したがって、TiCN層の平均層厚は、0.3〜5.0μmとする。
図1に示すように、本発明被覆工具の硬質被覆層は、例えば、工具基体表面に、アークイオンプレーティング(以下、「AIP」という)法により下地層としてのTiN層が被覆形成され、その上に、同じくAIP法によりTiCN層が被覆形成される。
下地層としてのTiN層は、工具基体とTiCN層の密着強度を高めるためには、その平均層厚が0.1μm以上であることが望ましい。しかし、平均層厚が0.5μmを超えると、TiN結晶粒の粗大化により、その上に形成されるTiCN結晶粒の粗大化を招きチッピング、欠損等の異常損傷を発生しやすくなる。
したがって、下地層としてのTiN層の平均層厚は、0.1〜0.5μmとすることが望ましい。
また、本発明のTiCN層は、その平均層厚が0.3μm未満では、長期にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、平均層厚が5.0μmを超えると、結晶粒の粗大化による異常損層を発生しやすくなる。
したがって、TiCN層の平均層厚は、0.3〜5.0μmとする。
図1に示されるように、本発明被覆工具のTiCN層は、柱状組織を有する。
しかし、層厚方向にほぼ平行な方向に成長する従来の柱状組織とは異なり、本発明の柱状組織は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織である。
本発明の柱状組織の形態は、次のように言い換えることができる。
(1)まず、TiCN層の垂直縦断面を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、個々のTiCN結晶粒の粒界長さLを測定し、また、個々の結晶粒に外接する外接円の直径(以下、簡単のため「結晶長径」という)Dを求めた場合、
1.3≦L/2D≦1.5を満たすTiCN結晶粒が存在すること、かつ、
(2)1.3≦L/2D≦1.5を満たすTiCN結晶粒が、観察したTiCN層の垂直縦断面に占める面積割合が40〜70面積%であること、さらに、
(3)各TiCN結晶粒の幅を、工具基体表面と平行な方向に測定した場合、各TiCN結晶粒の平均結晶粒幅が0.1〜0.3μmであること、
以上(1)〜(3)の各条件が満たされた場合に、本発明の柱状組織、即ち、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織、が形成されているといえる。
なお、このようなTiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する本発明の柱状組織は、後記するAIP法によって形成することができる。
しかし、層厚方向にほぼ平行な方向に成長する従来の柱状組織とは異なり、本発明の柱状組織は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織である。
本発明の柱状組織の形態は、次のように言い換えることができる。
(1)まず、TiCN層の垂直縦断面を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、個々のTiCN結晶粒の粒界長さLを測定し、また、個々の結晶粒に外接する外接円の直径(以下、簡単のため「結晶長径」という)Dを求めた場合、
1.3≦L/2D≦1.5を満たすTiCN結晶粒が存在すること、かつ、
(2)1.3≦L/2D≦1.5を満たすTiCN結晶粒が、観察したTiCN層の垂直縦断面に占める面積割合が40〜70面積%であること、さらに、
(3)各TiCN結晶粒の幅を、工具基体表面と平行な方向に測定した場合、各TiCN結晶粒の平均結晶粒幅が0.1〜0.3μmであること、
以上(1)〜(3)の各条件が満たされた場合に、本発明の柱状組織、即ち、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織、が形成されているといえる。
なお、このようなTiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する本発明の柱状組織は、後記するAIP法によって形成することができる。
本発明において、前記L/2Dが1.3未満の場合には、TiCN結晶粒同士の絡み合いが少ないため、従来の柱状組織と大きな差はなく、耐摩耗性向上効果が少ない。一方、L/2Dが1.5を超える場合には、TiCN層の靱性が低下するため、チッピング、欠損を発生しやすくなる。
したがって、TiCN結晶粒の粒界長さLと、個々の結晶粒の結晶長径Dの比の値L/2Dは、1.3≦L/2D≦1.5とする。
また、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒の占める面積割合が、TiCN層の垂直縦断面の観察領域の40面積%未満では、耐摩耗性向上効果が十分でなく、一方、70面積%を超えるとTiCN層の靱性低下によりチッピング、欠損を発生しやすくなる。
したがって、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒の占める面積割合は、TiCN層の垂直縦断面の観察領域の40〜70面積%とする。
さらに、工具基体表面と平行な方向に、各TiCN結晶粒の結晶粒幅を測定した場合、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅が0.1μm未満である場合には、TiCN柱状結晶粒の靱性が低下し、一方、平均結晶粒幅が0.3μmを超えると硬さが不十分となるため、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmとする。
したがって、TiCN結晶粒の粒界長さLと、個々の結晶粒の結晶長径Dの比の値L/2Dは、1.3≦L/2D≦1.5とする。
また、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒の占める面積割合が、TiCN層の垂直縦断面の観察領域の40面積%未満では、耐摩耗性向上効果が十分でなく、一方、70面積%を超えるとTiCN層の靱性低下によりチッピング、欠損を発生しやすくなる。
したがって、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒の占める面積割合は、TiCN層の垂直縦断面の観察領域の40〜70面積%とする。
さらに、工具基体表面と平行な方向に、各TiCN結晶粒の結晶粒幅を測定した場合、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅が0.1μm未満である場合には、TiCN柱状結晶粒の靱性が低下し、一方、平均結晶粒幅が0.3μmを超えると硬さが不十分となるため、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmとする。
本発明のTiCN層は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織を有することから、ナノインデンテーション硬さで45〜60GPaにまで硬さを高めることができる。また、TiCN膜は鉄に対する親和性が低いため、構成刃先が生じにくく、加えて高い硬さを有すれば工具摩耗も起きにくく、工具そのものの刃先形状で長時間の切削が可能となる。故に、低い親和性及び高いナノインデンテーション硬さを奏することで優れた寸法精度を発揮することが可能となる。
ここで、ナノインデンテーション硬さが45GPa未満では、硬さが不十分であって、耐摩耗性向上効果が少なく、一方、ナノインデンテーション硬さが60GPaを超えると、TiCN層の靱性低下により、チッピング、欠損を発生しやすくなる。
したがって、本発明では、TiCN層の硬さを、ナノインデンテーション硬さで45〜60GPaとする。
なお、本発明におけるナノインデンテーション硬さは、TiCN層の層厚の1/10以下の押し込み深さになるよう設定した荷重で測定した値であり、層厚によって変わるが、例えば、0.03〜0.3μmの押し込み深さになるよう設定した荷重で測定した値である。
ここで、ナノインデンテーション硬さが45GPa未満では、硬さが不十分であって、耐摩耗性向上効果が少なく、一方、ナノインデンテーション硬さが60GPaを超えると、TiCN層の靱性低下により、チッピング、欠損を発生しやすくなる。
したがって、本発明では、TiCN層の硬さを、ナノインデンテーション硬さで45〜60GPaとする。
なお、本発明におけるナノインデンテーション硬さは、TiCN層の層厚の1/10以下の押し込み深さになるよう設定した荷重で測定した値であり、層厚によって変わるが、例えば、0.03〜0.3μmの押し込み深さになるよう設定した荷重で測定した値である。
本発明においては、TiCN層におけるCの含有割合及びNの含有割合を特に制限するものではないが、TiCN層を、
組成式:TiCXN1−X(但し、Xは原子比)
で表した場合、0.05≦X≦0.20を満足することが望ましい
これは、Xの値が0.05未満であると、高い硬さと潤滑性が得られないため良好な耐摩耗性や寸法精度が発揮できず、また、Xの値が0.20を超えると、靱性が低下し、チッピングや欠損が発生しやすくなるという理由による。
組成式:TiCXN1−X(但し、Xは原子比)
で表した場合、0.05≦X≦0.20を満足することが望ましい
これは、Xの値が0.05未満であると、高い硬さと潤滑性が得られないため良好な耐摩耗性や寸法精度が発揮できず、また、Xの値が0.20を超えると、靱性が低下し、チッピングや欠損が発生しやすくなるという理由による。
また、本発明においては、硬質被覆層TiCN層の圧縮残留応力を0.5〜5.0GPaとすることが望ましい。
これは、圧縮残留応力が0.5GPa未満であると、剥離が生じやすく、一方、圧縮残留応力が5.0GPaを超えると自己破壊しやすくなるからである。
なお、前記圧縮残留応力の値は、硬質被覆層がTiCN層である場合には、TiCN層の圧縮残留応力であるが、下地層としてTiN層が形成され、その上にTiCN層が形成されている場合には、前記圧縮残留応力の値は、TiN層とTiCN層との総括的な圧縮残留応力ということになる。
これは、圧縮残留応力が0.5GPa未満であると、剥離が生じやすく、一方、圧縮残留応力が5.0GPaを超えると自己破壊しやすくなるからである。
なお、前記圧縮残留応力の値は、硬質被覆層がTiCN層である場合には、TiCN層の圧縮残留応力であるが、下地層としてTiN層が形成され、その上にTiCN層が形成されている場合には、前記圧縮残留応力の値は、TiN層とTiCN層との総括的な圧縮残留応力ということになる。
前記圧縮残留応力の測定は、X線回折装置を用い、2θ−sin2ψ法にて実施する。この場合、Cr管球を用い、TiN層とTiCN層を総括した(220)ピークにて測定する。ヤング率としては470GPa、ポアソン比としては0.2を使用して計算を実施した。
硬質被覆層の成膜法:
本発明の被覆工具は、その硬質被覆層を、例えば、以下に示すAIP法によって成膜することができる。
まず、下地層としてTiN層を成膜する場合には、AIP装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して所定の反応雰囲気とすると共に、工具基体に所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Tiターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に所定の電流を流してアーク放電を発生させ、工具基体の表面に、下地層としてTiN層を蒸着形成する。
次いで、TiCN層の成膜を、次のとおり行う。
AIP装置内に反応ガスとして窒素ガスとメタンガスの混合ガスを導入して所定の反応雰囲気とし、工具基体に所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Tiターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク電流を流し、該アーク電流の大きさを変化させながらアーク放電を発生させ、前記下地層表面に、TiCN層を蒸着形成することによって、本発明で規定する柱状組織を有するTiCN層を形成することができる。
なお、アーク電流は60〜120Aの比較的低いアーク電流条件と140〜180Aの比較的高い条件を交互に用いて成膜する。もちろん、条件は複数用いても構わないが二条件成膜の方が膜の残留応力や比較的大きい結晶粒を形成しやすい。ここで、前記L/2Dの値は、アーク電流の変化の大きさに依存し、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒の占める面積割合は、反応ガスの全圧に依存し、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅はアーク電流値の大きさに依存し、TiCN層の圧縮残留応力は、TiCN層成膜時のバイアス電圧に依存する。
したがって、AIP法において、主として蒸着時のアーク電流、反応ガスの全圧、バイアス電圧を制御することによって、本発明で規定する柱状組織のTiCN層を備えた被覆工具を作製することができる。
本発明の被覆工具は、その硬質被覆層を、例えば、以下に示すAIP法によって成膜することができる。
まず、下地層としてTiN層を成膜する場合には、AIP装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して所定の反応雰囲気とすると共に、工具基体に所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Tiターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に所定の電流を流してアーク放電を発生させ、工具基体の表面に、下地層としてTiN層を蒸着形成する。
次いで、TiCN層の成膜を、次のとおり行う。
AIP装置内に反応ガスとして窒素ガスとメタンガスの混合ガスを導入して所定の反応雰囲気とし、工具基体に所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Tiターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク電流を流し、該アーク電流の大きさを変化させながらアーク放電を発生させ、前記下地層表面に、TiCN層を蒸着形成することによって、本発明で規定する柱状組織を有するTiCN層を形成することができる。
なお、アーク電流は60〜120Aの比較的低いアーク電流条件と140〜180Aの比較的高い条件を交互に用いて成膜する。もちろん、条件は複数用いても構わないが二条件成膜の方が膜の残留応力や比較的大きい結晶粒を形成しやすい。ここで、前記L/2Dの値は、アーク電流の変化の大きさに依存し、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒の占める面積割合は、反応ガスの全圧に依存し、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅はアーク電流値の大きさに依存し、TiCN層の圧縮残留応力は、TiCN層成膜時のバイアス電圧に依存する。
したがって、AIP法において、主として蒸着時のアーク電流、反応ガスの全圧、バイアス電圧を制御することによって、本発明で規定する柱状組織のTiCN層を備えた被覆工具を作製することができる。
本発明は、硬質被覆層として、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織を有するTiCN層を少なくとも備えており、該柱状組織は、TiCN結晶粒の粒界の長さLと、該結晶粒の外接円の直径Dの比の値L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が存在するとともに、該結晶粒の面積割合は40〜70面積%であり、さらに、TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmであって、TiCN層は、45〜60GPaのナノインデンテーション硬さを有することから、このような硬質被覆層を工具基体表面に形成した本発明の被覆工具は、低炭素鋼や電磁軟鉄の高速切削加工において耐溶着性に優れることから、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することもなく、長期にわたってすぐれた耐摩耗性と寸法精度を発揮する。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金基体からなる被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットを工具基体とする被覆工具についても同様である。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金基体からなる被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットを工具基体とする被覆工具についても同様である。
工具基体の作製::
原料粉末として、いずれも0.5〜5μmの平均粒径を有する、Co粉末、VC粉末、Cr3C2粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表8に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金工具基体1〜3を製造した。
原料粉末として、いずれも0.5〜5μmの平均粒径を有する、Co粉末、VC粉末、Cr3C2粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表8に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金工具基体1〜3を製造した。
硬質被覆層の成膜:
前述の工程によって作製したWC基超硬合金工具基体1〜3に対して、図2に示したようなアークイオンプレーティング装置を用いて、硬質被覆層を形成した。
(a)工具基体1〜3を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着する。また、カソード電極(蒸発源)として、Tiターゲットを配置する。
(b)まず、装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、0.5〜2.0PaのArガス雰囲気に設定し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−400〜−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによって5〜30分間ボンバード処理する。
(c)次に、下地層の成膜を、次のとおり行う。
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す所定の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表2に示す所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Tiターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に表2に示す所定の電流を所定時間流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表4に示される目標平均層厚のTiN層を下地層として蒸着形成した。
(d)次いで、下地層である前記TiN層の表面に、TiCN層を次のとおり成膜した。
まず、装置内に反応ガスとして表2に示す流量比となるように窒素ガスとメタンガスの混合ガスを導入し、かつ、表2に示す所定の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表2に示す所定の直流バイアス電圧を印加し、また、表2に示すようにアーク電流値を変化させながら前記Ti金ターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク電流を流してアーク放電を発生させ、前記下地層表面に、表5に示される目標組成、目標平均層厚のTiCN層を蒸着形成した。
上記工程(a)〜(d)により、表4に示す本発明被覆工具(「本発明工具」という)1〜12を作製した。
なお、本発明工具11、12については、上記工程(c)による下地層(TiN層)の形成は行っていない。
前述の工程によって作製したWC基超硬合金工具基体1〜3に対して、図2に示したようなアークイオンプレーティング装置を用いて、硬質被覆層を形成した。
(a)工具基体1〜3を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着する。また、カソード電極(蒸発源)として、Tiターゲットを配置する。
(b)まず、装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、0.5〜2.0PaのArガス雰囲気に設定し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−400〜−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによって5〜30分間ボンバード処理する。
(c)次に、下地層の成膜を、次のとおり行う。
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す所定の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表2に示す所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Tiターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に表2に示す所定の電流を所定時間流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表4に示される目標平均層厚のTiN層を下地層として蒸着形成した。
(d)次いで、下地層である前記TiN層の表面に、TiCN層を次のとおり成膜した。
まず、装置内に反応ガスとして表2に示す流量比となるように窒素ガスとメタンガスの混合ガスを導入し、かつ、表2に示す所定の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表2に示す所定の直流バイアス電圧を印加し、また、表2に示すようにアーク電流値を変化させながら前記Ti金ターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク電流を流してアーク放電を発生させ、前記下地層表面に、表5に示される目標組成、目標平均層厚のTiCN層を蒸着形成した。
上記工程(a)〜(d)により、表4に示す本発明被覆工具(「本発明工具」という)1〜12を作製した。
なお、本発明工具11、12については、上記工程(c)による下地層(TiN層)の形成は行っていない。
比較のため、上記工具基体1〜3に対して、表3に示す条件で硬質被覆層を蒸着形成することにより、表5に示す下地層(TiN層)とTiCN層を有する比較例被覆工具(「比較例工具」という)1〜9を作製した。
なお、比較例工具8、9については、下地層(TiN層)の形成は行っていない。
なお、比較例工具8、9については、下地層(TiN層)の形成は行っていない。
上記で作製した本発明工具1〜12および比較例工具1〜9について、走査型電子顕微鏡を用いた縦断面測定により各層の平均層厚(5点測定の平均値)を求めた。
また、TiCNの組成として、TiCXN1−Xで表した場合のXの値(原子比)をオージェ分光分析によって求めた。
また、TiCNの組成として、TiCXN1−Xで表した場合のXの値(原子比)をオージェ分光分析によって求めた。
さらに、TiCN層の垂直縦断面を観察して、TiCN結晶粒の粒界の長さL、該結晶粒の外接円の直径Dを求め、1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒が垂直縦断面の観察領域に占める面積割合を求めた。
また、TiCN結晶粒の結晶粒幅を求めた。
具体的な測定法は、以下のとおりである。
断面SEM観察もしくは付随の後方散乱電子線回折(EBSD)により結晶粒の形状を特定し、該結晶粒の長さL及び該結晶粒を内包するような外接円をとり、その直径をDとして観察視野5視野についてそれぞれ測定しL/2Dの値を算出し、平均値を求め1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒を抽出し、上記形状測定結果から膜断面積に占める面積割合を求めた。
次に、TiCNの結晶粒幅については観察視野範囲に存在する各々の結晶粒について基体水平方向における最大結晶粒幅と最小結晶粒幅を上記同様5視野について各々の結晶粒について求め、その平均値とした。
また、TiCN結晶粒の結晶粒幅を求めた。
具体的な測定法は、以下のとおりである。
断面SEM観察もしくは付随の後方散乱電子線回折(EBSD)により結晶粒の形状を特定し、該結晶粒の長さL及び該結晶粒を内包するような外接円をとり、その直径をDとして観察視野5視野についてそれぞれ測定しL/2Dの値を算出し、平均値を求め1.3≦L/2D≦1.5を満足するTiCN結晶粒を抽出し、上記形状測定結果から膜断面積に占める面積割合を求めた。
次に、TiCNの結晶粒幅については観察視野範囲に存在する各々の結晶粒について基体水平方向における最大結晶粒幅と最小結晶粒幅を上記同様5視野について各々の結晶粒について求め、その平均値とした。
次に、TiCN層の層厚の1/10以下の押し込み深さになるよう層厚が2μm以下の本発明被覆工具については押し込み荷重50mg、2μmより厚い層厚を有する本発明被覆工具については200mgの押し込み荷重にてナノインデンテーション硬さを10点測定し、その平均値を求めた。
また、TiCN層の圧縮残留応力を、X線回折装置を用い、2θ−sin2ψ法にて測定した。この場合、Cr管球を用い、TiN層とTiCN層を総括した(220)ピークにて測定し、ヤング率としては470GPa、ポアソン比としては0.2を使用して計算した。
表3、表5に、これらの値を示す。
また、TiCN層の圧縮残留応力を、X線回折装置を用い、2θ−sin2ψ法にて測定した。この場合、Cr管球を用い、TiN層とTiCN層を総括した(220)ピークにて測定し、ヤング率としては470GPa、ポアソン比としては0.2を使用して計算した。
表3、表5に、これらの値を示す。
次いで、本発明工具1〜12および比較例工具1〜9について、以下の切削条件A、Bにより、切削試験を実施した。
切削条件A:
被削材:JIS・S10Cの丸棒
切削速度: 280m/min.、
切り込み: 3.0mm、
送り: 0.22mm、
の乾式連続高速切削条件で切削試験を行い、加工時間13分まで切削し、逃げ面摩耗幅、寸法変化量を測定した。
切削条件B:
被削材:JIS・SUY-2の丸棒
切削速度: 290m/min.、
切り込み: 2.8mm、
送り: 0.27mm/刃、
の条件で、加工時間16分まで切削し、逃げ面摩耗幅、寸法変化量を測定した。
表6、表7に、その結果を示す。
切削条件A:
被削材:JIS・S10Cの丸棒
切削速度: 280m/min.、
切り込み: 3.0mm、
送り: 0.22mm、
の乾式連続高速切削条件で切削試験を行い、加工時間13分まで切削し、逃げ面摩耗幅、寸法変化量を測定した。
切削条件B:
被削材:JIS・SUY-2の丸棒
切削速度: 290m/min.、
切り込み: 2.8mm、
送り: 0.27mm/刃、
の条件で、加工時間16分まで切削し、逃げ面摩耗幅、寸法変化量を測定した。
表6、表7に、その結果を示す。
表6、表7の結果によれば、本発明工具1〜12は、逃げ面摩耗幅の平均は約0.22mmであり、また、寸法変化量は0.005mm以下であるのに対して、比較例工具1〜9は逃げ面摩耗が進行し、寸法精度も劣り、また、短時間でチッピング、欠損による寿命となるものも生じた。
この結果から、本発明工具1〜12は、比較例工具1〜9に比して、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、さらに、耐摩耗性にもすぐれていることが分かる。
この結果から、本発明工具1〜12は、比較例工具1〜9に比して、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、さらに、耐摩耗性にもすぐれていることが分かる。
本発明の表面被覆切削工具は、炭素種や電磁軟鉄の高速切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性および耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (5)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットらなる工具基体の表面に、硬質被覆層として、0.3〜5.0μmの平均層厚を有する柱状組織TiCN層が少なくとも形成されている表面被覆切削工具において、
(a)前記柱状組織を、TiCN層の垂直縦断面で観察し、各TiCN結晶粒の粒界の長さLと、該結晶粒の外接円の直径Dの比の値L/2Dを求めた場合、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が存在し、かつ、L/2Dが1.3〜1.5であるTiCN結晶粒が、TiCN層の垂直縦断面に占める面積割合は40〜70面積%であり、
(b)前記工具基体表面と平行な方向に測定した前記TiCN結晶粒の平均結晶粒幅は0.1〜0.3μmであり、
(c)前記TiCN層は、45〜60GPaのナノインデンテーション硬さを有することを
特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記TiCN層は、TiCN結晶粒同士が絡み合って層厚方向に成長する柱状組織を有することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記工具基体表面と前記TiCN層の間に、0.1〜0.5μmの平均層厚のTiN層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
- 前記TiCN層を、
組成式:TiCXN1−X(但し、Xは原子比)
で表した場合、0.05≦X≦0.20を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。 - 前記硬質被覆層の圧縮残留応力が0.5〜5.0GPaであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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JP2016046620A JP2017159409A (ja) | 2016-03-10 | 2016-03-10 | すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107907434A (zh) * | 2017-11-15 | 2018-04-13 | 北京工业大学 | 微纳米非均匀材料界面相形貌判断方法 |
WO2021245879A1 (ja) * | 2020-06-04 | 2021-12-09 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削工具 |
WO2021245878A1 (ja) * | 2020-06-04 | 2021-12-09 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削工具 |
JP7401850B2 (ja) | 2020-03-19 | 2023-12-20 | 三菱マテリアル株式会社 | 表面被覆切削工具 |
-
2016
- 2016-03-10 JP JP2016046620A patent/JP2017159409A/ja active Pending
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CN107907434B (zh) * | 2017-11-15 | 2020-04-03 | 北京工业大学 | 微纳米非均匀材料界面相形貌判断方法 |
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WO2021245879A1 (ja) * | 2020-06-04 | 2021-12-09 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削工具 |
WO2021245878A1 (ja) * | 2020-06-04 | 2021-12-09 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削工具 |
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