以下、図面を参照して、本発明の定量シリンジ型噴出器を、複数の実施形態を用いて詳細に説明する。
図1の全体図中、符号1は、本発明の定量シリンジ型噴出器の第1の実施形態である、点鼻薬噴出器である。点鼻薬噴出器1は、合成樹脂製又はガラス製のシリンジ10を有する。シリンジ10は、内容物(例えば、本実施形態では「点鼻薬」)Mを充填可能な中空の胴部11を有し、この胴部11には、肩部12を介して前端部13が一体に繋がる。前端部13は、胴部11よりも小径としてなる。前端部13の内側には、貫通孔10aが形成されている。
符号20は、シリンジ10に嵌合保持されるノズルである。ノズル20は、シリンジ10の前端部13に取り外し可能に嵌合する本体21を有する。本体21には、ノズルチップ22が内蔵されている。また本体21の前端には、ノズルチップ22に通じる噴出口1aが形成されている。これにより、ノズル20は、噴出口1aを通して内容物Mを外界に噴霧させることができる。
他方、シリンジ10の後端部14は、胴部11の後方から径方向(点鼻薬噴出器1の中心軸線Oに対して直交する向き)外向きに突出する突起部として形作られている。
符号50は、シリンジ10の後端部(突起部)14に設けられた合成樹脂製の延長筒である。延長筒50は、シリンジ10の後端部14を周方向(中心軸線O周りの方向)に沿って全周にわたって取り囲む環体部51と、この環体部51の内縁から後方に向かって伸びる筒本体部52とを有する。
本実施形態では、筒本体部52の内径は、環体部51の内径とほぼ等しく、環体部51の内径は、シリンジ10の内径とほぼ等しい。即ち、本実施形態において、延長筒50の内側には、シリンジ10とほぼ等しい内径の貫通路が形成されている。これにより、延長筒50の後端50eには、前記貫通路を通してシリンジ10の内部を外界に通じさせる開口部(以下、「後端開口部」)A1が形成される。即ち、本実施形態では、シリンジ10の後端部14に延長筒50を設けることで、実質的に、シリンジ10の全長を延長している。
さらに図2の拡大図に示すように、延長筒50は、前記貫通路を形作る延長筒50の内周面50fに、径方向内向きの突起53を有する。本実施形態では、突起53は、延長筒50の後端50eに隣接する内周面50fに設けられている。即ち、本実施形態では、突起53の後端は、筒本体部52の後端とともに、延長筒50の後端50eを形成する。突起53は、周方向に周回する環状の突起として設けられている。即ち、突起53は、延長筒50の後端開口部A1を、前記貫通路の内径よりも径の小さい開口部として形成されている。なお、突起53は、周方向の少なくとも一箇所を分断させることで断続的に形成してもよい。また、延長筒50の後端開口部A1は、突起53を省略する等して、シリンジ10の内径と同径にすることもできる。
加えて、本実施形態では、シリンジ10の後端部14の外側に設けられた環体部51が径方向外向きに突出する指掛け部として機能する。即ち、環体部51の前端51fが指を引っ掛けるための接触面として機能する。
図1の全体図において、符号Pは、シリンジ10内に収納される合成樹脂製のプランジャである。プランジャPは、ピストン保持部材30と、このピストン保持部材30の後方に配置されるプランジャ操作部材40とを有する。
ピストン保持部材30は、ピストン(ガスケット)30pを保持する本体31を有する。ピストン30pは、本体31の前端部31aに設けられている。ピストン30pは、例えば、ゴムなどの弾性材料からなり、シリンジ10の内周面10fに摺動可能に保持されている。本体31に設けたピストン30pと、シリンジ10との間には、内容物Mを充填する充填空間Sが形成される。内容物Mは、ピストン30pの押し込みによって、シリンジ10の前端部13に形成した貫通孔10aに圧送される。
本実施形態では、本体31は、ピストン30pを固定する前端部31aと、この前端部31aから後方に伸びるロッド部31bと、このロッド部31bの後端に繋がるディスク部31cと、このディスク部31cから後方に伸びる後端部31dとを有する。ロッド部31bおよび後端部31dは、例えば、断面十字形に組み合わせた縦長の4枚のプレート部からなる。
また本体31には、シャフト32が一体に設けられている。シャフト32は、本体31の後端部31dから後方に伸びている。シャフト32は、図3に示すように、本体31の後端部31dに繋がりこの後端部31dと同径の大径部32aと、大径部32aよりも径の小さい小径部32bとを有する。本実施形態では、図3に示すように、シャフト32には、軸線Oを挟んで反対側の位置にそれぞれ、大径部32aから小径部32bの途中にかけて、平坦に窪ませた窪み面32cが形成されている。さらに小径部32bは、その後端側に軸線O周りを周回する環状溝32dが形成されている。小径部32bに環状溝32dが形成されていることで、シャフト32の後端には、ヘッド32eが形成される。ヘッド32eは、後方に向かって先細りする傾斜面32fを有する。
また、ピストン保持部材30の本体31には、2つのアーム33が一体に設けられている。アーム33は、シャフト32を挟んで対向する位置に配置されている。アーム33は、本体31の後端部31dに一体に固定されている。アーム33はそれぞれ、平板状の形状を有し、後端部31dに固定された固定端33aから軸線Oに沿って後方に伸びる。アーム33はそれぞれ、図1に示す初期位置(図1の全体図に示す位置)から外力を負荷することによって固定端33aを起点に径方向(軸線Oに直交する方向)内向きに変形させることができる。また、アーム33はそれぞれ、外力などの負荷を解除することによって固定端33aを起点に前記初期位置に復元させることができる。なお、本実施形態では、アーム33は薄肉に形成されていることで、その変形及び復元がしやすく構成されている。
また、アーム33は、一体に設けられた1つの摺動突起34を有する。摺動突起34はそれぞれ、図1の全体図に示すように、延長筒50の内周面50fと対向するように突出しているとともに、軸線Oを挟んで反対側の位置に配置されている。また、図1の全体図に示すように、2つの摺動突起34の最大外径が径方向相互間に形成する間隔は、延長筒50の後端開口部A1の内径よりも大きくなるように設定されている。摺動突起34は、延長筒50の後端50eに接触すると、アーム33が固定端33aを起点に撓み変形することで、延長筒50内に進入させることができるとともに、延長筒50の内周面50fを摺動させることができる。
本実施形態では、摺動突起34は、アーム33の固定端33aに向かって先細りに傾斜する傾斜面34fを有する。これにより、摺動突起34は、延長筒50の後端開口部A1から延長筒50内に容易に進入させることができる。
さらに、アーム33は、一体に設けられた係止突起35を有する。係止突起35は、径方向外向きに突出している。また係止突起35は、摺動突起34から後方に向かって摺動突起34よりも後方の位置に間隔を置いて設けられている。加えて図1の全体図に示すように、2つの係止突起35の最大外径が径方向相互間に形成する間隔は、延長筒50の後端開口部A1の内径よりも大きくなるように設定されている。これにより、係止突起35は、延長筒50の後端50eとの接触により、この延長筒50の後端50eに引っ掛かって係止される。すなわち、係止突起35は、ピストン保持部材30がシリンジ10に進入することを制限するストッパ部として機能する。
また、本実施形態では、図1の拡大図に示すように、アーム33の自由端33eは、軸線Oと直交する面(水平面)Fに対して径方向外向きに向かうに従って前方に向かって角度θで傾斜するテーパで構成されている。例えば、角度θは、アーム33が固定端33aを起点に斜め内向き(アーム33の後方に向かうに従ってアーム33が軸線Oに接近するように傾斜する向き)に傾いたときに、アーム33の自由端33eが水平線Fと平行になるように設定する。本実施形態では、係止突起35は、アーム33の自由端33e側に一体に形成されている。これにより、係止突起35の後端は、アーム33の自由端33eとして構成される。なお、θの値は、点鼻薬噴出器の大きさ等に応じて、適宜変更することができる。
加えて、本実施形態では、図1の拡大図に示すように、係止突起35に段差36が設けられている。段差36は、アーム33の内面側に形成されている。本実施形態では、図1の拡大図に示すように、段差36は、アーム33の自由端33eの内側を切り欠いて受圧部として形成されている。段差36は、平坦な段差底面36aと、この段差底面36aに繋がる段差側面36bで形作られる。本実施形態では、段差側面36bは、段差底面36aからアーム33の自由端33eに向かって径方向外向きに傾斜するテーパ面として形成されている。
一方、図1の全体図に示すように、プランジャ操作部材40は、本体41を有する。本体41の後端には、使用者がピストン保持部材30を押し込むためのプランジャ操作部42が一体に設けられている。本体41は、図3に示すように、円筒形状をなしている。プランジャ操作部材40の内側には、プランジャ操作部材40の前端40aと後端40bとの間を貫通する内部空間R1,R2が形成されている。内部空間R1,R2には、ピストン保持部材30のシャフト32がスライド可能に貫通する。本実施形態では、シャフト32を内部空間R1に配置することにより、プランジャ操作部材40の軸線O周りの動き(ガタツキ)を制限する。
またプランジャ操作部材40は、図3に示すように、内部空間R1を形作る内周面に、環状突起43が設けられている。環状突起43は、本体41の内側から突出し、その内縁が、内部空間R1よりも径の小さい開口部A2を形成する。開口部A2は、ピストン保持部材30のシャフト32に形成された環状溝32dの溝径よりも大きく、ヘッド32eよりも小さい内径を有する。環状突起43は、図1の全体図に示すように、ピストン保持部材30のシャフト32に形成した環状溝32d部分を貫通させるとともに、ヘッド32eを抜け止め保持する。すなわち、ヘッド32eと環状突起43とは、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40との間を抜け止め保持する抜け止め部として機能する。
特に、本実施形態では、図3に示すように、環状突起43の内周面43fが後方に向かって縮径するテーパ面で構成されている。これにより、ヘッド32eを開口部A2に通して環状突起43の上端(後端)に容易に組み付けることができる。また、環状突起43は、内部空間R1に設けられることで、遊び空間41sを形成する。図1の全体図に示すように、遊び空間41sは、ヘッド32eを、環状突起43よりも後端側の内部空間R1に収容することにより、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40とを軸線Oに沿って相対的に前後に移動させることができる。これにより、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40とを連結してプランジャPを形成するとともに、ヘッド32eと環状突起43との間の軸線O方向に形成された隙間分だけ、ピストン保持部材30とプランジャ操作部材40を、相対的に軸線Oに沿って移動させることができる。
また、図3に示すように、プランジャ操作部材40の本体41には、内部空間R1よりも大きい内径を有する内部空間R2に通じる複数の切欠き44が形成されている。切欠き44は、プランジャ操作部材40の前端40aから後方に向かって内部空間R1に至るまで伸びている。本実施形態では、切欠き44は、アーム33に対応して軸線Oを挟んで向かい合う2箇所の位置に形成されている。切欠き44は、図2に示すように、アーム33の横幅よりも僅かに広い幅を有し、アーム33を動作可能に収容することで、アーム33の径方向に沿った動きを保証する。
またプランジャ操作部材40の本体41には、図2の拡大図に示すように、切欠き44に収容されたアーム33が突き当たる突き当たり端部45が設けられている。この突き当たり端部45は、アーム33を押圧する押圧部として形成されている。突き当たり端部45は、アーム33の後端33eに接触することで、アーム33をピストン30pとプランジャ操作部材40との間に拘束することができる。本実施形態は、図1の拡大図に示すように、突き当たり端部45は、突き当たり端面45aと、この突き当たり端面45aに繋がる突き当たり側面45bで形作られている。本実施形態では、突き当たり端面45aは、図1の拡大図に示すように、平坦な面として形成されている。突き当たり端面45aは、ピストン保持部材30のアーム33に設けた段差底面36aを受圧面として、この段差底面36aを押圧する押圧面として機能する。すなわち、プランジャ操作部材40に設けた突き当たり端面45aは、プランジャ操作部材40を押し込むことで、ピストン保持部材30の段差底面36aを押圧する。これにより、プランジャ操作部材40を押し込めば、ピストン保持部材30をシリンジ10内に押し込むことができる。
また、突き当たり側部45は、図1の拡大図に示すように、その突き当たり側面45bが軸線Oに沿って後方に向かって伸びることで等しい厚さを有する凸部として形成されている。さらに突き当たり端部45は、図1の拡大図に示すように、後方に向かうに従って径方向外向きに傾斜する傾斜面46を介して本体41の外面に繋がる。
加えて、プランジャ操作部材40は、図2に示すように、本体41に、軸線Oを挟んで反対側の位置にそれぞれ、複数の係止部47が一体に設けられている。係止部47は、周方向において切欠き44の相互間の2箇所の位置に複数配置されている。係止部47は、プランジャ操作部材40から一体に***する***部としてなる。径方向に対向する2つの係止部47の間の最大外径寸法は、図2の拡大図に示すように、延長筒50の後端開口部A1の内径よりも大きくなるように設定されている。これにより、係止部47は、延長筒50の後端50eに引っ掛かることで、延長筒50に対して係止される。
また本実施形態では、プランジャ操作部材40に設けた係止部47と延長筒50の後端50eとの引っ掛かりは、係止部47が延長筒50の後端50eを所定の力以上で押圧したときに解除できるように設定されている。本実施形態では、径方向に対向する2つの係止部47の間の最大外径寸法と、延長筒50の突起53の内径との差分(延長筒50の後端50eに接触する量)を調整することで、引っ掛かりが所定の力で解除できるように設定している。すなわち、径方向に対向する2つの係止部47の間の最大外径寸法と延長筒50の突起53の内径は、プランジャPを押し込んで、係止部47が一定以上の力で延長筒50の後端50eを押圧すると、この延長筒50の突起53を乗り越えられるように設定されている。これにより、係止部47は、延長筒50の後端50eに対して乗り越え可能に係止される。なお、引っ掛かりを解除するのに必要な所定の力は、使用者、内容物、使用目的等に応じて、適宜設定することができる。
加えて、本実施形態では、周方向における切欠き44の相互間の2箇所の位置に配置された複数の係止部47は、図2に示すように、軸線O方向に間隔を置いて配置されている。本実施形態では、係止部47は、切欠き44で分断された本体41の部分にそれぞれ、軸線O方向に間隔を置いて2箇所の位置に配置されている。より詳細には、図2の拡大図に示すように、係止部47は、軸線O方向において、摺動突起34の傾斜面34fと同等の軸方向位置に1つ(1つ目の係止部)、係止突起35とほぼ同等の軸方向位置に1つ(2つ目の係止部)設けられている。また、本実施形態では、係止部47は、本体41から縦断面でドーム状に突出する。さらに、係止部47は、図1の全体図に示すように、トラック形状(2つの半円の両端をそれぞれ、1つの直線で連結した形状)の輪郭を有する。なお、係止部47を本体41の外表面から見たときの輪郭は、トラック形状に限定されることなく、本体41の幅方向(周方向)に沿って伸びる長軸を有する楕円形状等、様々な形状を採用することができる。
ここで、本実施形態の使用方法を説明する。
使用者は先ず、図1に示す状態で、人差し指と中指を環体部51に掛けてプランジャ操作部材40の後端40bを親指で押さえて点鼻薬噴出器1を保持する。点鼻薬噴出器1のノズル20を一方の鼻孔に挿入した後は、プランジャ操作部材40を押し込む。
本実施形態では、プランジャ操作部材40に設けた係止部47が延長筒50の突起53を乗り越える力で押圧する必要があり、その押圧力が一定の力に達するまでは、1つ目の係止部47が延長筒50の突起53を乗り越えることがない。すなわち、プランジャ操作部材40を押し込む力が所定以上の力に達するまでは、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに押し込むことができないが、プランジャ操作部材40をさらに強い力で押し込めば、プランジャ操作部材40に設けた係止部47と延長筒50の突起53との引っ掛かりが解除される。
プランジャ操作部材40に設けた係止部47と延長筒50の突起53との引っ掛かりが解除されると、プランジャ操作部材40を強い力で勢いよく押し込むことができる。本実施形態では、図1の全体図に示すように、アーム33の摺動突起34は、傾斜面34fを有している。このため、摺動突起34は、図4(a)に示すように、延長筒50の突起53を乗り越えることで延長筒50内に容易に進入することができる。
詳細には、例えば、図4(a)に示すように、アーム33の摺動突起34が延長筒50の突起53により内側に押圧される。このとき、アーム33の固定端33a側の動きは、延長筒50の突起53との間で拘束される。その結果、プランジャ操作部材40の押し込みは、図4(a)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の固定端33aと自由端33eとの間で摺動突起34を起点にした内向き湾曲状の撓み変形を生じさせつつ、摺動突起34が延長筒50の突起53を摺動することで許容される。
アーム33の摺動突起34は、延長筒50の突起53を乗り越えると、延長筒50の内周面50fにより内側に押圧される。このとき、アーム33の固定端33a側の動きは、延長筒50の内周面50fとの間で拘束される。その結果、プランジャ操作部材40の押し込みは、ピストン保持部材30に設けたアーム33の固定端33aと自由端33eとの間で摺動突起34を起点にした内向き湾曲状の撓み変形を生じさせつつ、摺動突起34が延長筒50の内周面50fを摺動することで許容される。このとき、アーム33の摺動突起34は、延長筒50の突起53を乗り越えるときよりも延長筒50の内周面50fから受ける押圧が小さくなるため、プランジャ操作部材40を強い力で勢いよく押し込むことができる。
すなわち、プランジャ操作部材40に対する押圧力が一定の力に達すると、シリンジ10内のピストン保持部材30を強い力で勢いよく押し込むことができる。その瞬間、シリンジ10内の内容物Mは、ピストン保持部材30によって勢い良く短時間にシリンジ10の貫通孔10aから押し出される。このように、シリンジ10の貫通孔10aから内容物Mが勢いよく短時間に押し出されることで、ノズル20に形成された噴出口1aからは、内容物Mを一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。
なお、ピストン保持部材30の押し込みは、図1の拡大図に示すように、プランジャ操作部材40の突き当たり端面45aが、ピストン保持部材30に設けたアーム33の段差底面36aに接触することで実現される。また、ピストン保持部材30は、ピストン30pを介してシリンジ10に摺動可能に保持されている。このため、プランジャ操作部材40の突き当たり端面45aと、ピストン保持部材30に設けたアーム33の段差底面36aとが接触した状態を維持しており、プランジャ操作部材40の突き当たり端部45がアーム33の段差36に収容されていることから、アーム33の段差側面36bがアーム33の内向き変位を規制する規制部分として機能する。
これにより、プランジャ操作部材40に設けた係止部47と延長筒50の突起53との引っ掛かりが解除されたのちは、図4(b)に示すように、ピストン保持部材30のアーム33に設けた係止突起35が延長筒50の後端50eに引っ掛かって係止されるまで、噴出口1aから内容物Mを鼻孔に一定量噴出させることができる。
特に、本実施形態では、図1の拡大図で説明したように、プランジャ操作部材40を押し込んだとき、突き当たり側面45bは、ピストン保持部材30の段差側面36bで規制されることで、アーム33の自由端33e側の変形を規制した状態でピストン保持部材30を効果的に押し込むことができる。
なお、本実施形態では、ピストン保持部材30に設けたシャフト32に2つの窪み面32cを形成し、これら窪み面32cと向かい合わせにそれぞれ、アーム33を配置したことで、図4(b)に示すように、アーム33に撓み変形が生じたときも、アーム33がシャフト32に干渉することがない。このため、プランジャ操作部材40の径方向寸法を大径化させることなく、アーム33が撓み変形したときの撓み量を大きく確保することができる。
アーム33の係止突起35が延長筒50の後端50eに接触すると、ピストン保持部材30を押し込むことができなくなるので、充填空間Sに内容物Mを残した状態で1回目の噴出は終了する。この時点での充填空間Sの容量は、使用目的に応じて適宜選択できるが、例えば、噴出開始前の充填空間Sの容量の半分とする。
次いで、プランジャ操作部材40の押し込みを緩め、あるいは、解除すると、図4(c)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の固定端33a側は摺動突起34を起点に内側に変形したままであるから、アーム33の自由端33e側だけが摺動突起34を起点として内側に変形したままの固定端33a側と整列するように斜め内向きに変形(復元)する。本実施形態では、アーム33の自由端33e側が摺動突起34を起点として内向きに変形(復元)するとき、プランジャ操作部材40の突き当たり端部45は、アーム33に形成された段差側面36bに案内される。この場合、図4(c)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33は、その自由端33e側がプランジャ操作部材40を後方に押し戻しつつプランジャ操作部材40による規制から解除されることで、内向きに容易に復元させることができる。このように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の係止突起35が斜め内向きに変位することで、図4(c)に示すようにアーム33の係止突起35と延長筒50の後端50eとの係止状態が自動的に解除される。
これにより、プランジャ操作部材40の押し込みを緩め、あるいは、解除した後、再びプランジャ操作部材40を押し込めば、2回目の噴出が可能になる。
2回目の噴出を行うあたり、本実施形態では、図4(c)に示すように、プランジャ操作部材40に設けた2つ目の係止部47がアーム33の係止突起35とほぼ同等の軸方向位置に配置されていることから、アーム33の係止突起35と延長筒50の後端50eとの係止が解除された状態でも、プランジャ操作部材40に設けた2つ目の係止部47が延長筒50の突起53に係止させることができる。このため、プランジャ操作部材40が押し戻された後、再度プランジャ操作部材40を押し込むときには、プランジャ操作部材40に設けた2つ目の係止部47が延長筒50の突起53を乗り越える力で押圧する必要がある。
従って、2回目の噴出を行うときにも、1回目の噴出操作と同様、プランジャ操作部材40を大きな力で押圧する。すると、2つ目の係止部47と延長筒50の突起53との係止が解除されることで、プランジャ操作部材40を一気に押し込むことができる。このため、図4(c)に示すように、アーム33が摺動突起34を起点に復元したのちも、図5に示すように、プランジャ操作部材40の突き当たり端面45aが、ピストン保持部材30に設けたアーム33の自由端33eを押圧することにより、ピストン保持部材30を強い力で勢いよく押し込むことができる。
特に、本実施形態では、ピストン保持部材30に設けたアーム33の自由端33eに角度θのテーパをつけたため、アーム33の自由端33e側が摺動突起34を起点に復元しても、図5に示すように、アーム33の自由端33eがプランジャ操作部材40の突き当たり端面45aと平行に近い状態で接触できるので、ピストン保持部材30の押し込みを円滑に行うことができる。なお、アーム33の自由端33eは、図1の拡大図に示すような初期状態において水平面Fに対して平行な平坦面を形成することも可能である。
従って、1回目の噴出後、プランジャ操作部材40の押し込みを緩め、あるいは、解除した後、他方の鼻孔にノズル20を挿入して、プランジャ操作部材40を押し込めば、図5に示すように、噴出口1aから充填空間S内に残った内容物Mを1回目と同様、一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。
上述のように、本実施形態によれば、1つのシリンジ10に充填された内容物Mを一定の噴霧状態に保ちつつ安定的に、小分けにして取り出すことができる。また、本実施形態では、プランジャ操作部材40の押し込みを緩め、或いは、解除すると、2回目の噴出が可能になる。このため、2回目の噴出を行うときに点鼻薬噴出器1を持ち替える必要がない。従って、使用者は、内容物の小分けを片手操作で行うことができる。
加えて、本実施形態では、シリンジ10の後端(突起部)14に延長筒50を設けることにより、図1の拡大図に示すように、この延長筒50の後端50eが、シリンジ10に設けた突起部14よりも後方で、ピストン保持部材30に設けたアーム33の係止突起35を係止させるとともに、指掛け部として環体部51を機能させる。
延長筒50を設けない場合、2回目の噴出が終了した時点で、2つ目の係止部47はシリンジ10内に存在する。即ち、内容物Mの噴出が完全に終了した時点において、指掛け部として機能する環体部51の前端51fとプランジャ操作部材40の後端40bとの間の距離L1をほとんど確保することができない。このように指掛け部と操作部との距離が短いと、力が入り難く、プランジャを操作しづらい場合がある。
これに対し、本実施形態のように、延長筒50を設ければ、図5に示すように、内容物Mの噴出が完全に終了した時点においても、ピストン保持部材30に設けた2つ目の係止部47がシリンジ10よりも後方の延長筒50内に存在する。即ち、本実施形態の延長筒50を用いれば、内容物Mの噴出が完全に終了した時点においても、環体部51の前端51fとプランジャ操作部材40の後端40bとの間に、一定の距離L1を確保することができる。このように指掛け部と操作部との距離L1が長いと、力を入れ易く、噴射時に安定するため、プランジャを操作しやすい。
従って、本実施形態の点鼻薬噴出器1によれば、プランジャPに力を入れ易く容易な操作で、内容物を小分けにして取り出すことができる。加えて、本実施形態では、図1の全体図に示すように、ピストン保持部材30を収容するプランジャ操作部材40の本体41が延長筒50内に収容されるため、プランジャPのグラツキ(例えば、シャフト32の軸線O周りの動き)も防止することができる。
なお、図5において、距離L1としては例えば、1回目の噴出を行う前の未使用時において、50mm以下であって、2回目の噴出を行った後の噴出完了時において、15mm以上であることが好ましい。
図6は、本発明の第2の実施形態である点鼻薬噴出器2であって、プランジャ操作部材40を押し込む前の初期状態を一部断面で示す拡大断面図である。なお、以下の説明において、図1〜5と実質的に同一の部分は、同一の符号をもって、その説明を省略する。
本発明では、延長筒50は、環体部51とは異なる位置に指掛け部54を設けることができる。本実施形態では、指掛け部54は、シリンジ10の後端部14よりも後方に設けられている。さらに詳細には、指掛け部54は、筒本体部52の後端部に設けられている。本実施形態では、指掛け部54は、延長筒50の後端50eと同一の後端を形成するように形作られている。
点鼻薬等の小型の噴出器の場合、噴出口1aと指掛け部との間の距離が短いと、鼻孔に薬剤を噴射するときに使用者の指が自分の顔に当たってしまうことも懸念される。
これに対し、本実施形態では、図6に示すように、指掛け部54の前端54fが延長筒50の環体部51fよりも距離L2だけ後方に存在する。この場合、延長筒50の環体部51を指掛け部として機能させた場合に比べて、噴出口1aから指掛け部54までの距離を伸ばすことができる。これにより、本人が直接投与するときは本人の指が自分の顔に、他人から投与されるときは他人の指が自分の顔に当たり難くなるため、指が顔等と接触する可能性を軽減することができる。
なお、第1および第2実施形態において、係止部47は、軸線O方向において、摺動突起34とほぼ同じ位置にのみ設けることができる。すなわち、係止部47は、軸線O方向において、少なくとも一箇所に配置することができる。この変形例は、図示はしないが、プランジャ操作部材40の本体41に、軸線Oを挟んで反対側の位置にそれぞれ、1つ目の係止部47のみを設けている。即ち、係止部47は、切欠き44の相互間の2箇所の位置に配置されているとともに、プランジャ操作部材40の本体41の前端40a側であって軸線O方向において摺動突起34の傾斜面34fと同等の軸方向位置に配置されている。
さらに上記変形例では、ピストン保持部材30に設けた係止突起35と延長筒50の後端50eとの引っ掛かりは、プランジャ操作部材40を所定の力以上で押圧したときに解除できるように設定している。本変形例では、ピストン保持部材30に設けた係止突起35がアーム33の径方向外側面から突出する寸法(延長筒50の後端50eに接触する量)を調整することで、引っ掛かりが所定の力で解除できるように設定しており、例えば、図4(c)と同等の状態にて係止突起35が延長筒50の後端50eに接触する量は、他の実施形態における係止部47と延長筒50の後端50eとの係止を解除するための押圧力と同等になるように設定している。即ち、1回目と2回目の噴出は、同じ押圧力によって行えるように設定されている。但し、引っ掛かりを解除するのに必要な所定の力は、使用者、内容物、使用目的等に応じて、適宜設定することができる。
この変形例では、1回目の噴出が終了した後、プランジャ操作部材40の押し込みを解除すると、図4(c)に示すように、ピストン保持部材30に設けたアーム33の撓み変形に対する復元力によって、アーム33の自由端33e側だけが摺動突起34を起点に変形(復元)するが、図4(c)のように、ピストン保持部材30に設けたアーム33が摺動突起34を起点として斜め内向きに変形したのちも、アーム33に設けた係止突起35と延長筒50の後端50eとの引っ掛かりは維持される。このため、2回目の噴出の際も、アーム33に設けた係止突起35と延長筒50の後端50eとの引っ掛かりが解除される押圧力でプランジャ操作部材40を押し込む必要がある。すなわち、2回目の噴出の際も、プランジャ操作部材40を押し込む力が所定以上の力に達するまでは、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに押し込むことができない。
そこで、プランジャ操作部材40をさらに強い力で押し込めば、ピストン保持部材30のアーム33に設けた係止突起35と延長筒50の後端50eとの引っ掛かりが解除されることで、図5に示すように、プランジャ操作部材40をピストン保持部材30とともに強い力で勢いよく押し込むことができる。すなわち、本変形例も、2回目の噴出は、1回目の噴出と同様、ノズル20に形成された噴出口1aから、内容物Mを一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。
従って、この変形例では、図4(c)に示すように、プランジャ操作部材40の押し込みを解除した後、他方の鼻孔にノズル20を挿入して、再びプランジャ操作部材40を押し込めば、図5に示すように、2回目の噴出として、噴出口1aから充填空間S内に残った内容物Mを1回目と同様、一定の状態に保ちつつ安定的に噴出させることができる。
上述したところは、本発明の様々な実施形態および変形例であるが、本発明に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、アーム33及び切欠き44は、3以上設けることができる。特に、上述の実施形態のように、等間隔で配置すれば、軸線O周りのバランスが安定するため、良好な操作が実現できる。上述の実施形態では、定量シリンジ型噴出器を噴霧用の噴出器として説明したが、本発明に従えば、泡として噴出させ、または、通常の液体として噴出させるなど、内容物を様々な形態で噴出させることができる。また、上述した各実施形態の構成はそれぞれ、適宜、互いに置き換えて、或いは、組み合わせることができる。