JP5892212B2 - マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金板、マグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、筐体や各種の部品などの材料に適したマグネシウム合金板、この合金板を用いたマグネシウム合金部材、及びマグネシウム合金板の製造方法に関するものである。特に、低温での耐衝撃性に優れるマグネシウム合金板及びマグネシウム合金部材に関するものである。
マグネシウムに種々の添加元素を含有したマグネシウム合金が、携帯電話やノート型PCといった携帯電子機器類の筐体や自動車部品などの部材の材料に利用されてきている。
マグネシウム合金は、六方晶の結晶構造(hcp構造)を有するため常温での塑性加工性に乏しいことから、上記筐体などのマグネシウム合金部材は、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材が主流である。最近、ASTM規格におけるAZ31合金からなる板材にプレス加工を施して、上記筐体を形成することが検討されている。特許文献1は、ASTM規格におけるAZ91合金相当の合金からなる圧延板であって、プレス加工性に優れる板材を提案している。
特開2007-098470号公報
マグネシウム合金は、軽量で、比強度、比剛性に優れることから、0〜30℃程度の常温環境だけでなく、氷点下となる寒冷地や冷凍倉庫などでの使用が望まれる。しかし、従来、このような低温環境におけるマグネシウム合金の機械的特性について十分に検討されていなかった。
マグネシウム合金の鋳造材は、マグネシウム合金の圧延材やプレス成形された部材に比較して強度に劣る。また、本発明者らが調べたところ、AZ31合金のプレス部材も、低温環境における強度が不十分であり、耐衝撃性に劣る。
一方、特許文献1に記載されるようなAZ91合金からなる圧延板や、この圧延板にプレス加工を施したプレス部材は、AZ31合金からなる板やAZ31合金のプレス部材よりも強度が高い。しかし、本発明者らが調べたところ、AZ91合金からなる圧延板やこの圧延板にプレス加工などの塑性加工を施した部材であっても、低温環境下において、耐衝撃特性を十分に有していない場合があるとの知見を得た。
そこで、本発明の目的の一つは、低温環境下であっても耐衝撃性に優れるマグネシウム合金部材、及びこの部材の素材に適したマグネシウム合金板を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記本発明マグネシウム合金板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、種々の条件でマグネシウム合金板を作製し、得られた板にプレス加工などの塑性加工を施してマグネシウム合金部材を作製し、これらマグネシウム合金板や部材について、低温環境下での耐衝撃特性(耐凹み性)や機械的特性を調べた。その結果、凹み難かったマグネシウム合金板は、特定の組成の晶出物が小さく、かつ少ない、との知見を得た。また、特定の組成の晶出物が小さく、かつ少ないマグネシウム合金板により得られたマグネシウム合金部材も凹み難く、この部材も素材の板と同様に、特定の組成の晶出物が小さく、かつ少ない、との知見を得た。そして、上述のようなマグネシウム合金板を製造するにあたり、上記晶出物の最大径及びその個数を制御する、即ち、晶出物の数及び粗大な晶出物を低減するには、特定の条件で連続鋳造を行い、得られた鋳造板に圧延を施すことが好ましい、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明のマグネシウム合金板は、AlとMnとを含有するマグネシウム合金からなり、上記マグネシウム合金板の厚さ方向において、当該合金板の表面から当該合金板の厚さの30%までの領域を表面領域とし、この表面領域から任意の50μm2の小領域をとったとき、この小領域に対して、AlとMnとの双方を含む晶出物であって最大径が0.1μm以上1μm以下の粒子が15個以下である。また、上記晶出物の粒子は、Mnに対するAlの質量比:Al/Mnが2以上5以下である。
上記特定の組織を有する本発明のマグネシウム合金板は、例えば、以下の本発明製造方法により、製造することができる。本発明のマグネシウム合金板の製造方法は、以下の鋳造工程と圧延工程とを具える。
鋳造工程:AlとMnとを含有するマグネシウム合金を板状に鋳造する工程。
圧延工程:上記鋳造工程により得られた鋳造板を圧延する工程。
特に、上記鋳造は、双ロール連続鋳造法により行う。また、この鋳造は、ロール温度を100℃以下とし、この鋳造により得られる鋳造板の厚さが5mm以下となるように行う。
本発明のマグネシウム合金部材は、上記本発明マグネシウム合金板にプレス加工といった塑性加工を施して形成されたものである。この合金部材も、上記本発明マグネシウム合金板と同様の組織、即ち、上記表面領域から任意の50μm2の小領域をとったとき、上記特定の大きさ及び組成の晶出物の粒子が15個以下である組織を有する。
急冷凝固が可能である双ロール連続鋳造法といった連続鋳造法では、酸化物や偏析などを低減できる上に、粗大な晶出物の生成を低減することができ、微細な晶出物とすることができる。特に、本発明製造方法では、ロール温度と鋳造板の厚さとを上記特定の範囲とすることで、冷却速度を十分に速められることで、晶出物自体の生成を低減することができる。従って、板状材において特に衝撃を受け易い表面側の領域の組織を、微細な晶出物が僅かに存在する組織とすることができる。また、晶出物が微小で少ないことから、粗大な晶出物や大量の晶出物が晶出されたことによる母相中の固溶Al量の低下が少なく、Al量低下に伴う固溶強化の低下が少ない、と考えられる。更に、急冷凝固により平均結晶粒径が小さい微細な組織を有する鋳造板が得られる。このような鋳造板は、割れや変形などの起点となる粗大な晶出物が少ないことから圧延などの塑性加工性に優れており、かつ圧延を施すことで、強度や伸びを向上することができる。
従って、上記製造方法により得られた本発明合金板は、粗大な晶出物が低減され、かつ晶出物自体も少ないことで、特に衝撃を受け易い表面側の領域において粗大な晶析出物が低減され、微細な晶出物が僅かに存在する組織、好ましくは晶出物が実質的に存在しない組織であることで、落下などの衝撃を受けても割れや亀裂などが生じ難い。また、上述のように晶出物自体が少ないことで、固溶Al量の低下を抑制することができ、Alが十分に固溶していることで高い強度を維持することができる上に、圧延により更に強度を高められる。従って、本発明合金板は、衝撃を受けても凹み難く、室温(20℃程度)に限らず、0℃未満の低温環境下でも耐衝撃特性に優れる。また、上記特定の組織を有する本発明合金板は、塑性加工性にも優れ、プレス加工などを容易に施すことができ、得られた本発明合金部材も、本発明合金板と同様に、特に衝撃を受け易い表面側の領域において晶出物が小さくかつ少ない組織を有する。そのため、本発明合金部材も、低温環境下であっても強度や伸びといった機械的特性が高く、耐衝撃性に優れる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
《組成》
本発明マグネシウム合金板及び本発明マグネシウム合金部材を構成するマグネシウム合金は、添加元素に少なくともAlとMnとを含有する種々の組成のもの(残部:Mg及び不純物)が挙げられる。Al及びMn以外の添加元素としては、Zn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Ce,Zr及び希土類元素(Yを除く)から選択された1種以上の元素が挙げられる。特に、Alを5質量%以上12質量%以下、Mnを0.1質量%以上2.0質量%以下含有することが好ましい。Al及びMnを上記範囲で含有することで、強度や伸びといった機械的特性に優れる上に、耐食性にも優れる。但し、上記元素の含有量が多過ぎると、塑性加工性の低下などを招く。Al,Mn以外の添加元素の含有量は、Zn:0.2〜7.0質量%、Si:0.2〜1.0質量%、Ca:0.2〜6.0質量%、Sr:0.2〜7.0質量%、Y:1.0〜6.0質量%、Cu:0.2〜3.0質量%、Ag:0.5〜3.0質量%、Ce:0.05〜1.0質量%、Zr:0.1〜1.0質量%、RE(希土類元素(Yを除く)):1.0〜3.5質量%が挙げられる。Al及びMnに加えて、これらの元素を含有することで、機械的特性を更に高められる。Al及びMnと、これらの元素の1種以上とを上記範囲で含有する合金の組成として、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15〜0.5質量%)などが挙げられる。特に、Alの含有量(以下、Al量と呼ぶ)が多いほど、機械的特性や耐食性に優れて好ましく、Al量が5.8質量%以上10質量%以下がより好ましい。Al量が5.8〜10質量%のマグネシウム合金として、例えば、Mg-Al-Zn系合金では、AZ61合金、AZ80合金、AZ81合金、AZ91合金、Mg-Al-Mn系合金では、AM60合金、AM100合金などが好適な組成である。とりわけAl量が8.3〜9.5質量%であるAZ91合金は、他のMg-Al系合金と比較して、耐食性や強度、耐塑性変形性といった機械的特性に更に優れる。
《マグネシウム合金板及びマグネシウム合金部材の形態》
本発明合金板は、対向する一対の一面及び他面を具え、これらの二面は、代表的には、平行関係にあり、通常、使用場面において表裏の関係にある。これら一面及び他面は、平面でも曲面でもよい。これら一面と他面との間の距離がマグネシウム合金板の厚さとなる。本発明合金板は、上述のように厚さ5mm以下の鋳造板に圧延を施して得られることから、本発明合金板の厚さは、5mm未満である。特に、本発明合金板は、プレス加工といった塑性加工が施されて、薄く軽量な筐体や各種の部材の素材に利用されることから、当該合金板の厚さは、0.3mm〜3mm程度、特に0.5mm以上2.0mm以下が好ましく、当該範囲において厚いほど、強度に優れ、薄いほど、薄型、軽量な筐体などに適する。所望の用途に応じて鋳造条件や圧延条件を調整して、最終的に得られるマグネシウム合金板の厚さを選択するとよい。
本発明合金部材は、上記マグネシウム合金板にプレス加工といった塑性加工を施してなる種々の形状、例えば、底面部と底面部から立設される側壁部とを具える]状材や箱状材などが代表的である。このようなマグネシウム合金部材においてプレス加工などの塑性加工に伴う変形が実質的に施されていない平坦な箇所の厚さは、素材となったマグネシウム合金板とほぼ同様の厚さであり、ほぼ同様の組織を有する。即ち、上記表面領域において、最大径:0.1〜1μmのAl-Mn系晶出物が15個以下/50μm2を満たす。
本発明合金板は、鋳造材を圧延した圧延板の他、この圧延板に更に熱処理やレベラー加工、研磨加工などを施した処理板が挙げられる。本発明合金部材は、上記合金板に上記プレス加工などの塑性加工が施されたものの他、塑性加工後に熱処理や研磨加工が施されたものも含む。上記圧延板や処理板、合金部材は、更に、防食処理層や塗装層を具えていてもよい。
《機械的特性》
本発明合金板や本発明合金部材は、上述のように低温環境下であっても強度や伸びといった機械的特性に優れ、落下などの衝撃を受けた際にも凹み難い。例えば、-30℃における引張試験において、本発明合金板や本発明合金部材においてプレス加工などの塑性加工に伴う変形(例えば、絞り加工による変形など)が実質的に施されていない平坦な箇所(素材の板とほぼ同様な箇所)は、引張強さ:350MPa以上、0.2%耐力:280MPa以上、伸び2%以上を有する。
《組織》
<晶出物>
本発明合金板は、その表面側の領域から任意の小領域をとって組織観察を行った場合、粗大な晶出物が実質的に存在せず、微細な晶出物が僅かに存在する組織を有する。より具体的には、上記合金板の厚さ方向において、当該合金板の表面から当該合金板の厚さの30%までの領域を表面領域とし、この表面領域から任意に選択された50μm2の小領域をとり、一つの小領域に存在する全ての晶出物の粒径を測定する。そして、各晶出物の最大径を測定したとき、一つの小領域に対して、最大径が0.1μm以上1μm以下である微細な晶出物が15個以下である。最大径が0.5μm以下の晶出物しか存在しないことがより好ましい。1μm超の粗大な晶出物が存在すると、落下などの衝撃を受けたとき、この粗大な晶出物が割れなどの起点となり得るため、割れや亀裂が生じ易く、耐衝撃性が低い。また、最大径が1μm以下の晶出物であっても、50μm2に対して15個超存在すると、割れや亀裂の起点が多くなることで、強度の低下を招き、耐衝撃性が低くなる。最大径が0.1〜1μmの晶出物の粒子が少ないほど耐衝撃性に優れる傾向にあり、10個以下がより好ましく、理想的には0個が望ましい。上記晶出物は、AlとMnの双方を含むものとする。最大径の測定方法の詳細は、後述する。なお、本発明では、割れの起因になり難いと考えられる極微細な晶出物、即ち、最大径が0.1μm未満の晶出物の存在を許容するが、上述のように晶出物は存在しない方が好ましい。
<平均結晶粒径>
本発明合金板として、平均結晶粒径が小さく、20μm以下といった微細組織を有するものが挙げられる。上述のように特定の条件の連続鋳造を行うことで微細組織を有する鋳造板が得られ、このような鋳造板に圧延を施すことで、上記微細組織を有する圧延板とすることができる。このような微細組織を有する本発明合金板は、強度や伸びといった機械的特性にも優れ、低温環境下であっても耐衝撃性を高められる。また、上記微細組織を有するマグネシウム合金板や、この圧延板にレベラー処理などの矯正処理を行った処理板により得られた本発明合金部材も、平均結晶粒径が20μm以下の微細組織を有することができ、耐衝撃性に優れる。より好ましい平均結晶粒径は、0.1μm以上10μm以下である。
[製造方法]
《鋳造》
本発明製造方法では、双ロール連続鋳造法を利用する。この鋳造において鋳型に利用するロールの温度を100℃以下、得られる鋳造板の厚さを5mm以下とする。このように鋳造板の厚さを薄く、かつロール温度を低くすることで、急冷凝固により上述のように晶出物の生成を抑制し、晶出物が小さくかつ少ない鋳造板とすることができる。ロール温度を100℃以下とするには、水冷などの強制冷却が可能なロールを利用することが挙げられる。ロール温度が低いほど、また、鋳造板の厚さが薄いほど、冷却速度を速めて晶出物の生成を抑制することができる。そのため、ロール温度は60℃以下、鋳造板の厚さは4.0mm以下がより好ましい。この鋳造工程(冷却工程も含む)は、マグネシウム合金の酸化などを防止するために、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
《圧延》
圧延条件は、例えば、素材の加熱温度:200〜400℃、圧延ロールの加熱温度:150〜300℃、1パスあたりの圧下率:5〜50%が挙げられ、所望の厚さとなるように複数パス行うとよい。特許文献1に記載される制御圧延を利用してもよい。上記鋳造材に圧延を行うことで、鋳造の金属組織ではなく圧延組織などとすることができる。また、圧延を行うことで、平均結晶粒径が20μm以下の微細組織が得られ易く、かつ鋳造時の偏析や引け巣や空隙(ポア)といった内部欠陥、表面欠陥などを低減して、表面性状に優れた圧延板が得られる。最終の圧延後に最終熱処理を施して平均結晶粒径が20μm以下の微細な再結晶組織とすると、得られた圧延板の強度や耐食性を更に高め易い。
《塑性加工》
本発明合金部材は、上記圧延板(熱処理などを施したものも含む)に、所望の形状となるようにプレス加工(打ち抜きも含む)、深絞り加工、鍛造加工、ブロー加工、曲げ加工といった塑性加工を施すことで得られる。この塑性加工は、200〜280℃の温間で行うと、圧延板の組織が粗大な再結晶組織となることを低減して、機械的特性や耐食性が劣化することを低減できる。上記塑性加工後に熱処理や防食処理を施したり、塗装層を形成してもよい。
本発明マグネシウム合金板及び本発明マグネシウム合金部材は、低温環境下での耐衝撃性に優れる。本発明マグネシウム合金板の製造方法は、上記本発明マグネシウム合金板を製造することができる。
図1は、衝撃試験を説明する概略説明図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[試験例1]
表1に示すマグネシウム合金からなるインゴット(いずれも市販)を用いて種々の条件でマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材(筐体)を作製し、得られたマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材の組織観察、引張試験(低温)、衝撃試験(低温)を行った。作製条件は以下の通りである。
(条件A:双ロール鋳造→圧延)
マグネシウム合金のインゴットを不活性雰囲気中で700℃に加熱して溶湯を作製し、この溶湯を用いて上記不活性雰囲気中で双ロール連続鋳造法により、厚さ4.0mm(<5mm)の鋳造板を複数作製する。この鋳造は、ロール温度が60℃(<100℃)となるようにロールを冷却しながら行う。得られた各鋳造板を素材とし、素材の加熱温度:200〜400℃、圧延ロールの加熱温度:150〜300℃、1パスあたりの圧下率:5〜50%の条件で、素材の厚さが0.6mmになるまで複数回圧延を施し、圧延板を作製する。得られた圧延板(マグネシウム合金板)を試料(板)とする。また、得られた圧延板に、加熱温度:250℃で角絞り加工を施して、断面[状の箱状体を作製し、この箱状体(マグネシウム合金部材)を試料(筐体)とする。
上記鋳造後、組成を均質化するための熱処理(溶体化処理)や時効処理などを施したり、圧延途中に中間熱処理を施したり、最終の圧延後に最終熱処理を施してもよい。また、圧延板にレベラー加工や研磨加工を施して、矯正により平坦度を向上したり、研磨により表面を平滑にしたりしてもよい。これらの点は、後述する試験例2についても同様である。
(条件B:ダイキャスト)
市販のダイキャスト品(断面[状の箱状体、底面部分の厚さ:0.6mm)である。
(条件C:市販板)
市販のAZ31合金からなる板(厚さ:0.6mm)である。
(条件D:市販筐体)
AZ31合金からなる板(厚さ:0.6mm)に角絞り加工が施された、断面[状の箱状体(底面部分の厚さ:0.6mm)である(市販品)。
《組織観察》
得られた各試料について、以下のように金属組織を観察し、晶出物を調べた。試料(板)では、試料を板厚方向に切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(20,000倍)で観察する。この観察撮像において、試料(板)の厚さ方向に、当該試料(板)の表面から当該試料(板)の厚さの30%(0.6mm×30%=0.18mm)までの領域を表面領域とする。この表面領域から、任意の50μm2の小領域を5箇所選択し、各小領域中に存在する全ての晶出物の大きさを測定する。晶出物の判定は、組成により行う。上記断面を鏡面研磨した後、例えば、EDXなどに代表される定性分析と半定量分析とを用いて断面に存在する粒子の組成が求められ、Al及びMnを含む粒子を晶出物とする。なお、Al及びMnを含む各晶出物の粒子についてAlの質量とMnの質量との比Al/Mnを測定したところ、試料No.1-1,1-2のいずれもAl/Mn=2〜5であった。そして、上記断面における各晶出物の粒子について当該断面に平行な直線を引き、各粒子におけるこの直線を横断する長さの最大値をその粒子の最大径とし、最大径が0.1μm以上1μm以下の大きさの晶出物の数をその小領域の晶出物の数とし、5箇所の小領域の平均をこの試料の晶出物の数/50μm2とする。試料(筐体)では、試料において絞り変形を伴わない平坦な部分である底面部を板厚方向に切断して、その断面を上記試料(板)と同様に観察して、晶出物の数/50μm2を測定する。但し、上記観察撮像において最大径が5μm以上を超えるような粗大な晶出物が見られる場合、小領域の面積を200μm2とし、この200μm2内に存在する晶出物の最大径、及び晶出物の数/200μm2を測定する。なお、上記各小領域は、上述の各面積を満たせば、特に形状は問わないが、矩形状(代表的には正方形)などが利用し易い。測定結果を表1に示す。
《引張試験(低温)》
各試料(厚さ:0.6mm)からJIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))を作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて引張試験を行った。ここでは、試料(板)では、標点距離GL=50mmとし、試料(筐体)では、標点距離GL=15mmとし、いずれの試料も試験温度:-30℃、引張速度:5mm/minとして引張試験を行い、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、伸び(%)を測定した(評価数:いずれもn=1)。その結果を表1に示す。なお、試料(筐体)では、試料において絞り変形を伴わない平坦な部分である底面部から切り出して上記引張試験の試験片、及び後述する衝撃試験の試験片を作製している。
《衝撃試験(低温)》
各試料から30mm×30mmの板片を切り出し、この切り出した板片を試験片とする。この試験では、図1に示すように、水平な面に直径d=20mmの円穴21を有する支持台20を用意した。円穴21の深さは後述する円柱棒10が十分に挿入可能な大きさとした。この円穴21を塞ぐように試験片1を配置し、この状態で、試験片1から高さ200mmの地点に、重量100g、先端r=5mm、セラミックス製の円柱棒10を、その中心軸と、円穴21の中心軸とが同軸となるように配置した。そして、試験片1に向けて、上記配置地点(高さ200mm)から円柱棒10を自由落下させた後、試験片1の凹み量を測定する。凹み量(mm)は、試験片1の対向する両辺を結ぶ直線をとり、この直線から最も凹んだ部分までの距離をポイントマイクロメータを用いて測定した。この衝撃試験は、-30℃の低温環境で行った。その結果を表1に示す。凹み量が0.5mm以下を○、0.5mm超を×と示し、割れが生じて凹み量を測定できなかった場合は、「割れ」と示し、クラック(亀裂)が生じた場合は、「クラック」と示す。なお、試料(筐体)において作製した上記30mm×30mmの試験片について、任意の4箇所の厚さを測定したところ、いずれの箇所も、素材の板の厚さ(厚さ0.6mm)に等しかった(試験片の厚さ:0.6mm)。
Figure 0005892212
表1に示すように、表面領域から選択した任意の50μm2に対して最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下であるマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材は、同じ組成の鋳造材や展伸材(AZ31合金)に比較して、-30℃といった低温環境においても凹み量が少なく、耐衝撃性に優れることが分かる。この理由は、低温環境においても引張強さや伸びといった機械的特性に優れていたためであると考えられる。特に、この試験では、上記耐衝撃性に優れる試料No.1-1,1-2は、最大径が0.5μm以下の晶出物しか存在していない。また、上記耐衝撃性に優れる試料No.1-1,1-2は、最大径が1μm超のAl-Mn晶出物が観察されず、少なくとも表面領域には、実質的に存在していないと考えられる。これに対して、特定の鋳造条件で製造していない市販品の試料は、表面領域に粗大な晶出物が存在しており、このような粗大な晶出物が存在することで、割れなどが生じ易くなったと考えられる。更に、表面領域から選択した任意の50μm2に対して最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下であるマグネシウム合金板にプレス加工などの塑性加工を行うことで、耐衝撃性に優れるマグネシウム合金部材が得られることが分かる。
[試験例2]
表2に示すマグネシウム合金からなるインゴット(いずれも市販)を用いて種々の条件でマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材(筐体)を作製し、得られたマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材の組織観察、衝撃試験(低温)を試験例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
製造条件「鋳造→圧延」は、鋳造を双ロール連続鋳造法により行い、ロール温度及び鋳造板の厚さを表2に示す条件とする。圧延条件は、試験例1と同様である。但し、この試験では、圧延時において素材が150℃〜250℃の温度域に保持される総合計時間が45分又は90分となるように、素材の加熱時間や圧延速度、圧延時の冷却速度などを調整している。なお、試験例1では、上記総合計時間を60分程度としている。表2において形状が「板」とは、試料が圧延板(マグネシウム合金板)であることを示し、「筐体」とは、試料が、この圧延板から試験例1と同様の条件で作製した箱状体(マグネシウム合金部材)であることを示す。
製造条件において「条件B」、「条件C」、「条件D」は、試験例1の条件B(ダイキャスト)、条件C(市販板)、条件D(市販筐体)と同様である。製造条件「押出→圧延」は、市販の押出材を用意し、この押出材に上述した「鋳造→圧延」の場合と同様の条件で圧延を行い、得られた圧延板を試料(板)とし、この圧延板から上述した「鋳造→圧延」の場合と同様の条件で作製した箱状体を試料(筐体)とする。
Figure 0005892212
表2に示すように、双ロール連続鋳造法においてロール温度を100℃以下、かつ鋳造板の厚さを5mm以下として鋳造した鋳造板に圧延を行うことで、表面領域から選択した任意の50μm2に対して最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下であるマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材が得られることが分かる。これに対して、上記特定の鋳造条件で製造しないと、粗大な晶出物が存在することが分かる。また、試験例1と同様に、表面領域から選択した任意の50μm2に対して最大径が0.1μm以上1μm以下のAl-Mn晶出物が15個以下であるマグネシウム合金板やマグネシウム合金部材は、-30℃といった低温環境でも、耐衝撃性に優れることが分かる。なお、試料No.2-1〜2-6について各晶出物の粒子のAl/Mnを測定したところ、いずれの試料もAl/Mn=2〜5であった。
更に、この試験から、(1)作製する鋳造材の厚さが同じ場合、ロール温度が低いほど、晶出物を低減できる、(2)ロール温度が同じ場合、作製する鋳造材の厚さが薄いほど、晶出物を低減できる、と言える。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、マグネシウム合金の組成、鋳造後及び圧延後の板厚、鋳造時のロール温度などを適宜変更してもよい。また、得られた圧延板やプレス加工を施した部材に防食処理や塗装層を設けてもよい。
本発明マグネシウム合金部材は、低温環境下での耐衝撃性に優れることから、低温環境で使用される各種の筐体や部品に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金板は、上記本発明マグネシウム合金部材の構成材料に好適に利用することができる。本発明マグネシウム合金板の製造方法は、本発明マグネシウム合金板の製造に好適に利用することができる。
1 試験片 10 円柱棒 20 支持台 21 円穴

Claims (3)

  1. AlとMnとを含有するマグネシウム合金からなるマグネシウム合金板であって、
    前記マグネシウム合金は、AZ91合金であり、
    前記マグネシウム合金板の厚さ方向において、当該マグネシウム合金板の表面から当該マグネシウム合金板の厚さの30%までの領域を表面領域とし、この表面領域から任意の50μm2の小領域をとったとき、AlとMnとの双方を含む晶出物が存在しており、前記晶出物の最大径が0.1μm以上1μm以下の粒子が15個以下であり、かつ最大径が1μm超の粒子が存在しておらず、
    前記晶出物の粒子は、Mnに対するAlの質量比:Al/Mnが2以上5以下であるマグネシウム合金板。
  2. 請求項1に記載のマグネシウム合金板に塑性加工を施してなるマグネシウム合金部材。
  3. AZ91合金のマグネシウム合金を板状に鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程により得られた鋳造板を圧延する圧延工程とを具え、
    前記鋳造は、双ロール連続鋳造法により行い、ロール温度を100℃以下、前記鋳造板の厚さを5mm以下として行い、
    前記圧延は、素材の加熱温度を200〜400℃、圧延ロールの加熱温度を150〜300℃、1パスあたりの圧下率を5〜50%として行って、請求項1に記載のマグネシウム合金板を製造するマグネシウム合金板の製造方法。
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