JP6314600B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関し、さらに詳しくは機械強度及び耐湿熱性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、透明性、寸法安定性等に優れるため、例えば自動車分野、OA機器・電気・電子部品、機械部品、車輌・航空機用部品、建築部材等の幅広い分野において、工業的に広く利用されている。さらに、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂から成るポリマーアロイは、ポリカーボネート樹脂の前記の優れた特徴を活かしつつ、ポリカーボネート樹脂の欠点である耐薬品性や成形加工性(流動性)が改良された材料であり、車輌内装・外装部品、各種ハウジング部材やその他幅広い分野で使用されている。近年、さらに高いレベルでの外観品質(光沢など)、耐薬品性、耐衝撃性、耐湿熱性が要望され、且つ諸物性についてバランス良く優れた材料が必要とされている。特に、耐衝撃性や耐湿熱性は、実用面を考慮した場合、非常に重要な性能である。
芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂から成る樹脂組成物(ポリマーアロイ)について、流動性、耐衝撃性、耐薬品性、耐湿熱性、及びリサイクル特性を向上させる目的で、特定量のゲルマニウム化合物を含有し、且つ特定の固有粘度を有するポリエチレンテレフタレート樹脂を使用することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂から成る樹脂組成物に特殊なリン酸エステル化合物を添加することにより、流動性、耐熱性、耐衝撃性、滞留熱安定性、耐薬品性、及び耐湿熱性を改良することが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、ポリカーボネート樹脂の製造方法も、従来、多くの検討がなされている。その中で、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)から誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂は、界面重合法又は溶融重合法の両製造方法により工業化されている。
この界面重合法によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAとホスゲンとから製造されるが、有毒なホスゲンを用いなければならない。また、副生する塩化水素や塩化ナトリウム、及び溶媒として大量に使用する塩化メチレン等の含塩素化合物により装置が腐食するおそれがある。さらに、ポリマー物性に影響を与える塩化ナトリウム等の不純物や残留塩化メチレンの除去の困難性や廃水処理等が問題となる。このように従来の界面重合法は、環境面に於いて多くの問題を抱えているのが実情である。
また、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、例えばビスフェノールAとジフェニルカーボネートを溶融状態でエステル交換反応により、副生する芳香族モノヒドロキシ化合物を除去しながら重合する溶融重合法が古くから知られている。溶融重合法は、界面重合法と異なり溶媒を使用しない等、環境面に於いて多くの利点を有しているが、長時間の熱滞留等により得られる樹脂には副生する異種構造が含まれ、また末端水酸基濃度(末端OH濃度)が比較的高い。その為、ポリエチレンレテフタレート樹脂とのポリマーアロイを製造しても、満足のいく耐衝撃性等の機械強度や耐湿熱性を達成することが出来なかった。
本発明者らは先に、高速な重合速度を達成し、良好な品質の芳香族ポリカーボネート樹脂を得る溶融重合法として、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの封止末端をジオール化合物により連結して鎖延長する新しい方法を見出した(例えば、特許文献3参照)。これらの方法によれば、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの封止末端をジオール化合物により連結して鎖延長することにより、Mwが30,000〜100,000程度の高分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂を短時間に製造することができる。さらに高速な重合反応によって芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するため、長時間の熱滞留等による分岐・架橋化反応を抑制し、異種構造量を低減化できる。また、末端水酸基濃度(末端OH基濃度)も低減化される。
かかる新たな溶融重合法により得られる芳香族ポリカーボネート樹脂と、ポリエチレンレテフタレート樹脂のポリマーアロイについての報告、特に満足のいく機械強度特性や高耐湿熱性を有する樹脂組成物についての報告は未だされていない。
特開2008−231301号公報 特開2009−1620号公報 国際公開第2012/157766パンフレット
本発明が解決しようとする課題は、耐衝撃性及び耐湿熱性が改善された芳香族ポリカーボネート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物を提供するものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶融重合法で製造したものでありながら分岐化度が低く、且つ異種構造が少ない等の品質上の利点を有し、特に特定の環状カーボネートが一定量以下である芳香族ポリカーボネート樹脂を、ポリエチレンテレフタレート樹脂と混合した際に、実用上十分な耐衝撃性及び耐湿熱性を有する樹脂組成物及びその成形品が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下に示す樹脂組成物及びその成形品を提供するものである。
1)下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び下記一般式(II)で表される環状カーボネートを含み、
前記芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の割合(質量比)が99:1〜40:60であり、且つ前記環状カーボネートが、前記芳香族ポリカーボネート樹脂に対して3000ppm以下で存在する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
一般式(I):

(式中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、p及びqは、0〜4の整数を表し、Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す)

(ここで、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい)
一般式(II):

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、nは0〜30の整数を表す)。
2)さらに、前記芳香族ポリカーボネート樹脂と前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、ゴム性重合体0.5〜40質量部を含む、前記1)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
3)前記ゴム性重合体が、コア/シェル型グラフト共重合体である、前記2)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
4)前記環状カーボネートが、下記一般式(IIa)で表される化合物である、前記1)〜3)のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
一般式(IIa):

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)。
5)前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(III)で表わされる構造単位を含み、その含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満である、前記1)〜4)のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
一般式(III):

(式中、Xは、前記1)と同義である)。
6)前記芳香族ポリカーボネート樹脂のN値(構造粘性指数)が、下記数式(1)で表した場合、1.25以下である、前記1)〜5)のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(1)
7)前記芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基含有量が、1000ppm以下である、前記1)〜6)のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
8)前記芳香族ポリカーボネート樹脂及び前記環状カーボネートが、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと下記一般式(IV)で表されるジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む方法により得られる、前記1)〜7)のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
一般式(IV):

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、nは、0〜30の整数を表す)。
9)前記ジオール化合物が、下記一般式(IVa)で表される化合物である、前記8)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
一般式(IVa):

(式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)。
10)前記ジオール化合物が、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、及び2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される、前記8)又は9)に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
11)前記1)〜10)のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して成る、成形品。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物は、耐衝撃性や耐湿熱性が大幅に改善されたものである。このような樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート(プレポリマー)と特定構造のジオール化合物(連結剤)との反応により、芳香族ポリカーボネートを高分子量化する方法によって得ることができる。このような方法によって得られる本発明の樹脂組成物中の高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂は、極少量の連結剤由来の環状カーボネート成分を含みうる。
したがって、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は、従来の界面重合法による芳香族ポリカーボネート樹脂と同等の物性を有し、且つジオール化合物(連結剤)由来の環状カーボネート成分が微量のため熱安定性(耐熱性)に優れている。さらに、ジオール化合物を連結剤として用いて高速に高分子量化したものであるから、高分子量でありながら分岐化度が低く、且つ異種構造が少ない等のポリカーボネート本来の品質上の利点を有する。特定の環状カーボネートの含有量が所定値以下である場合、ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を含む組成物の耐衝撃性や耐湿熱性が大幅に改善されたものとなる。
1.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
(1)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、下記一般式(I)で表される構造単位を主たる構造単位として有する、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む。ここで「主たる」とは、芳香族ポリカーボネート樹脂中の全構造単位中における一般式(I)で表される構造単位の含有率が60モル%以上であることを意味し、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
一般式(I):
一般式(I)中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。p及びqは、0〜4の整数を表す。Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す。
(Ia)中、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい。
前記一般式(I)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
一般式(V):
前記一般式(V)中、R〜R、p、q、及びXは、各々前記一般式(I)におけるのと同様である。
このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが芳香族ジヒドロキシ化合物としての安定性、さらにはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点等の理由により好ましいものとして挙げられる。
本発明においては、ガラス転移温度の制御、流動性の向上等を目的として、前記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち複数種を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する構造単位には、異種構造として下記一般式(III)で表される構造単位が含まれていてもよい。なお、下記一般式(III)のXは前記一般式(I)におけるのと同じである。
一般式(III):
前記一般式(III)で表わされる構造単位の含有率は、前記一般式(I)で表わされる構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中に、質量基準で2000ppm未満であり、好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは800ppm以下であり、特に好ましくは700ppm以下であり、最も好ましくは600ppm以下である。前記一般式(III)で表わされる構造単位の含有率が2000ppm未満であると、分岐度が減少し、熱安定性が向上する傾向にある。一方、かかる構造単位の含有率が2000ppm以上であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂との混合・分散性が悪化する、得られる樹脂組成物の流動性が低下し、成形性や機械的強度が悪化する等のデメリットが生じる場合がある。
前記一般式(III)で示される構造単位は芳香族ポリカーボネート樹脂の製造時に副生しやすい異種構造の一種である。本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂はかかる異種構造の割合が少ないことが好ましい。異種構造の割合が少ない芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、後述する特定構造のジオール化合物からなる連結剤を用いて芳香族ポリカーボネートプレポリマーを高分子量化する工程を含む方法によって製造することができる。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂中の一般式(III)で表わされる構造単位の含有率の下限は特に制限されず、検出下限値(通常1ppm程度)であればよいが、一般には一般式(III)で表わされる構造単位は、1ppm以上(検出下限値)、場合により5ppm以上、あるいは10ppm以上含有されることが許容される。
本発明における前記一般式(III)で示される構造単位の含有率は、H−NMR分析結果より求められる質量基準の値である。
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂が、後述する特定のジオール化合物を連結剤として用い、高分子量化することによって製造されたものである場合、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は、ジオール化合物由来の構造単位を含んでいてもよい。その場合、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂の全構造単位量に対するジオール化合物由来の構造単位の含有率は、例えば1モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以下である。このように、ジオール化合物由来の構造単位が骨格に含まれないか、含まれるとしても極めて少量であることから、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は、従来のホモポリカーボネート樹脂と同じ骨格を有しながら、N値が低い、異種構造を有するユニットの割合が少ない、等の優れた品質を備え、有利である。
なお、本発明におけるジオール化合物由来の構造単位の含有率は、H−NMR分析結果より求めることができる。
さらに、芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端水酸基濃度が質量基準で1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましく、600ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましい。末端水酸基濃度が1000ppm以下であると耐加水分解性がより向上する傾向がある。
一般に芳香族ポリカーボネート樹脂における末端部分は、フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物で封止された構造となっているが、一部が水酸基となっている場合がある。したがって、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度とは、芳香族ポリカーボネート樹脂における水酸基の含有割合である。末端水酸基濃度は、例えば、H−NMR解析により測定することができる。
本発明にて使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは35,000〜100,000、より好ましくは35,000〜80,000、特に好ましくは35,000〜75,000、最も好ましくは40,000〜65,000であり、高分子量でありながら、高い流動性を併せ持つ。重量平均分子量がこの範囲内であれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂との配合により、押出成形、射出成形等の用途に用いた場合の成形性、生産性が良好である。さらに得られる成形品の機械的物性、耐熱性、耐有機溶剤性等の物性が良好である。
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂における数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1.9〜2.5であり、2.0〜2.4であることが好ましい。
なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いてポリスチレン換算値として測定される。
本発明にて使用される芳香族ポリカーボネート樹脂においては、下記数式(1)で表されるN値(構造粘性指数)が、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.28以下、特に好ましくは1.25以下、最も好ましくは1.23以下である。
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(1)
前記数式(1)中、Q160値は280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表し、Q10値は280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積(ml/sec)を表す。
構造粘性指数「N値」は、ポリカーボネート樹脂の分岐化度の指標とされる。本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂においては、N値は低く、分岐構造の含有割合が少なく直鎖構造の割合が高いことが好ましい。ポリカーボネート樹脂は一般に、同じMwに於いては分岐構造の割合を多くすると流動性が高くなる(Q値が高くなる)傾向にある。後述する特定のジオール化合物を連結剤として用い、高分子量化することによって製造された芳香族ポリカーボネート樹脂は、N値を低く保ったまま高い流動性(高いQ値)を達成していることから、本発明での使用に好ましい。
(2)ポリエチレンテレフタレート樹脂
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む。本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位がエステル結合した構造を有するポリエステルであり、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位から成り、ジオール単位の50モル%以上がエチレングリコール単位から成る重合体である。そして、エチレンテレフタレート単位が構成繰り返し単位の80モル%以上を占めるのが好ましく、90モル%以上を占めるのがさらに好ましい。エチレンテレフタレート単位が80モル%以上であるポリエチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質や耐熱性などが優れる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、従来公知の任意の製造方法であるが、例えば、アンチモン系化合物の重合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分とジオ−ル成分とを反応させ、副生する水又は低級アルコ−ルを系外に排出することにより行われる。ここで、この縮合反応はバッチ式、連続式のいずれの重合方法で行ってもよく、固相重合により重合度を上げてもよい。
本発明で使用するポリエチレンテレフタレート樹脂において、共重合させることができるテレフタル酸以外のジカルボン酸成分は、特に制限されず、従来公知の任意のものを使用でき、また、その含有量は、ジカルボン酸成分中の割合として、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分として、例えば、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、又は、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体として、ポリマー骨格に導入できる。
本発明で使用するポリエチレンテレフタレート樹脂において、共重合させることができるエチレングリコール以外のジオール成分は、特に限定されず従来公知の任意のものを使用でき、その含有量は、ジオール成分中の割合として、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等が挙げられる。
本発明で使用するポリエチレンテレフタレート樹脂においては、さらに、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分等を共重合成分として使用することができる。また、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリエチレンオキシド付加ビスフェノールA、ポリプロピレンオキシド付加ビスフェノールA、ポリテトラヒドロフラン付加ビスフェノールA、ポリテトラメチレングリコール等から誘導されるポリアルキレングリコール単位を高分子鎖に一部共重合させることもできる。
アンチモン系化合物の具体例としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられ、樹脂組成物の滞留熱安定性の観点から、好ましくは三酸化アンチモンである。重合触媒として用いるアンチモン系化合物の含有量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂中のアンチモン原子として、樹脂組成物の滞留熱安定性と重合速度の観点から、好ましくは50〜500ppmであり、より好ましくは100〜400ppmである。アンチモン原子の含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収し、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Pla-sma(ICP)等の方法で測定することができる。
本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、適宜選択して決定すればよいが、通常0.5〜2dL/g、中でも0.7〜1.5dL/g、特には0.95〜1.3dL/gであることが好ましい。固有粘度を0.5dL/g以上、特には0.95dL/g以上とすることで、本発明の樹脂組成物における機械的特性や、滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性が向上する傾向にあり好ましい。逆に固有粘度を2dL/g未満、特には1.3dL/g未満とすることで樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。
なお前記の固有粘度は、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃で測定した値である。
本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基の濃度は、通常1〜60μeq/gであり、中でも3〜50μeq/g、さらには5〜40μeq/gであることが好ましい。末端カルボキシル基を60μeq/g以下とすることで、樹脂組成物の機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を1μeq/g以上とすることで、樹脂組成物の耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求めることができる。
さらに、本発明に用いるポリエチレンテレフタレート樹脂は、試薬供給業者等より入手できるものであってもよく、さらにバージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリエチレンテレフタレート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリエチレンテレフタレート樹脂であってもよい。使用済みの製品としては、容器、フィルム、シート、繊維、製品の不適合品、スプルー、ランナー等が挙げられ、これらから得られた粉砕品又はそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の配合割合(質量比)は、99:1〜40:60であり、好ましくは95:5〜51:49であり、より好ましくは90:10〜55:45である。 芳香族ポリカーボネート樹脂を40質量%以上とすることで耐衝撃性が向上する傾向にあり、99質量%未満にすることで流動性や耐薬品性が向上する傾向にある。
(3)環状カーボネート
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、下記一般式(II)で表される環状カーボネートが3000ppm以下で存在している。下記一般式(II)で表される環状カーボネートは、従来公知の化合物であり、試薬供給業者等より入手できるか、又は従来公知の任意の方法により容易に合成することができ、そのような化合物を本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に添加してもよい。あるいは、下記一般式(II)で表される環状カーボネートは、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造工程で副生したものであってもよい。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂は、製造工程で連結剤として使用するジオール化合物に対応する環状カーボネートが副生する場合があるが、これを反応系外へ除去したのちでも、少量の環状ポリカーボネートが残存し、最終的に得られる芳香族ポリカーボネート樹脂中にかかる環状ポリカーボネートが含まれることとなる。かかる環状カーボネートが3000ppm以下で存在することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が向上する場合がある。また、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分がより均一に混合され、成形性及び機械的強度が向上する傾向がある。なお、環状カーボネートが3000ppmを超えて存在すると、樹脂組成物の機械的強度の低下等のデメリットがある場合がある。
一般式(II):
一般式(II)中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
nは0〜30の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは1を表す。
一般式(II)中、Ra及びRbは、好ましくは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して炭素数3〜8の脂環式環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
〜Rは、好ましくは、各々独立して、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。nは、好ましくは、1〜6の整数を表す。
一般式(II)中、Ra及びRbは、より好ましくは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、及びi−ブチル基が挙げられる。R〜Rは、より好ましくは、各々水素原子である。nは、より好ましくは、1〜3の整数を表す。
前記一般式(II)で表される環状カーボネートとしてより好ましくは、下記一般式(IIa)で表される化合物である。一般式(IIa)中、n、Ra及びRbはそれぞれ上述した一般式(II)におけるのと同様である。
一般式(IIa):
前記環状カーボネートの具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、前記一般式(II)で表される環状カーボネートが、一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、質量基準で3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下で存在する。環状ポリカーボネートの下限値は、通常は検出下限値となるが、好ましくは0.0005ppm、より好ましくは0.005ppmであり、更に好ましくは0.05ppmであり、特に好ましくは0.1ppmである。かかる環状カーボネートが存在することにより、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が向上する場合がある。なお、環状カーボネートが3000ppmを超えて存在すると、樹脂強度の低下等のデメリットがある場合があり、環状カーボネートが低すぎると流動性が悪化したり、十分な耐衝撃性及び耐湿熱性を有することが困難になる場合がある。
(4)ゴム性重合体
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、前記必須成分に加えて、耐衝撃性を向上させる目的でゴム性重合体を配合することができる。ゴム性重合体とは、ガラス転移温度が0℃以下、中でも−20℃以下のものを示し、ゴム性重合体にこれと共重合可能な単量体成分とを共重合した重合体をも含む。本発明に用いるゴム性重合体は、一般に芳香族ポリカーボネート樹脂に配合されて、その耐衝撃性を改良し得る、従来公知の任意のものを使用できる。
ゴム性重合体の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等のポリアルキルアクリレートゴム;ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムの他、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとから成るIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン系ゴム(エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム等)、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、耐衝撃性の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとから成るIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムの群から選択される何れか1種が好ましい。
ゴム性重合体と共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸など)等が挙げられる。これらの単量体成分は2種以上を併用してもよい。これらの中では、耐衝撃性の面から、好ましくは、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物の群から選択される何れか1種であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。
本発明に用いるゴム性重合体は、耐衝撃性の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。この場合、コア層は、ポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとから成るIPN(Interpenetrating polymer network)型複合ゴムの群から選択される少なくとも1種のゴム成分で形成し、シェル層は、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体で形成するのが好ましい。
前記のコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
また、前記のコア/シェル型グラフト共重合体の商品としては、例えば、ガンツ化成社製の「スタフィロイドMG1011」、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイドEXL2315」、「EXL2602」、「EXL2603」等のEXLシリーズ、「KM330」、「KM336P」等のKMシリーズ、「KCZ201」等のKCZシリーズ、三菱レイヨン社製の「メタブレンS−2001」、「SRK−200」等が挙げられる。
その他のゴム性重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
ゴム性重合体の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、例えば、0.5〜40質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜25質量部である。ゴム性重合体の含有量を1質量部以上とすることで耐衝撃性が向上する傾向にあり、40質量部未満とすることで剛性や耐熱性、耐湿熱性が向上する傾向にある。
(5)その他の成分
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性及び耐湿熱性の改善といった本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、耐熱安定剤、加水分解安定化剤、酸化防止剤、顔料、染料、強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤、帯電防止剤、抗菌剤等が挙げられる。
耐熱安定剤としては、トリフェニルホスフィン(P-Ph)等の公知のものを用いることができる。
離型剤としては、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、フッ素オイル、パラフィンワックス等の公知のものを用いることができ、特に、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステルを用いることができる。
酸化防止剤としては、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、オクタデシル3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルプロピオネート)、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、トリクレジルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等を用いることができる。これらのうちで好ましいものは、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト及びオクタデシル3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネートである。
(6)芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、従来公知の樹脂組成物の製造方法を採用することができる。例えば、前記必須成分及び任意成分を、ターンブルミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等で代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が挙げられる。なお添加剤は、分散混合前に、各必須成分に添加してもよい。
2.成形品
本発明のポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び環状カーボネートを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、回転成形、圧縮成形などで得られる様々な成形品、各種部材などの用途に好ましく利用することができる。これらの用途に用いるときは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物単独であってもさらに他のポリマーとのブレンド品であっても差し支えない。用途に応じてハードコートなどの加工も好ましく使用しうる。
特に好ましくは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形、射出成形等に用いられる。優れた機械的性質を有している為、得られる成形品としては、押出成形品、精密部品や射出成形品、自動車分野、OA機器分野、電子・電気分野等の原材料、一般工業分野の原材料等が挙げられるがこれらに限定されない。
成形品の具体例としては、電気・電子分野等の各種原材料、自動車・航空機産業における各種原材料、その他光学機器部品、電車や自動車等の車載用品、各種建築部材、コピー機やファクシミリ、パソコンなどOA機器の各種部品在料、テレビや電子レンジ等家電製品の各種部品材料、コネクターやICトレイなどの電子部品用途、ヘルメット、プロテクター、保護面等の保護具部材、各異医療用機器の部材等を挙げることができるがこれらに限定されない。以上のように特に好ましい本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の用途として、特に高強度(高シャルピー強度)且つ精密成形性を必要とする成形品が挙げられる
3.芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は特に制限されず、公知の任意の製造方法で得られたものを使用できるが、以下に示す製造方法で得られるものを使用するのが好ましい。かかる製造方法を採用することにより、分岐化度が低く、異種構造の含有率が低く、末端水酸基濃度が低く、且つ特定構造の環状カーボネートを所望の含有率で含む芳香族ポリカーボネート樹脂を効率的に製造することができる。
好ましい製造方法は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと、下記一般式(IV)で表わされるジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む方法である。
(1)ジオール化合物
好ましい製造方法で用いられるジオール化合物は、下記一般式(IV)で表されるものである。
一般式(IV):
一般式(IV)中、Ra及びRbは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
nは0〜30の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは1を表す。
一般式(IV)中、Ra及びRbは、好ましくは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して炭素数3〜8の脂環式環を形成していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
〜Rは、好ましくは、各々独立して、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。nは、好ましくは、1〜6の整数を表す。
一般式(IV)中、Ra及びRbは、より好ましくは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。R〜Rは、より好ましくは、各々水素原子である。nは、より好ましくは、1〜3の整数を表す。
一般式(IV)で表されるジオール化合物としてより好ましいものは、下記一般式(IVa)で表される化合物である。中、Ra及びRbは、一般式(IV)におけるのと同じである。
一般式(IVa):
一般式(IVa)中、Ra及びRbとしてより好ましくは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、さらに好ましくは炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。特に好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びイソブチル基が挙げられ、好ましくはエチル基、プロピル基、ブチル基、及びイソブチル基が挙げられる。
ジオール化合物としては、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、エタン−1,2−ジオール(1,2−エチレングリコール)、2,2−ジイソアミルプロパン−1,3−ジオール、及び2−メチルプロパン−1,3−ジオールが挙げられる。
また、前記ジオール化合物の他の例としては、以下の構造式を有する化合物が挙げられる。
これらのうちで特に好ましいものは、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール及び2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される化合物である。
(2)芳香族ポリカーボネートプレポリマー
好ましい製造方法で用いられる芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する前記一般式(I)で表される構造を主たる繰り返し単位とする重縮合ポリマーである。
本発明の製造方法は、かかる芳香族ポリカーボネートプレポリマーを、前記一般式(IV)で表されるジオール化合物と、減圧下でエステル交換反応させて連結させる工程を含む。これによって、耐衝撃性等のポリカーボネート樹脂本来の特性を維持しつつ、高分子量でありながら高流動性を与え、しかも前記一般式(III)で表される異種構造単位の割合が少なく耐熱性が格段に向上した芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
かかる芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、一般式(I)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物を塩基性化合物等のエステル交換触媒の存在下に炭酸ジエステルと反応させる公知のエステル交換法、あるいは該芳香族ジヒドロキシ化合物を酸結合剤の存在下にホスゲン等と反応させる公知の界面重縮合法のいずれによっても容易に得ることができる。
前記一般式(I)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、前記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、界面重合法で合成したものであっても溶融重合法で合成したものであってもよく、また、固相重合法や薄膜重合法などの方法で合成したものであってもよい。また、使用済みディスク成形品等の使用済み製品から回収されたポリカーボネートなどを用いることも可能である。これらのポリカーボネートは混合して反応前のポリマーとして利用しても差し支えない。例えば界面重合法で重合したポリカーボネートと溶融重合法で重合したポリカーボネートとを混合してもよく、また、溶融重合法あるいは界面重合法で重合したポリカーボネートと使用済みディスク成形品等から回収されたポリカーボネートとを混合して用いても構わない。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネートプレポリマーとして好ましくは、特定条件を満たす末端封止された芳香族ポリカーボネートプレポリマーが挙げられる。
すなわち、前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーは、その少なくとも一部が芳香族モノヒドロキシ化合物由来の末端基あるいは末端フェニル基(以下、併せて「封止末端基」ともいう)で封止されていることが好ましい。
その封止末端基の割合としては、全末端量に対して60モル%以上が好ましい。また、末端フェニル基濃度(全構成単位に対する封止末端基の割合)は2モル%以上、好ましくは2〜20モル%、特に好ましくは2〜12モル%である。末端フェニル基濃度が2モル%以上の場合にジオール化合物との反応が速やかに進行し、前記特有の効果が特に顕著に発揮される。芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端量に対する封止末端量の割合は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーのH−NMR解析により分析することができる。
また、Ti複合体による分光測定によって末端水酸基濃度を測定することが可能である。さらに末端水酸基濃度はH−NMR解析により測定することも可能である。同評価による末端水酸基濃度としては1,500ppm以下が好ましく、さらに好ましくは1,000ppm以下が好適である。この範囲内の水酸基末端あるいはこの範囲内の封止末端量であれば、ジオール化合物とのエステル交換反応によって十分な高分子量化の効果が得られる傾向がある。
ここでいう「芳香族ポリカーボネートの全末端基量」又は「芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端基量」は、例えば分岐の無いポリカーボネート(すなわち、鎖状ポリマー)0.5モルがあれば、全末端基量は1モルであるとして計算される。
封止末端基の具体例としては、フェニル末端基、クレジル末端基、o−トリル末端基、p−トリル末端基、p−t−ブチルフェニル末端基、ビフェニル末端基、o−メトキシカルボニルフェニル末端基、p−クミルフェニル末端基等の末端基を挙げることができる。
これらの中では、ジオール化合物とのエステル交換反応で反応系より除去されやすい低沸点の芳香族モノヒドロキシ化合物で構成される末端基が好ましく、フェニル末端基、p−t−ブチルフェニル末端基等が特に好ましい。
このような封止末端基は、界面法においては芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時に末端停止剤を用いることにより導入することができる。末端停止剤の具体例としては、p−t−ブチルフェノール、フェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。末端停止剤の使用量は、所望する芳香族ポリカーボネートプレポリマーの末端量(すなわち所望する芳香族ポリカーボネートプレポリマーの分子量)や反応装置、反応条件等に応じて適宜決定することができる。
溶融法においては、芳香族ポリカーボネートプレポリマー製造時にジフェニルカーボネートのごとき炭酸ジエステルを芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用することにより、封止末端基を導入することができる。反応に用いる装置及び反応条件にもよるが、具体的には芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを1.00〜1.30モル、より好ましくは1.02〜1.20モル使用する。これにより、前記末端封止量を満たす芳香族ポリカーボネートプレポリマーが得られる。
好ましくは、芳香族ポリカーボネートプレポリマーとして、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応(エステル交換反応)させて得られる末端封止された重縮合ポリマーを使用する。
芳香族ポリカーボネートプレポリマーを製造するとき、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、一分子中に3個以上の官能基を有する多官能化合物を併用することもできる。このような多官能化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基を有する化合物が好ましく使用される。
さらに芳香族ポリカーボネートプレポリマーを製造するとき、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、ジカルボン酸化合物を併用し、ポリエステルカーボネートとしても構わない。前記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、これらのジカルボン酸は酸クロリド又はエステル化合物として反応させることが好ましく採用される。また、ポリエステルカーボネート樹脂を製造する際に、ジカルボン酸は、前記ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分との合計を100モル%とした時に、0.5〜45モル%の範囲で使用することが好ましく、1〜40モル%の範囲で使用することがより好ましい。
前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの分子量としては、Mwが5,000〜35,000が好ましい。より好ましくはMwが15,000〜35,000、さらに好ましくは20,000〜35,000、特に好ましくは20,000〜33,000の範囲である。
この範囲内の分子量の芳香族ポリカーボネートプレポリマーを使用すると、該芳香族ポリカーボネートプレポリマー自体の粘度が低いため、プレポリマーの製造を高温・高剪断・長時間にて実施する必要がなく、及び/又は、ジオール化合物との反応を高温・高剪断・長時間にて実施することが必要なくなる傾向がある。
(3)環状カーボネート
好ましい製造方法においては、末端封止された芳香族ポリカーボネートプレポリマーにジオール化合物をエステル交換触媒存在下、減圧条件にて作用させることにより、芳香族ポリカーボネートプレポリマーから高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。この反応は温和な条件で高速に進み、高分子量化された高品質の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
前記特定構造のジオール化合物を反応させる方法においては、芳香族ポリカーボネートプレポリマーとジオール化合物との反応が進行するとともに、ジオール化合物の構造に対応した構造を有する環状体である環状カーボネートが副生する。副生する環状カーボネートを反応系外へ除去することによって、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの高分子量化が進行し、最終的には従来のホモポリカーボネート(例えばビスフェノールA由来のホモポリカーボネート樹脂)とほぼ同じ構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
なお、高分子量化工程と環状カーボネート除去工程とは、必ずしも物理的及び時間的に別々の工程とする必要はなく、実際には同時に行われる。本発明の好ましい製造方法は、芳香族ポリカーボネートとジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得るとともに、前記高分子量化反応で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する工程を含むものである。
副生する環状カーボネートは、使用するジオール化合物に対応する構造を有しており、具体的には、前記一般式(II)で表される化合物である。その具体的態様もまた、前記に記載のとおりである。なお、このような高分子量化とともに環状カーボネートが副生される反応機構は、必ずしも明らかではない。
例えば以下のスキーム(1)又は(2)に示すメカニズムが考えられるが、必ずしも明確ではない。本発明の前記一般式(IV)〜(IVa)で表される構造を有するジオール化合物を用いた製造方法は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーに連結剤としてジオール化合物を反応させ、当該芳香族ポリカーボネートプレポリマーを連結させ高分子量化するとともに、そこで副生するジオール化合物の構造に対応する構造の環状カーボネートを除去するものであり、その範囲内であれば特定の反応機構に限定されるものでもない。
スキーム(1):
スキーム(2):
本発明の前記一般式(IV)で表される構造を有するジオール化合物を用いた製造方法によって得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂は、ジオール化合物由来の構造単位をほとんど含まず、樹脂の骨格はホモポリカーボネート樹脂とほぼ同じである。
すなわち、連結剤であるジオール化合物由来の構造単位が骨格に含まれないか、含まれるとしても極めて少量であることから、熱安定性が極めて高く耐熱性に優れている。一方で、従来のホモポリカーボネート樹脂と同じ骨格を有しながら、N値が低い、異種構造単位の割合が少ない、色調に優れている、などの優れた品質を備えることができる。
ここで、異種構造単位とは、好ましくない作用効果をもたらす可能性のある構造単位をいい、従来の溶融重合法で得られるポリカーボネートに多く含まれる分岐点ユニットなどが挙げられる。好ましい製造方法によれば、特に前記一般式(III)で表される構造単位の含有率を低減させることができる。より具体的には、前記一般式(III)で表される構造単位の含有率を、前記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に対して2000ppm以下に低減させることができる。
なお、本発明の製造方法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の骨格にジオール化合物由来の構造単位が含まれてもよい。その場合、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の全構造単位量に対する該ジオール化合物由来の構造単位の含有率は、例えば1モル%以下、好ましくは0.1モル%以下である。
(4)製造方法
以下に、本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂の好ましい製造方法の詳細な条件を説明する。
(i)ジオール化合物の添加
好ましい製造方法においては、芳香族ポリカーボネートプレポリマーに前記一般式(IV)で表されるジオール化合物を添加混合し、高分子量化反応器内で高分子量化反応(エステル交換反応)を行う。
ジオール化合物の使用量としては、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端基量1モルに対して0.01〜1.0モルであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0モルであり、さらに好ましくは0.2〜0.7モルである。ただし、比較的沸点が低いものを使用するときは、反応条件によっては一部が揮発などにより反応に関与しないまま系外へ出る可能性を考慮して、予め過剰量を添加することもできる。例えば、芳香族ポリカーボネートプレポリマーの全末端基量1モルに対して最大50モル、好ましくは10モル、より好ましくは5モル添加することもできる。
ジオール化合物の添加混合方法については特に制限されないが、ジオール化合物として沸点の比較的高いもの(沸点約350℃以上)を使用する場合には、前記ジオール化合物は、減圧度10torr(1333Pa以下)以下の高真空下で、直接高分子量化反応器へ供給することが好ましい。より好ましくは、減圧度2.0torr以下(267Pa以下)、より好ましくは0.01〜1torr(1.3〜133Pa以下)である。ジオール化合物を高分子量化反応器へ供給する際の減圧度が不十分であると、副生物(フェノール)によるプレポリマー主鎖の開裂反応が進行してしまい、高分子量化するためには反応混合物の反応時間を長くせざるを得なくなる場合がある。
一方、ジオール化合物として沸点の比較的低いもの(沸点約350℃未満)を使用する場合には、芳香族ポリカーボネートプレポリマーとジオール化合物とを比較的ゆるやかな減圧度で混合することもできる。例えば、芳香族ポリカーボネートプレポリマーとジオール化合物と常圧に近い圧力で混合してプレポリマー混合物としたのち、該プレポリマー混合物を減圧条件下の高分子量化反応に供することにより、沸点の比較的低いジオール化合物であっても揮発が最小限に抑えられ、過剰に使用する必要性がなくなる。
(ii)エステル交換反応(高分子量化反応)
芳香族ポリカーボネートプレポリマーとジオール化合物とのエステル交換反応(高分子量化反応)に使用する温度としては、240℃〜320℃の範囲が好ましく、より好ましくは260℃〜310℃、さらに好ましくは280℃〜310℃である。
また、減圧度としては13kPaA(100torr)以下が好ましく、さらに好ましくは1.3kPaA(10torr)以下、より好ましくは0.67〜0.013kPaA(5〜0.1torr)である。
エステル交換反応に使用されるエステル交換触媒としては、塩基性化合物が挙げられ、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、含窒素化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基及び/又はアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラフェニルアンモニウム等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩も好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
これらの触媒は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーを構成する芳香族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、1×10−9〜1×10−3モルの比率で、好ましくは1×10−7〜1×10−5モルの比率で用いられる。
(iii)環状カーボネート除去工程
前記高分子量化反応によって芳香族ポリカーボネートプレポリマーが高分子量化され、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が得られると同時に、該反応で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去される。副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去することによって芳香族ポリカーボネートプレポリマーの高分子量化反応がさらに進行する。
環状カーボネートの除去方法としては、例えば同じく副生するフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物及び未反応のジオール化合物等とともに反応系より留去する方法が挙げられる。反応系より留去する場合の温度は、例えば240〜320℃、好ましくは260〜310℃、より好ましくは280〜310℃である。
環状カーボネートの除去については、副生する環状カーボネートの少なくとも一部について行う。副生する環状カーボネートの残存量の好ましい上限は3000ppmである。すなわち、本発明の前記一般式(IV)で表される構造を有するジオール化合物を用いた製造方法では、前記一般式(II)で表される構造を有する環状カーボネートが3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られる。その場合、前記一般式(II)で表される構造を有する環状カーボネートの含有割合の下限は、通常は検出限界値となり、好ましくは0.0005ppm以上である。
なお、環状カーボネートの含有割合は、GC−MSで測定した値である。
反応系外へ留去された環状カーボネートは、その後加水分解、精製等の工程を経て回収・再利用(リサイクル)することができる。環状カーボネートとともに留去されるフェノールについても同様に回収し、ジフェニルカーボネート製造工程へ供給して再利用することができる。
(iv)その他の製造条件
本発明においては、芳香族ポリカーボネートプレポリマーとジオール化合物とのエステル交換反応により、反応後の芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)が前記芳香族ポリカーボネートプレポリマーの重量平均分子量(Mw)よりも5,000以上高めることが好ましく、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上高めるのが好ましい。
ジオール化合物とのエステル交換反応における装置の種類や釜の材質などは公知のいかなるものを用いても良く、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。前記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。好ましくは横型撹拌効率の良い回転翼を有し、減圧条件にできるユニットをもつものがよい。
さらに好ましくは、ポリマーシールを有し、脱揮構造をもつ2軸押出機あるいは横型反応機が好適である。
装置の材質としては、SUS310、SUS316やSUS304等のステンレスや、ニッケル、窒化鋼などポリマーの色調に影響のない材質が好ましい。また装置の内側(ポリマーと接触する部分)には、バフ加工あるいは電解研磨加工を施したり、クロムなどの金属メッキ処理を行ったりしてもよい。
高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂に、触媒失活剤を添加してもよい。一般的に触媒失活剤としては、公知の酸性物質が挙げられるが、その添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、パラトルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、パラトルエンスルホン酸ブチル等の芳香族スルホン酸エステル類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の芳香族スルホン酸塩、ステアリン酸クロリド、酪酸クロリド、塩化ベンゾイル、トルエンスルホン酸クロリド、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸塩、リン酸類、亜リン酸類等が挙げられる。
触媒失活剤の添加量は特に制限されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、好ましくは3ppm以上、より好ましくは5ppm以上である。触媒失活剤の含有量が3ppm以上の場合、熱安定性の向上効果が期待できる。触媒失活剤の添加量の上限は特に制限されないが、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。
これらのうちで、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ブチル、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、及びパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩からなる群から選択される触媒失活剤が好適に用いられる。
触媒失活剤の添加は、前記高分子量化反応終了後に従来公知の方法でポリカーボネート樹脂に混合することができる。例えば、ターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.013〜0.13kPaA(0.1〜1torr)の圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。好ましくは、ポリマーシールを有し、ベント構造をもつ2軸押出機あるいは横型反応機である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は、得られたポリカーボネート又はポリカーボネート樹脂組成物(以下、両者に共通する場合は、「ポリカーボネート」ということもある。)の分析及び物性評価は、以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)及びポリスチレン換算数平均分子量(Mn):
GPCを用い、クロロホルムを展開溶媒として、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、“PStQuick MP-M”)を用いて検量線を作成した。測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の計算式より求めた。
[計算式]
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
Mn=Σ(Ni×Mi)÷Σ(Ni)
ここで、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Niはi番目の分子数、Miはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。
2)分子量分布(Mw/Mn)
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)及びポリスチレン換算数平均分子量(Mn)より以下の計算式より求めた。
[計算式]
分子量分布=Mw/Mn
[測定条件]
装置;東ソー株式会社製、HLC−8320GPC
カラム;ガードカラム:TSKguardcolumn SuperMPHZ-M×1本
分析カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M×3本
溶媒;HPLCグレードクロロホルム
注入量;10μL
試料濃度;0.2w/v% HPLCグレードクロロホルム溶液
溶媒流速;0.35ml/min
測定温度;40℃
検出器;RI
3)末端水酸基濃度(ppm):H−NMRの解析結果から末端水酸基を観測することによって測定した。
H−NMRによるプレポリマー(PP)中の末端水酸基濃度は、樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃でH−NMRを測定することで求めた。具体的には、4.7ppmの水酸基ピークと7.0〜7.5ppm付近のフェニル及びフェニレン基(末端フェニル基及びBPA骨格由来のフェニレン基)の積分比より、PP中の末端水酸基濃度(OH濃度)を算出した。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂中の末端水酸基濃度も、同様に測定し、算出することができる。
なお、H−NMRの測定条件の詳細は以下のとおりである。
装置:日本電子社製 LA-500 (500MHz)
測定核:1H
relaxation delay : 1s
x_angle : 45deg
x_90_width : 20μs
x_plus : 10μs
scan : 500times
4)末端フェニル基濃度(封止末端基濃度、Ph末端濃度;モル%):H−NMRの解析結果から、下記数式により求めた。
具体的には、樹脂サンプル0.05gを、1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃でH−NMRスペクトルを測定し、7.4ppm前後の末端フェニル基と7.0〜7.3ppm付近のフェニレン基(BPA骨格由来)の積分比より、PPの末端フェニル基量及び末端フェニル基濃度を測定した。なお、H−NMRの測定条件の詳細は前記と同様である。
前記の末端水酸基濃度と末端フェニル基濃度とから、ポリマーの全末端基量を算出することができる。
5)異種構造量
樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素置換クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で核磁気共鳴分析装置H−NMRを用いて高分子量化されたポリカーボネート(PC)中の異種構造量を測定した。文献Polymer 42 (2001)7653-7661中のP.7659に記載されたHa及びHbのH−NMRの帰属により、以下の異種構造ユニット量を測定した。なお、H−NMRの測定条件の詳細は前記と同様である。
[算出]
前記異種構造ユニット中のHa(8.01ppm付近)及びHb(8.15ppm付近)のシグナルと7.0〜7.5ppm付近のフェニル及びフェニレン基(末端フェニル基及びBPA骨格由来のフェニレン基)のシグナルの積分比より、異種構造量を算出した。
6)N値
高化式フローテスターCFT-500D(島津製作所(株)製)を用いて、120℃で5時間乾燥した芳香族ポリカーボネート(試料)について、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積をQ160値とし、同様に280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積をQ10値として、これらを用いて下式(1)により求めた。
N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(1)
7)耐衝撃性(シャルピー衝撃試験)
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを120℃、5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「SG75Mk−II」)にて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(3mm厚)を作製し、ISO−179規格に基づき、23℃にてシャルピー衝撃試験(ノッチ有、単位:kJ/m)を実施した。
8)湿熱試験
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを120℃、5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「SG75Mk−II」)にて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(3mm厚)を作製した。スチームプレッシャー試験機((株)平山製作所製「HASTEST PC−SIII型」)を使用し、100℃の水蒸気中で24時間保持した(湿熱処理)。湿熱処理後の各々の試験片についてを室温(23℃)条件下で、ISO−527規格に基づき、引張試験測定を実施し、引張弾性率(単位:MPa)、降伏応力(単位:MPa)、引張破壊呼びひずみ(単位:%)を測定した。行った。
9)樹脂中の環状カーボネート含有量の測定法
サンプル樹脂10gをジクロロメタン100mlに溶解し、1000mlのメタノール中へ攪拌しながら滴下した。沈殿物を濾別し、濾液中の溶媒を除去した。得られた固体をGC-MSにより以下の測定条件で分析した。なお、この測定条件での検出限界値は0.0005ppmである。
[GC-MS測定条件]
測定装置:Agilent HP6890/5973MSD
カラム:キャピラリーカラムDB-5MS,30m×0.25mm I.D., 膜厚0.5μm
昇温条件:50℃(5min hold)−300℃(15min hold),10℃/min
注入口温度:300℃、打ち込み量:1.0μl(スプリット比25)
イオン化法:EI法
キャリアーガス:He,1.0ml/min
Aux温度:300℃
質量スキャン範囲:33−700
溶媒:HPLC用クロロホルム
内部標準物質:2,4,6−トリメチロールフェノール
なお、以下の実施例及び比較例で使用したジオール化合物の化学純度はいずれも98〜99%、塩素含有量は0.8ppm以下、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン及び重金属(鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、スズ)の含有量は各々1ppm以下である。芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルの化学純度は99%以上、塩素含有量は0.8ppm以下、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン及び重金属(鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、スズ)の含有量は各々1ppm以下である。
以下の実施例で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを「BPA」、プレポリマーを「PP」、水酸基を「OH基」、フェニル基を「Ph」と略すことがある。
[芳香族ポリカーボネート樹脂の製造例1:PC−1]
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン66.480kg(291.209モル)、ジフェニルカーボネート70.179kg(327.610モル)及び触媒として炭酸セシウム0.17μモル/モル(BPAに対してのモル数)を攪拌機及び留出装置付の300Lの反応に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。減圧度を0.046MPa(345torr)に調整し、160℃にて原料を加熱溶融し、1間攪拌した。
その後、9時間かけて、徐々に昇温、減圧度を下げながら、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行なった。最終的に系内を260℃、減圧度を0.05kPa(0.38torr)以下とし、さらに1時間保持し、芳香族ポリカーボネートプレポリマー(以下、「PP−E」と略すことがある)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−E)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は27900、OH濃度は280ppm、フェニル末端濃度(Ph末端濃度)は5.8mol%であった。OH濃度は、H−NMRより算出した値であり、全ポリマー中に含まれるOH基濃度を示す。また、Ph末端濃度は、H−NMRより算出した値であり、全フェニレン基及びフェニル末端中のフェニル基(水酸基で置換されたフェニル基を含む)末端濃度を示す。
芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−E)をメルター(二軸押出機)により樹脂温度を280℃に溶融し、13300g/hrの速さで予め300℃へ加熱した回転数180rpmのニーダーへ連続供給した。
同時に、アンカー翼を具備した連結剤調整槽において、ジオール化合物である2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール(BEPG)3000gを75〜80℃で加熱溶融し、0.005mol/Lの炭酸セシウム(CsCO)水溶液82mlを添加、攪拌し、0.1torrで1時間、脱水処理(水分含有量は検出限界以下)を行った。得られた触媒を含有するBEPGを124g/hrの速さで前記ニーダーへPP−Eと共に連続供給した。
PP−Eの全末端量(封止末端フェニル基量)1モルに対し0.25モルの流量でBEPG、触媒である炭酸セシウム(CsCO)はBPAの1モルに対し0.33μモル/モルの割合で連続供給した。
引き続き、ニーダー出口より280℃に保温された輸送管を経由し、PP-Eと炭酸セシウムが添加されたBEPGの混合物を流速13425g/hrで横型攪拌反応器へ供給し、高分子量化反応を行った。このときの横型攪拌反応器の器内圧力は0.5torr、樹脂温度は300℃であった。
横型攪拌反応器の平均滞留時間が60分になるように液面レベルを制御し、高分子量化反応と同時に副生するフェノールと環状カーボネート(5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン)の留去を行った。横型攪拌反応器の撹拌翼は20rpmで撹拌した。
さらに横型攪拌反応器で連結高分子量化反応を行った後に得られたポリカーボネート樹脂に対し、触媒失活剤としてパラトルエンスルホン酸ブチル(p−TSB)5ppmと酸化防止剤としてオクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076・BASF社製)1000ppmを二軸混練機により混練した。得られたポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は42300、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であり、また、得られたポリカーボネート樹脂のN値は1.19、末端水酸基濃度は400ppm、異種構造(PSA;一般式(III)で表わされる構造単位であって、X=C(CHであるもの)の量は500ppm、環状カーボネート(5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン)の含有量は1ppmであった。
[芳香族ポリカーボネート樹脂の製造例2:PC−2]
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン64.662kg(283.245モル)、ジフェニルカーボネート63.710kg(297.41モル)及び触媒として炭酸セシウム1.0μモル/モル(BPAに対してのモル数)を攪拌機及び留出装置付の300Lの反応に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。減圧度を0.046MPa(345torr)に調整し、160℃にて原料を加熱溶融し、1間攪拌した。
その後、10時間かけて、徐々に昇温、減圧度を下げながら、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行なった。最終的に系内を260℃、減圧度を0.05kPa(0.38torr)以下とし、さらに1時間保持し、芳香族ポリカーボネートプレポリマー(以下、「PP−F」と略すことがある)を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−F)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は30000、OH濃度は1200ppm、フェニル末端濃度(Ph末端濃度)は2.0mol%であった。OH濃度は、NMRより算出した値であり、全ポリマー中に含まれるOH基濃度を示す。また、Ph末端濃度は、NMRより算出した値であり、全フェニレン基及びフェニル末端中のフェニル基(水酸基で置換されたフェニル基を含む)末端濃度を示す。
芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−F)をメルター(二軸押出機)により樹脂温度を280℃に溶融し、13300g/hrの速さで予め300℃へ加熱した回転数140rpmのニーダーへ連続供給した。
引き続き、ニーダー出口より280℃に保温された輸送管を経由し、芳香族ポリカーボネートプレポリマー(PP−F)を流速13300g/hrで横型攪拌反応器へ供給し、高分子量化反応を行った。このときの横型攪拌反応器の器内圧力は0.5torr、樹脂温度は300℃であった。
横型攪拌反応器の平均滞留時間が120分になるように液面レベルを制御し、高分子量化反応と同時に副生するフェノールの留去を行った。横型攪拌反応器の撹拌翼は20rpmで撹拌した。
さらに横型攪拌反応器で連結高分子量化反応を行った後に得られたポリカーボネート樹脂に対し、触媒失活剤としてパラトルエンスルホン酸ブチル(p−TSB)5ppmと酸化防止剤としてオクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス1076・BASF社製)1000ppmを二軸混練機により混練した。得られたポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は44700、分子量分布(Mw/Mn)は2.6であり、得られたポリカーボネート樹脂のN値は1.29、末端水酸基濃度は1100ppm、異種構造(PSA)量は2000ppmであった。環状カーボネートは未検出であった。
[実施例1、比較例1]
前記製造例により作製したPC−1及びPC−2と各種添加剤を表1に示す質量比で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出した溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化して、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例2、比較例2]
前記製造例により作製したPC−1及びPC−2と各種添加剤を表1に示す質量比で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出した溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化して、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
PET: ポリエチレンテレフタレート樹脂(GG900DN、三菱化学(株))
エラストマー: ポリブタジエンコア/ポリメチルメタクリレートシェル系共重合体(パラロイド EXL2633、呉羽化学工業(株)製)
CB: カーボンブラックのポリスチレンマスターバッチ。カーボンブラック40%、 越谷化成(株) 製 RB904G
PTS: ペンタエリスリトールテトラステアレート(ロキシオールVPG861、コグニスジャパン(株)製)/離型剤
ADK2112: トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(アデカスタブ2112、旭電化(株)製)/酸化防止剤

Claims (11)

  1. 下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び下記一般式(II)で表される環状カーボネートを含み、
    前記芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の割合(質量比)が99:1〜40:60であり、且つ前記環状カーボネートが、前記芳香族ポリカーボネート樹脂に対して3000ppm以下で存在する、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
    一般式(I):

    (式中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、p及びqは、0〜4の整数を表し、Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す)

    (ここで、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい)
    一般式(II):

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、nは0〜30の整数を表す)。
  2. さらに、前記芳香族ポリカーボネート樹脂と前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量部に対し、ゴム性重合体0.5〜40質量部を含む、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 前記ゴム性重合体が、コア/シェル型グラフト共重合体である、請求項2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記環状カーボネートが、下記一般式(IIa)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
    一般式(IIa):

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)。
  5. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(III)で表わされる構造単位を含み、その含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
    一般式(III):

    (式中、Xは、請求項1と同義である。)。
  6. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂のN値(構造粘性指数)が、下記数式(1)で表した場合、1.25以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160―log10) ・・・(1)
  7. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基含有量が、1000ppm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂及び前記環状カーボネートが、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと下記一般式(IV)で表されるジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む方法により得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
    一般式(IV):

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、nは、0〜30の整数を表す)。
  9. 前記ジオール化合物が、下記一般式(IVa)で表される化合物である、請求項8に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物:
    一般式(IVa):

    (式中、Ra及びRbは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数3〜30のシクロアルキル基、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数6〜30のアリール基、又は酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、あるいはRa及びRbは、相互に結合して環を形成していてもよい)。
  10. 前記ジオール化合物が、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジイソブチルプロパン−1,3−ジオール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、及び2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される、請求項8又は9に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して成る、成形品。
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