JP6278379B2 - マグネシウム合金板材の製造方法並びにマグネシウム合金板材及びそれを用いたプレス成形体 - Google Patents

マグネシウム合金板材の製造方法並びにマグネシウム合金板材及びそれを用いたプレス成形体 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、制振性能に優れ、航空・宇宙部材、精密機械部材、電子機器部材、輸送機器部材等の幅広い分野で利用可能なマグネシウム合金板材の製造方法並びにマグネシウム合金板材及びそれを用いたプレス成形体に関するものであり、更に詳しくは、M1合金をはじめとする制振マグネシウム合金において、量産性を念頭に圧延条件及び熱処理条件を工夫することによって、圧延板の集合組織(結晶方位分布)を制御して可能な限りランダムな集合組織とすることで得られる、室温プレス成形が可能な制振性能に優れるマグネシウム合金板材及びその製造方法並びにそれを用いたプレス成形体に関するものである。
従来、音響関係に限らず、各種機器に関して、機器の高速化や高信頼性を実現する上で振動を制御することが不可欠となる場合が少なくない。また、振動は、しばしば生活環境の悪化を招くため、疎かにできないものとなっている。一方、省エネルギー及びCO削減の観点から、主に、輸送機器に対する軽量化が強く要求されている現状がある。こうした振動への対策と軽量化を同時に解決し得る材料として、マグネシウム合金(Mg合金)に大きな期待が寄せられている。
マグネシウム(Mg)が優れた制振性能を有することはよく知られているところであるが、機械的特性や加工性を向上させるためにマグネシウムとAlやZnとの合金化を進めると、合金成分の添加量の増加に伴って制振性能が低下するという問題があった。例えば、AZ31合金の内部摩擦は純マグネシウムの30%に満たない。これは、マグネシウム合金の制振メカニズムが転位型であり、固溶元素濃度の増加とともに、制振機構が著しく低下するためである。一般に、マグネシウム合金において、内部摩擦を純マグネシウムの50%以上に維持するためには、マグネシウムの純度が概ね99質量%以上であることが必要となる。
制振性能に優れる代表的なマグネシウム合金としては、マグネシウムに0.5〜1.0質量%のZrを添加したMg−Zr合金が知られている(例えば、非特許文献1)。また、マグネシウムに1〜1.5質量%のマンガンを添加したM1合金は、純マグネシウムの60%以上の内部摩擦特性を有するマグネシウム合金として知られている。Mg−Zr合金やM1合金が高い制振性能を保持する理由は、室温ではZrやMnがマグネシウムに僅かしか固溶しないためである。なお、ZrやMn以外にも、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素(イットリウム、セリウム、ガドリニウムなど)を添加したマグネシウム合金は制振合金となり得ることとなる。
一方、制振マグネシウム合金に限らず、マグネシウム合金が広く実用化されるためには、コスト面で室温プレス成形できるレベルまで成形性を改善することが不可欠とされている。プレス成形用展伸材は、鋳造材に比して強度特性に優れ信頼性が格段に高まることから、室温プレス成形によって低コスト化が実現した場合の潜在的需要はかなり大きいとみられている。そのため、マグネシウム合金の成形性を改善する試みが昨今活発である。
これまでに、室温プレス成形可能なマグネシウム合金として、Mg−Li合金が開発されている。しかし、Mg−Li合金には室温で1質量%以上のLiが固溶しており、制振性が期待できない上に、高価で強度や耐食性に劣るため実用的とはいえない(例えば、特許文献1)。一方、AZ系合金(Mg−Al−Zn系合金)に対しては、加工工程を工夫することでプレス成形性の大幅な向上が実現されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。しかしながら、このAZ系合金は、上述したように合金成分の添加量の増加に伴って制振特性が大きく低下するという問題があり、制振材料とはなり難い。
特開2003−226929号公報 特開2010−70821号公報 特開2010−133005号公報
制振材料−田中良平編、日本規格協会(1992)p.218 アルミニウムハンドブック(第4版)、軽金属協会編、軽金属協会発行(1989)p.98 Y.Chino,H.lwasaki and M.Mabuchi:Mater.Sci.Eng.A,Vol.466(2007)p.90
このように、これまで、室温プレス成形可能な制振性能に優れるマグネシウム合金を安価に供給することが期待されているが、前述したようにマグネシウム合金の制振性能は添加元素の増加に伴って低下する傾向があるため、制振性能を優先すれば合金化による成形性の向上は、通常、期待できない。
このような状況の中で、本発明者等は、最初に、予備実験として、マグネシウムに1.5質量%のマンガンを添加したM1合金に対し、易成形性AZ系合金の製造方法として提唱されている先行技術(特許文献2及び3)に従って圧延板を作製し、その集合組織と室温エリクセン値を測定した。その結果、それらの方法では、従来の方法と比べて成形性がある程度改善される(室温エリクセン値が概ね3から5になる)ものの、アルミニウム合金に近い室温エリクセン値6以上の達成は期待できないことが明らかとなった。
これには、M1合金が、マグネシウムへの固溶元素濃度がAZ系合金に比べて低いために異常粒成長が容易に生じること、また、圧延によって結晶底面が圧延面から傾斜した領域が生じても安定性に乏しく、最終焼鈍によって結晶底面が圧延面に平行な結晶に吸収され易いことが原因していると推察された。上述した、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を0.05〜3質量%添加したマグネシウム合金においても、同様のことが生じることが確認されている。
本発明は、M1合金をはじめとする制振マグネシウム合金において、量産性を念頭に圧延条件及び熱処理条件を工夫することによって、圧延板の集合組織(結晶方位分布)を制御して可能な限りランダムな集合組織とすることで得られる、室温プレス成形が可能な制振性能に優れるマグネシウム合金板材及びその製造方法並びにそれを用いたプレス成形体を提供することを課題とするものである。
本発明者等は、上記課題を解決することを目標として、M1合金をはじめとする制振マグネシウム合金において、異常粒成長を抑えつつ圧延時に結晶底面が傾斜する領域を増やし、更に、その領域が焼鈍後にも保持されるように、圧下率、圧延前の焼鈍温度と時間、圧延温度、及び圧延後の焼鈍温度と時間について詳細な検討を行った結果、室温成形性が著しく高まる条件があることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)マンガン又はジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.1〜1.5質量%含有するか、又は、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板を素材に用いて、
平均結晶粒径が20〜100μmとなる所定の条件で焼鈍(圧延前焼鈍)した上で温間圧延する一連の工程を1つの圧延サイクルとし、該圧延サイクルを1回或いは複数回繰り返すことにより、結晶方位分布をランダム化させ、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)の集合組織の相対強度がマンガン、ジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有する場合は、7.1以下、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素を0.1〜1.5質量%含有する場合は、5.7以下、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有する場合は、4.5以下にランダム化された結晶方位分布を有し、室温エリクセン値が6以上の室温成形性に優れたマグネシウム合金板材を得ることを特徴とするマグネシウム合金板材の製造方法。
(2)前記焼鈍(圧延前焼鈍)では、被圧延材を470〜540℃まで10分以内で昇温し、引き続き、10〜30分(470℃以上490℃未満の場合)、2〜20分(490℃以上510℃未満の場合)、1〜10分(510℃以上530℃未満の場合)、2分以下(530℃以上540℃以下の場合)保持する、前記(1)に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
(3)前記温間圧延では、圧延中の被圧延材の実温度が100〜250℃となるように、その被圧延材を100〜400℃に加熱し、ロールを室温〜200℃に加熱する、前記(1)又は(2)に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
(4)前記圧延サイクル1回当たりの温間圧延の圧下率を、1パス或いは複数パスの合計で16〜30%とする、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
(5)最終の前記圧延サイクルの後、150℃〜400℃に昇温して仕上げ焼鈍を施し、蓄積された転位を回復させるか、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織とし、同時に結晶方位分布のランダム化を促進させることにより、室温成形性に優れたマグネシウム合金板材を得る、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
(6)マンガン又はジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.1〜1.5質量%含有するか、又はカルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板材であって、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)の集合組織の相対強度がマンガン、ジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有する場合は、7.1以下、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素を0.1〜1.5質量%含有する場合は、5.7以下、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有する場合は、4.5以下にランダム化された結晶方位分布を有し、室温エリクセン値が6以上であることを特徴とするマグネシウム合金板材。
(7)前記集合組織が、未再結晶組織、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織である、前記(6)に記載のマグネシウム合金板材。
(8)前記(6)又は(7)に記載のマグネシウム合金板材を用いたプレス成形体。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を0.05〜3質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板を素材に用いて、マグネシウム合金の異常粒成長を抑えつつ、圧延時に結晶底面が傾斜する領域を増やし、更に、その領域が焼鈍後にも保持されるように、圧下率、圧延前の焼鈍温度と時間、圧延温度、及び圧延後の焼鈍温度と時間について詳細な検討を行った結果、室温成形性が著しく向上する条件があることを見出してなされたものである。本発明において、「セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.1.5質量%含有する」とは、発明の詳細な説明に具体的な化学組成を伴って記述されている特定の元素を0.1.5質量%の範囲の所定の量比で含有することを意味する。
本発明のマグネシウム合金板材の製造方法は、上記マグネシウム合金板を素材に用いて、平均結晶粒径が20〜100μmとなる所定の条件で焼鈍(圧延前焼鈍)した上で温間圧延する一連の工程を1つの圧延サイクルとして、該圧延サイクルを1回或いは複数回繰り返すことにより、結晶方位分布をランダム化させ、室温成形性に優れたマグネシウム合金板材を得ることを特徴とするものである。或いは、本発明のマグネシウム合金板材の製造方法は、上述の一連の工程から成る圧延サイクルを1回或いは複数回繰り返した後に仕上げ焼鈍をして、蓄積された転位を回復させるか、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織とし、同時に結晶方位分布をランダム化させることにより、室温成形性に優れたマグネシウム合金板材を得ることを特徴とするものである。
また、本発明は、マンガン又はジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.1.5質量%含有するか、又はカルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板材であって、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)集合組織の相対強度が従来材に比して有意に低い(マンガンもしくはジルコニウム添加合金系の場合で7.1以下、セリウム、イットリウム或いはガドリニウム添加合金系の場合で5.7以下、カルシウム添加合金系の場合で4.5以下)ランダム化された組織を有し、その組織が、未再結晶組織、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織であることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記製造方法で製造されたマグネシウム合金板材を用いたプレス成形体であることを特徴とするものである。該プレス成形体は、底面((0002)面)集合組織の相対強度を低下させたランダム化された組織を有する上記マグネシウム合金板材からなるため、比強度、比剛性及び制振性に優れている。
以下に、本発明で規定したマグネシウム合金板材の合金成分、製造方法、及びマグネシウム合金板材の有する特性値について具体的に説明する。本発明に適用されるマグネシウム合金は、同類と類推されるものを含めて一括して記述すれば、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなる化学組成を有するものである。一方、実施例に基づき個別に記述すれば、本発明に適用されるマグネシウム合金は、マンガンはジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、希土類元素(セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素)を合計0.1〜1.5質量%含有するか、又は、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなる化学組成を有するものである。
マンガン、ジルコニウム、希土類元素、及びカルシウムは、マグネシウムの高い制振性能を大きく損なうことなく、マグネシウム合金板材の強度特性を向上させる数少ない元素である。しかし、これら元素の含有量が上述した下限値に満たない場合は、強度特性に劣るだけでなく、純マグネシウム並に底面((0002)面)集合組織が強くなるため、成形性が著しく低くなる。一方、これら元素の含有量が上述した上限値を超える場合は、延性が著しく悪化する。以上のことから、本発明では、上述した合金系において、制振性、強度特性、成形性を高度に共存させるために、マンガン或いはジルコニウムのケースで0.2〜1.5質量%、希土類元素のケースで0.1〜1.5質量%、カルシウムのケースで0.05〜1.5質量%添加するこれらの上限値を〜1.5質量%にすることが重要である
圧延前焼鈍は、平均結晶粒径が20〜100μmとなる所定の条件で実施し、その後の圧延によって、できるだけ多くの変形双晶を生じさせることを目的としている。これは、双晶によって元の結晶に対して方位が大きく異なる結晶が形成されるので、変形双晶を生じさせるだけ結晶方位分布のランダム化が期待できるためである。M1合金等において、圧延による変形双晶の生成条件を調査した結果によれば、平均結晶粒径が20μm以上になると、上記ランダム化が顕著になることが判明している。また、焼鈍温度が高過ぎるケースにおいては、結晶粒の粗大化すなわち平均結晶粒径が100μmを超えたことが影響したとみられる成形性の低下が生じる。なお、平均結晶粒径が100μmを超えるケースでは、異常粒成長を伴うことが多く、所望の最終製品を得ることが難しくなる。
マンガンはジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、又は、希土類元素(セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素)を合計0.1〜1.5質量%含有するか、或いは、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有するマグネシウム合金の場合、結晶粒径の成長制御を容易とするために470〜540℃まで10分以内の短時間で昇温することが好ましく、例えば、470℃以上490℃未満の場合は10〜30分の保持時間で結晶粒径を20〜100μmに正常成長させることができる。
同様に、490℃以上510℃未満の場合は2〜20分の保持時間、510℃以上530℃未満の場合は1〜10分の保持時間、530℃以上540℃以下の場合は2分以下の保持時間が好ましいという結果を得ている。ただし、540℃を超えて昇温すると、意図して保持しなくても、異常粒成長が認められるので、適当ではない。なお、焼鈍温度を470℃未満とした場合には、必要とする保持時間が長くなるため生産性の点で好ましくない。
また、昇温時間が長すぎると、異常粒成長することがあるので、短時間(10分以内)の昇温が好ましい。このような短時間で昇温するには、使用する加熱炉の温度を10〜20℃高めに設定しておく方法が適用できる。
焼鈍後の圧延において、できるだけ多くの変形双晶を生じさせるためには、圧延中の被圧延材である試料(マグネシウム合金板)の実温度を250℃以下とすることが好ましい。圧延中の試料の実温度が250℃を超えるケースでは、圧延面に平行な底面配向を持つ動的再結晶が優先的に生じて変形双晶の生成が抑制され易く、強い底面((0002)面)集合組織を生成し易くなる。一方、圧延中の試料の実温度を100℃未満とするケースでは、結晶方位の分布は良好であるものの耳割れや表面亀裂を生じ易くなる。なお、圧延中に試料の実温度を測定することは実用上困難と推量されるため、本発明における実温度は、圧延時における試料の加熱温度とロールの加熱温度の中間温度を意味するものとする。
圧延において、温間圧延の状態に保つには、例えば試料の圧延温度を100〜250℃に保つには、ロール表面と試料を100〜250℃の同じ温度に加熱する均熱圧延が最も管理し易い。一方、潤滑剤の耐熱温度やロールヒーターの有無等の関係から、ロール表面を試料と同じ温度まで加熱できない場合は、その分の補償として試料の加熱温度を高くすることで耳割れや表面亀裂を避けることが可能である。ただし、動的再結晶の発生を極力排除するために、試料の加熱温度は400℃以下とすることが好ましい。
このように、温間圧延においては、まず試料の温度を設定し、該試料の温度との関係を考慮してロールを室温〜200℃に加熱し、圧延温度を好適に制御することが好ましい。温間圧延は、圧延前焼鈍の後、所定の温度まで素早く冷却した直後に実施するのが効率的であるが、それに限定されるものではない。例えば、一旦、室温まで冷却し、その後、所定の温度に加熱して実施しても差し支えない。ここで、本発明における温間圧延とは、「被圧延材であるマグネシウム合金において、圧延中に、再結晶や粒成長は無いか僅かであり、主にマイクロクラックが発生しないレベルの回復が生じるような条件下での圧延」を意味するものであり、具体的な温度数値によって限定されるものではない。
最終の圧延サイクルの後、AZ系マグネシウム合金の場合には、通常、再結晶を伴う300℃以上で仕上げ焼鈍が実施される。これは、変形組織のままでは、延性や成形性が大きく劣るためである。ところが、M1合金等にあっては、必ずしも再結晶組織である必要はなく、最終的な結晶方位分布が一定以上にランダム化されたものでは、圧延したままであっても室温エリクセン値6以上の高い成形性が発揮される。
しかしながら、圧延したままでは少なからず圧延中に蓄積される歪みの影響を受けるので、適切な仕上げ焼鈍を実施した方が室温エリクセン値が向上する場合が多い。よって、延性や成形性を極大化するためには、仕上げ焼鈍することが好ましい。但し、再結晶組織となるケースでは、結晶粒が粗大化し易く、これに伴って成形性が低下することに留意する必要がある。
仕上げ焼鈍を実施する際の条件は、再結晶しない150〜200℃の焼鈍温度とする場合には、120分以上保持して蓄積された転位を十分に回復させた組織とすることであるが、再結晶を伴う場合には、60分以上(200℃以上250℃未満の場合)、20分以上(250℃以上300℃未満の場合)、5分以上(300℃以上350℃未満の場合)として、400℃以下の焼鈍温度とすることが好ましい。更には、350℃以上の焼鈍温度とする場合には、50μmを超えて粒成長させないために、保持時間を長くし過ぎないことが重要であり180分以下の保持時間とすることが好ましい。なお、仕上げ焼鈍条件が組織や成形性に及ぼす影響については、後記する実施例で具体的に説明する。
圧延において、1パス当たりの圧下率(パス圧下率)については、高くした方が試料内部の変形応力が大きくなるので双晶の形成を促すと考えられ、また、圧延のパス数を少なくできるので効率的である。しかしながら、パス圧下率が高い分、試料に大きな負荷がかかるため変形帯での亀裂の発生や耳割れの拡大を生じ易い。そこで、亀裂や耳割れが発生する条件について詳細に検討した結果、パス圧下率30%以下が好ましいことが分かった。
一方、パス圧下率の下限に関しては、双晶の形成が十分となる16%以上が好ましいとの結論が得られた。なお、パス圧下率の大きい1パスの代わりに圧下率を小さくした複数パスとした場合でも1回の圧延サイクル中の合計圧下率が16〜30%であれば同等の効果が期待できる。パス圧下率が組織や成形性に及ぼす影響については、後記する実施例で具体的に説明する。
マグネシウム合金板材と比較されることの多いアルミニウム合金板材の室温エリクセン値は、5083のO材で8.3、また、6061のT4材で9.2と報告されている(非特許文献2参照)。マグネシウム合金板材については、AZ系の一般的なデータとして2.0〜5.0との報告がある(非特許文献3参照)。
本発明の製造方法によれば、マグネシウム合金板材において、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)集合組織の相対強度を、マンガンもしくはジルコニウム添加マグネシウム合金のケースで7.1以下に、希土類元素添加マグネシウム合金のケースで5.7以下に、カルシウム添加マグネシウム合金のケースで4.5以下にランダム化することが可能である。その効果として、本発明の製造方法によれば、室温エリクセン値を6以上とすることができ、一般的なAZ系合金板材を凌ぐ室温成形性が付与されたマグネシウム合金板材を得ることができる。更に、室温エリクセン値が7以上を示し、前記アルミニウム合金板材に肉薄する性能を有するマグネシウム合金板材を得ることも可能である。
ここで、「相対強度」とは、シュルツの反射法によって測定された回折強度を規格化したものである。本発明においてはすべて、被験試料自身の強度データを用いた内部規格を適用した。別の方法として、外部データ、例えば、マグネシウム合金粉末による測定データを基準とするものがあるが、両者の結果に有意な相違がないことは確認済みである。内部規格、外部規格の詳細な定義については、例えば、RIGAKU X線マニュアル、Windows(登録商標)版 Cat.N0.9258J102/P101、RINT2000/PCソフトウェア 正極点分析(ver.2.0)取扱説明書Manua1 No.MJ13203B05に説明がある。
圧延前焼鈍から温間圧延に至る工程を1つの圧延サイクルとし、その圧延サイクルを何回適用するかに関しては、1回だけでもある程度有効であることを確認している。圧延サイクルはその適用回数を多くすることが好ましく、より高い室温エリクセン値を得ることができる。ここで、圧延サイクルを3回続けて適用した場合の各圧延サイクル毎の板厚中心部における底面((0002)面)集合組織の変化を、M1合金のケースを例として図1に示した。
圧延直後の底面((0002)面)集合組織の相対強度は、圧延サイクル1回目で5.3を示し、続く2回目では相対強度に変化はなかったが、明確なダブルピークを示した。そして、圧延サイクル3回目には相対強度が6.2まで上昇したものの、ピーク位置の傾斜角が僅かながら大きくなったことで、その分、底面((0002)面)集合組織は弱まったと解釈できる。一方、圧延前焼鈍の前後の変化をみてみると、圧延サイクル1回目の後が5.3から6.5に、2回目の後が5.3から5.5に上昇したが、3回目の後には6.2から5.8に低下しており、明らかに異なる挙動がみられた。よって、高い成形性を示すものは焼鈍時の昇温によって相対強度が低下する傾向があり、同様の傾向を示すことが、成形性改善における重要な指標となる。
図1の結果から、本発明では、圧延前焼鈍の後に温間圧延する工程(圧延サイクル)を1回適用することによっても一定の効果を得ることができるが、2回以上適用することが好ましい。また、本発明で提供されるマグネシウム合金板材には、圧延したまま(圧延ままと記載することがある)のケースと仕上げ焼鈍を加えたケースがあり、更には、仕上げ焼鈍の条件によって、加工組織を多く有する場合、再結晶組織を多く有する場合、両組織を均等に有する場合がある。加工組織が優位であると、再結晶組織が優位である場合に比べて強度が高く、成形後に適宜熱処理することで組織の均質化や異方性の低減等を図ることもできるので、好都合なこともある。
また、本発明の製造方法を用いて製造したマグネシウム合金板材の制振性能評価として、片持ち式横振動法による内部摩擦測定を行った結果、調査した範囲において、集合組織の違いによる内部摩擦の有意な差は確認されなかった。また、再結晶組織と加工組織の比較においても、内部摩擦の差は僅かであり、しかも仕上げ焼鈍により解消されることが確認された。
本発明者等は、Mg−1.5質量%Mn合金(M1合金)、Mg−0.5質量%Mn合金、Mg−1.0質量%Mn合金、Mg−0.6質量%Zr合金、Mg−0.1質量%Ca合金、Mg−0.2質量%Y合金、Mg−0.2質量%Ce合金、並びに、Mg−0.2質量%Gd合金に着目し、それらからなるマグネシウム合金板を素材に用いて、圧延条件と熱処理条件の様々な検討を行った。
その結果、具体的には、素材となるマグネシウム合金板を470〜540℃まで加熱・焼鈍して平均結晶粒径を20〜100μmとし、それを実温度100〜250℃の範囲内において合計圧下率で16〜30%の圧延をするという、圧延前焼鈍の後に温間圧延する工程(圧延サイクル)を、1回、好ましくは複数回繰り返す製造方法を確立するとともに、その後、必要に応じ150〜400℃で焼鈍して仕上げる製造方法についても確立した。
これにより、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した底面((0002)面)集合組織の相対強度を従来材よりも低下させる(MnもしくはZr添加合金の場合で7.1以下、希土類元素添加合金の場合で5.7以下、Ca添加合金の場合で4.5以下)ことができ、室温エリクセン値が6以上の制振性に優れたマグネシウム合金板材が得られることが分かった。
したがって、本発明によれば、M1合金のようなマグネシウムの純度が比較的高い合金において、圧延前焼鈍の後に温間圧延する工程(圧延サイクル)を適宜繰り返し、必要に応じ仕上げ焼鈍する一連の工程を適用し、それらの温度と時間を制御することで、結晶方位分布をランダム化し、その結果、アルミニウム合金に匹敵する室温成形性を実現することができることが分る。
上述したように、従来技術における問題点(課題)として、以下の事項がある。すなわち、軽量制振材料として、Mg−Zr合金とMg−Mn合金(M1合金)が知られているが、これらの合金は成形性に乏しいことが問題となっている。マグネシウム合金板材の成形性の改善についてはMg−Li合金板材やAZ系合金板材を対象とした先行技術があるが、それらの合金板材は制振性に劣るという問題があり、AZ系合金板材に対する成形性改善技術では、M1合金板材の成形性は改善しない。
これに対して、本発明によれば、例えば、マンガン又はジルコニウム、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素、又はカルシウムを上限値で1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板を素材に用いて、平均結晶粒径が20〜100μmとなる所定の条件で焼鈍した上で温間圧延する工程を1サイクル或いは複数サイクル繰り返した後、必要に応じ仕上げ焼鈍して蓄積された転位を回復させた組織とするか、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織とし、同時に結晶方位分布をランダム化させることにより、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)集合組織の相対強度が従来材に比して有意に低い(マンガンもしくはジルコニウム添加合金系の場合で7.1以下、希土類元素添加合金系の場合で5.7以下、カルシウム添加合金系の場合で4.5以下)ランダム化された組織を有する、成形性に優れたマグネシウム合金板材を製造することができる。そして、本発明の応用分野としては、制振性が必要とされる各種筐体や輸送機器部材への適用が例示される。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)マンガン又はジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.05〜1.5質量%含有するか、又は、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板材の集合組織(結晶方位分布)をランダム化することができ、これにより内部摩擦が純マグネシウムの50%以上で、室温エリクセン値が6以上の優れた室温成形性を有する制振性に優れるマグネシウム合金板材を提供することができる。
(2)このことにより、例えば、航空・宇宙用部材、精密機械部材、電子機器部材、輸送機器部材等の幅広い分野で利用されることが期待できる、低コストで制振性に優れたマグネシウム合金板材からなるプレス成形体を提供することができる。
本発明に基づく圧延前焼鈍の後に温間圧延する工程(圧延サイクル)を、3回繰り返した場合の、板厚中心部における底面((0002)面)集合組織の変化を例示した。対象は実施例3の製造過程中に当たる。 本発明に基づいて製造した実施例14と、先行技術に基づいて製造した比較例1の、仕上げ焼鈍後の光学顕微鏡組織と板厚中心部における底面((0002)面)集合組織を示した。 実施例1、2及び比較例5のデータを用いて、圧延前の焼鈍温度と、最終的に得られた試料の室温エリクセン値及び底面((0002)面)集合組織の相対強度との関係を示した。実施例1、2及び比較例5は、パス圧下率30%、圧延時の試料加熱温度250℃、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返し3回、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、圧延前の焼鈍温度のみ変えて作製されたものである(焼鈍時間2分)。 実施例3、6〜8、14、15のデータを用いて、圧延時の試料加熱温度と、最終的に得られた試料の室温エリクセン値及び底面((0002)面)集合組織の相対強度との関係を示した。実施例3、6〜8、14、15は、圧延前焼鈍500℃・2分、パス圧下率24%、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返し4回、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、圧延時の試料加熱温度のみ変えて作製されたものである。 実施例8〜13のデータを用いて、仕上げ焼鈍温度(焼鈍時間120分)と、最終的に得られた試料の室温エリクセン値及び底面((0002)面)集合組織の相対強度との関係を示した。実施例8〜13は、圧延前焼鈍500℃・2分、パス圧下率24%、圧延時の試料加熱温度200℃、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返し4回の共通条件のもと、仕上げ焼鈍温度のみ変えて作製されたものである。 実施例2、8、16のデータを用いて、パス圧下率と、最終的に得られた試料の室温エリクセン値及び底面((0002)面)集合組織の相対強度との関係を示した。実施例2、8、16は、圧延前焼鈍600℃、2分、圧延時の試料加熱温度250℃、ロール温度100℃、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、パス圧下率のみ変えて作製されたものであり、同様に、実施例3、17、18のデータも併せて掲載した。これらは、圧延時の試料加熱温度を150℃としたグループである。 実施例3、19〜21のデータを用いて、本発明を適用した圧延サイクルの繰り返し回数と、最終的に得られた試料の室温エリクセン値及び底面((0002)面)集合組織の相対強度との関係を示した。実施例3、19〜21は、圧延前焼鈍500℃・2分、パス圧下率24%、圧延時の試料加熱温度150℃、ロール温度100℃、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、圧延サイクル数のみ変えて作製されたものである。トータルの圧延パス数を4パスとし、不足する部分は前もって熱間による予圧延を実施した。 実施例3と比較例8のエリクセン試験後の試料写真を例示した。 圧延材の光学顕微鏡による組織写真を示した。(B)の写真が実施例3に、(C)の写真が実施例23に該当する。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以降の説明において、「底面集合組織」は特に断りのない限り(0002)面集合組織を意味する。
以下の説明において、M1合金に関連した本発明の代表的な実施例及び比較例(実施例1〜24、比較例1〜10)について、それらの製造条件(予圧延の条件、1回の圧延サイクルにおける圧延前焼鈍条件及び圧延条件、圧延サイクル数、仕上げ焼鈍条件)を表1に示した。また、最終圧延パス前の圧延前焼鈍後と仕上げ焼鈍後の平均結晶粒径、並びに仕上げ焼鈍後の試料で得られた「室温エリクセン値」と「底面集合組織の相対強度」を表2に記載した。
同様に、Mn濃度の異なるケースとして、Mg−0.5質量%Mn合金、Mg−1.0質量%Mn合金、純マグネシウムの各々について、製造条件と、仕上げ焼鈍後に得られた室温エリクセン値及び底面集合組織の相対強度を纏めて表3に示した(実施例25、26、比較例11)。
更に、Mg−0.6質量%Zr合金、Mg−0.1質量%Ca合金、Mg−0.2質量%Y合金、Mg−0.2質量%Ce合金、及び、Mg−0.2質量%Gd合金における本発明の代表的な実施例と比較例(実施例27〜46、比較例12、13)について、それらの製造条件、最終圧延パス前の圧延前焼鈍後と仕上げ焼鈍後の平均結晶粒径、並びに仕上げ焼鈍後の試料で得られた室温エリクセン値と底面集合組織の相対強度を表4に纏めて示した。
(1)供試材と試料
主たる供試材として、厚さ3.0mmのM1合金押出板(化学組成:質量%で、Mn:1.47、Si:0.0169、Cu:0.0011、Ni:0.0002、Fe:0.0048、残Mg)を用いた。ここで、Si、Cu、Ni及びFeは不可避不純物である。そのM1合金押出板から、押出方向を長手方向として、125mm×65mmの試料を切り出し、圧延ビレットとした。後記する(5)〜(11)において、供試材(M1合金押出板)を利用して、圧延プロセス条件(先行技術との比較、圧延前焼鈍条件、圧延時の試料加熱温度、仕上げ焼鈍条件、パス圧下率、圧延サイクル数)が、材料特性に及ぼす影響を調査した。
また、Mn添加量が材料特性に及ぼす影響を調査するために、Mn量が異なる試料を製造した。上記供試材と同組成のM1合金インゴット及び純マグネシウムインゴット(化学組成:質量%で、Mn:0.01、Si:0.005、Cu:0.002、Ni:0.0002、Fe:0.0023、残Mg)を、高周波誘導炉により加熱・溶解し、凝固させることにより、Mn濃度0.5質量%、1.0質量%のインゴットを製造した。上記インゴット(50×30×50mm)を、熱間押出し(押出し温度400℃、押出し速度5mm/min、押出し比6)に供し、押出板材(断面積:50×5mm)を製造した。この押出板材より、60×50×5mmの試験片を切出し、それらの試験片を圧延ビレットとした。
更に、供試材として、厚さ2.5mmの純マグネシウム押出板(化学組成:質量%で、Al:0.0095,Mn:0.0092,Zn:0.0093,Si:0.0189,Cu:0.0039,Ni:0.0021,Fe:0.0049,残Mg)を用い、その純マグネシウム押出板から、押出方向を長手方向として、100mm×65mm×2.5mmの試料を切り出し、圧延ビレットとした。後記する(12)において、Mn濃度が材料特性に及ぼす影響を調査した。
Mg−Mn系合金とは別の供試材として、以下に示す各インゴット(50×30×50mm)を準備した。
1)Mg−0.6質量%Zr合金(化学組成:質量%で、Zr:0.605、Al:0.003、Mn:0.0179、Si:0.0078、Cu:0.002、Ni:0.0019、Fe:0.0048、Zn:0.0058、Ca:0.0017、残Mg)のインゴット、
2)Mg−0.1質量%Ca合金(化学組成:質量%で、Ca:0.105、Al:0.003、Mn:0.0168、Si:0.0077、Cu:0.002、Ni:0.0025、Fe:0.0045、Zn:0.0066、残Mg)のインゴット、
3)Mg−0.2質量%Y合金(化学組成:質量%で、Y:0.199、Al:0.003、Mn:0.0177、Si:0.0073、Cu:0.002、Ni:0.0022、Fe:0.0044、Zn:0.0062、Ca:0.0017、残Mg)のインゴット、
4)Mg−0.2質量%Ce合金(化学組成:質量%で、Ce:0.195、Al:0.035、Mn:0.0309、Si:0.0375、Cu:0.004、Ni:0.0015、Fe:0.0055、Zn:0.0048、Ca:0.002、残Mg)のインゴット、及び、
5)Mg−0.2質量%Gd合金(化学組成:質量%で、Gd:0.198、Al:0.003、Mn:0.0181、Si:0.0076、Cu:0.002、Ni:0.0021、Fe:0.0049、Zn:0.0056、Ca:0.0016、残Mg)のインゴット。
各インゴット(50×30×50mm)を、熱間押出し(押出し温度400℃、押出し速度5mm/min、押出し比6)に供し、押出板材(断面積:50×5mm)を製造した。この押出板材より、60×50×5mmの試験片を切出し、それらの試験片を圧延ビレットとした。後記する(14)〜(16)において、圧延プロセス条件(圧延前焼鈍条件、圧延温度、仕上げ焼鈍条件)が、材料特性に及ぼす影響を調査した。
(2)圧延及び焼鈍
切り出した圧延ビレットに対し、必要に応じて熱間での予圧延を施して厚みを調整した後、表1、3、4に例示した条件の圧延前焼鈍と温間圧延を、最大6回繰り返して厚さ1.0mmとし、最後に仕上げ焼鈍する一連の工程を行った。圧延方向は長手方向とした。焼鈍には、一般的なマッフル炉を使用し、ビレットに接触させた熱電対によって、温度測定を行った。マッフル炉の温度は、所定の試料焼鈍温度よりも10℃程度高く設定するのが、効率的に昇温するのに有効であった。所定の焼鈍温度に達すると同時に、或いは1〜60分保持した後に強制的に空冷し、概ね所定の試料温度になったところで、所定温度に保たれた別のマッフル炉に投入した。
圧延には、ロール直径160mm、ロール幅250mm、周速10m/分の2段圧延機を利用し、試料温度が一定になるのを見計らって迅速に行った。圧延機のロールは内部ヒーターを備えており、ロール表面を室温〜200℃に加熱した状態で圧延を実施することができる。試料加熱温度とロール温度が異なる場合、圧延中の試料温度(圧延温度)を実測することは困難であるので、両者の中間温度を代用することとした。潤滑には、エマルジョンタイプの潤滑剤を採用し、ロールに塗布する方法で行った。
(3)集合組織測定
集合組織を把握するために、X線回折を利用したシュルツの反射法によって、結晶底面((0002)面)の配向を解析し、極点図に示した。この極点図において、中心は圧延面に垂直な方位であり、上下方向が圧延方向であり、極点図上の位置は、結晶底面の軸方向に対応しており、その向きに傾斜した底面に基づく回折強度を等強度線で表した。ここで、回折強度の最高値が相対強度であって、これは前述の内部規格で規格化した値である。この相対強度が低く、等強度線が疎になるほど、結晶方位分布がランダム化したことになる。底面集合組織の相対強度を表2〜4に示した。併せて表2と表4には、最終圧延パス前の圧延前焼鈍後と仕上げ焼鈍後の平均結晶粒径を例示した。表中、「−」は未測定を示す。
(4)成形性評価
室温成形性の指標として、エリクセン試験を行った。試験方法は、JIS B7729及びJIS Z2274に準ずるが、試料に限りがあったため、試験片には、直径50mmに打ち抜いた円板を用いた。一部の試料で直径の影響を調べた結果によれば、直径60mmの試験片と比較して、評価に支障がないことを確認した。この試験では、試験片の厚み方向に亀裂が貫通するまでのパンチ移動距離をエリクセン値とするため、エリクセン値が大きいほど成形性が高いことになる。表2〜4中に、室温エリクセン値を記載した。
(5)先行技術との比較(実施例14及び比較例1〜4)
本発明の典型的な実施例である実施例14の仕上げ焼鈍後の試料の光学顕微鏡組織と底面((0002)面)の極点図を、先行技術(特許文献3)に基づく比較例1のケースの試料とともに、図2に示した。比較例1の試料は、圧延温度と仕上げ焼鈍温度が高いことを特徴としており、実施例14の試料に比べて、双晶の量が少なく、底面集合組織の相対強度が高くなっていることが分かる。別の先行技術(特許文献2)に基づく比較例3についても、同様に底面集合組織の相対強度が高かった。比較例3の製造プロセス上の特徴は、圧延前焼鈍温度が若干低く、パス圧下率が小さいことに加えて、仕上げ焼鈍温度が大幅に高いことである。
実施例14の試料では、圧延時の試料加熱温度を低くし、仕上げ焼鈍温度を低くしたことで、底面集合組織が相対的に弱められた結果、室温エリクセン値が、比較例1及び3の試料に比べて、著しく向上したといえる。また、比較例1及び3の仕上げ焼鈍条件を実施例14と同じにしたケースの試料について調べた結果においても、それらのエリクセン値は実施例14の試料に大きく及ばなかった。
(6)圧延前焼鈍条件の影響(実施例1、2、5及び比較例5、6)
実施例1、2及び比較例5の試料は、パス圧下率30%、圧延時の試料加熱温度250℃、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返しが3回、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、圧延前焼鈍温度のみ変えて製造された(焼鈍時間2分)。図3に示す結果から明らかなように、得られた試料の室温エリクセン値は、圧延前焼鈍温度が500〜540℃のときに高く、温度を下げると低下した。圧延前焼鈍温度の低下と底面集合組織の相対強度の上昇が一致していることから、圧延前焼鈍温度が低いと底面集合組織が強まり、その結果、エリクセン値が低下したといえる。これは、圧延前焼鈍温度が低いと結晶粒の成長が不充分となり、その後の圧延時に変形双晶があまり形成されないためである。
一方、540℃・10分の圧延前焼鈍を行った比較例6の試料においては、540℃・2分焼鈍の実施例1及び500℃・2分焼鈍の実施例2のケースの試料に比べて、底面集合組織の相対強度に差はないものの、エリクセン値が大きく低下した。比較例6の試料の圧延前焼鈍直後の組織を光学顕微鏡で観察したところ、500℃のケースではみられないような異常粒成長が観察されたことから、そのことが、最終的な成形性の低下の原因となったことは否定できない。これらとは別に、圧延前焼鈍を500℃・20分とした実施例5の試料では、異常粒成長もなく、比較的高いエリクセン値が得られた。表2に記したように、圧延前焼鈍直後の平均結晶粒径が20μm未満のケースと100μmを超えるケースでは、エリクセン値が6未満であった。
(7)圧延時の試料加熱温度の影響(実施例3、6〜8、14、15、比較例10)
実施例3、6〜8、14、15、及び比較例10の試料は、圧延前焼鈍500℃・2分、パス圧下率24%、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返しが4回、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、圧延時の試料加熱温度のみ変えて製造された。図4に示す結果から明らかなように、圧延時の試料加熱温度が150℃以下では、底面集合組織に変化は生じていないが、エリクセン値は150℃をピークに低下した。この原因は特定できていないが、100℃の圧延では耳割れが顕著であり、100℃未満の圧延は困難であった。このことから、マイクロクラック等の欠陥が発生している可能性がある。一方、200℃以上では、底面集合組織が徐々に強まり、エリクセン値が低下した。
(8)仕上げ焼鈍温度の影響(実施例3、4、8〜13、22〜24、比較例7、9、10)
実施例8〜13、22及び比較例7の試料は、圧延前焼鈍500℃・2分、パス圧下率24%、圧延時の試料加熱温度250℃、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返しが4回の共通条件のもと、仕上げ焼鈍温度のみ変えて作製された。実施例22については、仕上げ焼鈍なしの圧延ままのケースである。図5及び表2に示す通り、仕上げ焼鈍温度150〜400℃の範囲で室温エリクセン値6以上が得られ、250℃のとき室温エリクセン値が極大値7.3を示した。しかし、仕上げ焼鈍温度300℃以上では、相対強度が低下しているにも拘わらず、室温エリクセン値は次第に低下した。これは粒成長によるものと解釈できる。
一方、実施例3、4、23、24は、圧延時試料加熱温度を150℃とし、仕上げ焼鈍温度のみ変えたグループであるが、このグループにおいても仕上げ焼鈍温度300℃以上のケースの試料では室温エリクセン値が低下した。実施例24の試料は、全体で最も高い室温エリクセン値8.0を示したものであるが、これは仕上げ焼鈍温度180℃において達成された。また、仕上げ焼鈍後の平均結晶粒径が50μmを超えた比較例7(450℃で120分焼鈍)のケースの試料では、エリクセン値が6未満であった。
比較例9と10に例示されるように、相対的に相対強度が高いものでは仕上げ焼鈍温度を高くすると更に相対強度が高くなる傾向がみられた。こうしたケースでは、圧延によって底面が傾斜した組織が形成されても、仕上げ焼鈍により容易に消失してしまうことが示唆される。
(9)パス圧下率の影響(実施例2、3、8、16〜18)
実施例2、8、16の試料は、圧延前焼鈍500℃・2分、圧延時の試料加熱温度250℃、ロール温度100℃、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、パス圧下率のみ変えて製造された。同様に、実施例3、17、18の試料は、圧延時の試料加熱温度を150℃とし、パス圧下率のみ変えて作製されたグループである。これらは、試料毎に、同じパス圧下率の圧延を繰り返して製造したため、パス圧下率によって圧延サイクル数も異なるが、3回目以降の組織変化は小さいので、圧延サイクル数の影響は無視して差し支えない。
図6に示したように、パス圧下率が16%以上で、室温エリクセン値6以上となった。しかし、パス圧下率が24%〜30%のケースの試料に比べて、16%のケースの試料では、底面集合組織の相対強度が高まり、室温エリクセン値が低下した。また、本発明者等は、30%を超えるパス圧下率についても検討しているが、30%を超えると、圧延時に、マイクロクラックや著しい耳割れを生じることや、その後の焼鈍時に、異常粒成長が問題となるため、得策ではない。以上のことから、パス圧下率は16〜30%が好ましい。
(10)圧延サイクル数の影響(実施例3、19〜21)
実施例3、19〜21の試料は、圧延前焼鈍500℃・2分、パス圧下率24%、圧延時の試料加熱温度150℃、ロール温度100℃、仕上げ焼鈍200℃・120分の共通条件のもと、本発明を適用した圧延サイクル数のみ変えて製造されたグループである。予圧延(熱間)を含めたトータルの圧延パス数は、すべてのケースで4パスとした。これらのグループの試料は、図7に示したように、圧延サイクル数の増加に伴って、底面集合組織の相対強度が低下し、室温エリクセン値が向上した。圧延サイクルが1回の適用でも、6以上の室温エリクセン値を得られたが、2回以上適用することがより効果的であった。
(11)強度特性及びエリクセン試験後の写真の一例
強度特性の一例として、高い室温エリクセン値(7.6)を示した実施例3の試料と、比較的低い室温エリクセン値(5.3)を示した比較例8の試料について、それらの引張試験結果を表5に示した。実施例3の試料は、比較例8の試料に比べて、引張強度と耐力で劣る面があるが、伸び(特に、不均質伸び)が大きく、延性に優れている。実施例3と比較例8のエリクセン試験後の試料写真を、図8に示した。
(12)Mn濃度の影響(実施例25、26、比較例11)
Mn濃度の異なるケースについて、Mg−0.5質量%Mn合金、Mg−1.0質量%Mn合金、純マグネシウムの試料作製条件と、仕上げ焼鈍後に得られた試料の室温エリクセン値及び底面集合組織の相対強度については、表3に示した通りである。
実施例25、26は、圧延前焼鈍500℃・2分、圧延時の試料加熱温度200℃、パス圧下率23%、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返しが6回、仕上げ焼鈍200℃・120分の条件のもと、異なる組成の試料(Mg−0.5質量%Mn合金、Mg−1.0質量%Mn合金)を圧延し、その特性を調査した結果である。実施例25、26より、本発明により規定されたMn濃度にあって、本発明の製造方法により製造すれば、底面相対強度は低下し、室温エリクセン値6以上の易成形性が発現することが分かる。
なお、比較例11は、圧延前焼鈍450℃・2分、圧延時の試料加熱温度250℃、パス圧下率20%、ロール温度100℃、圧延サイクルの繰り返しが4回、仕上げ焼鈍200℃・120分の条件のもと、純マグネシウムを圧延し、その特性を調査した結果である。比較例11以外にも、純マグネシウムに対して、様々な製造条件について検討しているが、比較例11が最良の結果であったことを付記しておく。したがって、本発明により規定されたMn濃度よりも低いMn濃度であると、本発明により規定された圧延プロセスで材料を作製しても、室温エリクセン値6以上の易成形性は得られないことが推察される。
(13)圧延材組織の比較
本発明の圧延材において、仕上げ焼鈍条件の異なるケースの試料について、光学顕微鏡による組織写真を図9に示す。図中、(A)は圧延したまま(圧延まま)の場合、(B)は(A)に対して200℃・2時間の仕上げ焼鈍を適用した場合、(C)は同じく300℃・2時間の仕上げ焼鈍を適用した場合のものである。なお、(B)の写真が実施例3に、(C)の写真が実施例23に当たる。
これらの光学顕微鏡組織から分かるように、(A)の圧延したままでは、個々の結晶粒を同定できないほどの著しい加工変形組織を呈しているのに対して、(B)の200℃・2時間の焼鈍では、僅かな再結晶を伴った回復組織となり、不規則な形状をした結晶粒をみることができ、更に(C)の300℃・2時間焼鈍した場合には、再結晶組織となり、等軸の結晶を明確に同定することができる。以上のことは、他の実施例においても同様であり、150℃〜200℃での2時間焼鈍では(B)の組織、250℃以上の2時間焼鈍では(C)の組織に近いことが判明した。
(14)Mg−0.6質量%Zr合金の場合(実施例27)
M1合金において比較的高い室温エリクセン値が得られた作製条件(圧延前焼鈍500℃・2分、圧延時の試料加熱温度200℃、ロール温度100℃、パス圧下率24%、圧延サイクルの繰り返しが4回、仕上げ焼鈍200℃・120分)に従って、Mg−0.6質量%Zr合金圧延板を作製したところ、底面集合組織の相対強度と室温エリクセン値は各々7.1と6.0を示し、M1合金と同等の結果を得ることができた。
(15)Mg−0.1質量%Ca合金の場合(実施例28〜32、比較例12)
圧延前焼鈍温度と試料加熱温度をともに400℃とし、仕上げ焼鈍温度を150℃とした比較例12のケースの試料では、底面集合組織の相対強度と室温エリクセン値が各々4.9と5.5であったのに対し、圧延前焼鈍温度を500℃、試料加熱温度を200〜300℃、ロール温度を100〜150℃、仕上げ焼鈍温度を300〜350℃としたケースの試料においては、底面集合組織の相対強度が4.1以下に低下し、室温エリクセン値が6.3〜8.2の高い値を示した。低い相対強度と高いエリクセン値が得られる製造条件をM1合金の場合と比較してみると、仕上げ焼鈍条件の最適値が高めであるものの、よい一致がみられた。
(16)Mg−0.2質量%Y合金、Mg−0.2質量%Ce合金、及び、Mg−0.2質量%Gd合金の場合(実施例33〜46、比較例13)
Mg−0.1質量%Ca合金のケースと同様に、圧延前焼鈍温度と試料加熱温度をともに400℃とし、仕上げ焼鈍温度を150℃とした比較例13のケースの試料では、底面集合組織の相対強度と室温エリクセン値が各々6.2と5.4であったのに対し、圧延前焼鈍温度を500℃、試料加熱温度を200〜300℃、ロール温度を100〜150℃としたケースの試料においては、仕上げ焼鈍温度の150〜350℃に渡って、底面集合組織の相対強度が5.7以下に低下するとともに、室温エリクセン値が6.0〜8.1に高まった。Mg−0.2質量%Y合金、Mg−0.2質量%Ce合金、及び、Mg−0.2質量%Gd合金についても、低い相対強度と高いエリクセン値が得られる製造条件において、M1合金の場合とよい一致がみられた。
以上詳述した通り、本発明は、マグネシウム合金板材の製造方法並びにマグネシウム合金板材及びそれを用いたプレス成形体に係るものであり、本発明により、室温成形性に優れるマグネシウム合金板材、その製造方法に関する新技術・新製品を提供することができる。本発明は、既存の圧延ラインで製造できるため、コストアップは僅かであり、制振性が必要とされる各種筐体や輸送機器部材等への適用が広がることを可能とするものとして有用である。

Claims (8)

  1. マンガン又はジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.1〜1.5質量%含有するか、又は、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板を素材に用いて、
    平均結晶粒径が20〜100μmとなる所定の条件で焼鈍(圧延前焼鈍)した上で温間圧延する一連の工程を1つの圧延サイクルとし、該圧延サイクルを1回或いは複数回繰り返すことにより、結晶方位分布をランダム化させ、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)の集合組織の相対強度がマンガン、ジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有する場合は、7.1以下、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素を0.1〜1.5質量%含有する場合は、5.7以下、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有する場合は、4.5以下にランダム化された結晶方位分布を有し、室温エリクセン値が6以上の室温成形性に優れたマグネシウム合金板材を得ることを特徴とするマグネシウム合金板材の製造方法。
  2. 前記焼鈍(圧延前焼鈍)では、被圧延材を470〜540℃まで10分以内で昇温し、引き続き、10〜30分(470℃以上490℃未満の場合)、2〜20分(490℃以上510℃未満の場合)、1〜10分(510℃以上530℃未満の場合)、2分以下(530℃以上540℃以下の場合)保持する、請求項1に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
  3. 前記温間圧延では、圧延中の被圧延材の実温度が100〜250℃となるように、その被圧延材を100〜400℃に加熱し、ロールを室温〜200℃に加熱する、請求項1又は2に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
  4. 前記圧延サイクル1回当たりの温間圧延の圧下率を、1パス或いは複数パスの合計で16〜30%とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
  5. 最終の前記圧延サイクルの後、150℃〜400℃に昇温して仕上げ焼鈍を施し、蓄積された転位を回復させるか、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織とし、同時に結晶方位分布のランダム化を促進させることにより、室温成形性に優れたマグネシウム合金板材を得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金板材の製造方法。
  6. マンガン又はジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有するか、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素であって、室温におけるマグネシウムへの固溶限が1質量%未満の元素を合計0.1〜1.5質量%含有するか、又はカルシウムを0.05〜1.5質量%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなるマグネシウム合金板材であって、X線回折(シュルツの反射法)によって測定した板厚中心部における底面((0002)面)の集合組織の相対強度がマンガン、ジルコニウムを0.2〜1.5質量%含有する場合は、7.1以下、セリウム、イットリウム又はガドリニウムを主成分とする希土類元素を0.1〜1.5質量%含有する場合は、5.7以下、カルシウムを0.05〜1.5質量%含有する場合は、4.5以下にランダム化された結晶方位分布を有し、室温エリクセン値が6以上であることを特徴とするマグネシウム合金板材。
  7. 前記集合組織が、未再結晶組織、或いは平均結晶粒径が50μm以下の再結晶組織である、請求項6に記載のマグネシウム合金板材。
  8. 請求項6又は7に記載のマグネシウム合金板材を用いたプレス成形体。
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