JP6269615B2 - 車両用ディファレンシャル装置 - Google Patents

Description

本発明は、開口を有するディファレンシャルケース（以下、デフケースと略記）を備えた車両用ディファレンシャル装置に関し、とりわけ、デフケースから発生するギヤノイズを抑制する技術に関する。

車両用ディファレンシャル装置の一種に、一対のサイドギヤおよびそれと噛み合うピニオンギヤを収容する周壁と前記リングギヤを固定するために前記周壁から外周側へ突設された環状のリングギヤ取付部と前記周壁の一部に内外を貫通して形成された開口とを有し、一回転軸線まわりに回転させられるデフケースと、前記周壁の外側に装着され、前記回転軸線を中心とする円環状のリングギヤ、とを有するものが知られている。たとえば、特許文献１の車両用ディファレンシャル装置がそれである。特許文献１の車両用ディファレンシャル装置では、円環状の前記リングギヤ取付部の取付面に固定された円環状のリングギヤに入力された動力が、前記一対のサイドギヤの回転差を許容しつつそれら一対のサイドギヤにそれぞれ連結された左右一対の駆動輪へ伝達される。

特開２０１１−１０６５０４号公報

ところで、特許文献１のような車両用ディファレンシャル装置では、デフケースの周壁の一部が開口しており、前記周壁のうち前記開口周辺は応力が掛かりやすく、前記リングギヤのうち前記開口周辺に取り付けられる前記リングギヤの歯面にも応力が掛かりやすい。そのため、リングギヤに高トルクが入力されると、デフケースとリングギヤとの組立体において前記リングギヤのうち前記開口周辺に取り付けられる前記リングギヤの歯面は、リングギヤの他の部位よりも変形し易く、リングギヤとリングギヤにトルクを入力させるドライブギヤとの間で局部的に噛合面積が変化するおそれがあり、このような噛合面積の変化によって、ギヤノイズが増大する可能性がある。

本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、リングギヤのドライブギヤとの噛合い面積が変化することにより発生するギヤノイズを抑制する車両用ディファレンシャル装置を提供することにある。

上記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、一対のサイドギヤおよび該サイドギヤと噛合うピニオンギヤを収容する周壁と該周壁の一部に内外を貫通して形成された開口とを有し、一回転軸線まわりに回転させられるデフケースと、前記周壁の外側に装着され、前記回転軸線を中心とする円環状のリングギヤとを、備えた車両用ディファレンシャル装置において、前記リングギヤの内周縁部のうち、前記開口が貫通する方向から見たときに前記開口の一部を覆うように構成され、前記開口の一部を覆わない内周縁部に比べて前記開口側に突出した突出部を有することにある。

このように構成された本発明の車両用ディファレンシャル装置によれば、前記リングギヤの内周縁部のうち、前記開口が貫通する方向から見たときに前記開口の一部を覆うように構成され、前記開口の一部を覆わない内周縁部に比べて前記開口側に突出した突出部を有する。そのような突出部を有するリングギヤとデフケースとの組立体において、リングギヤのうち前記開口の前記回転軸線まわりの角度範囲内の径方向の幅寸法を増やすことにより剛性が高くされることから、リングギヤのドライブギヤとの噛合面積が変化することによるギヤノイズが抑制される。また、リングギヤの突出部は、デフケースの開口側へ突出したものであるため、デフケースおよびリングギヤの組立体が大きくなることはない。このため、リングギヤとデフケースとの組立体の剛性が高くされるとともにディファレンシャル装置全体の小型化が達成される。

ここで、好適には、前記リングギヤの歯幅は、前記突出部では、それ以外の部分よりも拡大される。この場合には、リングギヤとドライブピニオンとの噛合位置がリングギヤにおける前記突出部の側へずれた場合でも、前記ドライブピニオンは前記リングギヤの前記突出部の歯幅の拡大された噛合歯と噛合うことより、リングギヤとドライブピニオンとの噛合面積の低下が抑制されて、ギヤノイズの発生が低減される。また、ドライブピニオンとの噛合面積の低下によるリングギヤの噛合歯への単位面積当りの入力が大きくなることが抑制されることから、リングギヤの耐久性を向上することができる。

本発明の一実施例の車両用ディファレンシャル装置の回転軸線Ｃ１を含む断面を示す斜視図である。 図１の車両用ディファレンシャル装置の回転軸線Ｃ１を含み、ピニオンピンの中心線と垂直な断面の一部を示す斜視図である。 図１の車両用ディファレンシャル装置の回転軸線Ｃ１方向に視た正面図である。 図１の車両用ディファレンシャル装置の斜視図である。 図１のリングギヤを回転軸線Ｃ１方向に視た正面図である。 図５のリングギヤのＶＩ−ＶＩ視断面図である。 図５のリングギヤのＶＩＩ−ＶＩＩ視断面図である。 図５のリングギヤを回転軸線Ｃ１方向に垂直な平面に射影した際の射影を示す図である。 本発明の他の実施例の車両用ディファレンシャル装置のリングギヤを回転軸線Ｃ１方向に垂直な平面に射影した際の射影を示す図である。 本発明の他の実施例の車両用ディファレンシャル装置のリングギヤを回転軸線Ｃ１方向に垂直な平面に射影した際の射影を示す図である。 本発明の他の実施例の車両用ディファレンシャル装置のリングギヤを回転軸線Ｃ１方向に垂直な平面に射影した際の射影を示す図である。

以下、本発明の車両用ディファレンシャル装置の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。

図１は、本発明の一実施例の車両用ディファレンシャル装置１０（以下、「ディファレンシャル装置１０」という。）のデフケース２６の回転軸線Ｃ１およびピニオンピン３０の中心線を通る断面を示す斜視図である。図２は、ディファレンシャル装置１０のデフケース２６の回転軸線Ｃ１を通り、ピニオンピン３０の中心線に垂直な断面の一部を示す斜視図である。図３は、ディファレンシャル装置１０の回転軸線Ｃ１方向に視た図であるとともに、リングギヤ２８と噛み合うドライブピニオン１３およびドライブピニオンシャフト１２の断面を併せて示す図である。図４は、ディファレンシャル装置１０の斜視図である。なお、リングギヤ２８に形成された噛合歯１６（図６および図７に示す。）はたとえばハイポイドギヤであるが図１から図４では省略されている。また、図１および図２では、サイドギヤ１８と動力伝達可能に連結される車軸は、図示されていない。ディファレンシャル装置１０は、回転軸線Ｃ１上において相対向する一対のサイドギヤ１８、および回転軸線Ｃ１を挟んで相対向し且つ上記一対のサイドギヤ１８にそれぞれ噛み合う一対のピニオンギヤ２０を、それぞれ回転可能に支持した状態で収容する円筒状の周壁２２と周壁２２の外周面から外周側へ回転軸線Ｃ１に直交する方向に一体に突設され、リングギヤ取付部として機能する円環状のフランジ部２４とを有し、一回転軸線Ｃ１まわりに回転させられるデフケース２６と、そのフランジ部２４の一面である円環状の取付面２７に固定された円環状のリングギヤ２８とを、備えている。すなわち、リングギヤ２８は、その中心がデフケース２６の回転軸線Ｃ１と同心に周壁２２の外側に装着されている。デフケース２６の内部において一対のピニオンギヤ２０を回転可能に支持するピニオンピン３０の両端部が、その長手方向がリングギヤ２８の回転軸線Ｃ１と直交するように周壁２２の回転軸線Ｃ１方向の中央に固定されている。また、デフケース２６は、周壁２２から回転軸線Ｃ１方向に互いに離隔する方向に突設された円筒状の一対のボス部３２を備えている。これらボス部３２に図示しない一対の車軸の一端部がそれぞれ挿入され、デフケース２６内で一対のピニオンギヤ２０を挟む一対のサイドギヤ１８のそれぞれとスプライン嵌合により動力伝達可能に連結されている。フランジ部２４は、デフケース２６の周壁２２の回転軸線Ｃ１方向におけるピニオンピン３０とボス部３２との間の外周面から外周側へ突設されており、リングギヤ２８は、フランジ部２４のピニオンピン３０側の環状の取付面２７に面接触した状態で周方向に等間隔に配置された複数本（たとえば１６本）のボルト３４によりフランジ部２４に固定されている。

図２から図４において示されるように、デフケース２６には、周壁２２の側面の一部にデフケース２６の内外を貫通して形成された一対の開口３６が形成されている。この一対の開口３６は、ピニオンピン３０を挟んで円筒状の周壁２２の側面を局所的に切り欠くように形成されている。

図３において示されるように、ディファレンシャル装置１０は、例えば車両の駆動源からの動力を一対の駆動輪に伝達する動力伝達経路に設けられ、プロペラシャフトに連結されたドライブピニオンシャフト１２およびその一端に設けられたドライブピニオン１３を備えている。ドライブピニオンシャフト１２は、第１軸受１４および第２軸受１５を介して図示しないハウジングに回転軸線Ｃ２回りに回転可能に支持されている。ドライブピニオンシャフト１２の回転軸線Ｃ２は、リングギヤ２８の回転軸線Ｃ１と直角であるが交差しない立体交差の関係にあり、ドライブピニオン１３とそれに噛合うリングギヤ２８とは、ハイポイドギヤ対である。ディファレンシャル装置１０は、ドライブピニオン１３からリングギヤ２８に入力された動力を一対のサイドギヤ１８の回転差を許容しつつそれら一対のサイドギヤ１８にそれぞれ連結された左右一対の車軸に伝達する。

図５は、リングギヤ２８を回転軸線Ｃ１方向に視た図であり、図６は、図５のＶＩ−ＶＩ視断面図であり、図７は、図５のＶＩＩ−ＶＩＩ視断面図である。円環状のリングギヤ２８は、図７に示されるように、回転軸線Ｃ１方向から視たときに、フランジ部２４の取付面２７と当接する側とは反対側の内周縁部３８と外周縁部４０との間の円錐面上に歯幅ａの噛合歯１６を複数有し、その噛合歯１６がリングギヤ２８よりも小径であるドライブピニオン１３の噛合歯と噛合わされている。リングギヤ２８のフランジ部２４との当接面には、ボルト３４と螺合する雌ネジが形成された円柱状穴４２が周方向に複数形成されている。なお、図５において、リングギヤ２８の円錐面上に形成された噛合歯１６は省略されている。また、デフケース２６とリングギヤ２８は、ボルトではなく溶接されることで、組み付けられてもよい。

ところで、デフケース２６は、周壁２２に一対の開口３６を有しているため、周壁２２のうち開口３６周辺は応力が掛かりやすく、リングギヤ２８のうち開口３６周辺の歯面にも応力が掛かりやすい。そのため、リングギヤ２８に高負荷が入力されると、フランジ部２４に固定されたリングギヤ２８のうちの開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分すなわち開口３６付近に形成された噛合歯１６において最も撓みが大きくなり、リングギヤ２８とドライブピニオン１３との噛合面積が局所的に変化する可能性があった。そのため、ディファレンシャル装置１０には、装置自体の小型化と、デフケース２６とリングギヤ２８との組立体においてリングギヤ２８のドライブピニオン１３との噛合面積が変化することにより発生するギヤノイズの抑制とを両立することが望まれていた。

図６にも示されるように、リングギヤ２８の内周縁部３８のうち径方向において開口３６に対向する部分、すなわち周壁２２の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分は、周壁２２の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の内周縁部３８に比べて、開口３６側に突出した内周側突出部４４を有している。
内周側突出部４４は、開口３６が周壁２２を貫通する方向から見たときに開口３６の一部を覆うように構成されており、開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外であって開口３６の一部を覆わない内周縁部３８に比べて開口３６側へ突出して形成されている。上記リングギヤ２８の内周縁部３８のうち周壁２２の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分は、リングギヤ２８の回転軸線Ｃ１に垂直で、且つピニオンピン３０の中心線に垂直な方向から見たときに、リングギヤ２８の周壁２２の開口３６と重なる部分を含んでいる。この一対の内周側突出部４４の内周側端面４６は、図３に示されるように、デフケース２６の一対の開口３６のそれぞれに所定の間隔ｄを有して設けられている。また、リングギヤ２８の周壁２２に形成された開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の内周側突出部４４の形成された部分の円錐面上には、リングギヤ２８の周壁２２に形成された開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の部分の円錐面上と同様の噛合歯１６が形成されており、その歯幅が歯幅ａから最大歯幅ｂに拡大されている。

図８は、リングギヤ２８をその回転軸線Ｃ１と垂直な面へ射影させた際の射影を例示する図であって、内周側突出部４４の内周側端面４６の形状を説明するための図である。内周側突出部４４は、その内周側端面４６の射影である直線Ｂ１が、リングギヤ２８の周壁２２に形成された開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の部分の円錐面上に形成された歯幅ａの噛合歯１６の内周縁の射影である円Ａとの交わる点Ｘおよび点Ｙと円Ａの中心すなわち回転軸線Ｃ１を示す点Ｏとをそれぞれ結ぶ２直線の成す角Ｄが１０度以上となり、且つ直線Ｂ１上の点Ｏとの距離が最も小さい点Ｅが、好適には、円Ａの半径の９７％の半径を有し且つ円Ａと同心の破線で示された円Ｆの内側となるように、内周縁部３８のうちのデフケース２６の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分が開口３６側に突出させられて形成される。点Ｅは、点Ｏを通る直線ＸＹに直交する線と直線Ｂ１との交点である。このように形成された内周側突出部４４により、リングギヤ２８のうちデフケース２６の周壁２２の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の径方向の幅寸法が増やされることから、リングギヤ２８とデフケース２６との組立体の剛性を充分に高くすることができる。なお、内周側突出部４４の内周側端面４６の射影の直線Ｂ１は点Ｏに対して対称位置に１対生じるところ、図８では、それらのうちの１つが省略されている。

上述のように、本実施例のディファレンシャル装置１０によれば、リングギヤ２８の内周縁部３８のうち、開口３６が貫通する方向から見たときに開口３６の一部を覆うように構成され、開口３６の一部を覆わない内周縁部３８に比べて開口３６側に突出した内周側突出部４４を有する。そのような内周側突出部４４を有するリングギヤ２８とデフケース２６との組立体において、リングギヤ２８のうち開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内において開口３６の一部を覆う内周側突出部４４により径方向の幅寸法が増やされて剛性が高くされることから、リングギヤ２８のドライブピニオン１３との噛合面積が変化することによるギヤノイズが抑制される。また、リングギヤ２８の内周側突出部４４は、デフケース２６の開口３６側へ突出したものであるため、デフケース２６およびリングギヤ２８の組立体が大きくなることはない。このため、リングギヤ２８とデフケース２６との組立体の剛性が高くされるとともにディファレンシャル装置１０全体の小型化が達成される。

また、本実施例のディファレンシャル装置１０によれば、リングギヤ２８のデフケース２６の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の内周側突出部４４が形成された部分の円錐面上の噛合歯１６の歯幅ｂは、リングギヤ２８のデフケース２６の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の部分の円錐面上に形成された噛合歯１６の歯幅ａよりも拡大されている。このため、リングギヤ２８とドライブピニオン１３との噛合位置が内周側突出部４４の側へずれた場合でも、ドライブピニオン１３はリングギヤ２８の内周側突出部４４の歯幅ｂに拡大された噛合歯１６と噛合うことより、リングギヤ２８とドライブピニオン１３との噛合面積の低下が抑制されて、ギヤノイズの発生が低減される。また、リングギヤ２８のドライブピニオン１３との噛合面積の低下による噛合歯１６への単位面積当りの入力が大きくなることが抑制されることから、リングギヤ２８の耐久性を向上することができる。

次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前記実施例と機能において実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。

本実施例のディファレンシャル装置４８は、リングギヤ５０の内周側突出部５２の形状が前述のリングギヤ２８に対して異なる以外は、前述の実施例１のディファレンシャル装置１０と共通する。以下、その異なる点について図９を用いて説明する。図９は、リングギヤ５０をその回転軸線Ｃ１と垂直な面へ射影させた際に生じる射影を示す図であって、図８に相当する図である。内周側突出部５２は、その円錐面上に形成された歯幅ｂの噛合歯１６の内周縁の射影である折れ線Ｂ２の円Ａとの交わる点Ｘおよび点Ｙと点Ｏとの間をそれぞれ結ぶ２直線の成す角Ｄが１０度以上、且つ折れ線Ｂ２上の点Ｏとの距離が最も小さい点Ｅが円Ｆの内側となるように、内周縁部３８のうちのデフケース２６の一対の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分が開口３６側に突出して形成されている。本実施例の点Ｅは、点Ｏを通る直線ＸＹに直交する線と折れ線Ｂ２との交点である。折れ線Ｂ２は、その点Ｏを通る直線ＸＹに直交する線に対して、対称形状である。本実施例のディファレンシャル装置４８によれば、前述の実施例１と同様の効果を得ることができる。

図１０は、本実施例のディファレンシャル装置５４のリングギヤ５６を、その回転軸線Ｃ１と垂直な面へ射影させた際に生じる射影であって、図８に相当する図である。リングギヤ５６の内周側突出部５８は、その円錐面上に形成された歯幅ｂの噛合歯１６の内周縁の射影である滑らかな円弧Ｂ３の円Ａとの交わる点Ｘおよび点Ｙと点Ｏとの間をそれぞれ結ぶ２直線の成す角Ｄが１０度以上、且つ円弧Ｂ３上の点Ｏとの距離が最も小さい点Ｅが円Ｆの内側となるように、内周縁部３８のうちのデフケース２６の一対の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分が開口３６側に突出して形成されている。本実施例の点Ｅは、点Ｏを通る直線ＸＹに直交する線と円弧Ｂ３との交点である。円弧Ｂ３は、その点Ｏを通る直線ＸＹに直交する線に対して対称形状である。本実施例のディファレンシャル装置５４によれば、前述の実施例１と同様の効果を得ることができる。

図１１は、本実施例のディファレンシャル装置６０のリングギヤ６２を、その回転軸線Ｃ１と垂直な面へ射影させた際に生じる射影であって、図８に相当する図である。リングギヤ６２の内周側突出部６４は、その円錐面上に形成された歯幅ｂの噛合歯１６の内周縁の射影である曲線Ｂ４の円Ａとの交わる点Ｘおよび点Ｙと点Ｏとを結ぶ２直線の成す角Ｄが１０度以上、且つ曲線Ｂ４上の点Ｏとの距離が最も小さい点Ｅが円Ｆの内側となるように、内周縁部３８のうちのデフケース２６の一対の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の部分が開口３６側に突出して形成されている。本実施例のディファレンシャル装置６０によれば、前述の実施例１と同様の効果を得ることができる。

以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。

たとえば、前述の実施例のディファレンシャル装置１０によれば、デフケース２６の周壁２２にピニオンピン３０を挟んで一対の開口３６を備えるものであったが、これに限定されるものではなく、たとえば１つの開口、あるいは３つ以上の開口３６が周壁２２に形成されて、リングギヤ２８の内周縁部３８のうちの開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の開口３６周辺部分が、開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の内周縁部３８に比べて上記１つあるいは３つ以上の開口３６側に突出されることにより形成された内周側突出部４４が設けられて、リングギヤ２８とデフケース２６との組立体の剛性が高められるように構成されてもよい。

また、前述の実施例のディファレンシャル装置１０によれば、リングギヤ２８のデフケース２６の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲内の内周側突出部４４の形成された部分の円錐面上の噛合歯１６の歯幅ｂは、リングギヤ２８のデフケース２６の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の部分の円錐面上の噛合歯１６の歯幅ａよりも拡大されていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、内周側突出部４４の形成された部分の円錐面上に形成される噛合歯１６が、リングギヤ２８のデフケース２６の開口３６の回転軸線Ｃ１まわりの角度範囲外の部分の円錐面上の噛合歯１６と同じ歯幅ａから最大歯幅ｂに拡大されずに、内周側突出部４４に完全な噛合歯１６が形成されずに不完全な形状の噛合歯１６が形成されるか、あるいは噛合歯が全く形成されないようにしてもよい。内周側突出部４４に噛合歯１６が形成されなくとも、リングギヤ２８とデフケース２６との組立体の剛性は向上される。

また、前述の実施例のディファレンシャル装置１０によれば、デフケース２６の開口３６とそれに対向するリングギヤ２８の内周側突出部４４の内周側端面４６との間に、所定の間隔ｄを有するように構成されていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、デフケース２６とリングギヤ２８とのボルト３４による組付時にデフケース２６に対してリングギヤ２８がほぼ相対回転不能な程度に、デフケース２６の開口３６と内周側突出部４４の内周側端面４６との間隔ｄが狭められてもよい。このようにすれば、デフケース２６に対してリングギヤ２８が周方向に位置決めされて、組み付ける際にリングギヤ２８がデフケース２６に対して回転することが抑制されるため、デフケース２６とリングギヤ２８とのボルト３４による組付けが容易となる。

また、前述の実施例のディファレンシャル装置１０によれば、デフケース２６とリングギヤ２８とは、ボルト３４によって組み付けられていたが、溶接によって組み付けられてもよい。このようにすれば、デフケース２６に対してリングギヤ２８がボルトによって位置決めされないため、デフケース２６とリングギヤ２８との組付けが容易となる。

また、前述の実施例では、内周側突出部４４、内周側突出部５２、内周側突出部５８および内周側突出部６４は、歯幅ａの噛合歯１６の内周縁の射影である円Ａの９７％径の円Ｆよりも内側まで突出するものであったが、必ずしも円Ｆの内側まで突出するものでなくてもよく、突出量に応じた剛性向上効果を得ることができる。

なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。

１０、４８、５４、６０：車両用ディファレンシャル装置
１６：噛合歯
１８：サイドギヤ
２０：ピニオンギヤ
２２：周壁
２４：フランジ部
２６：デフケース
２８、５０、５６、６２：リングギヤ
３０：ピニオンピン
３６：開口
３８：内周縁部
４０：外周縁部
４４、５２、５８、６４：内周側突出部（突出部）
Ｃ１：回転軸線
ａ：歯幅
ｂ：歯幅

Claims (2)

1. 一対のサイドギヤおよび該サイドギヤと噛合うピニオンギヤを収容する周壁と該周壁の一部に内外を貫通して形成された開口とを有し、一回転軸線まわりに回転させられるデフケースと、前記周壁の外側に装着され、前記回転軸線を中心とする円環状のリングギヤとを、備えた車両用ディファレンシャル装置において、前記リングギヤの内周縁部のうち、前記開口が貫通する方向から見たときに前記開口の一部を覆うように構成され、前記開口の一部を覆わない内周縁部に比べて前記開口側に突出した突出部を有することを特徴とする車両用ディファレンシャル装置。
2. 前記リングギヤの歯幅は、前記突出部では、それ以外の部分よりも拡大されていることを特徴とする請求項１の車両用ディファレンシャル装置。
   

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